第2 【事業の状況】

 

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは「農家を過酷な労働から解放したい」という創業の精神を連綿と受け継ぎ、2025年には創立100年を迎えます。当社グループの基本理念は、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」としております。また、長期ビジョンを「『食と農と大地』のソリューションカンパニー」とし、これらに関連する課題を解決するとともに、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指しております。


 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、事業環境が大きく変化する中で、農業機械総合専業メーカーとして培ってきた知見、経験などをコアに社会課題を解決し、新たな価値を創造するソリューションカンパニーを目指してまいります。2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE(自己資本利益率)8%以上・DOE(株主資本配当率)2%以上を達成し、PBR(株価純資産倍率)1倍以上を目指してまいります。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

①経営課題

中期経営計画において2025年までに連結営業利益率5%を達成すべく取り組みを進めてまいりましたが、2024年の計画は1.2%と大きく乖離しており、中期経営計画で目指した「売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換」は未達の状況です。これは激変する環境への対応力が不足していたこと、経営全体としての変革・実行に取り組めなかったことが要因であると認識しております。

また、ROEについても当期純利益率と総資産回転率の低さにより目標とする8%を下回る水準で推移しております。

以上の状況より、当社グループの課題を収益性と資産効率と捉え、これらに対して、聖域なき事業構造改革を実行し強靭な経営基盤を構築すべく、2023年11月14日付で「プロジェクトZ」を設置しました。

 

②課題解決に向けた具体的施策

a.プロジェクトZ施策

プロジェクトZでは抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行してまいります。抜本的構造改革は、「生産最適化」、「開発最適化」、「国内営業深化」の3テーマを軸に推し進め、2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE8%以上・DOE2%以上を達成し、PBR1倍以上を目指してまいります。成長戦略は、選択と集中を深化させ、国内外の成長市場へのリソース集中による更なる発展を目指してまいります。

これらプロジェクトZの取り組みにより収益性改善、資産効率化を図り、成長に向けたキャッシュアロケーションを実行してまいります。


 

 

■抜本的構造改革

・生産最適化

国内外製造所の最適生産体制の構築については、これまでも収益性改善に向けた重点施策として取り組みを進めてまいりましたが、プロジェクトZにより更に加速させてまいります。2024年7月には、㈱井関松山製造所と㈱井関熊本製造所の経営統合を予定しております。人的資源やシステムの集約により業務効率化やコスト削減効果を創出し、製造所の強靭な体質をつくってまいります。


 

 

・開発最適化

商品の成長性や収益性を分析したうえで、機種・型式を30%以上削減するとともに、成長分野へ開発リソースを集中してまいります。また、開発手法についても全地域共通の母体とするグローバル設計を進め、効率化を図ってまいります。開発の効率化とリソースの集中による組織のスリム化に加え、製品利益率改善を短期集中的に実施してまいります。


 

 

・国内営業深化

国内営業の深化を目的として、2025年1月に全国を6地域に分割して事業展開している販売会社の経営統合を予定しております。これにより、重複する間接業務の効率化や、在庫拠点及び物流体制の見直しによる物流費の圧縮、在庫の全国一元管理による圧縮など、資源集約による経営効率の向上を図ります。


 

■成長戦略

当社グループの成長の軸は、海外と国内の特定分野にあると分析しております。そのうち、海外は各地域の需要を精緻にとらえ、収益性向上と事業拡大を加速させてまいります。当社グループは北米、欧州、アジアの3地域を重点地域とし事業展開をしており、海外売上高は近年順調に拡大しております。今後のさらなる売上高拡大に向けて、北米ではOEM取引先AGCO社との協働によるシェアアップ推進や環境対応等新商品の投入。欧州では電動等環境対応商品拡充やコンシューマー向け商品拡充、在庫一元管理等の推進。アジアではタイ販売子会社であるIST社の販売チャネル強化やインドの業務提携農機メーカーTAFE社の生産機投入、東アジア向け高性能機投入など、各地域で次のステージへの具体策を確立し実践してまいります。

国内は農業就業人口の減少や食料安全保障、環境への配慮などの農業課題がある中で、これらに対応する「大型」「先端」「環境」「畑作」市場が拡大します。販売会社の経営統合による広域的・流動的人材活用により、一部地域では既に先行しているノウハウの全国展開や研鑽に加え、夢ある農業総合研究所で培った農業経営サポート力により、国内事業を更に発展させてまいります。また、同様にメンテナンス(アフターマーケット)や中古事業等の収益事業についても、全国展開による更なる拡大を図ります。

これらを支える開発体制及び知的財産についても、成長市場にリソースを集中投下し、当社グループ全体でベクトルを統一し邁進してまいります。


 

b.資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応

■現状分析

当社のPBRは1倍を下回る水準が継続し、2023年12月末時点で0.34倍に留まっております。PBRを構成要素であるROEとPER(株価収益率)に分解し、それぞれの項目について「同業他社との経年比較」及び「当社と接点のある投資家からの意見収集」等を通じ、その要因を整理しました。

・ROE

中期経営計画目標数値である8%に届かず、その要因は、当期純利益率と総資産回転率の低さにあると認識しております。当期純利益率は製品利益率や販管費率、総資産回転率は在庫量や設備稼働率などが原因と考えております。なお、現状分析・評価に際し実施したヒアリングにより、日頃接点のある機関投資家が把握する当社株主資本コストの水準は概ね8%程度と認識しております。

・PER

2020年以降10倍に満たず、その要因は、成長率の低さや、成長戦略・強み・収益性などの情報開示不足、計画と実績の乖離などが原因と捉えております。

■PBR改善に向けて

現状分析による課題を踏まえ、「プロジェクトZ」の諸施策を着実に進めることに加え、IR活動・ESG取り組み強化により、2027年までにPBR1倍以上の実現を目指します。

■株主・投資家との対話状況

当社は、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、経営方針の丁寧な説明や、建設的な対話の実施などにより、株主・投資家の皆さまと信頼関係を構築することが重要であると考えております。

対話については、経営管理部門(IR・広報室、総合企画部、財務部、総務部)の担当役員が統轄し、決算説明会をはじめとしたさまざまな機会を通じた積極的な対応に努めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

井関グループは、「農家を過酷な労働から解放したい」という創業者の想いのもと、「『お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供』を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」を基本理念に掲げています。私たちは、ステークホルダーの皆さまとともに持続可能な社会“食と農と大地”の実現を目指します。

(1)ガバナンス

サステナビリティを推進する体制として、当社グループのESGを巡る諸課題への対応について一元的な組織運営を行うことを目的に、取締役、執行役員で構成し、独立社外取締役を委員長とする「ESG委員会」を2022年8月に設置しました。委員会は、原則として毎月開催し、気候変動への対応や人権の尊重、コンプライアンスの徹底などグループ全体のESGに関する取り組みについてリスクと機会の観点から検討・審議を行っています。また、委員会にて審議した内容は取締役会に答申し、基本方針・マテリアリティその他重要な事項については、取締役会において審議・決定する仕組みとすることで、経営陣の関与強化を図っています。加えて、ESG推進に係る9つのワーキンググループ(WG)を設置し活動を推進しています。


(2)リスク管理

当社グループでは、「リスク管理規程」で物理的、経済的もしくは信用上の損失または不利益を与えうる要因をリスクと定義し、リスクの顕在化防止及び損失の極小化を図り、業務の円滑な運営、資産保全、企業の信用維持に資することを目的としてリスクを管理しています。当社グループを取り巻くリスクの洗い出し・評価を実施のうえ、管理基準・規程や監視・対処体制の整備など適切な対策を講じています。リスクマネジメントWGにて定期的にリスクの洗い出し及び評価を行い、予見されるリスクに対し被害の大小・頻度の高低を評価し、その対応について検討しています。

なお、当社グループにおけるリスクと対応の状況については、「3 事業等のリスク」に掲載しております。


 

(3)戦略

マテリアリティは、当社グループが目指す姿や長期ビジョンの実現に向け、優先的に取り組む重要な課題です。基本理念や長期ビジョンで2030年に目指す姿と社会課題(社会からの要請・期待)の両面から検討し、外部専門機関からの示唆を踏まえ、経営層で議論のうえ、特定しています。


 

これらのマテリアリティの中から、特に重要と判断するサステナビリティの取組について、以下に記載しました。なお、関連する情報については、当社の統合報告書(ISEKIレポート)や当社企業ウェブサイトでも公表しております。

 

 

1)  気候変動への対応

■環境経営に関する方針、戦略

当社グループでは、「脱炭素社会と循環型社会の実現」をマテリアリティとした環境経営を実践しています。2022年には、新たに環境ビジョンを策定し、環境基本方針・環境中長期目標を見直しました。具体的な取り組みとして、環境保全型スマート農業や電動化商品の提案など環境負荷低減に寄与する商品やサービスの拡充を図っています。

<環境ビジョン>

  井関グループは、「お客さまに喜ばれる製品・サービスの提供」を通じ、

2050年までにカーボンニュートラルで持続可能な社会の実現を目指します。

<環境基本方針>
「井関グループは、持続可能な社会の実現を目指すべく、
            自然・社会・企業の調和に貢献する環境活動を推進します」

①環境マネジメントシステムの整備と機能的運用

②カーボンニュートラルを実現する事業活動及び製品・サービスの普及推進

③環境関連法規制の順守

④環境教育と環境情報公開

 

2)  人的資本・多様性の確保に向けた対応

■人的資本経営に関する方針、戦略

当社グループでは、従業員が活き活きと働く仕組みと社内環境を整備するとともに、一人ひとりが持つ累積的な知識・能力・経験を発揮することにより、中長期的な企業価値向上につなげる人的資本経営に取り組んでいます。

中長期計画に掲げるテーマのうち、事業戦略の実行に向けた中核人材の確保と育成にあたっては「人材育成方針」、従業員エンゲージメント向上にあたっては「社内環境整備方針」を定め、それらの方針に沿って具体的な取組を行っています。

<人材育成方針>

井関グループは、課題解決を果たすのはすべて「人」であり、企業の持続的成長と価値向上に欠かせない存在と考えています。

先端技術やグローバル化の推進など、事業戦略の実行に向けた中核人材の確保に注力するとともに、「食と農と大地」のソリューションカンパニーの実現に向けて、DXをはじめとする教育プログラムの更なる充実により、一人ひとりの力を最大限に引き出し「変革」を起こすチャレンジ精神あふれる人材を育成してまいります。

〇具体的な取組

① 社員教育を目的とした社会人大学院(事業構想大学院大学)への企業派遣制度の実施

② 先端技術活用のためのDX研修導入

③ グローバル人材育成のためのTOEIC講座実施

④ 耳で聴く新しい学習スタイルの導入による教育プログラムの多様化

⑤ 階層別研修の充実

⑥ グループ人材公募制度の導入 

これらの人材育成を通じ、お客様から信頼されるモノづくり、画期的な商品・サービスの提供促進を図っています。

 

 

<社内環境整備方針>

井関グループは、「従業員には安定した職場を」という社是に基づき、従業員への安全・安心な職場の提供と働きがいのある職場づくりを目指しています。

人権の尊重とコンプライアンスの徹底を前提に、当社と従業員がともに発展して行くため、エンゲージメント向上に取り組むとともに、多様性に富んだ健全で透明性の高い社内環境を整備してまいります。

〇具体的な取組

  残業時間の削減、有給休暇の取得促進によるワークライフバランスの充実

  女性の採用、ハラスメント防止などの取り組みを通じたダイバーシティ推進

  健康アライアンスへの参画と健康経営推進

 

(4)指標及び目標

マテリアリティの各項目に対しては、KPIの設定・取組計画を策定のうえ、ESG推進に係る各WGが活動を推進し、ESG委員会等で定期的に進捗管理を行っております。マテリアリティの中から、特に重要と判断する指標及び目標並びに実績については、以下のとおりです。

 

1) 気候変動への対応

■環境経営に関する指標及び目標

当社グループは、中期計画の中で環境面においては以下の定量目標を定めています。

GHG排出量においては、2030年にグループ全体のScope1&2の2014年比46%削減を目指しています。また、環境に配慮した商品やサービスの拡充を通じ、農業における環境負荷低減に繋げる取り組み指標として、2025年にエコ商品の国内売上高比率65%以上を目指しています。

 

指標

目標(2023年)

実績(2023年)

GHG排出量(Scope1&2)     ※1

33.4%削減(2014年比)

37.2%削減(同左)

水使用量(売上高当たり)    ※2

43.1%削減(2013年比)

53.4%削減(同左)

廃棄物最終処分量(売上高当たり)※2

64.1%削減(2013年比)

64.3%削減(同左)

総物質投入量(売上高当たり)  ※2

16.5%削減(2013年比)

34.1%削減(同左)

エコ商品の国内売上高比率

52.0%

51.5%

 

※1:対象範囲は提出会社及び連結子会社

※2:対象範囲は㈱井関松山製造所、㈱井関熊本製造所、㈱井関新潟製造所、㈱井関重信製作所

  

2) 人的資本・多様性の確保に向けた対応

■人的資本経営に関する指標及び目標

人材育成及び社内環境整備に関しては、以下2つの項目について目標値を定め、随時進捗状況を確認のうえ対応しております。なお、当社グループ各社の業容や規模が様々であり、連結全体での記載が困難であることから、当社単体における目標と実績を記載しております。

 

指標

目標(2025年)

実績(2023年)

管理職に占める女性労働者の割合

7.0%

4.6%

中途採用者管理職比率

7.0%

8.5%

 

(注) 女性管理職比率、男性の育児休業取得率、男女間賃金格差についての実績は、「第1 企業の状況 5 従業員の状況」に記載しております。

 

 

3 【事業等のリスク】

経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識し、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めてまいる所存であります。

なお、文中の将来に関する事項は、特段の記載がない限り、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

1)

経済情勢及び農業環境の変化

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、農業機械の開発・製造・販売を主な事業内容としております。主な事業基盤である国内農業においては、農業従事者の高齢化、担い手不足による農家戸数の減少等の構造的な課題を抱えています。また、政府による農業政策転換等の影響に加え、天候に左右されやすい農作物の価格次第では農家の購買意欲に影響を及ぼします。

こうした農機市場特有の構造に加え、国内外の景気の低迷等により農機需要が減少した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、国内農業の抱える構造的な課題への対応として、既存の県別販売エリアをさらに分割したブロック単位での営業・サービス力を強化するとともに、ブロック内の拠点や人員を最適配置し、経営効率化を図っております。ブロック内では、中核拠点を中心に営業・サービスを展開し、中核拠点は大規模農家に対応するため大型拠点化を進めております。また、農政が進める「みどりの食料システム戦略」への対応や、脱炭素など地球環境への対策が求められているほか、化学肥料や農薬の削減技術のニーズや有機栽培の作付増加、さらには営農に関するソリューションの需要拡大が見込まれます。当社グループでは、センシングデータによる可変施肥機能を搭載した農機ラインナップの拡充や、農薬を使わず雑草抑制ができる有機農業導入に資する商材など新しい技術により環境変化に対応していきます。これらは当社グループにとって事業展開の機会でもあると分析しています。

同水準

2)

為替レートの変動

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、海外事業を展開し、当連結会計年度の連結売上高における海外売上高比率は33.5%です。当社グループが国内で生産し輸出する事業においては、円高に振れた場合、価格競争力の低下を招く可能性があります。また、当社グループの連結財務諸表の作成にあたり、現地通貨で作成される海外関連会社の財務諸表を円換算しているため、現地通貨における価値が変わらなくても、為替レートの変動による影響を受けます。外国為替相場の急激な変動が、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、為替レート変動によるリスクを軽減するため、外貨と円貨の両建てでの輸出取引や原材料及び部品の海外調達を実施しています。また、為替予約の活用により短期的なリスクの軽減を図っております。

同水準

3)

原材料の価格高騰、調達難、サプライチェーンの混乱

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、多数の取引先から原材料や部品を調達しており、調達価格の急激な高騰や、供給逼迫の長期化、サプライヤーからの供給品に起因する当社商品の信頼性や評判低下等のリスクがあります。また、生産品の出荷・運搬に際し、輸送用コンテナやトラックの不足等から出荷が停滞するリスクがあります。特に国内では、物流の2024年問題によるトラックドライバーの不足が懸念され、これらのリスクが顕在化した場合、サプライチェーンの停滞等に起因する生産減や出荷の停滞、製造コストの上昇による収益性の低下等が当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、原材料価格高騰部分の価格転嫁を進めるほか、調達及び出荷の両面で取引先を複数とすることや複数の輸送手段等の確保、供給遅延が懸念される部品等の早期発注、安全在庫量の確保等による安定生産・供給体制の構築等を図っております。加えて取引先の信用情報調査や人権尊重を含むCSR調達アンケートの実施等により当社商品の信頼性確保に努めております。また、物流の2024年問題への対応として、荷待ち時間の短縮に努めるほか、トラック・船・鉄道コンテナ等の輸送手段の最適化を図っております。

拡大

 

 

4)

特定の取引先、調達先への依存

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの連結売上高のうち、主要販売先上位3社の占める割合は、当連結会計年度において約18%となっております。また、当社製の製品に使用している原材料や購入部品には、調達先が特定されているものがあります。特定の販売先や調達先の方針変更や業績不振、倒産等により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、OEM供給先も含め、特定の販売先や調達先との取引関係は安定的に継続しており、今後も取引先との定期的なコミュニケーションやトップレベルの関係性強化、販売先の満足する品質の確保等を通じ、良好な関係の維持に努めてまいります。

同水準

5)

他社との競争

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

国内農機市場においては、担い手農家のほとんどがデータを活用する「スマート農業の社会実装」が国の政策目標として掲げられ、先端技術の導入・実証が進んでいます。市場では、スマート農業に対応する高機能製品の開発や、農業資材低減ニーズを受けた低価格化等の面で、知的財産権の獲得を含め競合他社との激しい競争が展開されております。

海外では、地域ごとに環境は異なりますが、多様なニーズや環境意識の高まりなど、事業環境は常に変化しております。

こうした環境や競争に対して当社グループがアフターサービスを含めた商品競争力を強化できなかった場合は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、競合他社との激しい競争に対し、多様なニーズに対応した製品の市場投入や、お客様への商品の販売に併せたソリューションの提案等を実施するなど付加価値の維持・向上に取り組んでおります。また、ICTや自動化等スマート農業関連及びカーボンニュートラルに寄与する電動化技術を含む将来型の開発テーマを増やすことで、市場での競争力向上に資する知的財産権の獲得を図っております。

海外では、環境意識の高い欧州市場向けに電動化商品の発売や、国内と市場特性が類似する東アジアでの大型・先端技術搭載商品の供給等、市場におけるプレゼンスの向上を図っております。

同水準

6)

商品やサービスの重大な瑕疵や欠陥の発生

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの開発・製造する商品やサービスに重大な瑕疵や欠陥が発生した場合、または当社グループ及び当社商品への信頼が失われた場合、多額の損害賠償請求等により当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「『お客さまに喜ばれる製品・サービス』の提供を通じ豊かな社会の実現へ貢献する」を基本理念に掲げ、お客さまに満足いただける商品を提供するための品質管理・品質保証体制を構築しております。商品化にあたっては、次のステージへの移行可否審査(デザインレビュー)等、社内で定められたプロセスを厳格に運用し、製品の開発・生産・アフターサービスを行っております。また、万一の品質問題の発生に備え、生産物賠償責任保険の加入等により、財政状態への影響の低減を図っております。

同水準

7)

株式市場の動向

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、有価証券で時価のあるものを保有しており、当連結会計年度末においては6,450百万円となっております。そのため、株価が大きく下落した場合には、減損損失、評価損または売却損等が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社は有価証券のうち保有目的が純投資目的である投資有価証券は保有しておりません。当社が保有する政策保有株式については、毎年、取締役会において個別の銘柄ごとに保有に伴う便益やリスク等について、定性と定量の両面から総合的に勘案のうえ、保有の意義を検証しております。検証の結果、保有意義が希薄となった政策保有株式については、売却検討対象としています。

同水準

 

 

8)

土地及びその他の固定資産の価値下落

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

 

当社グループが保有するその他の固定資産等については、経営環境の著しい悪化等に伴う収益性の低下や、市場価格の下落等により減損損失が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に、事業環境については、中期経営計画策定時の想定から大きく変化しており、同計画で目指した「売上高に左右されることなく収益を確実に上げられる筋肉質への体質転換」は未達の状況です。

当社グループの連結会社においては、製造・販売の両面で構造改革を進めており、2024年2月14日に「プロジェクトZ」施策を公表いたしました。具体的には、製造拠点では松山・熊本の両製造所の経営統合を予定しており、統合による人的資源やシステムの集約により業務効率化とコスト削減効果を創出し、製造所の強靭な体質を構築してまいります。販売拠点では広域販売会社の経営統合を予定しており、重複する間接業務の効率化や、在庫拠点及び物流体制の見直しによる物流費の圧縮など、資源集約による経営効率の向上を図ります。これらの施策の進捗について、業績管理を担う部門にてトレースし、収益性の低下につながる事象を把握した場合には、適時に対応策を検討しております。

拡大

9)

環境問題等の公的規制や問題の発生

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、事業活動をするうえで大気汚染、水質汚濁、廃棄物処理、有害物質の排除等に関する国内外の環境規制に対応するために必要な経営資源を投入しています。規制や市場の要求が厳格化した場合のコスト負担や、環境問題発生時の是正措置、訴訟等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、生産と生産以外の事業活動の両面から環境負荷の低減に努めております。生産面においては大気や排水に含まれる規制物質等の環境負荷データをモニタリングし、環境負荷低減に資する生産活動をしております。生産以外の事業活動面においては、国内外の環境規制に適合する製品の開発はもとより、環境負荷低減に資する国内での「エコ商品」の販売推進や、国内外の連結会社における廃棄物の取扱いについて法令に従い適切に対応しております。

同水準

10)

国際的な事業活動に伴うリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、アジアをはじめとして海外にも拠点を持ち、また国内の生産拠点においては海外の取引先から原材料や部品を調達して生産し、商品を内外の顧客に供給しています。こうした国際的な事業活動をする上で、各国の税制・法令・貿易政策の予期せぬ変化に加え、米中関係等の国際関係の変化、台湾有事やウクライナ・中東地域などの紛争等により、サプライチェーンや生産・営業活動が制限を受け、顧客への商品供給に支障をきたした場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループはアジア地域への事業展開に注力しておりますが、主に同地域における人材確保の困難性、未成熟な技術水準や不安定な労使関係などが、当社グループの事業展開を阻害する可能性があります。

当社グループでは、各国の税制・法令・貿易政策の変更や雇用情勢等については、現地連結会社からの情報収集と分析、関係先との情報共有を行っております。地政学的リスクについては、報道や官公庁通達のほか、当社グループの海外駐在員等がその予兆を察知した場合には、事業継続の可否や対応について事前に検討し、突発的な発生事象については従業員の安全を第一に対応しております。また、これらを通じて得られた情報と分析結果から、必要に応じて操業形態やサプライチェーンの見直し等を行うことにより、事業への影響の低減を図っております。

拡大

 

 

11)

法令違反リスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの役職員が法令に違反する行為を行った場合、当社グループの信用失墜を招くほか、事業活動が制限され、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、グループ全員が順守すべき「基本理念」と「行動規範」から成る「井関グループ倫理行動規範」を定め、コンプライアンスの徹底に努めております。不正及び不祥事の発生を未然に防止するため、コンプライアンス担当役員が統括管理にあたり、コンプライアンスの徹底においては各本部の統括部門長等で構成するコンプライアンスワーキンググループが中心となって対応しております。

また、企業内部の問題を早期に察知し、不祥事の発生によるリスクの最小化を目的として、「井関グループ内部通報制度(倫理ホットライン)」を設置しており、社内窓口のほか、経営陣から独立した社外の第三者窓口を設置するなど体制を整えております。

同水準

12)

自然災害や予期せぬ事故、感染症の拡大等に関するリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの国内外の主要拠点において、地震、台風、水害等の自然災害、予期せぬ事故、感染症等が発生した場合、当社グループの事業活動に直接的または間接的に影響を及ぼす可能性があります。こうした自然災害や予期せぬ事故の発生、感染症の深刻化の程度によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、火災や風水害の各種保険の付保に加え、耐震工事の実施、取引先との連携強化等により、自然災害等発生時のリスク分散を図っております。また「食」と「農」と「大地」に係るユーザーに必要不可欠な製品・部品・サービスの提供のため、事業継続計画を整備しております。修理メンテナンス、受発注・出荷、仕入・支払など事業継続のための重要業務を遂行できるよう、支援・代替策の確保等の検討を継続してまいります。不測の事態の発生時は、代表取締役社長を本部長として「対策本部」を設置し、情報収集・避難指示・支援指示を迅速に行います。

また、在宅勤務・分散勤務等の勤務形態の弾力化をはじめ、インターネットを活用した会議や行事運営などの継続的な実施により、不測の事態が発生した際の事業活動への影響の低減を図っております。

同水準

13)

他社との業務提携、合弁事業及び戦略的投資

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、必要に応じて他社との業務提携、合弁事業、戦略的投資を行います。これらの施策は双方の経営資源を有効に活用し、タイムリーに開発、生産、販売するうえで有効な手段であると当社グループは考えております。

しかしながら、業務提携や合弁事業において、財政状態やその他の理由により、当事者間で利害の不一致が生じた場合には、提携を維持できなくなる可能性があります。また、買収等戦略的投資については、事業、技術、商品及び人材などの統合において、期待する成果や効果が得られない可能性があり時間や費用などが想定以上にかかる可能性があります。従って、これらの施策の成否は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、各地の戦略パートナー等と提携関係を進めるうえで、その効果の最大化を図るため、トップマネジメントから担当者レベルまでの各階層において緊密な連携を図っています。また、業務提携によるオープンイノベーションの展開にあたっては、アーリーステージにあるベンチャー企業等を中心とした出資先候補の評価・選定及び出資後のモニタリングを行う審議機関として出資管理委員会を設置したほか、その内容や金額的重要性に応じ、取締役会・経営会議等による審議や決議をしています。しかしながら、その提携が所期の効果を発揮できないと判断した場合には、提携の解消や結びつきを弱めることもあり、発生し得る経済的影響を最小限とする手段を検討しております。

同水準

 

 

14)

借入金のリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当連結会計年度末における当社グループの借入金の連結貸借対照表計上額は、69,810百万円と、総資産の32.2%を占めており、金融情勢が変化し借入金利が上昇した場合には、借入コストが増加し、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。特に、足許では棚卸資産の増加に伴う借入金が増加し、主に海外での借入金利の上昇と併せ借入コストが増加しています。

また、当社グループは、取引金融機関とシンジケート・ローン契約及びコミットメント・ライン契約を締結しており、これらの契約に付されている財務制限条項に抵触した場合には、借入金の繰上返済義務が生じる可能性があり、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、収益性改善や棚卸資産の削減等によりキャッシュ・フローの創出力を高めるとともに、資金調達方法の多様化手段の一つとして債権の流動化により、有利子負債の圧縮を図っております。足許で増加傾向にある棚卸資産については、国内広域販売会社の経営統合に伴い、在庫の全国一元管理による効率的な運用等により削減を図ってまいります。また、固定金利等の種々の借入条件を適宜組み合わせることで、急激な金利変動に備えております。

拡大

15)

人材の確保、人材不足

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループが持続的成長と企業価値の向上を果たしていくためには、それを実現する多様な人材が必要です。そのため、事業に必要な人材の確保・育成が進まなかった場合には、長期的に当社グループの競争力が低下し、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、グループの人材育成方針・社内環境整備方針を定め、従業員エンゲージメント向上の取り組みを強化するとともに、国籍や性別を問わず、多様な知識・能力・経験を有する人材の採用・育成を進めています。採用方法として、キャリア採用、リファラル採用のほか、ジョブリターン制度を導入しております。育成面においても、階層別教育や技術・技能伝承のためのマイスター制度、外部大学院への派遣等の多様な人材育成プログラムに加え、事業戦略に沿ったグローバル人材、DX人材等の育成プログラムも強化してまいります。

また、グループ人材公募制度の運用を開始し、従業員の意思を尊重したキャリア形成を支援するほか、事業戦略に沿ったグループ全体の人材活用と活性化に繋げていきます。従業員とのエンゲージメントについては、タレントマネジメントシステムを活用し、働きやすく健全な職場環境の整備を図っております。

同水準

16)

情報セキュリティのリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループは、業務上必要となる個人情報を含む各種の情報をシステム上で管理しております。サイバー攻撃による不正アクセスやコンピュータウイルス感染等により、情報漏洩及びシステム停止・破損等が発生した場合、当社グループの業務の停滞に加え信用の低下を招くなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、電子情報のセキュリティや情報インフラの管理規程を整備し、サイバー攻撃・コンピュータウイルス対策の実施に加え、データセンタやクラウドサービスを活用したセキュリティ対策の強化に努めるほか、外部からの不正アクセスを常時監視するサービスの導入など、情報セキュリティ管理体制の継続的な改善を実施しております。

また、不測の事態に備えサイバー保険を付保しております。

同水準

 

 

17)

気候変動のリスク

 

リスクの説明

リスクへの対応

前年度からの変化

当社グループの事業基盤である農業において、気候変動は、作物体系の変化や農地の減少などによる需給の変動、当社グループの商品構成や販売量をはじめ事業活動全般に大きな影響を及ぼし、適切な対応ができなかった場合には、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

気温上昇を+2℃未満に抑えるシナリオ(主として移行リスク)においては、脱炭素化に向けた政府等の規制強化による運営コストの増加や脱炭素化の進展に伴う調達コストの増加、脱炭素需要に対応できないことによる事業機会の損失等が、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

また、気温上昇が+4℃となるシナリオ(主として物理的リスク)においては、風水害の甚大化によるサプライチェーンを含む生産・販売拠点などの被災影響、また、平均気温上昇に伴う米の品質低下や稲作可能地域の減少等を受け、稲作用の農機需要の減少が懸念され、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、主に2℃シナリオにおいては、太陽光発電等の再生可能エネルギー活用のほか、液化天然ガス(LNG)への燃料転換、また自家発電設備の排熱をボイラー等で利用するなどエネルギー構造の変更により、気候変動に影響するGHGの排出抑制を図っています。一方、脱炭素化に向けた農業機械や農法の変化は、当社グループにとって事業展開の機会でもあると分析しています。例えば、農業機械の電動化や、施肥の最適化など効率的な農作業を実施するスマート農機・ロボット農機の導入促進に加え、農業分野のGHG排出の一定割合を占める水田のメタン排出量削減に資する農法の普及や、化学肥料・農薬を使用しない環境保全型農業の進展が見込まれ、これらに対応するためのソリューションの需要拡大が想定されます。また、当社グループは、J-クレジットの取り組みに関する他社との業務提携を通じた推進など、温室効果ガスの削減に貢献し、持続可能な農業の拡大を目指してまいります。

4℃シナリオにおいては、事業継続計画の継続的見直し、商品構成や販売網の見直し等により、影響の抑制を図っています。一方、自然環境の変化に対応するため、ロボット農機による農作業の代替関連技術、AIによる気象データ・生育データ分析の自律化等、持続可能な農業生産基盤の構築に資するソリューションの需要拡大が見込まれ、これらは当社グループにとって事業展開の機会でもあると分析しています。

同水準

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定)

当社の連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり、資産・負債の評価及び収益・費用の認識について、重要な会計方針に基づき見積り及び判断を継続して行っております。重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。

連結財務諸表の作成に用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(1) 経営成績の状況

当期における我が国経済は、新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことにより、社会経済活動が正常化され、景気は緩やかに回復しました。一方で、物価上昇や中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動など、先行き不透明感も残りました。

このような状況の中、当社グループは、国内では顧客対応の充実など農業構造変化への対応強化、海外では主力市場である北米、欧州、アジアでの販売強化に努めた結果、連結経営成績は以下のとおりとなりました。

〔当期連結業績〕

当期の売上高は、前期比3,286百万円増加し、169,916百万円(前期比2.0%増加)となりました。

国内売上高は前期比422百万円増加113,060百万円(前期比0.4%増加)となりました。農機製品は需要の減少を受けましたが、収支構造改革の柱である補修用部品及び修理整備等のメンテナンス収入や施設工事の伸長により、国内売上高全体では増加となりました。

海外売上高は前期比2,864百万円増加56,855百万円(前期比5.3%増加)となりました。北米はコンパクトトラクタ市場の調整局面が継続しましたが、欧州では値上げ後も小売店の需要が堅調に推移したことに加え、前年下期よりIseki-Maschinen GmbHを連結子会社化したこともあり増加となりました。アジアでは中国向け生産用部品は出荷増も、米価低迷などにより韓国向け製品は出荷減となりました。

営業利益は前期比1,280百万円減少2,253百万円(前期比36.2%減少)となりました。価格改定効果などにより売上総利益は増加したものの、販管費の増加がありました。

経常利益は前期比1,669百万円減少2,092百万円(前期比44.4%減少)となりました。

税金等調整前当期純利益は前期比3,356百万円減少1,900百万円(前期比63.8%減少)となりました。前期に計上した持分変動利益や段階取得に係る差益の剥落などがありました。

親会社株主に帰属する当期純利益は、前期比4,090百万円減少29百万円(前期比99.3%減少)となりました。

 

〔当期個別業績〕

当期の売上高は97,071百万円(前期比0.4%減少)、営業損失は823百万円(前期は営業損失839百万円)、経常利益は1,174百万円(前期比8.1%減少)、当期純利益は937百万円(前期は当期純損失160百万円)となりました。

 

商品別の売上状況につきましては、次のとおりであります。

〔国内〕

整地用機械(トラクタ、耕うん機など)は22,083百万円(前期比3.6%減少)、栽培用機械(田植機、野菜移植機)は7,235百万円(前期比8.5%減少)、収穫調製用機械(コンバインなど)は15,741百万円(前期比2.2%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は42,506百万円(前期比1.1%増加)、その他農業関連(施設工事など)は25,493百万円(前期比7.5%増加)となりました。

 

〔海外〕

整地用機械(トラクタなど)は39,401百万円(前期比4.1%減少)、栽培用機械(田植機など)は1,828百万円(前期比24.6%増加)、収穫調製用機械(コンバインなど)は1,358百万円(前期比27.3%減少)、作業機・補修用部品・修理収入は6,398百万円(前期比30.8%増加)、その他農業関連は7,869百万円(前期比67.9%増加)となりました。

 

(2) 財政状態の状況

当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末に比べ10,611百万円増加217,102百万円となりました。主に国内の農機製品需要減少や、海外子会社の現地在庫積み増しによる棚卸資産の増加によるものであります。

負債の部は、前連結会計年度末に比べ8,740百万円増加142,886百万円となりました。主に棚卸資産などの運転資本の増加に伴う有利子負債の増加によるものであります。

純資産の部は、前連結会計年度末に比べ1,870百万円増加74,215百万円となりました。主にその他有価証券評価差額金や為替換算調整勘定の増加によるものであります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末と比べ848百万円減少し9,851百万円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の増加や仕入債務の減少などにより2,459百万円の支出(前期比915百万円の収入増)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動によるキャッシュ・フローは、主に設備投資による支出により5,416百万円の支出(前期比2,431百万円の支出増)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動によるキャッシュ・フローは、主に有利子負債の増加などにより6,722百万円の収入(前期比4,688百万円の収入増)となりました。

 

(4) 資本の財源及び資金の流動性について

当社グループの主な資金需要は、部品原材料の購入及び製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用に係る運転資金のほかに、生産設備の更新や営業拠点の整備等の設備投資資金であります。

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針とし、これらの資金は、自己資金及び金融機関からの借入金により調達しております。なお、当社は、資金の流動性を確保するため、主要取引銀行と総額20,030百万円のコミットメント・ライン契約を締結しております。

当連結会計年度末における有利子負債(リース債務含む)の残高は76,910百万円、現金及び預金の残高は9,901百万円となっております。

 

(5) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、抜本的構造改革と成長戦略を立案・実行する「プロジェクトZ」において、基本戦略及び数値目標(2027年までに連結営業利益率5%以上・ROE8%以上・DOE2%以上)を定めました。重視する経営指標の状況は以下のとおりであります。

 

2021年12月期

(実績)

2022年12月期

(実績)

2023年12月期

(実績)

連結営業利益率

2.6%

2.1%

1.3%

自己資本利益率(ROE)

5.1%

6.2%

0.0%

株主資本配当率(DOE)

1.0%

1.0%

1.0%

 

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別生産実績を記載しております。

製品区分

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

 

整地用機械

53,272

△5.1

 

栽培用機械

9,696

△32.8

 

収穫調製用機械

16,486

△8.2

 

作業機・補修用部品

1,150

△21.9

 

その他農業関連

6,296

27.0

 

合計

86,901

△8.4

 

(注) 金額は、販売価格によっております。

(2) 受注実績

主として需要見込みによる生産方式であり、受注生産はほとんど行っていないため記載をしておりません。

 

(3) 販売実績

当連結会計年度の販売実績は次のとおりであります。なお、当社は「農業関連事業」のみの単一セグメントであるため、「農業関連事業」の製品別販売実績を記載しております。

製品区分

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

前年同期比(%)

 

整地用機械

61,485

△3.9

 

栽培用機械

9,063

△3.3

 

収穫調製用機械

17,099

△4.8

 

作業機・補修用部品・修理収入

48,904

4.2

 

その他農業関連

33,363

17.5

 

合計

169,916

2.0

 

(注) 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

相手先

前連結会計年度

(自  2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

AGCO Corporation

19,414

11.7

 

当連結会計年度は当該割合が10%未満のため、記載を省略しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、創業以来「需要家に喜ばれる製品」の提供を企業理念の一つに掲げ、お客様に満足して使っていただける商品をタイムリーに提供することをモットーに研究開発活動を展開しています。お客様のニーズに応えるため、徹底した調査に基づき、省エネ・低コスト農業、安全作業・環境保全への配慮など積極的に取り組んでいます。

国内においては、ICTやロボット技術を活用した超省力化農業、経験と勘の農業から誰もができる農業、データを駆使した戦略的な農業を可能とするスマート農業にも積極的に取り組んでいます。海外においては、欧州景観整備市場への対応や、日本で培った稲作技術を活用した商品展開など、地域のニーズに対応した商品展開に積極的に取り組んでいます。

また、近年は、脱炭素社会と循環型社会の実現に向けた商品開発にも積極的に取り組んでいます。2023年より開発製造本部内のグリーンイノベーション室が本格稼働し、電動化や水素活用など製品のゼロエミッション化技術戦略及び中長期的に取り組む研究や開発テーマの立案、商品化を進めています。

なお、当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は1,392百万円であり、主たる研究成果は次のとおりであります。

 

農業関連事業

 

(トラクタ)

・農業機械全般で軽労化や熟練作業者の不足を補うため、長時間作業でも疲れにくい直進アシストや、使い易さ、快適な作業への要望が高まっています。この度、好評を頂いている中型トラクタのモデルチェンジ機として、無段変速ミッションを採用、合わせて使い易さと居住性も向上させた「BFREX」(ビレックス)BFシリーズを市場投入しました。HSTと遊星ギアを組み合わせた無段変速機IAVT(ISEKI Advanced Variable Transmission)により、高い伝達効率と手元レバーによる最適な車速の選択を可能にしました。また、大型8インチモニタ(Z型)は直進アシストやマップ連動可変施肥に対応、操作に使用するスイッチ、レバー類を右側アームレストに集約し使い易さを向上、大型キャビンは空間を拡大させ居住性を高めています。シートベルトの装着を促すシートベルトリマインダーを設定し安全性にも配慮し、幅広いお客様のニーズにお応えしています。

・景観整備プロユーザーからホビーファーマー・プライベートユーザーまで幅広く使われている、欧州・オセアニア向けトラクタのTMシリーズをモデルチェンジしました。ユーザーの声を反映させた基本性能の充実(油圧揚力向上、純正キャビンの設定、車速向上)、環境性能の向上(エンジン回転を抑えた作業が可能なエコノミーPTO)、モーアの着脱を容易にするモーアデッキの設定など、多様な地域の要望に応えています。

・公園や住宅地など緑地での草刈りを中心とした欧州景観整備市場においてプロユーザーを中心に好評を頂いている、乗用モーアSXG3シリーズをモデルチェンジしました。デザイン変更、操作性の向上だけでなくHVO燃料に対応することによるCO2排出量削減などの環境負荷低減にも対応しています。

(コンバイン)

・大規模生産者向けに新型コンバイン、フロンティアマスターFMシリーズを市場投入しました。担い手への農地集約が加速するに伴って生産者一人当たりの作業時間も増加する傾向にあり、長時間作業でも疲れにくい居住性や操作性、メンテナンス性の向上が求められています。FMシリーズの新設計静音キャビンは従来機よりも7db(A)作業時騒音を低減しました。また、操作レバーや操作パネルを刷新するとともに、上位のジャパンコンバインで好評のカラー液晶モニターを採用し操作性を向上させました。工具レスでのグレンタンク開閉、刈取部オープンの簡略化などメンテナンス性も大幅に向上させ、担い手農家を応援します。

(田植機)

・生産効率の向上を目的として、各種センシングデータを元に細やかな施肥を実現できるスマート施肥の需要が高まっています。今回、大規模プロ向け高精度高能率田植機PRJ8に、ほ場施肥マップをもとに田植え作業をしながら施肥量を変えることができるマップデータ連動可変施肥機能を設定しました。人工衛星やドローン等のデータに基づいて作成された施肥マップをもとに、同じほ場内で場所毎に施肥量を変えることができます。過去の生育データに基づく施肥マップによりほ場内で施肥量を変化させ、適正施肥を行うことができます。それにより、生育ムラやバラツキを軽減することができ、ムダな肥料コストの抑制、品質の安定化等に貢献します。

(その他商品)

・コイン精米機は従来から数多くのお客様にご愛用いただいて参りました。今回、おいしさや健康面に対する消費者ニーズの高まりを受け、お米のうまみ層(亜糊粉層)を残す精米方式でお米のおいしさを引き出す“うまみ精米”機能を新たに搭載した新型コイン精米機CP420・CPH420を市場投入しました。うまみ白米は、お米をゆっくり丁寧に削ることでお米のうまみ層(亜糊粉層)を残し、栄養価の高い胚芽も白米(標準)より残す精米方式です。うまみ玄米は、玄米表面の固いロウ層だけを削ることでぬか層に詰まった栄養価は残しつつ、炊きやすく食べやすい精米方式です。どなたにでも簡単にご利用いただけるような操作デザインで、より多くの方にうまみ精米をお届けしてまいります。

 

当社は、「ISEKIレポート」等において当社グループの研究開発の考え方、活動、知的財産戦略等について情報開示を行っております。「特許行政年次報告書」(特許庁編)によれば、日本における分野別登録数(2014年までは分野別公開数)及び全産業を対象とした特許査定率において上位を維持し続け、2022年度は分野別登録数で第2位、特許査定率で第3位となりました。

 

(分野別登録数・分野別公開数の年度別推移)

2000~2006

2007~2014

2016~2017

2018

2019

2020

2021

2022

統計数

分野別公開数

分野別登録数

分 野

農水産

その他の特殊機械

順 位

1位

2位

1位

2位

 

 

2004~2010

2011

20122017

2018

2019

2020

2021

2022

特許査定率

91.8%

96.4%

97.7%

98.7%

97.2%

94.6%

順 位

1位

2位

1位

2位

1位

3位

 

※ 特許査定率 = 特許査定件数 / (特許査定件数 + 拒絶査定件数 + 取下・放棄件数)

  取下・放棄件数 … 拒絶理由通知後に取下げまたは放棄した件数