当社は、“Otsuka-people creating new products for better health worldwide”の企業理念のもと、「流汗悟道(Commitment)」、「実証(Actualization)」、「創造性(Creativity)」という経営の真髄に基づき、ユニークかつ多様な事業と世の中の真のニーズ・インサイト、サイエンスやテクノロジーを有機的に結合させることから生まれる新しいコンセプトや、多様な事業との重なりや派生、ニッチな領域の開拓により新たな価値を創造してきました。
引き続き、日々の健康の維持・増進、疾病の診断から治療までを担うトータルヘルスケア企業として、顕在化しているが満たされないニーズと消費者が気付いていないニーズに対し、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業の独創的な製品を提供することにより、「世界の人々の健康に貢献する、なくてはならない企業」を目指してまいります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 第3次中期経営計画の位置づけと主な施策
第3次中期経営計画は、「独自のトータルヘルスケア企業として世界に躍進~成長の5年間~」と位置づけ、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業をコア事業として、新たな価値創造と既存事業価値の最大化に取り組み、また資本コストを意識した経営を実践し、持続的な成長を目指しました。
<業績目標>年平均成長率10%以上の事業利益成長
• 医療関連事業・ニュートラシューティカルズ関連事業の主力製品・ブランドの着実な成長により実現(オーガニックな成長)
• 積極的な研究開発投資を行い、次期中期経営計画以降の収益を牽引する新薬開発の継続
(注)事業利益=売上収益-売上原価-販売費及び一般管理費+持分法による投資損益-研究開発費
<事業戦略>既存事業価値の最大化と新たな価値創造
① 主力製品・ブランドへの戦略的な取り組みにより成長を加速
・医療グローバル4製品(「エビリファイ メンテナ」「レキサルティ」「サムスカ/ジンアーク」「ロンサーフ」)、ニュートラシューティカルズ主要3ブランド(「ポカリスエット」「ネイチャーメイド」、ニュートリション エ サンテ社ブランド)、ニュートラシューティカルズ育成3ブランド(デイヤフーズ社ブランド、「エクエル」「ボディメンテ」)を成長ドライバーと位置付け、戦略的な取り組みを強化
② 次世代の事業・製品への取り組み
・医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業における持続的成長を牽引する新製品群の上市と育成
医療関連事業:“大塚だからできる”新領域での挑戦、未充足な医療ニーズの解決と独創的かつ多様な研究基盤からのイノベーション創出
ニュートラシューティカルズ関連事業:環境変化を見据えた新しいコンセプトの創出、新カテゴリー・新エリア展開への挑戦による、高利益率体制の継続
<財務方針> 資本コストを意識した経営の実践
・成長投資と株主還元の両立
・将来への成長投資と株主還元資金の確保
・規律ある経営実践に向け、加速するグローバル展開を支えるための経営基盤の整備
(2) 第3次中期経営計画の進捗
第3次中期経営計画の最終年である2023年度の進捗は、以下のとおりです。
<業績目標の進捗>
2023年度の売上収益は、すべての事業セグメントで増収となり、2,018,568百万円(前期比16.1%増)となりました。主な要因は、医療関連事業において、持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」、抗精神病薬「レキサルティ」、V2-受容体拮抗剤「ジンアーク」、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」のグローバル4製品、及び導出品に対するロイヤリティ・マイルストーン収入の伸長が業績を牽引したことによります。さらに、ニュートラシューティカルズ関連事業においても、健康意識が高まる中、「ポカリスエット」の日本・海外の売上が伸長したことに加え、「ネイチャーメイド」が伸長しました。また、その他の事業のファインケミカル分野が好調に推移しました。
研究開発費投資前事業利益は、620,358百万円(同37.8%増)となりました。主な要因は、グローバル4製品及び導出品に対するロイヤリティ・マイルストーン収入の増収による売上総利益の増加、販売費及び一般管理費を適正にコントロールしたことによるものです。
研究開発費は、研究開発が順調に進捗したことにより、前期比で増加しました。主な増加要因は、新規作用機序を有する抗精神病薬に係る住友ファーマ株式会社との共同開発及び販売に関するライセンス契約締結に基づく開発費、非小細胞肺がんを対象として開発中のzipalertinib/TAS6417、及びIgA腎症を対象として開発中のsibeprenlimab/VIS649が順調に進捗したことや為替影響があったことによります。
事業利益は、想定以上の売上成長と販売費及び一般管理費を適正にコントロールした結果、312,553百万円(同78.7%増)となり、第3次中期経営計画の業績目標である「年平均成長率10%以上の事業利益成長」を大きく超えて、年20%強の高水準を達成しました。
<事業戦略の進捗>
既存事業の売上収益は順調に伸長し、製品価値最大化に向けた医療グローバル4製品を中心とした承認申請・取得やエリア拡大、ニュートラシューティカルズ主要3ブランドを中心とした市場浸透やエリア拡大等は、以下の通り順調に進捗しました。新たな価値創造に向けた研究開発もコア領域を中心に進捗し、第4次中期経営計画以降を見据えた積極的な投資を進めました。
医療関連事業において、成長ドライバーのグローバル4製品は前期比で大幅に伸長しました。アンメット・ニーズの解決に貢献する後期開発パイプラインの中で、ブレクスピプラゾールは、米国においてアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(攻撃的行動及び発言、非攻撃的行動の亢進、焦燥を伴う言動等)の適応症を有する初めての抗精神病薬として承認を取得しました。超音波腎デナベーションシステムは、米国において高血圧の新たな治療選択肢として、腎デナベーションデバイスとして初めて承認を取得しました。新製品育成についても着実に進捗しております。
・「エビリファイ メンテナ」に続く新たな製剤であるアリピプラゾール2カ月持続性注射剤について、2023年4月、米国で統合失調症と双極性Ⅰ型障害の効能で承認を取得しました。
・「レキサルティ」は、米国においてアルツハイマー型認知症に伴うアジテーション(攻撃的行動及び発言、非攻撃的行動の亢進、焦燥を伴う言動等)の適応症で2023年5月に承認を取得し、日本においても2023年10月に承認申請しました。また、日本において大うつ病の適応症で2023年12月に承認を取得しました。
・「サムスカ/ジンアーク」は、経口水利尿薬としての医療現場における価値が向上し、さらに世界初の常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)治療薬として日本・米国・欧州で患者さんに貢献しています。
・「ロンサーフ」は、米国においてベバシズマブ併用療法で切除不能な進行・再発大腸がんを適応症として2023年8月に承認を取得しました。
ニュートラシューティカルズ関連事業において、売上収益は順調に成長しながらも事業利益率12%以上を維持し、前期に続き、売上収益、事業利益ともに過去最高となりました。引き続き、高成長市場においてブランドを確立することにより、さらなる事業規模の拡大と収益性の向上を目指します。
・「ポカリスエット」は、生活者の健康管理意識の高まりとともに水分・電解質補給の重要性が浸透しています。また、新エリアへの展開を進めています。
・「ネイチャーメイド」は、健康意識の高まりによる需要が拡大する中、消費者の生活スタイルに合わせた新たなアプローチに取り組んでいます。
・ニュートリション エ サンテ社ブランドは、フードサービス*やEコマースの拡大を進めています。
* 公共機関や学校等における給食サービス
ROEは、AVP-786に係る減損損失等の影響により2023年度は5.3%となりましたが、2024年度は資本効率の向上につとめます。
(3) 経営環境及び対処すべき課題
2023年度を最終年度とした第3次中期経営計画期間には、新型コロナウイルス感染拡大の影響とロシア・ウクライナや中東情勢に伴う地政学的リスクの高まりにより、社会情勢は一層不透明さを増し、当社グループの事業活動においても一定の影響を受けました。2023年は、コロナ禍で自粛されていた社会活動が再開されたことに伴い、新たな事業環境に対応するマーケティング活動や営業活動等を積極的に進めてまいりました。一方で、原材料価格の高騰、為替変動による物価上昇等にも対処してまいりました。
根本的なヘルスケア業界を取り巻く事業環境は、高齢化、高額医薬品の発売、感染症対策等による医療費の増加傾向が続き、日米欧諸国において治療に対する医療コストへの関心が高まっております。限られた財源の中で、医療指針が医療コストと治療効果のバランスの中で捉えられ、薬価制度の改革やジェネリック医薬品の浸透が進む一方、AIや機械学習、遺伝子治療等の新テクノロジーが台頭してきています。このような中、病気に対する日々の予防を含む健康への意識が一段と高まりを見せております。当社グループは“大塚だからできる”新たな社会への貢献に引き続き取り組むとともに、これらの健康意識の高まりを成長機会と捉え、持続的成長の実現に向けて進んでまいります。
当社グループは、“Otsuka-people creating new products for better health worldwide”の企業理念のもと、「流汗悟道」「実証」「創造性」という経営の真髄に基づき、ユニークかつ多様な事業と、世の中の真のニーズ・インサイト、サイエンスやテクノロジーを有機的に結合させることから生まれる新しいコンセプトや、多様な事業との重なりや派生、ニッチな領域の開拓により新たな価値を創造してきました。日々の健康の維持・増進、疾病の診断から治療までを担うトータルヘルスケア企業として、顕在化しているが満たされないニーズと消費者が気づいていないニーズに対し、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業の独創的な製品を提供することにより、「世界の人々の健康に貢献する、なくてはならない企業」を目指してまいります。
医療関連事業は、“大塚だからできる”新領域での挑戦、未充足な医療ニーズの解決と独創的かつ多様な研究基盤からのイノベーション創出により、課題解決に向けた様々な取り組みを進めています。治療満足度の低い疾患が多く残されている精神・神経、がん、循環器・腎領域を中心に、多様な事業のシナジーを活かした独自のアプローチにより、革新的な新薬の創出を目指します。また、医療の最適化に向けた体系的なソリューションについて挑戦してまいります。さらに、アライアンスやオープンイノベーション、ベンチャーキャピタルとの協業等による創薬基盤の強化、創薬モダリティの多様化に取り組み、持続的な進化と成長を目指してまいります。
ニュートラシューティカルズ関連事業は、健康への意識が高まる中、医療関連事業で培われたサイエンス・ノウハウを活かしながら、顕在化されていないニーズや社会課題に対して新しいコンセプトのソリューションを提案し、世界の人々の健康維持・増進による健康寿命の延伸に貢献することを目指します。グローバルにおける環境変化を見据え、最新のサイエンスやテクノロジーと独自のビジネスモデルを組み合わせて、新たな価値の創造、新カテゴリー・新エリア展開への挑戦を進めます。健康を取り巻く様々な社会課題に対して、課題の顕在化から啓発活動を継続的に実施し、各ブランドからそのソリューションをこれからも提案し続けます。さらに外部機関との連携を強化し、これらの活動を推進してまいります。
財務方針としては、資本コストを意識した経営の実践に向けて、両事業とも既存事業最大化に向けた投資および次期中期経営計画以降を見据えた新規事業への積極的な投資をするとともに、シェアードサービスの拡大、IT基盤の強化、グループ内金融の推進、プロキュアメントの最適化をはかり、規律ある経営実践に向けた取り組みを進めています。
また、当社グループは、企業理念のもと、事業を通じた社会課題の解決に取り組み、自らの持続的な成長と健康でサステナブルな社会の実現を目指します。
2024年度から2028年度までを対象期間とする第4次中期経営計画の策定を進めており、2024年6月7日に公表を予定しています。
(1) サステナビリティ
① 戦略
当社グループは、“Otsuka-people creating new products for better health worldwide”という企業理念のもと、革新的で創造性に富んだ製品・サービスを通じて、世界の人々の普遍の価値、社会課題でもある「健康」に貢献する、なくてはならない企業を目指して事業を展開しています。
そのため、企業理念のもと、事業を通じた社会課題の解決に取り組み、自らの持続的な成長と健康でサステナブルな社会の同時実現をサステナビリティミッションとして掲げています。本ミッション達成のため、当社グループが取り組むべき課題について、マテリアリティを特定し、それぞれの戦略、指標を設定し、取り組みを進めます。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
② ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティのガバナンス組織として当社のサステナビリティ推進責任者である取締役を委員長とする「大塚グループ サステナビリティ推進委員会」を設置しています。本委員会は、当社グループ全体のサステナビリティの推進を目的としており、サステナビリティに関する方向性や計画等を討議・決定する機関です。委員会を定期的に開催し方向性の討議や活動の評価等を行うほか、各推進領域の体制整備や推進計画の更新を行います。本委員会メンバーは環境、生産、品質、人事、総務、コンプライアンス・リスク管理、広報等のサステナビリティにかかわる領域のグループ責任者等で構成され、当社のサステナブル推進部、IR部、経営企画部、人事部が事務局となっています。
また、環境、サステナブル調達など一部領域においては、本委員会の下に分科会やワーキンググループなどを設置し、領域毎の戦略や取り組みについて議論・決定を行っています。
■サステナビリティ推進体制
③ リスク管理
当社のリスク管理については、「
④ 指標及び目標
当社グループでは、自らの持続的な成長と健康でサステナブルな社会の同時実現に向け、当社グループが注力する取り組みである「マテリアリティ(重要項目)」を特定しています。マテリアリティは、各種国際ガイドライン等を参考に社会課題をリストアップした後、社会課題の重要度、当社グループの課題解決への貢献の可能性、事業への影響や強み等を評価したうえで特定を行い、当社の取締役会で承認されています。また、マテリアリティをもとに中長期目標も策定し、当社ホームページや統合報告書等を通じて定期的に活動進捗を報告しています。
<マテリアリティ>
本マテリアリティは、第3次中期経営計画に合わせて2019年に特定しました。社会や環境の変容、当社グループの事業の変化を踏まえ、現在、第4次中期経営計画の策定に合わせてマテリアリティの見直しを実施しています。
(2) 人材育成と多様性
当社グループでは、自由闊達な職場環境で多様な社員が活躍することこそが、イノベーションの創出ひいては企業の持続的成長につながると考えています。創造意欲を喚起する企業風土の醸成を目指し、人材育成に投資を行うとともに、ダイバーシティ&インクルージョンを積極的に推進しています。また、安全な職場環境を整備し、人権を尊重した公平な雇用や評価、昇進などに努めるとともに、定期的に従業員エンゲージメントを測定し、課題の抽出や組織の活性化に役立てています。
① 戦略
a. 人材育成
当社グループは、グループ内外のコミュニケーションの積極的な促進や、固定観念にとらわれない職域や領域を超えたネットワークの構築により、イノベーションを永続的に創出していきたいと考えています。世界各国で事業展開する中、企業文化・理念を深く理解し、世界を舞台に戦略を実行できる人材が必要不可欠です。また、新型コロナウイルス感染拡大を契機とした社会の新たな変化、地政学的リスクの深刻化など、さまざまな変化に対応することが求められています。当社グループでは、一人ひとりの従業員が失敗を恐れず新しいことに挑戦し、多様な「個人の能力」を高める人材育成を目指し、各社の事業戦略や課題に即した人材育成に加え、世界中の従業員を対象とした経営人材・グローバルリーダーの育成、グローバル人材育成、デジタル人材の育成など、新たなイノベーションを生み出すための様々なプログラムを提供しています。
b. ダイバーシティ&インクルージョン
当社グループは、多様な従業員の活躍が、イノベーションやグローバル化の更なる進展や革新的な製品開発につながると考えています。「大塚グループ・グローバル行動規準」ではダイバーシティの推進を宣言し、グループ各社の推進チームを中心に、グループ内の連携と各社独自の取り組みにより、ダイバーシティ&インクルージョンを推進しています。多様な働き方の支援やLGBTQ・障がい者等の活躍推進に向けた取り組みなどに加え、2017年には国連グローバル・コンパクト(UNGC)と国連女性機関(UN Women)が共同で作成した女性の活躍推進に自主的に取り組む企業の行動原則である「女性のエンパワーメント原則(WEPs)」に署名し、女性の活躍を推進する取り組みを強化しています。
c. 社内環境整備
当社グループでは、企業理念の実現には従業員一人ひとりが健康で生き生きと働けることが不可欠であると考え、グループ各社で「健康宣言」を制定し、従業員の健康管理の徹底と安全・健康な職場環境の整備に取り組んでいます。また、「大塚グループ・グローバル行動規準」に則り、人権を尊重し、労働法規を遵守した公平な雇用方針のもと、公正な評価やフィードバック、処遇、最適な配置を推進しています。2020年には「大塚グループ 人権方針」を策定し、人権尊重に向けた取り組みを推進しています。
② 指標及び実績(2022年度)
項目 |
指標 |
バウンダリー(注)1 |
実績 |
人材育成 |
教育研修時間(注)2 |
グローバル(注)3 |
103,586時間 /年 |
ダイバーシティ& |
女性管理職比率 |
グローバル(注)4 |
10.6% |
インクルージョン |
男性育児休業取得者数 |
国内(注)5 |
354名 |
|
女性育児休業取得者数 |
国内(注)5 |
277名 |
|
男性育児休業取得率 |
国内(注)5 |
45.6% |
|
女性育児休業取得率 |
国内(注)5 |
96.5% |
|
障がい者雇用率 |
国内(注)6 |
2.5%(2023年6月1日時点) |
健康経営 |
健診受診率 |
国内(注)7 |
82.6% |
|
特定保健指導実施率 |
国内(注)7 |
73.5% |
労働安全衛生 |
労働災害度数率 |
グローバル(注)3 |
0.56 |
|
労働災害強度率 |
グローバル(注)3 |
0.00 |
(注)1.各実績は、連結グループにおける記載が困難であるため、提出会社および主要な連結子会社のバウンダリーで算出しております。
2.次世代リーダー育成、管理職研修、階層別研修、評価者研修、新入社員研修などに費やした時間(実務に関連した研修を除く)
3.大塚ホールディングス㈱、大塚製薬㈱、㈱大塚製薬工場、大鵬薬品工業㈱、大塚倉庫㈱、大塚化学㈱、大塚食品㈱、大塚メディカルデバイス㈱、大塚電子㈱、大塚テクノ㈱、岡山大鵬薬品㈱、大塚包装工業㈱、大塚オーミ陶業㈱、東山フィルム㈱、大塚ウエルネスベンディング㈱、㈱JIMRO、大塚ファーマシューティカルD&C Inc.、大塚アメリカファーマシューティカル Inc.、ファーマバイト LLC、大塚ファーマシューティカルヨーロッパ Ltd.
4.大塚ホールディングス㈱、大塚製薬㈱、㈱大塚製薬工場、大鵬薬品工業㈱、大塚倉庫㈱、大塚化学㈱、大塚食品㈱、大塚メディカルデバイス㈱、大塚電子㈱、大塚テクノ㈱、岡山大鵬薬品㈱、大塚包装工業㈱、大塚オーミ陶業㈱、東山フィルム㈱、大塚ウエルネスベンディング㈱、㈱JIMRO、大塚ファーマシューティカルD&C Inc.、大塚アメリカファーマシューティカル Inc.、ファーマバイト LLC
5.大塚ホールディングス㈱、大塚製薬㈱、㈱大塚製薬工場、大鵬薬品工業㈱、大塚倉庫㈱、大塚化学㈱、大塚食品㈱、大塚メディカルデバイス㈱、大塚電子㈱、大塚テクノ㈱、岡山大鵬薬品㈱、大塚包装工業㈱、大塚オーミ陶業㈱、東山フィルム㈱、大塚ウエルネスベンディング㈱、㈱JIMRO
6.大塚ホールディングス㈱、大塚製薬㈱、㈱大塚製薬工場、大鵬薬品工業㈱、大塚倉庫㈱、大塚化学㈱、大塚食品㈱、大塚メディカルデバイス㈱、大塚電子㈱、大塚テクノ㈱、岡山大鵬薬品㈱、大塚包装工業㈱、大塚オーミ陶業㈱、東山フィルム㈱、大塚ウエルネスベンディング㈱、㈱JIMRO、大塚ビジネスサポート㈱
7.大塚製薬健康保険組合(大塚グループ国内企業対象)の被保険者と被扶養者
(3) 気候変動への取組
① ガバナンス
当社グループは、世界の人々の健康に貢献するグローバル企業として、本業を通じた地球環境の負荷低減に真摯に取り組み、地球の自然と未来を守る持続可能な社会づくりに貢献していきたいと考え、ガバナンス体制を構築しています。気候変動に関わる重要課題は、当社取締役副社長と、グループ各社の取締役、または役員で構成される「大塚ホールディングス 環境委員会」において審議・決定しています。グループ全体の方向性に係る審議内容は当社取締役会の承認決議を経て、当社グループの対応方針として各社に共有され、各グループ事業会社 生産部門の取締役をはじめ環境管理担当者で構成される「大塚グループ グローバル環境会議」(以下「OGG環境会議」)の実行スキームとして展開されます。「OGG環境会議」では、検討されたリスクや機会の評価、モニタリング結果の報告を行い、「大塚ホールディングス 環境委員会」は改善の指示、企画立案の承認を行います。また、モニタリング結果内容が事業戦略や経営資源に影響を及ぼす場合は、当社の取締役会で決議案件として経営計画に組み込んでいます。本委員会は、サステナビリティ全体の戦略や方向性を決定する「大塚グループ サステナビリティ推進委員会」の傘下として位置付けられており、グループのサステナビリティ活動において重要な役割を担っています。
■大塚グループ環境マネジメント体制
② 戦略
当社グループは、事業活動におけるすべての環境負荷をゼロにするという2050年環境ビジョン「ネットゼロ」を掲げており、グループの事業活動におけるCO2 排出量の削減に加え、サプライチェーン全体での環境負荷をゼロにすることを目指しています。また、当社グループでは2021年、気候変動に関する重要な財務および戦略に影響を及ぼす可能性のあるリスクの把握と評価の1次分析を実施しました。サステナブルな社会の実現には、気候変動に対応する積極的な脱炭素化への取り組みが必要と認識し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に沿った戦略の策定を進めています。
a. シナリオ分析プロセス
気候変動関連の2℃未満シナリオおよび4℃シナリオにおける事業リスクと機会を、IEA(国際エネルギー機関)およびIPCC(気候変動に関する政府間パネル)等が示すシナリオを用いて分析し、適応策と財務影響等について検証しました。今後もリスクと機会の検討やシナリオ分析の拡充を引き続き進めていきます。
■気候関連リスクに伴う財務影響および対応
■気候関連機会に伴う財務影響および対応
b. レジリエンス強化に向けた適応策
当社グループでは、気候変動が事業に与えるリスク・機会と財務インパクトを把握するため、一次シナリオ分析を実施した結果、炭素税をはじめとする地球温暖化対策への更なる政策手段の導入や規制強化によるエネルギーコスト等の上昇により、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があることが分かりました。これらのリスクを回避・軽減する適応策として、当社グループでは産業革命前からの気温上昇を1.5℃に抑える「1.5℃水準」に対応した気候変動の目標に上方修正し、再生可能エネルギーの導入拡大やメガソーラー設備の導入、燃料転換などを推進し、さらなる事業活動のレジリエンス強化に向けた適応策に取り組んでいます。
③ リスク管理
当社グループは気候関連リスクによる重要な財務影響、戦略影響を及ぼす可能性のあるリスクを「大塚ホールディングス 環境委員会」及び「大塚グループ グローバル環境会議」を通して検討・評価しています。リスク評価の中で重要と判断された場合には、「大塚ホールディングス 環境委員会」の委員長より審議事項として取締役会に取り上げられ、承認された内容は、当社グループの対応方針として各社に共有され、更なる改善に向けた気候関連リスク低減へのマネジメントを図っています。
④ 指標及び目標
指標 |
2017年度実績 |
2022年度実績 |
CO2排出量(Scope1,2) |
818,000t-CO2 |
576,000t-CO2 |
2028年目標:CO2排出量を2017年比50%削減
当社の気候変動における指標および目標等の詳細については、
当社グループ事業の運営及び展開等については、様々なリスク要因があります。当社グループは、それらの想定されるリスク要因に対し、事前に低減・移転・回避・保有を判断し、事実上可能な範囲での施策を検討実施しておりますが、すべてのリスク要因を排除又は低減することは不可能又は著しく困難であり、これらのリスクが顕在化した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
以下、当社グループのリスクマネジメント体制、及び当社グループが重要なリスクであると判断する項目を記載いたしますが、当社グループの事業等に係るリスクをすべて網羅するものではありません。また、将来に関する事項については、当連結会計年度末時点において、当社グループが判断又は予想する主要なものであり、事業等に係るリスクはこれらに限るものではありません。
1. 当社グループのリスクマネジメント体制
<リスクマネジメント体制の全体像>
当社グループは、当社及び主要事業会社における全社リスク管理の一層の充実に取り組むため、リスクを全社的視点で認識・評価し、経営資源を重要なリスクに対する統制へ優先的に配分すること等を目的として、2020年7月からエンタープライズリスクマネジメント(以下、ERMといいます。)を導入しております。
ERMの取り組みの中では、企業理念の実現、事業戦略の目標達成に大きな影響を与えうる不確実性を「リスク」と定義し、全社リスク管理のフレームワーク及びリスク評価の仕組みを構築した上、主要事業会社におけるリスク評価を通して当社グループにおける重要なリスクを識別・評価し、リスクの低減・移転・回避・保有を判断、管理方針の策定、その実行及びモニタリングを継続的に行うことで、効果的かつ効率的に当社グループのリスクを管理しております。
当社では、代表取締役社長を委員長とする「リスク管理委員会」を設置しています。当社の取締役会にて重要なリスクの審議や報告を行うことに加え、同委員会が、重要なリスクに対する管理方針の立案、主要事業会社への必要な指示や支援、管理方針の実施状況のモニタリング等、ERM活動の全般を統括しています。これらの取り組みは当社の取締役会へ報告され、取締役会が必要に応じて指示を行うことで、ERMの実効性を監督しています。
<リスク管理活動の内容>
重要なリスクの特定にあたっては、まず当社及び主要事業会社において、マネジメントインタビューによる経営上のリスク認識の共有(トップダウンアプローチ)と、現場従業員によるリスクとそのコントロール状況のアセスメント(ボトムアップアプローチ)を行い、当社グループに存在するリスクを識別しております。この中で、各社において主要なリスクと判断されたものについては、各社でリスク管理方針及びリスク管理のアクションプランを策定、定期的にリスク状況やアクションプランの進捗状況を把握し、見直しを行っております。当社では各社の主要なリスクの集約・見える化を実施し、当社グループに存在するリスクとコントロール状況を俯瞰的に把握しています。そのうえで、グループ全体に共通するリスクについて精査し、当社グループとしての重要なリスクの取りまとめを行っております。その結果に基づき、全社的な観点からリスク管理委員会において、経済的損失や事業継続性等に繋がりうる当社グループとして影響が大きなリスクを、優先度の高い重要なリスクとして選定しています。
重要なリスクについては、当社及び主要事業会社にてリスク内容や許容範囲を踏まえた各種対策を立案・実行しています。当社は主要事業会社に対して必要な指示や支援を行い、主要事業会社は当社に対して適宜報告や相談を行う等、相互に連携しながらERMを推進・運用しています。
また、当社及び主要事業会社は定期的にリスクのモニタリングを実施し、リスクの顕在化を可能な限り防止するとともに、リスクが許容範囲内に収まっているかの適切な管理に努めております。
(当社グループのリスク管理体制)
2. 認識している重要なリスク
「1. 当社グループのリスクマネジメント体制」に記載の通り、当社グループでは、当社及び主要事業会社において、全社的にリスクのアセスメントを実施した結果、以下の重要なリスクを認識しており、リスク低減等のための取り組みを実施しています。
(1) コア事業領域における重要なリスク
① 医療関連事業における重要なリスク
医療費抑制策に関するリスク |
<リスクの概要> 日本において、政府は増え続ける医療費に歯止めをかけるため、医療費を適正化する方針を示しており、定期的な薬価引き下げや、ジェネリック医薬品の使用が促進されております。 また、当社グループの重要市場である米国においても、インフレ抑制法による先発医薬品(ブランド品)の価格抑制方針のほか、低価格のジェネリック医薬品やバイオシミラー(バイオ後続品)の使用促進も進んでおり、今後の医療費政策の動向が当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループは、革新的な新薬を適正価格で提供し、医療を取り巻く環境整備等にも配慮する一方で、新薬がもつ価値の立証に努めております。 また、規制を遵守する体制を整備するとともに、日本における薬価の中間年改定を含めた薬価制度改革の他、海外を含めた行政動向を継続的に注視しており、適時に対応策を検討しております。 一方で、医療費の高騰等に伴う人々の病気の予防・健康に対する意識の高まりに対し、トータルヘルスケア企業である当社グループの特徴を活かして貢献し、「世界の人々の健康に貢献する、なくてはならない企業」を目指しております。 |
新薬開発の不確実性に関するリスク |
<リスクの概要> 医療用医薬品・医療機器等の開発には多額の研究開発投資を必要とし、厳格な審査に基づく承認取得等のプロセスは長期にわたります。臨床試験で想定した有効性と安全性が確認できないこと等による開発の遅延・中止により、独占販売期間の短縮、競合品の先行、あるいは当該開発品の上市断念等により研究開発費に見合う売上収益が計上できず、中長期的な事業計画に影響を与える可能性があります。また、投資した設備等の稼働率が想定を下回ることによる利益率の低下や資産の減損損失の計上等により、当社グループ業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、精神・神経領域やがん・がんサポーティブケア領域、循環器・腎領域等を重点領域とし、未充足疾患に焦点を当てた研究開発に注力し、当該領域におけるパイプラインの充実化と開発の成功確度を高めることに努めております。また、試験のモニタリングを実施し、課題が認められた場合は関連部門と連携した対応策を実施しております。加えて、開発計画通りにプロジェクトが進まない場合も想定した影響分析や、外部からの導入による開発品目の拡充等によりリスクを低減しております。 また、当社グループでは、医薬品開発に関する主要な計画について各社の取締役会で意思決定を行っております。さらに、諮問機関であるグローバル戦略会議等で開発に関する予算順位付け等を行い、適宜研究開発方針を見直し、適切にポートフォリオを管理しております。 |
副作用等に関するリスク |
<リスクの概要> 医薬品・医療機器等では、安全性プロファイルに影響する予期せぬ重大な副作用が生じることがあります。そのような場合、開発中止、販売中止、添付文書の改訂、回収等の対応が必要になり、事業全体の売上収益や開発計画への影響が発生する可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、前述のポートフォリオ管理に加え、安全管理に係るグローバルな組織体制を構築し、全世界で業務実施手順を定め、従業員への教育を行うことで安全性情報の収集に努めております。医薬品・医療機器等を開発・販売しているすべての国・地域において、グループ各社又は提携会社等により収集された安全性情報は、各社のグローバルデータベースで管理しております。安全性情報は社内で医師による評価を行い、各国・地域の規制に応じ適切に当局に報告するとともに、安全対策を実施する体制を整備しております。 |
品質に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループの製品に関して、原材料調達先、自社工場・製造委託先の製造プロセスにおける不備により、最終製品の品質に問題が生じた場合や関連法令が遵守されない場合には、回収、販売停止等が生じ、製品供給の不安定化によって、患者さんへ適切な医療が提供できなくなる可能性があります。 さらに、社会的信頼の喪失等により、当社グループのブランド価値や信用が低下し業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、高品質な製品を供給するため、各国・地域の規制に準拠した製造及び品質管理を徹底し、品質保証体制の強化に常に取り組んでおります。製造委託先や原材料の取引先に対して、製造管理及び品質保証体制の定期的な確認・評価等を実施し、当社グループと同様の製品品質を確保しております。 |
② ニュートラシューティカルズ関連事業における重要なリスク
新カテゴリー・新エリア展開に関するリスク |
<リスクの概要> ニュートラシューティカルズ関連事業では、環境変化を見据えた新しいコンセプトの創出、新カテゴリー・新エリア展開への挑戦、グローバル展開の加速により、継続的に事業利益率10%以上を確保する高利益率体制の継続に取り組んでいます。これらを推進するにあたり、顧客の潜在ニーズを取り入れた製品を市場に適応させられない場合、また新エリアでの法的規制、経済情勢、政情不安や事業環境の不確実性等のリスクが顕在化した場合には、売上収益や事業計画に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、各市場におけるブランド価値の維持・向上のため、マクロ及びミクロ市場環境に注視し、製品や地域特性を踏まえて、必要に応じて長期的な視点による戦略の最適化等を実施することで、リスクの低減に努めております。また、関連部門において、グローバルブランド・カテゴリー創出のための情報収集・分析及び戦略策定や、既存グローバルブランドの強化策等を実施しており、関連事業の効果的なグローバル展開に繋げています。 |
食の安全性・品質に関するリスク(消費者関連事業も共通) |
<リスクの概要> 近年、国内外の食品業界においては、有害物質の混入等の様々な問題が発生しており、当社グループの品質管理体制の範囲を超えた事態が生じた場合は、当社グループの業績、財政状態並びに社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、「食の安全」をお客様に提供するため、自社製造品のみならず委託製造品を含む国内外すべての製品の品質管理や安全性保証等に関して万全を期すよう努めております。具体的な取り組みとしては、法令や行政・業界基準(医薬品医療機器等法、食品衛生法等)に準拠するとともに、「ISO9001」(品質)、「FSSC22000」(食品安全)の認証取得を進めております。また、ガイドラインの制定、品質活動をモニタリングするための指標を設け、当社グループ内での監査を通じて継続的な品質向上に取り組んでおります。さらに、グローバルでは各国・地域で制度や規程が異なるなかで、各工場で国際規格の取得を推進するとともに、定期的に各工場の内部監査を実施しております。以上のような取り組みから、当社グループでは食の安全性に関するリスクを低減しております。 |
(2) 各事業領域共通の重要なリスク
人材確保・育成、企業文化・企業理念の浸透に関するリスク |
<リスクの概要> 企業文化や企業理念が十分に浸透せず、グループ戦略を踏まえた事業運営が可能な人材が確保できない場合、長期的に当社グループの競争力や業績に影響を及ぼす可能性があります。また、海外展開やM&A・アライアンス、デジタルトランスフォーメーション(DX)といった重要かつ高度な戦略推進のために必要十分な人材を確保することができない場合、競争力・収益力が想定されたように成長せず、また、不祥事の発生やその後の適切な対応がとれないことで、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、次世代を担う経営人材を早期に発掘し育成するために、「大塚グローバルアカデミー」を設置することでグループ戦略を踏まえた事業運営が可能な人材を確保しております。また、長期的な事業成長の原動力となる革新的な製品やアイディアを生み出すためには、国籍、人種、年齢、障がい、性別、性的指向、性自認等によらない多様な人材の活躍が必要と考え「大塚グループ・グローバル行動規準」において、ダイバーシティの推進を宣言し、それらを支える制度や仕組みを整備していくことで、持続的な成長を支える人材を確保しております。 働き方の多様化を取り入れたハイブリッド型勤務体制の下においても、生産性を維持・向上できるよう、従業員同士の円滑なコミュニケーションを図るための態勢を整備し柔軟性の高い働き方を推奨しております。 |
環境問題に関するリスク |
<リスクの概要> 地球温暖化に伴う気候変動については、生物資源や水資源に多大な影響を及ぼす等、世界規模での環境問題が顕在化しており、グローバルに事業を展開していくうえで重大なリスクとして認識しています。脱炭素化の移行を適切に遂行できない、もしくは目標を達成できない場合、カーボンプライシングをはじめとした規制強化等によるコストへの対応、環境問題の顕在化や社会的評価の低下等により、当社グループの業績あるいは持続的成長に重大な影響を与える可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、企業理念のもと事業を通じて社会課題の解決に取り組み、自らの持続的な成長と健康でサステナブルな社会の実現を目指しています。環境問題に関しては、「大塚ホールディングス 環境委員会」のもと「大塚グループ環境方針」や「環境活動指針」を制定し、「大塚グループ グローバル環境会議」を設置して、地球環境に関するグローバルな社会課題の解決に貢献するための取り組みを推進しております。また、当社及び主要事業会社において、より効率的で実効性の高い活動を推進するため、環境マネジメントシステムの国際規格であるISO14001の統合認証取得を開始し、対象拠点の拡大に向け取り組んでいます。 カーボンニュートラルについては、2028年目標として2017年比CO2排出量50%削減を掲げ、事業活動におけるすべての環境負荷をゼロにするという2050年環境ビジョン「ネットゼロ」の達成に向けグループ一丸となって推進することにより、持続可能な社会の実現を目指しています。
当社グループは2021年10月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明し、フレームワークに基づきシナリオ分析を行い、2022年度の統合報告書から情報開示を開始しました。今後も開示の拡充を進めてまいります。 また、当社グループでは、マテリアリティ(重要項目)として特定した「社会(健康、人材、品質)」「環境(カーボンニュートラル、サーキュラーエコノミー、ウォーターニュートラル)」「ガバナンス」に関する社会課題を踏まえた目標を設定し、各事業会社における事業活動を通した課題解決を目指すとともに、グループの活動の共有の場として、当社取締役を委員長とした「大塚グループ サステナビリティ推進委員会」を設けております。 |
サプライチェーンの透明性に関するリスク |
<リスクの概要> 自社、製造委託先、原材料供給元、物流会社、販売会社等を含むサプライチェーンにおいて、人権、労働、環境、腐敗防止、その他サステナビリティ全般に関する不適切な事態が発生した場合には、事業遂行体制の見直しを迫られるとともに、当社グループのブランド価値や信用が失墜し、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 「大塚グループ・グローバル行動規準」では大塚グループで業務に携わるすべての人々に高い倫理観を持って行動することを求めています。原材料の調達に際しては、「大塚グループ調達方針」を制定し、公平・公正で透明性を持ったサプライヤーの選定や、関連する法令・ルールを遵守し、高い倫理観をもって社会通念に基づき行動すること等を定めています。また品質・安全性・安定供給に加え、人権、労働環境、腐敗防止、自然環境にも配慮したサプライチェーンの構築を目的にサプライヤー向け「大塚グループ サステナブル調達ガイドライン」を策定し、サプライヤーから同意を得るとともに、各項目における取り組み状況の確認とモニタリング等を実施しております。そして2024年には、すべての取引先を対象とした「大塚グループ ビジネスパートナー行動規準」を制定しております。 |
グループ統治、管理に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループにおいて、適切な経営資源配分、グループ戦略立案や見直し及びグループ会社の監視・監督等といった持株会社統治、さらに国内外の事業展開を進める中で主要事業会社を通じたグループ会社管理による効果が十分発揮されなかった場合、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、世界的な経済状況の変化により、資金調達が計画どおりに実施できない、もしくは資金調達コストが上昇する場合は、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、グループ各社からの事業の報告とその分析を基にして、グループ全体として適切な戦略判断と経営資源の配分を行っております。当社グループでは、医療関連事業とニュートラシューティカルズ関連事業をコア事業としており、特に、医療関連事業では「重点領域を中心とした製品・パイプラインの強化」及び「新規技術」に対して、ニュートラシューティカルズ関連事業では「ニュービジネスの強化」及び「未進出の成長市場への積極的な展開」に対して、経営資源の重点配分に取り組んでおります。 また、国内外の市場環境変化を機動的に捉え、適切に対応するために、様々なリスクの顕在化の可能性を検討したうえで、その検討結果を速やかに経営層に報告しております。具体的には、顕在化していないニーズや社会課題に対して新しいコンセプトのソリューションを提案し、ユニークかつ多様な事業をベースとする独創的な製品・サービスの創出に注力しております。加えて、当社グループらしい多様な製品を保有することにより、事業全体のリスク分散を図り、個人消費動向の変動に関する環境変化に対応しております。 当社グループは、「大塚グループ・グローバル行動規準」や関連するグローバルポリシーを制定し、それらに基づく世界共通の教育研修を徹底することで、グループ会社全体を統制する仕組みを作っております。また、「取締役会規程」及び「関係会社管理規程」に規定された事項に基づき、国内外のグループ各社から定期的に情報収集・情報交換を実施し、重要な事項については当社の承認を得ることを求めることで、グループの連携体制を確立しております。加えて、国内外のグループ各社に対して定期的に当社からの内部監査を実施し、モニタリング体制を構築するとともに当社グループとして内部通報制度を整備しております。 当社グループは、金融機関等との良好な関係の維持を図るとともに、資金調達手段の多様化に積極的に取り組み、必要に応じて、社債発行等の手段を通じて調達を行っております。また、市場が不安定な混乱状況に陥り、これらの手段により十分な資金調達ができなくなった場合に備え、複数の金融機関との間でのコミットメントラインも保持しております。加えて、最新の情報に基づいた資金計画の見直しを適時に行っております。 |
コーポレートブランド管理に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループのコーポレートブランド育成・管理が適切に実行されていない場合、コーポレートブランドが毀損され、企業イメージに影響を及ぼす可能性があります。当社グループの広告等における不適切な表現等がSNS等を通じて拡散した場合や、当社グループの事業活動やイメージについて批判的な評価や誤った情報が拡散した場合等、様々な要素によって当社グループのブランド価値や信用が低下し、業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループのコーポレートブランドを適切に育成・管理するために、コーポレートブランドのグループ各企業における使用ルールを整備し、コーポレートブランドの管理とその価値の維持・向上に向けた取り組みを推進しております。当社グループのコーポレートシンボルは、「CI管理委員会」(注)を中心に、グループ統一ルールのもと適切な管理を行っております。また、広告及びSNS等での不適切表現防止等を社内教育に取り込んでいるほか、コーポレートブランドに影響を及ぼす事象についてグループ各社から情報を収集する体制を整備しております。当社グループのレピュテーションに影響を及ぼす問題が発生した場合の適切なメディア対応に備え、「大塚グループPRガイドライン」において、メディアとの適切なコミュニケーションや職責をあらかじめ明確化しております。また、グループ各社の関連部門などを対象とした、リスク発生時における外部との適切なコミュニケーションについての研修や演習を実施しております。 |
(注) CIはコーポレート・アイデンティティを表します。
各種業務提携及び買収に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループとしての重要な成長戦略に資する各種業務提携及び買収について、提携・買収の実施以後の事業環境等の変化により、提携・買収時に計画されていたグループシナジーを得られないことによる提携解消や損失計上の可能性があります。その場合、提携・買収により見込まれていた利益が実現できず、提携の解消やのれん・無形資産の減損損失を計上すること等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループは、業務提携及び買収を適切に実施し、その後の持続的な成長を目指すため、対象企業や資産に対する詳細なデューデリジェンスと価値評価、取締役会での十分な審議、提携又は買収後の事業運営のモニタリング等を実施しております。また、外部の専門家を適宜起用するとともに、案件執行能力を備えた社内の人材育成にも努めております。 |
デジタライゼーションに関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループとしてのデジタライゼーションに対する取り組み方針や、その支援施策が適切になされない場合、当社グループの各事業会社においてDXの遅れが発生し、競争の優位性の確保やシェアの拡大ができなくなり、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、グループの総合力を活かしながらグループ各社及び各事業部門を中心として、スピード感を持った最新テクノロジーの導入を目指しております。具体的な取り組みとして、研究部門・生産部門から患者さん向けのスマートフォンアプリケーションまで、様々な場面で実証実験や実務適用を行っております。また、ITリテラシー向上を目的としたAI・機械学習やIoT等の最新テクノロジーに関する従業員向けセミナー等の開催及びグループ内の好事例の共有により、グループ全体のIT知識・スキルの底上げを推進しております。 |
自然災害・パンデミックに関するリスク |
<リスクの概要> 地震、津波、台風、洪水等の大規模な自然災害による物的被害や新型コロナウイルス感染症(COVID-19)等のパンデミックが発生した場合、当社グループの工場・研究所・事業所等施設の稼働停止、当社グループの人的資産の喪失、医療関連事業の臨床試験中断による新製品開発の遅延、患者さんへ適切な医療が提供できないことによる製品売上の減少、消費低迷によるニュートラシューティカルズ関連事業の製品売上減少等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、当社グループのみならずサプライチェーン全体が大きな被害を受けることが予想され、当社グループ製品・サービスの提供に支障を来す可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、大規模地震等の災害発生時にも最大限事業活動を継続し、製品の安定供給が図れるよう、事業継続計画(BCP)を策定しております。具体的には、自然災害の発生に備えて、従業員及び家族の安否確認、グループ各社の拠点間の通信手段、災害対応備蓄品等を備え、定期的な訓練等を実施しております。事業継続マネジメント(BCM)の観点では、生産、受注、物流等の各業務において、グループ各社が協働してグループ全体で事業継続に取り組む体制を構築し、適正な原材料・製品在庫量の確保、複数購買体制、代替生産体制及び物流体制等に関する対策の強化に努めております。その一環として、毎年テーマを定めグループ会社合同のBCP演習を実施しております。 また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しては、リスク管理委員会が主体となって対応方針を策定し、基本的な感染防止策の徹底のほか、在宅勤務体制の推進、Web会議のためのシステムの整備・強化、生産拠点における来訪者の制限、サーモグラフィカメラによる発熱者チェック等、できうる限りの対策やルール整備等を実施いたしました。 自然災害やパンデミックによるコア事業をはじめとする各事業に関する国内外の動向に適切に対応するために、様々なリスクの顕在化の可能性を検討したうえで、その検討結果を速やかに経営層に報告し対策を講じております。 |
安定供給に関するリスク |
<リスクの概要> 地政学的なリスクの高まり等に起因して、当社グループのサプライチェーンが不安定になるリスクが高まる中、グループとしての影響調査や戦略の立案・実行が遅れた場合、事業の継続に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループは、公平・公正で透明性を持った調達と調達先との良好な関係構築を通じて安定調達・供給の実現に努めております。特に、主要原材料については事前に想定されるリスクを明確化し対策を講じております。加えて、複数社購買等による調達先の分散化、代替原料の確保、適正在庫の確保及び生産拠点の複数化等、グループ全体で事業継続に取り組む体制を構築しております。 |
原材料価格の高騰等に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループの製品に使用する主要な原材料の価格は、天候、自然災害、市場価格、経済情勢、燃料費、為替等によって変動します。当該価格がこれらの原因等により高騰した場合には、当該製品の原価が上昇し、あるいは原材料が調達できなくなり、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは原材料価格の高騰等によるリスクを低減させるために、原則として原材料の複数社購買、上流原料や素材を含む原材料の市場動向等の情報収集、代替原料の確保、適正在庫の確保及び生産性向上による原価低減等の様々な対応策を実施しております。また、このような対策を実施したうえで、原材料価格の上昇については販売価格に転嫁することにより対応する可能性もあります。 |
特許権の侵害に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループでは、当社グループが保有し又は当社グループが他社からライセンスを受けている知的財産権が第三者から侵害を受けた場合には、期待される収益が失われる可能性があります。また、当社グループの製造又は販売する製品が第三者の知的財産権を侵害した場合には、当該製品を回収し、又はその製造もしくは販売を中止することを求められる他、多額の損害賠償を請求される可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、特許権を含む知的財産権を適切に管理する体制を整え、また、継続的なモニタリングを実施することで、第三者からの知的財産権の侵害のリスクに常に注意を払っております。また、専門家、データベース及び調査機関等を利用した調査・情報収集等を行うことで、第三者の知的財産権に対する侵害のリスクに常に注意を払っております。加えて、実際に知的財産係争が発生した場合には、社内外の関係者と協力し、事業への影響を最小限にとどめるよう対応しております。 |
訴訟に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループは、その事業運営に関し、製造物責任、労務問題、特許権の侵害、契約の不履行、環境汚染等に関して第三者から訴訟を提起される可能性があり、当社グループに不利益な内容の判決、決定又は和解がなされた場合、当社グループの業績及び財政状態並びに事業戦略及び社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、訴訟情報の前兆を把握するため当社グループ内での報告体制を構築するとともに、当社法務部がグループ各社と情報を交換し、適切な対応をとっております。また、適宜、顧問弁護士等と協議を行い、訴訟リスクの低減に努めております。 |
ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループでは、情報管理について、システム障害や事故及び外部からのサイバー攻撃、従業員や業務委託先等第三者の過失等による行為を含む様々な原因により、システムの停止による事業活動の中断、情報の改ざん、悪用又は漏洩等が発生する可能性があります。その場合、当社グループの業績、財政状態並びに社会的信用に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、情報管理及びセキュリティについての基本的な考え方を示した「大塚グループ・グローバル情報セキュリティポリシー」を制定し、グループ各社に向けて情報管理及び情報セキュリティの重要性に関して認識を統一させるとともに、役員・従業員へ教育研修等を通じて重要性の周知徹底を図っております。また、各種サイバー攻撃等への対策として、「特定」、「防御」、「検知」、「対応」、「復旧」のためのセキュリティインフラの強化及びプロセスの整備をグループ全体で図るとともに、国内外のグループ各社のセキュリティリスクのアセスメントにより管理状況を可視化、改善することで、継続的なセキュリティの強化に努めています。一方で、社内のCSIRT(Computer Security Incident Response Team)により、情報セキュリティインシデント等に対応できる体制を構築しております。 加えて、情報管理及び情報セキュリティに関する具体的な施策の検討や最新情報の共有等を目的とした「グループ情報セキュリティ委員会」を組織するとともに、グループ各社のセキュリティ担当者のスキル向上を目的としたサイバー人材育成研修を実施し、グループ全体の包括的なセキュリティレベルの底上げを推進しています。 |
海外展開に関するリスク |
<リスクの概要> 当社グループは、日本以外にも米国、欧州及びアジアを中心に、研究開発、製造及び販売活動を行っております。グローバルな事業活動を行うにあたり、各国の法的規制の変更・強化、経済情勢の変化、政情不安や事業環境の不確実性等のリスクが顕在化した場合には、事業活動の停滞や事業展開の遅延・中止等により、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 また、地政学的な要因に関する突発的な不測の事態が発生した場合、従業員・家族等の安全確保や雇用の確保に影響を与えることも想定され、その場合、当社グループの業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。 |
<対応> 当社グループでは、現地経営環境及び経営状況、地政学的リスクに係る影響を把握し、必要に応じて長期的な視点による経営戦略の見直し等を実施するとともに、関連部門が適宜連携して対応することで、海外展開におけるリスク低減に取り組んでおります。 さらには、危機管理対策マニュアルの作成、演習等を通じた緊急事態発生時の訓練の実施、定期的なリスク情報の収集・共有等、当社グループ全体で危機管理体制の向上に取り組んでおります。 |
当社グループは、当連結会計年度よりIAS第12号「法人所得税」(2021年5月改訂)を適用しており、遡及適用後の数値で前連結会計年度との比較分析を行っております。この基準の適用による当連結財務諸表に与える重要な影響はありません。なお、会計方針の変更の詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 2.作成の基礎(4)会計方針の変更」に記載しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当社グループは、経常的な収益力を示す指標として事業利益を採用しております。
事業利益とは、売上収益から売上原価、販売費及び一般管理費並びに研究開発費を控除した額に持分法による投資損益を加減算した額であります。
(単位:百万円)
|
前連結会計年度 (2022年12月期) |
当連結会計年度 (2023年12月期) |
増減額 |
増減率 |
売上収益 |
1,737,998 |
2,018,568 |
280,570 |
16.1% |
研究開発費投資前事業利益 |
450,147 |
620,358 |
170,210 |
37.8% |
事業利益 |
174,917 |
312,553 |
137,636 |
78.7% |
営業利益 |
150,323 |
139,612 |
△10,710 |
△7.1% |
税引前当期利益 |
172,954 |
142,655 |
△30,298 |
△17.5% |
当期利益 |
137,280 |
125,499 |
△11,780 |
△8.6% |
親会社の所有者に帰属する |
133,906 |
121,616 |
△12,290 |
△9.2% |
|
|
|
|
|
研究開発費 |
275,230 |
307,804 |
32,574 |
11.8% |
減損損失 |
41,521 |
172,419 |
130,898 |
315.3% |
これまで当社グループは、「トータルヘルスケア企業」として、健康の維持・増進、病気の診断から治療までを担う事業を展開してまいりました。地政学的リスク等の影響により社会環境が変化する中、不確実性の高い世界がもたらす社会課題を先取りし、環境変化で生まれた新しい技術やニーズを取り入れながら、健康意識の高まりを成長機会と捉え、「トータルヘルスケア企業」の真価を発揮し、引き続き、持続的成長の実現に向けた取り組みを進めてまいります。
当連結会計年度の売上収益は、すべての事業セグメントで増収となり、2,018,568百万円(前期比16.1%増)となりました。主な要因は、医療関連事業において、持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」、抗精神病薬「レキサルティ」、V2-受容体拮抗剤「ジンアーク」、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」のグローバル4製品、及び導出品に対するロイヤリティ・マイルストーン収入の伸長が業績を牽引したことによります。この結果、日本のV2-受容体拮抗剤「サムスカ」の心不全・肝硬変における体液貯留の効能の独占販売期間満了に伴う減収を超えて、売上収益は大幅に伸長しました。さらに、ニュートラシューティカルズ関連事業においても、健康意識が高まる中、「ポカリスエット」及び「ネイチャーメイド」が引き続き伸長しました。
研究開発費投資前事業利益は、620,358百万円(同37.8%増)となりました。主な要因は、前述のグローバル4製品及び導出品に対するロイヤリティ・マイルストーン収入の増収を受け売上総利益が増加したこと、一方で、新規事業への投資を加速する中で既存事業への投資を効率化することで販売費及び一般管理費を適正にコントロールし販売管理費率を低減したことによります。
研究開発費は、307,804百万円(同11.8%増)となりました。主な増加要因は、新規作用機序を有する抗精神病薬に係る住友ファーマ株式会社との共同開発及び販売に関するライセンス契約締結に基づく開発費、非小細胞肺がんを対象として開発中のzipalertinib/TAS6417、及びIgA腎症を対象として開発中のsibeprenlimab/VIS649が順調に進捗したことや為替影響があったことによります。
想定以上の売上成長と販売費及び一般管理費を適正にコントロールした結果、事業利益は312,553百万円(同78.7%増)と大幅な増益となりました。
営業利益は、139,612百万円(同7.1%減)となりました。主な要因は、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの治療を目的として開発中のAVP-786、デイヤフーズ社および住友ファーマ株式会社との提携品等に係る減損損失として当連結会計年度で合計172,419百万円を計上した影響です。
なお、当期利益は125,499百万円(同8.6%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は121,616百万円(同9.2%減)となりました。
セグメントの業績は次のとおりです。
(単位:百万円)
|
医療関連 |
ニュートラシューティカルズ |
消費者 |
その他 |
調整額 |
連結 |
売上収益 |
1,364,358 |
483,463 |
37,081 |
176,395 |
△42,730 |
2,018,568 |
事業利益 |
278,057 |
59,652 |
17,823 |
7,717 |
△50,697 |
312,553 |
(参考-前連結会計年度)
(単位:百万円)
|
医療関連 |
ニュートラシューティカルズ |
消費者 |
その他 |
調整額 |
連結 |
売上収益 |
1,137,857 |
437,047 |
35,880 |
169,227 |
△42,014 |
1,737,998 |
事業利益 |
151,875 |
54,195 |
7,135 |
9,047 |
△47,337 |
174,917 |
(医療関連事業)
当連結会計年度における売上収益は1,364,358百万円(前期比19.9%増)、事業利益は278,057百万円(同83.1%増)となりました。
<主要製品の状況>
●グローバル4製品
当社グループがグローバル4製品と位置付ける持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」、抗精神病薬「レキサルティ」、V2-受容体拮抗剤「サムスカ/ジンアーク」、抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」の売上収益の合計は、726,850百万円(前期比17.4%増)となりました。
・持続性抗精神病薬「エビリファイ メンテナ」
米国では、服薬アドヒアランスに課題がある双極Ⅰ型障害や統合失調症患者に対する製品の有用性の訴求や、対面による情報提供活動により処方数が伸長し、為替影響もあり増収となりました。日本では、統合失調症に加え、双極Ⅰ型障害の情報提供活動を強化し、売上収益は順調に増加しています。これらの結果、売上収益は202,464百万円(前期比22.4%増)となりました。
・抗精神病薬「レキサルティ」
大うつ病補助療法及び統合失調症に加えて、2023年5月より、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの治療薬として販売する米国では、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションに関する疾患啓発活動を積極的に進め、また、DTC*広告を実施しております。対面による情報提供活動の強化により処方数が伸長し、為替影響もあり増収となりました。日本では、統合失調症の情報提供活動の強化により新規処方数が伸長し、売上収益は増加しました。これらの結果、売上収益は212,509百万円(前期比25.6%増)となりました。
* Direct to consumer
・V2-受容体拮抗剤「サムスカ」
日本では、常染色体優性多発性のう胞腎(ADPKD)に対する処方数が伸長し、治療経験のある患者が1万例を超えております。一方、心不全・肝硬変における体液貯留の効能においては、後発医薬品発売の影響を受け大幅減収となりました。低ナトリウム血症の治療薬として販売する米国でも、後発医薬品発売の影響を受け大幅減収となりました。これらの結果、売上収益は48,230百万円(前期比45.1%減)となりました。
・V2-受容体拮抗剤「ジンアーク」
米国では、ADPKD治療薬として、継続的な疾患啓発や臨床データの情報提供活動等により処方数が伸長し、為替影響もあり大幅増収となりました。これらの結果、売上収益は183,541百万円(前期比31.7%増)となりました。
・抗悪性腫瘍剤「ロンサーフ」
米国では、2023年8月に大腸がんにおけるベバシズマブ併用療法の適応追加が承認され、NCCNガイドライ ン*による併用療法の推奨ならびに為替の影響もあり大幅増収となりました。欧州においては、処方数の伸長や為替の影響があり、売上収益は増加しました。また、同年7月に同併用療法が承認されました。日本では、論文掲載等による同併用療法の認知向上に伴い、売上は堅調に推移しています。これらの結果、売上収益は80,105百万円(前期比39.3%増)となりました。
* 世界的に広く利用されているがん診療ガイドライン
(ニュートラシューティカルズ関連事業)
当連結会計年度における売上収益は483,463百万円(前期比10.6%増)、事業利益は59,652百万円(同10.1%増)となりました。
<主要製品の状況>
当社グループが主要3ブランドと位置付ける「ポカリスエット」、「ネイチャーメイド」、ニュートリション エ サンテ社ブランドの売上収益の合計は、312,998百万円(前期比14.8%増)となりました。育成3ブランドと位置付けるデイヤフーズ社ブランド、「エクエル」、「ボディメンテ」の売上収益の合計は、27,851百万円(同2.3%減)となりました。
●主要3ブランド
水分・電解質補給飲料「ポカリスエット」は、日本では、2023年4月の価格改定の影響で販売数量は一時的に減少しましたが、従来から継続している水分・電解質補給の啓発活動や、過去最高気温となった今夏*1の日常生活での熱中症対策への関心の高まりによる利用促進に加え、スポーツイベントや温浴施設でのブランド接点や飲用体験の増加等もあり、販売数量は伸長しています。海外では、各地の文化や状況に応じた啓発により水分・電解質補給の重要性が浸透している中、長年の取り組みを通じてブランドイメージを構築したことにより、販売数量が伸長しています。これらの結果、ブランド全体の販売数量は伸長し、増収となりました。
ファーマバイト社のサプリメント「ネイチャーメイド」は、米国では、ブランドや品質に対する高い信頼性を背景にシェアが拡大*2したことに加え、ソーシャルメディアでのマーケティング活動や為替の影響もあり増収となりました。
欧州を中心に健康食品を展開するニュートリション エ サンテ社ブランドは、フードサービス*3やEコマースの拡大を進めています。事業再編の影響により現地通貨ベースでは減収となりましたが、「Gerblé」等の主力製品の成長や為替の影響等により、日本円ベースでは増収となりました。
*1 気象庁:今夏(2023年6月~8月)の全国平均気温は1898年の統計開始以来最も高かった
*2 IRI Data:Market Advantage; Calendar YTD 12/31/2023, Food, Drug, Mass Excluding Amazon and Costco
*3 公共機関や学校等における給食サービス
●育成3ブランド
プラントベース(植物由来)食品であるデイヤフーズ社ブランドは、北米の乳代替チーズ市場の競合環境激化等の影響により減収となりましたが、独自技術を活かした製品ラインアップの拡充及び流通拡大に取り組んでいます。
女性の健康と美をサポートするエクオール含有食品「エクエル」は、日本では、女性の健康に関するセミナーの開催等、幅広い情報提供活動により製品の認知が進み、Eコマースの定期契約件数が順調に伸長し、増収となりました。
植物由来の乳酸菌B240*4を含有する「ボディメンテ」は、減収となりましたが、2023年12月より大事な日に向けて日頃からの体調管理を提案する新たなコミュニケーションを開始し、コアユーザーの育成や製品認知の向上と利用拡大に取り組んでいます。
*4 Lactiplantibacillus pentosus ONRICb0240:東京農業大学が単離、大塚製薬㈱が有効性を確認した乳酸菌
(消費者関連事業)
当連結会計年度における売上収益は37,081百万円(前期比3.3%増)、事業利益は持分法投資利益の増加等により17,823百万円(前期比149.8%増)となりました。
ウォーター類は、主力製品「クリスタルガイザー」において、日本では、価格改定の影響もあり販売数量は減少しましたが、軽量ボトル・軽量キャップ、50%リサイクルペットボトルによる環境への取り組みを発信したブランド価値の訴求等により、売上収益は前期並に推移しています。ビタミン炭酸飲料「マッチ」は、既存品のユーザー拡大に加え、2023年3月に発売した「マッチ 塩レモンソーダ」と2023年10月に発売した「マッチ ビタミンみかん」の好調を受け、販売数量が伸長しました。
(その他の事業)
当連結会計年度における売上収益は176,395百万円(前期比4.2%増)、事業利益は7,717百万円(同14.7%減)となりました。
機能化学品分野は、半導体市場の回復遅れや中国の市場停滞もありましたが、売上収益は前期並に推移しています。ファインケミカル分野は、抗生剤中間体の販売増加等により、増収となりました。
運輸・倉庫分野は、物流のデータ連携によるトータルヘルスケア物流プラットフォーム強化により、新規の外部顧客の獲得及び取扱数量が堅調に推移している一方、国際輸送の運賃単価の下落があり、売上収益は微減となりました。
※ その他、製品別の売上収益等につきましては、決算補足資料(ファクトブック)をご参照ください。
https://www.otsuka.com/jp/ir/library/materials.html
② 財政状態の状況
(単位:百万円)
|
前連結会計年度 (2022年12月31日) |
当連結会計年度 (2023年12月31日) |
増減額 |
流動資産 |
1,192,030 |
1,326,797 |
134,766 |
非流動資産 |
1,910,608 |
2,034,446 |
123,838 |
資産合計 |
3,102,638 |
3,361,244 |
258,605 |
流動負債 |
539,193 |
667,233 |
128,040 |
非流動負債 |
301,076 |
257,692 |
△43,383 |
負債合計 |
840,269 |
924,926 |
84,657 |
資本合計 |
2,262,369 |
2,436,317 |
173,948 |
a. 資産
当連結会計年度末における総資産は3,361,244百万円(前連結会計年度末は3,102,638百万円)となり、258,605百万円増加しました。その内訳は、流動資産が134,766百万円の増加、非流動資産が123,838百万円の増加であります。
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,326,797百万円(前連結会計年度末は1,192,030百万円)となり、134,766百万円増加しました。その主たる内訳は、現金及び現金同等物が41,707百万円、売上債権及びその他の債権が50,660百万円、棚卸資産が26,073百万円、未収法人所得税が16,656百万円増加したこと等によるものであります。
(非流動資産)
当連結会計年度末における非流動資産は2,034,446百万円(前連結会計年度末は1,910,608百万円)となり、123,838百万円増加しました。その主たる内訳は、無形資産が88,815百万円減少したものの、有形固定資産が42,683百万円、のれんが43,606百万円、持分法で会計処理されている投資が36,819百万円、その他の金融資産が20,465百万円、繰延税金資産が65,442百万円増加したこと等によるものであります。無形資産について、アルツハイマー型認知症に伴うアジテーションの治療を目的として開発中の「AVP-786」、デイヤフーズ社及び住友ファーマ株式会社との提携品等に係る減損損失140,722百万円が計上され、減少要因となったものの、円安の影響は各資産に対して、総じて増加要因となりました。なお、為替の影響以外の増加要因として、有形固定資産は設備投資により、のれん、商標権及び販売権等はボナファイドヘルス LLC(以下、「ボナファイドヘルス社」)等の買収により、繰延税金資産は棚卸資産の未実現利益消去、無形資産の減損損失の税効果増加により、それぞれ増加しております。
b. 負債
当連結会計年度末における負債合計は924,926百万円(前連結会計年度末は840,269百万円)となり、84,657百万円増加しました。その内訳は、流動負債が128,040百万円の増加、非流動負債が43,383百万円の減少であります。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債は667,233百万円(前連結会計年度末は539,193百万円)となり、128,040百万円増加しました。その主たる内訳は、仕入債務及びその他の債務が8,013百万円、社債及び借入金が42,984百万円、未払法人所得税が26,599百万円、その他の流動負債が51,518百万円増加したこと等によるものであります。社債及び借入金の増加の主な要因は、社債のうち1年以内償還予定を流動負債に振り替えたことによるものであります。
(非流動負債)
当連結会計年度末における非流動負債は257,692百万円(前連結会計年度末は301,076百万円)となり、43,383百万円減少しました。その主たる内訳は、社債及び借入金が24,575百万円、その他の金融負債が13,741百万円減少したこと等によるものであります。
c. 資本
当連結会計年度末における資本は2,436,317百万円(前連結会計年度末は2,262,369百万円)となり、173,948百万円増加しました。その主たる内訳は、親会社の所有者に帰属する当期利益121,616百万円の計上、配当金の支払54,265百万円等により利益剰余金が68,148百万円、主として円安の影響によりその他の資本の構成要素が100,440百万円増加したこと等によるものであります。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は513,341百万円となり、前連結会計年度末より41,707百万円増加しました。当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、283,232百万円となりました。一方で、将来の持続的成長に向けて、医療関連事業及びニュートラシューティカルズ関連事業において設備投資等を行ったこと、ニュートラシューティカルズ関連事業においてボナファイドヘルス社の買収を行ったことにより、投資活動によるキャッシュ・フローは△190,538百万円となりました。財務活動につきましては、借入金及びリース負債を返済し、配当金の支払額が△55,653百万円となったことから、財務活動によるキャッシュ・フローは△60,260百万円となりました。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・インフローは、投資活動及び財務活動を合わせたキャッシュ・アウトフローを上回り、現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末より増加し、513,341百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、283,232百万円(前期比71,384百万円増)となりました。当連結会計年度の主な内容は、税引前当期利益142,655百万円、減価償却費及び償却費97,777百万円、減損損失及びその戻入益172,419百万円、売上債権及びその他の債権の増減額△31,802百万円、法人所得税等の支払額△80,982百万円となっております。
当連結会計年度における前期比71,384百万円のキャッシュ・フロー増加の主な要因は、「AVP-786」、デイヤフーズ社及び住友ファーマ株式会社との提携品等に係る減損損失が計上され、税引前当期利益が減少したものの、医療関連事業のグローバル4製品及び導出品に対するロイヤリティ・マイルストーン収入の伸長が業績を牽引し、営業活動キャッシュ・フローの増加に大きく寄与し、法人所得税等の支払額が45,732百万円増加したこと等の影響によるキャッシュ・フローの減少を上回ったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、△190,538百万円(同108,963百万円支出増)となりました。当連結会計年度の主な内容は、有形固定資産の取得による支出△90,736百万円、無形資産の取得による支出△23,937百万円、女性の健康分野に特化した製品の製造販売を行うボナファイドヘルス社等の買収による子会社の取得による支出△71,043百万円等であります。当連結会計年度における前期比108,963百万円のキャッシュ・フロー減少(支出増)の主な要因は、有形固定資産の取得による支出が29,787百万円増加したこと、子会社の取得による支出が71,043百万円増加したことによるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、△60,260百万円(同35,213百万円支出減)となりました。当連結会計年度の主な内容は、短期借入金の増減額(△は減少)27,954百万円、長期借入金の返済による支出△11,935百万円、リース負債の返済による支出△20,545百万円、配当金の支払額△55,653百万円であります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
医療関連事業 |
190,713 |
122.2% |
ニュートラシューティカルズ関連事業 |
220,995 |
107.0% |
消費者関連事業 |
21,577 |
103.5% |
その他の事業 |
77,735 |
102.4% |
合計 |
511,020 |
111.3% |
(注)1.ニュートラシューティカルズとは、栄養「Nutrition」+薬「Pharmaceuticals」の造語であり、科学的根拠をもとに開発された医薬部外品や機能性食品及び栄養補助食品等を取り扱うセグメントです。
2.金額は、製造原価によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
b. 受注実績
連結子会社は主として受注見込みによる生産方式をとっております。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
医療関連事業 |
1,364,358 |
119.9% |
ニュートラシューティカルズ関連事業 |
483,325 |
110.6% |
消費者関連事業 |
37,066 |
103.4% |
その他の事業 |
133,818 |
105.1% |
合計 |
2,018,568 |
116.1% |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.前連結会計年度及び当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析、検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
③ 資本の財源及び資金の流動性に関する情報
当社グループのキャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
当社グループの当連結会計年度末の現金及び現金同等物の残高は513,341百万円であり、社債及び借入金の合計額138,625百万円を上回っております。
当社グループにおける経常的な資金需要としましては、主に事業の拡大に伴う運転資本の増加、生産設備の増強・更新に伴う設備投資及び研究開発投資がありますが、基本的に営業キャッシュ・フローで獲得した資金を主な財源としております。一方、事業の買収等に伴う非経常的な資金需要につきましては、必要に応じて外部から調達しております。
(1) アライアンス契約
契約会社名 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年 |
大塚製薬㈱ |
H.ルンドベックA/S |
デンマーク |
共同開発・商業化 (注)1 |
2011年 |
大鵬薬品工業㈱ 及び アステックスセラピューティクス Ltd. |
Merck & Co., Inc., Rahway, N.J., U.S.A. (米国及びカナダ以外ではMSD) |
米国 |
戦略的提携 (注)2 |
2019年 |
大塚製薬㈱ |
住友ファーマ㈱ Sumitomo Pharma America, Inc. |
日本 米国 |
共同開発・販売(注)3 |
2021年 |
(注)1.大塚製薬㈱は、H.ルンドベックA/Sと中枢神経領域におけるグローバル・アライアンス契約を2011年11月に締結しております。本契約は、「Abilify Maintena」(アリピプラゾール持続性注射剤(月1回製剤))、「REXULTI(レキサルティ)」(一般名:ブレクスピプラゾール)、Lu AE58054(一般名:idalopirdine)及びH.ルンドベックA/Sが研究開発を進めている中枢神経疾患を対象にした最大2つの新規化合物をあわせた最大5つの化合物についての共同開発・商業化に関する契約であります。
2.大鵬薬品工業㈱及びアステックスセラピューティクス Ltd.は、Merck & Co., Inc., Rahway, N.J., U.S.A(米国及びカナダ以外はMSD)とKRASがん遺伝子を含む複数の薬剤ターゲットに対して開発中の低分子阻害剤に特化したグローバルでの研究提携とライセンスに関する独占的契約を2019年12月に締結しております。
3.大塚製薬㈱は、住友ファーマ㈱及びその米国子会社であるSumitomo Pharma America, Inc.(以下「SMPA社」)と、住友ファーマ㈱とSMPA社が精神神経領域で開発中の4つの新薬候補化合物(SEP-363856(以下、「ウロタロント」)、SEP-4199、SEP-378614、SEP-380135)について、全世界を対象とした共同開発及び販売に関するライセンス契約を2021年9月に締結しております。販売については、米国、カナダ、日本、アジア(中国、台湾、シンガポール、タイ、ベトナム、マレーシア)においては住友ファーマグループが売上を計上し、国・地域ごとに住友ファーマグループと大塚製薬㈱が原則共同プロモーションを行います。欧州を含む41の国・地域では大塚製薬㈱が売上を計上します。また、本契約下で実施されるすべての臨床試験、各国・地域における承認申請や販売に関する費用及び利益については、SMPA社と大塚製薬㈱で折半します。
なお、2024年3月15日に、大塚製薬㈱は住友ファーマ㈱とSMPA社との間で締結された上記ライセンス契約を改定いたしました。このたびの契約改定により、(1)対象としていた4化合物のうちSEP-4199およびSEP-378614はライセンス契約の許諾対象から外れ、大塚製薬㈱はSMPA社より、「ウロタロント」およびSEP-380135の全適応症について、全世界における開発、製造および販売を独占的に行う権利を得ること、(2) 「ウロタロント」およびSEP-380135の開発と商業化に成功した場合、マイルストーンとして両化合物合計で最大30百万米ドル、および売上に応じたロイヤリティをSMPA社に支払う可能性があること、(3) 契約改定に係る契約一時金は発生せず、一部の試験を除き、現在、住友ファーマグループおよび大塚製薬㈱が実施している試験の2024年1月以降の費用は大塚製薬㈱が全額負担することとなりました。
(2) 技術導出
契約会社名 |
契約品目 |
相手方の名称 |
国名 |
契約内容 |
契約年 |
大鵬薬品工業㈱ |
抗悪性腫瘍剤 |
セルヴィエ社 (LES LABORATOIRES SERVIER) |
フランス |
契約一時金等(注) 一定料率のロイヤリティ |
2015年 |
(注)大鵬薬品工業㈱とセルヴィエ社は、大鵬薬品工業㈱が創製し、現在グローバルで開発中の抗悪性腫瘍剤TAS-102(一般名:トリフルリジン・チピラシル塩酸塩、日本での製品名:「ロンサーフ®配合錠T15・T20」)について、欧州・その他地域(北米・アジア以外)における開発・販売権に関するライセンス契約を2015年6月に締結しております。
(3) 販売契約
契約会社名 |
契約品目 |
相手方の名称 |
国名 |
販売地域 |
契約年 |
大塚製薬㈱ |
酸関連疾患治療薬 |
武田薬品工業㈱ |
日本 |
日本 |
2014年 |
(注)大塚製薬㈱は、武田薬品工業㈱が創製した酸関連疾患治療薬「タケキャブ®錠」(一般名:ボノプラザンフマル酸塩)について日本国内での販売に関する共同プロモーション契約を2014年3月に締結しております。本契約に関して、大塚製薬㈱は、武田薬品工業㈱に対して契約一時金と製造販売承認時マイルストーンを支払い、「タケキャブ®錠」の売上に応じた一定の対価を武田薬品工業㈱から受領することになっております。
(4) 合弁関係
契約会社名 |
合弁会社 |
相手方の名称 |
国名 |
設立の目的 |
契約年 |
大塚製薬㈱ |
中国大塚製薬有限公司 |
中国医薬投資有限公司 |
中国 |
注射薬の製造・販売 |
1980年 |
〃 |
韓国大塚製薬㈱ |
Jeil Pharmaceutical Co., Ltd. |
韓国 |
循環・呼吸器官用薬の製造・販売 |
1982年 |
〃 |
東亜大塚㈱ |
Dong-A Socio Holdings Co., Ltd.他 |
韓国 |
飲料品・健康食品・栄養製品の製造・販売 |
1987年 |
クリスタルガイザーウォーターカンパニー |
CGロクサーヌ LLC |
Cameron Investment Group,Inc. |
米国 |
飲料製品の製造、販売及び輸出 |
1990年 |
大塚製薬㈱ |
イーエヌ大塚製薬㈱ |
雪印メグミルク㈱ |
日本 |
経腸栄養剤の製造・販売 |
2002年 |
大塚化学㈱ |
エムジーシー大塚ケミカル㈱ |
三菱瓦斯化学㈱ |
日本 |
水加ヒドラジンの製造・販売 |
2004年 |
大塚製薬㈱ |
アルマ S.A. |
ROX INVEST |
フランス |
飲料製品の製造、販売及び輸出 |
2008年 |
大塚化学㈱ |
シンクレスト㈱ |
横河電機㈱ |
日本 |
中分子医薬品向けの受託研究開発製造 |
2023年 |
当連結会計年度における研究開発費は、
主な研究開発分野及び新製品の開発のセグメント別の状況は、次のとおりです。
(医療関連事業)
当社グループは、精神・神経領域、がん・がんサポーティブケア領域を重点領域とし、循環器・腎領域等においても未充足疾患に焦点を当てた研究開発を進めています。
医療関連事業における研究開発費は、
当連結会計年度の医療関連事業における研究開発の主な進捗状況は、以下のとおりです。
領域 |
開発コード |
製品名 |
一般名 |
エリア |
対象・適応症 |
状況* |
精神・ |
OPC-34712 |
レキサルティ |
ブレクスピプラゾール |
日本 |
大うつ病 |
2023年12月、効能追加承認取得 |
|
|
|
|
日本 |
アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション |
2023年10月、効能追加承認申請 |
|
|
|
|
米国 |
アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション |
2023年5月、効能追加承認取得 |
|
|
|
|
欧州 |
大うつ病 |
事業戦略上、開発中止 |
|
|
|
|
|
アルツハイマー型認知症に伴うアジテーション |
事業戦略上、開発中止 |
|
アリピプラゾール持続性注射剤 |
エビリファイ メンテナ |
アリピプラゾール |
中国 |
統合失調症 |
2023年5月、承認取得 |
|
アリピプラゾール2ヵ月持続性 注射剤 |
エビリファイ アシムトファイ |
|
米国 |
統合失調症、双極Ⅰ型障害 |
2023年4月、承認取得 |
|
AVP-786 |
― |
重水素化デキストロメトルファン・キニジン |
米国 |
統合失調症陰性症状 |
開発戦略上、開発中止 |
|
SEP-4199 |
― |
― |
日本・ |
双極Ⅰ型障害うつ |
リクルート進捗の大幅な遅れのため、試験中止 |
がん・がんサポーティブケア領域 |
ASTX727 |
INAQOVI |
decitabine・cedazuridine |
欧州 |
骨髄異形成症候群 |
2023年12月、効能追加承認申請 |
|
|
|
中国 |
骨髄異形成症候群 |
2023年10月、フェーズⅠ/Ⅱ開始 |
|
|
|
|
|
欧州 |
急性骨髄性白血病 |
2023年9月、承認取得 |
|
ASTX660 |
― |
tolinapant |
米国 |
固形がん、 |
開発戦略上、開発中止 |
|
ASTX660 + ASTX727 |
― |
tolinapant + decitabine・cedazuridine |
米国 |
T細胞リンパ腫 |
2023年2月、フェーズⅠ 開始 |
|
米国 |
急性骨髄性白血病 |
開発戦略上、開発中止 |
|||
|
AP24534 |
アイクルシグ |
ポナチニブ |
中国 |
慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病 |
2023年3月、承認申請 |
がん・がんサポーティブケア領域 |
TAS-116 |
ジェセリ |
ピミテスピブ |
日本 |
前立腺がん |
2023年9月、フェーズⅡ開始 |
TAS-120 |
リトゴビ |
フチバチニブ |
日本 |
がん化学療法後に増悪したFGFR2融合遺伝子陽性の治癒切除不能な胆道がん |
2023年6月、承認取得 |
|
|
|
|
|
欧州 |
胆管がん |
2023年7月、承認取得 |
|
TAS3351 |
― |
― |
日本・米 国・欧州 |
非小細胞肺がん |
2023年6月、フェーズ Ⅰ/Ⅱ開始 |
|
TAS3681 |
― |
― |
米国・ |
前立腺がん |
開発戦略上、開発中止 |
|
TAS6417 |
― |
zipalertinib |
日本・米 国・欧州 |
非小細胞肺がん |
2023年12月、フェーズⅢ 開始 |
|
AB122 + AB154 |
― |
zimberelimab + domvanalimab |
日本 |
上部消化管がん |
2023年6月、フェーズⅢ 開始 |
|
|
|
|
日本 |
非小細胞肺がん |
2023年6月、フェーズⅠ 開始 |
|
AB122 +TAS-120 |
― |
zimberelimab +フチバチニブ |
日本 |
固形がん |
2023年1月、フェーズⅠ 開始 |
|
OPF-501C |
― |
塩化亜鉛 |
日本 |
がん性皮膚潰瘍 |
2023年7月、フェーズⅡ 開始 |
|
OPB-171775 |
― |
― |
日本 |
固形がん |
開発戦略上、開発中止 |
循環器・ |
OPC-61815 |
サムタス |
トルバプタンリン酸エステルナトリウム |
中国 |
心不全における体液貯留 |
2023年12月、承認申請 |
|
― |
― |
ボクロスポリン |
日本 |
ループス腎炎 |
2023年11月、承認申請 |
|
ETC-1002 |
― |
ベムペド酸 |
日本 |
高コレステロール血症 |
2023年2月、フェーズⅢ 開始 |
|
OPC-131461 |
― |
― |
日本 |
心性浮腫 |
2023年1月、フェーズⅡ 開始 |
その他領域
|
OPF-109 |
― |
― |
日本 |
慢性腎不全用高カロリー輸液 |
承認申請 |
OPA-15406 |
モイゼルト |
ジファミラスト |
中国 |
アトピー性皮膚炎 |
2023年2月、フェーズⅢ 開始 |
|
|
OPC-1085EL |
ミケルナ |
カルテオロール |
中国 |
緑内障、高眼圧症 |
フェーズⅢ開始 |
|
OPS-2071 |
― |
― |
中国 |
過敏性腸症候群 |
2023年6月、フェーズⅡ 開始 |
|
VIS171 |
― |
― |
未定 |
自己免疫疾患 |
2023年1月、フェーズⅠ 開始 |
* 米国・欧州における承認申請は、当局へ承認申請、あるいは当局による申請受理を意味します。それ以外の国・地域では当局に承認申請を提出したことを意味します
(ニュートラシューティカルズ関連事業)
当事業においては、医療関連事業で培ったノウハウを活かし、人々の健康の維持・増進のための科学的根拠をもった独創的な製品の研究開発に取り組んでいます。
スキンケアブランド「インナーシグナル」から、角層*の重層化に着目し開発した美容クリーム「インナーシグナル SCリッチクリーム」を2023年10月に発売しました。
ニュートラシューティカルズ関連事業における研究開発費は、
*4つの層からなる表皮の一番外側の層でターンオーバーの出口に位置する水分を保つ保湿機能や外的刺激から肌を守るバリア機能という重要な役割がある(※顔の場合)
(消費者関連事業)
当事業においては、生活に身近な食品や飲料の分野でオリジナルかつユニークな製品の研究開発に取り組んでいます。社会変化に伴う健康・環境・人口・高齢化問題など様々な課題の解決に向け「レトルト事業」「飲料事業」「プラントベース事業」を中核とし、「食」と「健康」をテーマに革新的な製品を創出、提案しています。
消費者関連事業における研究開発費は、
(その他の事業)
当事業においては、機能化学品やファインケミカルの分野で研究開発に取り組んでいます。有機、無機の合成技術を主体とし、独自の技術を核とした新製品や次世代分野の研究開発を行っています。
その他の事業における研究開発費は、