第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、創業以来、糖化業界及びフェノール樹脂業界において豊かな創造力により独自の技術を築いてまいりました。
 企業理念として「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会創りに貢献する」を掲げ、経営基盤の充実に力を注ぎ、顧客を中心としたステークホルダーとともに繁栄することを目指してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、経営環境に応じた経営効率の向上を図り、株主資本の効率的活用と収益性の観点から自己資本利益率(ROE)の向上と売上高営業利益率8%を目指すことを経営指標としております。
 なお、当連結会計年度においては、ROE2.9%、売上高営業利益率5.8%でありました。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、激変する経営環境のなか、安定的な収益力の基盤を確立するため国際化に対応した設備投資、技術開発のための先行投資を継続して行ってまいりました。今後は、より一層マーケティングを強化し新たな需要の創出を進めてまいります。また、基盤技術・生産技術・応用技術力を高め、事業基盤の強化を図ると同時に、事業体制強化のため、積極的に人材を育成することで収益性・成長性を備えた魅力あるGCIグループを目指してまいります。

 

(4) 会社の対処すべき課題

当社グループでは、「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会創りに貢献する」という経営理念のもと、下記重要課題の実現に向けて取り組んでまいります。

 

① 食品事業の構造改革

食品事業の立て直しに向け、糖化技術を活かした機能性食品分野への開発強化を図るとともに、化学品事業との相乗効果を活かした新規製品の開発を推進し、抜本的な構造改革に取り組んでまいります。

 

② 電子材料向け分野の拡大

注力分野である電子材料関連製品の販売量は年々増加しておりますが、高集積化や低メタル化など最先端ニーズに対応するための技術開発に取り組み、戦略的な設備増強を継続してまいります。

 

③ グローバル展開の強化

2019年4月に米国現地法人にて摩擦材用特殊フェノール樹脂「ミレックス」の販売事業を立ち上げました。今後は日本及びタイ、インド、ドイツ、アメリカの海外4拠点を活用し、顧客サポートの拡充と新規成長市場の探索を推進してまいります。

 

④ CSRへの取り組み

持続可能な世界を実現するための国際社会全体の開発目標であるSDGs(Sustainable Development Goals)の内容を踏まえ、具体的な環境目標を定め、継続的な省エネ活動の展開及び環境配慮型製品の開発を進めるとともに、地域との関わりを大切にして、その発展に貢献してまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループでは、経営活動に脅威となる事象をリスクと認識し、そのリスクの顕在化を未然に防止するなど、経営への影響を最小限にとどめるよう対応に努めていく方針であります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)原材料の価格変動について

化学品事業の主原料であるフェノールの購入価格は、原油の市況に左右されます。また食品事業の主原料である澱粉の購入価格は、穀物等の市況に左右されます。

これらは、当社グループ製品の材料費のコストアップ要因となります。このコストアップに対して原価低減や製品価格への転嫁により対処していく考えでありますが、原材料価格が高騰した場合は、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

(2)天候不順等について

飲料向け異性化糖などの食品事業は、天候による影響を受けます。冷夏などの天候不順による個人消費動向の変化が、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

(3)保有有価証券について

当社グループは、事業政策上取引先等の株式の相互保有と余剰資金運用の一環として有価証券投資を行っております。運用及び投資対象銘柄につきましては、安全性を基本としておりますが、証券市場における市況の悪化等によっては、当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

(4)災害等による影響

当社グループは、製造ラインの中断によるマイナスの影響を最小限にするために、定期的に設備の点検、メンテナンスを行っております。しかし、当社グループの生産拠点である群馬工場及び滋賀工場等に大規模災害等が発生することによる悪影響を完全に防止できる保証はありません。地震、風水害、停電等による製造ラインの中断、さらには販売活動を行っている国々で発生した各種災害による経済活動に対する大きな影響は、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)海外子会社について

タイ王国、インド共和国及びアメリカ合衆国の海外子会社は、当社グループの化学品事業における製品を製造・販売しております。それぞれの国内において予期しない法律又は規制の変更や、政情不安・テロ・暴動・戦争や自然災害等不可抗力による災害が発生した場合、製造・販売に支障をきたし当社グループの業績及び財政状況に悪影響を及ぼすおそれがあります。
 また、為替について、想定を超える円・バーツ間、円・インドルピー間及び円・米ドル間の為替相場変動が発生した場合に当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼすおそれがあります。

 

但し、影響を与えるリスクは、これらに限定されるものではありません。

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(企業会計基準第28号 平成30年2月16日)等を当連結会計年度の期首から適用しており、財政状態の状況については、当該会計基準等を遡って適用した後の数値で前連結会計年度との比較・分析を行っております。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用及び所得環境の改善に伴う個人消費の拡大や、企業収益が改善する中で設備投資が増加し、全体としては回復基調で推移いたしました。一方で、米中貿易摩擦の影響による中国経済の減速懸念など、海外経済の先行きは不透明な状況が続いております。
 このような経済環境のもと、当社グループは、事業環境の変化に対応し、製品の高付加価値化に取り組み、新規顧客の獲得やきめ細かい技術サポートを行うなど、更なる事業基盤の強化を図ってまいりました。その結果、当社グループの売上高は前年同期比4.7%増加27,636百万円となりました。
 利益面では、償却負担の増加、原材料価格の上昇や物流コストの増加等の影響を受けたことにより、営業利益は前年同期比34.4%減少1,614百万円、経常利益は前年同期比32.2%減少1,836百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比25.7%減少1,176百万円となりました。なお、食品事業製造設備の減損損失99百万円を特別損失に計上しております。
 原材料価格の上昇は今後も当社グループの経営成績に影響を与える要因と考えられますが、さらなる事業基盤の強化を図り、ROEの向上と売上高営業利益率8%を目指してまいります。   

 

 セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

[化学品事業]

 化学品事業においては、電子材料向け樹脂、自動車関連向け樹脂、建設機械向け樹脂ならびに高機能繊維が堅調に推移いたしました。その結果、売上高は前年同期比5.5%増加22,824百万円となりました。利益面では、償却負担の増加、原材料価格の上昇や物流コストの増加等の影響を受けたことにより、セグメント利益(営業利益)は前年同期比23.8%減少1,813百万円となりました。
 原材料価格の上昇及び設備投資による減価償却費等負担増が今後も当事業の業績に影響を与える要因となります。

[食品事業]

 食品事業においては、飲料向けの異性化糖がほぼ前年並みで推移した結果、売上高は前年同期比1.2%増加4,565百万円となりました。利益面では、原材料価格の上昇や物流コストの増加等の影響を受けたことにより、セグメント損失(営業損失)は353百万円(前年同期84百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。 
 原材料価格の上昇及び価格競争の激化等が今後も当事業の業績に影響を与える要因となります。

[不動産活用業]

 不動産活用業においては、ほぼ前年並みで推移した結果、売上高は前年同期比0.0%増加245百万円、セグメント利益(営業利益)は前年同期比6.5%減少153百万円となりました。

 

 

  生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
 ① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

化学品事業

21,676

+3.3

食品事業

3,929

+2.6

不動産活用業

合計

25,606

+3.2

 

(注) 1 金額は、販売価格によっております。

2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

 ② 受注実績

当社グループは受注見込みによる生産方式をとっております。

 

 ③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

 

化学品事業

22,824

+5.5

 

食品事業

4,565

+1.2

 

不動産活用業

245

+0.0

 

合計

27,636

+4.7

 

(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

 

(2) 財政状態

当社グループの当連結会計年度における資産合計は前連結会計年度末と比べ1,156百万円減少し、51,048百万円となりました。これは、主に無形固定資産及び有形固定資産が増加したものの、現金及び預金や投資有価証券が減少したことによるものです。製品の信頼性及び品質向上のため、積極的に設備投資を実施したことにより上記の結果となっております。
 負債合計は前連結会計年度末と比べ948百万円減少し、9,302百万円となりました。これは、主に借入金や未払法人税等が減少したことによるものです。設備投資のための借入金の返済及等により上記の結果となっております。
 純資産合計は前連結会計年度末と比べ207百万円減少し、41,746百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したものの、有価証券の時価下落によりその他有価証券評価差額金が減少したことによるものです。継続して当期純利益を計上したものの保有している有価証券について、前連結会計年度からの証券市場の下落を受け評価益が減少したことにより上記の結果となっております。

 

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、2,227百万円の収入と前連結会計年度に比べ453百万円の収入の増加となりました(前連結会計年度1,773百万円の収入)。これは、主に税金等調整前当期純利益は減少したものの、売上債権の増加額の減少とたな卸資産の増加額の減少、法人税等の支払額の減少によるものです。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、254百万円の支出と前連結会計年度に比べ3,705百万円の支出の減少となりました(前連結会計年度3,959百万円の支出)。これは、主に事業譲受による支出の増加があったものの、3ヶ月を超える定期預金の払戻による収入の増加によるものです。 

財務活動によるキャッシュ・フローは、1,157百万円の支出と前連結会計年度に比べ142百万円の支出の減少となりました(前連結会計年度1,300百万円の支出)。これは、主に長期借入金の返済による支出の減少と自己株式の取得による支出の減少によるものです。
 この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前年同期比781百万円(16.4%)増加5,560百万円となりました。上記より、当連結会計年度では運転資本の回収が前連結会計年度からずれ込んだことが増加要因の一つでありましたが、経営活動で獲得したキャッシュについては、積極的に設備投資を行い、また、安定配当を実施いたしました。さらに短期間で資金需要のない余資については、安全性の高い債券等で運用をいたしました。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
 当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
 短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資につきましても、自己資本を基本としておりますが、必要に応じて金融機関からの長期借入で調達する方針であります。 

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、主力製品であるフェノール樹脂及び澱粉糖製品分野でのコア技術の深耕及び蓄積を継続するとともに、従来の素材開発中心から技術集約型である川下材料分野への用途展開を図り、それに必要な材料設計技術を新規コア技術として位置づけ、その獲得及び応用展開を目指しております。

また、同時に今後成長が見込まれる環境低負荷材料、高付加価値材料及び機能性食品関連材料の新製品開発に注力しております。

現在、当社においてはこれまでの開発及び営業の連携とともに開発チーム内の連携を一層強化した体制をとり、よりタイムリーな顧客ニーズの取り込み及びシーズの開発を推進しております。当期売上高に対する新製品売上比率は22%(当連結会計年度末現在、上市後5年以内の製品)でした。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,293百万円であり、セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

 

[化学品事業]

電子材料、鋳物材料、機能性材料、複合材料及び環境対応材料等の材料開発に鋭意取組んでおり、材料設計技術としての高分子構造設計、アロイ、ブレンド、成形加工及び実用性評価技術に注力し、半導体、電気・電子、自動車及び工業材料分野への新製品上市を進めております。

当連結会計年度では、電子材料分野においては、FPD及び半導体分野に使用されるレジスト材料について、国際競争力のある製品開発及び生産技術に注力しております。今後伸長が期待される有機EL向け絶縁膜材料及び半導体向けハードマスク材料開発は、高性能化、高品質化を加速し、次世代材料開発を鋭意強化しております。
 また、2020年実用化に向けた新技術として、4K及び8K放送、自動運転(ミリ波レーダー等のセンシング技術)、ネットワーク分野での5Gがあります。電子機器に求められる特性として電気信号の超高速、高密度大容量、低遅延高信頼があり、これらを実現するために材料に求められる低誘電、高耐熱、低弾性等の性能向上に応える高機能樹脂の開発にも注力しております。

一方で、現在環境配慮型製品の開発、顧客提案が工業材料各用途で進行しています。摩擦材(ブレーキ用途)用樹脂では特殊フェノール樹脂「ミレックス」を軸に、さらに環境対応型樹脂の開発や顧客提案を進めております。また、これまで培ってきた化学品と糖に関する技術を融合した糖ケミカル製品の開発にも力を注いでおり、一例として断熱材料用バインダの実用化に成功しております。

鋳物材料としては産官学国家プロジェクトにおける砂型積層用3Dプリンタ材料のバインダ及び砂材料開発に成功し、当社は、国立研究機関や共同開発企業と共に「超高速砂型積層造形装置」で第48回日本産業技術大賞「審査委員会特別賞」を受賞いたしました。現在、構築した技術を背景に、砂材料の事業化を進めております。

カイノール繊維については、製造技術、炭化技術及び賦活技術の向上に努め、さらなる材料開発を進めております。

当連結会計年度に係る研究開発費は1,113百万円であります。

[食品事業]

現在、穀物糖化機能食品材料の川下分野への材料開発を行っており、酵素応用技術、糖化パイロットプラント及び高度な分析技術等を駆使して技術集約型の新製品開発を進めております。
 当連結会計年度では、新製品マルトトリオース(商品名ピュアトース)について用途開発を継続しており、機能解析、レシピ提案に引き続き注力しております。さらには応用製品である冷凍用もちソースを開発、上市しました。冷凍下でもちもちした食感をお楽しみ頂ける商品となっております。また、各種機能性シロップとして大麦β-グルカン液状品等を開発しており、大学等の機関と連携し機能性発現に関する詳細な研究を行っています。

当連結会計年度に係る研究開発費は179百万円であります。