文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、創業以来、フェノール樹脂業界および糖化業界において豊かな創造力により独自の技術を築いてまいりました。
理念として「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会造りに貢献する」を掲げ、サステナビリティを巡る課題への対応に積極的に取り組み、顧客を中心としたステークホルダーと共に繁栄することを目指してまいります。
当社グループは、技術・事業を通じた社会課題解決への貢献を目指し、中期経営方針2024(2022~2024年度)において、売上高、営業利益、営業利益率、および、CO2排出量を目標とする経営指標として設定しております。事業成長と環境対応の両立のため、目標達成に向けグループ全体で取り組んでまいります。
財務目標・・・・売上高:350億円、営業利益:40億円、営業利益率:11%(2024年度目標)
非財務目標・・・CO2排出量(Scope1・2/2013年度比):30%削減(2030年度目標)
社会的に大きな変化をもたらした新型コロナウイルス感染症拡大は世界的に収束に向かっておりますが、ウクライナ情勢の長期化や部材供給不安、世界的な金融引き締め等による景気減速懸念もあり、依然として先行きは不透明な状況が続いております。身近に迫る自然災害の激甚化はカーボンニュートラルへの取り組みを加速させ、また、地政学的リスク等に伴うサプライチェーン環境の不確実性からも化石燃料をベースとする既存産業は大きな転換点を迎えております。
社会生活や事業環境が新たな局面を迎える中、当社グループも様々なコスト増に対応するための稼ぐ力の更なる強化が必要な状況にあり、既存ビジネスモデルの延長線上に持続的な企業成長を描くことは難しいと認識しております。
これらの状況を打破するため、当社グループでは“Green”を含む長期ビジョン(ありたい姿)、また、中期経営方針2024(2022~2024年度)において目指す方向性を下記のとおり設定しております。
合成・糖化技術の開発・再構築によってグローバルにソリューションを提供し、社会の持続的成長に貢献できる“Green・Chemical・Industry(GCI)”となる
≪目指す方向性≫
・電子材料分野を中心とする「高純度・先端材料」
・Green分野としての成長を見据える「環境対応ケミカル」・「高機能糖ケミカル」
・経済的価値・社会的価値向上のための「経営基盤強化」
中期経営方針期間1年目の2022年度においては、需要減速などの経営環境変化により目標と実績との間にギャップが生じている状態にありますが、サステナブルな成長を見込む「目指す方向性」に向けて実行を徹底することで成長軌道回帰を目指してまいります。
当社フェノール樹脂は、電子材料分野である半導体・ディスプレイ製造で用いるフォトレジスト原料として使用されており、安定的な製品品質及び供給体制を強みに事業を拡大してまいりました。
足元では在庫調整等により需要が低迷しておりますが、多様化する社会のニーズや働き方に対応するため社会のデジタル化の進行はさらに加速し、それを支える電子材料関連素材は今後も大きく需要を伸ばすことが予想されます。フォトレジスト用樹脂及び半導体周辺材料をはじめとする電子材料分野への積極的な経営資源投入は、事業拡大だけでなく足元の社会貢献に繋がるものと確信しております。高品質・低メタル化・環境対応・高生産性をコンセプトに電子材料分野を中心とした「高純度・先端材料」分野に注力し、持続的成長と社会貢献の両立を追求してまいります。
当社独自ノボロイド繊維「カイノール」は、活性炭化した際の吸脱着性能が非常に高いことから各種溶剤のリサイクル用途で強みを発揮しております。環境負荷低減の観点からその特徴に対する市場からの評価が高まっており、中期経営方針策定時点以上の需要拡大が見込まれることから増産投資を決定いたしました。引き続き、「環境対応ケミカル」分野としてカイノールを中心とした環境対応製品の開発及び用途探索を行ってまいります。
「高機能糖ケミカル」に関しましては2022年度に植物性ミルク「オーツミルクの素」を上市しましたが、マーケットでの広がりが想定に届かず抜本的な収益性の改善に至っておりません。引き続き、従来の糖化製品の事業見直しを断行するとともに、高まる健康志向等により拡大する機能性食品のマーケットへ高付加価値製品を投入すべく開発強化を図ってまいります。また、糖素材を化学の視点で活用する新たな製品開発を推進し、新たな価値創造に取り組んでまいります。
環境問題・健康増進などの社会課題へソリューションを提供する「環境対応ケミカル」「高機能糖ケミカル」をGreen分野として位置付け、電子材料分野に次ぐ収益の柱とすべく事業構築を進めてまいります。
当社グループは2030年度CO2排出量30%削減(2013年度比、Scope1・2)を目標に掲げており、製造処方の改良、および一部で実質的なCO2フリー電力を導入するなど、取り組みを進めております。グループ全体で更なる生産効率の改善や製造技術の見直しを図ることにより無駄や不良・廃棄物を削減し、目標達成に向け取り組んでまいります。また、職場環境を整備し心身の健康を確保する健康経営や、多様な人材の活躍を促進するダイバーシティ対応など、従業員エンゲージメント強化に関する取り組みもサステナビリティに繋がる重要なテーマとして捉えております。
様々な社会環境の変化を新たな事業機会と前向きに捉え、自社技術の更なる研鑽および大学等外部研究機関との協働についても積極的に推進し、循環型社会の形成をはじめとするサステナビリティを巡る課題解決への貢献のため「経営基盤強化」に取り組んでまいります。
電子材料分野及びGreen分野への積極的な資源投入により事業ポートフォリオ変革及び利益構造変革を着実に推進し、サステナブルな社会に貢献することにより企業価値を高めてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
取締役会による監督のもと、持続可能な社会の実現に向けた取り組み推進のためサステナビリティ推進会議を設置しております。代表取締役社長執行役員を議長とし、その他の執行役員及び関係者が出席しております。原則として年2回開催しており、サステナビリティ課題に関して審議され、その審議事項は定期的に経営会議及び取締役会に付議・報告を行っております。
当社グループは「化学の知識とアイデアでソリューションを提供し、より豊かな未来社会創りに貢献する」という企業理念に基づき、「GCIグループのサステナビリティ」に掲げる指針に沿ってステークホルダーとの強固な信頼関係を構築しサステナビリティを巡る課題への対応に積極的に取り組んでおります。
気候変動問題の対応に関しましては、TCFD提言に基づきシナリオ分析を実施し、2030年度社会経済におけるリスクと機会は、移行および物理リスクにおいて原材料やエネルギー調達及び物流に対する影響が大きく、また、低炭素社会に望まれる環境対応製品の投入遅れは大きな事業インパクトとなることが分かりました。一方、電子材料向け製品の高純度・低メタル化技術の深耕や、穀物等を糖化して機能性食品を製造する技術が大きな事業機会となることを確認しております。引き続き、中期経営方針に基づきリスク対応及び機会獲得に取り組んでまいります。
また、中長期的な企業価値向上のためには、新たなイノベーションを生み出すことが重要であり、多様な価値観を有する人材を継続的に確保していくことが不可欠と考えております。そのためには多様な人材の活躍を促進するダイバーシティ対応など、従業員エンゲージメント強化を重要なテーマと捉えており、当社グループにおける人材の多様性の確保を含む「人材の育成に関する方針」及び「社内環境整備に関する方針」を以下のとおり掲げております。
人材育成方針
当社グループでは、「結果に責任を持ち最後までやり遂げること」、「自ら主体的に変化を起こすこと」、「広く興味を持ち、関心を持って学び続けること」を人材育成におけるコア・バリューとし、当社グループに最大限貢献できる「個」の育成、「リーダー」の育成をはかり組織の力を最大化します。
具体的には、従業員一人ひとりの主体的なキャリア形成をサポートする自己啓発教育制度を設けているほか、各階層における必要なスキルの向上を目的とした階層研修を定期的に実施し、マネジメントの強化に努めております。
社内環境整備方針
当社グループの組織の力を最大限に発揮するために、職場の安全および「からだ」と「こころ」の健康を軸とした働きやすい職場環境を整備し、多様な考え方を尊重する風土、また、誰もが挑戦できる風土の醸成に取り組みます。
具体的には、健康を軸とした働きやすい職場環境の整備として、経済産業省と日本健康会議が進める健康経営優良法人認定制度において、健康経営優良法人(大規模法人部門)を4年連続で認定を受けております。また、従業員の採用にあたっては、新卒採用だけでなくキャリア採用を含めた多様な人材の確保に努めております。更に、キャリア開発申告制度により、新たにチャレンジできる環境整備も行っており、従業員が「やる気」、「働きがい」を持って能力を存分に発揮し豊かな生活を送れるよう環境整備を行っております。
「リスク管理基本規程」に基づき適切に運用管理するため、リスク統括・統制・管掌部署が当社事業に内在するリスクを継続的に識別・評価・モニタリング・コントロールすることにより、経営の健全性・業務の適正性の確保を図っております。リスク管理を含むサステナビリティ課題への対応状況は、サステナビリティ推進会議において審議され、その内容は定期的に経営会議及び取締役会に付議・報告を行っております。
当社グループは、上記「(2)戦略」において記載した内容について以下の指標を用いております。
気候変動問題の対応に関しましては、GCIグループ中期経営方針2024の非財務目標において、当社単体の燃料や電力などの使用に伴う自社の温室効果ガス排出量であるScope1排出量(直接排出)及びScope2排出量(間接排出)を指標とし、2030年度30%削減(2013年度比)を目標に設定いたしました。目標達成のため、GHG削減ロードマップの推進に取り組み、温室効果ガス排出量の削減を進めるとともに、算定可能となったScope3排出量(Scope1、Scope2以外の間接排出量)についても指標に加えるべく活動を進めてまいります。
また、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、以下のとおり目標設定しております。なお、当該指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われてはいないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクは以下のようなものが挙げられます。ただしすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見できない、又は重要とはみなされないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
当連結会計年度における世界経済は、ウィズコロナの新たな段階への移行が進み、米国や欧州を中心として景気の回復が見られましたが、ウクライナ情勢の長期化等に伴う経済の混乱により先行きが不透明な状況となりました。わが国経済におきましては、新型コロナウイルス感染対策と経済活動の両立が進み、緩やかな回復傾向にありました。しかしながら円安及び資源価格を始めとする物価の高騰、世界的なサプライチェーンの混乱による部品・半導体不足など厳しい状況で推移いたしました。
先行きに関しましては、わが国におきましても、経済活動の正常化が一段と進むことが期待されますが、エネルギー価格や原材料価格等の高騰が経済活動や個人消費に影響を及ぼすなど、引き続き不透明な状況で推移するものと思われます。
このような状況のもと、当社グループの売上高は、前年同期比6.7%増加の31,390百万円となりました。利益面では、営業利益は前年同期比33.3%減少の1,659百万円、経常利益は前年同期比31.1%減少の1,939百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は食品事業製造設備の減損損失202百万円を特別損失に計上したため、前年同期比37.7%減少の1,201百万円となりました。
セグメントの業績を示すと、次のとおりであります。
[化学品事業]
化学品事業においては、前年度と比較し、建設機械向け及び工作機械向け樹脂、溶剤回収向け高機能繊維は堅調に推移いたしましたが、自動車関連向け樹脂は世界的な部品不足による減産の影響を受け、半導体関連向け樹脂はメモリー半導体に対する世界的な需要減速が進み、液晶関連向け樹脂は一昨年から続く国内外の需要拡大が一巡し供給過多により需給バランスの回復を見通せない状況にあり低調に推移いたしました。一方、原材料価格高騰分の価格是正を行った結果、売上高は前年同期比4.8%増加の25,645百万円となりました。利益面では、電子材料向け樹脂が低迷し原材料価格の高騰が利益を圧迫したことによりセグメント利益(営業利益)は前年同期比26.0%減少の1,722百万円となりました。
[食品事業]
食品事業においては、新型コロナウイルス感染症の影響は落ち着きを見せ、巣ごもり需要収束により酒類向けは減少しましたが夏場の猛暑の影響で清涼飲料向けは回復傾向となりました。また、原材料価格高騰分の価格是正を行った結果、売上高は前年同期比17.1%増加の5,499百万円となりました。利益面では、原材料価格の高騰が利益を圧迫したことによりセグメント損失(営業損失)は211百万円(前年同期は0百万円のセグメント損失(営業損失))となりました。
[不動産活用業]
不動産活用業においては、ほぼ前年並みで推移した結果、売上高は前年同期比0.4%減少の246百万円、セグメント利益(営業利益)は前年同期比9.0%減少の148百万円となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 金額は、販売価格によっております。
当社グループは受注見込みによる生産方式をとっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度における資産合計は前連結会計年度末と比べ79百万円減少し、54,600百万円となりました。これは、棚卸資産が増加したものの償還により有価証券が、減価償却により有形固定資産、無形固定資産が減少したことよるものであります。
負債合計は前連結会計年度末と比べ1,287百万円減少し、8,493百万円となりました。これは、買掛金及び前連結会計年度の設備投資に伴う設備関係未払金が当連結会計年度に決済されたことにより減少したことによるものです。
純資産合計は前連結会計年度末と比べ1,208百万円増加し、46,107百万円となりました。これは、親会社株主に帰属する当期純利益を計上したこと及び投資有価証券の時価上昇によりその他有価証券評価差額金が増加したことによるものです。
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度に比べ1,826百万円(19.1%)減少し7,752百万円となりました。なお、当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況と主な内訳は以下のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、1,200百万円の収入と前連結会計年度に比べ1,247百万円の収入の減少となりました(前連結会計年度2,447百万円の収入)。これは主に、税金等調整前当期純利益の減少によるものです。
投資活動によるキャッシュ・フローは、2,465百万円の支出と前連結会計年度に比べ1,522百万円の支出の増加となりました(前連結会計年度942百万円の支出)。これは主に、有価証券と投資有価証券の償還による収入の減少による支出の増加によるものです。
財務活動によるキャッシュ・フローは、687百万円の支出と前連結会計年度に比べ58百万円の支出の減少となりました(前連結会計年度746百万円の支出)。これは主に、非支配株主からの払込みによる収入と配当金の支払額減少によるものです。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資によるものであります。
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。
短期運転資金は自己資金を基本としており、設備投資につきましては、自己資金並びに金融機関からの長期借入で調達する方針であります。
なお、新型コロナウイルス感染症による影響につきましては、不透明な状況ではありますが、現時点では十分な手元資金を保有しており、さらに、感染拡大等の影響による緊急の資金需要に備え、金融機関と当座貸越契約を締結し、資金流動性を確保しております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたっては、連結財務諸表に重要な影響を与える見積りを必要としております。見積りにつきましては、過去の実績や状況を踏まえ、合理的と判断される前提に基づき行っておりますが、この見積りは不確実性があるため実際の結果と異なる場合があります。当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。
なお、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 追加情報」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループは、主力製品であるフェノール樹脂及び澱粉糖関連の基盤技術の深化を継続するとともに、周辺技術の調査研究を進め、獲得した技術を新規基盤技術と位置づけ、その拡張と充実を図っております。さらに、産官学連携による新たな技術の創生、社会実装に向けた取り組みも積極的に進めており、社会のSDGs達成及びカーボンニュートラルに貢献する、デジタル、環境、健康の各テーマに対応した、高純度先端材料、環境対応ケミカル、高機能糖ケミカルの3つの方向性で技術開発、新製品開発に積極的に取り組んでおります。GCIグループ内でも連携を強化し、市場ニーズの取り込み及び技術シーズに基づく開発を推進しております。
当期売上高に対する新製品売上高比率は16%(当連結会計年度末現在、上市後5年以内の製品)でした。また、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は
電子材料、機能性材料及び環境対応材料等の材料開発に鋭意取り組んでおり、材料設計技術としてのポリマー分子構造設計、アロイ、ブレンド、成形加工及び実用性評価技術に注力し、半導体、電気・電子、自動車及び工業材料分野への新製品上市を進めております。
当連結会計年度では、電子材料分野においては成長分野である半導体の製造時に使用される感光性材料用途に向け、分子設計、低メタル化技術を追求するとともに、プロセス内の二酸化炭素排出量低減技術開発を進め、国際競争力のある高純度高機能樹脂製品の開発に注力して参りました。今後さらなる伸長が期待される同市場向け材料に関して、高性能化、高品質化を加速し、次世代材料開発を鋭意進めております。
また、Society5.0推進に必要な高速通信で使用される電子機器では、通信速度低遅延化や電気信号の低減衰化の為、低誘電率、低誘電正接、高耐熱性の各特性を有する絶縁材料が求められます。当社グループでは、5G、6Gに対応する樹脂開発を進めております。開発樹脂は電気特性(低誘電率、低誘電正接)が良好であり、さらに基材への密着性、主剤・添加剤との相溶性に優れた特徴を有し、主にCCL用途に展開中です。
摩擦材(ブレーキ用途)用樹脂では特殊フェノール樹脂「ミレックス」を軸に、環境対応型樹脂の開発や顧客提案を進めております。「鳴き」「振動」「防錆」の課題解決を図り、乗用時の快適性向上に貢献するとともに、製造プロセスでの二酸化炭素排出量削減に貢献する性能向上が図られています。
高機能フェノール樹脂繊維「カイノール」は、炭化・賦活した活性炭繊維(ACF)の吸着速度が速く、さらに各種活性炭繊維の中でも比表面積と繊維強度が高く、細かく均一な孔が空けられる事が特徴であり、特定の除去したい物質を速やかに吸着できる特性を有しています。これらの特性が環境浄化に役立ち、需要が高まっております。市場ニーズに応えるべく、製品の高品質化、高機能化の検討を進めております。
近年、3Dプリンタ技術の発展と拡大により、省スペースで複雑な工作物の製造が可能となり、多品種製品の短納期化だけでなく環境面を含めたSDGsの観点で、様々な効果が期待されています。現在各種方式の3Dプリンタが世界中のプリンタメーカーから提案されていますが、当社ではインクジェットプリンタ用に鋳造砂型用材料、粉末床溶融結合造形(Powder bed fusion)向けにカーボン複合材料等を展開し、いずれも高精度で実使用可能な特性の成形品を実現しております。カーボン複合材料を用いた治具パーツは現在自動車メーカー各社へ導入が進み、さらに日本ファインセラミックス社と共同で開発した金属セラミックス複合材料(MMC:Metal Matrix Composites)の市場展開を開始しております。MMCは金属由来の強度とセラミックス由来の硬さ・軽さを併せ持つ高性能特殊素材ですが、非常に硬く加工性に課題がありました。本開発技術により、MMC製品の製造工程に3D積層造形を適用することが可能となり加工性改善に成功しました。本材料は半導体製造設備や航空宇宙分野で期待される素材となっております。さらに当社では3Dプリンタ向けの新たな材料開発と部材提案に鋭意取り組んでおります。
近年当社では、基盤である化学と糖に関する技術を融合したグリーンケミストリーの実現により、環境問題などの社会的課題を解決しSDGs達成に向け貢献するソリューション提供を目指し、環境配慮型製品の開発、顧客提案を工業材料各用途で推進中です。大学など外部機関との共同研究の取り組みも積極的に進めております。一例として、「糖の骨格をベースとした水溶性パターニング材料」技術に関する研究に継続して取り組み、学会や展示会での発表を経てサンプルワークを開始しており、着実に進歩を続けております。今後も性能の向上と応用開発に精力的に取り組んで参ります。
当連結会計年度に係る化学品事業の研究開発費は
[食品事業]
近年、当社グループにおいては、機能性食品分野に対して穀物液化糖化技術を活用した新たな価値の創造に取り組み、酵素応用技術、糖化パイロットプラント及び高度な分析技術等を駆使して技術集約型の新製品開発を進めて参りました。こうした活動の中で、オーツ麦をまるごと糖化したオーツミルクの原料である「オーツミルクの素」を開発し、量産を開始しました。植物性ミルクは牛乳などの動物性ミルクに比べ、CO2削減の観点でも有効とされ、健康志向と合わせて注目されています。風味豊かで美味しく、食物繊維やたんぱく質が豊富であり、さらに環境に配慮した健康訴求製品として、食品メーカー・飲料メーカーへ提案を続けております。
こうした機能性食品開発に加え、前述のグリーンケミストリーに拡張した糖利用技術による製品拡充、高付加価値化に向け、当社の強みである2つの基盤技術領域をオーバーラップさせた新たな基盤技術「高機能糖ケミカル」の構築に注力し技術開発を進めております。
当連結会計年度に係る食品事業の研究開発費は