文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創業以来、糖化業界及びフェノール樹脂業界において豊かな創造力により独自の技術を築いてまいりました。
企業理念として「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会創りに貢献する」を掲げ、経営基盤の充実に力を注ぎ、顧客を中心としたステークホルダーとともに繁栄することを目指してまいります。
当社グループは、経営環境に応じた経営効率の向上を図り、株主資本の効率的活用と収益性の観点から自己資本利益率(ROE)の向上と売上高営業利益率8%を目指すことを経営指標としております。
なお、当連結会計年度においては、ROE3.9%、売上高営業利益率8.8%でありました。
新型コロナウイルスの世界的大流行は、今なお断続的な感染拡大を繰り返し、長期化する自粛生活は市場構造や消費者意識に大きな変化をもたらすこととなりました。また身近に迫る気象災害の激甚化は、地球温暖化問題に対する国際的なカーボンニュートラルへの取り組みを加速させ、化石燃料をベースとする既存産業は大きな転換点を迎えていると言えます。
社会生活や事業環境が新たな局面を迎える状況下、当社グループも既存ビジネスモデルの延長線上のみでは持続的な企業成長を描くことは難しいと認識しております。
ものづくりの会社として「生産効率や製造技術の研鑽」、「無駄や不良・廃棄物の削減」を究極まで追求し、業務効率の改善と二酸化炭素排出や消費エネルギーの削減を推進してまいります。
また、効率改善により生み出された経営資源を新たなイノベーション創出に再投入し、持続的成長と社会貢献の両立を目指してまいります。
異性化糖・水あめなどの糖化製品は収益性が低迷する状況が続いておりましたが、生産性の改善や商品構成の見直しを断行し、2021年度以降は継続的な黒字化を目指してまいります。
さらには、当社の酵素糖化技術を活用した「オーツミルクの素」を始めとする穀物糖化液関連製品の上市を進め、食による健康増進に寄与できる製品開発を推進してまいります。
また中長期的には、糖素材を化学の視点で活用する新たな製品開発に取り組んでまいります。
不確実性の高まる社会環境において、社会のデジタル化進行はさらに加速し、それを支える電子材料関連素材は、今後も大きく需要を伸ばすことが予想されます。
経営基盤のさらなる強化を図り、先端電子材料分野への積極的な経営資源の投入よる市場への迅速な対応が、足元の社会貢献に繋がるものと確信しております。
また、「ポスト5G」次世代通信システムの中核要素となる低誘電樹脂の上市など、革新的な技術開発を推進し、持続的成長と社会貢献の両立を追求してまいります。
2020年度は「SDGsロードマップ策定委員会」を新たに組織し、二酸化炭素排出に係わる実態解析の活動を開始しました。2021年度中に、カーボンニュートラル達成に向けた具体的な削減目標数値を活動計画として落し込む予定です。
様々な社会環境の変化を新たな事業機会と前向きに捉え、自社技術のさらなる研鑽と、大学等外部研究機関とのアライアンスを積極的に推進し、脱炭素を始めとする新たな事業領域における当社プレゼンスの確立を目指してまいります。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものが挙げられます。ただしすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、又は重要とはみなされないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の影響を受け、経済活動の停滞や個人消費の低迷等により厳しい状況となりました。経済活動が徐々に再開するにつれ持ち直しの動きがみられたものの、感染収束時期が見通せず、依然として先行きは不透明な状況が続いております。
このような環境下において、当社グループでは、IT技術を活用した働き方改革や業務改善を継続するとともに、生産性向上の取り組みや商品構成の見直しを進め、更なる事業基盤の強化を図ってまいりました。また、高付加価値製品の拡販と経費等削減に努めてまいりました。
その結果、当社グループの売上高は、前年同期比6.6%減少の25,194百万円となりました。利益面では、営業利益は前年同期比14.5%増加の2,217百万円、経常利益は前年同期比14.5%増加の2,451百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比17.3%増加の1,607百万円となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
[化学品事業]
化学品事業においては、電子材料向け樹脂は、世界的なテレワーク等の拡大により半導体向け製品が好調に推
移しました。一方、建築関連向け樹脂は、住宅着工件数の減少や建設工事の延期や中止等により前年を下回り、自動車関連向け樹脂については、昨夏以降は顧客の稼働率は持ち直したものの前年を下回りました。以上の結果、売上高は前年同期比5.7%減少の20,724百万円となりました。利益面では、電子材料向け樹脂や環境対応向けの高機能繊維を中心とした高付加価値製品の拡販と経費等削減により、セグメント利益(営業利益)は前年同期比10.0%増加の2,191百万円となりました。
[食品事業]
食品事業においては、いわゆる「巣ごもり消費」の影響を受け、新ジャンル酒類向け製品は増加しましたが、外出自粛及び各種イベントの中止や夏場の天候不順の影響を受け、清涼飲料向け糖化製品が低調に推移しました。以上の結果、売上高は前年同期比11.2%減少の4,223百万円となりました。利益面では、商品構成や生産効率の見直しを行い、コスト低減に努めた結果、セグメント損失(営業損失)は前年に比べ74百万円改善したものの、138百万円(前年同期は212百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
[不動産活用業]
不動産活用業においては、ほぼ前年並みで推移した結果、売上高は前年同期比0.0%増加の246百万円、セグメント利益(営業利益)は前年同期比5.1%増加の164百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によっております。
2 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当社グループは受注見込みによる生産方式をとっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度における資産合計は前連結会計年度末と比べ1,358百万円増加し、51,984百万円となりました。これは、主に保有株式の時価上昇により投資有価証券が増加したことによるものです。
負債合計は前連結会計年度末と比べ371百万円減少し、8,233百万円となりました。これは、主に借入金が返済により減少したこと及び前連結会計年度の設備投資に伴う設備関係未払金が当連結会計年度に決済されたことにより減少したことによるものです。
純資産合計は前連結会計年度末と比べ1,730百万円増加し、43,750百万円となりました。これは、主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が増加したこと及び投資有価証券の時価上昇によりその他有価証券評価差額金が増加したことによるものです。
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、3,567百万円の収入と前連結会計年度に比べ768百万円の収入の減少となりました(前連結会計年度4,336百万円の収入)。これは、主に売上債権の増減額の増加によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、806百万円の支出と前連結会計年度に比べ57百万円の支出の増加となりました(前連結会計年度748百万円の支出)。これは、主に有価証券の償還による収入の減少及び定期預金の払戻による収入の減少によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、1,310百万円の支出と前連結会計年度に比べ424百万円の支出の減少となりました(前連結会計年度1,735百万円の支出)。これは、主に自己株式の取得による支出の減少及び長期借入金の返済による支出の減少によるものです。
この結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は、前年同期比1,340百万円(17.9%)増加し8,825百万円となりました。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資につきましても、自己資本を基本としておりますが、必要に応じて金融機関からの長期借入で調達する方針であります。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響につきましては、感染収束時期が見通せない不透明な状況ではありますが、現時点では十分な手元資金を保有しており、さらに、感染拡大等の影響による緊急の資金需要に備え、金融機関と当座貸越契約を締結し、資金流動性を確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、連結財務諸表に重要な影響を与える見積りを必要としております。見積りにつきましては、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき行っておりますが、この見積りは不確実性があるため実際の結果と異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、主力製品であるフェノール樹脂及び澱粉糖関連の基盤技術の深化を継続するとともに、周辺技術の探索を進め、獲得した技術を新規基盤技術と位置づけ、その拡張と充実を図っております。こうして獲得した新規基盤技術を生かし、製品の高品質化、製造時の低炭素化に鋭意取り組むとともに、社会のSDGs達成及びカーボンニュートラルに貢献する、環境、デジタル、健康の各テーマへの新製品開発に積極的に取り組んでおります。GCIグループ内の連携、開発・営業・製造各部門間の連携とともに、開発本部内の機能の明確化と連携を一層強化した体制をとり、市場ニーズの取り込み及び技術シーズに基づく開発を推進しております。当期売上高に対する新製品売上高比率は22%(当連結会計年度末現在、上市後5年以内の製品)でした。
当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
電子材料、鋳物材料、機能性材料及び環境対応材料等の材料開発に鋭意取り組んでおり、材料設計技術としての高分子構造設計、アロイ、ブレンド、成形加工及び実用性評価技術に注力し、半導体、電気・電子、自動車及び工業材料分野への新製品上市を進めております。
当連結会計年度では、電子材料分野においては半導体及びFPD分野で使用される感光性材料用途に向け、国際競争力のある高純度高機能樹脂製品の開発に注力してまいりました。今後さらなる伸長が期待される同市場向け材料に関して、高性能化、高品質化を加速し、次世代材料開発を鋭意進めております。
また、Society5.0推進に必要な5G通信で使用される電子機器では、通信速度低遅延化や電気信号の低減衰化のため、低誘電率、低誘電正接、高耐熱性の各特性を有する絶縁材料が求められます。当社グループでは、5G、さらにポスト5Gに対応するポリマーの開発を進めております。具体例として、これまでに低極性フェノール樹脂を開発し、提案しております。電気特性(低誘電率、低誘電正接)が良好であり、さらに基材への密着性、主剤・添加剤との相溶性に優れた樹脂となっており、主にCCL用途に展開中です。
一方、近年3Dプリンタ技術の発展と拡大により、省スペースで複雑な工作物の製造が可能となり、今後は輸送に係るコストや消費エネルギー削減も期待されています。現在各種方式の3Dプリンタが世界中のプリンタメーカーから提案されておりますが、当社ではインクジェットプリンタ用に鋳造砂型用材料、粉末床溶融結合造形(Powder bed fusion)向けにカーボン複合材料等を展開し、いずれも高精度で実使用可能な特性の成形品を実現しております。Powder bed fusion用カーボン複合材料は、寸法精度が高いことが最大の特長であり、併せて高耐熱、高弾性率の特長を有します。現在自動車部品組み立て時の検査治具や、簡易型の用途などでご利用頂いております。これらの用途では、短納期、軽量化、低コスト化の実現でユーザーよりご好評を頂いており、当期も新たなプリンタメーカーへの採用を果たしております。さらに当社では3Dプリンタ向けの新たな材料開発と部材提案に鋭意取り組んでおります。
摩擦材(ブレーキ用途)用樹脂では特殊フェノール樹脂「ミレックス」を軸に、環境対応型樹脂の開発や顧客提案を進めております。「鳴き」「振動」「防錆」の課題解決を図り、乗用時の快適性向上に貢献しております。
高機能フェノール樹脂繊維「カイノール」については、製品の高品質化、炭化技術及び賦活技術の向上、さらには機能性材料開発を継続して推進しております。
当社の基盤である化学と糖に関する技術を融合したグリーンケミストリーの実現により、環境問題などの社会的課題を解決しSDGs達成に向け貢献するソリューション提供を目指し、環境配慮型製品の開発、顧客提案を工業材料各用途で推進しております。さらに、大学など外部機関との共同研究の取り組みも積極的に進めております。一例として、「糖の骨格をベースとした水溶性フォトレジスト原料」技術に関する研究に取り組み、共同論文を発表するなど、着実に成果が実ってきており、今後も基礎技術の獲得と応用検討に精力的に取り組んでまいります。
当連結会計年度に係る化学品事業の研究開発費は
[食品事業]
近年、当社グループにおいては、機能性食品分野に対して穀物液化糖化技術を活用した新たな価値の創造に取り組み、酵素応用技術、糖化パイロットプラント及び高度な分析技術等を駆使して技術集約型の新製品開発を進めてまいりました。こうした活動の中で、当連結会計年度では、オーツ麦をまるごと糖化したオーツミルクの原料である「オーツミルクの素」の発表に至りました。植物性ミルクは牛乳などの動物性ミルクに比べ、CO₂削減の観点でも有効とされ、健康志向と併せて注目されています。東京ビッグサイトで開催された「食品開発展」、幕張メッセで開催された「ドリンクジャパン」で大きな反響を頂きました。風味豊かで美味しく、食物繊維やたんぱく質が豊富であり、さらに環境に配慮した健康訴求製品として、食品メーカー・飲料メーカーへ提案を進めております。今後はこれらの機能性食品開発に加え、前述のグリーンケミストリーを「糖ケミカル」と呼称し、製品拡充、高付加価値化に向け、当社の強みである2つの基盤技術領域をオーバーラップさせた新たな基盤技術の構築に注力してまいります。
当連結会計年度に係る食品事業の研究開発費は