文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において、当社が判断したものであります。
(1)経営方針
高度情報通信ネットワーク社会形成基本法(IT基本法)が制定されるなど国家戦略を背景に急激なデジタル化が進み、またインターネットサービスの利活用やデータ活用がコロナ禍でそのスピードが加速され国民生活におけるデジタル化や企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーション、公的分野におけるデジタル化と更にその領域は拡大しております。一方サイバー攻撃の増加等を背景に、特殊詐欺やクレジットカードの不正利用被害は増加傾向にあり社会経済活動に多大な影響を及ぼしています。当社は、「情報インフラを共創し、世界をより良くする」というミッションのもと誰もが安心・安全なデジタル社会での利益を享受できる情報インフラ構築を目指すことで企業価値の最大化を図ります。
(2)経営上の目標の達成状況を判断するための指標
当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、当社の主力製品である「Fraud Alert」の月次経常収益(MRR)(注1)を重要指標としております。詳細につきましては、「4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容 ④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。
(注1)MRR:Monthly Recurring Revenueの略称。MRRは対象月末時点における継続課金となる契約に基づく当月分
の料金の合計額。
(3)経営環境及び中長期的な経営戦略
当社が提供するFraud Alertは、大別して情報セキュリティの観点、マネー・ローンダリング対策の観点で導入促進が見込まれるものと考えております。情報セキュリティの観点では、インターネットサービスの利活用の普及及びこれに伴う技術革新が当社の業績に大きく影響します。インターネットサービス利活用のひとつであるキャッシュレス決済比率の推移(注2)は下図表1のとおりであり、クレジットカードを中心に電子マネーやコード決済など多種多様な決済方法が増え、キャッシュレス決済を通じた決済比率の伸びは顕著であり、キャッシュレス決済の拡大に伴う不正被害が増加傾向にあります(図表2参照、注3)。
マネー・ローンダリング対策に関する事業は、日本市場では2022年に約2兆円(注4)、世界市場においては2020年~2027年の予測期間において年間平均成長率15.6%以上の健全な成長率で成長する市場と見込まれています。(注5)
図表1 キャッシュレス決済比率の推移
図表2 サイバー攻撃関連通信推移
(注2)出典:経済産業省 2022年のキャッシュレス決済比率(2023年4月6日公表)
https://www.meti.go.jp/press/2023/04/20230406002/20230406002.html
(注3)出典:国立研究開発法人情報通信研究機構 サイバーセキュリティ研究所「NICTER観測レポート2020」
(2021年2月16日公表)より当社作成
(注4)出典: LexisNexis「『金融犯罪コンプライアンスの真のコスト』調査レポート」から引用
https://risk.lexisnexis.co.jp/insights-resources/research/true-cost-of-financial-crime-
compliance-study-apac
(注5)出典: Report Ocean 「Global Anti Money Laundering Market Size study」(2022年1月22日公表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004911.000067400.html
当社の提供価値は、インターネットサービスの不正利用抑止と金融機関向けにマネー・ローンダリング口座の抽出の3点があります。両者それぞれに外的要因があり、これにより獲得可能な市場規模が拡大することで高い成長率を継続できるように努めてまいります。
①インターネットサービスの不正利用抑止
2022年の日本国内のBtoC-EC(消費者向け電子商取引)市場規模は、22.7兆円に拡大しています。(注6)また、クレジットカードの不正利用額が約437億円(注7)となり、その約0.2%の購入は不正購入となっています。
政府は2025年6月までにキャッシュレス決済比率を4割程度とすることを目指すこととし、キャッシュレス決済を推進していますが、一方、サイバー攻撃等のセキュリティリスクは年々高まり、実際に不正利用被害額も増加しています。このような中、クレジットカード・セキュリティガイドライン[4.0版]が改訂され(注8)、規制が強化されました。従来、Eコマース事業者、クレジットカード事業者において抑制されていたセキュリティ対策投資額が、規制強化により事業継続に必要な予算となることで、市場規模は拡大し当社のサービスにより安心・安全を提供することで高い成長率を継続できると予想しております。
②金融機関向けにマネー・ローンダリング口座の抽出
2019年にFATF(金融活動作業部会)の対日監査が金融機関に入りましたが、結果的に我が国は重点フォローアップ国に選別され、金融機関等へはマネロン・テロ資金供与・拡散金融対策に関する行動計画が示されております(注9)。このうち「金融機関等による継続的顧客管理の完全実施」における「取引モニタリングの強化」は当社のFraud Alertのサービスを通じて個人及び法人のマネー・ローンダリング口座を抽出し日本のマネー・ローンダリング資金供与対策を一層向上させることを目指します。また、2028年にFATF(金融活動作業部会)第5次審査が実施される予定であることから中長期に市場規模が拡大していくことを予想しております。
③サイバー空間の防護について
ロシアとウクライナ紛争の影響により経済安全保障推進が大きく打ち出され、国防費用を倍増する方針と、インフラ産業である12業種(金融、クレジットカードなどを含む)に対して、経済安全保障推進法が施行予定(注10)であります。その中では、サイバー攻撃があった場合でも、継続したサービス提供ができる体制作りや攻撃を検知するような体制作り等が含まれており、当社が立脚するサイバーセキュリティへの投資が国策として推奨されることも市場規模の拡大要因たり得ると予想しています。
(注6)出典:経済産業省 令和4年度電子商取引に関する市場調査の結果報告書(2023年8月31日公表)
https://www.meti.go.jp/press/2023/08/20230831002/20230831002.html
(注7)出典:経済産業省「クレジットカード不正利用や債務から身を守るために」
https://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/consumer/2304shohisyakyoikusiryo.pdf
(注8)出典:クレジット取引セキュリティ対策協議会(事務局 一般社団法人日本クレジット協会)「クレジット
カード・セキュリティガイドライン[4.0版]<公表版>」
https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230315001/20230315001.html
(注9)出典:金融庁 第1回金融審議会資金決済ワーキング・グループ 配付資料3(事務局説明資料)(2021年
10月13日開催)
https://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/shikinkessai_wg/shiryou/20211013/siryou3.pdf
(注10)出典:内閣官房 経済安全保障 https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/index.html
このような最近の業界動向及び事業環境の変化を踏まえ、当社では、本書「事業の内容」について営業体制の構築を進めてまいりました。また、このような背景から弊社が商談を始めてから実際に弊社サービスを導入いただくまでの期間は短縮傾向にあり、2018年から2022年の5年間でFraud Alertの導入期間は約16ヶ月短縮できました。この結果、重要な経営管理指標であるMRRを12倍とした年間経常収益(ARR)(注11)は、下表にあるように堅調に推移していることから2024年12月期は13億円となる見通しです。
(注11)ARR:Annual Recurring Revenueの略称。該当月のMRRを12倍して算出。
表3 当社のARRの推移
(注)ARR:Annual Recurring Revenueの略称。該当月のMRRを12倍して算出。
表4 当社のMRRの推移
表5 当社の契約企業数の推移
当社は、引き続き研究開発、Fraud Alertに関する開発とサービス開発を含めた営業体制の強化・構築を重点課題と位置づけ、持続的な成長を維持できるよう推進してまいります。
今後の具体的な取り組み
主力サービスであるFraud Alertを中核とした更なる成長
急激なデジタル化によるインターネットサービスの拡大におけるセキュリティ市場の継続的成長及びキャッシュレス決済における不正利用被害の増加並びに法規制等の不正対策に対する社会的要請の高まり、加えてマネー・ローンダリングに関する市場は国際的な規制の要請から成長拡大する事業環境と捉えております。このような中、主力サービスであるFraud Alertを中核としたサービスを開発し、差別化要因を意識した同業他社に対して競争優位なポジションを形成することで事業推進してまいります。
当社の優位性、差別化の特徴は3点あります。
(i)顧客基盤
セキュリティ投資額が大きい業界である金融機関を顧客セグメントとしている点が特徴であります。すでに、メガバンク、ネット系銀行、地方銀行の約20行と、大手証券会社をはじめ証券会社約10社、また、クレジットカード事業者数社との取引があり、1契約あたりのMRR(Monthly Recurring Revenue)は2023年12月時点で2,265千円となっております。メガバンク等の金融機関リーディングカンパニーが外部クラウドサービスの利用を開始し始める黎明期に当社が参入できたことが奏功いたしました。今後は中堅以下の地方銀行及び証券会社への導入にも注力する予定です。金融機関は社内オペレーション上、サービス導入を容易にリプレイスすることは極めて難しく、後発参入社が当社既存顧客をリプレイスするには相当の時間を要することになります。その間に、さらに顧客にとって、簡易な業務オペレーションとなるようサービス開発を進めることによって、スイッチングコストを高められると考えております。また、他のセキュリティベンダーと異なる点に代理店を介さず、直接顧客と取引している点も差別化要因と捉えております。顧客と直接コミュニケーションを取ることにより、市場ニーズをダイレクトにサービス改善に繋げていることも、スイッチングコストを高める要因となっております。また、スイッチングコストが高まることが解約率の低さにつながっております。
(ii)ネットワークの外部性
当社サービスの差別化要因としては、当社の顧客が提供するサービスの利用者(以下、エンドユーザーという。)に関するアクセス情報の取得及び不正エンドユーザーに関する顧客間の情報共有を前提としたビジネスモデルとなっていることであります。
当社が取得するエンドユーザーのアクセス情報は、原則として顧客において予め暗号化されており、当社は特定の個人を識別することはできないため当社の個人情報には該当しないものの、顧客においては個人情報に該当するため、顧客側で個人データの第三者提供に関し個人情報保護法が適用されます。
個人情報保護法上の当社ビジネスの建付けは、顧客が犯罪収益移転防止法の特定事業者に該当する場合は、犯罪収益移転防止法第4条に定める取引時確認等への対応に該当、また第8条「疑わしい取引の届出等」にも該当すると警察庁に確認済であり、個人情報保護法第27条第1項第1号「法令に基づく場合」が適用され、顧客がエンドユーザーの同意を得ずに個人データを第三者に提供することが可能となっております。また、特定事業者に該当しない顧客については、顧客に対し個人データの第三者提供に関する本人同意の取得等の確認を行っております。
以上の整理により、当社は顧客企業から受領したデータを顧客企業間で相互に共有するビジネスモデルを確立してまいりました。
従来のAI(Artificial Intelligenceの略称。人工知能。)のように、委託で情報を預かる場合、個社ごとの部分最適になりますが、当社は同じデータベースを各顧客間で共有するという第三者提供型のビジネスモデルであるため、顧客が増えれば増えるほど、不正利用者の情報が集まり他社の情報が共有されることで不正利用者の検知率が上がり、既存顧客に対する不正利用が減少する構造になっております。その結果、職種特化型のSaaS企業のように広告宣伝費を投下することなく、顧客が顧客のグループ内、もしくは懇意にしている同業者に対し、当社サービスの紹介や営業支援を行っていただくことにより、更なる顧客基盤の構築につながっております。それにより変動費率が低い収益構造となっております。
(iii)ガバメントリレーションシップを通じたサービス開発
当社は2018年にJ Startupに選考されて以降、金融庁、経済産業省、警察庁、個人情報保護委員会などとのリレーションを構築し、サービス開発をしている点が他のセキュリティ企業と大きく異なります。これまでに2019年に新技術等実証制度(通称規制のサンドボックス制度)により、電力会社の保有する情報アセットを活用した不正検知サービスのリリースを実現しています。これは従来の個人情報保護法や電力事業者法で禁止されている電力会社の情報アセットの活用を認可いただいたもの(注12)であり、政府とのリレーションがあってこそ、実現しているサービスであります。また第二弾として、キャッシュレス推進協議会における、QRコード決済事業者間での不正利用者情報共有プラットフォームCLUEは当社が手掛けており、継続的に政府との協議により、国益である国民の資産の毀損を抑止するサービスを展開する予定であります。
(注12)出典:内閣官房 規制のサンドボックス制度認定プロジェクト(なりすましによる不正な口座開設の防止
に関する実証 株式会社カウリス、関西電力株式会社 認定日2019年3月6日)
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/s-portal/regulatorysandbox.html
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社で認識している優先的に対処すべき事業上の課題は以下のとおりです。なお、当社の収益構造の特徴として、フロー型収益とストック型の収益の両方を得ております。現状大部分がFraud Alert利用料等のストック型の収益であり、安定的な経営に寄与しております。また、フロー型収益は、Fraud Alertの初期導入にかかる売上や実証実験契約によるもの等であります。
また、当社は金融機関と1億円の当座貸越契約を締結しており、急な資金需要にも耐えられる体制を構築しているため、当社としては現状財務体質に重要な課題は無いと考えており、財務上の課題は記載しておりません。
(a)製品の強化について
当社が属するマネー・ローンダリング対策の分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があり、新たな脅威に対する対策が求められます。当社では、顧客満足度を継続的に高めていくために、今後もマネー・ローンダリング対策に関する新たな技術開発に取り組み、顧客の声を広く収集しその要望と仕様を入念に吟味しながら各機能及びユーザビリティの向上した実効性のある製品をリリースしてまいります。
(b)組織体制の整備
上場に向けた社内体制の構築への課題としては、主に管理層の人員不足及び開発体制の更なる充実という二点が挙げられます。当社が問題を解決するにあたり、各部門長に横断的な協力を仰ぎ、組織体制を整備しながら、適宜採用による人員獲得及び権限の委譲などを通じ、健全な組織作りに注力してまいります。
(c)人材の採用・育成について
当社の属するマネー・ローンダリング対策業界では、専門知識を有する人材の不足が共通課題とされております。今後、当社の業容が拡大する一方で、十分な人材を確保できない場合には、サービス提供の遅れや生産性の低下等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、社内人材については、中途採用を中心に即戦力として活用できる技術経験者を採用し、採用後は、当社の教育講座を無償で受講する等により専門知識の向上を図るとともに、職場環境の整備やモチベーション向上等に注力することで、人材流出を防ぎ、ノウハウや経験の社内蓄積に努めております。
(d)新規事業の立ち上げについて
急速な進化、拡大を続けているFintech業界において、当社が企業価値を向上させ、高い成長を継続させていくためには、事業規模の拡大と収益源の多様化を図っていくことが必要と認識しております。そのためには、積極的な新規事業の立ち上げが課題と認識しております。このような環境下において、当社はマネー・ローンダリング対策におけるノウハウを活かした事業の創出に積極的に取り組んでまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものになります。
(1)ガバナンス
当社においては、サステナビリティ関連のリスク及び機会を監視し、管理するためのガバナンスに関しては、コーポレート・ガバナンス体制と同様になります。当社のコーポレート・ガバナンスの状況の詳細は、「
(2)戦略
短期、中期及び長期にわたり当社の経営方針・経営戦略等に影響を与える可能性があるサステナビリティ関連のリスク及び機会に対処するための取組のうち、重要なものについては、該当事項はございませんので記載を省略しております。
当社は、エンジニアを中心とした人材の採用を積極的に進めていく方針であり、通常の採用活動に加え、リファラル採用を取り入れております。加えて、ビジネス研修やマネージャー研修プログラムの導入や資格手当の導入により資格取得を促進する等、継続的な人材育成に努めております。
また、テレワーク勤務を基本とする就業形態やフレックスタイム制の導入などのワークライフバランスに配慮した働き方を推進することに加え、自己啓発目的の書籍購入補助やテレワーク環境整備のための物品購入補助等の福利厚生制度等により、働きやすい環境を整備しております。
(3)リスク管理
サステナビリティ課題を含む事業へのリスクについての詳細は、「
また、リスク管理およびコンプライアンス規程に則り、代表取締役社長を委員長とした「リスク管理・コンプライアンス委員会」を定期的に開催し、リスク事例の共有や、リスク対策課題の策定とその対応策について議論し、取締役会に報告する体制をとっております。
(4)指標及び目標
当社は、経営理念に基づき、従業員の資質の向上と能力開発を行い、企業の発展、社会的信用の増大、社会への貢献を推進してまいります。また、従業員ひとりひとりのキャリアアップを目指し、専門的な教育や資格取得に向けて研修の機会を積極的に提供してまいります。同時に、従業員のキャリア形成に即した配置や雇用管理に配慮してまいります。
なお、当該方針に関する指標、当該指標を用いた目標及び実績については、現時点において指標を定めていないため記載をしておりませんが、今後、指標を定めて取り込んでいく予定であります。
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
1 事業環境・事業内容リスクについて
①マネー・ローンダリング対策市場について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
Fintechの普及により、換金手段が多様化し犯罪者にとっても利便性が向上する中、マネー・ローンダリング対策市場は全世界で大きく拡大しており、2020年から2027年には15.60%以上で成長すると予測されております。(注)当社は、国内におけるマネー・ローンダリング対策市場において、2016年12月に法人向けクラウド型不正アクセス検知サービス「Fraud Alert(フロードアラート)」の提供を開始し、その方向性をリードしつつマネー・ローンダリング対策事業の拡大に努めておりますが、競合会社の積極参入による競争が激化した場合及び日本国民の消費活動がキャッシュレス決済から現金決済へ回帰してしまう場合、並びに当該市場を取り巻く新たな規制の導入やその他予期せぬトラブル等により、市場の成長が鈍化した場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(注)出典: Report Ocean 「Global Anti Money Laundering Market Size study」(2022年1月22日公表)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004911.000067400.html
②技術革新への対応について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
当社が属するマネー・ローンダリング対策の分野は、日々発生する新たな脅威や技術革新等による環境変化に伴い、ニーズが変化しやすい特徴があります。今後、Google Inc.及びApple Inc.のプライバシーポリシーが強化されることで、端末識別の難易度が技術的に高まった場合、Fraud Alert(フロードアラート)単体での不正行為抑止効果が薄れていく可能性があります。当社では、顧客のニーズを的確に捉え、より実効性のあるサービスを提供すべく、新たな脅威や技術革新等に関する情報収集に努めております。しかし、これらの技術革新への対応が遅れ、他社に大きく先行された場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③法的規制について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、主要なビジネスに関係する犯罪による収益の移転防止に関する法律及び個人情報保護法等に関しては、関係当局及び法律専門家に照会・確認のうえ、適用関係を確認済であり、当社の事業を制限する直接的かつ特有の法的規制は本書提出日現在において存在しないと考えております。しかしながら、今後、当社の事業を直接的に制限する法的規制がなされた場合、また、従来の法的規制の運用に変更がなされた場合には、当社の事業展開は制約を受ける可能性があります。加えて、個人情報を活用した新しいサービス作りにおいては法的整備が絡む可能性があり、継続的なロビイング活動の強化が求められる可能性があります。当社としては引き続き法令を遵守した事業運営を行っていくべく、今後も法令遵守体制の強化や社内教育などを行っていく方針ですが、今後当社の事業が新たな法的規制の対象となった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④競争状況について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、金融機関を主な顧客とし、マネー・ローンダリング対策領域で多角的なサービスを提供しており、独自のサービスポジションを獲得しております。これは、データ検知のサービスを提供するセキュリティ企業が多い中で、マネー・ローンダリング対策分野においては常に新しい犯罪手口が発生するために、データ検知サービスでは対応が後手になってしまうこと(当社想定)から、当社がデータモニタリングという独自の内容と価格でのサービス提供を実現させてきたことによると考えておりますが、新規参入等により競合が出現し競争が激化した場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤当社が提供するサービスの瑕疵について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
不正検知サービス「Fraud Alert」等、当社が提供するサービスでは、ソフトウエアの開発から販売までの過程において数多くの品質チェックを行い、プログラムの動作確認には万全を期しておりますが、販売時には予想し得なかったソフトウエア特有のバグ(不具合)が販売後に確認されることもあります。その場合、当社では速やかにソフトウエアのアップデート(修正)プログラムを提供し対応しております。顧客の不正検知確認体制不備は一義的には顧客の責任であり当社の責任は限定的ではあるものの、こうしたバグによりサービスの提供ができなくなる場合、バグの解決に非常に長期間を要した場合、またはバグの解決に至らなかった場合は、サービスの売上の減少だけでなく、当社への信頼が低下する恐れがあり、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑥マネー・ローンダリング対策特化による需要低下リスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、不正検知サービス「Fraud Alert」に代表されるマネー・ローンダリング対策事業に特化しております。今後、経済環境の悪化その他の要因により、マネー・ローンダリング対策市場の需要が低迷した場合等には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。
⑦SLA(サービスレベルアグリーメント)抵触によるリスク(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、当社サービスの月間の稼働時間及び一定時間あたりの処理速度(一定時間あたりのアクセス数)等の技術的なサービス提供能力について、2023年12月末時点で12社に対して一定の保証水準を設けており、あらかじめこれを提示しております。当社は、SLAに定めるサービスコミットメントを達成できなかった場合には、SLAのサービスコミットメント条項に基づき、月次利用料金の範囲内で利用料金を減額しなければならず、かかる減額が多額になった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑧システム等に関するリスクについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の事業は、外部クラウドサーバー(Amazon Web Services、以下「AWS」という。)が提供する各種サービスをインターネットを介して顧客企業に提供することを前提としております。当社では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、リスクマネジメントに努め、また、システム障害の発生やサイバー攻撃によるシステムダウン等を回避すべく、サーバー設備の強化や稼働状況の監視等により未然防止策を実施しております。しかしながら、サイバー攻撃や自然災害や事故などによる不測の事態が発生し、万が一、AWS自体にシステム障害が起こるような場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑨特定顧客への依存について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
2023年12月期における当社の売上高に占める主要取引先上位10社の売上高合計の割合は69.0%であり、また、それら取引先は銀行、証券会社などの金融機関、クレジットカード事業者であることから、特定の業界・顧客企業への依存度が高い状況にあります。本書提出日現在において、マネー・ローンダリング対策市場は、将来の成長が見込まれており、他の業界・顧客企業との取引額の拡大を図り、特定顧客への依存リスクの分散に努めておりますが、今後、見込みどおりに顧客拡大が進まない場合や予期しない環境の変化により価格改定を余儀なくされる等、当該市場の成長に何らかの問題が生じた場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、現時点において、当該顧客企業と当社との関係は良好な状態でありますが、それらの顧客企業の経営方針に変更が生じ、契約条件の変更等があった場合は、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑩研究開発リスクについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社では、既存事業の強化及び新規事業創出のため積極的に研究開発活動を行っております。しかし、技術革新のスピードが速くタイムリーに新製品の開発ができないなど、期待した成果が得られず計画を断念することになった場合には、投下した研究開発費を回収できないため、当社の業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、これらの研究開発体制の維持・強化のためには、高度な技術を持った人材の確保が不可欠であり、技術者が十分に確保できない場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
2 経営管理体制に関するリスク
①人材の採用・育成について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の属するマネー・ローンダリング対策業界では、専門知識を有する人材の不足が共通課題とされております。今後、当社の業容が拡大する一方で、十分な人材を確保できない場合には、サービス提供の遅れや生産性の低下等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、社内人材については、中途採用を中心に即戦力として活用できる技術経験者を採用し、採用後は、当社の教育講座を受講する等により専門知識の向上を図るとともに、職場環境の整備やモチベーション向上等に注力することで、人材流出を防ぎ、ノウハウや経験の社内蓄積に努めております。
②特定人物への依存について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の創業者であり大株主でもある代表取締役社長島津敦好は、当社の強みである事業の創出やノウハウを蓄積しており、事業の推進において重要な役割を果たしております。当社は、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を目指し、幹部人材の育成及び強化を進めております。しかしながら、何らかの理由により同氏が当社の業務執行ができない事態となった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③小規模組織であることのリスクについて(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は小規模な組織であり、現在の人員構成において最適と考えられる内部管理体制や業務執行体制を構築しております。当社は、今後の業容拡大及び業務内容の多様化に対応するため、人員の増強、内部管理体制及び業務執行体制の一層の充実を図っていく方針でありますが、これらの施策が適時適切に進行しなかった場合には、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
④コンプライアンス体制について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は企業倫理の確立による健全な事業活動を基本方針とする「コンプライアンスの基本方針」を制定し、当社の役員・従業員への教育啓発活動を随時実施し、企業倫理の向上および法令遵守の強化に努めています。しかしながら、コンプライアンス上のリスクを完全には回避できない可能性があり、法令等に抵触する事態が発生した場合、当社の社会的信用やブランドイメージの低下、発生した損害に対する賠償金の支払い等により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤情報管理体制について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社のサービスでは個人関連情報等の顧客の重要な情報を入手します。これらの情報は基本的には暗号化されており、当社単体では個人との紐づけは不可能となっておりますが、これらの顧客情報の漏洩は事業展開において大きなリスクであります。当社では、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得し、社内教育の実践、各種データのアクセス権限による制約、書面情報の施錠管理、オフィスの入退室管理等、対策を講じて実践しておりますが、顧客情報の漏洩が発生した場合、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑥知的財産権の管理について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社による第三者の知的財産権侵害の可能性につきましては、専門家と連携しながら調査可能な範囲で対応を行っておりますが、当社の事業領域に関する第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社が認識せずに第三者の知的財産権を侵害してしまう可能性があります。この場合、使用料の請求や損害賠償請求等により、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。当社に対する知的財産権の使用料の請求や損害賠償請求等が発生することや、当社が保有している知的財産権が第三者により侵害された場合には、法的措置を含めた対応を要するなど、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑦内部管理体制の整備状況にかかるリスクについて(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と位置づけ、多様な施策を実施しております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を構築、整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
3 その他のリスクについて
①自然災害、事故等について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)
地震や天災といった災害、国内におけるテロ活動などの予期せぬ事態により、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大防止のため、当社では、テレワークや時差出勤など事業運営に極力支障が生じない体制を構築しており、勤務時においては役職員へのマスク着用、手洗い、消毒の推奨等により感染防止に向けた対策を講じております。しかしながら、当社の役職員が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染する可能性を完全に排除することは困難であり、万一、社内での感染が拡大した場合は、事業運営の一部に支障をきたす可能性や、オフィスの閉鎖等の対応を余儀なくされる可能性があります。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大が長期化し、企業活動が長期間にわたり大幅に制限される等の理由により、景気が著しく悪化し、多くの顧客企業がセキュリティ投資を抑制した場合には、売上の減少や利益率の低下、回収サイトの長期化など、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
②訴訟について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の事業運営にあたって、予期せぬトラブルや問題が生じた場合、当社の瑕疵にかかわらずこれらに起因する損害賠償の請求や、訴訟の提起を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合は、起訴内容や損害賠償額の状況及びその結果によっては当社の社会的信用が低下することに加え、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
③配当政策について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社では、利益配分につきましては、経営成績及び財政状態を勘案して、株主への利益配当を実現することを基本方針としております。しかしながら、当社は本書提出日現在成長過程にあり、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先して、創業以来無配当としてまいりました。現在は、内部留保の充実に努めておりますが、将来的には、経営成績及び財政状態を勘案しながら株主への利益の配当を検討する方針であります。ただし、配当実施の可能性及びその実施時期等については、現時点において未定であります。
④大株主について(発生可能性:低、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)
当社創業者かつ代表取締役社長である島津敦好の本書提出日現在での議決権所有割合は、直接保有分として6.2%であります。また、島津敦好の資産管理会社である株式会社rhizomeの議決権を合算した所有割合は59.6%となっております。島津敦好及び当該資産管理会社は引き続き当社の株式を保有し、大株主となる見込みであります。島津敦好は、安定株主として引続き一定の議決権を保有し、その議決権行使にあたっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しています。
島津敦好は、当社の創業者かつ代表取締役社長であるため、当社としても安定株主であると認識していますが、将来的に何らかの事情により当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況に影響を及ぼす可能性があります。
⑤株式の追加発行等による株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生する時期:数年以内、影響度:小)
当社は、当社の役員及び従業員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。また、今後においても新株予約権を活用したインセンティブプランを活用していく方針であります。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。本書提出日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は780,100株であり、発行済株式総数6,086,700株の12.8%に相当しております。
⑥資金使途について(発生可能性:低、発生する時期:数年以内、影響度:中)
当社の公募増資による資金調達は、プロダクトであるFraud Alertの開発及び運用費及び借入金の返済に充当する予定です。しかしながら、外部環境等の影響により、目論見どおりに事業計画が進展せず、調達資金が上記の予定どおりに使用されない可能性があります。資金使途計画が変更となる場合には、速やかに開示いたします。また、予定どおりに使用された場合でも、想定どおりの効果を上げることができず、当社の事業展開、経営成績や財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は1,029,029千円となり、前事業年度末に比べ356,902千円増加いたしました。これは主に、受注増加に伴い営業活動によるキャッシュ・フローが増加したことにより現金及び預金が350,594千円増加したこと等によるものであります。
当事業年度末における固定資産合計は149,668千円となり、前事業年度末に比べ103,494千円増加いたしました。これは主に、繰延税金資産が89,705千円増加したこと等によるものであります。
この結果、当事業年度末における資産合計は1,178,698千円となり、前事業年度末に比べ460,397千円増加いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は477,040千円となり、前事業年度末に比べ200,024千円増加いたしました。これは主に、短期借入金の増加51,000千円、業績・事業規模拡大に伴い未払法人税等が111,441千円増加したこと等によるものであります。
当事業年度末における固定負債合計は250,000千円となり、前事業年度末から変動はございません。
この結果、当事業年度末における負債合計は727,040千円となり、前事業年度末に比べ200,024千円増加いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産合計は451,657千円となり、前事業年度末に比べ260,372千円増加いたしました。これは、当期純利益を260,372千円計上したことによる利益剰余金の増加によるものであります。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大のピークアウトから人出の回復が見られる一方、同感染症に対する警戒が残り続けていること、さらにはロシア・ウクライナ情勢の長期化による資源価格の高騰、為替の急変動などから、依然として不透明な状況が続いておりました。
当社は「情報インフラを共創し、世界をより良くする」というミッションのもと、先端技術を活用した実用的なサービスを創り続け、犯罪のビッグデータをアルゴリズムと掛け合わせた法人向けクラウド型不正アクセス検知サービス「Fraud Alert」(フロードアラート)を、情報セキュリティ及びマネー・ローンダリング対策の観点で金融機関をはじめとした資金移動業者、通信事業者、ライフライン企業などへの導入拡大を目指しております。
国内の情報セキュリティ市場においては、電子商取引の規模拡大に伴い決済のキャッシュレス化が進み、キャッシュレス決済が拡大することでクレジットカード等の不正利用が増加し、その被害抑制対策強化の流れが加速すると見込まれます。なお、2022年の消費者向け電子商取引は前年比9.9%増の22兆7,449億円(注1)となり、2022年の国内のキャッシュレス決済比率は36.0%(注2)まで到達するなど、いずれも順調に推移しております。
また、2021年8月30日にFATF(金融活動作業部会)による第4次対日相互審査報告書が公表され、わが国は、審査対象である有効性と法令遵守状況の双方で、マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策における合格基準を下回り、「重点フォローアップ」に分類されました。これらの結果を受け、今後法改正等の動きが見込まれると同時に、より一層マネー・ローンダリング対策市場の拡大が進むと考えられます。
このような状況のもと当事業年度においては、当社は主に「Fraud Alert」の導入社数拡大に取り組むと共に、販売拡大に耐えうるシステムの構築を推進し、開発・営業など組織体制の整備を重点的に進めることで、サービスの強化に注力し、事業拡大を進めております。
この結果、当事業年度の経営成績は、売上高994,995千円(前期比29.3%増)、営業利益295,860千円(前期比35.8%増)、経常利益293,868千円(前期比33.7%増)、当期純利益260,372千円(前期比4.2%増)となりました。
なお、当社はマネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は954,701千円となり、前事業年度末に比べ350,594千円増加いたしました。
当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において営業活動により得られた資金は、306,545千円となりました。
これは主に、事業拡大による税引前当期純利益の計上293,868千円、契約負債の増加額53,792千円、法人税等の支払額11,759千円等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において投資活動により使用した資金は、6,950千円となりました。
これは主に、事業用PCなどの有形固定資産の取得による支出6,960千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当事業年度において財務活動により得られた資金は、51,000千円となりました。
これは、短期借入れによる収入51,000千円によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社は生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。
b.受注実績
当社が行う事業は、提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は次のとおりであります。
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セグメント名称 |
当事業年度 (自2023年1月1日 至2023年12月31日) |
|
|
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
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マネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業 |
994,995 |
129.3 |
|
合計 |
994,995 |
129.3 |
(注)最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自2022年1月1日 至2022年12月31日) |
当事業年度 (自2023年1月1日 至2023年12月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社三井住友銀行 |
110,400 |
14.3 |
116,371 |
11.7 |
|
楽天証券株式会社 |
88,500 |
11.5 |
103,100 |
10.4 |
|
株式会社イオン銀行 |
83,760 |
10.9 |
- |
- |
(注)当事業年度の株式会社イオン銀行に対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満であ
るため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況 ②経営成績の状況」をご参照ください。
当社の経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。
当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社の資本の財源及び資金の流動性につきましては、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、当社サービスを拡大していくための開発人員及び営業人員の人件費、また研究開発に係る費用であります。これらの資金については自己資金にて充当する方針です。今後の更なる業容拡大に対応するための資金に関しては、自己資金に加えて、株式上場時の調達資金を用いて、成長投資の実行とともに財務基盤の強化を図ってまいります。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社は、持続的な成長と企業価値の向上を目指しており、主な経営指標として月次経常収益(MRR)を特に重視しております。今後もこの指標を目標として経営を行うことにより、企業の成長性及び効率性の確保を図る所存であります。
当事業年度においては、導入企業数が増加し、その結果月次経常収益は増加しております。
重視する指標の推移
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期間 |
前事業年度末時点 (2022年12月) |
当事業年度末時点 (2023年12月) |
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月次経常収益(MRR) |
74,233千円 |
88,367千円 |
該当事項はありません。
当事業年度の研究開発活動は、サイバーセキュリティを目的としてインターネット上にある各端末を個別に識別するための属性の分析を中心に行ってまいりました。研究開発体制は、当社の海外・技術研究部と外部の専門家が密接な連携・協力関係を保ち、効果的かつ迅速的に活動を推進しております。当事業年度における当社が支出した研究開発費の総額は
なお、当社はマネー・ローンダリング及びサイバーセキュリティ対策事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。