第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは、社是である「愛 仕事に愛情と誇りを持とう」「知 常に研鑽し知識を広げよう」「和 互いの人格を尊重し融和を図ろう」の精神を基本に、「情報通信分野において常に最先端技術に挑戦し、高度な機器の提供とネットワークシステムの構築を通じて社会に貢献するとともに、会社の発展と社員の幸せを図る」ことを経営理念に置いております。企業として利益を追求するのは当然と考えておりますが、この経営理念にもあるように、社会に貢献し社会とともに成長していくことが、存在理由の原点であると考えております。

ケーブルテレビ関連機器の専業メーカーとして発展し、インターネットの興隆、光ファイバーを加入者宅まで届けるFTTHの普及といった時代の変化に適応し、センター設備、光伝送路、放送通信用端末等を総合的に取り扱うシステムインテグレーターとして実績を積み重ねてまいりました。

絶えず変化するユーザーニーズを的確に捉え、これまで培ってきたインテグレーション能力を最大限に活かし、システムや機器の開発を進め、タイムリーにソリューションを提供することで、社会に貢献してまいります。

また、未来の地球環境を考えた世界的取り組みである「SDGs」に関しましても、具体的な方針や目標を決定し、経営に取り入れるとともに、引き続き経営の合理化・効率化にも取り組み、安定かつ継続的に利益を生み出す企業であり続けることを基本方針としております。

 

(2) 経営戦略等

当社グループは「つなぐネットワーク、つくるミライ」というパーパスに基づき、情報ネットワークを通して人々のくらしと地球環境がシンクロナイズし、笑顔あふれる未来づくりに向けた企業活動を行います。

当社の主要なターゲット顧客である放送通信事業者を取り巻く環境としては、携帯端末、タブレット等の普及、動画配信サービス、SNSの利用拡大、リッチコンテンツ(高精細映像、メタバース空間)の技術進展に伴い、インターネットトラヒックは継続して増加しており、安定した放送及び通信サービスは生活に欠かせないものとなっています。

その需要に対応するため、当社グループはFTTH関連製品やIP関連製品などにおいて、他社との差異化を図るべく競争力のある、業界に先駆けた製品開発に注力してまいります。

 

(3) 経営環境

通信サービスの高速化、放送通信インフラの冗長化(障害、災害等を想定した多ルート化)に対する放送通信事業者の設備投資ニーズは継続するものと見込まれる一方で、放送と通信の融合による放送通信事業者間の競争激化、国内の世帯数増加の頭打ち並びに人口減少が想定されることから、資源価格の高騰、円安基調に起因するコスト増加傾向にあっても低コスト化ニーズは根強いものと想定されます。また、ケーブルテレビ事業者を始めとする放送通信事業者は従来のTV、ネット、電話、モバイルに加え、情報インフラの保有、地域密着性等の特色を活用した高付加価値化や地域課題解決に注力するものと見込まれます。

 

 

(4) 目標とする経営指標

当社グループを取り巻く事業環境の変化や各種施策の進捗状況等を総合的に勘案し、2024年12月期から2026年12月期までの3年間は以下の売上高、営業利益、経常利益及び自己資本当期純利益率を計画しております。

 

 

 

 

(連結・単位:百万円)

 

2024年12月期

計画

2025年12月期

計画

2026年12月期

計画

売上高

11,700

12,500

13,300

営業利益

630

750

870

経常利益

640

760

880

自己資本当期純利益率

8.2%

8.6%

9.0%

 

 

(5) 優先的に対処すべき事業上および財務上の課題

上記(4)の目標とする経営指標を達成するための、現状の課題は以下のとおりであります。

1.既存分野技術、既存顧客のさらなる深耕

放送通信業界におけるシェア拡大を目指すため、技術開発と保守サポートの体制を強化します。また、新拠点「SYNC Labo」を活用し、開発力及び提案力を向上します。

(取組事項)

・技術開発拠点「SYNC Labo」を軸とした放送通信機器並びにソフトウェア開発の加速

・放送通信用設備向け24時間365日保守サービスへの加入促進

・新拠点「SYNC Labo」内プレゼンテーションルームを活用した提案営業の展開

・情報インフラを活用した防災ソリューションの進化

2.持続的な成長に向けた新領域の探索

放送設備に対する投資需要の成長鈍化に対する懸念等の外部環境の変化に対応するため、新しい成長領域を探索することは当社にとって重要課題であると捉えています。

(取組事項)

・情報通信関連企業に対する営業活動の強化

・無線関連分野(ローカル5G,LPWA)、センシング分野、XR分野における機器・サービスの開発

・新領域における提携を視野に入れた事業拡大

3.組織人事の改革、デジタル活用

上記の既存領域の探耕と新領域の探索を両立するため、組織の生産性を高めることを課題として捉えております。人事制度の見直しとデジタル活用により、やりがいと高いパフォーマンスを実現できる働く環境の構築を目指します。

(取組事項)

・外部環境の変化に対応するべく人事制度見直しを実施

・デジタル投資資金を利用した基幹システムリプレイス

 

なお、当社では2026年12月期を最終年度とする3か年の中期経営計画「PLAN2026」を策定、2024年3月15日に公表し、上記取組事項について詳細説明を行っております。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティに関する取り組みを重要な課題と認識しており、取締役会を中心として、営業・工事・開発・製造・管理部門の連携により、組織横断的にサステナビリティに関する経営課題に取り組んでおります。また重要な事項については、取締役会、監査等委員会等に適宜報告・協議する体制を整備しております。

 

(2) 戦略

当社グループは、持続可能な社会の実現と企業価値の向上に向けて、SDGs方針を策定し、取り組むべき重要課題(マテリアリティ)を特定いたしました。また、代表取締役社長を委員長とするSDGs推進委員会を設置し、サステナビリティ活動の推進を行っております。

①SDGs方針

 シンクレイヤは、当社グループのパーパスである「つなぐネットワーク、つくるミライ」に基づき、情報ネットワークを通して人々のくらしと地球環境がシンクロナイズする社会を実現し、笑顔あふれる未来づくりに向けた企業活動を行います。この取り組みを通じ、持続可能な社会への貢献と当社の持続的成長を目指します。

②特定した重要課題(マテリアリティ)

  a. 顧客の信頼と期待に応えます

   社会のニーズを的確に捉え先進的技術をもって提供します

   顧客エンゲージメントの向上で、潜在的課題を捉え解決を共に図ります

   充実したサポート体制で、安定した技術フォローと品質を提供します

  b. ネットワーク環境の創造により新たな人々のつながりを生みだします

   地域密着性の高いケーブルテレビ事業者と連携し、情報拠点として地域の発展に貢献します

   いつでも・どこでも・だれとでもつながる新たなネットワークソリューションを提供します

  c. 循環型社会づくりに向けた事業活動を行います

   バリューチェーンのパートナーシップを深めます

   原材料の選定から生産、廃棄まで3R可能な製品を供給します

   バリューチェーン全体で温室効果ガスを削減します

   顧客との協働で3Rの仕組みを構築します

  d. 働きやすく、働きがいのある会社をつくります

   多様な人材が互いに尊重し合い、活躍できる環境をつくります

   全ての人が健やかに生き生きと働ける職場をつくります

   自ら学び高め合い、成長を実感できる人材育成を行います

   社員エンゲージメントを高める制度を設計します

  e. レジリエンスな地域社会をつくります

   地域社会や顧客、パートナー企業と連携し災害に強く信頼性の高いネットワークを提供します

   ネットワークを活かして地域のつながりを強め、コミュニティの活性化に貢献します

③サステナビリティの推進

 SDGs推進委員会は、代表取締役社長を委員長、常務取締役を副委員長とし、各部門より選任された社員にて構成されます。SDGs推進委員会は特定した重要課題に基づき、指標と目標の素案を策定し適宜取締役会に諮ります。決定された指標と目標はSDGs推進委員会にてモニタリングし、原則年1回取締役会へ報告いたします。またSDGs推進委員会は社内への啓蒙活動も行い、目標の達成に向けて自走する組織運営を支援します。

④人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

 働きやすく魅力ある職場の実現に向けて、多様な働き方が可能となるよう「就業規則」、「育児休業その他育児のための措置」などの見直しを進め、年次有給休暇の時間単位での取得、育児短時間勤務の期間拡大など制度変更を決定し2024年1月1日より施行しております。安心して働ける労働環境の充実に向け、今後も継続的に取り組んでまいります。

 

(3) リスク管理

内部監査部門である監査法務部の活動の充実をはかり、あらゆる角度からリスクの未然防止やミニマイズに心がけております。特に内部牽制が当社グループ全体にわたって機能するよう、社内横断的な組織「内部統制委員会」を組成し社内規定によるルール化を図っております。また、実際にそれらのルールが守られているか常にチェックするため、監査法務部による内部監査を行い、業務に関するリスクを管理するなど、健全な経営基盤の確立に努めております。

 

(4) 指標及び目標

当社グループは、特定したサステナビリティに関する重要課題の解決に向け、SDGs推進委員会を中心に指標及び目標の検討を進めておりますが、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標を設定しておりません。今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討してまいります。

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下が挙げられます。

なお、本記載は本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。将来に関する事項につきましては、不確実性やリスクが内在しており、そのため実際の結果と大きく異なる可能性がありますのでご留意ください。

 

(1) 市場環境について

放送通信分野では、大手通信事業者とケーブルテレビ事業者の相互参入や、インターネット動画配信事業者によるサービスの拡大に伴い競争が激化しており、各事業者は加入者確保のために新たなサービスを模索しています。また、FTTH関連の製品需要は継続しており、さらにインターネット回線を利用した放送の技術基準や法整備、携帯電話事業者によって商用サービスが開始された5Gサービスとは別に、地域の企業や自治体等の様々な主体が自らの建物や敷地内でネットワークを構築し利用可能とする「ローカル5G」など、技術革新に伴うビジネスモデルの変化が起こりつつあります。そういった時流の要請に応えて費用便益的にも優れた製品やシステムを継続的に開発し、提供できるかが当社グループの業績の鍵となります。

こういった製品・システム開発の遅れ等により市場へタイムリーに提供できない場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループでは、この春、プレゼンテーションルームを備えた新たな技術開発拠点「SYNC Labo」のオープンを迎えます。「技術力・ソリューション提供力の向上」「市場開拓・拡大、新規サービス展開への活用」「お客様訴求力・満足度の向上」などへの取組みにより、新たなネットワーク時代に向けて当社グループの存在価値を高め、高度な社会サービスが実現できるネットワーク製品・システム・サービスの提供を行ってまいりますが、民間投資や公共投資の鈍化・縮小による市場環境の悪化、製商品の需給に関する急激な変動、競争激化に伴う製商品の大幅な価格下落などがあった場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 生産体制について

当社グループの生産拠点は、国内生産工場(可児工場)と中国生産工場(愛知電子(中山)有限公司)であり、これまでに生産能力や品質等について重大な問題が発生したことはありません。国内のFTTH関連機器、光端末器等の需要は継続しており、また、BCP対策の観点からも当面は国内生産工場と中国生産工場の二拠点による生産体制を維持しますが、経営環境等の変化により体制を見直す可能性があります。この場合、工場規模の拡大による設備投資や経費増あるいは移転や閉鎖による一時的な経費増等が発生する可能性があります。

また、中国における経済情勢の変化、関連法令や制度の変更など当社を取り巻く経営環境に著しい変化が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(3) 季節変動について

当社グループの主要取引先であるケーブルテレビ事業者の会計年度の関係上、1月から3月末にかけて完了する設備投資案件が多いことから、当社グループの売上高は第1四半期の割合が大きくなっておりました。

但し、会計期間を変更した2019年度頃から工事進行基準(現在は収益認識基準)の影響に加え、機器販売の増加などにより、業績の季節変動は以前と比べて緩やかになっております。

 

 

(4) 技術開発等について

当社グループが製造するFTTH関連機器、通信関連機器および端末機器等は、技術的な進歩をはじめとして急速に進化しており、個々の製品の特徴や適性を活かした組み合せ等、専業メーカーとしての強みを生かしたトータルシステムとしての開発に努力してきました。

新製品の開発についてはその性質から複雑かつ不確実なものであり、以下のような様々なリスクが含まれます。

・新製品または新技術への投資を適切な時期に必要なだけ充当できる保証がないこと

・研究開発テーマのすべてが新製品または新技術の創造に繋がるとは限らないこと

・市場のニーズを的確に捉えた新製品または新技術を正確に予想できるとは限らないこと

・新製品または新技術が経営成績の向上に即貢献できるとは限らないこと

・新製品または新技術が独自の知的財産として保護される保証がないこと

・技術の急速な進歩や変化により研究開発テーマに影響を受けること

・新製品または新技術の開発期間の長期化が販売機会損失になり得ること

上記のリスクをはじめとして、業界と市場の変化を十分に予測できず、魅力ある新製品または新技術を開発できない場合、将来の成長と収益性を低下させ、業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 海外における事業活動について

当社グループは、国内生産工場の他、中国に設立した現地法人(愛知電子(中山)有限公司)において機器生産を行っており、当該現地法人に対する投資に加え、人材派遣あるいは技術支援を通じて経営指導を行っております。中国での事業活動では、現地における予期しない法律や制度・規制の変更、経済的要因による部材の高騰や人件費の上昇、為替の変動のほか取引先の信用不安、社会的混乱等のリスクがあり、これらによって当社グループの価格競争力の低下を招いたり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、各国が抱える諸問題、いわゆる地政学的リスクにより当社の海外事業活動に影響を与える可能性があります。

 

(6) 特許について

当社グループでは、技術部門において新製品および新技術の研究開発を行っており、社員が成した発明に対する特許の帰属は社内規程に基づいて対応しております。他社との共同開発等の共同行為では、その着手当初から研究開発の範囲・費用の分担、権利の帰属および第三者への譲渡等にいたるまで契約書で取り決めを行い、共同出願についても同様に取り決めを行っております。しかしながら、社会では特許の帰属や報酬等について係争に至る例もあり、判例の中には多額な報酬や賠償が認められたものもあること等から、開発型メーカーである当社においては、これらに対して費用負担が発生する可能性は否定できません。

なお、当社は前述の部門以外の、例えばSE部門、営業部門および製造部門でも技術者が在籍していることから、発明が行われる可能性があります。

 

(7) 製品について

当社グループでは、製品の安定供給を目指すために部品材料等を一定量在庫しておく必要があります。これらが長期滞留となった場合には、社内規定に基づき評価減を行う必要があり四半期毎、相当額の棚卸資産評価損が発生します。さらに技術革新が目まぐるしい業界にあって、製品が市場ニーズに合わず陳腐化した場合、これらの評価損が当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループでは品質マネジメントシステム(ISO9001)に則って製造を行っており、製品品質には万全を期しておりますが、全ての製品について欠陥がないという保証はありません。それらに対応するため、PL保険とリコール保険にも加入しておりますが、これらの保険が賠償や損失のすべてを十分にカバーできるという保証はありません。

なお、当社の製品に使用している半導体部品等一部の部品においては、自動車やスマートフォン、ゲーム機にも世界中で多く使用されている為、これらの業界で需要が急拡大した場合、入手性に影響が出ることが予想され、製品原価の増加に繋がり当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

 

(8) 商品について

国内におけるインターネット市場の発展に伴い、インフラを構成する情報通信機器の分野においては国外通信機器メーカー(米国、中国、韓国、台湾等)の製品を利用することが多くなっております。そのような情勢の中、国家間の経済的な利害対立から生じる経済摩擦や各国の施策等により、国内においても国外通信機器メーカーの製品の採用を見送る可能性があります。

また、国外通信機器メーカーの製品が性能、価格面で市場優位性が得られない場合、受注減となり当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

なお、国外通信機器メーカーからの購入品に品質異常や性能に欠陥があった場合、事前に締結した契約書等があったとしても是正や解決ができない場合は、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 為替レートの変動リスクについて

外国通貨建て取引につきましては、為替予約等によりリスクを軽減させる措置を講じておりますが、予測を超える為替変動があった場合、当社グループの業績及び財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(10) 人材の確保や育成について

当社グループが属する業界は技術革新が目まぐるしく、人材の流動性が高いこと、高度な技術力や施工技術が必要であること等が特徴となっており、当社グループでは各種技術者の確保と育成を最重要課題と位置付け、優秀な人材の確保を図るとともに、社内教育の充実や人材育成に積極的に取り組んでおりますが、仮に優秀な人材の確保や育成ができなかった場合、当社グループの将来の成長や業績に影響を与える可能性があります。

また、高水準の技術革新と進歩を維持するため、最新技術の経験を持つ優秀なエンジニア等の積極的な採用や継続的な社内教育は、採用コストと人件費を押し上げ、これらのコストの増加は当社グループの業績と財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(11) 環境問題について

当社可児工場は環境マネジメントシステム(ISO14001)の認証を取得しており、また、その他の拠点においても関係法令等の遵守に努めておりますが、万が一、事業活動を行う過程において環境事故等により関係法令等の違反が生じた場合、あるいは、今後新たに制定される法令等に対応するため多額の費用が発生した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

一方、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)に取り組むため、社内プロジェクト体制を立ち上げ、全社展開を進めておりますが、この取り組みに遅れがあったりKPIの達成ができなかった場合、当社グループの将来の業績と財務状況に影響を与える可能性があります。

 

(12) 工事事故について

当社グループでは、安全な工事の遂行を何よりも優先し、各種工事の施工をしておりますが、全ての工事において事故が発生しないという保証はありません。不可抗力を含めた事故による顧客からの信用低下は、受注環境に多大な影響を与え、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

(13) 災害等について

大規模な自然災害や事故等、新たな感染症等が発生した際には、公共インフラ停止、設備被害および人的被害、さらにはサプライチェーンの寸断等により当社グループの事業活動と業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループの社内ネットワークにつきましては、安定した運用を行うための体制を構築しておりますが、災害やコンピュータウイルスの侵入等により、「機密性」「完全性」「可用性」が確保できず稼働不能となった時は、企業としての信用低下や加入しているサイバー保険で賄えない損害賠償が発生した場合、当社グループの業績と財務状況に影響を与える可能性があります。

 

 

(14) 社内監視体制について

当社グループでは、監査等委員会設置会社の体制を採用しており、監査等委員による業務執行取締役に対する監査機能を強化することがコーポレート・ガバナンスの強化に繋がり、経営の健全性と効率性が一層高まると考えております。

また、内部統制委員会の設置により事業活動に係る法令遵守を徹底し、監査法人との契約により企業の会計における信頼性・正確性を担保し株主その他ステークホルダーを保護することで、企業の社会的価値の維持や向上に貢献するものと考えておりますが、経営監視の仕組みが不十分となる場合や、内部統制の不備・不足により社内の監視体制が整わず業務の適正が保たれなくなった際には、不祥事や企業スキャンダルを起こす恐れがあり、結果として株主その他ステークホルダーの利益を害する可能性があります。

 

(15) IR活動について

当社グループでは、2022年度より四半期毎の決算説明資料の開示及び半期毎の決算説明動画の配信に加え、当社ウェブサイトにおける製品情報やシステム導入事例などコンテンツの充実と新着情報の積極的な発信などにより、IR活動の強化に努めておりますが、市場が求める水準に対して不十分であった場合、株価の低迷や株主その他ステークホルダーからの評価が下がる可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は以下のとおりであります。

 

(1) 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の5類移行に伴い行動制限が撤廃され、経済活動の正常化が進展し個人消費及びインバウンド需要の回復が見られたものの、中東における情勢の不安定化、円安の進行に起因するコスト高傾向の継続、海外経済の減速懸念等の要因により依然として先行き不透明な状況が続いております。

放送通信業界におきましては4K/8K放送、コミュニティチャンネルなどのメディアコンテンツとICT事業者として情報インフラを保有する特色を生かして、ICTを活用して人々の暮らしをより良い方向へ変革する「地域DX」のメインプレーヤーとなるべく各種取り組みが開始されており、当社においても、これらの動きに合わせ継続してローカル5G実証実験へ参画し、AR(拡張現実)を活用した地域イベント支援などの新領域への取り組みを開始いたしました。

総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計結果(2023年5月分)」によると、固定系ブロードバンドサービス契約者のダウンロードトラヒック(推計値)は約30.5Tbps(前年同月比17.4%増)となり、高い水準のトラヒック増加が継続しております。

株式会社MM総研がまとめた「ブロードバンド回線事業者の加入件数調査」においては、2023年9月末時点のFTTH(光回線サービス)契約数は約3,995万件(半年で約42万件の増加)となりました。2020年から2021年にかけて発生したテレワーク需要などでFTTH未利用層への普及が一気に進んだため、需要の一巡もあり純増数の減少が続いていますが、高速大容量の10Gbpsサービスや宅内通信環境を最適化するメッシュWi-Fiの普及などによる高品質化もさらに進むと見込まれます。

 

a.財政状態

当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ647百万円減少し、10,686百万円となりました。

当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ998百万円減少し、5,002百万円となりました。

当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ351百万円増加し、5,683百万円となりました。

b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、当社グループはこれらを背景とした課題解決に対するニーズに対応すべく各種機器の販売、工事、保守サービス等の受注活動を展開してまいりました。売上面では、今期着工の大型工事案件の進捗に基づく売上高の計上、新たに取り扱いを開始した伝送装置の販売に伴い、連結売上高は10,443百万円(前年同期比4.8%増)となりました。

利益面では、増収に加え、機器販売において採算性が回復したことに伴い、営業利益は546百万円(同31.8%増)、経常利益588百万円(同34.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益433百万円(同47.1%増)となりました。

 

当連結会計年度における各部門の業績は、次のとおりであります。

(a) トータル・インテグレーション部門

前期及び当期に受注した大型FTTH工事案件の進捗に基づく売上高の計上に伴い、当部門の連結売上高は4,851百万円(前期比12.2%増)となりました。

(b) 機器インテグレーション部門

放送通信事業者における在庫調整、半導体等の長納期化に起因する通信用光端末の供給不足により各種光端末の販売数が減少し、当部門の連結売上高は5,591百万円(同0.9%減)となりました。

 

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、1,179百万円と、前連結会計年度末と比べ409百万円の減少となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果獲得した資金は2,162百万円(前年同期は1,703百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益650百万円、仕入債務の増加額553百万円及び棚卸資産の減少額517百万円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は273百万円(前年同期比19.9%減)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出310百万円等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は2,301百万円(前年同期は2,022百万円の獲得)となりました。これは主に、短期借入金の減少額2,200百万円等によるものであります。

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

当社グループの事業は単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

① 生産実績

当連結会計年度における生産実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

 

事業部門

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

生産実績(百万円)

前年同期比(%)

トータル・インテグレーション部門

4,836

112.7

機器インテグレーション部門

1,663

57.0

合計

6,500

90.1

 

 

 

② 受注実績

当連結会計年度における受注実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

 

事業部門

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

トータル・インテグレーション部門

5,298

94.0

3,166

116.4

機器インテグレーション部門

5,205

93.3

2,141

84.7

合計

10,503

93.6

5,307

101.1

 

 

 

 

③ 販売実績

当連結会計年度における販売実績を事業の部門別に示すと、次のとおりであります。

 

事業部門

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

販売実績(百万円)

前年同期比(%)

トータル・インテグレーション部門

4,851

112.2

機器インテグレーション部門

5,591

99.1

合計

10,443

104.8

 

(注)  総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がありませんので、主要な販売先の記載を省略しております。

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は以下のとおりであります。

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 財政状態の分析

(資産の部)

当連結会計年度末における資産の額は10,686百万円と、前連結会計年度末に比べ647百万円の減少となりました。資産の減少の主な原因は、建物及び構築物が605百万円増加、現金及び預金が409百万円、商品及び製品が432百万円及び投資有価証券が79百万円減少したことによるものであります。

(負債の部)

当連結会計年度末における負債の額は5,002百万円と、前連結会計年度末に比べ998百万円の減少となりました。負債の減少の主な原因は、支払手形及び買掛金が333百万円及び工事未払金が222百万円増加、短期借入金が2,200百万円減少したことによるものであります。

(純資産の部)

当連結会計年度末における純資産の額は5,683百万円と、前連結会計年度末に比べ351百万円の増加となりました。純資産の増加の主な原因は、利益剰余金が354百万円増加したことによるものであります。

(自己資本比率)

上記の結果、自己資本比率は、前連結会計年度末の47.1%から53.2%となりました。

 

② 経営成績の分析

当連結会計年度における売上高は10,443百万円(前期比4.8%増)、営業利益は546百万円(同31.8%増)、経常利益は588百万円(同34.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は433百万円(同47.1%増)となりました。主な原因については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要 (1) 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

③ キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

(3) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、工事の完成に要する外注費等の工事費や人件費等の販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。また、投資を目的とした資金需要は設備投資等によるものです。

これらの資金は、自己資金及び金融機関からの借入により調達しております。

 

(4) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループを取り巻く経営環境は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであり、また、「3 事業等のリスク」及び「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容 (1) 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定」に記載している各要因が、当社グループの経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、ケーブルテレビを中心とした放送と通信の各分野にわたって、その通信インフラの高度化に対応していくため研究開発に取組んでおります。研究開発は当社の技術部で行っており、当連結会計年度における研究開発費の総額は160百万円となっております。

FTTH関連では、光サブラック機器関連の基礎検討等を行いました。告知放送関連では、Web管理システムの開発を行いました。ネットワーク関連では、統合管理システムのプラットフォーム変更による評価を行いました。また、光ファイバーセンシングや、UI技術に関する調査及び技術検討を行いました。

なお、事業は単一セグメントでありセグメント情報を記載していないため、研究開発費の総額と内容を記載しております。