当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.経営方針
(1) 会社の経営の基本方針
ミッション:半導体の自動検査技術で人々の豊かな生活と幸せ、社会の発展に貢献します。
ビジョン:(我々のあるべき姿)
人とデジタルを繋ぐ主要インターフェースである「ディスプレイと周辺デバイス」、そして電子の目「イメージセンサー」を始めとする半導体の自動検査における、トップリーダーを目指し、世界的企業へと成長します。
バリュー(会社価値の創造において優先すること)
①我々は、顧客満足を第一にする
②我々は、自分の事業領域に、常に創造・挑戦し、No.1を目指す
③我々は、高い製品品質と持続的な改善を通じ顧客に貢献する
④我々は、PDCAを早く回し、スピード感を持って、目標を達成する
⑤我々は、仕事を通じ、豊かで生きがいのある人生を構築する
(2) 目標とする経営指標
デジタルと人間のコミュニケーションは「ディスプレイ:出力」と「イメージセンサー:入力」が主流になります。我々は、人とデジタルを繋ぐ最も重要な半導体を検査する仕事を、主軸にして事業を拡大します。売上高経常利益率20%以上の確保と配当性向30%の回復」を目標としております。このため当社は、次世代ディスプレイドライバIC向け検査装置、高精細化著しいイメージセンサー、ディスプレイ(アレイ)分野向け検査装置並びに先端ロジックデバイス向けの検査装置の開発販売を継続し、メインマーケットを市場の消えた日本国内から中国、台湾に移し、事業の拡大を図ってまいります。引続きIoTヘルスケア市場への参入(一部特定顧客への販売開始)、インダストリー4.0を念頭においた、自重補償型マニピュレータの自社装置への実装と国内輸送業界への展開を進め、またBtoCを含む、水素ナノバブルイオン洗浄水市場を通した環境配慮型事業を推し進めてまいります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略
当社の検査装置の対象のひとつであるイメージセンサーの分野は、情報端末の市場拡大もさることながら、スマートフォンの画質を一眼レフに近づける技術開発がすすみ、カメラの複眼化、高画素化が進み、3眼の製品も出ています。Research Nesterによると、イメージセンサー市場の規模は2023年に約220億米ドル、約11%のCAGR(年平均成長率)で成長し2036年までに約 760 億米ドルに達すると予測されています。カメラ以外では、LiDAR(自動運転支援)分野でも高速通信規格である5G(第5世代移動通信システム)技術の普及拡大に合わせ、本分野も同様に急拡大し2025年には2兆6,460億円(2019年比38.5%増)が予測されています(株式会社富士キメラ総研:イメージング&センシング関連市場総調査より)(市場規模は、情報元データを尊重し、日本円、米国ドルの変換はしていません)。
特に当社が力を入れる、ディスプレイドライバIC検査装置では、現行装置WTS-577SRに同装置のアップグレード機にあたるWTS-577SX(開発中)に搭載予定である次世代リソースの一部を先行搭載し、常にアップグレーダブル、つまり現行装置の「価値を落とさない方針」のもと、既存あるいは新規顧客から次々リリースされる次世代デバイスのベンチマーク(お客様工場に装置を貸出し、実際の現場で量産半導体の検査ラインに投入し、検査スピードや精度、そしてデータの相関度などを評価いただくこと)に注力し、お客様の重要なパートナーとしてご信頼をいただく活動を継続しております。また大阪事業所では、次世代検査装置WTS-9000C/Sの開発並びに試作を引続き進めると共に、当社100%製造子会社ウインテスト武漢では、増産体制及び品質管理の強化を行い、受注出荷を行ってまいります。
2023年中は、中国市場への深耕及び人的チャンネルづくりに力を入れる方針とし、デザインハウス(デバイスのメーカー)及びOSAT(製造受託、検査組立工場)合わせて15社を超えるお客様との共同作業に力を入れ新規開発デバイスチップの無償評価引受を継続し且つ、量産認定をいただく作業に注力することで、当社認知度を高めてまいりました。その結果、2023年11月19日から中国並びに台湾方面の有力デザインハウス、大手OSAT、合計7社の経営層や幹部の皆様、総勢15名様による当社訪問、視察、意見交換の場を持つに至りました。これは、2023年の活動だけではなく、2020年から3年間に渡り鋭意行って参りました中国市場戦略が新型コロナ禍を乗り越え、ここにきて実を結びつつある兆しであると考えております。しかし2023年の業績につきましては、2022年秋から始まった民生用半導体の部材のダブつきからお客様生産工場稼働率がのきなみ50%前後まで落ち込むこととなり、新規設備投資が見送られたため、2023年2月14日に発表しました通期連結業績を達成するための受注の計画が大きくずれることとなりました。そのため販売促進目的にて、無償デモ機やベンチマークで先行出荷貸出を含め社内で準備をしていた受注の計画分につき、2023年年度末までに一部を除いて受注売上とすることができませんでした。
当社グループの開発動向としては、2023年中に行った第三者割当による資金調達で、より強力な複数の次世代検査装置オプション(WTS-577SRに先行搭載される次世代機能、高速コンパレータ機能搭載の新LCD信号キャプチャボード、高速パターン発生装置1.6Gbps、イメージセンサー検査装置用新光源装置「WLS-150」に搭載可能なTOFオプション等)を完成、上述のとおり一部は先行して、現行装置WTS-577SRに搭載してリリースを行いました。現在2024年秋までのリリースを予定するWTS-577SXの開発と並行して引続きマルチプラットフォーム型次世代検査システムWTS-9000C/Sの開発を進行させています。
2023年の営業の強化策としては、特に注力する中国方面は当社100%子会社に加え、当社のグループ兄弟会社となる上海精積微半導体有限公司(PMI社)と強力な協業を開始、また台湾方面は、既存販売店Viccom社、そして日本及び韓国方面は、2023年3月付で有力企業、株式会社RSテクノロジーズ社と販売店契約を締結しており更なる事業の加速、営業活動の加速をしてまいります。
2.経営環境
当連結会計年度(2023年1月~12月)における世界経済は、新型コロナウイルス感染抑制の措置やそれに伴う行動制限が緩和され、コロナ後の新しい社会への対応が進んだことで、需要と供給の両面において堅調に回復しています。半導体をはじめとする電子部品や材料等供給の国際的ひっ迫による厳しい状況が続きましたが、影響は軽減してきています。一方、ロシアによるウクライナ侵攻等の地政学リスクや、米国におけるインフレ抑制のための金利の引上げ、中国経済の減速懸念など、経済の先行き不透明感が残りました。
WSTS(World Semiconductor Trade Statistics/世界半導体市場統計)によれば、2023年の世界半導体市場規模は、前年比9.4%減の5,201億2,600万米ドルと、4年ぶりのマイナス成長となりました。2023年前半までに解消されることが期待された民生半導体のダブつきは、テレワーク需要の終息を受けた落込みが顕在化してその解消が遅れたことを背景に、半導体製造工場の生産調整に繋がり、製造装置稼働率は大きく低下し、新規設備投資の抑制が当社受注済み分についての納期調整要求や予定していた新規受注の低迷に至ることとなり、2023年の後半まで継続いたしました。そのため、2023年の受注・売上は2023年11月14日付の開示の業績予想を更に下回ることになり、2024年2月14日付で「通期連結業績予測と実績値との差異及び個別実績値と前期実績値との差異に関するお知らせ」を開示することとなりました。
当社グループが属する半導体市場の2024年の状況としては、WSTSの予測によると前年比13.1%増の5,883億6,400万米ドルと市場が再拡大し、過去最高だった2022年の5,740億8,400万米ドルを上回るとしています。生成AI関連やパワーディスクリートの需要の継続成長が見込める他、2024年からは景気回復への期待を念頭に、電子機器全般の需要が拡大するとの想定がされています。
上述のような経済状況のなか、当社への影響といたしましては、前年2022年より業績の改善が見られましたが、半導体製造工場の新規設備投資は2023年末まで大きく抑制された状況が続きました。下半期には市場における民生用半導体のだぶつきの解消や半導体製造工場の稼働率の改善を期待し、新規設備投資再開を見込んでおりましたが、2023年末までに市場の状況の改善は見られず、当該検査装置を使用する見込先の半導体製造工場の稼働率が引続き低迷、新規設備投資は2024年に見送られる形となりました。その結果、当社の事業活動は大きな影響を受け、追加受注、売上時期は2024年以降となり、2023年末までに予定していた受注売上の一部は2024年1月15日となりました。
2023年の表示デバイス市場は、成長率において増加は少なかったものの(前年対比2%程度)、ディスプレイサーチ社並びにOmdia社の見解では、2024年には本格的な回復が見込まれているとし、市場は、3年前の1,377億ドルから、2024年には1,677億ドルへと大きく伸長すると予測しています。加えて2023年から2030年にかけて、32.5%のCAGRを記録すると予想しており、市場は継続的に伸長するとしています。
当社は2023年において、ディスプレイドライバIC検査装置の開発に注力いたしました。2023年中に複数の次世代検査装置オプションを開発完成させリリースを行いました。新開発した次世代機能の一部については、既にいくつかの顧客製造現場において、ベンチマーク(半導体製造工場における当社検査装置の貸出評価)を終了しており、2024年の当社ビジネスの推進並びに開発中のWTS-9000C/Sの主軸機能となり、2024年の半導体の波に乗るために強力な事業推進ツールとなる予定です。
今後も武漢精測グループとして、横浜本社、大阪事業所における開発環境整備、人材育成及び増員に努め、組織の強化を行い、総務経理部を含む各部署における業務推進体制を革新するため、ERPやITを駆使した、より機動的かつ最新の環境で、設計、開発及び経営能力を強化するとともに、トータルコストの削減、納期の短縮と品質の向上を目指し、顧客満足度を上げることで受注増、業績の向上、企業価値の増大を図り、株主様の利益につなげてまいります。
3.対処すべき課題
(1)主たる既存事業への取り組み
ア.検査装置機能の高速化及び機能性向上
当社グループの主要事業である半導体検査装置事業では、高度化、多様化する半導体製造工場の検査ニーズに応えるため、既存検査技術の革新を進めてまいりました。
設備投資機運が低迷するなかで、高速パターン発生機などの次世代機能の開発を継続するとともに、それらの機能の一部を現行装置WTS-577SRに先行搭載することで、半導体製造工場から、次々と新しくリリースされる新製品向け半導体チップに対する検査手法の継続的な提供が可能となり、ベンチマークを止めることなく半導体製造工場との関係づくりに奔走できる体制を取ってまいりました。
さらに製造能力の強化と品質管理体制の整備推進をとおして、半導体製造工場にとってより信頼される企業として成長するために、以下の課題への取り組みを進めてまいります。
当社の主たる事業分野である半導体検査装置事業分野はスマートフォンに代表されるように新製品サイクルが非常に早く、おおよそ、6か月を目途として新製品がリリースされ、その技術レベルや機能のレベルが上がるごとに新機能を実現するための「新開発半導体チップ」が開発されています。そのため、当社グループとしては、開発部門による検査装置自身の開発の手を緩めることなく、加えて応用技術部門では、市場要求(「新開発半導体チップ」)に合わせた新機能を検査する手法の開発と多角的な検査のアプローチ方法を提案、ベンチマークを行い、より検査の幅を厚くする取り組みを続けてまいります。
半導体検査装置においては高精度、低コスト、高速化に加え信頼性の向上が求められるだけではなく、さらに使いやすいユーザーインタ―フェースと、検査用プログラミング補助機能の強化などを実現する必要があります。それぞれをこれまでにないスピードで推し進めることが、同分野において求められることから、引続き組織と業務運営体制の整備を進め、よりスピーディーな開発判断ができるように改革を行ってまいります。なお、随時開発体制の見直しと強化を行ってまいります。
新聞報道による昨今の中国の経済情勢に関する話題として、不動産投資関連による経済破綻などが取り上げられておりますが、こと半導体に関しましては、世界的に見ても中国を抜きに語れないのが事実です。当社は引続き、中国と台湾をメインマーケットとし、現地顧客のニーズを把握し当社100%出資の中国湖北省武漢市に設立したウインテスト武漢の能力を最大限に高め、製造から納品までのタイムラグをなくすことで、現地顧客の信頼、ニーズを先取りした経営を行ってまいります。
イ.営業力強化・顧客サポートの充実
当社は、ウインテスト武漢の開発部の能力を生かし、従来機を中心に新機能や高速化を目的とした開発や改良を行い、製造品質の強化に努め、また販売においては蘇州に販売拠点を設けて営業部の拡充を進めております。ウインテスト武漢の営業部及び日本、台湾における販売店との連携を強化、全販売拠点協働で新規顧客へのアプローチ、既存顧客からのリピート受注の促進を図ってまいります。
(2)新規事業による事業の多角化への取り組み
当社は、業務範囲の拡充を目的に、産学連携を行っております。
検査装置向け工場FA化機器技術(「自重補償機構技術」)、当該技術については、学校法人慶應義塾大学慶應義塾先端科学技術研究センターと共同開発を進めており、特許等の申請については終了しております。当該技術は当社の検査装置とウエーハ搬送装置との間のドッキングアダプター(以下「ポゴタワー」という。)の着脱(約25㎏~30㎏)をオペレーターひとりで簡単に安全に行うための補助アーム(以下「マニピュレータ」という。)で製品化を目指しており、ロボットを得意とする専門工場に依頼し量産製造の準備を行っています。その後、応用製品として、手始めに「物流搬送市場」におけるトラック向け補助装置への応用製品化を考えております。
奈良県立大学と進めております脈波(BCG,ECG)を利用したヘルスケア管理システムは、現在特定の一般消費者への試験販売を継続しつつ同大学並びに株式会社TAOS研究所とアライアンスを継続し機能の強化を進めており、当面は病院、介護施設への販売をいたします。
水素ナノバブルイオン洗浄水に関しましては、装置製造元と提供方法について協議を続けてまいりましたが、装置の大幅な小型化に成功したことにより、小規模BtoB又は、BtoC向けとしては、装置単体の販売を計画し、また大規模BtoB向けには、装置のレンタルを含む販売を計画しております。詳細が決まり次第、お知らせいたします。
(注)インダストリー4.0 検査装置向け工場FA化機器技術に使われる「自重補償機構技術」とは
一般的な「重量物搬送装置」は、電気モーターやエンジン等の動力源を持ち、かつ、重いカウンターウエイトや油圧・圧縮空気の出力を借りることで、数十キロから数百キロの重量物の移動をアシストしますが、装置が大掛りで重量が重くなることや、重量物に見合う外部動力が必要となるといった課題を有しています。これらの課題克服のため、当社と慶應義塾先端科学技術研究センターは、いかなる動力や重いカウンターウエイト、そして油圧・空圧機器をも使用しない「自重補償機構」の開発を進め、バネの弾性力を応用した軽量かつシンプルな構造を内蔵したロボットアームの継続開発を行っております。今般開発した試作機は、被搬送物の重量が変化した場合でもその重さに見合った自重補償ができる構造となっており、回転軸を除く各軸にて搬送する重量物の自重補償を達成し、自身の腕部分の自重をも含め、より安全な自重補償を成立させています。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
サステナビリティ基本方針
当社グループは、経営理念に基づき、技術力を活かして世界中のお客様が抱える課題を解決し、基幹産業の発展に貢献するすることにより、持続可能な社会の実現と企業価値の向上を目指していきます。
(a)グローバルな社会的課題に対して、当社グループが保有する卓越した技術で応え、課題の解決と企業価値の向上を両立させます。
(b)環境、人権に配慮し、持続可能な資源利用に繋がるサプライチェーンを目指します。
(c)公正かつ透明性の高い経営を実現します。
(1)ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する取組を重要な課題と認識しており、中長期的な企業価値向上に向け、サステナビリティをめぐる課題に対して具体的な取組を推進し、対応状況を取締役会において監督する体制としております。
サステナビリティ関連のリスク及び機会を把握・管理するためのガバナンス体制は、「
(2)戦略
(人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針)
当社グループは、サスティナビリティの中でも人的資本への投資が重要であると考えております。「人材は、持続可能な企業価値の向上の源泉」であると考えています。経営計画の確実な執行、達成に向け、最も重要な人材(人的資本)への投資を引き続き計画的、かつ強力に推進してまいります。
また、当社グループは、技術の承継と新たな技術の習得、グローバル人材の育成等に主眼を置き、階層別教育、職種別教育、グローバル人材教育、全社共通教育などを通じて、当社グループの発展の基礎となる人材の育成と獲得に努めていきます。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は、社内における人財の多様性を確保し、多様性から来る組織内活力を創造すべく、女性・外国籍の人材を可能な限り積極的に活用するとの認識に立ち、外国籍人財の本社及び事業所での採用、子会社との交流等を行い、社内に異なる経験・技能・属性を反映した多様な人財を確保し、会社の持続的な成長を図ることです。女性の採用やLGBT等ジェンダーフリーな採用、適正配置と活用を推進しており、外国籍の従業員は勿論、女性管理職の登用にも積極的に取組んでいます。現状において、部長職、課長職への女性の積極的登用を実現しております。
(知的財産への投資等)
当社グループは、お客様の「省エネ」「小型化」に寄与することで、「社会課題を解決する」ことを基本理念として独自技術による「省エネ」「小型化」製品の開発を進めており、常に知的財産権を尊重した事業活動をしています。
次世代を見据えた新技術の開発において研究開発部門の人材確保や開発活動及びその成果である知的財産権への投資が必要不可欠であることから、知的財産活動に関する事案を経営会議の重要テーマとして組込み、事業ポートフォリオごとの戦略について議論・検討を行い、適宜、取締役会に報告しています。
(気候変動に係るリスク及び収益機会が自社の事業活動に与える影響)
当社グループは、現在、気候変動に関して国際的枠組みに基づく情報開示は実施しておりませんが、気候変動におけるリスクについては、気温上昇による影響の情報収集と分析を今後実施する予定です。収益機会に関しては、気温上昇による環境変化の影響を想定したうえで、経営環境、特に当社グループの装置開発において多くのエネルギーを必要とする装置の構造をひとつずつ見直し、業界最低消費電力を達成、冗長な機能の削減に取り込むことで、わが国ひいては地球規模の社会・経済全体のサステナビリティ課題への積極的・能動的な貢献が重要であるとの認識のもと、当社グループの持てる経営資源、開発資源を駆使して低炭素社会の実現を目指しています。
(3)リスク管理
当社グループは、取締役、執行役員及び使用人が、その所管業務に関して、職位別の権限と責任並びに職務基準を明確にし、目標管理を徹底するとともに、その業務プロセスに内在するリスク(目標達成の不確実性及び損失発生の危険性をいう)の認識・評価・管理に係る「リスク管理規程」を定め、リスクマネジメント体制を構築しております。部門横断的なリスクについては、経営企画室において統括管理を行い、内部監査により業務管理・業務執行のリスクマネジメントの状況を検討・評価し、その結果に基づく改善・合理化への助言・提案等を通じてリスクマネジメントの改善を図っております。
当社グループにおける、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は
以下のとおりであります。
①ダイバーシティの実現
1.外国人の積極的採用
2.部長職、課長職への女性の積極的登用
3.技術系職員の継続採用
②社員教育・資格取得の整備
1.新規採用社員への教育
2.専門資格の取得推奨
3.全社員対象研修の導入(コンプライアンス研修、各種法令研修)
③働き方改革の推進
1.フレックスタイム制を用いた柔軟な働き方の推進
2.長時間労働者へのケア
3.テレワーク・在宅ワークの推進
(4)指標及び目標
当社グループでは、上記「(2) 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針
及び社内環境整備に関する方針に係る指標について、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われておらず、また当社の連結子会社は海外に所在地を有し、各国独自の価値観や倫理観による人材の多様性確保を含む人材の育成及び社内環境設備を行っているため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
提出会社では、中期経営計画(2024年1月~2026年12月)において、以下の目標を設定しています。
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指標 |
目標 |
実績 (当連結会計年度) |
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① |
女性管理職の積極的登用・採用 |
2026年12月31日までに、管理職に占める女性の割合を10%以上へ増加 |
6.5% |
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② |
月間残業時間の削減 |
2026年12月31日までに、月間平均残業時間が20時間以上のものを5名へ削減 |
8名 |
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③ |
有給休暇年間取得実績 |
2026年12月31日までに、有給休暇取得実績が8日未満の従業員をゼロにする |
4名 |
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)市場動向の変動
当社グループの主力事業である半導体検査装置事業は、イメージセンサー、ディスプレイ(アレイ)、ディスプレイドライバIC等の半導体検査に特化した事業戦略をとっておりますが、当該事業はデジタル家電や携帯電話、パソコンといった情報端末関連機器で使用される、イメージセンサーやフラットパネルディスプレイを使用する機器等の市場動向に左右されやすい面もあります。
これらの機器市場、及び検査対象となるデバイス市場は、世界的な感染症の発生や、半導体業界における一時的な在庫調整並びに、デジタル家電製品のトレンドに左右されるシリコンサイクルの影響を受けやすい特性を有します。
当社グループは各分野の装置において、独自技術を活かした先端・ハイエンドデバイス検査に重きを置きつつ、ニッチ市場を開拓することにより、これらの影響を受けにくい体制作りを推し進めております。
なお、これらの機器市場、デバイス市場は、IT技術の進化とともに普及が進むモバイル・リビング端末を中心とした基幹産業として、5Gなどの通信の高速化技術の進展に伴い当面は拡大基調を継続すると思われますが、世界的な感染症の発生や、複数の消費国における天変地異、或いは金融関連の予想外の市場収縮時には当社装置の売上が減少し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2)競合の状況(当社グループの主要製品である検査装置に関して)
イメージセンサー関連では、強力な国内外競合メーカーが3社程度存在すると考えております。当社グループでは、競合他社と比較して、よりコストパフォーマンスが高い装置の供給に独自のノウハウを保有していると考えておりますが、今後は被測定ICの高速駆動と検査スピードの高速化を進めるとともに検査データの高速転送と機能強化を行うなど更なるコストパフォーマンスの向上を実現し、競合他社との差別化を図る必要があり、現在2022年末の完成を目指したマルチプラットフォーム次世代検査装置の開発を加速させております。また同時にTOF検査を可能とする専用光源の開発に着手しており、当社検査装置の性能を100%引き出せる専用光源と共にリリースする計画です。
ディスプレイドライバIC関連では国内外競合メーカーが3社程度存在すると考えております。当社グループは製品のコストパフォーマンスで優位性を保ちつつ、今後の4Kそして8K画像に対応する高度化が見込まれるデバイス性能に適応してゆくためのデータの高速転送技術や、駆動周波数の高速化、そして高速データ処理技術等、検査機能拡張と検査の高速化オプションを継続開発し市場投入することで、顧客ニーズに応え続けるとともに他社との差別化を図ります。加えて、開発中の次世代検査装置は、筐体及びインターフェース、制御ソフトウェアを当社で今後開発する他の用途の検査装置と共通化(マルチプラットフォーム)することで、開発期間の短縮につなげ、開発資源の有効活用の最大化を実現できることとなります。これは当社顧客、特にテストハウスにとって、一度購入した装置に新たに必要となる機能ボードを入れ替えることで、別の検査ニーズに対応できることが可能となることを意味します。従って顧客視点で見れば、導入リスクや検査コストの低減につなげることができるため、利益の最大化が可能となります。上述の開発をタイムリーに完成させることにより、ひいては当社の売上に繋がり、ベンチマークなどの販売に係るコストを低減できることで、利益の確保そして企業価値の増大に大きく結びつくものと考えております。
今後、検査装置事業は全般に競争が激しくなることが予想されますが、当社としては、中国並びに台湾をメインマーケットと捉え、武漢精測電子集団股份有限公司グループ会社内の関係を強化し、台湾のVICCOM社の協力を得ながら、途切れることのない、ベンチマークを継続し営業活動を推進、積極的にお客様との関係の深耕を進めるとともに、既存ユーザーに対する製品のカスタマイズ・サポートを行うことで一層緊密な取引関係を構築、マーケットシェアの拡大を目指す方針であります。
しかしながら、競合他社がさらに経営資源を投入した場合、あるいは国内外で新たな企業の参入があった場合には、当社グループの市場競争力及びマーケットシェアに影響を及ぼす可能性があります。
(3)技術革新
当社グループは、イメージセンサー、液晶ディスプレイ(アレイ)、LCD/有機ELドライバIC検査装置の販売並びに技術サポートを行っておりますが、これらデバイスの製造過程、あるいは検査手法に将来、予想もされないような劇的な技術革新が生じ、当社グループがこれに対応できない場合、現製品の需要減少などにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。
(4)特定の販売先への依存について
当社グループは2023年9月より中国における営業戦略を見直し、今まで代理店営業に頼っていた体制から直接営業を中心とした営業体制への変更を実施し、第4四半期から翌期に向けて営業活動を進めております。日本における販売はウインテスト株式会社を窓口とし、主たる市場と考える中国・台湾向けの販売は中国の当社子会社であるウインテスト武漢を窓口とし、営業機能強化とリスクの分散を進めております。
当社グループの日本国向けの販売と中国・台湾向けの販売の比率は、当連結会計年度にて凡そ4:6となっており、未来において政治的に大きな変化が発生したような場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)運転資金負担
当社グループの事業に関しては、検査装置の受注、部材購入から納品、検収までに約半年から約1年の期間がかかる場合があります。また、その売上高は大規模なシステムになると、数千万円から1億円程になり、それらの支払方法の多くは、ファクタリングや国際手形LCなどであります。一方、仕入先及び外注先に対する買掛金の支払いは、検収後約1か月後となっております。
このような事業特性上、当社グループには絶えず運転資金負担が発生し、大量の受注が集中した場合には、相当額の運転資金負担が予測されます。
(6)仕入先、外注先との関係について
当社グループと、仕入先、外注先との関係は良好でありますが、取引先の信用リスクを含む何らかの理由で現仕入先、外注先との関係を維持できなくなった場合は、代替委託先の選定及び技術指導にある程度の時間を要し、出荷スケジュールに遅れが発生する可能性があります。また、業容を拡大していく上で安定的な外注先の確保ができない場合には、当社グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。
(7)M&Aに関するリスク
当社グループは、成長戦略のひとつとして、今後、市場拡大が見込まれる汎用ロジック検査分野、メモリーデバイス検査分野、それらに加えて、中長期目標としてパワーデバイス検査装置分野への参入を目的に、当該分野におけるM&Aによる企業価値の向上を計画してまいります。
M&Aの実施に当たっては、事前に収益性や投資回収可能性に関する十分な調査及び検討を行っておりますが、買収後における事業環境の変化や想定外の事態の発生等により、買収事業が当初の目標どおりに推移せず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループは、半導体市場の減速の影響により、前連結会計年度における売上高は210,315千円となり、営業損失693,502千円、親会社株主に帰属する当期純損失686,241千円を計上いたしました。なお、営業キャッシュ・フローは、613,481千円のマイナスとなりました。
当連結会計年度における半導体検査装置業界は、 2022年後半から続く民生半導体の過剰在庫によるダブつきによる下押し要因によって、メモリーをはじめとして大半の半導体部材、製品の出荷はマイナス成長となりました。WSTSなどのアナリストの予測によると、半導体の過剰在庫解消は、当初2023年度半ばには解消されるとのことでしたが、予測は大きくずれ込み、期待されたダブつき解消は、2023年末まで引きずる形となりました。その結果、半導体製造工場は生産調整を余儀なくされ工場製造装置稼働率は大きく低下、2023年度は、新規設備投資の見送りを決める半導体製造工場が多く、当社においても納期調整要求や新規受注見送り等の影響が出る状況となりました。以上の状況は、当社グループの事業活動に大きく影響し、予定していた追加受注及び売上は一部において2024年以降となりました。
以上より、当連結会計年度の売上高は407,449千円と前期より増加し回復過程にあるものの、営業損失は558,459千円となり、親会社株主に帰属する当期純損失を554,572千円計上しております。また、営業キャッシュ・フローは、558,267千円のマイナスとなりました。
上記のとおり、継続的な営業損失及び営業キャッシュ・フローのマイナスが発生している状況にあり、当社グループには継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。
当社グループはこうした状況を早期に解消又は改善すべく、以下の対応策を継続して実施しております。
事業施策
1.中国国内での受注販売活動の促進
上述のように、当連結会計年度の半導体業界は、過剰在庫を十分に解消できておりません。その結果、OSAT(「Outsourced Semiconductor Assembly and Test」の略で、半導体の組立やテストといったいわゆる半導体製造の後工程を専門とする企業のことを言います。)は、薄型パネルを含めたPC等の組立用半導体部材の在庫調整を急ぐデザインハウスの計画修正を受ける形で設備投資を抑制しており、市場は2023年度の新規設備投資を控え、2024年度予算に組入れる様相です。しかし、2024年以降の半導体市場は、中長期的に見ますと、各国政府の進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)のさらなる進展や脱炭素化推進に向けた取り組み、自動運転や5G、6Gなどの高速通信環境がもたらす新しいイノベーション、特にChatGPTに代表されるA.I.技術の台頭が大きく取上げられ、対応する半導体を含め、新しい技術が急速に開発・開拓され、広範な需要に支えられ伸長するものと想定されております。
当社グループが「主力装置」と位置付けるLCDドライバIC検査装置は、液晶パネルに使われるLCDドライバICの検査に使用されており、また、それら情報端末ではLCDドライバICだけではなく、当社が得意とするCMOSイメージセンサーIC、ロジックICなど周辺半導体デバイスの需要も大きな伸びが期待される分野です。当社の主力検査装置WTS-577SRにつきましては、2021年から販売を開始し、装置の貸出しを伴うベンチマークに積極的に取組み、半導体製造工場から量産ラインへの投入評価をいただくことができました。新規の引合は前年度より伸びつつあるものの、上述の半導体業界の状況から、工場の稼働は未だ本格化しておらず、受注済みの装置を含む受注・出荷・売上並びに、国内顧客からの新規受注は、一部において設備投資が再開される2024年を予定しております。
今後、当社連結子会社のウインテスト武漢との協力体制強化を土台にし、武漢精測グループ並びに台湾代理店との協力関係を推し進め、営業活動を見直してまいります。さらに、ウインテスト武漢においては、コストの削減と顧客対応力の両方を強化、更なる最終組立工程の製造品質の向上に取り組み、中国国内市場への深耕を図ってまいります。
2.技術開発の強化
先端ロジックIC検査装置(1024チャンネル、875Mbps)に関しては、国内、台湾、中国顧客向けを想定した開発を継続しており、多くの部分を現在開発中の次世代LCDドライバー検査装置と共用することで、より広範囲のロジックIC検査に対応できるように計画し、協力企業とともに2024年にベンチマークを終了する予定です。
また、新たな収益の柱を構築するための成長戦略として、2025年までに当社グループがこれまで培ってきた検査技術や画像処理技術、高精度センサー技術及びデータ解析技術を応用しつつ外部専門会社と協力し、今後の市場拡大が見込まれる5Gとその後の6G通信規格の台頭とともに注目を集めるパワーデバイス検査分野への進出を目指し、M&Aなども視野にシナジーの高い事業会社との資本・業務提携を積極的に進めることにより、当該分野への新規参入及び対応可能検査範囲の拡充と展開を図ることで、収益基盤の拡充に取り組んでまいります。
3.隣接領域の展開と製品化
検査装置向け工場FA化機器技術(「自重補償機構技術」)、当該技術については、学校法人慶應義塾大学慶應義塾先端科学技術研究センターと共同開発を進めており、特許等の申請については終了しております。当社は、当該技術により、当社の検査装置とウエーハ搬送装置との間のドッキングアダプター(以下「ポゴタワー」という。)の着脱(約25㎏~30㎏)をオペレータ一ひとりで簡単に安全に行うための補助アーム(以下「マニピュレータ」という。)を製品化しようと考えており、ロボットを得意とする専門工場に依頼し量産製造の準備を行っております。その後、「物流の2024年問題」として社会問題化されております物流搬送市場におけるトラック向け補助装置への応用製品化を目指しております。
奈良県立大学と進めております脈波(BCG,ECG)を利用したヘルスケア管理システムは、現在特定のお客様への試験販売を継続しつつ同大学並びに株式会社TAOS研究所とアライアンスを継続し機能の強化を進めており、当面は病院、介護施設への販売をいたします。
水素ナノバブルイオン洗浄水に関しましては、装置製造元と提供方法について協議を続けてまいりました結果、装置の大幅な小型化に成功したことにより、小規模BtoB又はBtoC向けとして、装置単体の販売を計画し、また大規模BtoB向けには装置のレンタルを含む販売を計画しております。詳細が決まり次第、お知らせいたします。
財務施策
財務面について、当連結会計年度においては、財務基盤の安定化を図るために、2023年1月13日開催の取締役会において、GFA株式会社を割当先とする第三者割当による新株予約権の発行を決議し、2023年6月21日までに新株予約権の発行及び行使により、433,338千円の資金調達を実施いたしました。また、同目的のために、2023年9月15日開催の取締役会において、楽言海外国際(香港)有限公司を割当先とする第三者割当による新株式の発行を決議し、2023年10月19日までに399,921千円の資金調達を実施いたしました。
これにより、今後の半導体検査装置事業に必要な中国における生産拠点整備資金及び次世代テストシステム等の開発資金、運転資金並びに新規事業の展開資金を確保いたしました。しかし、新株予約権行使による資金調達が、昨今の株価低迷により当初計画した調達予定額に達しなかったこと、上述のとおり新規設備投資の遅れが想定より長期にわたったことから、売上及び入金は一部翌期に持ち越しとなり、運転資金となる現預金が計画より減少することとなりました。
上記の状況から、財務基盤を強化するため、2024年2月19日の取締役会の決議において、GFA株式会社を借入先とする資金の借入を決議いたしました。また、同目的のため、2024年2月20日の取締役会の決議において、楽言海外国際(香港)有限公司を借入先とする資金の借入を決議いたしました。借入の詳細に関しましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な後発事象)」をご覧ください。また、GFA株式会社を割当先とする第三者割当による新株予約権の発行及びその行使による運転資金の調達を見込んでおります。 更に、筆頭株主である武漢精測と諮りながら、同社グループからの資金調達を実施してまいります。
以上の施策をもって抜本的な改善をしていく予定でおりますが、2023年度においては、民生半導体の過剰在庫を嫌気した生産調整、設備投資の大幅な抑制という事態となったため、当社がメイン市場とする海外受注並びに受注済み検査装置の出荷、売上は、新規設備投資の再開される2024年度以降となります。
事業施策及び財務施策の実現可能性は市場の状況、需要動向等の今後の外部環境の影響を受けること、上述の新株予約権の発行及び行使による資金調達及び武漢精測グループからの資金調達については確約されるものではないことから、現時点においては継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。
なお、連結財務諸表は、継続企業を前提として作成されており、継続企業の前提に関する重要な不確実性の影響を連結財務諸表に反映しておりません。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当社グループの半導体検査装置事業については、2022年後半から続く民生半導体の過剰在庫によるダブつきによる下押し要因によって、メモリーをはじめとして大半の半導体部材、製品がマイナス成長となりました。WSTSなどのアナリストの予測によると、半導体の過剰在庫解消は、当初2023年度半ばには解消されるとのことでしたが、予測は大きくずれ込み、期待されたダブつき解消は2023年末まで引きずる形となりました。その結果、半導体製造工場は生産調整を余儀なくされ工場製造装置稼働率は大きく低下、2023年度は、新規設備投資の見送りを決める半導体製造工場が多く、当社においても納期調整要求や新規受注見送り等の影響が出る状況となりました。以上の状況は、当社グループの事業活動に大きく影響し、予定していた追加受注及び売上は一部において2024年以降となりました。
以上より、当連結会計年度の売上高は407,449千円と前期より増加し回復過程にあるものの、営業損失は558,459千円となり、親会社株主に帰属する当期純損失を554,572千円計上しております。また、営業キャッシュ・フローは、558,267千円のマイナスとなりました。
なお、セグメント区分については、従来報告セグメントの「半導体検査装置事業」及び報告セグメントに含まな
い「その他」の2つにセグメントを区分しておりましたが、当連結会計年度より「半導体検査装置事業」の単一セグメントに変更しております。
これは、「その他」の事業セグメントに含まれておりましたオーディオ事業を2022年8月末付にて、株式会社データゲート(大阪府大阪市北区)に事業譲渡を行ったことにより、「その他」に含まれていた事業がなくなったためであり、報告セグメントを「半導体検査装置事業」の単一セグメントとして管理することが適切と判断したためであります。
②財政状態の分析
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,949,076千円となり、前連結会計年度末に比べ71,775千円の増加となりました。これは主に現金及び預金が83,185千円増加したことによるものです。
固定資産は24,588千円となり、前連結会計年度末に比べ354千円の減少となりました。これは主に投資その他の資産が354千円減少したことによるものです。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は164,831千円となり、前連結会計年度末に比べ208,903千円の減少となりました。これは主に短期借入金が157,030千円減少したことによるものです。
固定負債は143,651千円となり、前連結会計年度末に比べ32,140千円の減少となりました。これは主に長期借入金が返済により32,064千円減少したことによるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,665,183千円となり、前連結会計年度末に比べ312,465千円の増加となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純損失により利益剰余金が554,572千円減少したものの、新株予約権の行使及び新株の発行により資本金及び資本剰余金が各々416,629千円増加したことによるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は361,665千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローとそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果減少した資金は558,267千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純損失が552,095千円となったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果減少した資金は300千円となりました。これは主に、無形固定資産の取得による支出が300千円あったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果増加した資金は641,025千円となりました。これは主に、短期借入金の返済による支出が159,998千円あったものの、新株予約権の行使による株式の発行による収入が428,424千円あったこと及び株式の発行による収入が399,921千円あったことによるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループは半導体検査装置事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
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半導体検査装置事業(千円) |
160,455 |
△48.3 |
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合計(千円) |
|
|
(注)金額は、製造原価によっております。
b.受注実績
当社グループは半導体検査装置事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の受注実績は、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
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受注高 |
受注残高 |
|||
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金額(千円) |
前年同期比(%) |
金額(千円) |
前年同期比(%) |
|
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半導体検査装置事業 |
335,317 |
△5.6 |
768,102 |
△8.6 |
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合計 |
335,317 |
|
768,102 |
|
(注)上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
c.販売実績
当社グループは半導体検査装置事業の単一セグメントであり、当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
半導体検査装置事業(千円) |
407,449 |
93.7 |
|
合計(千円) |
407,449 |
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(注)1.最近2連結会計年度の主要な輸出先及び輸出販売高及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
日本 |
168,915 |
80.3 |
239,604 |
58.8 |
|
台湾 |
5,744 |
2.7 |
31,301 |
7.7 |
|
中国 |
32,196 |
15.3 |
133,622 |
32.8 |
|
インドネシア |
3,459 |
1.7 |
2,920 |
0.7 |
|
合計 |
210,315 |
100.0 |
407,449 |
100.0 |
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。
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相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
キヤノン株式会社 |
43,762 |
20.8 |
- |
- |
|
武漢智芯澤科技発展有限公司 |
30,380 |
14.4 |
- |
- |
|
日清紡マイクロデバイス株式会社 |
- |
- |
78,000 |
19.1 |
|
沖エンジニアリング株式会社 |
- |
- |
58,510 |
14.4 |
|
蔚華電子科技術(上海)有限公司 |
- |
- |
56,521 |
13.9 |
|
合肥宏芯達微電子有限公司 |
- |
- |
50,837 |
12.5 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表及び財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表及び財務諸表の作成にあたりまして、決算日における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に棚卸資産評価損、固定資産の減損、関係会社出資金の評価、貸倒引当金及び製品保証引当金であり、継続して評価を行っております。
なお、見積り及び判断・評価については、過去実績や状況に応じて合理的と考えられる要因等に基づき行っておりますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
③経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 1経営方針 (2)目標とする経営指標」記載のとおり、
当社は、「売上高経常利益率20%以上の確保、配当性向の30%の回復」を目標としております。当連結会計年度
においては、売上高経常利益率はマイナスとなっており、配当は行っておりません。その主な理由は、半導体不足に端を発する有力顧客であるデザインハウスの新デバイスのリリース遅延とOSATのライン稼働率の急激な低下、それに伴う売上と受注時期のずれ込みにあると考えております。
対応策に関しましては「3 事業等のリスク (8)継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況を改善するための対応策等」に記載のとおりであり
ます。
④経営成績に重要な影響を与える要因について
「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
⑤資本の財源及び資金の流動性についての分析
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主な資金需要は、原材料や商品の仕入、製造費、販売費及び一般管理費などの運転資金であります。また、これらの主な資金調達としては、営業活動及び新株予約権の行使による株式発行などの自己資金、金融機関等からの借入によっております。
⑥経営者の問題認識と今後の方針について
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
該当事項はありません。
(1)イメージセンサー検査装置WTS-311NX並びに次世代イメージセンサー検査装置用光源
新規中国方面の顧客ニーズに対応すべく、更なる高速データ転送方式の開発と画像処理機能の拡充を行う計画であり、当該開発品は、開発中の次世代マルチプラットフォーム装置WTS-9000シリーズにも組み込み可能とします。また、2022年3月にリリースを完了した新型高性能イメージセンサーデバイス検査用光源装置WLS-150の更なる高性能化を行い、2023年3月に受注を頂き出荷を行いました。加えて2023年6月より専用光源WLS-150専用TOF光源(光のドップラー効果を利用して距離などを測る光源とセンサーのこと)の開発に着手し、2024年第3四半期を目標に完成させる予定です。
(2)WTS-577SR/SXシリーズ
WTS-577SRシリーズLCDドライバー検査装置の後継機になるWTS-577SXにつきましては、次世代LCDドライバー検査装置用として開発の完了した高速ドライバーや、超高速光データ伝送技術などの新機能リソース(開発中のものを含め)を、被検査デバイスの高速化、高機能化対応に合わせ最適な検査を提供するために、WTS-577SXへ搭載可能として既存又は新規顧客へ提供を開始してまいります。更に現在開発中の次世代検査装置WTS-9000C/Sでは、筐体デザインを一新し、装置内に実装する機能ボードによって、幅広い被検査デバイスに対応できる設計(マルチプラットフォーム)とし、最大チャンネル搭載数も現在の2304チャンネルから大幅に拡張し、同時測定数を大きく増やせる3,500チャンネル超えを計画しています。今後とも顧客の要望に基づいた仕様を実現、且つ低消費電力、加えて装置コストを抑えた設計とする計画です。開発中の新装置は、今後更に伸びるLCDドライバーマーケットは勿論、同検査装置の優れたデジタル検査機能を生かした、先端ロジック検査装置分野、メモリーIC検査分野等に参入を計画し開発しております。
(3)検査装置向け工場FA化機器技術「自重補償機構技術」の開発
検査装置向け工場FA化機器技術(「自重補償機構技術」)、当該技術については、学校法人慶應義塾大学慶應義塾先端科学技術研究センターと共同開発を進めており、特許等の申請については終了しております。当該技術は当社の検査装置とウエーハ搬送装置との間のドッキングアダプター(以下「ポゴタワー」という。)の着脱(約25㎏~30㎏)をオペレータ一ひとりで簡単に安全に行うための補助アーム(以下「マニピュレータ」という。)で製品化を目指しており、ロボットを得意とする専門工場に依頼し量産製造の準備を行っています。その後、応用製品として、手始めに「物流搬送市場」におけるトラック向け補助装置への応用製品化を考えております。
(4)ヘルスケア管理システム
奈良県立大学と進めております脈波(BCG,ECG)を利用したヘルスケア管理システムは、現在特定のお客様への試験販売を継続しつつ同大学並びに株式会社TAOS研究所とアライアンスを継続し機能の強化を進めており、当面は病院、介護施設への販売をいたします。なお、当該ヘルスケア管理システム(センサー便座)の販売に関しましては、株式会社TAOS研究所に一任する方向です。なお、当該ヘルスケア管理システム(センサー便座)の販売に関しましては、株式会社TAOS研究所に一任する方向です。
(5)研究開発費の総額
当連結会計年度の研究開発活動は、主として半導体検査に関するものであり、研究開発費の総額は
なお、当社グループは半導体検査装置事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。