第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、人々の豊かな生活を支える小型モーターのリーディングカンパニーであり続けるために、新たな成長段階に向けた創造活動を続けております。

 経営理念:「国際社会への貢献とその継続的拡大」は、当社の遺伝子であり、創業当時から未来永劫受け継がれて行く当社経営の根幹をなす考え方であります。この「経営理念」の実現に至る道筋を「マブチの経営ビジョン」としてまとめ、グループ全体で共有しております。

 経営ビジョンは、「経営理念」に基づく貢献をどのように捉え、いかに具現化するかを「経営基軸」で明確にするとともに、企業活動を遂行する際の行動指針を「経営指針」として明示しております。

 

経営基軸

経営上の意思決定を行ううえでの「規範」となる考え方で、次のとおりであります。

① より良い製品をより安く供給することにより、豊かな社会と人々の快適な生活の実現に寄与する

② 広く諸外国において雇用機会の提供と技術移転を行い、それらの国の経済発展と国際的な経済格差の平準化に貢献する

③ 人を最も重要な経営資源と位置付け、仕事を通じて人を活かし、社会に役立つ人を育てる

④ 地球環境と人々の健康を犠牲にすることのない企業活動を行う

 

経営指針

 経営指針は、「小型モーターの専門メーカーとしてその社会的ニーズを的確に把握し、それに即した製品をより早く、より安く、安定的に供給する」ための当社の企業活動を方向付けるとともに、企業としてどのような行動をとるべきかを示すものであります。

 また、海外拠点経営指針は、当社と進出国との共存共栄をベースとした、海外拠点経営の基本的な考え方を明示したものであります。

 

経営指針

 ① 汎用性を重視した製品を開発し、その最適生産条件を整備する

 ② 価値分析に徹した製品の開発改良と部品・材料共通化を徹底する

 ③ 高度加工技術とムダの極小化によるコストダウンを追求する

 ④ 新市場を開拓し、適正占有率を確保する

 ⑤ 適材適所による人材の活用と業務を通じた人材育成を行う

 ⑥ 環境負荷の極小化と安全の追求を基本とした企業活動を推進する

 ⑦ 長期安定的視点に立つ経営施策を推進する

 

海外拠点経営指針

 ① 長期的な視点に立ち、進出国との共存共栄を図る

 ② 各拠点の強みを活かした国際分業体制を確立し、国際競争力を維持・拡大する

 ③ 社会への貢献を重視するマブチの企業文化の浸透と知識・技術の移転を推進する

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは2024年から2030年を対象期間とする新たな経営計画「経営計画2030」を策定いたしました。

 財務指標と将来の財務に貢献する未財務指標(注)の双方を高めることにより、当社の考える企業価値として「マブチモーター・バリュー・ポイント(MVP)」の向上を目指していきます。マブチモーター・バリュー・ポイントは、2030年のガイダンスの達成によって得られるポイントを100ポイントと設定し、各年の達成率をポイントで表します。その達成率を見ながら、財務指標・未財務指標の双方を達成するための改善を通じて、企業価値の向上を図ります。

(注)人的資本等の無形資産で現在は未だ財務的に貢献していないが、未来の業績に寄与する指標であり、当社グループにとって財務指標同様に重要なため、「非財務指標」ではなく、「未財務指標」と表現しております。

 

財務指標

2024-2030年度 目標

売上高

3,000億円

売上高営業利益率

15%以上

ROIC(注)

12%以上

 

(注)ROIC=(営業利益×(1-実効税率))÷(売掛金+棚卸資産+固定資産(投資有価証券を除く)-買掛金)

 

また、未財務指標の目標は下記の項目となっております。

・CO2排出量削減率

・サステナブルプロダクツの売上高成長率

・SDGsに貢献する用途の売上高成長率

・女性管理職比率

・グローバル勤務経験者数

・子供向け工作教室・出前授業等の参加者数

・労働災害度数率

・人権上の重大リスク件数

 

(3)会社の経営環境及び対処すべき課題

 次期の見通しにつきましては、世界経済は、各国における高インフレが緩和の兆しを見せる一方で、依然、政策金利は高水準で推移することが見込まれることに加え、地政学的リスクの高まりによる不透明な国際情勢を背景に各国間の貿易や投資が細る影響等により、景気の減速が懸念されます。米国経済は、上期に消費の減速が見込まれるものの、景気後退の回避が見込まれ、緩やかな回復となる見通しです。欧州経済は、インフレ圧力の低下による個人消費の持ち直しに加えて、各国の財政支援等による下支えにより、緩やかな回復が見込まれます。我が国経済は、インフレ圧力の低下及び所得環境の改善による個人消費の改善を背景に緩やかな回復が見込まれます。新興国経済は、中国経済が不動産不況や個人消費の回復の弱さ等の影響により成長ペースは鈍く、世界的なインフレ影響等により新興国全体としての成長ペースは鈍化する見通しです。

 当社グループの関連市場におきましては、自動車電装機器市場は、引き続き自動車生産の回復が見込まれますが、各国における高インフレとその抑制のための利上げによる需要の減退等の影響により回復の力強さを欠き、依然見通しに不透明感があります。ライフ・インダストリー機器市場は、健康・医療機器用の安定的な需要の持続等を背景に全体として堅調な需要を見込むものの、個人消費の減速により家電・工具・住設用及び理美容機器用の需要は低調となる見通しです。

 このような経営環境下、当社グループは、次に述べます課題に取り組んでまいります。

 

① 「動き」のソリューション提供による事業ポートフォリオの進化

 当社はこれまで、小型直流モーター専業メーカーとして、お客様が求める真の価値を実現する高品質なモーターを「標準化戦略」によってリーズナブルな価格でご提供し、自動車電装分野からライフ・インダストリー分野まで、人々の暮らしの利便性、快適性及び安全性の向上に幅広く貢献してまいりました。今後もお客様と社会への貢献を拡大するため、モーターをコアとしつつ事業領域を拡大し、多様な「動き」のソリューションを提供することにより事業ポートフォリオを進化させ、事業の成長を図ります。特に「モビリティ」「マシーナリー」「メディカル」を「3つのM領域」と定義し、注力する事業分野としてその取り組みを加速させてまいります。

 モビリティ:自動車電装分野では、EV化の進展に伴い、限られたバッテリーで航続距離を延ばすための電力消費量の削減が求められており、小型・軽量・高効率という当社モーターの付加価値を更に高め、開発・生産・販売を推進します。またバッテリーの熱管理を行うためのバッテリー冷却用のバルブ用途の需要が高まっており、ブラシ付モーターとブラシレスモーターの双方をラインナップしている当社の強みを生かし、ユニット対応を含めてお客様の要望に応じたソリューションを提供してまいります。ライフ・インダストリー分野では、移動体用ブラシレスモーターにおいて、新たなアシスト自転車やシニアカー、農機具用等の様々な用途にて受注を獲得しており、引き続き新たなお客様・用途を開拓し、拡販に取り組んでまいります。

 マシーナリー:今後市場の拡大が見込まれるロボット市場では、人手不足の解消に貢献するような協調ロボット用途での拡販を目指し、中空構造のブラシレスモーター等ラインナップを拡充しており、今後も新規採用に向けた拡販を進めてまいります。また産業設備に関しては、工業製品や食品等の生産過程におけるCO2排出量の削減が急務となっており、エア式や油圧式から、よりエネルギー変換効率の高い電動式へ切り替える動きが広まっており、ビジネス拡大に向けたソリューション提案を進めてまいります。

 メディカル:健康・医療機器用途においては、高付加価値の歯ブラシ用モーターをはじめ、人々の健康に寄与する製品に注力しています。2021年7月にM&Aにより統合した人工呼吸器及び歯科治療機器用モーターなどを手掛けるマブチエレクトロマグの製品ラインナップ及び顧客基盤を足掛かりに医療機器用途の取り組みを強化しております。また、2023年3月には、主に健康・医療機器用の小型ポンプに強みを有するマブチオーケンがM&Aによりグループに加わりました。同社とのシナジー創出を早期に実現し、医療機器用をはじめとする「3つのM領域」における、ユニット対応力とソリューション提案力を強化し、事業拡大に取り組んでまいります。

 

② 自動車電装機器及びライフ・インダストリー機器用モーターの拡販

 パワーウインドウ用モーターにつきましては、搭載車種の拡大に向けた取り組みを一層強化し、販売活動に一層注力することで、更なるシェア拡大を目指してまいります。北米自動車メーカー3社のうち2社において既に当社製品を採用いただいておりましたが、残る3社目より受注を獲得しました。2025年の販売開始に向け円滑な立ち上げを推進するとともに、更なるシェアアップを実現すべく欧米自動車メーカー向けの新規案件の獲得を目指し拡販を進めてまいります。パワーシート用モーターにおいては、2023年より新たに販売を開始した日系大手のお客様向けビジネスの更なる拡大に取り組むとともに、2024年より新たに販売開始する欧州大手のお客様向け案件の円滑な立ち上げに取り組んでまいります。リクライナー、ハイト及びチルトアジャスターなどの様々な機構に使用可能な新製品を投入することで、既存のお客様におけるシェアアップに取り組んでまいります。パーキングブレーキ及びドアクローザー用等のモーターについては、標準化戦略に基づき多用途への展開が可能な標準モーターの開発及び販売活動に取り組んでまいります。ミラー用をはじめとする当社が高シェアを有する既存製品分野においては、新たな差別化技術を搭載した製品の投入により更なる拡大に取り組んでまいります。

 ライフ・インダストリー機器用においては、家電製品や健康・医療等の個人の生活に関する用途と、業務や産業に関する用途に向け、高付加価値の製品を提供してまいります。マブチエレクトロマグは、医療機器用モーターに関する高い技術力を有しておりますが、同社の高回転ブラシレスモーターが工具用で受注を獲得するなど、他用途への展開が進んでおります。今後も、開発・生産・販売のあらゆる面でのシナジー創出に取り組み、ライフ・インダストリー機器用途全体の成長へつなげてまいります。

③ マブチグローバル経営によるグローバルリスクマネジメント

 当社は、各海外拠点の自主・自立性を向上させ地産地消を推進する「世界5極事業体制」に、拠点間の人材の繋がり及び多様な価値観を活用する「ダイバーシティ」を強みとする「マブチグローバル経営」を推進しております。本社・各拠点間の人材交流を促すための基盤となる人事制度の整備及び各種情報共有や拠点をまたぐ会議体の設定等を通じてグループレベルで相互理解と協力を促進し、グループ各拠点の横の繋がりを強化することに加えて、各拠点内における縦の繋がりを強化するための方針展開施策、教育及び階層を超えたコミュニケーション施策等により会社方針や価値観の理解・共有を図っております。各拠点において強固な開発・生産・販売体制を構築することにより、変化の大きい市場環境においても高品質な製品をリーズナブルな価格で安定的に供給できるよう、グローバルレベルでのリスクマネジメントを推進してまいります。

 

④ サステナビリティへの取り組み

 当社では、SDGs(持続可能な開発目標)を、人を大切にしながら経済的にも成長できる目標と捉えております。2024年には2030年を最終年度とするサステナビリティ目標を新たに設定し、「地球環境を犠牲にすることのない企業活動」「豊かな社会と人々の快適な生活を実現するものづくり」「すべての人が活躍できる環境の実現」「社会的責任の遂行」をマテリアリティ(重要課題)として、事業活動を通じた地球環境や社会課題の解決に向けた積極的な取り組みを継続しています。気候変動への取り組みとして、2030年までにCO2排出量を2018年比で30%削減する目標を設定し、また、2050年までにカーボンニュートラルに向けた活動を推進しております。目標達成に向け、再生可能エネルギーの更なる活用や環境へ配慮した製品創出の取り組み等の具体的な施策を加速いたします。社会面での取り組みとしては、SDGsに貢献する製品の販売拡大やお取引先様を含むサプライチェーン全体でのCSR活動、人権への取り組み、また次世代を担う子どもたちが科学への関心を深める活動を推進してまいります。今後も、国際社会が直面している課題の解決に事業を通じて貢献することにより、経営理念「国際社会への貢献とその継続的拡大」の実現を目指し、グループの総力を挙げて取り組んでまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティに関する考え方及び取組

 当社は、経営理念として掲げる「国際社会への貢献とその継続的拡大」を実践するために、経営基軸に則り、社会が抱える課題の解決を通じ、持続的に企業価値を向上させていきます。

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

 

①ガバナンス

 当社は、社会に対する貢献度を高め、世の中のためになくてはならない企業であり続けることを目指し、サステナビリティへの取り組みを進めています。

 サステナビリティを推進する体制として、取締役会の直下に「サステナビリティ委員会」を設置しております。委員長は社長が務め、委員は執行役員及び事業部・本部レベルの組織長より構成されています。当委員会では、サステナビリティ課題の横断的な検討・議論を行い、重要課題(マテリアリティ)や目標の設定・見直しと目標進捗のモニタリングを実施しております。また、当委員会における審議の結果は取締役会に報告し、取締役会による監督や決定事項の全社的な統合が適切に図られるよう体制を整えています。2024年からスタートする新たな経営計画である「経営計画2030」においては、新しい重要課題(マテリアリティ)とサステナビリティ指標についても、財務指標と同じように目指すべき重要な指標として、取締役会の承認を経て設定しています。

 なお、当社の持続的な成長と中長期的な企業価値向上への貢献意欲を高めることを目的として、取締役に対する信託型株式報酬の算定における中期計画指標の一つとして、サステナビリティ指標を採用しております。

 当社の企業統治体制図は、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等 (1)コーポレート・ガバナンスの概要」に記載しております。

 

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②戦略

 当社は、経営理念「国際社会への貢献とその継続的拡大」のもと、小型・軽量・高効率のモーターを通じ安全で環境負荷の低い動力を提供することで、環境負荷の保全とすべての人の安全で快適な生活への貢献を果たすべく事業を拡大してきました。また、SDGs(持続可能な開発目標)を、人を大切にしながら経済的にも成長できる目標ととらえ、その達成に向けて、環境・社会への積極的な取り組みを推進しています。

 経営計画2030において、事業とサステナビリティを統合し、財務指標と未財務指標(注)の双方を高めることにより企業価値の最大化を目指しています。未財務指標の取り組みとして、「地球環境を犠牲にすることのない企業活動」、「豊かな社会と人々の快適な生活を実現するものづくり」、「すべての人が活躍できる環境の実現」、「社会的責任の遂行」の4つの重要課題(マテリアリティ)とそれらに紐づく8つのサステナビリティ目標を新たに設定しました。これら目標の達成を目指すとともに、お客様とのパートナーシップを通じ社会課題の解決を実現する製品の開発及び拡販をはじめ、事業活動を通じた地球環境や社会課題の解決に向けて、積極的な取り組みを継続していきます。

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 (注)人的資本等の無形資産で現在は未だ財務的に貢献していないが、未来の業績に寄与する指標であり、当社にとって財務指標同様に重要なため、「非財務指標」ではなく、「未財務指標」と表現しております。

 

③リスク管理

 当社は、グローバルに事業活動を展開し持続的成長を確実なものにするため、多様化する事業上の様々なリスクの軽減・最小化を図るべく、リスクマネジメントの充実・強化に取り組んでいます。

 サステナビリティに関するリスクは、企業の中長期的な成長に大きく影響を与えることから、戦略リスクの一つとして位置づけ、気候変動や人権問題に関するリスク管理を経営レベルで行っています。これらのサステナビリティに関するリスクをサステナビリティ委員会で評価し、全社のリスクマネジメント委員会と連携するとともに取締役会へ報告しています。

 当社におけるリスク管理の詳細については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」を、気候変動におけるリスク管理の詳細については、「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)気候変動」をご参照ください。

 

④指標及び目標

 2021年に経営基軸に則った重要課題(マテリアリティ)の特定とその実現に向けた2023年までのサステナビリティ中期目標を掲げ、活動を推進した結果、16の指標全てを達成しました。

 

2023年目標と実績

KPI

2023年目標値

2023年実績

① 自動車の安全性向上に資するモーターの売上高

160億円

206億円

② 自動車の環境性能向上に資するモーターの売上高

40億円

48億円

③ 健康・医療機器、電動歯ブラシ用モーターの売上高

75億円

79億円

④ メキシコマブチ、ポーランドマブチの雇用者数

1,800人

2,722人

⑤ 本社生産技術機能の一部移転、業務移管状況

ベトナム拠点にて新製品に関する検討や立上げ支援等の高度な業務が行える状態になっている

2023年3月にベトナム拠点に生産技術センターを設立

本社との共同開発案件を通じ、新製品に関する検討や工程設計業務を行える人材を育成

⑥ 経営人材育成講座受講済み人員数(対象:各拠点部長職)

全対象者全員の受講が完了

全対象者全員の受講が完了

⑦ 海外拠点における研究開発人員数の2020年比増加率

10%

13%

 

 

⑧ グループ全体での女性管理職比率(年末時点)

15.0%以上

16.8%

⑨ ロボコンにおける支援学校数

のべ1,536校以上

のべ1,536校

⑩ 子ども向け工作教室・出前授業・モーター提供数等の対象者数

のべ186,000名以上

のべ187,539名

⑪ 小型化機種の上市数

2021-2023年

3年累計12機種

2021-2023年
3年累計17機種

⑫ 温室効果ガス(CO2)排出量2020年比削減率 (原単位;売上高)

3.0%削減

28.0%削減

⑬ 度数率(労災発生件数÷総工数)

0.17以下

0.14

⑭ 経営理念教育・コンプライアンス教育の実施

全グループで入社者教育、リマインド教育を継続的に実施する仕組みの定着

全グループで入社者教育、リマインド教育を継続的に実施する仕組みを構築。経営理念教育及びコンプライアンス教育を実施

⑮ ガバナンス強化(不正件数)

不正件数ゼロ

不正件数ゼロ

⑯ 情報開示の充実

統合報告書を毎年発行・内容の充実、グローバルコンパクト分科会活動に基づく社内展開実施

内容充実させた統合報告書を発行。グローバルコンパクト分科会活動に参加し、社内展開を強化

 2024年から2030年を対象とする次期のサステナビリティ目標については、サステナビリティの重要性が高まり、社会課題の解決に向けた要望が強まる中において、改めて当社にとっての重要課題(マテリアリティ)を見直し、それに紐づく指標及び目標を設定しました。

 

2024年及び2030年の目標

重要課題

(マテリアリティ)

取組内容

KPI

2024年

目標

2030年

目標

地球環境を犠牲にすることのない企業活動

開発、調達、生産等、社内における全ての活動における環境負荷の低減

①CO2排出量 2018年比削減率 (スコープ1,2)

△3%

△30%

小型、軽量、省エネルギーを実現する製品の開発及び販売拡大

②サステナブルプロダクツ及びサステナブルプロダクツ・プレミアムの売上高成長率(2023年比)

+20%

+70%

豊かな社会と人々の快適な生活を実現するものづくり

「健康機器、医療機器用途」及び「自動車の安全性向上(シートベルトプリテンショナー、パーキングブレーキ、光軸調整、ハプティック等)環境性能向上(バルブ、グリルシャッター)に資するモーター」の販売拡大

③SDGsに貢献する用途の売上高成長率(2023年比)

+5%

+70%

 

 

すべての人が活躍できる環境の実現

日本及び世界各地の拠点における女性経営者及び管理職の育成・登用

④女性管理職比率

17%

20%

グローバル勤務(自拠点から他国拠点への出向、トレーニー派遣)の推進

⑤グローバル勤務経験者数

457名

(累計)

620名

(累計)

次世代を担う子どもたちが科学への関心を深める機会の提供

⑥子ども向け工作教室・出前授業等の参加者数

700名

5,000名

(2024年からの累計)

社会的責任の

遂行

労災事故の防止対策、オフィスや工場における労働環境の整備、ワークライフバランスの促進

⑦労働災害度数率(100万のべ実労働時間当たりの労働災害による死傷者数)

0.14以下

0.12以下

人権デューデリジェンスのプロセスを実施・継続し、サプライチェーン全体での人権尊重の取り組みを強化

⑧人権上の重大リスク件数

0件

0件

 これらの目標達成に向け、引き続きサステナビリティ活動を推進していきます。

 

(2)気候変動

 当社は「気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)の提言への賛同を表明し、TCFD提言に基づき、気候変動が事業に及ぼすリスク・機会を分析し、情報開示を積極的に行うことで、すべてのステークホルダーの皆様と強固かつ長期的な信頼関係を構築するとともに、持続的な社会の実現に貢献していきます。

 

①ガバナンス

 当社では、気候変動を含む環境問題を経営に影響を及ぼす重要な課題の一つとして認識しており、気候変動問題を含めた環境全体の基本方針などの重要事項は、取締役会で審議・決議されます。気候変動への対応を含む環境負荷低減活動の推進にあたり、社長を委員長とするサステナビリティ委員会で課題と目標の明確化を行い、目標に対する活動のモニタリングを行っています。サステナビリティ委員会は、年2回以上開催され、執行役員及び事業部・本部レベルの組織長が委員となり、リスクの特定・評価及び対策立案を含む全社的なサステナビリティ課題の調査・議論を行っています。また、当委員会での審議の結果は、取締役会に報告され、取締役会による監督や決定事項の全社的な統合が適切に図られるよう体制を整えています。

 

②戦略

 気候変動によるリスク及び機会の特定にあたり、当社における製品及びサービスの開発・調達・生産・供給までのバリューチェーン全体を対象として、国際機関などが公表するシナリオを用い将来の世界像を設定し、2030年及び2050年の2つの時点において当社の影響について考察を行いました。

 設定したシナリオを踏まえた事業への財務的影響について、試算が可能な項目に関しては数理モデルを検討し2030年、2050年の各時点に想定される収支への影響について項目別に試算を行い、その影響規模の推計を実施しました。また、定量的な評価が困難なリスク及び機会については定性的な評価を行い、将来時点における影響の大きさを検討しました。

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 1.5℃シナリオでは、カーボンプライシングや各エネルギー価格上昇に伴うコスト増が見込まれる一方、自動車産業のみならず、あらゆる業界においてカーボンニュートラルに向けた取り組みが活発化し、電動化需要が拡大することにより、当社の事業にも恩恵がもたらされると予測しています。対して4℃シナリオでは、気象災害による直接的な被害や、それに伴う操業停止による損失が拡大することが最も懸念すべきリスクとして予測されます。

 これらの分析を踏まえ、具体的な対応策を各事業で検討・立案し、不確実な将来の世界のあらゆる可能性に備えるとともに、今後の様々な動向を踏まえて分析を定期的に行い、評価の見直しと情報開示の質・量の充実に努めていきます。

 なお、既に実施中の具体的な対応策として、小型・軽量・省エネルギー化を実現し環境貢献に優れた製品を「サステナブルプロダクツ」、「サステナブルプロダクツ・プレミアム」として社内認定する制度を導入し、環境配慮型製品の開発・販売を促進することで事業機会の増大を図るほか、太陽光発電設備の導入をはじめとする再生可能エネルギーの利用や、設備投資判断においてCO2排出量を費用換算して排出量削減を促すインターナル・カーボン・プライシング(ICP)制度の導入など、事業や製造における気候変動対策を進めております。

 

 

③リスク管理

 当社では、気候変動リスクの特定・評価及び対策立案をサステナビリティ委員会で実施し、取締役会に報告するとともに、リスクマネジメント委員会及び各担当部門と連携を図っています。リスクマネジメント委員会では、全社的なリスク管理・評価プロセスの中で、気候変動リスクを含む経営に重要な影響を及ぼすリスクについて、多様な事業環境の中で戦略を遂行する際に直面する経営課題(戦略的リスク)と事業運営上発生しうるリスク(事業運営リスク)の2つに大別し、当社内の定義に基づいて評価を行い、取締役会に報告しています。

 これらのプロセスから特定・評価されたリスクごとに担当部門を決め、担当部門は対策・行動計画を策定し管理しています。各担当部門は、管理実施状況及び結果をリスクマネジメント委員会に報告し、リスクマネジメント委員会においてリスクの再評価及び是正を実施しています。

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④指標と目標

 国際社会にとって喫緊の課題である気候変動に対応するため、当社は2030年までにCO2排出量を2018年比30%削減とする中期目標に加えて、2050年カーボンニュートラルに向けた活動を推進することとしました。そのための施策として、太陽光発電システムの設置や排熱を回収して再利用するシステムの採用、再生可能エネルギーの活用や生産設備の省電力化等のCO2排出量削減の取り組みを推進しています。

 

CO2排出量に関する目標及び実績(Scope1,2)

(単位:t‐CO2)

2018年

実績

2023年

実績

2024年

目標

2030年

目標

2050年

目標

(基準年)

排出量

2018年比

排出量

2018年比

排出量

2018年比

 

118,058

117,006

0.9%削減

114,516

3%削減

82,640

30%削減

ゼロ

 

 

(3)マブチモーター株式会社における人的資本経営

マブチモーターの人的資本に対する考え方

・日々大きく変化を遂げるグローバル社会経済環境にあって、企業が持続的な成長を実現するための最も重要な要素が「人」であることは言うまでもありません。

・当社は経営理念「国際社会への貢献とその継続的拡大」をいかに具現化すべきかを示した経営基軸において、「人を最も重要な経営資源と位置づけ、仕事を通じて人を活かし、社会に役立つ人を育てる」と定めています。社員が個々の能力や想いをそれぞれの仕事で発揮することが、事業活動を通じて国際社会へ貢献し続けるために最も重要な原動力になると考えております。

・そのために、当社では社員一人ひとりが自らの長所を伸ばしながら、個性を発揮して活躍できる組織作りを推進し、経営理念の実現、及び長期経営方針で掲げる「全ステークホルダーの幸せへの貢献の継続とその拡大」を実現してまいります。

 

①人材育成方針

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・採用・登用

 当社は、多様な人材が切磋琢磨することにより新たな価値創出を促進できる活力ある風土醸成のため、当社の経営理念への共感を前提に、年齢・性別・国籍・人種・障がいの有無等の違いに制約されない多様な人材を、新卒・キャリアの区別なく、人物本位で採用・登用しております。

 

・育成

当社は、本社社員のみならず国内外のグループ企業社員も含め、グローバルに活躍できる経営人材、専門性あふれる人材を継続的に輩出すべく、国を超えた人材交流(ローテーション)、及び教育を主管する組織であるMLI(マブチ・ラーニング・インスティテュート)を推進主体として、当社独自の教育体系に基づき研修を実施しております。MLIによるオンライン学習を活用したグローバルな教育環境の活用により、学習する組織風土の醸成、専門知識・技術レベル向上によるスペシャリストの早期育成等、マブチグループ全体で広く深い知識を得られる体制を構築してまいります。

 

・適材適所配置

 当社は、年齢や勤続年数に依らない真の実力主義による幹部登用、複線型人事制度とキャリア開発の深化、及び自己申告制度の併用により、希望する社員の誰もがチャンスを得ることができ、適性・希望に応じたキャリア形成を可能とする環境整備を進め、必要な経験・スキルをもった人材の最適配置を実現してまいります。

 

・評価・処遇

 当社の人事評価・報酬制度は、様々な役割を果たす社員一人ひとりの貢献を的確に把握し、会社と社員が一緒に成長するとともに、貢献に対して公平・公正に報いることを目指します。管理職、専門職には年齢や勤続年数等の属人的な要素に関係なく、役割・職務の大きさ・成果によって報酬が決まる制度を導入しており、本社一般社員やグループ会社社員にも同様の制度を展開していきます。合わせて、多様な役割を果たす社員一人ひとりの貢献を的確に把握し、それに見合った処遇を行うための評価制度及び処遇制度といたします。こうした制度・体系を社員に明確に示すことで、社員は会社方針と自らの役割のつながりを理解でき、自己実現のために必要な経験・スキルの見える化を通じて、希望するキャリアパスの実現を可能としてまいります。

 

②社内環境整備方針

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・経営戦略の浸透

 全社員が一体感を持ち、様々な社会課題の解決に向け取り組むことで、経営理念の実現を目指すべく、経営戦略や経営方針の浸透を図ります。経営戦略、方針の浸透に向けて、経営陣が社員に直接語りかける機会(全社方針説明会、本部・事業部方針発表会)を設けております。また、経営理念についても、経営理念そのものに加え、グループ全体の取り組みとして創業者馬渕健一・隆一兄弟の半生を分かりやすくまとめたリーフレットを配付し、経営理念制定に至るまでの創業者の想いを全社員が共有しております。

 

・心と身体の健康

 当社は、経営基軸の中で「地球環境と人々の健康を犠牲にすることのない企業活動を行う」と掲げており、海外拠点も含め、社員としての基本的権利を尊重し、社員一人ひとりが健康で安心して活動できる職場づくりに積極的に取り組んでいます。社員の心と身体が健康でいきいきと働くことは社会生活の基礎であり、企業の活力向上にもつながると考え、2021年10月に「健康経営宣言」を行いました。この宣言の下、社員の健康増進を支援し、健康経営を一層推進してまいります。

 

 

・エンゲージメント向上

 社員エンゲージメントの向上は、会社の持続的な成長に欠かせないものです。定期的に社員エンゲージメント調査を実施し、その傾向を把握・分析し、社員の「働きがい」と「働きやすさ」の向上に向けて活動を強化してまいります。

 

・コンプライアンスの推進

 当社は、社会から求められる企業倫理に沿った活動を行うことが大前提であると考え「マブチモーター倫理規範」を制定し、すべての役員と社員が守るべき法令等の社会ルールを具体的に示し、その浸透を図っております。本社及び国内外の拠点において、コンプライアンス委員会の主導のもとでコンプライアンス教育活動を継続し、法規制及び社会規範の順守に関する様々な説明会や研修を実施してまいります。

 

・ワーク・ライフ・バランス

 当社は、社員の働き方の選択肢を増やし、社員それぞれの事情に合った働き方の実現を後押しすることで、会社全体の生産性向上・付加価値の創出につなげることを目指しております。その実現のため、多様化するライフスタイルに対応し、仕事とプライベートの両立を支援する制度・環境づくりに取り組んでまいります。

 

③活動事例紹介

1)ジェンダーギャップの解消(グローバルベース)

 女性をはじめ、あらゆる人が働きやすい組織作りは、組織を健全に成長させていく上で不可欠であることから、当社は社内におけるジェンダーギャップ解消に努めております。その一環とし、グローバルベースの女性管理職比率を2023年16.8%から2030年に20%まで引き上げることを目指します。

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2)社員のグローバルでの活躍推進

 グローバルでの社員の活躍を推進しており、2023年時点の日本本社における海外拠点への出向経験者、海外拠点から他国拠点への出向経験者、及び拠点間トレーニー経験者の合計人数は421名ですが、2030年にはこれを約1.5倍の620名まで拡大することを目指してまいります。

 

3)健康経営の推進

「マブチモーター健康経営宣言」を制定するとともに、経済産業省と日本健康会議が選定する「優良健康法人2023(大規模法人部門)」に4年連続で選定されました。今後も取り組みを継続し、社員が心身ともに健康で働き続けることができるように健康推進活動へ取り組んでまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の判断上重要と思われる事項については、投資家に対する積極的な情報開示の観点からこれを記載しております。当社グループは、これらのリスクを認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の損害の低減に努めてまいります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)経済状況の変化

 顧客の製品に搭載される当社製品の需要は、当社グループが販売している多様な市場における経済状況の影響を受けます。したがって、日本、北米、欧州、アジアを含む当社グループの主要市場における景気後退及びそれに伴う需要の縮小等は、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、市場環境や受注状況を取締役会等の重要会議において定期的にレビューするなど、常に最新の市場動向を予測した上で、設備投資や人員・在庫等の適正化を図り、市場への対応力を高めています。

 

(2)為替レートの変動

 海外子会社の財務諸表上の現地通貨建ての項目は、連結財務諸表を作成するために円換算されております。したがって、換算時の為替レートにより円換算後の計上額が影響を受けることになります。特に米ドルに対する円高は当社グループの連結業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響をもたらします。

 当社グループが生産を行う地域の通貨価値の上昇は、それらの地域における現地通貨建ての製造と調達のコストを押し上げます。コストの増加は当社グループの利益率と価格競争力を低下させ、業績に悪影響を及ぼします。

 当社グループは、為替リスクを測定した上でヘッジ効果とヘッジコストを勘案し、許容可能な為替リスク量まで為替リスクを軽減するため、社内規程に従い為替予約を利用してヘッジをしています。

 

(3)新製品・新技術の開発

 新製品の開発と販売のプロセスは、その性質から複雑かつ不確実なものであり、様々なリスクが含まれます。

 当社グループが市場ニーズの変化を十分に予想できず、魅力ある新製品をタイムリーに開発できない場合、又は当社製品が陳腐化するような技術革新等が生じた場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、変化の激しい昨今の事業環境下における当社の競争優位性を更に拡大することを目的として研究開発活動に関する組織体制を構築しております。また迅速な意思決定や市場ニーズの変化へのスピード感のある対応、用途市場別の新機種開発対応力の向上、顧客サポートやCS活動のグローバル化対応等を実現するため、営業部門と一体化し、事業部活動の強化発展を推進しています。

 

(4)価格競争

 当社グループは、電気・電子機器、機械等製造業界に属する多様な分野の企業を顧客としておりますが、これら業界における価格競争は大変厳しいものになっております。このような環境下で、価格はすべての分野において大きな競争要因になっており、中国競合メーカーの台頭等もあって、競争はさらに激化しております。 直近では、世界的な材料価格及び物流費の高騰が継続しており、不適切な価格設定や、各種コストダウン活動が市況変化に追いつかない場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、標準化、省人化をはじめとする知恵と技術を結集し、製品設計・開発段階からのコスト管理、生産技術の改善、部品調達のグローバル化による体系的なコストダウン、適正な価格設定及び付加価値の高い製品の継続的な投入、平均単価及び収益力の維持向上に取り組んでいます。

 

(5)国際的経済取引及び海外進出に潜在するリスク

 当社グループの事業活動の大部分は欧州、北米、アジア各国等で行われております。これら海外における事業活動においては、政治・経済環境の変動、インフラストラクチャーの未整備、法律や税務その他の諸制度の変動、社会的混乱等のリスクが内在しております。

 例えば当社グループは、生産活動の多くを中国及びベトナムにおいて行っております。同国における政治又は法環境の変化、経済状況の変化、雇用環境その他の社会環境変化等、予期せぬ事象の発生が生産・販売活動に大きな問題を生じさせ、これが業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、直近ではロシアによるウクライナ侵攻を発端とした地政学上のリスクが高まり、原材料の高騰、エネルギーの供給不安、国際的なサプライチェーンの混乱が生じておりますが、情勢の変化については、引き続き状況を注視してまいります。

 当社グループは、事業展開する国等の経済・政治・社会的状況に加えて、事業に関連する各国の環境関連規制、製品の安全性・品質関連規制、輸出入関連規制の情報をタイムリーに収集・対応するため、世界5極体制の構築も含めた適時適切な対応を検討・実施しています。

 

(6)製品の品質

 当社グループのすべての製品について大きな品質問題が発生しないという保証はありません。品質問題が発生した場合、その賠償額は、当社グループ製品を搭載した最終製品の品質に与える影響に左右されます。万一、大規模な製品クレーム又はリコールや製造物責任賠償に繋がるような製品の欠陥が発生した場合は、多額のコストの発生や信用の失墜による売上の低下を招き、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、すべての生産拠点で安定した品質を生みだすために、事業拠点ごとに国際規格ISO9001やIATF16949を認証取得し、マネジメントシステムの継続的な改善と向上に努めるとともに、本社が定めた品質システムを遵守し、高品質な製品の供給に努めています。また、不具合発生時においても根本原因を究明したのち再発防止・未然防止策の実施・徹底をすすめております。

 

(7)知的財産保護

 知的財産の獲得は、当社グループの成長を大きく左右するものと認識しております。しかしながら特定の地域では、固有の事由によって当社グループの知的財産権が完全に保護されない場合があります。その場合、当社グループの知的財産を第三者が無断使用し、類似製品を製造することによって損害を受けることや、その他の技術やノウハウ等が流出し他社で利用されることにより競争優位性を損なう可能性がある一方、当社グループが他社の知的財産を侵害したと主張される可能性もあります。

 知的財産権における保護の失敗や侵害、その他の知的財産の流出は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、製品の拡販・新用途拡大に向け、俯瞰的且つ積極的に知的財産権の獲得・保護を行うことにより、競争優位性の確保を図っております。また、知的財産権の確保だけでなく、権利の流出・侵害といったリスクに対しても、当社グループ従業員に対し、教育等の意識向上施策を広く実施しております。

 

(8)人材獲得と育成

 当社グループは、激しい企業競争を勝ち抜くため、関連分野における能力の高い従業員、殊に高度な科学・技術に通じたエンジニアや、ビジネス戦略、組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成が不可欠であり、世代の交代を超えて常に充実・向上させることが必要であると認識しております。一方で、これら人材の積極的採用と継続的な育成には、コストを必要とします。

 優秀な人材の獲得や人材育成が長期的視点において計画どおりに進まなかった場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、計画的な新卒採用に加え、ニーズに基づいた通年採用を実施しております。また、能力開発を支援する教育制度の拡充、多様な社員の能力が十分に発揮できるよう適性を重視した配置、各部門において早期にスペシャリストを育成するための体系やワークライフバランス支援制度の整備により、社員のモチベーションを高め、社員の定着・育成に努めております。

 

(9)原材料等の調達

 当社グループが外部から調達している原材料等の種類によっては、限られた供給元に依存するものがあり、こうした供給元における事故その他の事由による原材料等の供給中断、需要の急増による供給不足等が発生する可能性があります。これらが長期にわたり代替品の入手が困難な場合、当社グループの生産活動に大きな影響を及ぼし、顧客への製品の納入や品質の確保に支障をきたす可能性があります。また、市況品価格の高騰などにより製造コストの上昇を招くことも考えられます。

 このような事態が生じた場合、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、このようなリスクを回避するため各種の原材料や部品等を複数の事業者から調達し、安定的な供給の維持を図るとともに、CSR調達にも配慮しております。また、一部の素材につきましては適切な先物予約等による価格の安定化を図り、製造コストへの影響を抑制する対策を推進しております。

 

(10)自然災害や事故、感染症の流行

 当社グループは国際分業体制を確立し、世界各国で事業活動を行っており、本社及び各拠点において工場や事務所等の施設・設備を保有しておりますが、災害、事故の発生や感染症の流行等による事業活動中断等の不測の事態が生じた場合は、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、事業継続基本計画(BCP)を策定しており、本社及び拠点における災害や事故の発生等のリスクの顕在化防止又は保険の付保を含む損害低減策を講じております。新型ウイルス等の感染症への対応では、当社グループが事業を展開している国・地域において、現地の政府及び自治体等の指導に沿った対応を行っており、当社グループの従業員及びその家族の健康に配慮し、在宅勤務や時差出勤の推奨、テレビ会議の活用、社内での三密の防止等に取り組むとともに、事業への影響を最小限に抑えるよう日々努めています。

 

(11)環境対応について

 当社グループは、環境関連諸法令を遵守するとともに有害物資の漏洩防止及び適法適切な廃棄処理を徹底し環境被害の発生防止に努めておりますが、サステナビリティに対する意識の高まりなどにより環境に対する規制が厳しくなり、さらなる環境対応が必要になった場合には当社グループの事業、業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、本社及び海外生産拠点において、環境管理責任者及び各部門長で構成される環境管理委員会を定期的に開催し、環境情報の共有化及び環境保全活動を効率的に行っています。これに加え、本社及び海外生産拠点の環境管理責任者で構成される環境管理責任者会議を開催し、環境問題に関する情報共有の促進及び環境管理について当社グループ全体で対策を推進しております。また、サステナビリティ中期目標においても、環境負荷の軽減を重要課題として認識し、具体的な目標を設定しております。

 

(12)世界的な気候変動について

 当社グループは、気候変動対策に関して、継続的な省エネルギー施策及び太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの導入に取り組み、CO2排出量の抑制に努めておりますが、世界的な気候変動に伴う異常気象(暴風雨、洪水、干ばつ等)による被害や、温室効果ガス排出に対する規制(排出量取引制度等)が強化された場合には、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、「2030年までにCO2排出量を2018年比30%削減」との中期目標に加え、2050年カーボンニュートラルに向けた活動を推進しております。国際社会にとって喫緊の課題である気候変動問題に対応するため、当社グループは、太陽光発電システムの設置、排熱を回収して再利用するシステムの採用、インターナル・カーボン・プライシングの導入、及び生産設備の省電力化等のCO2排出量削減に取り組んでおります。また、気候変動をリスクとしてだけではなく機会としても捉え、事業活動を通じて気候変動に関する社会課題を解決していくことを目指します。

 気候変動に関する情報開示については、2021年3月に賛同を表明したTCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)の提言に基づき、継続的に気候変動の影響の評価及びその情報の開示に取り組んでまいります。

 

(13)情報セキュリティによるリスク

 当社グループは、事業活動において顧客、他企業の機密情報及び取引先関係者、従業員の個人情報を入手することがあり、同情報が外部への流失及び目的外の流用等が起こらないよう運用しておりますが、人的及び技術的な過失や違法又は不正なアクセス等により漏洩した場合は 、多額のコストの発生や信用の失墜による売上の低下を招き、当社グループの業績及び財務状況に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、私どもが保有する情報資産の管理及び情報セキュリティ管理を適切に行い、情報の漏洩、改ざん、滅失、盗難等を防止することが企業の社会的責務の一つであると認識し、役員を含めた全ての従業者が情報セキュリティの必要性及び責任について理解を深めるとともに、情報セキュリティポリシーを定め、情報セキュリティの確保に万全を期しております。具体的には、当社グループはリスクマネジメント委員会の活動を通じて、情報セキュリティに関する継続的な取り組み、評価、改善が可能な体制・仕組みを構築しております。また、情報資産を適切に分類、整理し、その重要性に応じた情報セキュリティ対策を取るとともに、情報の取り扱いについて細心の注意を払い、厳重に管理し、当社グループの役員、社員、その他の従業者が情報セキュリティの重要性を理解し行動できるよう、必要な教育・訓練を継続的に実施しております。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)経営成績

当期における世界経済は、新型コロナウイルスの感染予防対策の緩和による経済活動の正常化が進んだものの、資源価格の高止まり及び物価上昇による消費低迷の影響により、成長ペースは鈍化しました。米国経済は、インフレの低下に加え、底堅い雇用及び所得環境を背景に個人消費が堅調に推移したこと等により、緩やかに回復しました。欧州経済は、資源価格の高止まり等によるインフレ及び各国の利上げに伴う個人消費の低迷等の影響により、経済活動の停滞が見られました。我が国経済は、インフレ進行の影響はあったものの、感染予防対策の緩和による経済活動の正常化により緩やかに回復しました。新興国経済は、中国経済はゼロコロナ政策の解除に伴う個人消費の回復が力強さを欠き、不動産市場の悪化等の要因も重なり、全体として緩やかな回復に留まりました。

当社グループの関連市場におきましては、自動車電装機器市場は、半導体等の供給制約の緩和により自動車生産が回復した一方で、各国のインフレに伴う個人消費の低迷等の影響が見られました。ライフ・インダストリー機器市場は、インフレに伴う個人消費の低迷、及び一部の用途における巣ごもり需要の一服等により、全体として減速が見られました。

このような景況下、当社グループは、「事業ポートフォリオの進化を目指す『3つのM領域』での取り組み」、「自動車電装機器及びライフ・インダストリー機器用モーターの拡販」、「マブチグローバル経営によるグローバルリスクマネジメント」、「サステナビリティへの取り組み」などを課題に掲げ、取り組んでまいりました。具体的には、「パワーウインドウ用においてデトロイト3の3社目からの受注を獲得し、日系5社目向けの販売を開始」、「パワーシート用において日系大手顧客向けの販売を開始」、「EV向けバルブ用モーターユニットの量産準備の進捗及び韓国大手顧客からの新規受注獲得」、「シンチング及びフラッシュ・ドア・ハンドル等のドア周辺の新用途で受注獲得」、「新たなアシスト自転車やシニアカー、農機具、商品陳列ロボット用で受注獲得」、「マブチエレクトロマグ製の高付加価値モーターをガーデンツール用に販売開始」「M&Aにより当社グループ入りしたマブチオーケンと技術交流や共同開発が進展」等、売上とシェアの拡大、新市場の開拓及び高品質・高効率化の更なる進展に向けた諸施策を積極的に導入・実現し、将来の事業成長につながる成果を上げることができました。

 

(売上高)

 当期の連結売上高は1,786億6千3百万円(前期比14.0%増)となりました。その大半を占めるモーター売上高は1,786億2千2百万円(前期比14.0%増)であります。

① 自動車電装機器市場

 売上高は1,400億2千2百万円(前期比19.6%増)と増加しました。中型電装用途では、パワーウインドウ用は、半導体等の供給制約の緩和による自動車生産の回復等の影響を受け増加しました。同様に自動車生産の回復の影響に加えて、パワーシート用は日系大手顧客向けの販売開始により、パーキングブレーキ用は搭載車種の拡大により増加しました。小型電装用途では、ミラー、ドアロック、エアコンダンパー及びヘッドライト用の各用途が同様に自動車生産の回復の影響を受け増加しました。

② ライフ・インダストリー機器市場

 売上高は386億円(前期比2.6%減)と減少しました。健康・医療用は、第2四半期より損益上連結対象となったマブチオーケンが貢献し増加した一方で、家電・工具・住設、事務機器用は、インフレに伴う個人消費の低迷及び一部用途における採算性重視の方針による受注絞り込みにより減少しました。

 

(営業利益)

 為替レートが前期と比べ円安で推移したことや売価・プロダクトミックスの改善等の増益要因が、コストアップ等の減益要因を上回り、155億3千6百万円(前期比43.5%増)となりました。

 

(営業外収支)

 営業外収支は、前連結会計年度の106億4千8百万円の収益(純額)から、当連結会計年度は114億5千8百万円の収益(純額)となりました。受取利息が13億2千1百万円増加したことなどによるものであります。

 

(特別損益)

 特別損益は、前連結会計年度の7億8百万円の損失(純額)から、当連結会計年度は2億3千8百万円の収益(純額)となりました。当連結会計年度において、負ののれん発生益6億5千9百万円、投資有価証券売却益2億8百万円及び退職給付制度改定益1億1千3百万円を計上したことなどによるものであります。

 

(法人税等及び法人税等調整額)

 法人税等及び法人税等調整額の税金等調整前当期純利益に対する比率(税効果会計適用後の法人税率等の負担率)は、前連結会計年度の31.2%に対し、法人税等調整額の減少により当連結会計年度は28.7%となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は194億1千6百万円(前期比35.8%増)と前期比で51億2千万円の増加となりました。1株当たり当期純利益は、前連結会計年度の110.39円に対し150.52円となりました。

 

(セグメントごとの経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容)

 セグメント別の売上高は、「日本」セグメントは178億6千8百万円(前期比28.0%増)、「アジア」セグメントは831億4千9百万円(前期比8.2%増)、「アメリカ」セグメントは348億1千2百万円(前期比19.2%増)、「ヨーロッパ」セグメントは428億3千2百万円(前期比16.6%増)であります。

 セグメント別の利益又は損失は、「日本」セグメントは28億4千2百万円の利益(前期比2,108.2%増)、「アジア」セグメントは117億3千1百万円の利益(前期比17.5%増)、「アメリカ」セグメントは19億6千7百万円の利益(前期は2億1千万円の損失)、「ヨーロッパ」セグメントは4億6百万円の損失(前期は1億7千7百万円の損失)、セグメント間取引消去による調整額は△5億9千9百万円(前期は10億9千7百万円)であります。

 

なお、当連結会計年度の円の平均為替レートは、1US$に対し140.56円であり、前連結会計年度に比べ9.13円の円安となりました。

 

(生産、受注及び販売の実績)

 a.生産実績

小型モーターの生産実績をセグメント別に示すと、次のとおりであります。  (千個未満の端数切捨て)

 

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

    至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

    至 2023年12月31日)

比較増減

(△は減)

 

数  量

構成比率

数  量

構成比率

数  量

 

 アジア

千個

1,270,103

97.3

千個

1,217,561

95.1

千個

△52,542

 アメリカ

24,309

1.9

30,759

2.4

6,450

 ヨーロッパ

11,042

0.8

32,175

2.5

21,133

合  計

1,305,455

100.0

1,280,497

100.0

△24,957

(注)当社グループの生産・販売品目は小型モーター単品であり、価格差も僅少であることから、数量表示のみで記載しております。

 

 b.受注状況

当社グループは、主として需要予測に基づく見込生産方式をとっておりますので記載を省略しております。

 

 c.販売実績

小型モーターの販売実績を用途市場別に示すと、次のとおりであります。  (百万円未満の端数切捨て)

 

前連結会計年度

 (自 2022年1月1日

     至 2022年12月31日)

当連結会計年度

 (自 2023年1月1日

     至 2023年12月31日)

比較増減

(△は減)

 

金  額

構成比率

金  額

構成比率

金  額

 

 自動車電装機器

百万円

117,056

74.7

百万円

140,022

78.4

百万円

22,966

 ライフ・インダストリー機器

39,639

25.3

38,600

21.6

△1,039

合  計

156,696

100.0

178,622

100.0

21,926

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合につきましては、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める顧客がないため、記載を省略しております。

 

(2)財政状態

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に対して288億1千8百万円増加し、3,366億5百万円となりました。変動の大きかった主なものは、現金及び預金の増加149億9千2百万円、有形固定資産の増加96億8千8百万円、受取手形及び売掛金の増加49億5千万円等であります。

負債合計は、前連結会計年度末に対して39億6千3百万円増加し、315億7千4百万円となりました。変動の大きかった主なものは、未払法人税等の増加15億9千8百万円等であります。

純資産合計は、前連結会計年度末に対して248億5千5百万円増加し、3,050億3千万円となりました。為替換算調整勘定が157億1千8百万円増加、利益剰余金が77億1千5百万円増加しました。

 自己資本比率は、前連結会計年度末の91.0%から、当連結会計年度末は90.6%となっております。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前期末から110億4千5百万円増加し、1,123億1百万円となりました。

営業活動によるキャッシュ・フローは317億4千1百万円の収入となり、前期に対し215億3千4百万円の増加となりました。税金等調整前当期純利益が64億6千7百万円増加したことに加え、棚卸資産の減少により収支が114億6千9百万円改善したことなどによるものです。

投資活動によるキャッシュ・フローは156億8百万円の支出となり、前期に対し51億4千万円の支出増加となりました。固定資産の取得による支出が25億3千2百万円増加したことに加え、応研精工株式会社(現:マブチモーターオーケン株式会社)の株式取得(子会社化)に伴う子会社株式の取得により支出が20億3千5百万円発生したことなどによるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは118億4千9百万円の支出となり、前期に対し17億6千万円の支出増加となりました。配当金の支払額が6億5千3百万円増加したことなどによるものです。

 

(4)資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、当社グループ製品製造のための材料及び部品の購入費、製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、設備資金需要につきましては、当社グループ製品製造のための生産設備購入や工場建設費用等があります。

 なお、当社グループの運転資金及び設備投資資金は自己資金から賄っており、外部調達はありません。

 

(5)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

 連結財務諸表を作成するにあたり重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 また連結財務諸表の作成にあたっては、資産、負債及び収益、費用の報告金額に影響を与える仮定、見積り及び判断を必要としており、連結財務諸表作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りの仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 しかしながら、これらの仮定、見積り及び判断については不確実性を伴うため、実際の結果と異なる場合があります。

 

(6)経営成績に重要な影響を与える要因

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3.事業等のリスク」に記載しております。

 

(7)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループの研究開発活動は、当社、マブチオーケン株式会社(「日本」セグメント)、万宝至馬達(東莞)有限公司(「アジア」セグメント)及びマブチエレクトロマグエスエー(「ヨーロッパ」セグメント)で行っており、その内容は次のとおりであります。

 当社の研究開発活動に関する組織体制としては、第一・第二・第三の各製品開発部をライフ・インダストリー事業部・オートモーティブ第一事業部・オートモーティブ第二事業部内に分散配置し活動を行っております。変化の激しい昨今の事業環境下において、顧客や市場の課題に対しソリューション提案することで当社の競争優位性を更に拡大することを目的としております。また、迅速な意思決定や市場変化へのスピード感のある対応、用途市場別の新機種開発対応力の向上、顧客サポートやCS活動のグローバル化対応などを実現するため、営業部門と一体化し、事業部活動の強化発展を推進しています。また、第一・第二ブラシレスモーター開発部を置き、ブラシレスモーター事業の拡大を推進しております。

 製造本部は、第一生産技術部、第二生産技術部、第三生産技術部の三部体制とし、第一生産技術部は技術開発業務、第二生産技術部は工程設計業務、量産(新機種/既存機種)・工場横断業務、第三生産技術部は生産技術管理・情報業務を実施しております。

 また技術統括直下の組織として技術研究所と技術管理部が配置されています。技術研究所では主に要素技術開発や戦略用途を中心とした新製品開発等の高付加価値業務を担っており、技術管理部は量産製品図面管理や知的財産権の管理等を実施しております。

 マブチオーケン株式会社は、小型ポンプに特化したメーカーであり、ローリングポンプに関する技術、長寿命・低振動・静音性のポンプ特性を活かし、メディカル、モビリティ、マシーナリーの「3つのM領域」において拡販活動を実施しております。

 万宝至馬達(東莞)有限公司に設置しているR&Dセンターにおいては、各種試験依頼の処理をはじめ、部材評価、図面作図業務、改良設計業務を中心に担当しております。更に、中国地場マーケットへの迅速な製品投入を目的とした既存製品の改良業務及び当社が委託した新製品の開発業務支援も実施しております。

 マブチエレクトロマグエスエーは、人工呼吸器・歯科治療用ハンドピース等の用途に特化したブラシレスモーターメーカーであり、静音・低振動・高速回転などの医療機器用途に適した高特性ブラシレスモーターの開発・製造技術を有し、それらを活かした拡販開発活動を行っております。

 また、当社モーターの新規分野への参入及び適用用途への対応力強化並びに地産地消の考え方から、競争力のあるものづくりの実現を目指して、次の事項の検討と施策展開を急務と捉え実行しております。

(1)移動体向けブラシレスモーター及びギヤーユニット等の開発と駆動回路の技術強化

(2)マブチオーケン、マブチエレクトロマグと製品技術融合による、健康・医療用途での製品競争力強化

(3)従来の省人化に加え、更なる省人化ラインの検討とモノづくり競争力の強化

(4)開発リードタイムの短縮及び開発工数の短縮、削減

 

 次に、各用途の対応状況でありますが、主力分野である自動車電装用途、またライフ・インダストリー機器用途など、注力すべきそれぞれの用途について、事業部体制の下、技術部門及び営業部門が一体となり対応を行っております。

 

モビリティ(Mobility)における取り組み

パワーウインドウ用途

 日系自動車メーカー向けに小型・軽量化モデルの量産開始をしております。また、新規北米自動車メーカー向けにも新機種の採用が確定し、今後もサスティナビリティ要求に応えた小型・軽量化モデルを主力モデルとし、拡販活動を充実させてまいります。

 

パワーシート用途

 日系大手顧客向けにサスティナビリティ要求に応えた小型高トルク製品の量産を開始いたしました。更なるシェア拡大に向けてシートの各ファンクションに相応したモーターを、地域市場による顧客要望の違いを考慮して開発を継続しています。生産拠点を複数国に持つ強みを生かし、地産地消によるCO2排出量削減を意識した生産・販売活動をしております。

 

バルブ用途

 冷却水・冷媒・熱・排ガスの通るバルブを精密に駆動し、省エネルギー・高効率・バッテリー長寿命化・低燃費に貢献する製品であり他用途と異なる高温と振動環境への対応が求められるバルブ用途の需要が高まっており、併せて自動車のEV化に伴うバッテリー冷却バルブ用途の需要が飛躍的に成長しております。既に量産中のRS-4F5、RS-4G5及び、当該モーターのオプション仕様の強化を図ることに加えアクチュエーターの小型・軽量化に貢献すべく、外径24mmの小型バルブ用モーターの量産準備を開始しております。また、ブラシ付モーターとブラシレスモーターの双方をラインナップしている当社の強みを生かし、ユニット対応を含めてお客様の要望に応じたソリューションを提供してまいります。

 

その他小型電装用途

 お客様の様々なアクチュエーターデザインソリューションに対応したFC-140タイプの汎用横メス端子の製品の量産を開始いたしました。低燃費や利便性を訴求した新規用途の引合いに対応したモーター、高電圧バッテリーに対応したモーターの開発を継続しております。また、既存用途においてはお客様の使い勝手を考慮した高機能化及び電気・機械ノイズ性能を向上させた、次世代の標準モーターやアクチュエーター開発しております。

 

移動体用途

 ブラシレスモーターの新規ラインナップ及びオプションの拡充によって、お客様による採用ご検討や新規成約が大幅に増加しております。特にAGVやパーソナルモビリティ用途では、自動車メーカーが手掛けるシニアカー向けに採用が決まり、2024年量産開始の予定です。また、□100mmサイズのモーター開発が完了し量産を開始、新たな用途の引き合いに結びついております。オンライン販売や展示会への出展を通じ、広くお客様への認知、提案を行う取り組みも定着し始めており、今後のより一層の販売・拡販の強化に繋げてまいります。

 

マシーナリー(Machinery)における取り組み

協調ロボット用途

 ブラシレスモーターの新規ラインナップの拡充によって、お客様による採用ご検討や新規成約が大幅に増加しております。サービス・協調ロボットでは、フレームレスモーターIA/IBシリーズで複数の国内外の主要なメーカー様向けに採用が決まり、順調に販売の拡大につなげることができました。移動体用途同様にオンライン販売や展示会への出展を通じ、広くお客様への認知、提案を行う取り組みを継続していきます。

 

生産設備用途

 当社は生産設備を自社で内製しており、製品開発部門と生産技術部門の連携を強化することで、お客様の真のニーズを理解し、最適なソリューション提案を目指した活動を開始しております。産業機器業界では、既存モーターをよりCO2排出量の低減につながるエネルギー変換効率の高いモーターに切り替える動きが加速しており、これまで移動体用モーターで培った技術・製品を産業機器に活かす活動を展開しています。

 

メディカル(Medical)における取り組み

医療用途

 マブチエレクトロマグが高いシェアを誇る人工呼吸器用モーターの技術を使い、ユニット開発活動を推進しています。また医療用途のスロットレスブラシレスモーターの磁気回路設計を一部改良し、医療以外(汎用工具等)への

展開活動を推進し、一部用途において量産を開始しております。また、マブチモーターの量産ノウハウを活かし、高品質と低コストを両立した競争力の高い製品の投入を図るべく活動をしております。

 

 当連結会計年度における研究開発費は6,388百万円、当社所有の産業財産権の総数は793件(国内143件、海外650件)、新規出願件数は国内外合計で69件(国内外、特許・実案・意匠、商標)となっております。

 当社製品の拡販・新用途拡大に向け、俯瞰的且つ積極的に知的財産権の獲得・保護を行うことにより、競争優位性の確保を図っております。また、知的財産権の確保のみならず、権利の流出・侵害といったリスクに対しても、当社グループ従業員に対し、教育などの意識向上施策を広く実施しております。

 

なお、当連結会計年度における代表的な新製品は次のとおりであります。

 

 移動体用モーター:MS-94BZD/MS-94BZE/MS-94BZF

 AGVやAMRなどをはじめとする移動体用途で活躍いただけるブラシレスモーターIS-94BZCに減速比20の遊星ギアを取り付けたブラシレスモータユニット3製品となります。減速機は高トルクに適し積載搬送走行時におけるラジアル荷重をダイレクトに保持可能な遊星減速機構を採用し、電磁ブレーキは停止状態を保持できるものを選択可能であり、駆動ユニットとして車輪やブラケットを選択可能としております。

 

 移動体用モーター:IS-B5BZA

 AGVやAMRなどをはじめとする移動体用途で活躍いただけるブラシレスモーターについて、既存のIS-74BZA(定格出力200W)、IS-94BZC(同260W)に加え、さらに高トルクな本製品(同600W)を用意することで、ニーズが多様化する移動体分野において更なる貢献を目指してまいります。

 

 パワーウインドウ用モーター:GD-538LC/GD-538RC、GD-538LD/GD-538RD

 自動車のパワーウインドウ用モーターとして開発しました。小型、軽量化、高トルク化を継続的に追求し、車体の軽量化による燃費の向上に寄与することで、環境負荷低減に貢献してまいります。従来製品と同等トルクで重量20%の軽量化の実現をしております。

 

 パワーシート用モーター:FS-548XD

 自動車のパワーシート用モーターとして開発しました。小型、軽量化、高トルク化を継続的に追求し、車体の軽量化による燃費の向上に寄与することで、環境負荷低減に貢献してまいります。従来製品と同等トルクで重量9%の軽量化の実現をしております。