(1)会社の経営の基本方針
当社グループは「農家を過酷な労働から解放したい」という創業の精神を連綿と受け継ぎ、2025年には創立100年を迎えます。当社グループの基本理念は、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」としております。また、長期ビジョンを「『食と農と大地』のソリューションカンパニー」とし、これらに関連する課題を解決するとともに、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指しております。

(2)目標とする経営指標
当社グループは、事業環境が大きく変化する中で、農業機械総合専業メーカーとして培ってきた知見、経験などをコアに社会課題を解決し、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指してまいります。2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE(自己資本利益率)8%以上・DOE(株主資本配当率)2%以上を達成し、PBR(株価純資産倍率)1倍以上を目指してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
①経営課題
中期経営計画において2025年までに連結営業利益率5%を達成すべく取り組みを進めてまいりましたが、2024年の計画は1.2%と大きく乖離しており、中期経営計画で目指した「売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換」は未達の状況です。これは激変する環境への対応力が不足していたこと、経営全体としての変革・実行に取り組めなかったことが要因であると認識しております。
また、ROEについても当期純利益率と総資産回転率の低さにより目標とする8%を下回る水準で推移しております。
以上の状況より、当社グループの課題を収益性と資産効率と捉え、これらに対して、聖域なき事業構造改革を実行し強靭な経営基盤を構築すべく、2023年11月14日付で「プロジェクトZ」を設置しました。
②課題解決に向けた具体的施策
a.プロジェクトZ施策
プロジェクトZでは抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行してまいります。抜本的構造改革は、「生産最適化」、「開発最適化」、「国内営業深化」の3テーマを軸に推し進め、2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE8%以上・DOE2%以上を達成し、PBR1倍以上を目指してまいります。成長戦略は、選択と集中を深化させ、国内外の成長市場へのリソース集中による更なる発展を目指してまいります。
これらプロジェクトZの取り組みにより収益性改善、資産効率化を図り、成長に向けたキャッシュアロケーションを実行してまいります。

■抜本的構造改革
・生産最適化
国内外製造所の最適生産体制の構築については、これまでも収益性改善に向けた重点施策として取り組みを進めてまいりましたが、プロジェクトZにより更に加速させてまいります。2024年7月には、㈱井関松山製造所と㈱井関熊本製造所の経営統合を予定しております。人的資源やシステムの集約により業務効率化やコスト削減効果を創出し、製造所の強靭な体質をつくってまいります。

・開発最適化
商品の成長性や収益性を分析したうえで、機種・型式を30%以上削減するとともに、成長分野へ開発リソースを集中してまいります。また、開発手法についても全地域共通の母体とするグローバル設計を進め、効率化を図ってまいります。開発の効率化とリソースの集中による組織のスリム化に加え、製品利益率改善を短期集中的に実施してまいります。

・国内営業深化
国内営業の深化を目的として、2025年1月に全国を6地域に分割して事業展開している販売会社の経営統合を予定しております。これにより、重複する間接業務の効率化や、在庫拠点及び物流体制の見直しによる物流費の圧縮、在庫の全国一元管理による圧縮など、資源集約による経営効率の向上を図ります。

■成長戦略
当社グループの成長の軸は、海外と国内の特定分野にあると分析しております。そのうち、海外は各地域の需要を精緻にとらえ、収益性向上と事業拡大を加速させてまいります。当社グループは北米、欧州、アジアの3地域を重点地域とし事業展開をしており、海外売上高は近年順調に拡大しております。今後のさらなる売上高拡大に向けて、北米ではOEM取引先AGCO社との協働によるシェアアップ推進や環境対応等新商品の投入。欧州では電動等環境対応商品拡充やコンシューマー向け商品拡充、在庫一元管理等の推進。アジアではタイ販売子会社であるIST社の販売チャネル強化やインドの業務提携農機メーカーTAFE社の生産機投入、東アジア向け高性能機投入など、各地域で次のステージへの具体策を確立し実践してまいります。
国内は農業就業人口の減少や食料安全保障、環境への配慮などの農業課題がある中で、これらに対応する「大型」「先端」「環境」「畑作」市場が拡大します。販売会社の経営統合による広域的・流動的人材活用により、一部地域では既に先行しているノウハウの全国展開や研鑽に加え、夢ある農業総合研究所で培った農業経営サポート力により、国内事業を更に発展させてまいります。また、同様にメンテナンス(アフターマーケット)や中古事業等の収益事業についても、全国展開による更なる拡大を図ります。
これらを支える開発体制及び知的財産についても、成長市場にリソースを集中投下し、当社グループ全体でベクトルを統一し邁進してまいります。

b.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応
■現状分析
当社のPBRは1倍を下回る水準が継続し、2023年12月末時点で0.34倍に留まっております。PBRを構成要素であるROEとPER(株価収益率)に分解し、それぞれの項目について「同業他社との経年比較」及び「当社と接点のある投資家からの意見収集」等を通じ、その要因を整理しました。
・ROE
中期経営計画目標数値である8%に届かず、その要因は、当期純利益率と総資産回転率の低さにあると認識しております。当期純利益率は製品利益率や販管費率、総資産回転率は在庫量や設備稼働率などが原因と考えております。なお、現状分析・評価に際し実施したヒアリングにより、日頃接点のある機関投資家が把握する当社株主資本コストの水準は概ね8%程度と認識しております。
・PER
2020年以降10倍に満たず、その要因は、成長率の低さや、成長戦略・強み・収益性などの情報開示不足、計画と実績の乖離などが原因と捉えております。
■PBR改善に向けて
現状分析による課題を踏まえ、「プロジェクトZ」の諸施策を着実に進めることに加え、IR活動・ESG取り組み強化により、2027年までにPBR1倍以上の実現を目指します。
■株主・投資家との対話状況
当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、経営方針の丁寧な説明や、建設的な対話の実施などにより、株主・投資家の皆さまと信頼関係を構築することが重要であると考えております。
対話については、経営管理部門(IR・広報室、総合企画部、財務部、総務部)の担当役員が統轄し、決算説明会をはじめとしたさまざまな機会を通じた積極的な対応に努めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
井関グループは、「農家を過酷な労働から解放したい」という創業者の想いのもと、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」を基本理念に掲げています。私たちは、ステークホルダーの皆さまとともに持続可能な社会“食と農と大地”の実現を目指します。
サステナビリティを推進する体制として、当社グループのESGを巡る諸課題への対応について一元的な組織運営を行うことを目的に、取締役、執行役員で構成し、独立社外取締役を委員長とする「ESG委員会」を2022年8月に設置しました。委員会は、原則として毎月開催し、気候変動への対応や人権の尊重、コンプライアンスの徹底などグループ全体のESGに関する取り組みについてリスクと機会の観点から検討・審議を行っています。また、委員会にて審議した内容は取締役会に答申し、基本方針・マテリアリティその他重要な事項については、取締役会において審議・決定する仕組みとすることで、経営陣の関与強化を図っています。加えて、ESG推進に係る9つのワーキンググループ(WG)を設置し活動を推進しています。

当社グループでは、「リスク管理規程」で物理的、経済的もしくは信用上の損失または不利益を与えうる要因をリスクと定義し、リスクの顕在化防止及び損失の極小化を図り、業務の円滑な運営、資産保全、企業の信用維持に資することを目的としてリスクを管理しています。当社グループを取り巻くリスクの洗い出し・評価を実施のうえ、管理基準・規程や監視・対処体制の整備など適切な対策を講じています。リスクマネジメントWGにて定期的にリスクの洗い出し及び評価を行い、予見されるリスクに対し被害の大小・頻度の高低を評価し、その対応について検討しています。
なお、当社グループにおけるリスクと対応の状況については、

マテリアリティは、当社グループが目指す姿や長期ビジョンの実現に向け、優先的に取り組む重要な課題です。基本理念や長期ビジョンで2030年に目指す姿と社会課題(社会からの要請・期待)の両面から検討し、外部専門機関からの示唆を踏まえ、経営層で議論のうえ、特定しています。

これらのマテリアリティの中から、特に重要と判断するサステナビリティの取組について、以下に記載しました。なお、関連する情報については、当社の
1) 気候変動への対応
■環境経営に関する方針、戦略
当社グループでは、「脱炭素社会と循環型社会の実現」をマテリアリティとした環境経営を実践しています。2022年には、新たに環境ビジョンを策定し、環境基本方針・環境中長期目標を見直しました。具体的な取り組みとして、環境保全型スマート農業や電動化商品の提案など環境負荷低減に寄与する商品やサービスの拡充を図っています。
<環境ビジョン>
井関グループは、「お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供」を通じ、
2050年までにカーボンニュートラルで持続可能な社会の実現を目指します。
<環境基本方針>
「井関グループは、持続可能な社会の実現を目指すべく、
自然・社会・企業の調和に貢献する環境活動を推進します」
①環境マネジメントシステムの整備と機能的運用
②カーボンニュートラルを実現する事業活動及び製品・サービスの普及推進
③環境関連法規制の順守
④環境教育と環境情報公開
2) 人的資本・多様性の確保に向けた対応
■人的資本経営に関する方針、戦略
当社グループでは、従業員が活き活きと働く仕組みと社内環境を整備するとともに、一人ひとりが持つ累積的な知識・能力・経験を発揮することにより、中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営に取り組んでいます。
中長期計画に掲げるテーマのうち、事業戦略の実行に向けた中核人材の確保と育成にあたっては「人材育成方針」、従業員エンゲージメント向上にあたっては「社内環境整備方針」を定め、それらの方針に沿って具体的な取組を行っています。
<人材育成方針>
井関グループは、課題解決を果たすのはすべて「人」であり、企業の持続的成長と価値向上に欠かせない存在と考えています。
先端技術やグローバル化の推進など、事業戦略の実行に向けた中核人材の確保に注力するとともに、「食と農と大地」のソリューションカンパニーの実現に向けて、DXをはじめとする教育プログラムの更なる充実により、一人ひとりの力を最大限に引き出し「変革」を起こすチャレンジ精神あふれる人材を育成してまいります。
〇具体的な取組
① 社員教育を目的とした社会人大学院(事業構想大学院大学)への企業派遣制度の実施
② 先端技術活用のためのDX研修導入
③ グローバル人材育成のためのTOEIC講座実施
④ 耳で聴く新しい学習スタイルの導入による教育プログラムの多様化
⑤ 階層別研修の充実
⑥ グループ人材公募制度の導入
これらの人材育成を通じ、お客様から信頼されるモノづくり、画期的な商品・サービスの提供促進を図っています。
<社内環境整備方針>
井関グループは、「従業員には安定した職場を」という社是に基づき、従業員への安全・安心な職場の提供と働きがいのある職場づくりを目指しています。
人権の尊重とコンプライアンスの徹底を前提に、当社と従業員がともに発展して行くため、エンゲージメント向上に取り組むとともに、多様性に富んだ健全で透明性の高い社内環境を整備してまいります。
〇具体的な取組
① 残業時間の削減、有給休暇の取得促進によるワークライフバランスの充実
② 女性の採用、ハラスメント防止などの取り組みを通じたダイバーシティ推進
③ 健康アライアンスへの参画と健康経営推進
マテリアリティの各項目に対しては、KPIの設定・取組計画を策定のうえ、ESG推進に係る各WGが活動を推進し、ESG委員会等で定期的に進捗管理を行っております。マテリアリティの中から、特に重要と判断する指標及び目標並びに実績については、以下のとおりです。
1) 気候変動への対応
■環境経営に関する指標及び目標
当社グループは、中期計画の中で環境面においては以下の定量目標を定めています。
GHG排出量においては、2030年にグループ全体のScope1&2の2014年比46%削減を目指しています。また、環境に配慮した商品やサービスの拡充を通じ、農業における環境負荷低減に繋げる取り組み指標として、2025年にエコ商品の国内売上高比率65%以上を目指しています。
※1:対象範囲は提出会社及び連結子会社
※2:対象範囲は㈱井関松山製造所、㈱井関熊本製造所、㈱井関新潟製造所、㈱井関重信製作所
2) 人的資本・多様性の確保に向けた対応
■人的資本経営に関する指標及び目標
人材育成及び社内環境整備に関しては、以下2つの項目について目標値を定め、随時進捗状況を確認のうえ対応しております。なお、当社グループ各社の業容や規模が様々であり、連結全体での記載が困難であることから、当社単体における目標と実績を記載しております。
(注) 女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差についての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況」に記載しております。
経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。
当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めてまいる所存であります。
なお、文中の将来に関する事項は、特段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)
当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、資産・負債の評価及び収益・費用の認識について、重要な会計方針に基づき見積り及び判断を継続して行っております。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
当期における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことにより、社会経済活動が正常化され、景気は緩やかに回復しました。一方で、物価上昇や中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動など、先行き不透明感も残りました。
このような状況の中、当社グループは、国内では顧客対応の充実など農業構造変化への対応強化、海外では主力市場である北米、欧州、アジアでの販売強化に努めた結果、連結経営成績は以下のとおりとなりました。
〔当期連結業績〕
当期の売上高は、前期比3,286百万円増加し、169,916百万円(前期比2.0%増加)となりました。
国内売上高は前期比422百万円増加の113,060百万円(前期比0.4%増加)となりました。農機製品は需要の減少を受けましたが、収支構造改革の柱である補修用部品及び修理整備等のメンテナンス収入や施設工事の伸長により、国内売上高全体では増加となりました。
海外売上高は前期比2,864百万円増加の56,855百万円(前期比5.3%増加)となりました。北米はコンパクトトラクタ市場の調整局面が継続しましたが、欧州では値上げ後も小売店の需要が堅調に推移したことに加え、前年下期よりIseki-Maschinen GmbHを連結子会社化したこともあり増加となりました。アジアでは中国向け生産用部品は出荷増も、米価低迷などにより韓国向け製品は出荷減となりました。
営業利益は前期比1,280百万円減少の2,253百万円(前期比36.2%減少)となりました。価格改定効果などにより売上総利益は増加したものの、販管費の増加がありました。
経常利益は前期比1,669百万円減少の2,092百万円(前期比44.4%減少)となりました。
税金等調整前当期純利益は前期比3,356百万円減少の1,900百万円(前期比63.8%減少)となりました。前期に計上した持分変動利益や段階取得に係る差益の剥落などがありました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比4,090百万円減少の29百万円(前期比99.3%減少)となりました。
〔当期個別業績〕
当期の売上高は97,071百万円(前期比0.4%減少)、営業損失は823百万円(前期は営業損失839百万円)、経常利益は1,174百万円(前期比8.1%減少)、当期純利益は937百万円(前期は当期純損失160百万円)となりました。
商品別の売上状況につきましては、次のとおりであります。
〔国内〕
整地用機械(トラクタ、耕うん機など)は22,083百万円(前期比3.6%減少)、栽培用機械(田植機、野菜移植機)は7,235百万円(前期比8.5%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は15,741百万円(前期比2.2%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は42,506百万円(前期比1.1%増加)、その他農業関連(施設工事など)は25,493百万円(前期比7.5%増加)となりました。
〔海外〕
整地用機械(トラクタなど)は39,401百万円(前期比4.1%減少)、栽培用機械(田植機など)は1,828百万円(前期比24.6%増加)、収穫調製用機械(コンバインなど)は1,358百万円(前期比27.3%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は6,398百万円(前期比30.8%増加)、その他農業関連は7,869百万円(前期比67.9%増加)となりました。
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ10,611百万円増加し217,102百万円となりました。主に国内の農機製品需要減少や、海外子会社の現地在庫積み増しによる棚卸資産の増加によるものであります。
負債の部は、前連結会計年度末に比べ8,740百万円増加し142,886百万円となりました。主に棚卸資産などの運転資本の増加に伴う有利子負債の増加によるものであります。
純資産の部は、前連結会計年度末に比べ1,870百万円増加し74,215百万円となりました。主にその他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定の増加によるものであります。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ848百万円減少し9,851百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加や仕入債務の減少などにより2,459百万円の支出(前期比915百万円の収入増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、主に設備投資による支出により5,416百万円の支出(前期比2,431百万円の支出増)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、主に有利子負債の増加などにより6,722百万円の収入(前期比4,688百万円の収入増)となりました。
当社グループの主な資金需要は、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用に係る運転資金のほかに、生産設備の更新や営業拠点の整備等の設備投資資金であります。
当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、これらの資金は、自己資金及び金融機関からの借入金により調達しております。なお、当社は、資金の流動性を確保するため、主要取引銀行と総額20,030百万円のコミットメント・ライン契約を締結しております。
当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は76,910百万円、現金及び預金の残高は9,901百万円となっております。
当社グループは、抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行する「プロジェクトZ」において、基本戦略及び数値目標(2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE8%以上・DOE2%以上)を定めました。重視する経営指標の状況は以下のとおりであります。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別生産実績を記載しております。
(注) 金額は、販売価格によっております。
主として需要見込みによる生産方式であり、受注生産はほとんど行っていないため記載をしておりません。
当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別販売実績を記載しております。
(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
当連結会計年度は当該割合が10%未満のため、記載を省略しております。
該当事項はありません。
当社グループは、創業以来「需要家に喜ばれる製品」の提供を企業理念の一つに掲げ、お客様に満足して使っていただける商品をタイムリーに提供することをモットーに研究開発活動を展開しています。お客様のニーズに応えるため、徹底した調査に基づき、省エネ・低コスト農業、安全作業・環境保全への配慮など積極的に取り組んでいます。
国内においては、ICTやロボット技術を活用した超省力化農業、経験と勘の農業から誰もができる農業、データを駆使した戦略的な農業を可能とするスマート農業にも積極的に取り組んでいます。海外においては、欧州景観整備市場への対応や、日本で培った稲作技術を活用した商品展開など、地域のニーズに対応した商品展開に積極的に取り組んでいます。
また、近年は、脱炭素社会と循環型社会の実現に向けた商品開発にも積極的に取り組んでいます。2023年より開発製造本部内のグリーンイノベーション室が本格稼働し、電動化や水素活用など製品のゼロエミッション化技術戦略及び中長期的に取り組む研究や開発テーマの立案、商品化を進めています。
なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
(トラクタ)
・農業機械全般で軽労化や熟練作業者の不足を補うため、長時間作業でも疲れにくい直進アシストや、使い易さ、快適な作業への要望が高まっています。この度、好評を頂いている中型トラクタのモデルチェンジ機として、無段変速ミッションを採用、合わせて使い易さと居住性も向上させた「BFREX」(ビレックス)BFシリーズを市場投入しました。HSTと遊星ギアを組み合わせた無段変速機IAVT(ISEKI Advanced Variable Transmission)により、高い伝達効率と手元レバーによる最適な車速の選択を可能にしました。また、大型8インチモニタ(Z型)は直進アシストやマップ連動可変施肥に対応、操作に使用するスイッチ、レバー類を右側アームレストに集約し使い易さを向上、大型キャビンは空間を拡大させ居住性を高めています。シートベルトの装着を促すシートベルトリマインダーを設定し安全性にも配慮し、幅広いお客様のニーズにお応えしています。
・景観整備プロユーザーからホビーファーマー・プライベートユーザーまで幅広く使われている、欧州・オセアニア向けトラクタのTMシリーズをモデルチェンジしました。ユーザーの声を反映させた基本性能の充実(油圧揚力向上、純正キャビンの設定、車速向上)、環境性能の向上(エンジン回転を抑えた作業が可能なエコノミーPTO)、モーアの着脱を容易にするモーアデッキの設定など、多様な地域の要望に応えています。
・公園や住宅地など緑地での草刈りを中心とした欧州景観整備市場においてプロユーザーを中心に好評を頂いている、乗用モーアSXG3シリーズをモデルチェンジしました。デザイン変更、操作性の向上だけでなくHVO燃料に対応することによるCO2排出量削減などの環境負荷低減にも対応しています。
(コンバイン)
・大規模生産者向けに新型コンバイン、フロンティアマスターFMシリーズを市場投入しました。担い手への農地集約が加速するに伴って生産者一人当たりの作業時間も増加する傾向にあり、長時間作業でも疲れにくい居住性や操作性、メンテナンス性の向上が求められています。FMシリーズの新設計静音キャビンは従来機よりも7db(A)作業時騒音を低減しました。また、操作レバーや操作パネルを刷新するとともに、上位のジャパンコンバインで好評のカラー液晶モニターを採用し操作性を向上させました。工具レスでのグレンタンク開閉、刈取部オープンの簡略化などメンテナンス性も大幅に向上させ、担い手農家を応援します。
(田植機)
・生産効率の向上を目的として、各種センシングデータを元に細やかな施肥を実現できるスマート施肥の需要が高まっています。今回、大規模プロ向け高精度高能率田植機PRJ8に、ほ場施肥マップをもとに田植え作業をしながら施肥量を変えることができるマップデータ連動可変施肥機能を設定しました。人工衛星やドローン等のデータに基づいて作成された施肥マップをもとに、同じほ場内で場所毎に施肥量を変えることができます。過去の生育データに基づく施肥マップによりほ場内で施肥量を変化させ、適正施肥を行うことができます。それにより、生育ムラやバラツキを軽減することができ、ムダな肥料コストの抑制、品質の安定化等に貢献します。
(その他商品)
・コイン精米機は従来から数多くのお客様にご愛用いただいて参りました。今回、おいしさや健康面に対する消費者ニーズの高まりを受け、お米のうまみ層(亜糊粉層)を残す精米方式でお米のおいしさを引き出す“うまみ精米”機能を新たに搭載した新型コイン精米機CP420・CPH420を市場投入しました。うまみ白米は、お米をゆっくり丁寧に削ることでお米のうまみ層(亜糊粉層)を残し、栄養価の高い胚芽も白米(標準)より残す精米方式です。うまみ玄米は、玄米表面の固いロウ層だけを削ることでぬか層に詰まった栄養価は残しつつ、炊きやすく食べやすい精米方式です。どなたにでも簡単にご利用いただけるような操作デザインで、より多くの方にうまみ精米をお届けしてまいります。
当社は、「ISEKIレポート」等において当社グループの研究開発の考え方、活動、知的財産戦略等について情報開示を行っております。「特許行政年次報告書」(特許庁編)によれば、日本における分野別登録数(2014年までは分野別公開数)及び全産業を対象とした特許査定率において上位を維持し続け、2022年度は分野別登録数で第2位、特許査定率で第3位となりました。
(分野別登録数・分野別公開数の年度別推移)
※ 特許査定率 = 特許査定件数 / (特許査定件数 + 拒絶査定件数 + 取下・放棄件数)
取下・放棄件数 … 拒絶理由通知後に取下げまたは放棄した件数