第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、創業以来、フェノール樹脂業界および糖化業界において豊かな創造力により独自の技術を築いてまいりました。

理念として「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会造りに貢献する」を掲げ、サステナビリティを巡る課題への対応に積極的に取り組み、顧客を中心としたステークホルダーと共に繁栄することを目指してまいります。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、技術・事業を通じた社会課題解決への貢献を目指し、中期経営方針2024(2022~2024年度)において、連結売上高、営業利益、営業利益率、および、CO2排出量を目標とする経営指標として設定しております。事業成長と環境対応の両立のため、目標達成に向けグループ全体で取り組んでまいります。 

 

財務目標・・・・売上高:350億円、営業利益:40億円、営業利益率:11%(2024年度目標)

非財務目標・・・CO2排出量(Scope1・2/2013年度比):30%削減(2030年度目標)

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題

新型コロナウイルスの世界的大流行は、今なお断続的な感染拡大を繰り返し、長期化する自粛生活は市場構造や消費者意識に大きな変化をもたらすこととなりました。身近に迫る自然災害の激甚化は、カーボンニュートラルへの取り組みを加速させ、また、地政学的リスク等に伴うサプライチェーン環境の不確実性からも化石燃料をベースとする既存産業は大きな転換点を迎えております。

社会生活や事業環境が新たな局面を迎える状況下、当社グループも既存ビジネスモデルの延長線上に持続的な企業成長を描くことは難しいと認識しております。

これらの状況を打破するため、当社グループでは“Green”を含む長期ビジョン(ありたい姿)、また、中期経営方針2024(2022~2024年度)において目指す方向性を下記のとおり設定しております。

 

≪長期ビジョン(ありたい姿)≫

合成・糖化技術の開発・再構築によってグローバルにソリューションを提供し、社会の持続的成長に貢献できる“Green・Chemical・Industry(GCI)”となる

 

≪目指す方向性≫

・電子材料分野を中心とする「高純度・先端材料」

・Green分野としての成長を見据える「高機能糖ケミカル」・「環境対応ケミカル」

・経済的価値・社会的価値向上のための「経営基盤強化」

 

(1) 電子材料分野を中心とする「高純度・先端材料」

当社フェノール樹脂は、電子材料分野である半導体・ディスプレイ製造で用いるフォトレジスト原料として使用されており、安定的な製品品質及び供給体制を強みに事業を拡大してまいりました。

多様化する社会のニーズや働き方に対応するため、社会のデジタル化の進行はさらに加速し、それを支える電子材料関連素材は今後も大きく需要を伸ばすことが予想されます。

フォトレジスト用樹脂及び半導体周辺材料をはじめとする電子材料分野への積極的な経営資源投入は、事業拡大だけではなく、省エネ等の観点から社会貢献にも繋がるものと考えております。高品質・低メタル化、環境対応、高生産性をコンセプトに、電子材料分野を中心とした「高純度・先端材料」開発に注力することにより市場要求に応えてまいります。

 

(2) Green分野としての成長を見据える「高機能糖ケミカル」・「環境対応ケミカル」

異性化糖・水あめなどの糖化製品は収益性が低迷する状況が続いておりますが、機能性食品分野への展開として穀物糖化液関連製品を中心とした高付加価値製品を上市し、食品事業の安定的な黒字化を目指してまいります。また、中長期的には、「高機能糖ケミカル」分野として糖素材を化学の視点で活用する新たな製品開発に取り組んでまいります。

また、当社独自ノボロイド繊維「カイノール」の活性炭繊維が各種溶剤をリサイクルする目的での利用が増加しており、VOC削減及び資源の有効活用の観点から環境負荷低減に寄与しております。「環境対応ケミカル」分野としてカイノールを中心とした環境対応製品の開発及び用途探索を行ってまいります。

環境問題・健康増進などの社会課題へのソリューションを提供する「高機能糖ケミカル」・「環境対応ケミカル」をGreen分野として位置付け、電子材料分野に次ぐ収益の柱とすべく事業構築を進めてまいります。

 

(3)経済的価値・社会的価値向上のための「経営基盤強化」

当社グループは2030年度CO2排出量30%削減(2013年度比、Scope1・2)を目標に掲げております。グループ全体で生産効率の改善や製造技術の見直しを図ることにより無駄や不良・廃棄物を削減し、循環型社会の形成をはじめとするサステナビリティを巡る課題解決への貢献のため「経営基盤強化」を図ってまいります。

また、様々な社会環境の変化を新たな事業機会と前向きに捉え、自社技術の更なる研鑽と、大学等外部研究機関とのアライアンスを積極的に推進し、脱炭素をはじめとする新たな事業領域における当社プレゼンスの確立を目指してまいります。

 

電子材料・Green分野を中心とした事業ポートフォリオ転換を視野に、サステナブルな社会に貢献することにより企業価値を高めてまいります。

 

 

2 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものが挙げられます。ただしすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、又は重要とはみなされないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

リスク

想定される当社事業への影響

主な取り組み

リスク発生の蓋然性

当社事業への影響度

為替変動リスク

・外国通貨建ての原材料調達コストや製品売上高への影響

・在外子会社を含む連結決算への影響

・為替が原材料に及ぼす影響のモニタリングと定期報告

・為替予約や円建て取引推進によるリスク回避

・関連通貨変動のモニタリングと定期報告

財務健全性リスク

・景気後退や金融不安が資金調達へ及ぼす影響

・急激な事業環境の変化や景気変動による、取引先の経営状況悪化が債権回収に及ぼす影響

・余剰資金運用の一環として保有する有価証券等の評価損が及ぼす影響

・財務体質の強化と内部留保の適正維持

・取引先与信管理と債権保全の徹底

・金利、株価及び債券価格変動のモニタリング実施

農業政策に関するリスク

・農林水産省の糖業政策変更や方針変更が、法令制度の制約の中で事業を行わざるを得ない当社糖化事業へ及ぼす影響

・業界団体(全日本糖化工業会)を通じた、定期的な行政側との交渉と情報交換

製品の品質と安全の確保に関するリスク

・製品品質不良による健康被害の発生

・不適合や廃棄物発生によるコスト増加

・品質クレームによる訴訟や賠償の発生

・グループ全体の信用や企業価値の低下

・品質管理及び品質保証体制の強化

・生産物賠償責任保険(PL保険)の適切な付保

・高度な品質管理を求められる製品の原料について、供給元への積極的な品質向上のサポート

気候変動リスク

・脱炭素社会移行に伴う操業コスト増加

・既存製品の競争力低下、売り上げ減少

・気候変動への対応遅延による企業価値・信用の低下

・設備投資、再エネ導入などによるGHG排出量削減

・カーボンニュートラルを前提とした製品開発の推進

・気候変動に伴う機会(チャンス)の獲得に向けた活動強化

情報セキュリティに関するリスク

・サイバー攻撃による情報インフラ障害や情報漏洩

・従業員の意図的な行為や過失による、機密情報や個人情報の外部漏洩

・個人情報取扱規程の制定と関連方針・規程の定期見直し

・セキュリティ教育の実施

・ウィルス対策ソフトの導入と更新

・不正アクセス防止のためのモニタリング強化

企業の社会的責任に関するリスク

・法令違反ならびに、社会的規範や倫理の逸脱行為による企業価値の低下

・人権侵害懸念のある原料調達による、企業価値や信用の低下

・定期的なコンプライアンス教育の実施

・グループガバナンス体制の強化とモニタリングの実施

・供給元調査の実施など、CSR調達の取組み強化

・環境配慮と地域貢献など、CSR活動の継続的推進

 中

感染症の蔓延リスク

・従業員の罹患に伴う操業停止や生産減

・原材料の納入遅延や製品出荷の遅延

・BCP、BCM計画の策定と適時見直し

・適正在庫(原材料、製品)の把握と管理

・未然防止対策(IT活用などによる働き方改革の推進)

・製造工程の効率改善と省人化、自動化の推進

原材料の調達、サプライチェーンに関するリスク

・地政学リスク等により、原材料調達価格や製品市況が変動することによる業績への影響

・原材料メーカーの供給遅延・停止となる事態

・原材料価格変動を適時かつ合理的に製品売価へ転嫁

・原材料調達先の複数化

・適正在庫の把握と管理

 

 

リスク

想定される当社事業への影響

主な取り組み

リスク発生の蓋然性

当社事業への影響度

大地震など予測不可能な自然災害に関するリスク

・従業員の被災による操業停止や生産減

・ユーティリティ供給途絶による、化学物質の漏洩事故や爆発事故

・原材料の納入遅延による、製品出荷が不能となる事態

・未然防止対策と発生想定訓練の実施

・BCP、BCM計画の策定と適時見直し

・自家発電設備等の整備

・適正在庫(原材料、製品)の把握と管理

人材確保に関するリスク

・少子高齢化に伴う採用困難化と人財不足

・ITなど高度な専門性を持つ人材獲得コストの上昇

・製造工程の効率改善と省人化、自動化の推進

・教育プログラムの充実による社内人材育成強化

・魅力的な職場環境の構築やダイバーシティの推進

・RPA導入

・アウトソーシング人材の活用

 

 

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 

(1) 経営成績

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当連結会計年度における世界経済は、新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種の進展や、各国政府の各種政策により、米国や中国をはじめとして経済活動の回復が見られたものの、世界的な物流の混乱、サプライチェーンにおける半導体をはじめとした部材不足による一部生産活動停止の影響を受け、新型コロナウイルス感染症拡大前の状況までの回復には至りませんでした。また、先行きについては、ロシアによるウクライナ侵攻等に伴う原材料価格の高騰や各国との金利差を主要因とした急速な円安進行等により不透明な状況で推移するものと見込まれます。
 このような状況のもと、当社グループの売上高は、前年同期比16.7%増加29,406百万円となりました。利益面では、営業利益は前年同期比12.3%増加2,489百万円、経常利益は前年同期比14.9%増加2,815百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は前年同期比20.1%増加1,929百万円となりました。

 

 セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。

[化学品事業]

 化学品事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた前年度と比較し、自動車関連向け樹脂は期半ばからの世界的な部品不足による減産の影響を受けたものの総じて回復基調となりました。半導体関連及び液晶関連向け樹脂は一昨年から続く国内外の需要拡大により高水準を維持しました。また、建設機械向け及び工作機械向け樹脂は回復基調で推移いたしました。以上の結果、売上高は前年同期比18.0%増加24,462百万円となりました。利益面では、電子材料向け樹脂や環境対応向け高機能繊維を中心とした高付加価値製品の拡販と一部製品の価格是正を行ったものの、原材料価格の急騰が利益を圧迫しセグメント利益(営業利益)は前年同期比6.2%増加2,326百万円となりました。

[食品事業]

 食品事業においては、新型コロナウイルス感染症の感染再拡大による行動制限と夏場の天候不順の影響を受けましたが、一部飲料向け製品が回復したこと及び原材料価格高騰分の価格是正を行った結果、売上高は前年同期比11.2%増加4,697百万円となりました。利益面では原材料価格高騰の影響を受けましたが、商品構成や生産効率の見直し、高付加価値製品の拡販を実施し、セグメント損失(営業損失)は前年に比べ138百万円改善したものの、0百万円(前年同期は138百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。

[不動産活用業]

 不動産活用業においては、ほぼ前年並みで推移した結果、売上高は前年同期比0.3%増加247百万円、セグメント利益(営業利益)は前年同期比0.7%減少163百万円となりました。

 

 

  生産、受注及び販売の実績は、次のとおりであります。
 ① 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

化学品事業

24,049

+19.0

食品事業

4,200

+11.4

不動産活用業

合計

28,249

+17.8

 

(注) 1 金額は、販売価格によっております。

 

 ② 受注実績

当社グループは受注見込みによる生産方式をとっております。

 

 ③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

 

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

 

化学品事業

24,462

+18.0

 

食品事業

4,697

+11.2

 

不動産活用業

247

+0.3

 

合計

29,406

+16.7

 

 

(2) 財政状態

当連結会計年度における資産合計は前連結会計年度末と比べ2,695百万円増加し、54,680百万円となりました。これは、売上高増加に伴う売上債権の増加及び設備投資による有形固定資産の増加によるものであります。
 負債合計は前連結会計年度末と比べ1,546百万円増加し、9,780百万円となりました。これは、売上高増加及び原材料価格高騰による買掛金の増加及び設備未払金が増加したことによります。
 純資産合計は前連結会計年度末と比べ1,148百万円増加し、44,899百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したことによります。

 

 

(3) キャッシュ・フロー

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ753百万円(8.5%)増加9,579百万円となりました。なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況と主な内訳は以下のとおりであります。

営業活動によるキャッシュ・フローは、2,447百万円の収入と前連結会計年度に比べ1,120百万円の収入の減少となりました(前連結会計年度3,567百万円の収入)。これは主に、退職一時金制度から確定給付企業年金制度(DB)へ移行したことによる拠出金があったことによります。

投資活動によるキャッシュ・フローは、942百万円の支出と前連結会計年度に比べ136百万円の支出の増加となりました(前連結会計年度806百万円の支出)。これは主に、有価証券購入による支出の増加によるものです。

財務活動によるキャッシュ・フローは、746百万円の支出と前連結会計年度に比べ564百万円の支出の減少となりました(前連結会計年度1,310百万円の支出)。これは主に、前連結会計年度は長期借入金の返済による支出や自己株式の取得による支出がありましたが、長期借入金は前連結会計年度末では完済したこと及び自己株式の買付は当連結会計年度では未実施であったことによります。

 

当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。

当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資につきましても、自己資本を基本としておりますが、必要に応じて金融機関からの長期借入で調達する方針であります。

なお、新型コロナウイルス感染症による影響につきましては、感染収束時期が見通せない不透明な状況ではありますが、現時点では十分な手元資金を保有しており、さらに、感染拡大等の影響による緊急の資金需要に備え、金融機関と当座貸越契約を締結し、資金流動性を確保しております。

 

(4)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、連結財務諸表に重要な影響を与える見積りを必要としております。見積りにつきましては、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき行っておりますが、この見積りは不確実性があるため実際の結果と異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。

 

4 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

5 【研究開発活動】

当社グループは、主力製品であるフェノール樹脂及び澱粉糖関連の基盤技術の深化を継続するとともに、周辺技術の調査研究を進め、獲得した技術を新規基盤技術と位置づけ、その拡張と充実を図っております。さらに獲得した新規基盤技術を生かし、製品の高品質化、製造時の低炭素化に鋭意取り組むとともに、社会のSDGs達成及びカーボンニュートラルに貢献する、環境、デジタル、健康の各テーマの新製品開発に積極的に取り組んでおります。GCIグループ内の連携、開発・営業・製造各部門間の連携とともに、開発本部内の機能の明確化と連携を強化した体制をとり、市場ニーズの取り込み及び技術シーズに基づく開発を推進しております。当期売上高に対する新製品売上高比率は18%(当連結会計年度末現在、上市後5年以内の製品)でした。

 

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は1,326百万円であり、セグメントごとの研究開発活動を示すと次のとおりであります。

[化学品事業]

電子材料、鋳物材料、機能性材料及び環境対応材料等の材料開発に鋭意取り組んでおり、材料設計技術としての高分子構造設計、アロイ、ブレンド、成形加工及び実用性評価技術に注力し、半導体、電気・電子、自動車及び工業材料分野への新製品上市を進めております。

当連結会計年度では、電子材料分野においては成長著しい半導体製造時に使用される感光性材料用途に向け、ポリマー分子設計、低メタル化技術を追求し、国際競争力のある高純度高機能樹脂製品の開発に注力して参りました。今後さらなる伸長が期待される同市場向け材料に関して、高性能化、高品質化を加速し、次世代材料開発を鋭意進めております。

また、Society5.0推進に必要な高速通信で使用される電子機器では、通信速度低遅延化や電気信号の低減衰化の為、低誘電率、低誘電正接、高耐熱性の各特性を有する絶縁材料が求められます。当社グループでは、5G、さらにポスト5Gに対応するポリマーの開発を進めています。開発樹脂は電気特性(低誘電率、低誘電正接)が良好であり、さらに基材への密着性、主剤・添加剤との相溶性に優れた特徴を有しており、主にCCL用途に展開中です。

一方、近年3Dプリンタ技術の発展と拡大により、省スペースで複雑な工作物の製造が可能となり、多品種製品の短納期化だけでなく輸送コスト削減も期待されています。現在各種方式の3Dプリンタが世界中のプリンタメーカーから提案されていますが、当社ではインクジェットプリンタ用に鋳造砂型用材料、粉末床溶融結合造形(Powder bed fusion)向けにカーボン複合材料等を展開し、いずれも高精度で実使用可能な特性の成形品を実現しております。Powder bed fusionに関しては、日本ファインセラミックス社と共同で新たな金属セラミックス複合材料(MMC:Metal Matrix Composites)を開発しました。MMCは金属由来の強度とセラミックス由来の硬さ・軽さを併せ持つ高性能特殊素材であり、非常に硬く加工性に課題がありました。本開発技術により、MMC製品の製造工程に3D積層造形を適用することが可能となり加工性改善に成功しました。この素材は半導体製造設備の部品に多く用いられており、今後のデジタル社会に大いに貢献が期待される素材になっております。さらに当社では3Dプリンタ向けの新たな材料開発と部材提案に鋭意取り組んでおります。

摩擦材(ブレーキ用途)用樹脂では特殊フェノール樹脂「ミレックス」を軸に、環境対応型樹脂の開発や顧客提案を進めております。「鳴き」「振動」「防錆」の課題解決を図り、乗用時の快適性向上に貢献しています。

高機能フェノール樹脂繊維「カイノール」は、炭化・賦活した活性炭繊維(ACF)は一般の活性炭に比べて吸着速度が速く、各種活性炭繊維の中でも比表面積と繊維強度が高く、細かく均一な孔が空けられる事が特徴であり、特定の除去したい物質だけを速やかに吸着できる特性を有しています。これらの特性が環境浄化に役立ち、需要が高まっております。製品の高品質化、炭化技術及び賦活技術の向上検討、さらには機能性材料開発を継続して推進しております。

さらに、当社の基盤である化学と糖に関する技術を融合したグリーンケミストリーの実現により、環境問題などの社会的課題を解決しSDGs達成に向け貢献するソリューション提供を目指し、環境配慮型製品の開発、顧客提案を工業材料各用途で推進中です。大学など外部機関との共同研究の取り組みも積極的に進めております。「糖の骨格をベースとした水溶性フォトレジスト原料」技術に関する研究に継続して取り組み、学会や雑誌での発表、特許出願など、着実に進歩を続けております。今後も基礎技術の獲得と応用検討に精力的に取り組んで参ります。

当連結会計年度に係る化学品事業の研究開発費は1,231百万円であります。

 

[食品事業]

近年、当社グループにおいては、機能性食品分野に対して穀物液化糖化技術を活用した新たな価値の創造に取り組み、酵素応用技術、糖化パイロットプラント及び高度な分析技術等を駆使して技術集約型の新製品開発を進めて参りました。こうした活動の中で、オーツ麦をまるごと糖化したオーツミルクの原料である「オーツミルクの素」の量産化に成功し、上市を果たしました。植物性ミルクは牛乳などの動物性ミルクに比べ、CO₂削減の観点でも有効とされ、健康志向と合わせて注目されています。風味豊かで美味しく、食物繊維やたんぱく質が豊富であり、さらに環境に配慮した健康訴求製品として、食品メーカー・飲料メーカーへ提案を続けております。

さらに、機能性食品開発に加え、前述のグリーンケミストリーを「糖ケミカル」と呼称し、製品拡充、高付加価値化に向け、当社の強みである2つの基盤技術領域をオーバーラップさせた新たな基盤技術の構築に注力し技術開発を進めております。

当連結会計年度に係る食品事業の研究開発費は95百万円であります。