第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針等

当社は、「すべての産業の新たな姿をつくる。」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに掲げ、各産業の代表的な企業と協働し、顧客企業だけでなく、産業全体、さらには社会全体の本質的な構造転換への貢献を目指しています。そのために、顧客企業固有の成長戦略や事業課題に合わせたオーダーメイドのAI開発とAI導入・事業変革のコンサルティングを行う「カスタムAI」サービスを、主に顧客企業の成長と構造転換に直結する新規製品・サービス創出やビジネスモデル変革に関連するAIテーマ(当社では「バリューアップ型AIテーマ」と定義)を対象に提供しております。このサービスにより、各産業におけるイノベーションを促進し、持続可能な成長を支える新たな価値創造を実現していくことを目指しております。最先端技術とビジネス戦略の結びつきを強化することで、産業全体の進化を牽引し、社会に貢献する企業であり続けることを経営方針としております。

 

(2) 経営戦略等

 当社では、AIプロジェクトの伴走支援能力(「ソリューションデザイン」)をノウハウ化し、範囲の経済を効かせることによる事業成長を目指しています。そのため、顧客企業の新規製品・サービスの創出、及びビジネスモデル変革へのAI技術活用テーマに注力領域を絞っています。さらに、先行する取組を通じて構築したノウハウと技術を別の取組にて応用できる形で蓄積し、それを応用する取組を増やし拡大することを繰り返すことで、高単価かつ長期的な顧客取引を獲得するアプローチをとっております。このアプローチは、SaaSのような低価格で即時導入可能なAIプロダクトを展開することで短期的に中規模な事業規模の確立を狙うアプローチとは異なっております。この戦略を実現するために、市場におけるポジショニング(差別化された領域への位置取り)の確保とケイパビリティ(組織能力)の構築を行うことによって、安定的かつ成長性のあるビジネスモデルの確立に取り組んでおります。

 

① ポジショニング(差別化された領域への位置取り)確保

当社では、新規製品・サービス創出やビジネスモデル変革等、ビジネスの新しい施策展開により顧客企業に大きな成長をもたらし、かつアカデミア(学術研究)発の最先端のAI技術の自前実装が求められる難易度の高い取組みを「バリューアップ型AIテーマ」と定義し、このような顧客企業の中長期的成長を左右する重要テーマへの取組をメインターゲットとすることで、一般的な受託開発やコンサルティングサービスに比べ、強固な顧客基盤、長期安定的かつ持続的に拡大可能な収益を生みやすいポジショニングを取っております。

さらに、「バリューアップ型AIテーマ」を開拓する切り口として、「研究開発型産業分野」と「社会基盤・生活者産業分野」の二つの分野に重点的に取り組む立ち位置を取っております。これらは、産業のバリューチェーンの川上と川下において、特にAI技術が長期的に大きな付加価値を生む可能性の高い産業分野と考えております。

「研究開発型産業分野」とは、半導体、産業機械、材料、化学、ライフサイエンスなどの研究開発を通じて革新的な製品・サービスの創出を目指す分野を指し、当社はこの分野でAIを用いたR2Bプロセス(Research to Business、研究開発から事業化までのプロセス)の変革を通じて革新的な新製品の開発を狙う取組を、様々な顧客企業と進めております。これは、国内産業が国際競争力を堅持している希少な領域への貢献という観点で重要度の高い取り組みです。

こうした産業領域では、研究開発の開始から事業化までの期間を五〜数十年の長期で捉え、毎年売上高の数%以上の投資を継続的に行うため、R2Bプロセスの変革に取り組むプロジェクトは長期化・大規模化する性質を持っています。一方で、このような研究開発活動は情報の機密性が高いため、多くの企業では外部委託を行わず自社内で推進されるため、AIベンダーにとっては参入障壁が高い状況にあります。

その中で、当社は、各企業では自前での獲得が難しいAI技術開発力と導入に向けたノウハウ(「ソリューションデザイン」)が顧客企業に評価された結果複数の取組実績を有しており、高い参入障壁の中でも、グローバルトップ企業とのパートナーシップを築き、各社の全社的・中核的なビジネステーマに関わる共同プロジェクトを推進するに至っております。

「社会基盤・生活者産業分野」とは、主に消費材、流通・小売、交通・都市インフラ、メディア、金融、エンターテイメントなど消費者・生活者に直接製品・サービスを提供したり社会インフラを担う分野を指し、当社はこの分野でAIを用いた新たなデジタルサービスの開発や顧客との1to1コミュニケーション(一人ひとりの顧客に合わせたコミュニケーション)の活性化、AIによる交通運行や都市管理の最適化などの社会インフラの変革に取り組んでおります。

こうした産業領域では従来、単一または少品種の製品・サービスをマス向けに提供するビジネスモデルが目指される傾向にありました。しかし、各種ビッグデータの取得が可能になったことを背景に、AIを用いた商品・サービスのデジタル化・パーソナライゼーションに向けた技術が高度化し、新たな顧客体験の提供が可能になっています。こうした先端技術の活用により製品・サービスをアップデートする取り組みは、当領域における企業にとって新たな収益源の創出に直結するため、プロジェクトが長期化・大規模化する傾向があります。当社は、すでに複数企業における新規サービスの創出やデジタル/AIを前提とする新たなビジネスモデルへの変革の支援実績を有しております。

 

② ケイパビリティ(組織能力)構築

当社では、前述のポジショニングを実現するに当たり必要なケイパビリティ(組織能力)を構築するためには、優秀な人材の獲得・育成と再利用可能な技術的資産の蓄積の2点が重要と考えております。

優秀な人材の獲得・育成においては、顧客企業のイノベーションをテーマにした、野心的で難易度が高く実現時のインパクトが大きなプロジェクトへの取り組みが、優秀な人材を惹きつける起点になると考えております。加えて、幅広い業界の代表的な企業との通算200を超えるAI導入プロジェクトを通して培ってきたAI技術の設計及びプロジェクトマネジメントのノウハウである「ソリューションデザイン」を体系化してきたことによって、当社の各人材がスキルを高め、キャリアを磨くことができる有効な機会を提供しているものと考えております。実際に当社では、戦略コンサルティング、総合コンサルティング、システムインテグレーション、データサイエンス、および事業会社での事業企画・開発などの経験を有する人材を厳選して採用し、OJT/Off-JTを通してソリューションデザインの体系を習得した当社独自人材である「ソリューションデザイナ」を育成・組織化するに至っています。

再利用可能な技術的資産の蓄積においては、各プロジェクトを通して獲得したノウハウや技術をAI開発運用の社内共通基盤として蓄積しながら、共通性の高いプロジェクトテーマを他企業・他産業に効率的・効果的に横展開する、バリュー・ディストリビューション事業として展開しております。具体的には、主要なAIアルゴリズムやシステムアーキテクチャの設計、また技術検証や事業検証を行うために参照可能なプログラムソースコードや開発及びコンサルティングの方法論に関するドキュメントをまとめた「ソリューション開発ノウハウ」、センサーを搭載したハードウェア(センシングデバイス)と取得したセンシングデータのAI処理基盤をセットとして整備した「ハードウェア一体型基盤」、繰り返し使う基礎機能やプログラムソースコードの基本テンプレートをあらかじめ一つにまとめ開発者を支援するツール・開発環境として整備した「AI開発フレームワーク」の3種類の資産を新たなプロジェクトにて応用可能なノウハウ・技術プラットフォームとして、プロジェクトの遂行に活用しております。

 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社は、より高い成長性及び収益性を確保する点から、売上高成長率及び売上高総利益率を主な経営指標と捉えております。加えて、顧客企業との長期的な関係性を構築し共創する付加価値を拡大させていくことを重視する観点から継続顧客からの売上高成長率、産業全体のイノベーション促進を目指すことから新規顧客の獲得件数を重要な経営指標と考えております。

 

(4) 経営環境

 2000年以降のインターネットの普及によるビッグデータの集積と、2012年頃から本格化した深層学習技術に代表されるアルゴリズムの発展により、AI技術は幅広い産業で実用に向けた実証実験が実施され、様々なAIサービスやAIソリューションが市場に登場しております。国内のAI全体市場(AIビジネス市場)は2021年に1兆1,609億円、2025年には1兆7,422億円に拡大すると予測されており、当社がビジネスを行うAI構築サービス市場はその半分程度を占め2021年に5,844億円、2025年には8,596億円に拡大すると予測されております。(出所:株式会社富士キメラ総研「2022 人工知能ビジネス総調査」、2022年8月)
 一方で、日本企業においては2021年度のIT予算の76%と大半が業務効率化など現行ビジネスの維持・運営に関連する投資(ランザビジネス予算)への配分になっており、新規製品・サービスの創出やビジネスモデル変革などにつながるビジネスの新しい施策展開を目的とする投資(バリューアップ予算)の構成比は24%と低い水準になっております。(出所:一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書 2023」、2023年3月)

 また、デジタル関連の取組が先行する米国企業と日本企業における取組成果の状況を比較すると、アナログ・物理データのデジタル化(デジタイゼーション)や業務の効率化による生産性の向上(デジタライゼーション)に関する取組では日米ともにすでに成果が出ている企業の割合が8割程度と同水準であるのに対し、新規製品・サービスの創出や顧客起点の価値創出によるビジネスモデルの根本的な変革(デジタルトランスフォーメーション)に関する取り組みでは、すでに成果が出ている企業の割合が、米国では7割程度であるのに対し日本では2割強と三分の一程度の水準となっております。(出所:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「DX白書2023」、2023年3月)
 以上から当社は、国内企業におけるバリューアップ関連取組への投資及び成果創出は先行マーケットに比べ遅れた状況にあり、そうしたテーマへの取組を支援するバリューアップ型テーマ市場は、成長率の高いデジタル/AI関連市場の中でも特に高い潜在成長力を持つと考え、バリューアップ型のAIテーマを支援する市場をメインのターゲット市場と定めております。こうした「バリューアップ型AIテーマ市場」の正確な規模推計は存在しないものの、当社では、AI構築サービス市場におけるバリューアップ型テーマとランザビジネス型テーマの比率は概ねIT投資における両予算の配分比率と現在同傾向にあり、また今後は各社のバリューアップ予算配分の増加意向を反映する形でバリューアップ型の比率が拡大するであろうと考え、2021年にはAI構築サービス市場の24%を構成する1,400億円程度の規模が存在し、2025年には33%を構成する2,800億円程度へ拡大すると予想しております。
 バリューアップ型AIテーマ市場における競合環境は、現状ではデジタル/AI市場の他領域に比べ空白余地が大きい状況であると認識しております。その要因としては、こうした領域へのAI導入では、AI技術自体とそれを導入する事業の特性や環境の双方を深く理解した上で企業活動全体がどう転換するかを描きながら、他方で最先端のAI手法を組み合わせた複雑なソフトウェアを開発する、という難易度の高い取り組みを進める必要があり、その推進を取り仕切れるプロフェッショナル人材(専門家人材)と複雑なAIソフトウェアの開発運用を支えるノウハウや技術基盤が不足しているからだと考えております。結果として、AIソフトウェアを開発提供するAI SaaS企業や受託開発AIベンダーは主にデータのデジタル化や業務効率化などランザビジネス型テーマに対応しており、他方で顧客企業のデジタルトランスフォーメーションの支援を行う戦略コンサルティングファーム等はAIソフトウェアの開発には対応しておらず、AIを用いて顧客のバリューアップを支援できる企業は希少な存在であると捉えております。

 

(5) 事業上及び財務上の対処すべき課題

 ① サービス形態の発展による市場におけるポジショニング(市場領域の位置取り)の強化

 当社は、各業界の代表的な企業にとって、産業・社会的インパクトの大きい重要なイノベーションテーマにおける推進パートナーとして当社を選択いただけるために、ポジショニング(注力領域における差別化された位置取り)の強化が重要な課題と認識しております。そのため、ターゲット領域に合わせたより解像度の高いサービス・プロダクトラインアップの拡充に努めてまいります。

 

 ② ケイパビリティ(組織能力)の更なる強化

 当社は、当社の競争力の源泉が高度な専門的能力を有するイノベーション・プロフェッショナル人材と再利用可能な技術的資産の蓄積にあると認識しております。両点の強化において、継続的な優秀人材の採用と育成、および共通基盤の企画開発を行ってまいります。

 

 ③ 内部管理体制の強化

 当社は、事業の拡大・成長に応じた内部管理体制の強化が重要な課題であると認識しております。経営の公正性・透明性を確保すべく、コーポレート・ガバナンスを強化し、適切な内部統制システムの構築を図ってまいります。

 

 ④ 情報管理体制の強化

 当社は、サービス提供やシステム運用の遂行過程において、機密情報や個人情報を取り扱う可能性があり、その情報管理を強化していくことが重要な課題であると認識しております。現在、情報セキュリティ管理規則等に基づき管理を徹底しておりますが、今後も社内教育・研修実施やシステム整備などを継続して行ってまいります。

 

 ⑤ 財務基盤の強化
当社は、更なる事業の拡大・成長に向け、採用活動およびマーケティング活動に注力するとともに、AI開発に不可欠なインフラの整備に積極投資を図る方針であります。自己資金による資金の循環サイクルを確立することを基本方針としておりますが、顧客プロジェクトが長期かつ大型化するに伴い、投資が先行することが想定されます。当該資金需要に対応するため、エクイティファイナンスや内部留保により、財務基盤の強化に努めてまいります。
 

 ⑥ SDGsの取り組み

 当社は、各業界の代表的な企業と産業・社会的インパクトの大きい重要なイノベーションテーマにて協働する方針をとっており、各取り組みがSDGs(持続可能な開発目標)に掲げられる各目標達成に繋がっていくと認識しております。特に研究開発へのAI技術活用により科学技術イノベーションを推進する各取り組みは「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」「13.気候変動に具体的な対策を」に、AI技術により新たな生活者サービスや社会基盤を創出する各取り組みは「3.すべての人に健康と福祉を」「8.働きがいも経済成長も」「11.住み続けられるまちづくりを」に、そして幅広い企業や研究機関との協働を通したイノベーション共創戦略は「17.パートナーシップで目標を達成しよう」に密接に同期しております。今後も、これらのテーマにおける具体的な成果の創出に努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは次の通りであります。
 

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) ガバナンス

当社においては、サステナビリティ関連のリスク及び機会を管理・モニタリングするためのガバナンスに関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様となります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載の通りであります。

 

(2) 戦略

 ①サステナビリティに関する戦略

当社は、「すべての産業の新たな姿をつくる。」、「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに、アカデミアから発信される最先端のAI・機械学習技術を幅広い産業に適応・応用し、企業のコア業務へ導入していくことで、新商品・サービスの開発や事業モデルの変革、生産性の抜本的な向上に資するカスタムAIソリューションを提供しております。こうした製造・人材・ヘルスケア・建設・通信・IT・金融・小売等の多様な業界の顧客企業に対して、個社及び産業のイノベーションに資するようなAIソリューションを提供することは、SDGs(持続可能な開発目標)における目標9. 「産業と技術革新の基盤をつくろう」と整合しております。併せて、当社の提供するカスタムAIを通じた幅広い業界の企業における抜本的な生産性向上への貢献は、SDGsにおける目標8.「働きがいも経済成長も」とも整合しております。従いまして、当社の事業拡大自体が持続可能な社会を実現するための一手段となり、サステナビリティへの貢献に資するものと認識しております。

また、当社は産業のイノベーションを顧客と共に共創していく上で最も重要な経営資源を人材と捉えております。従い、多様性に富んだ優秀な人材を積極的に採用・育成し、その能力を最大限発揮できる環境の整備を継続して進めてまいります。

 

 ②人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社における人材の多様性の確保を含む人材育成及び社内環境整備に関する方針は以下のとおりです。

(a) 人材育成方針
  当社事業の推進にあたっては、データサイエンスや機械学習などの最先端の技術に加えて、顧客企業のビジネス面も熟知した優秀な人材の確保と育成が課題となります。優秀な人材を積極的に登用するため、社員紹介などの促進、優秀な人材が報われる高い給与水準、資格取得や学術支援制度の充実化を図っております。今後とも性別、国籍、年齢等の属性に制限を設けず、多様な人材の確保、育成を図る方針であります。

 

(b) 社内環境整備方針

従業員は事業の成長を支える重要な存在であるという認識の下、多様な人材が仕事と家庭を両立し、最大限能力を発揮できる職場環境や企業風土の醸成に取り組んでおります。具体的には、リモートワークを取り入れた勤務制度を採用し、個々人の裁量を拡大し、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能としております。併せて、個々人の働き方やキャリア形成の多様化のニーズを捉え、副業も一定の前提の下で認めております。

 

(3) リスク管理

 当社は、コンプライアンス遵守及びリスク管理の強化を目的として、経営会議において、月次でリスク及びコンプライアンスに関する事項を議題としており、サステナビリティを含む、経営上のリスクやその他リスク管理の観点における重要な事項について審議を行い、必要に応じてその結果を取締役会に報告する体制を構築しております。

また、必要に応じて弁護士、公認会計士、弁理士、税理士、社会保険労務士等の外部専門家からアドバイスを受けられる体制を構築するとともに、内部監査室等による監査を通じて、潜在的リスクの早期発見に努めております。

 

(4) 指標及び目標

当社は、小規模な組織体制であるため、重要性も加味した上で、年齢、国籍、性別等の区分で管理職の構成割合や人数の目標値等は定めておりません。但し、当社の掲げるミッションを実現し、事業成長を加速させるためには、様々な局面において多様な意見を反映することが重要であるという認識の下、多様な背景や経験をもつ人材の登用・管理職登用を推進しております。

当社の競争優位性の源泉は人材であることから、今後上記「人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」に記載した方針に基づき、人材の育成・強化に取組み、成長戦略の実現及び企業価値向上に繋げてまいりますが、具体的な指標及び目標については今後策定する方針です。

 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 外部要因、競合について

 ①  AIソリューション市場について

    発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高

  当社が事業を展開するAIソリューション関連市場は、AI技術の急速な発展と、デジタル技術を用いた企業経営の効率化(DX)に関するニーズの増大により、今後も拡大すると予測しております。当社は市場の変化を早期に捉え、新たな顧客、市場を開拓するなどの対応策を講じる方針でありますが、マクロ経済の影響によりAI技術に関する投資が縮小し、AIソリューション関連市場が縮小した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 技術革新について

  発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社が事業を展開するAIソリューション関連業界においては、技術革新のスピードが急速に進んでおります。当社はそうした技術の進展に対応できるようにするために多様な人材を確保するとともに、開発体制の構築に努めておりますが、今後において予想以上の技術革新や、非連続な代替技術の出現により、当社が十分な技術的優位性を維持出来ない場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③ 競合の動向

  発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社の展開するAIソリューション事業においては、競合他社が全世界に存在しているほか、新規参入事業者も多く見受けられ、今後も他業種大手企業から大学発ベンチャーに至るまで、様々な事業者が新規に参入する可能性があります。これらの競合他社や新規参入事業者は、その資金力、技術開発力、価格競争力、顧客基盤、営業力、ブランド、知名度などにおいて、当社よりも優れている場合があり、その優位性を活用してサービスの開発に取り組んだ場合、当社が競争で劣勢に立たされ、当社の期待通りに顧客を獲得・維持できないことも考えられます。また、AI関連市場はいまだ未成熟であるため、競合他社の動向等により、市場構造が急激に変化する可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

当社としましては、これまで培ってきたAIソリューションの知見を活かして、顧客のニーズに合致したAIソリューションの提供を継続していく所存ではありますが、事業環境の変化、とりわけ競合の状況によっては、価格競争激化による利益率の悪化により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 当社事業について

 ① 特定の取引先に対する売上比率について

  発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

当社は国内の大手企業と業務提携等を通じて事業全般を支援する大規模な取り組みを進めており、上位取引先の売上規模が大きくなる傾向にあります。実際、2023年9月期における売上比率は、上位取引先2社で全体の37.8%を占めております。上位取引先との取引を維持するため、クオリティコントロール体制の構築による顧客との信頼関係強化に努めており、また新規取引先の開拓により上位取引先への売上比率を低下させてきております。しかしながら、予期せぬ要因により売上比率上位顧客との取引規模が急激に縮小した場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 顧客との取引継続について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は顧客の新規事業開発、研究開発といったテーマへのAIソリューションの提供に注力して営業活動を展開しております。当該領域は中長期の関係性が構築できることが期待されるものの、顧客の事業環境、経営課題における優先順位の低下といった当社ではコントロール困難な要因により、見込んでいたプロジェクトの失注、規模の縮小といった事象の発生するリスクがあります。影響を最小限にすべく、顧客との連携強化に努めて参りますが、早期に情報入手ができなかったことにより十分なリカバリー策が取れなかった場合など、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ プロジェクトの採算管理について

発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社のプロジェクトについては、顧客への提案段階でプロジェクト期間における適切な工数を予測し、予測工数に見合う見積金額を算定しており採算管理に努めております。しかし、提案段階で想定できなかった事象の発生によるプロジェクトの採算悪化や顧客との関係性の悪化により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 特定の委託先への依存について

  発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:低

当社は限定的であるものの一部のプロジェクトにおいて、業務委託先への発注を行なっております。新たな委託先の開拓や内製化のための人材育成に努めており、特定の委託先への依存度は低くなっているものの、委託業務の内容については直ちに内製化することが困難なものもあり、予期せぬ要因により、委託先との取引継続が困難になった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 運営体制について

 ① 特定の人物への依存について

  発生可能性:低、発生する可能性のある時期:20年程度、影響度:高

当社代表取締役CEO椎橋徹夫及び代表取締役COO兼CTO藤原弘将は、経営戦略、事業戦略等、当社の業務に関して専門的な知識・技術を有し、重要な役割を果たしております。当社では取締役会等において役員及び社員への情報共有や権限移譲を進めるなど組織体制の強化を図りながら、経営体制の整備を進めており、経営に対するリスクを最小限にしております。しかしながら、両名が当社を退職した場合、当社の事業、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 人材の確保及び育成について

  発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社は、事業の拡大に伴い、AI技術領域の開発、実装を行う機械学習エンジニア及び顧客のAI活用、DX推進を促すソリューションデザイナについて、優秀な人材の積極的な獲得のための採用施策を展開するとともに、育成及び人事評価制度の充実により離職率の抑制に努めております。しかしながら、事業規模の拡大に応じた当社内における人材育成、外部からの優秀な人材採用等が計画どおりに進まず、必要な人材を確保することができない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) システムのリスクについて

 ① 情報管理

  発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高

当社が顧客企業に対してソリューションを提供する際に、顧客側で保有している機密情報や個人情報が含まれる場合があります。これらの情報の取扱については、情報セキュリティマネジメント(ISMS)認証を取得し、情報管理に関する諸規定の整備及び適切な運用に努めております。しかしながら、人的オペレーションのミス及びその他の予期せぬ要因により情報漏洩が発生した場合、損害賠償責任等による費用負担を負う可能性や顧客からの信用を失うことにより取引関係が悪化する可能性があり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② システム障害

  発生可能性:中、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社が顧客企業へのサービス提供の際に使用する、機械学習モデルを学習するための計算機基盤環境やコミュニケーションツールといった社内インフラ環境は、インターネット通信網に依存しております。したがって、自然災害や事故によりインターネット通信網が切断された場合には、一部事業および業務の遂行が困難になることがあります。また、サイバー攻撃等による当社の社内インフラ環境への攻撃を受けた場合には、システム障害により事業および業務遂行が困難になることや、事業上の重要機密が漏洩する可能性があります。当該リスクに対応するため、サーバルームの分散化やクラウドサービスの利用といった対策を施しています。これまで当社グループにおいて、そのような事象は発生しておりませんが、今後このような事象が発生した場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 法的規制について

 ① 法的規制

   発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

AI技術については、差別、プライバシー侵害、軍事利用などの倫理的な課題が指摘されており、欧米ではAI技術の開発、利用を規制する法案の議論が進められております。現時点では、倫理的な側面からAI技術の開発や利用を規制する法令はありませんが、今後、そのような法令等が制定された場合、当社の事業が制約され、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 訴訟リスク

   発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

現時点において、当社が当事者として提起されている訴訟はありません。しかしながら、当社又は当社役職員を当事者とした訴訟が発生した場合には、その訴訟の内容や進行状況、訴訟の結果により発生した金銭的負担によっては、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ③ 知的財産権管理におけるリスク

   発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中

当社による第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、可能な範囲で調査を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに他社の知的財産権を侵害してしまう可能性は否定できません。その場合、ロイヤリティの支払いや損害賠償請求等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) その他のリスクについて

 ① 天災、災害、テロ活動、戦争、感染症の流行等の発生や停電による影響について

   発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:高

地震や天災といった災害、国内外におけるテロ活動、戦争の発生、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症等に代表される感染症の流行等の予期せぬ事態により、当社の事業活動が影響を受ける可能性があります。また、全国的、地域的な停電や入居しているビルの事情によって電力供給が十分得られなかった場合、当社の事業活動が停止し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 ② 配当政策

   発生可能性:中、発生する可能性のある時期:5年以内、影響度:中

当社は株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。しかしながら、当社は設立後間も無く、成長過程にあると考えており、長期的展望として、内部留保の充実を図り、将来の事業展開及び経営体質の強化のための投資等に充当し、より一層の事業拡大を目指すことが、株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び当社を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 

 ③ 資金使途

   発生可能性:中、発生する可能性のある時期:5年以内、影響度:中

 上場時に実施する公募増資による調達資金につきましては、採用費、マーケティング費用、設備投資及び借入金の返済に充当する予定であります。
 しかしながら、急激に変化する事業環境により柔軟に対応するため、現時点における計画以外の使途にも充当される可能性があります。また、計画に沿って資金を使用した場合でも想定通りの投資効果を上げられない場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
 なお、調達資金の使途計画につき重要な変更が生じた場合には、速やかに開示を行う方針です。
 

 ④ 設立からの経過年数

   発生可能性:中、発生する可能性のある時期:5年以内、影響度:中

当社は2016年4月に設立されたスタート・アップ企業となります。当社は現在成長過程にあると認識しており、今後も積極的な成長投資が必要となるため、その投資のタイミングや成果によっては一時的に経営成績が悪化する可能性があります。また当社はIR・広報活動などを通じて経営状態を積極的に開示していく方針でありますが、当社の過年度の経営成績は四半期ごとの季節変動性の把握や事業年度ごとの業績比較を行うための十分な分析材料とはならず、このため今後の業績等の将来的な予測における基礎情報としては不十分である可能性があります。

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

① 経営成績の状況

当社は、「すべての産業の新たな姿をつくる。」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに掲げ、各業界の代表的な企業との協働を通し、企業や産業、そして社会の長期的・本質的な構造転換に貢献することを目指しております。

当事業年度における我が国の経済環境は、新型コロナウィルスの対策進展や行動制限の緩和を通じ、景気は堅調に推移している一方で、ロシアのウクライナ侵攻の長期化や国内外マクロ経済におけるインフレ・金融引き締めの傾向が見られつつあり、先行き不透明な状況が続いております。

このような中、当社が属するAIソリューション市場においては、「Chat GPT」をはじめとする大規模言語モデルの技術革新の進捗などの結果、企業の競争力の強化や人材不足への対応から幅広い産業で積極的な投資が行われており、事業環境は堅調に推移しております。

これらの結果、当事業年度における経営成績は以下の通りとなりました。

(売上高)

売上高は、人員増加に伴う営業活動強化の結果、新規顧客獲得件数は11件に達し、当事業年度における売上高は1,369,186千円(前期比+86.8%)となり、前事業年度から636,137千円増加いたしました。

(売上原価、売上総利益)

売上原価は、481,070千円(前期比+121.2%)となりました。主な内訳は、労務費及び業務委託料であります。

以上の結果、売上総利益は888,115千円(前期比+72.2%)となりました。 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は681,844千円(前期比+19.5%)となりました。これは主に、人件費及び先行投資としての採用費用、積極的なマーケティング活動に伴う広告宣伝費であります。

以上の結果、営業利益は206,271千円(前年度は55,043千円の営業損失)となりました。

(営業外損益、経常利益)

経常損益については、営業外収益として302千円(前期比+90.6%)、営業外費用として主に上場関連費用の計上があったことにより12,623千円(前年度は496千円)計上し、193,950千円の利益(前年度は55,381千円の損失)となりました。

(特別損益、当期純利益)

当事業年度における特別損益の計上はありませんでした(前年度は295千円の特別損失)。

以上の結果、当事業年度の税引前当期純利益は193,950千円(前年度は55,676千円の税引前当期純損失)となり、法人税等を54,397千円計上したことにより、当期純利益は139,552千円(前年度は39,846千円の当期純損失)となりました。

 

② 財政状況

(資産)

当事業年度における資産合計は、2,490,752千円となり、前事業年度末より1,171,185千円増加しました。流動資産は2,414,933千円となり、固定資産は75,819千円となりました。流動資産の主な内訳は、現金及び預金1,943,577千円、売掛金及び契約資産461,062千円であり、前事業年度末からの主な変動要因は、当社株式上場に伴う株式の発行等による現金及び預金増加、売上高増加に伴う売掛金及び契約資産の増加であります。固定資産の内訳は有形固定資産41,238千円、投資その他の資産34,580千円であり、前事業年度末から重要な変動はありません。

(負債)

当事業年度における負債合計は、242,484千円となり、前事業年度末より92,603千円増加しました。流動負債は242,484千円となり、固定負債の計上はなくなりました。流動負債の主な内訳は、未払費用64,377千円、未払消費税等59,629千円、未払法人税等56,340千円であり、前事業年度末からの主な変動要因は、従業員が増加したことによる人件費関連の未払費用の増加、売上高増加による未払消費税等の増加、税引前当期純利益に伴う未払法人税等の増加であります。固定負債は、長期借入金を全額返済したことより、当事業年度末の残高はなくなっております。

(純資産)

当事業年度末における純資産合計は、2,248,267千円となり、前事業年度末より1,078,581千円増加しました。主な内訳は、資本金1,004,513千円、資本剰余金994,513千円、利益剰余金248,924千円であり、前事業年度末からの主な変動要因は、当社株式上場に伴う株式の発行等による資本金及び資本準備金の増加、当期純利益の計上に伴う利益剰余金の増加であります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、主に当社株式上場に伴う株式の発行による資金の払込により、前事業年度末と比べ977,799千円増加し、1,943,577千円となりました。当事業年度における各キャッシュフローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は116,534千円となりました(前事業年度は182,209千円の支出)。これは主に税引前当期純利益193,950千円の計上、未払消費税等の増減額59,629千円、未払金及び未払費用の増減額27,177千円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は15,464千円となりました(前事業年度は54,495千円の支出)。これは、有形固定資産の取得による支出によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果調達した資金は876,729千円となりました(前事業年度は987,723千円の収入)。これは、長期借入金の返済による支出62,300千円、株式の発行による収入939,029千円によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の状況

a. 生産実績

 当社が提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b. 受注実績

 当社が提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c. 販売実績

  当事業年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前期比(%)

カスタムAIソリューション事業

1,369,186

86.8

 

 

 

主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

第7期事業年度

(自  2021年10月1日

至  2022年9月30日)

第8期事業年度

(自  2022年10月1日

至  2023年9月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

エン・ジャパン株式会社

98,015

13.4

287,064

21.0

株式会社SCREENアドバンストシステムソリューションズ

178,750

24.4

229,894

16.8

味の素株式会社

88,060

12.0

-

-

 

(注)第7期事業年度及び第8期事業年度のいずれかが10%未満の場合、記載を省略し、「-」表示しています。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

この財務諸表の作成にあたっては、経営者の会計方針の選択や適用、資産・負債や収益・費用の計上に際し、合

理的な基準による見積りが含まれております。これらの見積りについては、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っていますが、見積りは不確実性を伴うため、実際の結果はこれらの見積りによる数値と異なる場合があります。詳細は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」をご参照ください。なお、当社の財務諸表で採用する重要となる会計方針につきましては「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載のとおりであります。

会計上の見積りのうち、特に重要なものは次のとおりであります。

(一定の期間にわたり履行義務を充足し認識する収益)

当社は主として契約等に基づき、顧客が要求するカスタムAIの開発を、定められた期間に応じて役務の提供等を通じた又は一定の成果物のサービスの提供を行っております。当該契約に基づき一定の期間にわたり履行義務の充足が認められる場合には、契約金額に対応して発生すると見込まれる見積総原価に対する発生原価の割合(インプット法)により算出した進捗率により売上高を計上しております。進捗率の算定は見積総原価に影響を受けるため、その見積りの前提とした条件や仮定に変更が生じた場合、売上高の計上額に影響する可能性があります。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

当社は、「すべての産業の新たな姿をつくる。」「テクノロジーとビジネスを、つなぐ。」をミッションに掲げ、各業界の代表的な企業との協働を通し、企業や産業、そして社会の長期的・本質的な構造転換に貢献することを目指しております。当該ミッションを達成するため、顧客基盤を「広げ」て「深め」ながら、顧客に提供する付加価値を最大化するために継続的にモニタリングするKPIを、年間売上成長率、売上総利益率、年間新規顧客獲得数及び継続顧客売上成長率としており、その推移は以下の通りです。
 

 

2022年9月

2023年9月

年間売上成長率

11.6%

86.8%

売上総利益率

70.3%

64.9%

年間新規顧客獲得数

15件

11件

継続顧客売上成長率

△32.9%

39.0%

 

(注)年間売上成長率及び継続顧客売上成長率は四半期ごとの算定は行っておりません。

 
 年間売上高成長率は産業へのインパクトの総量とその成長性をモニタリングするため、重要な経営指標と位置付けております。2023年9月期につきましては、新規顧客獲得数が11件と順調に推移したことに加え、継続顧客売上成長率が39.0%となったため、新規顧客による売上増加と既存顧客による売上増加がおおよそ均等に売上増加に寄与し、売上高成長率は86.8%となり、2022年9月期を大きく上回る結果になっております。
 売上総利益率はクライアントに提供する付加価値量をモニタリングするため重要な経営指標と位置付けております。2023年9月期においては、AIに関わらないシステム開発業務など外注が必要なプロジェクトの比率が高かったことにより64.9%と2022年9月期と比べて若干低い水準になっております。
 年間新規顧客獲得数は、顧客基盤を広げる活動をモニタリングするために重要な指標と位置付けております。人員増加に伴い、営業を担う体制の強化が順調に進捗した結果、2023年9月期は11件の新規顧客を獲得いたしました。
 継続顧客売上成長率は、前事業年度から継続して取引がある顧客に対する売上高の成長率として算定しており、顧客基盤を深める活動をモニタリングするために重要な指標と位置付けております。既存プロジェクトの継続や、既存顧客への異なるテーマの提案活動が奏功した結果、既存顧客売上成長率は39.0%となり、前事業年度を大幅に上回る結果となりました。

 

 

 

③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の資本の財源及び資金の流動性については、当社の運転資金需要のうち主なものは、事業拡大のための採用活動費及び新規顧客獲得のための広告宣伝費であります。これらの資金需要に対しては、営業キャッシュフロー、借入金及びびエクイティファイナンスで調達していくことを基本方針としております。

なお、現金及び現金同等物の残高は、2023年9月末において1,943,577千円であり、当社の事業を推進していく上で十分な流動性を確保していると考えております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

  該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社は、カスタムAIソリューション事業の単一セグメントとしており、汎用的なパッケージ商品としてではなく、顧客ごとにカスタマイズ開発する、カスタムAIを標榜しており、顧客ごとに最適なソリューションを提供すべく研究開発活動に取り組んでおります。研究開発活動は、エンジニアリング部のエンジニアが、研究テーマ毎にプロジェクトチームを組成し実施しております。なお、当社はAIソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの開示は該当ありません。

 

当事業年度においては、Rustベースの深層強化学習フレームワーク『Border』の機能拡張及び大規模言語モデルのクライアントプロジェクトでの活用のためのフレームワーク開発を実施しました。当事業年度における研究開発費の総額は10,817千円となっております。