文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創業以来、糖化業界及びフェノール樹脂業界において豊かな創造力により独自の技術を築いてまいりました。
企業理念として「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会創りに貢献する」を掲げ、経営基盤の充実に力を注ぎ、顧客を中心としたステークホルダーとともに繁栄することを目指してまいります。
当社グループは、経営環境に応じた経営効率の向上を図り、株主資本の効率的活用と収益性の観点から自己資本利益率(ROE)の向上と売上高営業利益率8%を目指すことを経営指標としております。
なお、当連結会計年度においては、ROE3.4%、売上高営業利益率7.2%でありました。
当社は、注力事業分野である電子材料関連素材の技術開発と製造設備を始めとする経営資源について戦略的な投資を続け、直近5年間で電子材料関連製品の売上増加は30%を超えることができました。
電子材料関連や派生する先端材料素材、また3Dプリンタ関連素材や新たに事業買収した摩擦材用特殊フェノール樹脂(ミレックス)などの成長事業分野に対しては、引き続き積極的な経営資源の投入を行い、グループ全体での拡販活動を推進してまいります。
しかしながら足元においては、激甚化する気象災害の繰り返しや世界的な新型感染症の蔓延など、当社グループを取り巻く事業環境は全般的に不透明さを増す状況にあります。
このような状況のもと、製造メーカーとしての基本に立ち返り、業務の合理化、生産効率の改善や製造技術の見直しに積極的に取り組み、強固な経営基盤を構築してまいります。
併せて、中長期的に研究開発活動を強化し、当社の基盤である化学と食品技術を融合した「グリーンケミストリー」の実現により、環境問題などの社会的課題へのソリューション提供を目指してまいります。
当社グループでは、「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会創りに貢献する」という経営理念のもと、下記重要課題の実現に向けて取り組んでまいります。
国内の甘味料業界は、甘味離れによる需要減少や市場の成熟化により、中長期的には大きな成長は見込めない事業環境にあり、異性化糖・水あめなど糖化製品が大半を占める現在の当社の食品事業の収益性も、近年その影響を大きく受けております。
そのような状況の中、食品事業の立て直しに向け、従来の糖化製品については引き続き事業の見直しを図ると共に、糖化技術を活用した機能性食品分野への開発強化を図り、新たな価値の創造に取り組んでまいります。
また、化学合成技術を活用した、「糖の構造」を基盤とする新たな製品開発を推進し、地球温暖化など環境問題への対応に取り組んでまいります。
飛躍的に進展する社会のデジタル化は、5G導入による生産現場のIoT化やAIを活用したマテリアルズ・インフォマティクスによる材料開発など、産業構造そのものを大きく変貌させ、また、それを支える電子材料は今後も大きく需要を伸ばすことが予想されます。
引き続き、電子材料向け素材を注力事業分野とし、戦略的な経営資源の増強を継続すると共に、高集積化や低メタル化などの最先端ニーズに対応するための技術開発を強化し、大学や外部研究機関との共同研究への取り組みも拡大してまいります。
人口減少や高齢化などによる産業構造の変化に対しては、作業現場における「省力化・自動化」、「工程時間短縮」、「作業環境改善」など、また、食生活における「安心安全」、「健康増進」、「食品ロス削減」など根源的な顧客ニーズへのソリューション提供を持続的な事業機会と捉え、化学品における3Dプリンタ関連素材や環境対応樹脂製品、また、食品における非遺伝子組み換え素材や冷凍耐性強化素材などの製品開発を強化してまいります。
当社はGCIグループCSR方針を定め、持続的な環境配慮と地域貢献を基軸として、グループ全体での活動を推進してまいりました。GCI単体の2019年度実績としては、エネルギーを起源とするCO₂ 排出量を2012年対比で20%削減するなど、継続的な省エネ活動に努めております。
また、糖由来の原料を利用した住宅断熱材用のバインダーや、和菓子の賞味期限を延長させる甘味素材などの開発に取り組み、グループネットワークを通じ海外でも市場展開を進めてまいりました。
引き続きSDGsへの取り組みを深め、企業としての社会的責任を果たすと共に、海洋廃プラ問題や食品ロス問題など様々な社会的課題を事業機会と捉え、当社グループの目指すグリーンケミストリーによるソリューションの提供を実現し、社会と共に持続的成長を歩む経営を追求してまいります。
当社グループを取り巻く事業環境は世界的な新型コロナウイルス感染症の拡大など、全般的に不透明さを増す状況であります。このような状況下で、当社グループでは事業継続のための感染対策として、マスクの着用及び手洗いやアルコール消毒の奨励、不要不急の出張の禁止、一部在宅勤務等を実施しております。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには、重要項目ごとに以下のようなものが挙げられます。ただしすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、又は重要とはみなされないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
※なお、新型コロナウイルス感染症感染拡大に関しましては、「感染症の蔓延に関するリスク」に含まれるものであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、雇用及び所得環境の改善により回復基調で推移しておりましたが、米中貿易摩擦の長期化や英国のEU離脱問題等による不安定な海外経済に加え、年度終盤に発生した世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、先行きは極めて不透明な状況となっております。
このような経済環境のもと、当社グループは、事業環境の変化に対応し、製品の高付加価値化に取り組み、新規顧客の獲得やきめ細かい技術サポートを行うなど、更なる事業基盤の強化を図ってまいりました。その結果、化学品事業で減収、食品事業で増収となり、当社グループの売上高は前年同期比2.4%減少の26,983百万円となりました。
利益面では、高付加価値製品の拡販等により、営業利益は前年同期比19.9%増加の1,936百万円、経常利益は前年同期比16.6%増加の2,141百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比16.4%増加の1,370百万円となりました。なお、食品事業製造設備の減損損失125百万円を特別損失に計上しております。
新型コロナウイルス感染症の当連結会計年度における当社グループの業績への影響は限定的であると判断しております。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
[化学品事業]
化学品事業においては、電子材料向け樹脂は、液晶向け製品及び有機EL向け製品が堅調に推移したほか、先端材料向け製品の付加価値向上に注力した結果、半導体向け製品が好調に推移しました。一方、建築関連向け樹脂は、非住宅用断熱材向け製品は堅調に推移しましたが、消費税増税による住宅着工件数の減少の影響を受け住宅用断熱材向け製品は低調となりました。また、自動車関連向け樹脂は、ブレーキ用摩擦材向け製品は、海外での新規拡販に注力し増加しましたが、国内の鋳物用樹脂が低調に推移しました。更に建設機械向け樹脂についても、消費税増税の影響や台風等の自然災害により後半は低調に推移しました。以上の結果、売上高は前年同期比3.7%減少の21,981百万円となりました。利益面では、電子材料向け樹脂を中心とした高付加価値製品の拡販等により、セグメント利益(営業利益)は前年同期比9.9%増加の1,992百万円となりました。
[食品事業]
食品事業においては、夏場の天候不順の影響はあったものの清涼飲料向けが堅調に推移し、酒類向け製品も増加したこと及び異性化糖、水あめ製品の販売価格の是正を行った結果、売上高は前年同期比4.2%増加の4,755百万円、セグメント損失(営業損失)は212百万円(前年同期353百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
[不動産活用業]
不動産活用業においては、ほぼ前年並みで推移した結果、売上高は前年同期比0.3%増加の246百万円、セグメント利益(営業利益)は前年同期比1.8%増加の156百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループは受注見込みによる生産方式をとっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における資産合計は前連結会計年度末と比べ422百万円減少し、50,626百万円となりました。これは、主に前連結会計年度末が金融機関の休日であったことから、未決済分の売上債権が当年度に決済されたことにより減少したことによるものです。
負債合計は前連結会計年度末と比べ696百万円減少し、8,605百万円となりました。これは、主に前連結会計年度末が金融機関の休日であったことから、未決済分の仕入債務が当年度に決済されたことにより減少したこと及び返済により借入金が減少したことによるものです。
純資産合計は前連結会計年度末と比べ274百万円増加し、42,020百万円となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び為替レートの変動により為替換算調整勘定が増加したことによるものです。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、4,336百万円の収入と前連結会計年度に比べ2,108百万円の収入の増加となりました(前連結会計年度2,227百万円の収入)。これは、主に売上債権の増減額の減少、法人税等の支払額の減少及び税金等調整前当期純利益の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、748百万円の支出と前連結会計年度に比べ494百万円の支出の増加となりました(前連結会計年度254百万円の支出)。これは、主に有価証券の償還による収入の増加及び有形固定資産の取得による支出の減少があったものの、3ヶ月を超える定期預金の払戻による収入の減少によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,735百万円の支出と前連結会計年度に比べ577百万円の支出の増加となりました(前連結会計年度1,157百万円の支出)。これは、主に自己株式の取得による支出の増加及び前年同期には非支配株主からの払込みによる収入があったことによるものです。
この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前年同期比1,924百万円(34.6%)増加し7,485百万円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資につきましても、自己資本を基本としておりますが、必要に応じて金融機関からの長期借入で調達する方針であります。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響につきましては、次期の業績が見通せない不透明な状況ではありますが、現時点では十分な手元資金を保有しており、さらに、感染拡大等の影響による緊急の資金需要に備え、金融機関と当座貸越契約を締結し、資金流動性を確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結材諸表の作成に当たっては、連結財務諸表に重要な影響を与える見積りを必要としております。見積りにつきましては、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき行っておりますが、この見積りは不確実性があるため実際の結果と異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、主力製品であるフェノール樹脂及び澱粉糖製品分野でのコア技術の深耕及び蓄積を継続するとともに、素材開発で培った強みを材料開発へと展開し材料設計技術の獲得及び応用展開を図り、環境低負荷材料、高機能材料及び機能性食品関連材料の新製品開発に注力しております。
GCIグループ内の連携、開発・営業・製造各部門間の連携とともに、開発本部内の連携を一層強化した体制をとり、市場ニーズの取り込み及び技術シーズの開発を推進しております。当期売上高に対する新製品売上高比率は24%(当連結会計年度末現在、上市後5年以内の製品)でした。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
電子材料、鋳物材料、機能性材料及び環境対応材料等の材料開発に鋭意取り組んでおり、材料設計技術としての高分子構造設計、アロイ、ブレンド、成形加工及び実用性評価技術に注力し、半導体、電気・電子、自動車及び工業材料分野への新製品上市を進めております。
当連結会計年度では、電子材料分野においてはFPD及び半導体分野に使用される感光性材料用途に、国際競争力のある高純度高機能樹脂製品の開発に注力してまいりました。今後さらなる伸長が期待される同市場向けの材料開発に対して、高性能化、高品質化を加速し、次世代材料開発を鋭意強化しております。
また、ネットワーク分野における5G化に伴い、電子機器に求められる特性として、電気信号の高速化、高密度大容量化、低遅延高信頼性が挙げられます。これらを実現するため材料には低誘電、高耐熱、低弾性等の性能向上が求められ、これらの要求特性に応える高機能樹脂の開発、顧客提案にも注力しております。
一方で、当社の基盤である化学と糖に関する技術を融合したグリーンケミストリーの実現により、環境問題などの社会的課題へのソリューション提供を目指し、環境配慮型製品の開発、顧客提案を工業材料各用途で推進しております。前年度断熱材用バインダの実用化を果たしましたが、さらに同技術の他用途展開を図り、製品開発、顧客提案を進めております。
摩擦材(ブレーキ用途)用樹脂では特殊フェノール樹脂「ミレックス」を軸に、環境対応型樹脂の開発や顧客提案を進めております。
鋳物材料としては産官学国家プロジェクトにおける砂型積層用3Dプリンタ材料のバインダ及び砂材料開発に成功し、2019年、「超高速砂型積層造形装置」で第48回日本産業技術大賞「審査委員会特別賞」を受賞いたしました。構築した技術を背景に、材料の量産化を開始、さらなる性能向上と事業拡大を推進中です。
高機能フェノール樹脂繊維「カイノール」については、製造技術、炭化技術及び賦活技術の向上、さらには機能性材料開発を推進しております。
当連結会計年度に係る化学品事業の研究開発費は
[食品事業]
当連結会計年度では、穀物液化糖化技術を活用し、機能性食品分野に対して新たな価値の創造に取り組み、酵素応用技術、糖化パイロットプラント及び高度な分析技術等を駆使して技術集約型の新製品開発を進めてまいりました。
一方で、マルトトリオースを主成分とする保水性糖質素材(商品名「ピュアトース」)について、機能性の追求、レシピ提案を進め、用途開発に引き続き注力しております。
今後はこれらの機能性食品開発に加え、前述のグリーンケミストリー「糖ケミカル」製品拡充、高付加価値化に向け、従来の基盤技術の領域をオーバーラップさせた新たな技術の獲得にも注力してまいります。
当連結会計年度に係る食品事業の研究開発費は