第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、2020年8月に、環境変化に伴いこれまでの当社単体の経営理念を再定義し、「労働格差をなくし、生き甲斐が持てる職場を創出することで、世界の人々の人生を豊かにする。」とのグループ経営理念を掲げました。

世の中の急激なグローバル化に伴い、人材サービス企業の果たす社会的役割を再考し、当社グループの事業活動が広く社会に還元できる仕組みを追求してまいります。

また、当社グループは、成長の持続可能性を重視しております。SDGs経営に向けたサステナビリティ方針として、世界の様々な人々の「就業機会」と「教育機会」の創造を事業を通して実現し、社会課題の解決と事業の成長、ステークホルダーへの貢献に、持続的に取り組んでまいります。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、利益率の改善及び利益成長に軸足を移し、事業の選択と集中によるグループ再編や、スケールメリットに加えてデジタルテクノロジーを活用した販管効率化を加速させ、収益性向上を追求することにより、経営効率を高めてまいります。具体的には、中期的経営目標として、2025年度において営業利益率5%超を掲げております。連結売上収益は、2024年度8,475億円、2025年度9,455億円、連結営業利益は、2024年度390億円(営業利益率4.6%)、2025年度515億円(同5.4%)を計画しております。

また、当社グループでは、これまでのゼロ金利環境下とは異なる財務戦略に転換し、攻守にバランスの取れた財務体質を実現することにより企業価値向上を図ってまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社は、2023年2月14日に、2023年12月期から2025年12月期までの3か年の新中期経営計画「VISION2025:Building a New Stage」を策定いたしました。攻守にバランスの取れた強靭な財務体質や、社員が安心していきいきと働ける内部統制・ガバナンス体制を構築した上で、企業価値向上を追求してまいります。重点施策といたしまして、以下を掲げております。

1.財務体質の改善による経営基盤の強化

・ゼロ金利環境下とは異なる財務戦略に転換し、2025年度までに社債及び借入金を当期利益の3倍以内に抑える。

2.グループ再編によるグローバル内部統制の強化と効率化による利益率向上

・連結子会社の統廃合を含めたグループ再編を実行し、ガバナンスの強化と事業効率化による利益率の向上を実現する。

3.ニーズの変化を捉えたオーガニック成長の強化

・ポストコロナ時代の人材ニーズの変化を機動的に捉え、既存ビジネスの持続的な成長を実現する。

4.販管効率の向上につながる最新テクノロジーを組み入れた営業・管理体制の構築

・デジタルテクノロジーを活用しながら、業界の慣習に囚われない取組をグループ横断的に実行し、販管効率を向上させる。

当社グループは、近年多くのM&Aを手掛けてまいりましたが、新中期経営計画「VISION2025:Building a New Stage」では、これまでの業績平準化による成長基盤の強靭化戦略により成長を持続させる経営資源を確保できたことに加えてゼロ金利時代から金融政策タイト化への移行を踏まえ、M&A戦略を転換します。今後は新規のM&A投資を抑制して財務体質の改善に重きを置き、オーガニック成長に注力してまいります。加えて、「(2)目標とする経営指標」記載の財務目標をはじめ、軽量経営の強みをいかして安定的なキャッシュ創出を図ります。

当社グループは、リーマンショック以降、その時々の環境変化に合わせた的確なビジョン策定と具体的戦略により、事業ポートフォリオを変化させながら持続的な事業拡大を実現してまいりました。新中期経営計画期間においても、M&A戦略の負の部分であった営業利益率の停滞や有利子負債の増加などの経営課題の解消に取り組むほか、経営環境の変化に機動的かつ柔軟に対応してビジネスチャンスを切り拓き、更なる成長、ひいては企業価値の最大化を目指してまいります。

SDGs経営を念頭においた中長期的なマテリアリティ(重要課題)及びKPIといたしまして、以下を掲げております。

1.「就業機会の提供」

・日本の労働力減少という社会問題の解決に資する在留外国人の就労サポート人数を、2024年までに30万人、2030年までに50万人に拡大する。

・教育とテクノロジーの力を駆使して、2030年までに3万人を労働集約セクターからスペシャリスト人材へのキャリアチェンジを実現する。

2.「質の高い教育の提供」

・キャリアアップに向けた質の高い教育機会の提供を目的とし、グローバルに展開する研修プログラムの延べ利用人数を2030年度までに30万人とし、生産的な雇用への結びつきや働きがいへ貢献する。

3.「多様性の尊重とダイバーシティ経営の実現」

・女性が活躍する社会の実現に向けてグループとしてその推進を行い、当社の取締役及び執行役に占める女性の比率を2030年度までに30%にまで高める。

4.「脱炭素社会の実現に向けた取組強化」

・2025年度までに国内グループの営業車両の全てを次世代自動車(電気自動車・ハイブリッド車等)に、2030年までに海外を含むグループ全体の同比率を70%とする。

5.「産業全体の生産性の向上」

・グローバルかつ幅広い産業で蓄積した生産技術と先端的なデジタル技術を活用し、産業生産性を改善させるスペシャリスト人材を2030年度までに10万人育成し、世界の生産性を向上させる。

 

当社は、2023年12月8日付「MBOの実施予定に関する賛同の意見表明及び応募の推奨に関するお知らせ」(以下「2023年12月8日付プレスリリース」といいます。)において公表しておりました、いわゆるマネジメント・バイアウト(MBO)(注)の一環として行われる株式会社BCJ-78(以下「公開買付者」といいます。)による当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)に対する公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)に関して、賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けに応募することを推奨する旨の決議をいたしました。

なお、当社の上記取締役会決議は、公開買付者が本公開買付け及びその後の一連の手続を経て当社を非公開化することを企図していること並びに当社株式が上場廃止となる予定であることを前提として行われたものであります。

(注)「マネジメント・バイアウト(MBO)」とは、一般に、買収対象会社の経営陣が、買収資金の全部又は一部を出資して、買収対象会社の事業の継続を前提として買収対象会社の株式を取得する取引をいいます。

 

当社株式を非公開化することで、株式市場からの短期的な収益改善圧力に左右されることなく、中長期的な観点から、①オーガニック成長の加速、②グローバル規模での人材流動ネットワークの確立、③グローバルにおける内部統制の強化を通じた経営の効率化、④M&A後のPMI加速とシナジーの最大化等による企業価値の最大化を実現するための施策を支援していく予定とのことです。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

今後の世界経済の見通しにつきましては、インフレ圧力の高まりは2022年後半をピークに緩やかな落ち着きを見せたものの、コロナ禍以前と比べ依然として高く、また、ウクライナ情勢の長期化に加えて、中東地域も不安定な状況がさらに悪化したことによる地政学的リスクの高まりや、世界的な原燃料費の高騰など、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生が続き、これらのリスク増大によって世界経済は、不透明感がなお色濃い状況であります。

当社グループでは、このように先行きが不透明な事業環境にあっても、持続的成長を実現していくために、以下を対処すべき主要課題と捉えております。

 

① ガバナンス体制の強化

グローバルに事業拡大している当社及び当社子会社では、買収した会社も含めて健全な経営を行う必要があります。これを継続して実現するため、各国の法令を尊重しつつも、グローバル経営の視点に立った同一目標・同一管理手法を確立し、加えて、内部統制システムを全社に適用し、当社グループ全体のガバナンス強化及びコンプライアンス体制の拡充を図ってまいります。

 

当社は、2023年12月20日に株式会社東京証券取引所より公表措置の通知を受け、2024年1月15日に改善状況報告書を提出しております。ステークホルダーの皆さまに、多大なるご心配とご迷惑をおかけしておりますことを、改めて深くお詫び申し上げます。当社では、当社及び当社子会社における一連の不適切な会計処理の問題(以下「2022年訂正事案」といいます。)を受けて当社グループとして策定した再発防止策の実行による内部統制の整備・運用を図るとともに、内部管理体制等の強化に努めてまいりました。その結果、当社及び国内子会社において、発生原因となった企業風土改革・従業員のコンプライアンス意識の醸成・会計リテラシー向上について一定の成果が現れてきたものと考えておりました。一方で、一部の在外子会社においては、在外子会社側での管理体制の脆弱性やコンプライアンス意識の不徹底が存在し、当社の全社的内部統制として、在外子会社に対するモニタリングが不十分であり、内部統制に重要な不備があると認識しておりました。

そのような状況下、コーポレート・ガバナンスの更なる強化を目的として、経営の監督機能と執行機能の分離をより一層明確にし、経営監督機能を強化しながら迅速・果断な意思決定を行うために、指名委員会等設置会社へ移行いたしました。

しかしながら、当社及び国内子会社において、雇用調整助成金の不正受給の疑義及び国内子会社における一部の取引先との取引プロセスに疑義等がある旨の問題が発生してしまいました。これに伴い、外部調査委員会からは、2022年訂正事案を受けた再発防止策が形骸化している旨が指摘され、また、再発防止策に対する真摯な取組及びその理解・浸透の徹底、稟議手続等における実効的な牽制機能の実現、及びコンプライアンス意識の再徹底が提言されました。これを受け、新たな再発防止策を決議するに至り、その内容は、2022年1月に公表した再発防止策を踏襲しつつ、再発防止策をどのように徹底していくかを修正の主な内容としております。また、再発防止策を徹底することのできる新たな企業風土の醸成・浸透を進めるため、社外取締役をトップとしたOSグループガバナンス委員会を設置し、再発防止策の検証と実行を担うことといたしました。

 

(再発防止策)

・企業風土改革

・コンプライアンス意識の一層の醸成、再発防止策の徹底

・経営体制の強化

・コーポレート・ガバナンス体制・組織体制の再構築

・内部統制部門の強化

・内部通報制度の見直し

・会計処理に係る社内ルールや経理会計システムの見直し

・実現可能な事業計画・予算の策定

・取引先の限定

このような事態を二度と繰り返さないためにも、これまで実施してきた再発防止の取組を今後も全社一丸となって継続的に実行・改善し、上場企業にふさわしいガバナンス体制とコンプライアンス体制を維持することで、会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に励み、株主、取引先、地域社会、従業員等を含むすべてのステークホルダーの皆さまからの更なる信頼回復に努めてまいる所存です。

 

② SDGs経営の強化

当社グループは、サステナビリティ方針に基づき、社会と企業の持続可能な発展に貢献できるよう取り組んでおります。この活動をさらに強化し、5つのマテリアリティ(重要課題)に沿ってKPIを定めており、事業を通じて社会問題の解決に寄与しながらSDGsの目標達成に貢献してまいります。

 

③ 人材育成による企業体質の強化

人材を活用したビジネスを行う当社グループは、人材を最も重要な資産として捉えております。人材を適正に扱うため、また人材を扱った各種サービスを適正に提供するための基礎的な知識・能力や、生産現場における労務管理能力及び生産管理能力を向上するための教育・育成を徹底しております。併せて高度・多様化し続ける顧客ニーズに迅速、柔軟かつ的確に対応するためにも、優秀な人材確保及び人材育成を重要課題として取り組んでおります。

今後も、世界で通用する規律・遵法意識を兼ね備え、多様な知識と経験を有する有能な人材を、国籍や性別を問わず、グローバルに採用・教育すること通じて、企業体質の強化に取り組んでまいります。

 

 

④ 変動の激しい事業を補完する体制の構築

製造系アウトソーシング事業は、生産変動の激しい量産工程に対する人材派遣や業務請負を行っている性質上、リーマンショックのような大きな景気後退時には、急激かつ大量の雇用解約が発生するのに対し、景気回復時の増産時には採用が追い付かず、往時の業績に戻ることのできない同業者が散見され、機会損失が非常に大きな問題となっています。

このような状況に対し、当社グループでは、急な大型減産でもグループ全体では黒字を維持しながら雇用解約せずに人材を確保しておき、その後の増産に即時配属して業績を回復できる体制が必要と考えます。そのために製造とは異なるサイクルの分野や景気の影響を受けにくい分野の事業拡大を推進し、製造系アウトソーシング事業の売上構成比を相対的に抑制しながら、業績平準化による成長基盤の強靭化を目指してまいります。

 

⑤ 成長機会を逃がさない基盤構築

日本国内の人口は減少傾向にあるため人材市場は限定的となり、今後の大きな成長は望めませんが、世界全体では人口は増加傾向にあり、今後30億人増加するともいわれております。当社グループの事業の多くは稼働している人員数に業績が連動しているため、人口が増加し余剰感のある国から不足している国へ、グローバルに人材を流動化させる体制を構築し、この成長ポテンシャル獲得に取り組んでまいります。併せて、人材流動化スキームで移動する労働者をサポートするための事業にも取り組み、雇用を伴わない新たな事業の柱としての確立・発展を目指します。グローバル人材流動ネットワークを確立した暁には、世界一の人材サービス企業への道も拓けると考えており、体制構築に向けた成長投資を推進してまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ全般

① ガバナンス

 当社グループは、企業市民として果たすべく社会的使命を「経営理念」として掲げ、常に変化する経営環境の下、企業としての成長と中長期的な企業価値の向上に努めるにあたり、株主、取引先、地域社会、従業員等を含むステークホルダーとの堅強な信頼関係の持続的な構築に向けて、自律機能、倫理性の高いコーポレート・ガバナンスを推進しております。

 また、「サステナビリティ基本方針」に基づき、2021年度に行ったSDGs宣言においてマテリアリティ(重要課題)の特定とKPIを定めるとともに、執行役経営管理本部長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置しております。サステナビリティ委員会は、SDGsの目標達成に向けた取組及びESG経営の高度化を含むサステナビリティの視点を踏まえた経営を、グループ全社で横断的に推進することを目的とし、当社グループのサステナビリティ方針・戦略、重要課題を含む中長期的テーマ及び方向性の審議、KPI進捗のモニタリング等を行っております。

 

ⅰ)ガバナンス体制について

 当社は、これまで社会環境の変化や経営状況に合わせてガバナンス体制を強化してまいりました。2023年3月には、監査等委員会設置会社から指名委員会等設置会社へ移行し、取締役会の監督機能の更なる強化、経営の公正性、透明性の確保と効率性の向上に努めております。

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ⅱ)サステナビリティ委員会の主な活動

(a)ESG関連方針の策定

 「贈収賄・腐敗防止方針」「人権方針」等、7つの方針を策定。各種方針や活動内容等は、当社ホームページのサステナビリティサイトに公開しております。

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(b)マテリアリティ進捗管理

 2021年に策定した5つのマテリアリティについて、グループ各社に周知するとともに、進捗管理を実施。今後は、グループ各社における管理体制強化に取組んでおります。

(c)社内浸透活動

 グループ全社、従業員一人ひとりにサステナビリティ意識を醸成することを目的に「SDGsハンドブック」を配布。また、国内製造系及び国内サービス系のグループ会社全社員に7ヵ国語で理解度テストを実施いたしました。

 

② 戦略

 世界の様々な国や地域の人と関わりながら社会経済活動を行い、人材サービス事業をグローバルで展開する当社グループは、サステナビリティ戦略と事業戦略の連動をより一層促進し、派遣業界の新たな存在意義を創出することにより、当社グループと社会の持続的な成長の実現を目指しております。

 

ⅰ)当社グループの価値創造プロセスにおける事業戦略とサステナビリティ戦略

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ⅱ)サステナビリティについての取組

 当社は、2021年をサステナビリティ元年と位置付け、同年2月に『SDGs宣言』を行い、マテリアリティ(重要課題)として、「就業機会の提供」、「質の高い教育の提供」、「多様性の尊重とダイバーシティ経営の実現」、「脱炭素社会の実現に向けた取組強化」、「産業全体の生産性の向上」の5つを特定するとともにKPIを策定、公表いたしました。さらに、サステナビリティに関連する取組の実効性を高めるべく、「国連グローバル・コンパクト」に加盟したほか、「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」、「2030年30%へのチャレンジ」にも加入しました。

 また、管理業務受託事業の中核グループ会社では、外国人の人権・労働問題に取組む一般社団法人ザ・グローバル・アライアンス・フォー・サステイナブル・サプライチェーン(ASSC)の正会員となり、ASSCと国際協力機構(JICA)が推進する責任ある外国人労働者受入れプラットフォーム「JP MIRAI」に加盟するなど、国際的な連携のもと、持続可能な人材の流動化推進にも主体的に取組んでおります。

 なお、気候変動に係るリスク及び当社の事業等への影響については、KPIとして2025年度までに国内グループの営業車両のすべてを次世代自動車とすること、また2030年度までに海外を含むグループ全体の比率を70%とすることを定めており、また、気候変動に係るデータの収集と分析に努め、有意性が認められると判断されたものからTCFDに則した開示を行っております。

 

 イニシアティブ等の詳細については、当社ホームページの「サステナビリティ イニシアティブへの参画」をご参照ください。

 

ⅲ)マテリアリティと進捗

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③ リスク管理

 当社グループは、サステナビリティ経営におけるリスクと事業に関わるリスクを区別することなく、多様なリスクを的確に認識し、リスクマネジメント体制やモニタリングの強化を進めております。

 当社グループにおけるリスク管理の詳細については、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

 「② 戦略」に表形式で記載の指標及び目標並びに実績をご参照ください。

(2)人的資本・多様性

① ガバナンス

 「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

ⅰ)人材育成方針

 持続的な企業価値の向上に向けたサステナビリティ経営の最も重要となる人材の育成においては、以下の人材育成方針を策定し、従業員の成長と組織力の最大化を加速させております。

 

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ⅱ)社内環境整備方針(労働慣行方針)

 当社グループでは、従前より策定しているサステナビリティに関する方針に包含される「労働慣行方針」に基づき、多様性や倫理観、労働条件、身体的及び心理的安全衛生等の環境整備に取組んでおります。

 

1.職場における人材育成及び訓練

 私たちは、従業員のキャリア形成とスキル強化・能力開発を促進するため、各種研修や自己啓発など、成長機会の提供と支援を行います。

2.公平・公正な評価・処遇

 私たちは、公正な評価・処遇を徹底し、多様な人材が公平に活躍できる職場の構築に努めています。

3.適正な労働条件の設定と労働環境の提供

 私たちは、基本的人権と労働条件の向上に配慮し、事業活動を行う各国・地域の労働関係法令に常に準拠します。また、私たちは、以下の項目を遵守及び配慮して適正な労働条件の設定と労働環境の提供を行います。

・労働時間、時間外労働に関する現地法を遵守し、長時間労働の軽減に注力します。

・最低賃金に関する現地法を遵守し、基本的生活にかかる賃金を上回るよう配慮します。

4.ハラスメント等の非人道的な扱いの禁止

 私たちは、暴力行為、各種ハラスメント等の非人道的な扱いを禁止し、安心できる職場環境となるように努めます。また、ハラスメントに関する相談窓口の設置、社内体制を構築します。私たちは、社員によるこれらの非人道的な行為が起こらないよう、社員に対して適切な教育・研修を行います。

5.結社の自由と団体交渉権の尊重

 私たちは、事業活動を行う国もしくは地域の法令を踏まえ、結社の自由と団体交渉権を可能な限り尊重します。

6.社会的弱者の支援

 私たちは、社会的少数者や社会的弱者等の社会的立場の弱い人々に対する雇用の支援を行います。

7.適用範囲

 本方針は、当社グループの役員、勤務するすべての社員(雇用形態を問わない。)に適用されます。

 

 サステナビリティに関する方針等については、当社ホームページの「サステナビリティ 方針一覧」をご参照ください。

 

ⅲ)人材育成及び環境整備等における主な活動

(a)教育体系の策定と研修展開

 当社では、人材育成方針に基づき、体系的な教育研修を実施しております。特にコンプライアンスに関しては、役員・管理職に対する研修を継続的に実施し、コンプライアンスに対する意識・知識の向上を図っており、今後は、全従業員を対象に展開する計画ほか、従業員の役職や業務に応じた知識習得、スキルアップ等の場として活用できるよう、引き続きコンテンツの充実を図ってまいります。

 

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(b)従業員満足度調査の実施とエンゲージメント向上プロジェクトの始動

 当社では、2022年より、ES(Employee Satisfaction:従業員満足度)向上に向け、従業員満足度調査を実施しております。その調査から把握した従業員の意識や課題等の結果から、従業員エンゲージメントを高めるための「エンゲージメント向上プロジェクト」を始動させました。本プロジェクトは、従業員のエンゲージメントを高め、社員と会社の結びつきを強固にし、社員の「愛社精神」や「帰属意識」を高めることで会社業績の向上へ寄与することを目的としています。本プロジェクトでは「活動テーマ」を設定して、テーマごとにタスクフォースを設けて取組んでおります。

2023年度 活動テーマ

1.企業理念の浸透

2.キャリアアップ機会の提供と内容の拡充

3.人事制度の公平性と透明性確保

4.社員教育体系の確立と研修成果の反映

5.2WayCommunication文化の醸成

6.タレントパレットの拡充と人材バンク化の

    整備

7.ワーク・ライフ・バランスの充実と徹底

8.安心・安全・健康施策の充実

 

 この活動に加え、経営陣による営業所現場の巡回及び全営業所従業員との面談を通じ、従業員が仕事の中で真のやり甲斐を見いだして建設的で意欲的に仕事のできる環境づくり、自由闊達な議論ができる風土づくりを促進してまいります。

 

(c)女性活躍推進起点の環境整備

 当社では、女性マネジメント候補の育成及び輩出を見据えて、2018年2月に「女性活躍推進プロジェクト」を発足いたしました。女性が活躍するための意識改革や環境整備に力を入れており、4つの分科会を設け、育児・介護に関する研修や制度周知、意識改革セミナーの実施、グループ会社マネジメント層へのインタビュー動画配信、他部署体験制度の運用等の活動を行っております。これらの活動を通じてジェンダー平等や女性が能力を発揮できる社会づくり、社内改革等、企業価値向上に繋がる取組を進めてまいります。

 

(d)労働安全衛生及び心と身体の健康づくり推進

 当社は、「人間尊重」を基本理念として、従業員が心身共に健康で安全に働ける職場環境の形成を目指しています。様々な国と地域で活躍するすべての従業員が安心・安全で、生き甲斐が持てる職場を創出するため、また、労働に関係する負傷及び疾病を防止するために、一人ひとりが主体性を持ち、安全衛生を最優先する活動に力を入れております。

 また、毎月、具体的なテーマ(たとえば生活習慣病予防や睡眠に関して等)を設けた保健だよりの発行や、定期的に心と身体の健康に関する動画研修を実施しています。特に昨今のテレワーク環境におけるメンタルヘルスケアには注力し、ストレスチェックテストの実施や、電話カウンセリングの相談窓口を設けて、社員の心と体の健康管理の支援体制も拡充してまいります。

 

(e)D&I(Diversity and Inclusion)に根差した雇用の率先

i.外国人の就労サポート

 当社グループでは、日本の労働力減少という社会問題の解決に資する在留外国人の就労サポート人数を、2024年までに30万人、2030年までに50万人に拡大するという目標を掲げ、外国人技能実習制度・特定技能制度に関連する事業を積極的に展開しております。グループ会社の株式会社ORJは、技能実習生・特定技能外国人の受け入れに伴い、採用・労務・福利厚生・安全衛生・通訳などの人事労務の専門的なサポート、行政書類の作成支援やコールセンターでの相談受付、住宅や通信機器の手配など、日本での生活面におけるサポートを行っています。また、現在は技能実習生のみならず、全在留資格の外国人にサービスを広げております。

 

ⅱ.ウクライナ避難民の受け入れ支援

 当社は、ウクライナ避難民の受け入れについての日本政府の発表を受け、当社グループの経営理念に基づく人道支援への取組として、2022年3月に100世帯の避難民の方々を受け入れることを決定いたしました。当社グループであるオランダOTTOグループでは、ウクライナに6拠点を構え約3,000名のウクライナ人スタッフが働いております。当社グループは、技能実習生など、日本で働く外国人向け支援で培ったノウハウを活用し、運営する日本語学校での語学教育や社員寮の提供等の生活インフラ提供に加えて、派遣先企業への協力依頼や雇用支援を行っております。

 

ⅲ.障がい者の雇用支援

 当社グループは、求職活動において障壁となる可能性のある障がい者の方の雇用を特例子会社である株式会社OSBSのほか、特例認定グループ企業において積極的に行っております。

 

③ リスク管理

 「(1)サステナビリティ全般 ③ リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

人材育成方針及び社内環境整備方針に関する指標及び目標並びに実績は次のとおりです。

ⅰ)人材育成方針

スペシャリスト人材の人数

(対象会社の範囲:連結)

 

指標

目標

実績

スペシャリスト人材の人数(名)

2030年度末までに100,000

2022年度 45,421

 

ⅱ)社内環境整備方針

役員総人数に占める女性の比率

(対象会社の範囲:単体)

 

指標

目標

実績

役員総人数に占める女性の比率(%)

2030年度末までに31.8

2022年度 26.7

 

 

(3)気候変動

気候変動につきましては、TCFDフレームワークに準拠して記載しております。

① ガバナンス

 「(1)サステナビリティ全般 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

 当社グループは、気候変動やそれに伴う各国の政策などの影響を受ける可能性が高いため、シナリオ分析を実施し、明確化されたリスク・機会に対し、対応策を検討しました。シナリオ分析はサステナビリティ委員会を中心に、取締役会や各事業本部と連携して実施しました。分析は国内製造系アウトソーシング事業、国内技術系アウトソーシング事業、国内サービス系アウトソーシング事業を対象に、各事業の特性を踏まえて1.5℃/2℃シナリオ、4℃シナリオの2つの温度帯ごとに、当社グループの事業に影響を与える可能性のあるリスク・機会を特定したうえで、一部項目については2030年における財務影響を含め検討しました。検討に際して前提としたそれぞれの温度帯の世界観、及び参照シナリオは下表のとおりです。

 

1.5/2℃

4℃

時間軸

2030年

2030年

世界観

社会全体が脱炭素に向けて変革を遂げ、温度上昇の抑制に成功するシナリオ

経済発展を優先し、世界の温度上昇とその影響が悪化し続けるシナリオ

参照

シナリオ

IEA: NZE, SDS

IPCC: RCP1.9, 2.6, 4.5

IEA: STEPS

IPCC: RCP8.5

 

(シナリオ分析)

シナリオ分析を行った結果、当社グループにおける重要なリスク・機会を下表のとおり特定しました。なお、シナリオ分析に際しては、時間軸を短期(3年)、中期(7年)、長期(22年)に定め、気候変動に伴うリスク(移行リスク・物理的リスク)と機会を1.5℃ /2℃シナリオ及び4℃シナリオを前提に評価しております。

 

 

リスク・機会の分類

内容

事業へのインパクト

財務インパクト※1

発現

時期

対応策

政策・

法規制

カーボンプライシング制度の導入による炭素税負担額の増加

スコープ1・2排出量に対して、課税された場合、自社排出にかかる炭素税負担額が増加する

短期

CO2・温室効果ガス排出管理クラウドサービスを用いて、CO2温室効果ガス排出量の算出・可視化・情報開示を実施するとともに、省エネ・再エネの導入を検討

技術

既存の製品やサービスを排出量の少ないものへの置き換え

低炭素技術や次世代技術領域における技術者派遣やプロジェクト受注の機会の減少に伴い、営業利益が減少する

中期

次世代技術のスキル獲得の強化と顧客の要望に合致する派遣の実施

低排出技術に移行するためのコスト

営業車両をガソリン車から次世代自動車(電気自動車・ハイブリッド車等)に代替することでリース契約料にコストが上乗せされる

中期

イニシャルコストは若干の増額になる一方、燃費向上によるランニングコスト削減により、増額分を相殺できると想定

急性

台風等の極端な気象事象の発生

台風等の災害の激甚化により、事業活動が制限された場合、休業による収益力の低下により営業利益が減少する

長期

BCPを継続的に見直し、改善し、際涯時等における緊急対策本部と指揮命令体制の整備及び、安否確認システムの構築や帰宅支援マップの配布、災害備蓄品の拡充、安否確認訓練等の実施

機会

働き方改革の一環を通じたCO2削減手段として、在宅勤務を推奨することにより通勤時に発生するCO2を削減すると同時に、通勤交通費のコストが削減される。また、営業車両をガソリン車から次世代自動車(電気自動車・ハイブリッド車等)に入れ替えることで脱炭素社会の実現に向けた取組に貢献し、ステークホルダーからの評価につながる

在宅勤務が推奨されることにより通勤にかかる費用が削減される

また、営業車両をガソリン車から次世代自動車に入れ替えることで、走行コストが削減される

短期

在宅勤務制度の継続及び更なる推進

Web会議、Chatツールの全社適用及び品質向上

電気自動車・ハイブリッド車などへの入れ替え実施・推進

環境領域に注力することによる市場価値の向上に伴う市場シェアの拡大

会社が脱炭素施策に取組むことで会社自体の評価が上がり、競合他社と比べて、顧客から選定される可能性が高まり、売上収益が増加する

短期

GHG排出削減に関する目標を策定し、事業戦略として取組むことを明確化

気候変動(適応)に係る人材の需要増

オンライン求人マッチングプラットフォーム等の需要が増加し、売上が増加する

長期

これまで以上に多種多様な国籍・年齢層等のユーザーは使用することを想定し、より扱いやすいユーザーインターフェイスへのアップデートを実施

オンライン面接の実施

使用者増加に伴う、サーバーの強化

気候変動の適応に関連するフィービジネスの拡大のチャンスが生まれ、売上機会が増加する

長期

気候変動により就労場所の変化(人の移動)がより活発になると想定し、WBBプラットフォームの構築を継続して推進することで、その需要を獲得

※WBB:WORKING Beyond Borders

 

※1 財務影響の判断基準は、当社グループの売上収益の割合をもとに以下のとおり設定しています。

大:44億円以上

中:11億円以上~44億円未満

小:~11億円未満

 

リスクについては、事業戦略等に及ぼす重大な影響は特定されませんでした。しかしながら、刻々と変化する世界情勢に注視しつつ、気候変動が当社グループに及ぼす影響と当社の目指す事業戦略を適宜照らし合わせ、継続的な評価の見直しとステークホルダーに向けた情報開示に努めてまいります。

機会においては、当社グループの事業戦略やビジネスモデル等を考慮し、気候変動に関するビジネスチャンスや社会及びステークホルダーの求めるニーズを特定しました。これに基づき、今後の事業展開を進めていくと共に、気候変動についての国際的枠組み及び規範についても支持・尊重し、温室効果ガス排出量削減等に関して目標を掲げ、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

 

③ リスク管理

 「(1)サステナビリティ全般 ③ リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

 当社グループは、「2050年カーボンニュートラル」の実現に向け、当社の活動におけるGHG(CO2・温室効果ガス)排出量(以下、「GHG排出量」といいます。)を2030年までに25.9%(2023年度比)削減することを目標として策定しました。

 

 

 

 

※概算

 

基準年

基準年実績

目標年

目標内容

Scope1+2

2023年

20,819 tCO²

2030年

15,427 tCO²

2050年

実質ゼロ

Scope3

2050年

実質ゼロ

 

当社グループの事業活動に伴うGHG排出量データは、以下のとおりです。

 

 

 

(単位:tCO²)※概算

 

Scope1

Scope2

Scope1+2

Scope3

2022年

31,034

1,688

32,722

2023年

19,219

1,600

20,819

※GHGプロトコルに基づき算出

※算定対象は、当社、当社国内・海外グループ全体

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」といいます。)の状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループでは、これらのリスクを把握し、発生の可能性を認識したうえで、可能な限り発生の防止に努め、また、発生した場合の的確な対応に努めていく方針であります。

なお、本項目に含まれる現在及び将来に関するこれらのリスクは、本有価証券報告書提出日現在において判断、予想したものであります。また、本項目において、当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの経営成績等の状況に与える影響について合理的に予見することが困難な場合には、その可能性の程度や時期・影響についての記述は行っておりません。加えて、必ずしも事業上のリスクに該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項は、投資家に対する積極的な情報開示の観点から記述しております。

 

(1)自然災害等による影響

当社グループは、地震、台風、火災、洪水等の災害、地球温暖化等の気候変動の進行による影響を受けた場合、戦争や内戦などの紛争、テロ行為、コンピュータウイルスによる攻撃等が起こった場合や、それにより情報システム及び通信ネットワークの停止または誤作動が発生した場合、また、強力な新型インフルエンザ等の感染症が流行した場合、当社グループの事業活動が制限され、経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)法的規制及びその変更の可能性について

当社グループが行う国内の各アウトソーシング事業は、労働基準法・労働者派遣法及びその他関係法令により規制を受けております。

各アウトソーシング事業のうち、請負については、現時点では請負自体を規制する法律はありませんが、労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(以下、「告示37号」といいます。)等により、派遣と請負については明確に区分されております。当社グループでは、安定雇用にフォーカスした「告示37号の独自の解釈基準」を作成し、活用することにより、偽装請負のリスクを回避し、コンプライアンスを保った請負を推進しております。

契約社員や期間従業員等、雇用契約に期限がある有期雇用につきましては、2020年4月に改正労働者派遣法が施行され同一労働同一賃金が導入されたほか、2021年1月施行の労働者派遣契約の電子化が認められる等の改正、同4月施行の雇用安定措置の情報聴取強化、2022年においても4月施行の育児休業・介護休業の取得要件緩和など、有期雇用労働者の保護を目的とした法改正が繰り返されております。

このような労働関係法令のほかにも、個人情報保護法や内部統制に関する規制、東京証券取引所プライム市場に上場する企業としての諸規則等の規制も受けております。当社グループでは、法令遵守を第一義に考えており、法務関連部門や内部統制関連部門を中心に、関係法令の教育・指導・管理・監督体制の強化を積極的に推進しております。

同様に海外の各アウトソーシング事業においても、進出国の労働関係法をはじめとする各法令によって規制を受けておりますが、各国の大手法律事務所を活用して法令遵守を第一に運営しております。加えて、グローバルガバナンス・プロジェクト活動にも注力し、当期はとりわけ海外グループ会社に対するガバナンスを強化しております。

しかしながら、今後、国内外の社会情勢の変化等に応じて新たな法の制定・改正または解釈の変更等が生じた場合や、当社グループと規制当局との間で見解の相違等が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)取引先業種の景況等による影響について

当社グループが行う製造系アウトソーシング事業は、メーカーの量産工程における生産変動部分を請け負う性質から、すべての業種において景気の悪化をあらかじめ想定しており、取引先業種をバランスよく分散させることによって、景況による影響を受けにくくしております。

また、当社グループでは、自動車産業や医薬医療産業等の各種産業に特化して専門性を高めていく戦略であり、メーカーの研究・開発部門を請け負う技術系アウトソーシング事業も展開しております。このため、その特化した業種の景況に左右されることが想定されますが、業種を超えてグループ会社間を技術者が異動することにより、景況による影響を受けにくくしております。

しかし、進出した国が大きな不況に陥り、当該国の生産量や研究開発全体が落ち込むような場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

また、IoT、AIに代表される技術革新に伴いデータの活用領域が拡大することで、様々な産業分野、ビジネスモデルに変化がもたらされることが想定されます。これらの変化に充分に対応できない場合、将来にわたり市場での地位を喪失する等、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)必要な人材の確保について

近年、日本国内においては、リーマンショックのような経済危機、大震災や洪水といった天災等の影響により、生産が低迷して人材の余剰感が高まる時期や、その後の景気回復等によって一転増産となる等、人材の不足感が高まる時期が繰り返されております。

このように、様々な外部環境により変化するメーカーニーズに対して、当社グループでは、個々のメーカーのニーズにあった外部人員活用の提案をしており、また、提案を実現するための人材確保を重視しております。

人材派遣のビジネスモデルは労働者供給であり、他方、メーカーが直接雇用を行うことに対する採用代行のビジネスモデルは労働者紹介であることから、供給及び紹介する人材の採用数を増加することが重要になります。

そこで当社グループは、グループのグローバルな採用ネットワークに加え、現地の大学との提携等、様々な取組によりブランディングを強化することで、同業他社との差別化と募集数の拡大を同時に図っております。

技術系については、大規模な新卒採用と同時に、未経験者の雇用を促進し、当社グループ内のKENスクールで教育研修を行って配属するスキームを展開し、業界トップの採用人数を実現しております。

一方、請負のビジネスモデルは、労働者の供給や紹介である派遣や採用代行とは異なり、生産効率を向上させるために、請負現場における個々の人材のスキルアップが不可欠となります。そのため、メーカーから招聘した人材育成の体制構築に必要となる技術やノウハウを持ったキーパーソンを中心とし、キャリアパス・キャリアアップ制度、事業所ごとに設定した適切な教育制度や評価報酬制度等の人材育成体制を充実させ、人材の育成に注力しております。この体制整備は、請負体制の構築に必要なコアとなるリーダーの人材を安定的に確保することも目的としております。

現場管理者の確保においても、労働者にとって魅力的なキャリアパス制度を提示することにより、同業他社との差別化を図っております。

また、採用過程において、募集広告に関する地域・メディア分析によって広告の効率的な投下を目指すとともに、リアルタイム面接予約システムやマッチングシステムの導入、さらには採用担当者への定期的な研修を行い、応募から採用に至る過程における取りこぼしを減少させ、必要な人材の確保に努めております。

しかし、ニーズの高まりが想定を遥かに上回るペースであった場合のほか、同業他社が当社グループ以上に広告宣伝費を投下してより効果的な採用活動を行った場合や、今後AI等の技術革新やSNS等の代替手段が台頭し当社グループがそれらに対応できなかった場合には、需要に対応する人数の人材が確保できず、受注機会の損失や再募集によるコスト等が上昇し、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

このほか、当社の管理部門においても、実効性をより高めるべく専門性の高い人材を登用していく想定でありますが、専門性が高く有能な人材の採用競争が激化していることから、確保または育成できない場合、多様化する管理業務の対応がこと細かにできないリスクや、コストが増加する可能性があります。

 

(5)海外事業展開に関するリスク

中長期的な経済環境は、国内市場においては、人口減少による購買力の低下が懸念される一方、海外市場においては、人口増加及び各種産業の成長によって新興国を中心に消費拡大が見込まれております。

現在、当社グループの事業活動の半分近くは日本国内で行われていますが、グループ全体の持続的な成長を実現するためにも海外事業拡大を重要戦略に位置付けております。

欧州・オセアニア・北米・南米・アジアに進出している当社グループが、グローバルに事業展開を加速させる過程においては、為替リスクに加え、紛争・テロ・誘拐を含む政情不安、経済活動の不確実性、宗教及び文化の相違、現地における労使関係等のリスクに直面する可能性があります。

また、売掛金の回収や、取引相手との関係構築・拡大等の点において、海外の商習慣に関する障害に直面する可能性があります。さらに、投資規制、収益の本国送金に関する規制、現地産業の国有化、輸出入の規制や外国為替の規制の変更、税制または税率の変更等といった様々な政治的、法的あるいはその他の障害に遭う可能性があります。

このほか、海外事業の拡大においては、投資利益の実現までに長い期間と多額の資金を要することがあり、投資による費用の増加が収益の増加を上回る可能性もあります。

 

(6)M&A、資本提携等に関するリスク

当社グループでは、通常の営業活動によるシェア拡大に加え、事業拡大への経営資源を取得するために、M&Aによる企業買収や資本提携等も積極的に推進してまいりました。それらを実施する場合には、対象となる企業の財務内容や事業についてデューデリジェンスを行い、事前にリスクを把握するとともに、収益性や投資回収の可能性について検討しています。

しかしながら、国内外の経済環境の変化等の理由から、当社グループがM&Aや資本提携等を行った企業の経営、事業、資産等に対して、十分なコントロールを行えない可能性があります。また、買収した企業の顧客基盤や人材が流出する可能性もあり、当初に期待したシナジーを得られない可能性もあります。これらの場合、当社グループが既に行った投資額を十分に回収できないリスクが存在し、当初の期待どおりに事業を展開できない場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループが、ビジネスパートナーと合弁会社の設立や事業提携を行う場合において、当社グループが投資先を実質的に支配することや、重要な意思決定を行うことが難しい場合があるというリスクが存在し、当初の期待どおりに事業を展開できない場合には、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)情報管理について

当社グループでは、メーカーの技術部門である研究・開発工程から製造部門における量産工程までの幅広い分野において受注を獲得しており、メーカーの新技術の研究や新製品の開発、生産計画等、機密性の高い情報を知りうる立場にあります。また、主力事業であるアウトソーシング事業の特性上、数多くの顧客関係者、採用応募者、役員及び従業員等の個人情報を有するため、個人情報取扱事業者に該当し、個人情報の保護に関する法律の適用を受けます。顧客情報、個人情報をはじめとした情報の取扱に関する重要性、危険性を十分に認識し、その管理にあたっては、情報漏洩及び不正アクセス等を重要なリスクと認識し、情報セキュリティに最善の対策を講じるとともに、アウトソーシンググループ企業倫理行動規範、個人情報保護指針及び社内規程を策定し社内に周知徹底する等、情報保護体制の確立を図り、厳重な管理を行っております。

しかし万一、重要な情報の漏洩・流出が発生した場合には、結果として損害賠償責任を負うことがあり、さらに信用の失墜により当社グループの経営成績等に重要な影響が及ぶ可能性があります。また、将来的に通信の秘密を保障するためのシステム投資及び顧客情報保護体制の整備のため、コストが増加する可能性があります。

 

(8)中期経営計画に関するリスク

当社グループは、2023年2月に2025年度を最終年度とする新中期経営計画「VISION2025:Building a New Stage」を発表し、中長期的なビジョンや戦略、事業セグメントごとの注力施策及び計画数値等を公表しております。これらの計画や数値は、公表時点で入手可能な情報に基づき当社が計画、予想したものであり、実際の業績等は、本「事業等のリスク」に記載のリスクをはじめとする様々な要因により、結果として未達となる可能性があります。

(9)のれんの減損に関するリスク

当社グループは、2016年12月期有価証券報告書から、連結財務諸表についてIFRSを適用していますが、IFRSにおいては、日本において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準と異なり、のれんの定額償却は不要となります。他方、のれんの対象会社における経営成績悪化等により減損の兆候が生じ、その効果である回収可能価額がのれんの帳簿価額を下回る場合には、のれんの減損処理を行う必要が生じる可能性があり、かかる場合には当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)有利子負債について

当社グループは、事業基盤と収益力の拡充による中長期的な企業価値の向上のため、M&Aを中心とした投資を実施してまいりました。今後、借入金等が増加した場合、当社グループの財政状態が変動する可能性があります。

 

(11)資金調達について

当社グループは、M&Aによる企業買収や資本提携等を積極的に推進してまいりました。これらの実施を含めた必要な事業資金の一部は、金融機関からの借入等により調達しております。今後、当社グループの経営成績、財政状態の悪化や金融情勢の変化等により、思うように必要な資金調達ができない場合、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループの金融機関からの借入などには一部で財務制限条項のほか、表明保証及び借入人の義務に係る条項が付されているものがあります。いずれかの条項に抵触する可能性が発生し、抵触を回避することができない場合、当該債務について期限の利益を喪失する可能性があるほか、これに伴い、その他の債務についても一括返済を求められる可能性があります。その結果、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)金利の変動リスクについて

当社グループは、金融機関等から資金調達をしており、その一部を変動金利で調達しております。今後、急激かつ大幅な金利変動が生じた場合、金利負担が増加し、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(13)為替リスクについて

当社グループが積極的に行っているM&Aによる海外事業への投資は、為替の変動により、為替換算調整勘定を通じて株主資本が増減するリスク、期間損益の円貨換算額が増減するリスクが存在します。これらの為替変動リスクは、将来の当社グループの経営成績等に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)訴訟等に関するリスク

当社グループは、法令その他諸規則等を遵守すべく、コンプライアンス体制及び内部統制システムの強化を経営上の重要課題のひとつとして位置付け、グループ各社の従業員等に対して適切な指示、指導を実施し、反社会的勢力との関係遮断や不正行為の防止・発見のために必要な予防策を講じています。

しかしながら、当社グループ及び役員、従業員等の法令違反等の有無にかかわらず、ユーザ、取引先、従業員その他第三者との予期せぬトラブルないし訴訟等が発生する可能性があります。また、特許権等の知的財産権による訴訟についても訴訟のリスクがあるものと考えております。

かかる訴訟等の内容及び結果によっては、当社グループの事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。また、多大な訴訟対応費用の発生やブランドイメージの悪化等により、当社グループの事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

(15)情報システムについて

当社グループの事業活動において、情報システムの重要性が増大しております。当社グループでは、情報システムの安定的運用に努めておりますが、自然災害、事故、コンピュータウイルスや不正アクセス等のサイバー攻撃、その他の要因により情報システムに重大な障害が発生した場合、当社グループの事業及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりであります。

 

a.財政状態

(資産)

当連結会計年度における流動資産合計は206,576百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,249百万円の増加となりました。これは主に現金及び現金同等物、営業債権及びその他の債権、棚卸資産が増加したこと等によるものであります。

非流動資産合計は217,218百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,647百万円の増加となりました。これは主に無形資産が減少した一方、使用権資産、のれんが増加したこと等によるものであります。

この結果、当連結会計年度における資産合計は423,794百万円(前連結会計年度末に比べ21,896百万円の増加)となりました。

なお、国内技術系アウトソーシング事業、国内製造系アウトソーシング事業、国内サービス系アウトソーシング事業、海外技術系事業、海外製造系及びサービス系事業、その他の事業におけるセグメント資産につきましては、事業規模拡大等によりそれぞれ、89,917百万円(前連結会計年度末に比べ1,924百万円の増加)、241,065百万円(同23,710百万円の減少)、28,501百万円(同5,262百万円の増加)、141,851百万円(同11,548百万円の増加)、162,608百万円(同20,260百万円の増加)、1,478百万円(同241百万円の増加)となりました。

(負債)

当連結会計年度における流動負債合計は204,516百万円となり、前連結会計年度末に比べ20,063百万円の増加となりました。これは主に営業債務及びその他の債務、社債及び借入金が増加したこと等によるものであります。

非流動負債合計は126,527百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,757百万円の減少となりました。これは主にリース負債が増加した一方、社債及び借入金が減少したこと等によるものであります。

また、2023年10月31日に過年度において不正な財務報告が行われていた事実が判明したことにより、当社グループが主要取引金融機関と締結しているシンジケートローン契約等の表明保証及び借入人の義務に係る条項に抵触いたしました。また、当社が金融機関と締結しているシンジケートローン契約の一部には四半期報告書の提出期限に係る条項が付されており、2023年12月期第2四半期報告書の提出期限延長により、当該条項に抵触いたしました。このため、関連する2,889百万円の借入金の分類を非流動負債から流動負債へ変更しております。

なお、当連結会計年度末における各財務制限条項への抵触の事実はありません。

(資本)

当連結会計年度における資本合計は92,751百万円となり、前連結会計年度末に比べ13,590百万円の増加となりました。これは主に利益剰余金の増加及び為替の影響等を反映したものであります。

 

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、連結売上収益は749,608百万円(前期比8.6%増、過去最高を更新)、営業利益は16,476百万円(前期比27.6%減)、税引前利益は13,607百万円(前期比23.5%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は5,162百万円(前期比51.6%減)となりました。

利益面では、国内セグメントにおいては半導体の在庫調整局面等を起因とした需要鈍化等、また海外セグメントにおいては欧米における景気の先行き不透明感を背景としたのれん等の減損損失9,051百万円生じたほか、インフレに伴う人件費等の増加や南米子会社における係争関連費用を受け、利益を押し下げる結果となりました。また、のれんの減損損失は税金計算には加味されないため、税引前当期利益以下の各利益を押し下げる影響を及ぼしました。

 

セグメントごとの業績は次のとおりであります。国内技術系アウトソーシング事業、国内製造系アウトソーシング事業、国内サービス系アウトソーシング事業、海外技術系事業、海外製造系及びサービス系事業、5つの報告セグメントすべてにおいて、売上収益の過去最高を更新しました。

 

(国内技術系アウトソーシング事業)

国内技術系アウトソーシング事業におきましては、人材獲得競争による採用費の高騰及び固定資産の減損損失が354百万円生じたものの、旺盛なエンジニアニーズを背景に増収増益となりました。引き続きKENスクールを活用した未経験者を教育して配属するスキームにより採用単価の抑制を図ってまいります。各産業における採用活動の復活及び採用競争の激化はあるものの、期末外勤社員数は、前期末(2022年12月末)比1,148名増の25,861名と、後発ながら業界トップクラスとなっております。製造業の景気変動の影響を受けにくくするための重点分野として位置付けているIT分野や建設、医薬分野も引き続き拡大しました。

以上の結果、売上収益は162,459百万円(前期比8.6%増)、営業利益は11,018百万円(前期比8.7%増)となりました。

 

(国内製造系アウトソーシング事業)

国内製造系アウトソーシング事業におきましては、自動車業界の生産回復があった一方、半導体を含む電気機器関連の生産停滞を背景に、前期比で0.8%の増収となりました。利益面ではグループ再編コストや半導体の在庫調整局面等を起因とした需要鈍化等によるのれん等の減損損失が4,080百万円生じたことなどにより減益となりました。期末外勤社員数は前期末比1,835名減の24,694名であります。管理業務受託におきましては、顧客メーカーの外国人技能実習生活用ニーズは引き続き堅調であり、適切な管理実績を引き続き高く評価され、国内首位の事業者として12月末の管理人数は22,215名となりました。

以上の結果、売上収益は123,389百万円(前期比0.8%増)、営業利益は4,485百万円(前期比35.3%減)となりました。

 

(国内サービス系アウトソーシング事業)

国内サービス系アウトソーシング事業におきましては、製造系とは異なり景気変動の影響を受けにくい米軍施設向け事業が主力事業であります。米軍施設の建物や設備の改修・保全業務の需要は堅調であるものの、輸入建設資材の船便遅延といった調達リードタイム長期化が継続し、加えて建設資材や海上輸送費の高騰の影響により費用が増加したことにより、増収減益となりました。しかしながら米軍施設向け事業においては受注残高を積み増しており、中長期での事業収益力は損なわれていないと考えます。

以上の結果、売上収益は33,553百万円(前期比9.8%増)、営業利益は2,762百万円(前期比13.4%減)となりました。

 

(海外技術系事業)

海外技術系事業におきましては、前期比で増収減益となりました。英国では利益率の高い公的債権回収事業が回復傾向を継続し、回収効率が向上した一方で、アイルランドではグローバルIT大手のレイオフ等の先行き不透明感が人材紹介事業に一部影響を及ぼしました。インフレに伴う人件費等の費用増となりましたが、派遣事業が安定的に手堅く推移しました。

以上の結果、売上収益は174,873百万円(前期比5.7%増)、営業利益は7,900百万円(前期比1.1%減)となりました。

 

(海外製造系及びサービス系事業)

海外製造系及びサービス系事業におきましては、オランダの大手スーパーを中心としたインターネットショッピング関連事業だけでなく物流系への注力や派遣単価引上げ、また、ドイツにおける航空業界向けの堅調な需要を背景に二桁増収となりました。

一方、利益面では、欧米における景気の先行き不透明感を背景としたのれん等の減損損失4,617百万円が生じたほか、海外技術系と同様にインフレに伴う人件費等の費用増や南米子会社における係争関連費用を受け、利益を押し下げる結果となりました。

以上の結果、売上収益は255,272百万円(前期比14.9%増)、営業利益は2,106百万円(前期比53.9%減)となりました。

 

(その他の事業)

その他の事業におきましては、特例子会社での障がい者による事務のシェアードサービス事業及び手話教室事業等が、計画どおりに推移しました。一方、利益面は賃金上昇等により、利益を押し下げる結果となりました。

以上の結果、売上収益は62百万円(前期比1.3%増)、営業利益は226百万円(前期比29.0%減)となりました。

 

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の期末残高は54,469百万円となり、前連結会計年度に比べ1,146百万円(2.1%)の増加となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動による資金の増加は31,166百万円となりました。これは、税引前利益13,607百万円、減価償却費及び償却費20,162百万円、法人所得税等の支払額9,487百万円等を反映したものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動による資金の減少は6,864百万円となりました。これは、有形固定資産の取得による支出4,068百万円、無形資産の取得による支出1,297百万円、敷金及び保証金の差入による支出1,343百万円等を反映したものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動による資金の減少は26,359百万円となりました。これは、長期借入れによる収入14,281百万円、長期借入金の返済による支出29,427百万円、リース負債の返済による支出10,650百万円等を反映したものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当社グループの主たる業務は、提供するサービスの性質上、生産体制、販売経路の記載と関連づけ難いため、記載を省略しております。

b. 受注実績

当社グループの主たる業務は、提供するサービスの性質上、受注状況の記載につきましても上記a. 生産実績同様に、記載を省略しております。

c. 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日
  至 2023年12月31日)

金額

(百万円)

構成比

(%)

前期比増減

(%)

国内技術系アウトソーシング事業

162,459

21.7

8.6

電気機器関係

24,570

3.3

1.3

輸送用機器関係

28,627

3.8

5.9

化学・薬品関係

13,893

1.8

7.1

IT関係

58,199

7.8

16.8

建設・プラント関係

23,156

3.1

6.9

その他

14,014

1.9

1.0

国内製造系アウトソーシング事業

123,389

16.4

0.8

電気機器関係

27,160

3.6

△15.8

輸送用機器関係

48,361

6.4

1.2

化学・薬品関係

7,044

0.9

13.0

金属・建材関係

6,772

0.9

3.6

食品関係

4,216

0.6

7.7

その他

29,837

4.0

16.0

国内サービス系アウトソーシング事業

33,553

4.5

9.8

小売関係

166

0.0

13.1

公共関係

29,255

3.9

11.5

その他

4,132

0.6

△1.3

海外技術系事業

174,873

23.3

5.7

電気機器関係

387

0.1

△30.8

輸送用機器関係

5,260

0.7

82.7

化学・薬品関係

35,795

4.8

5.6

IT関係

44,116

5.9

38.0

金属・建材関係

312

0.0

112.7

建設・プラント関係

2,406

0.3

△33.7

食品関係

5

0.0

75.5

小売関係

7,348

1.0

18.8

公共関係

54,620

7.3

△11.7

金融関係

9,588

1.3

△24.8

その他

15,035

1.9

28.9

海外製造系及びサービス系事業

255,272

34.1

14.9

電気機器関係

16,253

2.2

△43.5

輸送用機器関係

17,807

2.4

△14.2

化学・薬品関係

5,096

0.7

38.1

IT関係

4,310

0.6

△3.4

金属・建材関係

3,690

0.5

25.3

建設・プラント関係

10,442

1.4

11.9

食品関係

13,148

1.7

111.3

小売関係

75,082

10.0

14.1

公共関係

34,955

4.7

10.5

金融関係

2,338

0.3

△11.0

その他

72,151

9.6

56.8

その他の事業

62

0.0

1.3

合計

749,608

100.0

8.6

 

(注1) セグメント間の取引につきましては相殺消去しております。

(注2) セグメント区分は、事業の種類・性質の類似性を考慮して行っております。

(注3) 各セグメントの主な事業

(a) 国内技術系アウトソーシング事業・・・当社子会社にて、メーカーの設計・開発、実験・評価工程への高度な技術・ノウハウを提供するサービス、WEB・スマートフォン等の通信系アプリケーションやECサイト構築、基幹系ITシステム・インフラ・ネットワークの各種ソリューションサービス及び構築、医療・化学系に特化した研究開発業務へのアウトソーシングサービス、建設施工管理・設計や各種プラントの設計・施工・管理等の専門技術・ノウハウを提供するサービス、ITスクール事業等を行っております。

(b) 国内製造系アウトソーシング事業・・・当社及び当社子会社にて、メーカーの製造工程の外注化ニーズに対し、生産技術、管理ノウハウを提供し、生産効率の向上を実現するサービスを行っております。また、顧客が直接雇用する期間社員等の採用代行(有料職業紹介)、期間社員及び外国人技能実習生や留学生等の採用後の労務管理や社宅管理等に係る管理業務受託事業及び期間満了者の再就職支援までを行う、一括受託サービスを行っております。

(c) 国内サービス系アウトソーシング事業・・・当社子会社にて、米軍施設等官公庁向けサービスや物流向けサービス、コールセンター向けサービス等を提供しております。

(d) 海外技術系事業・・・在外子会社にて、欧州及び豪州を中心にIT、金融、製薬、ライフサイエンス、医療、ヘルスケアなどへの専門スキル人材の派遣・紹介事業、AIを活用した公的債権回収等を行っております。

(e) 海外製造系及びサービス系事業・・・在外子会社にて、アジア、南米、欧州等において製造系生産アウトソーシングへの人材サービス及び事務系・サービス系人材の派遣・紹介事業や給与計算代行事業等を行っております。また、欧州及び豪州にて公共機関向けBPOサービスや人材派遣、欧州及びアジアにて国境を越えた雇用サービス等を行っております。

(f) その他の事業・・・当社子会社にて、事務代行業務等を行っております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

① 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

当連結会計年度における事業環境は、インフレ率は2022年後半をピークに緩やかな落ち着きを見せたものの、コロナ禍以前の水準に比べ依然として高く、また、ウクライナ情勢の長期化に加えて、中東地域も不安定な状況がさらに悪化したことによる地政学的リスクの高まりや、世界的な原燃料費の高騰など、国際情勢に重大な影響を及ぼす事象の発生が続き、経済活動の重しとなる状況でありました。

国内においては、原燃料高や、半導体製造装置等の輸出規制、在庫調整局面等により電気機器関連は、生産活動が停滞する状況となりました。一方、新型コロナウイルスの感染対策の緩和など政策的な追い風が見られ、また、主要顧客である大手輸送用機器メーカーにおいては半導体等の部材不足の影響が緩和し、生産活動は回復基調にあります。また、労働市場が逼迫するなか、ITに限らず幅広い業種においてエンジニアの活用ニーズはいまだ活況であります。

このような国内の事業環境に対して、当社グループは、かねてより業績平準化による成長基盤の強化を推進してまいりました。製造系分野においては、長く重石となっていた半導体等の部材不足の影響が緩和し、生産活動は回復基調となりました。外国人技能実習生等の管理受託分野においては、適切な管理実績が顧客に高く評価され、12月末の管理人数は22,215名と国内首位を維持することに加えて、実習生が借金を背負って出国する債務労働問題の解消に向けた外国人労働市場全体の健全化にも取り組んでおります。

技術系分野においては、高止まりするエンジニアニーズに対して、当社グループの教育機関であるKENスクールを活用し、機械設計のみならず、ITや建設、医薬分野に至るまで、多岐にわたって未経験者を教育して配属するスキームにより、採用単価の上昇を抑えながら増員して業績を伸長させました。加えて、新卒採用人数も国内首位を争う規模となり、4月には約1,800名(連結では約2,300名)の新卒者が入社しております。これは採用力のみならず、未経験者の配属先を開拓する営業力と新人教育力、さらには派遣先との信頼関係の賜と考えます。このほか、マクロ環境の影響を受けやすい製造分野とは異なり、景気変動の影響を受けにくい事業分野も拡大を図っております。米軍施設向け事業では、建物や設備の改修・保全への需要は引き続き堅調でありましたが、調達リードタイム長期化及び資材高騰により足もとの成長は足踏みする結果になりました。

 

一方、海外においては、2022年後半をピークに緩やかに推移しているインフレ率を背景に、経済成長が低迷し金融リスクが高まるなか、先行き不透明感が増している状況でありました。

このような海外の事業環境に対して、当社グループは、海外においても従前より業績平準化による成長基盤の強靭化を力強く推し進めてまいりました。景気変動の影響を受けにくい政府事業等の公共系アウトソーシング事業等を拡充することに加えて、根強い需要がある技術系分野を展開するほか、人材不足の国に対して人材の余剰感のある国から人材を流動化するスキームをグローバル規模で展開しております。事業ポートフォリオ及び地域ポートフォリオ分散の取組が功を奏し、技術系のみならず製造系及びサービス系も増収となりました。

この結果、当連結会計年度における売上収益は、749,608百万円(前期比8.6%増)となりました。

なお、当社グループは、成長の持続可能性を重視しております。SDGs経営に向けたサステナビリティ方針として、当社グループでは、事業を通して世界の様々な人々の「就業機会」と「教育機会」の創造を実現し、社会課題の解決と事業の成長、ステークホルダーへの貢献に持続的に取り組み、事業活動が広く社会に還元される仕組みを追求してまいります。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況の分析につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ② キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

b.資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要のうち主なものは、従業員給付費用のほか、サービス提供費用、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、M&Aによる企業買収や資本提携等のための資金であります。

当社グループは、事業活動のために適正な流動性の維持及び効率的な資金の確保を基本方針としており、主に営業活動から得た資金を財源とし、必要に応じて借入または社債等による資金調達を実施することとしております。

なお、当連結会計年度末における借入金及びリース負債を含む有利子負債の残高は192,602百万円、現金及び現金同等物の残高は54,469百万円となっております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和51年大蔵省令第28号)第93条の規定により、国際会計基準(以下「IFRS」という。)に準拠して作成しております。

この連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要となる事項につきましては、合理的な基準に基づき継続的にこれを行っております。しかし、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、個々の「重要な会計方針及び見積り」につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当社は、2023年12月8日開催の取締役会において、いわゆるマネジメント・バイアウトの一環として行われる株式会社BCJ-78(以下「公開買付者」といいます。)による当社の普通株式(以下「当社株式」といいます。)に対する金融商品取引法(昭和23年法律第25号。その後の改正を含みます。)及び関係法令に基づく公開買付け(以下「本公開買付け」といいます。)に関して、同日時点における当社の意見として、本公開買付けが開始された場合には、本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対しては、本公開買付けへの応募を推奨することを決議いたしました。

 また、2024年2月27日に会社法(平成17年法律第86号。その後の改正を含みます。)第370条による取締役会決議(書面決議)により、改めて、本公開買付けに賛同の意見を表明するとともに、当社の株主の皆様に対して、本公開買付けに応募することを推奨する旨の決議をいたしました。

 なお、当社の上記取締役会決議は、公開買付者が本公開買付け及びその後の一連の手続を経て当社を非公開化することを企図していること並びに当社株式が上場廃止となる予定であることを前提として行われたものであります。

 本件に関する詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 38.後発事象(当社株式に対する公開買付け)、2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 (重要な後発事象) (当社株式に対する公開買付け)」に記載のとおりであります。

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。