第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは「Bridging Beyond Borders -垣根を越えて、世界をつなぐ-」をミッションとしております。各ローカルのヒト、モノ、コトにユニークな可能性を見いだし、カルチャーやビジネスの垣根を越えて、グローバルに経営を行っております。

 昨今のスマートフォンの爆発的な普及と電子決済などのサービスの普及により、今やスマートフォンは生活に必要不可欠な存在になっています。使用頻度の増加とデータ通信量の増大に伴い、現代生活における充電ニーズは大きくなり、充電に関する問題は大きなテーマとなっていると考えております。5Gがもたらすイノベーションは、生活をより便利に変えていく一方、スマートフォン端末の消費電力の増加速度が内蔵バッテリーの性能向上速度を上回る状況に拍車がかかっております。この中長期的な社会課題を解決するうえで、また、ESGの観点からも社会全体で利用をシェアする、分かち合うスマートフォン補完充電のインフラ整備が不可欠です。そのために当社グループは、ChargeSPOT事業を主力事業として注力しております。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、ChargeSPOT事業において、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、月間レンタル回数、月間アクティブユーザー数及びバッテリースタンド設置台数を重要指標として経営を行っております。

 月間レンタル回数は、対象月に「ChargeSPOT」からモバイルバッテリーがレンタルされた回数を集計したものです。当該指標は、レンタル収益の源泉として経営の進捗を測るものとして利用しております。

 月間アクティブユーザー数は、月に一回以上「ChargeSPOT」を利用したユニークユーザー数を集計したものです。当該指標は、月間レンタル回数の基礎となるものとして、サービスの普及度合や消費者の利用動向、キャンペーン等の施策の効果を測るために利用しております。

 バッテリースタンド設置台数は、計数時点で設置されているバッテリースタンドの台数を集計したものです。当該指標は、月間アクティブユーザー数の基礎となるものとして、事業拡大の進捗を測るために利用しております。

 

(3)経営戦略

 当社グループは国内外を問わず、ヒト、モノ、コトにユニークな可能性を見いだし、カルチャーやビジネスの垣根を越えて橋掛けしていくことを機会と捉え、社会的価値と経済的価値の両立・創造を実現し、日本と世界の発展に寄与してまいります。

 新たな垣根の橋掛けとその価値創造をグローバルに模索していく一方、ロケーションベースの各国のリアルなタッチポイントを保有するChargeSPOT事業を第1の主力事業としております。インバウンド/アウトバウンドの増加を契機として、アジアをはじめとした世界中のお客様に日本品質のサービス体験を提供しグローバルでの知名度の向上を目指します。

 また、新規事業においてはChargeSPOT事業とそのネットワークとのシナジーを最大化することを目指し、持続的な成長及び将来利益の最大化に努めてまいります。

 当社グループの事業や事業領域には次のような特徴があり、これらを総合的に勘案したうえで中長期的な経営戦略を立案しております。

① ChargeSPOT事業の魅力

 ChargeSPOT事業の魅力は4つあり、第一に短い投資回収期間、第二に大口顧客に対する低い依存度、第三にバッテリースタンド設置台数及び設置密度とレンタル稼働率の相関関係、第四に有望な市場ポテンシャルであります。

 

a.短い投資回収期間

 ChargeSPOT事業で使用するモバイルバッテリーの2023年12月末の国内レンタル稼働率※1に基づく投資回収期間※2は約25日となっており、短期間で投資が回収されるビジネスモデルとなっております。2022年年末時点では約29日の投資回収期間であり、サービスが拡大すると共に短縮化が進んでいると言えます。

 また、バッテリースタンドへの投資はリース契約を基本とすることによりキャッシュ・フローに余裕を持たせた事業展開を行っております。

※1 レンタル稼働率=モバイルバッテリーレンタル数÷市中流通のモバイルバッテリー数

※2 投資回収期間=モバイルバッテリーの仕入単価÷(1レンタル当たりの平均収益×レンタル稼働率)

b.大口顧客に対する低い依存度

 ChargeSPOT事業の主力であるモバイルバッテリーシェアリングサービスの収益は、ユーザーからの少額課金の積み上げにより構成されており、特定の大口顧客に依存するリスクが相対的に低いビジネスモデルとなっております。また、47都道府県の様々なエリア、多業種に設置されており、特定のエリア及び業種への依存度も低く構成されています。

 

c.バッテリースタンドの適切な設置とレンタル稼働率の相関関係

 当社グループの実績によると、バッテリースタンドを視認性が高くユーザー利用が見込める場所で適切に増加させることができれば、モバイルバッテリーのレンタル稼働率が上昇することが確認されております。これは、設置効率に関する実績データが蓄積され、効果的な設置戦略が推進されること、市中でバッテリースタンドを見かける頻度が増すことで広告効果が高まり「どこでも借りられて、どこでも返せる」という利便性や返却に関する安心感が訴求されることが大きく関係していると分析しております。

 なお、2023年12月末のバッテリースタンド設置台数は国内で42,439台、レンタル稼働率は35.47%となっております。

 

d.有望な市場ポテンシャル

 当社グループでは、現在主力である国内市場におけるターゲットSOM(Serviceable Obtainable Market)を設定し、利用者拡大のためのアプローチを検討しております。

 具体的には、それぞれ以下の考え方により、事業拡大を図っております。

 当社グループが国内事業のターゲットとして設定するSAMは、スマートフォンのユーザー数9,658万人※1のうち、外出時間中に1回以上充電を行うであろうユーザーの割合※2を乗じることで算出される規模に設定しております。

 

 SAM =スマートフォンユーザー数×外出時間中に1回以上充電を行うであろうユーザーの割合

 

 次に販売ターゲットとなるSOMについては、SAMのうち、「ChargeSPOT」の潜在的利用者(利用に関心があるユーザーの割合※3を乗じることで算出される規模に設定しております。

 

 SOM =SAM×モバイルバッテリーシェアリングサービスの潜在的利用者の割合

 

 当社グループでは、「ChargeSPOT」の設置台数の拡充によりSOMの拡大を図っております。

 

※1 日本の総人口(参照情報:総務省統計局「人口推計」- 2023年(令和5年)3月報 - 2022年(令和4年)10月1日現在(確定値))に2022年におけるスマートフォン保有者割合(参照情報:総務省「令和4年通信利用動向調査(個人)」)を乗じて、当社が算出した推計値

※2 電通株式会社「モバイルバッテリーに関する調査・マイバッテリー所有者編」(2023年4月実施調査-日本)

※3 電通株式会社「モバイルバッテリーに関する調査・マイバッテリー所有者編」(2023年4月実施調査-日本) およびNHK国民生活時間調査報告書「家にいる時間」「外出時間」調査を基に当社が算出した推計値

 

  <ターゲットとする市場>

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② 海外展開

 当社グループは、海外では、台湾、中国本土、香港、タイ及びシンガポールでChargeSPOT事業を展開しており、中国本土の一部、台湾、タイ及びシンガポールにおいては、フランチャイズ契約に基づき他事業者と協働で展開しております。

 当社の社名である「INFORICH」は、「情報(INFORMATION)」に「豊か(RICH)」であるという2単語からなる造語です。各国の文化、商慣習、技術等に精通し得るグローバルな企業グループとして、情報連携が我々の目指す垣根を越えた橋掛けの実現において生命線であると捉えております。

 

 上記を踏まえた中長期的な経営戦略は、以下のとおりであります。

① ChargeSPOT事業の拡大・強化

a.規律をもった設置台数の拡大

 ChargeSPOT事業におけるバッテリースタンドの設置台数については、海外のみならず国内においてもまだ多くの設置ポテンシャルがあると考えております。人流の多いエリアや駅からの距離などの設置基準を設け、各業種のプライムロケーションへの新規・追加設置、政令指定都市を中心としたエリアドミナント戦略を中心に拡大してまいります。

 また、バッテリースタンドにおいては、従来のモデルのみならず他社とのコラボレーションやデッドスペースに合わせた新モデルの開発など、用途に合わせた多種多様な展開を推進してまいります。

 

b.サービスの進化

 「ChargeSPOT」ユーザーの利用の習慣化に向けた更なるUX向上施策を実施してまいります。2023年12月期においては、「バッテリー故障診断ナビ」機能をリリースし、ユーザー自身でレンタル中に発生した問題の解決法を調べたり、返金申請を行なったりできるようにするなど、利便性の向上を図ってまいりました。今後もユーザーの皆さまにとってより使いやすいサービスになるよう、改善を続けてまいります。

 加えて、新たな技術を有する企業とのコラボレーションや「ChargeSPOT」のプラットフォームとネットワークを活かした他のシェアリングサービスとの連携を進めてまいります。

 サイネージビジネスにおいては、市場規模の拡大を追い風としながら販路の拡大及び供給システムの開発を進めてまいります。

 

② 海外展開と連携強化

 当社グループは、海外では、香港、中国本土、台湾、タイ及びシンガポールでChargeSPOT事業を展開しており、中国本土の一部、台湾、タイ及びシンガポールにおいては、フランチャイズ契約に基づき他事業者と協働で展開しております。

 今後も、スマートフォン普及率や電子決済普及率が高く、公共交通機関を有する大都市圏を持つ国をターゲットとし、展開エリアを拡大してまいります。当社グループでは、現地のプラチナロケーションにネットワークを有する企業とフランチャイズ契約を締結することで、リスクを低減しながらもスピード感を持ってフランチャイズ展開を行ってきました。今後も各国でのフランチャイズ展開を推進してまいります。加えて、早期に市場を開拓するべきところに対してはジョイントベンチャー設立、M&Aの実施、現地法人立ち上げなどの直接投資を行うことで、グローバルでの当社グループの競争力を強固にするものと考えております。

 また、事業基盤を強固にすべく、連携強化を目的としたさらなる経営体制の強化も行っていく予定です。

 

(4)経営環境

 当社グループの事業が属する経営環境には次のような特徴があります。

① 市場分析

 ChargeSPOT事業が対象とするモバイルバッテリーシェアリングサービスの市場規模について、同サービス世界最大のマーケットである中国では、2023年12月末現在約517万台(出所:Fastdata,「2023 China Shared Power Bank Industry Trend Report」)のバッテリースタンドが稼動しており、年間約2.8億人がモバイルバッテリーシェアリングサービスを使用しています。中国と日本では、市場、技術及び文化等の相違はあるものの、中国での市場規模の推移は今後の日本におけるモバイルバッテリーシェアリングサービスの普及を予想する上で、一指標になるものです。

 「ChargeSPOT」はモノを所有するのではなく貸し借りすることで使用する、シェアリングエコノミーを前提としたサービスです。昨今の環境意識の高まりなどを受けて、シェアリングエコノミーを積極的に活用するユーザーが一定数存在しています。一般社団法人シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所が共同で発表した「シェアリングエコノミー関連調査2022年度調査結果 2023年1月24日公表」においては、2032年度のシェアリングエコノミーの市場規模は15兆1,165億円となることが予測されております。

 また、株式会社CARTA HOLDINGSによる「デジタルサイネージ広告市場調査 2023年12月21日公表」によれば、2023年の国内のデジタルサイネージ市場規模は、前年度比119%増の801億円の見込みとなっており、2027年の予測は2023年比174%増の1,396億円にまで成長すると予測されております。鉄道やタクシーの車両内広告については首都圏内の主な場所への設置作業がほぼ完了し、デジタルサイネージの標準装備化が実現しました。一方で、小売店舗における広告配信面数の伸び代はまだ大きく残されています。

 デジタルサイネージ広告市場は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出及び移動規制などの影響を大きく受けました。しかしながら、市場全体としては既に十分な回復を遂げており、2023年の市場規模は同ウイルス流行前となる2019年時を超えています。

※ 課題解決シナリオ下での最大予測金額

 

② 競争優位性

 当社グループは、競合他社に先駆けてモバイルバッテリーシェアリングサービスを日本に導入しており、「ChargeSPOT」の国内マーケットシェアは、バッテリースタンドの設置台数ベースで約8割※1と業界トップのシェアを有しております。一般的には、設置台数のシェアの多さがユーザーの利便性につながり、ひいては設置先が採択する要因となります。これは、ニューヨーク大学 Stern School of BusinessのScott Galloway教授が提唱する「Unregulated Monopoly」※2に該当し、競合他社との競争優位性を獲得している状況にあると考えております。

 多くのバッテリースタンドを設置していることは、レンタル稼働予測の精度の向上にも繋がっております。当社グループでは、周辺の人流や駅からの距離、営業時間、業種などの様々な情報を組み合わせた、設置プロトコルを設定しております。レンタル数は常時モニタリングできるようになっており、一定期間が経っても設置前の予測数値から乖離がある場合には設置先に社員が訪問し、店内での設置場所の移動や販促物の掲示などを行っています。データをもとにした設置とデータを参考にした細かな設置後ケアができていることは、当社の競争優位性であるとともに、今後もデータ量が増えていくことでより精緻な分析が可能になっていくものと考えております。

 

 また、当社グループは、自社で製品開発を行うことで市場のニーズをタイムリーに製品へ反映できる体制を構築しております。今までも、新型コロナウイルス感染症の流行が始まったことを機にバッテリーにSIAA(抗菌製品技術協議会)基準に適合した抗ウイルス・抗菌処理を行うなど、その時々の課題に応じた対応を行ってまいりました。また、カスタマーサポートセンターにいただいた情報は社内の開発チームに連携し、アプリケーションやハードウェアの改善を行っています。

※1 2023年12月末時点の当社グループの設置台数と競合他社が公表している台数を基に当社で算出

※2 高い市場占有率が参入障壁として機能している状態

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 ChargeSPOT事業は国内初のモバイルバッテリーシェアリング事業であり、当社グループはそのマーケットリーダーでもありますが、疫病の流行や災害発生などによる人流の減少、国際情勢の変化などによる景気の悪化などのリスクは注視し続ける必要があります。

 このような環境の中、当社グループは「Bridging Beyond Borders -垣根を越えて、世界をつなぐ-」をミッションステートメントに掲げ、海外発のビジネスモデルを日本に、そして、日本の技術力を海外に展開していくことで、様々な国や文化の垣根を越え、より多くの方々に当社グループのサービスをご利用いただけるよう邁進してまいります。

 

① さらなる設置の密度向上・観光地設置

 当今までに全国各地のプライムロケーションへの設置を進めてきたことで、昨今ではバッテリースタンド自体が当社の広告塔となっており、国内では毎月20万人ほどの新規ユーザーを獲得しております。

 これまでも、エリア別・業種業態別のバッテリー稼働率を継続的に分析してまいりました。その結果、国内では乗降客数が多い駅の周辺を中心とした設置を進めてまいりました。今後は乗降客数が多い駅周辺の設置密度を高めると共に、観光地エリアへの設置も推進することで、インバウンド客を含めた観光客のモバイルバッテリー利用ニーズも満たしてまいります。

 また、海外での展開エリアに対しても、国内で設定している設置プロトコルを共有することで、グローバル全体での効率的な設置を推進してまいります。

 

② サービスの質向上

 レンタルと返却がしやすい場所への設置を進めるだけではなく、サービス自体の利便性を高めることも当社グループにとって重要であると認識しております。

 アプリのUI・UXの改善やFAQの拡充など、ユーザーにとってより使いやすいサービスを目指して活動を続けてまいります。

 

③ 海外展開

 当社グループでは、すでに、ChargeSPOTを世界的に展開しております。中国本土と香港でグループによるサービス展開を、台湾、タイ、シンガポールではフランチャイズでのサービス展開を実施しておりますが、グループの発展のためには、今後も海外での展開を加速していく必要があると認識しております。

 

④ 経営基盤の強化

 企業価値を高め、株主の皆様をはじめとするステークホルダーに信頼され、支持される企業となるために、また、グローバル展開を加速するためには、コーポレート・ガバナンスへの積極的な取り組みが不可欠であると考えております。

 そのため、内部統制システムの強化、マネジメントの強化、人材育成、損益管理の徹底等、持続的な成長を支える経営基盤を引き続き強化してまいります。また、子会社との連携を強化し、グローバルカンパニーとして相応しい経営体制の実現を目指してまいります。

 

⑤ 財政基盤の強化

 当社グループは、2023年度第2四半期に黒字化を達成し、以後継続的に利益が増加しております。

 適切な成長のための投資を実施するとともに、財政基盤の強化を目指して活動をしてまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティに関する考え方

当社グループはシェアリングエコノミーサービスである「ChargeSPOT」を運営する中で、環境に配慮した経営を実施してまいりました。2022年には当社が優先的に取り組むべき重要課題として6つのマテリアリティを策定し、サステナビリティの取り組みをグループ全体として推進しています。

 

①ガバナンス及びリスク管理

 当社は、四半期ごとに開催されるコンプライアンス・リスク管理委員会において、気候変動による災害の発生や人材確保などの人的資本に関わる項目など、長期的な目線でリスクの洗い出しと対応策の検討を行っております。

 また、人的資本については役員を中心とした検討会を実施し、当社グループの目指すべきところを位置付けています。

 

 当社は、健全かつ適切な経営及び業務執行を図るには、コンプライアンス及びリスク管理の徹底が必要不可欠と考えております。

 当社は、コンプライアンス・リスク管理委員会を設置し、企業活動の遵法性、公平性、健全性を確保するため、また社会規範、企業倫理に反する行為を防止、是正、また全役職員に倫理意識を浸透させ、健全な企業風土を醸成する活動の推進をしております。

 コンプライアンス・リスク管理委員会は、取締役兼執行役員CFOを委員長とし、委員は、代表取締役社長兼執行役員CEO、その他委員長が指名する者により構成されており、原則として四半期に1回開催しております。また、監査役は、自らの判断により本委員会に出席し意見を述べることができます。

 

③戦略

 当社が優先的に取り組むべき課題として、自社社員、設置先企業、株主などのステークホルダーの皆様のご意見を伺った上で、ESGに関わるガイドラインなどを参考にしながらマテリアリティ(本業を通じて解決するべき最も重要な課題)を特定しました。

 

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(2)気候変動

当社グループは、気候変動への対応を重要な経営課題の1つとしてとらえており、「シェアリング文化の普及」に取り組むことで、「便利さ」と「サステナブル」が両立することを広め、サステナブルな行動に対して人々が感じるハードルを「Bridge」することを目指しています。

 

①ガバナンス及びリスク管理

 気候変動に関するガバナンス及びリスク管理は、サステナビリティに関する考え方に組み込まれています。詳細については、(1)サステナビリティに関する考え方の、①ガバナンス、②リスク管理をご参照ください。

 

②戦略

a.「ChargeSPOT」によるCO2削減効果

 当社グループの主要事業である「ChargeSPOT」は、ひとりひとりがモバイルバッテリーを購入して使用する際に比べて46%のCO2排出量を削減することが可能です。

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※ 森林1haの年間吸収量を8,800 kg-CO2と想定して算出(出典:林野庁)

※ アスエネ株式会社による算定

 

b.適切なモバイルバッテリー及びバッテリースタンドの処理

 モバイルバッテリーに使用しているリチウムイオン電池は、一般ゴミで処理をすることができません。一般ゴミとして不法に処理された際のゴミ収集車の火災や、ゴミ処理場の火災も問題になっています。そのため当社グループでは、自社で出た廃棄バッテリーの適切な処理を進めるとともに、モバイルバッテリーの購買・所有から「ChargeSPOT」の利用に行動を変容させたユーザーに対しての啓蒙活動も実施しております。

 バッテリースタンドについても、100%のリサイクルを実施し、電子ゴミを出さないための対策を行っております。

 

c.CO2排出量の算出とオフセットの実施

 当社グループでは、2022年度から日本法人でのCO2排出量のScope3までの算出を実施しています。2023年度は、子会社でのCO2排出量も算定対象とするとともに、数値の精緻化に取り組みました。

 当社のCO2排出量の8割が設置したバッテリースタンドが使用する電力によるScope3の排出であることから、毎年の1月1日段階の設置スタンドの年間の使用電力のうち1割分のグリーン電力証書を購買することでオフセットしています。

 今後も、バッテリースタンドの使用電力を低減するための機器の改良や、オフセットの実施、グリーン電力やカーボン・オフセットの普及活動を実施してまいります。

 

カテゴリー

排出量(tCO2e)

割合

Scope1

0

0%

Scope2

22.6

0.03%

Scope3

83,257

99.97%

1,購入

308

0.37%

2,資本財

10,654

12.8%

4,輸送(上流)

192

0.23%

5,事業廃棄物

32.4

0.04%

6,従業員の出張

14.8

0.02%

7,従業員の通勤

104

0.13%

8,リース資産(上流)

71,952

86.4%

合計

83,280

100%

※ 上記の排出量は、日本法人、中国、香港のグループ会社の排出量を含む。

 

※ 環境省、経産省「サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出量の算定に関するガイドライン」に基づき算出。上記に記載のないカテゴリーは、排出源が存在しない、もしくはScope1、2に含めて算定を実施。

※ Scope2排出量に関しては、マーケット基準にて算定。

※ Scope3排出量に関しては、サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベースVer.3.2を用いて算定。

※ Scope3の排出量は、グリーン電力証書によるオフセット後の数値。

 

③指標と目標

 当社グループでは、今後もCO2排出量の算定を実施し、状況に応じた排出削減策を講じてまいります。また、Scope3についても適宜オフセットを実施することで、気候変動への対応を実施してまいります。

 

(3)人的資本

 当社グループは、2018年4月に香港でモバイルバッテリーシェアリングサービスを展開するCha Cha Station (Global) Holdings Limited(現 INFORICH ASIA HOLDINGS LIMITED)と業務提携が成立したことから、モバイルバッテリーシェアリングサービスのChargeSPOT事業を開始いたしました。当初より日本と香港でサービスを運営しており、グローバルを視野に経営を行っております。今後も「ChargeSPOT」の海外展開を加速させ、また、新たなビジネスを見つけ・展開していく上では、多様な人材による視点と多彩な能力が必要です。

 当社グループの会社経営の中核には「多様なものが混在する中にこそ、多くの可能性がある」という信念があります。2023年8月にはミッション・ステートメントを「 Bridging Beyond Borders -垣根を越えて、世界をつなぐ-」にリニューアルし、より一層「垣根」を超える組織とサービスの開発に力を入れてまいりました。今後も、多様な人材が多様な才能を活かせる環境を整え、社員同士を「Bridge」することで、当社の持続的成長につなげていきます。

 

①ガバナンス及びリスク管理

 人的資本に関するガバナンス及びリスク管理は、サステナビリティに関する考え方に組み込まれています。詳細については、(1)サステナビリティに関する考え方の、①ガバナンス及びリスク管理をご参照ください。

 

 また、当社グループでは社外に法令違反行為や社内ルールに違反する行為に関する相談を受け付ける内部通報窓口を設けております。健康やメンタルヘルスについてや育児などのプライベートな相談もできる外部相談窓口とも契約することで、社員の問題解決支援を行っております。

 

②戦略

a.多様な人材の確保

 当社グループの2023年12月末時点での常勤の非日本国籍社員は連結で45%、女性社員比率は連結で36%であり、当社グループの社員全体での多様性は高いと言えます。一方、女性管理職(管理監督者且つ部下がいる社員)比率には課題があり、特に日本法人では課題が顕著です。

 

非日本国籍社員比率(連結)

45%

  日本(株式会社INFORICH)

22%

女性管理職比率(連結)

36%

  日本(株式会社INFORICH)

5.6%

  広州(殷富利(广州)科技有限公司)

54.5%

  香港(INFORICH ASIA HONG KONG LIMITED)

33.3%

 

 今後、日本法人では、女性社員の能力開発を行うとともに、女性管理職及び管理職候補の採用を強化し、母集団形成に注力してまいります。

 また、今後の当社グループの成長を加速するためにも、グローバルでの経験と高い専門性を持つ人材の採用も重要であると認識しております。リファレンス採用を強化する他、ダイレクトリクルーティングチャネルを活用するなどして人材採用に取り組んでまいります。

 

b.多様なバックグラウンド/才能を活かす環境の整備

 当社グループでは、多様なバックグラウンドや才能を有する社員が活躍できるように、心理的に安全な職場環境の整備を進めています。

 2023年11月に当社日本法人で実施した組織・カルチャーサーベイでは、多くの社員が「多様性の尊重と理解」「心理的安全性の担保」「個別環境の理解と尊重」についてポジティブな意見を持っていることが分かりました。

 

 

2023年11月時点結果

全体

他社(全体)

男性

女性

多様性の尊重と理解

4.0 / 5.0

3.8 / 5.0

4.0 / 5.0

4.0 / 5.0

心理的安全性の担保

3.6 / 5.0

3.7 / 5.0

3.5 / 5.0

3.7 / 5.0

個別環境の理解と尊重

3.9 / 5.0

4.2 / 5.0

3.9 / 5.0

4.0 / 5.0

 

 社員がより働きやすく・活躍できる環境にするために、当社グループでは今後、スキルの向上の機会の提供と、ライフステージが変わっても働けるようにするためのプログラム提供を検討してまいります。

 

[スキル向上プログラム]

異文化理解トレーニング

国籍が異なる社員同士の理解を促進するためのトレーニングを開始します。

コミュニケーションスキルトレーニング

日本法人に在籍する外国籍社員に対して、日本語トレーニングを実施しています。既存の日本語トレーニングに加え、全社員を対象としたアサーティブコミュニケーション研修などを実施します。

コンプライアンストレーニング

日本法人に在籍する社員全員が、法令遵守/情報保護/ハラスメントなどについてのe-Learningを受講しています。

海外子会社でも法令遵守/情報保護の研修会を実施し、社員の意識向上に取り組んでおります。

CONNECT(全社ミーティング)

全社員が集まってのオフラインミーティングを定期的に実施し、会社の現状やプランを理解する機会にしています。今後は海外子会社との交流も含めて全社を「CONNECT」してまいります。

 

[ライフサポートプログラム]

ハイブリッドワーク(実施中)

コロナ禍から開始したハイブリッドワークは社員の柔軟な働き方を支援するため、今後も継続していきます。

スーパーフレックスタイム

既存のコアタイムをなくしたスーパーフレックスタイムを導入し、社員の働き方をより柔軟にしていきます。

ふるさとワーク

年30日間、出身地・国でリモートワークができる制度を開始します。

福利厚生プログラム「ライフリッチ」

有休の病気休暇、自己啓発支援、育児・介護支援など、会社独自の福利厚生プログラム「ライフリッチ」を導入し、社員の私生活の充実を支援します。

 

③指標及び目標

 ミッション・ステートメントである「Bridging Beyond Borders -垣根を越えて、世界をつなぐ-」を体現した組織にするため、当社グループでは女性管理職比率と、組織・カルチャーサーベイのうち「多様性の尊重と理解」「心理的安全性の担保」「個別環境の理解と尊重」のスコアを重要指標として取り組んでまいります。

 女性管理職比率については、日本法人において現在5%であるところを2024年度中に10%にすることを目指します。組織・カルチャーサーベイの目標値については以下の通りです。

 

 

2023年11月時点結果

2024年11月目標

全体

他社(全体)

男性

女性

全体

多様性の尊重と理解

4.0 / 5.0

3.8 / 5.0

4.0 / 5.0

4.0 / 5.0

4.2 / 5.0

心理的安全性の担保

3.6 / 5.0

3.7 / 5.0

3.5 / 5.0

3.7 / 5.0

3.8 / 5.0

個別環境の理解と尊重

3.9 / 5.0

4.2 / 5.0

3.9 / 5.0

4.0 / 5.0

4.1 / 5.0

 

 

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクには、以下のようなものがあります。

 当社グループは、これらのリスクの発生可能性を認識した上で、顕在化の回避及び顕在化した場合の迅速な対応に努める方針であります。

 具体的には、当該リスクを把握し、管理する体制・枠組みとして当社内にコンプライアンス・リスク管理委員会を設置して対応しております。詳しくは「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 イ 企業統治の体制の概要 f.コンプライアンス・リスク管理委員会」をご参照ください。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

<経営環境に関するリスク>

(1)当社グループ事業が対象とする市場について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:重)

 当社グループの展開するChargeSPOT事業が属するモバイルバッテリーシェアリング市場は年々拡大しておりますが、モバイルバッテリーシェアリング市場の環境整備や新たな法的規制の導入、その他何らかの要因によってモバイルバッテリーシェアリング市場の発展が阻害される場合には、当社グループの事業活動が制限される可能性があります。当社グループは、アプリケーションと連携した広告展開や他社との差別化を推進することで当該リスクの低減を図っておりますが、当該リスクの顕在化によって、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループのマーケティングソリューションの中心であるデジタルサイネージの市場では、広告配信手法や販売メニューが多様化し、競争が激化する傾向にあります。また、デジタルサイネージ市場の他に革新的な広告方法や広告配信技術が出現した場合、デジタルサイネージへの需要が縮小する可能性があります。当社グループは、広告効果の継続的なモニタリングや新機能や新たな技術の研究開発を推進することで当該リスクの低減を図っておりますが、当該リスクの顕在化によって、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)競合環境が激化するリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)

 当社グループの展開するモバイルバッテリーシェアリングサービスは規制業種ではなく、また、モバイルバッテリーやバッテリースタンドの製造はOEMが可能なため、同サービスへの参画企業の増加による競合激化リスクが存在します。

 サイネージサービスにおいては、例えば銀行業におけるATMでのデジタルサイネージ等、既にさまざまな業種でデジタルディスプレイによるサイネージサービスが展開されております。これら競合となり得るサービスはこれからも増加することが想定されます。

 当社グループが展開するChargeSPOT事業のモバイルバッテリーシェアリングサービスのマーケットシェアは、国内におけるバッテリースタンド設置台数ベースで約8割を占めており、収益基盤は安定していると考えております。また、サービス開始時から、カスタマーサポート体制の充実、バッテリーの偏在を解消するためのシステムの精緻化、バッテリースタンドおよびバッテリーの改善など、ユーザーの利便性と設置先さまの安心感を高めるための取り組みを進めてまいりました。バッテリースタンドの設置台数の多さとサービスレベルの高さは、当社サービスにとっての競合優位性であると言えます。

 当社グループは、今後もバッテリースタンド設置台数及びユーザー数拡大、サービスレベルのさらなる向上に向けて種々の施策を講じていく計画ですが、競合環境の激化によりこれらの計画が想定どおり進行しない場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

※ 2023年12月末時点の当社グループの設置台数と競合他社が公表している台数を基に当社で算出

 

 

(3)技術革新について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:重)

 近年、スマートフォンやモバイルバッテリーに関連する新しい製品やテクノロジーが次々と開発されております。ChargeSPOT事業を牽引するニーズはスマートフォンの電池性能に大きく影響されるため、将来発売されるスマートフォンの内蔵バッテリーの電池性能の向上は、当社グループの事業活動及び業績に大きな影響を与えます。当社グループが、これらの変化へ適切に対応できない場合、当社グループの業界における競争力が低下する可能性があります。当社グループにおいては、関連するテクノロジーの最先端である中国広東省広州市に研究開発拠点を設け、最新の技術革新への対応を図ることにより当該リスクの低減を図っておりますが、当該リスクの発生によって、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 スマートフォンに内蔵されるリチウムイオンバッテリーは、購入後2年が経過した時点を目安に電池充電容量が80%まで低下する性質を持っています※1。一方で、スマートフォンの買い替え周期は機種の高額化などによって長期化しており、2022年時点ではおよそ4年7ヶ月になっています※2

 バッテリーの内蔵電池容量は1994年以来、年平均で約11%増加していますが、同時にディスプレイの高精細化、アプリケーションの高容量化などによってスマートフォンの消費電力量も年間平均17.9%増加しています。その結果、電池容量と消費電力の差分は28年累計で5倍の乖離が発生しています。

 リチウムイオン電池の性能は負極材料の改良等による改善の可能性があるものの、現在の電池性能を大きく上回り、上記のとおり今後一層の増加が予想される消費電力を完全に賄うことができる程のイノベーションが発生する可能性は必ずしも高くないと考えております。また、リチウムイオン系の電池以外の電池技術に関しても、技術及び価格の両側面においてスマートフォンで利用可能となるまでに相当程度の長期間を要するものと考えております。

 当社グループは、バッテリー技術の動向を継続的にモニタリングしており、重要な技術革新には遅滞なく打開策を策定してまいります。しかしながら、当社グループの想定していない電池分野における急速な技術革新により、重度なスマートフォン利用にもかかわらず長時間追加充電を必要としないバッテリー等、消費電力の増加を賄うことができる高性能なバッテリーを内蔵したスマートフォンが広く普及する事態となった場合には、当社グループの事業活動、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

※1 「移動端末用リチウムイオン電池の容量劣化特性」(NTT DoCoMo テクニカル・ジャーナル)による

※2 内閣府「2022年度版・消費動向調査」

 

(4)通信インフラ環境やネットワーク環境について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:軽)

 当社グループが展開するChargeSPOT事業は、通信インフラ環境やサーバー等のネットワーク環境に依存しております。当社グループは、安定的なサービス提供のため、通信業者の分散化、サーバーの負荷分散及び監視強化、障害が発生した際に早急に復旧するための体制整備等を進めております。しかしながら、自然災害や事故、サイバー攻撃、サービス利用者急増に伴う負荷、その他何らかの事由によって当該環境に障害が発生し、サービスを停止せざるを得ない状況となった場合は、機会損失、顧客への損害の発生、サービスに対する信頼性の低下等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外に事業を展開していること(政治や規制、為替など)(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:軽)

 当社グループは、日本国内のほか、アジアを中心に海外でも事業を展開しております。また、ChargeSPOT事業で使用するモバイルバッテリー及びバッテリースタンドの研究開発拠点及び生産委託先企業は中国にあります。当社グループは、中国以外に所在する生産委託先の開拓を進める等、同国への依存度の低下を推進しておりますが、同国の政治・経済・社会情勢の変化に伴い、事業環境の悪化や従業員の流出等が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、政治的・経済的要因等により、予期できない投資規制、移転価格税制を含む税制や法的規制の変更等が行われた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 さらに、連結財務諸表を作成するにあたっては現地通貨を円換算する必要があり、換算時に使用する為替レートによっては、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、本書の提出日現在、当社グループでは、為替予約等は行っておりませんが、当該リスクの変化を継続的に評価するとともに、今後は、為替予約等のリスクヘッジ取引の利用を検討してまいります。

 

 

 

(6)自然災害等について(顕在化の可能性:-、顕在化の時期:-、影響度:中)

 地震、台風、津波等の自然災害、火災、停電(以下「自然災害等」という)が発生した場合、当社グループの事業運営に深刻な影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループの主要な事業拠点である日本の首都圏において大規模な自然災害等が発生した場合には、サービスの提供等がやむを得ず一時的に停止する可能性もあり、当社グループの信頼性やブランドイメージを毀損する可能性があります。

 当社グループにおいては、自然災害等が発生した場合に備え、事業継続計画の策定等、有事の際の対応策の整備を進めております。また、自然災害等の発生によって首都圏での災害後対応が難しい場合には他エリアの営業拠点に災害対策本部を設置することを想定しています。しかしながら、自然災害等の発生による影響を完全に回避できる保証はなく、物的、人的損害が甚大である場合には事業の継続自体が困難又は不可能となる可能性があります。

 このように、自然災害等が発生した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)感染症について(顕在化の可能性:-、顕在化の時期:-、影響度:中)

 当社グループが提供するサービスは、ヒトの移動に深く連動しており影響を受けます。感染症拡大に伴い政府による緊急事態宣言等が発令された場合、外出自粛や飲食店・サービス業の運営自粛により人流が抑制され、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいては、コンビニエンスストア等の外出制限時にも往訪頻度が高い場所へバッテリースタンドの設置を進めることで当該リスクの低減を図っておりますが、当該リスクの顕在化によって、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、生産拠点である中国国内で感染症が拡大した場合は、生産委託先の工場の閉鎖、工場作業員の感染による生産性の低下などのリスクがあります。当社グループでは年間の発注計画を早期に取りまとめ、オーダー時期を早める事で納期遅延のリスク低減を図っております。また、工場の閉鎖が長期化した場合には、生産委託先工場の中国外の拠点に生産ラインを変更できるように体制を整えておりますが、当該リスクの顕在化によって、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)風評被害について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:-、影響度:軽)

 当社グループの事業運営に関し、悪意を持った第三者が、意図的に噂や憶測、悪評を流すなどした場合は、当社グループに対する誤解、誤認、誇大解釈等が生じる可能性があります。その場合、顧客マインドにマイナスの影響を与え、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、倫理規程の周知やコンプライアンス研修の実施により、役職員のコンプライアンス意識の醸成を図ることで健全な企業経営を推進してまいります。また、悪意のある風評等には毅然とした姿勢で対応する方針です。

 

<経営戦略に関するリスク>

(9)継続的な投資と損失計上について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社グループの展開するChargeSPOT事業は、投資が先行し、事業規模の拡大につれて収益性が高まるという特性があります。

 当社グループは、スピード重視の経営と積極的な投資を実施し事業規模が拡大した結果、2023年度12月期の連結業績が黒字化いたしました。今後も引き続き国内事業への投資を継続するほか、海外新規エリアへの直接投資を行う可能性があります。投資については財政状況を見ながら決定し、今後も黒字が継続するものと考えておりますが、当該投資によっても当社グループが想定している成果が得られない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)フランチャイズについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:軽)

 当社グループの海外展開においては、効率的な事業運営のため、当社グループの中国の一部、台湾、タイ及びシンガポールにおけるChargeSPOT事業は、フランチャイズ契約により展開しております。フランチャイジーの選定においては、現地での事業運営に寄与する営業力や経営資金を有することを重視しており、現地でのビジネス立ち上げのスピードを早めております。しかしながら、何らかの理由で事業の立ち上げや運営に支障が生じた場合や、フランチャイズ先においてブランドイメージ等に悪影響を及ぼすような事態が発生した場合は、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)新規事業、業務提携や企業買収等について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:中)

 当社グループが事業を運営していく中で継続的な成長性や収益性等を維持するためには、新規事業への挑戦や他社との業務提携または企業買収(以下、「企業買収等」という)が必要となる可能性があります。その際、当該企業買収等が想定した成果を得ることができず、のれんの減損や、事業再編等に伴う事業売却損、事業清算損その他これに伴う費用等が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 当社グループにおいては、企業買収等を実施する前に外部専門家による綿密なデューデリジェンスや事業価値評価を実施することで当該リスクの低減を図っておりますが、当該リスクの顕在化によって、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<企業体制に関するリスク>

(12)内部管理体制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社グループは、企業価値を最大化すべく、コーポレート・ガバナンスの充実を経営の重要課題と位置づけ、多様な施策を実施しております。また、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の整備、運用が追いつかない場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)有能な人材の確保・育成について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)

 当社グループの事業においては、各業務分野において専門性を有する人材が必要であり、今後とも業容拡大に応じて継続した人材の確保が必要であると考えております。特に「ACT GLOBAL」を目指す上で重要な、グローバルでの知見を持つ人材の確保を重要事項と定め、採用に取り組んでおります。

 当社グループにおいては、優秀な人材を採用するための手法を取り入れつつ採用広報を積極的に実施することで安定的な人材の確保に努めております。しかし、今後、各業務分野及び地域における人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、優秀な人材の獲得が困難となる場合又は在職する人材の社外流出が生じた場合には、当社グループの事業展開、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)特定の人物に対する依存について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:重)

 当社グループの創業者は、当社の代表取締役社長兼執行役員CEOの秋山広宣であります。同氏は、日本語の他、英語、中国語を使いこなすことができ、また、中国におけるネットワークを有していることから、当社グループの海外展開において重要な役割を担っております。さらに、当社設立以来、経営方針や経営戦略の決定等の事業運営において、重要な役割を果たしております。当社グループとしては、特定の役職員に依存しない組織的な経営体制の構築に努めておりますが、専門的な知識、技術及び経験を有する同氏に、何らかの理由によって不測の事態が生じた場合、又は、同氏が早期に退任するような事態が発生した場合には、当社グループの事業展開及び業績等に影響を与える可能性があります。

 なお、当連結会計年度の関連当事者取引の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(関連当事者情報)」に記載のとおりであります。

 

<事業運営に関するリスク>

(15)モバイルバッテリー及びバッテリースタンドの不具合について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:中)

 当社グループがChargeSPOT事業で使用するモバイルバッテリー及びバッテリースタンドは、市場投入後に不備が発生し、想定していた収益を生まない可能性や当該製品の回収費用等が発生する可能性があります。

 当社グループでは、製造委託先の分散化を進めており、品質に問題が発生した場合の損失軽減を図っております。また、製品の検品体制を強化しており、開発段階のみならず量産段階においてもパーツごとの耐久テストを継続的に行っております。さらに、安定した品質を保つべく常時デザインの改良を行っており、新しいデザインを市場に投入する際は、研究開発拠点の近郊市場で実稼働テストを行った上でグローバル展開に移行することでリスクの最小化を図っております。

 品質管理部門においては、隔週で日本と中国間の情報共有の場を設け、製品品質に問題が無いことを確認しております。また、想定されるリスクについては、四半期に一度のコンプライアンス・リスク管理委員会で定常的な検討を行い、万が一品質に問題が発生した場合やその可能性を認識した場合は、直ちに臨時のコンプライアンス・リスク管理委員会を召集し迅速に対応することとしております。

 

 昨今では、インターネット等で日本の安全基準を満たしていない海外製のモバイルバッテリーの流通が増えているほか、モバイルバッテリーを自動車内に放置するなどの危険な使い方が起きていることによって、バッテリーから発火する事故が発生しています。当社グループで使用しているモバイルバッテリーは、「電気用品安全法」(PSE法)に定められた「電気用品」に該当し、当該基準に適合しているものです。引き続き安全性の高いバッテリーを使用するとともに、ユーザーに対してはモバイルバッテリー全般を危険な形で使用しないように啓蒙活動を実施してまいります。

 当社グループでは、上記のような対策を講じリスクの低減を図っておりますが、当該リスクの顕在化によって当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)バッテリースタンドの設置先について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:重)

 当社グループがChargeSPOT事業で使用するバッテリースタンドの設置先は、ユーザーにとって利便性が高い場所にあるという理由からコンビニエンスストア内の占める割合が相対的に高い状態となっております。かねてより、複数のコンビニエンスストアチェーンに導入していただいているほか、他業種への設置も進め、リスクの低減化を図っております。

 しかしながら、何らかの理由で大手コンビニエンスストア等との設置契約が継続的に更新されない場合は、バッテリースタンドの設置台数が大幅に減少し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)ラウンダー委託会社について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:-、影響度:重)

 当社日本法人では、バッテリーの偏在を解消するためのラウンダー作業を外注しております。半数ほどの作業を「スポットワーカー」のマッチングプラットフォームを経由して依頼しておりますが、プラットフォームの運営企業に予期せぬ事態が発生した場合、偏在解消作業が滞る可能性があります。

 当社では、軽貨物配送サービスを展開する企業にも委託を行う、エリア内でのラウンダー担当アルバイトを採用するなどして分散を図っており、サービス停止時の移管先も確保しておりますが、当該事象が発生した場合、サービスの品質低下によって財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(18)主要な原材料について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社グループが委託生産しているモバイルバッテリー及びバッテリースタンドにはディスプレイや汎用モジュールなどの多くの部材が使用されております。当社グループは、仕入先の多角化を進めるとともに、一定数の在庫を確保しております。需給バランスの崩れ等により購入価格に影響がでた場合や計画通りに購入できない場合にも即時に影響が出ないように対策を行なっておりますが、長期的に購買ができない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(19)製造物責任について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:中)

 当社グループがChargeSPOT事業で使用しているモバイルバッテリー及びバッテリースタンドは、中国本土の外部工場へ生産委託を行っておりますが、製品開発は当社グループが行っており製造物責任を負っております。そのため、予期しない理由で発生した事故等により、当社グループの社会的信用の低下や多額の賠償義務が生じる場合があります。当社グループは、当該外部工場に厳格な品質管理体制の構築を求めること及び賠償責任保険の付保により当該リスクの低減を図っております。また、大型のバッテリースタンドについては倒れにくい設計にしているほか、必要に応じて設置時の固定を実施し転倒による事故を防いでいます。しかしながら、当該リスクの顕在化によって当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)情報セキュリティについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:-、影響度:軽)

 当社グループは、ユーザーの個人情報、その他業務上必要な情報を保有しております。当社は、このような機密性の高い情報を適切に管理するため、プライバシーマーク(JISQ15001)を取得し、個人情報保護規程等の社内規程に基づいた情報管理に関する社内ルールの周知徹底をはかる等、セキュリティ対策には万全の措置を講じております。また、情報漏洩等が発生した場合の社内対応フローを整えると共に、社内外の専門家に相談できる体制を設けております。加えて、サイバー攻撃を予防、検知し、対応する体制を構築しております。

 しかし、万が一これらの情報がサイバー攻撃等によって漏洩した場合は、当社グループの信用やブランド価値が毀損し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<規制等に関するリスク>

(21)法的規制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:重)

 当社グループがChargeSPOT事業で使用しているモバイルバッテリー、バッテリースタンド等は、「電気用品安全法」(PSE法)に定められた「電気用品」に該当するため、この法律による規制を受けております。

 当社グループの製品は当該法律の基準に適合しており、製品製造にあたっては厳格な品質管理体制を整備・運用しておりますが、製造・検品の工程に重大な欠陥があった場合、予見できない不具合等が生じた場合、または将来の法改正等によって当該基準に不適合となった場合は、事業活動が制限され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社日本法人においてはバッテリーの偏在を解消するためのラウンダー作業の一部を「スポットワーカー」のマッチングプラットフォームを経由して委託していますが、このような労働形態に規制が設けられた場合、サービスの提供に影響を与え、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)許認可について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:軽)

 当社グループは、製品規格に関する認証や海外グループ会社の設置のための法人認可等、事業を営む上で様々な許認可を取得しており、かかる許認可に基づく基準を遵守する取り組みを行っております。そのため、将来において、法令の変更や許認可の有効期限到来時の更新のため、更なる対策を講ずる費用が生ずる可能性があります。また、将来の事業領域の拡大の際に新たな許認可取得の必要性が生ずる場合には、当該許認可取得のための対策費用が生ずる可能性があります。さらに、何らかの原因で許認可の更新が適切に行われない場合、当社グループの事業運営に支障をきたす可能性があります。

 当社グループでは、社内の管理体制の構築等によりこれら法令を遵守する体制を整備するとともに、規制当局の動向及び既存の法規制の改正動向等を踏まえ、適切に対応していく予定でありますが、当該リスクの顕在化によって、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(23)知的財産権について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:中)

 当社グループが提供するサービスについて、現時点で第三者の知的財産権を侵害するものはないと認識しております。今後も、弁理士・弁護士などの専門家に相談しながら知的財産権侵害を回避するための必要な措置を講じていく方針です。また、当社グループの保有する知的財産権が侵害されることがないよう、知的財産権の管理業務の一部を外部の専門家へ委託すると共に、関連部署が共同して知的財産権の保全に努めております。

 しかしながら、万が一、当社グループが第三者の知的財産権を侵害した場合、または第三者により当社グループの知的財産権が侵害された場合は、当該第三者から損害賠償請求を受ける、または第三者からの権利侵害により不利益を被る等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

<会計税務に関するリスク>

(24)固定資産の減損について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社グループは、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しており、回収可能性が見込めなくなった固定資産については減損処理を実施する方針であります。

 当社グループは、ChargeSPOT事業で使用しているモバイルバッテリー、バッテリースタンドを固定資産に計上しておりますが、当該資産から得られるキャッシュ・フローの状況等が悪化し、それらの回収可能性が著しく低下した場合には減損処理が必要となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、各拠点ごとに「ChargeSPOT」の稼働状況に関する実績データを集積及び解析し、稼働が見込める場所に集中投資するなど設置戦略に反映することで当該リスクの軽減を図っております。

 

(25)税務上の繰越欠損金及び繰延税金資産について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:軽)

 当連結会計年度末において、当社グループには税務上の繰越欠損金が存在しております。そのため、現在は通常の税率に基づく法人税等が課せられておりません。今後、繰越欠損金の使用、又は期限切れによる繰越欠損金の解消により、課税所得の控除が受けられなくなった場合には、通常の税率に基づく法人税等の負担が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討し、繰延税金資産を計上しています。しかしながら、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の取崩しが必要となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

<株主に関するリスク>

(26)配当政策について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

 当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置づけておりますが、創業して間もないことから、現状では、持続的成長と事業拡大に向けた積極的な投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考え、創業以来配当は実施しておりません。

 将来的には、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して利益還元策を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。

 なお、内部留保資金については、更なる事業拡大のための設備投資、海外展開エリアの開拓のための投資、人材採用及び研究開発等に活用していく予定であります。

 

(27)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:短期、影響度:軽)

 当社グループは、役職員及び社外協力者に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。連結会計年度末日における新株予約権による潜在株式数は674,350株であり、これは発行済株式総数及び潜在株式数の合計10,054,125株の6.7%に相当いたします。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の1株当たりの株式価値が希薄化し、当社の株価に影響を及ぼす可能性があります。

 

<その他のリスク>

(28)事業歴が浅いことについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:-、影響度:中)

 当社は、2015年9月に設立され、2018年4月にChargeSPOT事業をローンチした比較的事業歴の浅い会社です。ChargeSPOT事業におけるモバイルバッテリーシェアリングサービスは、国内初の事業であり当社グループはそのマーケットリーダーでもありますが、未だ成長過程にあると認識しており、今後も積極的な成長投資等により一定期間業績が安定しない可能性があります。

 また、当社グループはIR・広報活動等を通じて積極的に経営状況を開示していく方針でありますが、過年度の経営成績は期間業績比較を行うための有効な材料とならず、今後の業績等を判断する情報としては不十分である可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、当社グループはChargeSPOT事業の単一セグメントであるためセグメント別の記載を省略しております。

① 財政状態の状況

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は5,931,349千円(前連結会計年度末比2,265,564千円増)となりました。これは主に、現金及び預金が2,217,247千円増加したこと等によるものであります。

 

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は2,822,113千円(前連結会計年度末比495,092千円増)となりました。これは主に、バッテリースタンドの新規設置に伴うリース資産が491,967千円増加し、また、工具、器具及び備品が200,621千円増加したこと等によるものであります。

 

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は4,898,083千円(前連結会計年度末比2,146,149千円増)となりました。これは主に、孫会社の事業拡大に伴う契約負債が772,299千円増加し、また、短期借入金が964,000千円増加したこと等によるものであります。

 

(固定負債)

 当連結会計年度末における固定負債の残高は773,850千円(前連結会計年度末比29,209千円減)となりました。これは主に、リース債務が54,833千円減少したこと等によるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は3,081,529千円(前連結会計年度末比643,718千円増)となりました。これは主に、第三者割当増資(オーバーアロットメントによる売出しに関連した第三者割当増資)及び新株予約権の行使による新株発行により、資本金及び資本剰余金がそれぞれ72,502千円増加し、また、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が571,888千円増加した一方、為替換算調整勘定が66,006千円減少したこと等によるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国の経済情勢は、「コロナ禍」明けの需要回復がほぼ一巡し、景気回復のペースが緩やかになっています。雇用情勢の改善・名目賃金の増加は続いていますが、物価の上昇によって消費者マインドの冷え込みが発生していると考えられます。インバウンド消費は増加しており、中国人訪日客も2024年度中には本格的に回復する見込みです。今後もプラス方向に推移することが想定されます。世界経済は、不透明な国際情勢を背景に成長率が減速傾向にあり、今後の先行きが懸念されます。

 当社グループの主な事業領域であるシェアリングエコノミー領域においては、一般社団法人シェアリングエコノミー協会と株式会社情報通信総合研究所が共同で発表した「シェアリングエコノミー関連調査2022年度調査結果」において、2022年度のシェアリングエコノミー市場規模が過去最高となる2兆6,158億円を超え、さらに2032年度には約5.7倍の15兆1,165億円となることが分かりました。

 当社グループのChargeSPOT事業においては、人流が重要な要素の一つになっております。2020年4月に新型コロナウイルス感染症の流行による緊急事態宣言が発出されて以降、日本国内の人流は大きく低下しました。また、当社グループが運営する海外のエリアにおいては日本以上の外出制限が課され、人流に大きな打撃を与えました。人流が低下しレンタル数も低減する中、当社グループでは設置プロトコルの見直しと設置の最適化を実施し、来るべき「コロナ禍」の終わりを目指した対応を実施してまいりました。その後、日本では2023年3月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に位置付けられ、さまざまな制限が事実上撤廃されました。イベントの解禁や飲食店の営業時間短縮が「コロナ禍」以前に戻るなどしたことで人流は大幅に回復しています。世界的にも2023年の年始ごろから徐々に制限が撤廃されており、人流は回復基調にあります。その結果、2023年のChargeSPOT事業の売上は2022年に比べて大幅に増加しました。また、「コロナ禍」後の客足の復活の契機のためにと、ChargeSPOTを設置したいというお声を様々な業種からいただくようになり、設置数も順調に増加しております。

 2023年4月に行った株式会社電通の調査に基づく当社の推計では、帰宅するまでにスマートフォンの充電が切れる人は約3,950万人、さらにそのうちの1,600万人は1日の外出時間中に最低2回以上の充電を必要としています。スマートフォンに使用されているリチウムイオン電池は、約600回の充電(概ね2年程度の使用)によって充電容量が80%に低下する特性を持っています(※)。しかし、スマートフォンの高価格化が進んだ現在、スマートフォンの買い替えサイクルは4年7ヶ月に長期化しています(2022年度版の内閣府・消費者動向調査による)。この頃には、充電容量は新品時の30%程度にまで低下してしまいます(※)。生活をする上でスマートフォンが欠かせないものになっている現在、数年以上使用したスマートフォンを使っている人が外出中に充電したいと感じることは自然なことと言えます。昨今、バッテリーについての研究が世界各国で盛んに実施されていますが、スマートフォンの電池のみを念頭に置いた場合、現在使用されているリチウムイオン電池以上のものは少なくとも2030年までには開発され得ないと想定されます(※)。EV自動車やドローンなどのために開発される技術のスマートフォンへの転用は、小型化と安全性という観点で大きなハードルがあり、バッテリー技術の向上がスマートフォン性能の向上に直結するとは限りません。また、旧来よりリチウムイオン電池自体の性能の向上も行われており、内蔵電池の容量は年平均で11.6%増加しています(※)。しかし、ディスプレイの高精細化やアプリケーションの高容量化、5G対応などによって、スマートフォンの平均消費電力量は17.9%と、内蔵電池容量以上に増加しています(※)。以上のことから、外出中の充電のニーズは非常に高く、今後も高まっていくものと想定されます。

 ※ 当社調べ

 

 このような状況の中、当社グループは、ChargeSPOT事業の拡大に取り組むべく、積極的な投資を進めるとともに、パートナー企業との連携を強化してまいりました。また、バッテリースタンドの設置台数は2023年12月末時点で当社グループ全体では50,618台、国内では42,439台となり、「どこでも借りられて、どこでも返せる」の実現に向けて増加させております。月間アクティブユーザー数(四半期平均)は当社グループ全体では1,129千人、国内では813千人になりました。月間レンタル数(四半期平均)も当社グループ全体では208万回、国内では155万回になるなど、着実にサービスの裾野が広がっています。さらに、これからも成長を続け、日本を代表するクロスボーダー企業となるため、そして持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指すため、2023年8月に中期経営計画「Vision2030」を策定しました。同時に、国内外のチームが一丸となって成長を加速させるために、当社の存在意義と目指す世界を再定義し「Bridging Beyond Borders -垣根を越えて、世界をつなぐ-」という新しいMission Statementを策定し、新たなスタートを切っております。

 これらの結果、売上高は大きく増加し、7,681,681千円(前連結会計年度比75.0%増)となりました。EBITDA(注)1,409,427千円、営業利益は603,905千円(前連結会計年度は営業損失1,397,069千円)、経常利益は633,718千円(前連結会計年度は経常損失1,177,173千円)、親会社株主に帰属する当期純利益は571,888千円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失1,241,596千円)となりました。

 当社グループといたしましては、今後もサービス品質のさらなる向上を念頭に置きながら、サービスの認知度向上及び利用拡大へ取り組んでまいります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、4,427,001千円と前連結会計年度末に比べ2,412,726千円の増加となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により獲得した資金は、2,430,079千円(前連結会計年度は830,411千円の使用)となりました。これは主に増加要因として、税金等調整前当期純利益473,519千円(前連結会計年度は税金等調整前当期純損失1,238,205千円)、減価償却費805,522千円(前連結会計年度は481,305千円)、減損損失148,074千円(前連結会計年度は125,382千円)等があった一方で、減少要因として、売上拡大に伴う売上債権の増加額99,638千円(前連結会計年度は40,799千円)、未収入金の増加額220,006千円(前連結会計年度は186,377千円)等があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により使用した資金は、959,130千円(前連結会計年度は1,298,969千円の使用)となりました。これは主に、モバイルバッテリー、バッテリースタンド等の取得による有形固定資産の取得による支出1,148,714千円(前連結会計年度は965,554千円)等があった一方で、定期預金の払戻による収入301,682千円(前連結会計年度は-千円)等があったことによるものであります。

 

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により獲得した資金は、885,077千円(前連結会計年度は1,081,327千円の獲得)となりました。これは主に、株式上場等の株式の発行による収入35,393千円(前連結会計年度は236,584千円)、セール・アンド・リースバックによる収入1,140,645千円(前連結会計年度は1,150,204千円)、短期借入金の純増額975,500千円(前連結会計年度は516,000千円)等があった一方で、リース債務の返済による支出1,359,414千円(前連結会計年度は801,304千円)等があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループが提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

 販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

ChargeSPOT事業

金額(千円)

前年同期比(%)

金額(千円)

前年同期比(%)

4,389,053

266.7

7,681,681

175.0

 (注) 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用とともに、資産及び負債または損益の状況に影響を与える見積りを用いております。これらの見積りについては、過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらと異なることがあります。

 当社グループの連結財務諸表を作成するにあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ3,292,628千円増加し、7,681,681千円(前連結会計年度比75.0%増)となりました。これは主に、ChargeSPOT事業の拡大に伴いレンタル収益が増加したことによるものであります。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度に比べて548,828千円増加し、1,932,277千円(同39.7%増)となりました。これは主に、バッテリースタンドの増設に伴う減価償却費の増加及びレンタル数の増加に伴う支払手数料の増加によるものであります。

 その結果、売上総利益は前連結会計年度に比べて2,743,800千円増加し、5,749,403千円(同91.3%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、前連結会計年度に比べて742,825千円増加し、5,145,498千円(同16.9%増)となりました。これは主にバッテリースタンドの増設に伴う地代家賃に含まれる設置料の増加、レンタル収益の増加に伴うロイヤリティの増加及び人員増加に伴う人件費の増加によるものであります。

 その結果、営業利益は603,905千円(前連結会計年度は1,397,069千円の営業損失)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度に比べて152,762千円減少し、142,139千円(同51.8%減)となりました。これは主に、為替差益の減少によるものであります。

 当連結会計年度の営業外費用は、前連結会計年度に比べて37,320千円増加し、112,325千円(同49.8%増)となりました。これは主に、支払利息107,232千円計上したことによります。

 その結果、経常利益は633,718千円(前連結会計年度は1,177,173千円の経常損失)となりました。

 

(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純利益)

 当連結会計年度の特別利益は発生がなく、当連結会計年度の特別損失は、前連結会計年度に比べて34,326千円増加し、160,199千円となりました。これは主に、ChargeSPOT事業で利用するモバイルバッテリーの一部について、除却予定となり将来の使用が見込まれていないことから、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、減損損失148,074千円を計上したことによります。

 その結果、税金等調整前当期純利益473,519千円(前連結会計年度は1,238,205千円の税金等調整前当期純損失)となりました。

 

(法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の法人税等合計は、△96,603千円(前連結会計年度の法人税等合計は7,112千円)となりました。これは主に、今後の業績見通し等を踏まえ、繰延税金資産の回収可能性を検討した結果、繰延税金資産が増加したことから、法人税等調整額△114,583千円(前連結会計年度の法人税等調整額は、△13,877千円)を計上したことによります。

 その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は571,888千円(前連結会計年度は1,241,596千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

 

b.財政状態

 主な増減内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループは、認知度の向上及び利用者数の拡大をすべく、積極的に設備投資及び広告宣伝活動を実施してまいりましたが、今後は設備投資を重視して実施する方針であります。当社グループの資金需要の一定割合は設備投資であり、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及び増資等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

⑤ 経営者の問題意識と今後の方針

 経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

⑥ 経営方針、経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するため、月間レンタル数(各四半期平均)、月間アクティブユーザー(各四半期平均)及び累計設置台数を重要指標として運営を行っております。

 

 各指標の推移は以下のとおりであります。

(グローバル)

 

第6期連結会計年度

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

第7期連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

第8期連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

第9期連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

月間レンタル数 (万回)

50

90

141

208

月間アクティブユーザー (千人)

36

49

74

112

累計設置台数 (万台)

3.1

3.7

4.5

5.0

 

(国内)

 

第6期連結会計年度

(自 2020年1月1日

至 2020年12月31日)

第7期連結会計年度

(自 2021年1月1日

至 2021年12月31日)

第8期連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

第9期連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

月間レンタル数 (万回)

11

52

104

155

月間アクティブユーザー (万人)

7

26

54

81

累計設置台数 (万台)

2.4

3.0

3.8

4.2

 

 

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5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、主に連結子会社である殷富利(广州)科技有限公司が担っております。

 殷富利(广州)科技有限公司では、バッテリーシェアリングサービスに関連する最先端のテクノロジーが集結する中国広東省広州市に研究開発拠点を設け、バッテリースタンド及びモバイルバッテリーに係る機能強化や追加機能、デザイン等の研究開発を行っております。

 当連結会計年度は、モバイルバッテリー及びバッテリースタンドの機能強化による付加価値向上、サイネージによる広告配信を中心としたマーケティングソリューションによる新たな価値創造を目指して取り組んでおり、研究開発費の総額は80,629千円となりました。

 なお、当社グループはChargeSPOT事業の単一セグメントであるためセグメント別の記載を省略しております。