当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は「すべてを、なくしていく。」を企業理念として、次に挙げるようなシステム開発における課題の解決やあるべき姿の実現を目指しております。
・システム開発における多重下請け構造をなくしていきます。
・システムエンジニアの使い捨てという発想をなくしていきます。
・「要件定義のウソ」をなくしていきます。
・外注という概念をなくしていきます。
・世界の基盤は、システムでできている。
・1次請け、2次請け、3次請けという構造から、0次DXへ。
当社ではシステム開発における全ての課題をなくし、あらゆる限界を超えていくことで、この国の、そしてこの国で生きていく人の確実な豊かさと、幸せを、企業とともにつくっていきます。
(2)経営環境
経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」によれば、当社の属する情報サービス業の受注ソフトウェアの2023年度売上高は10兆2,430億円(前年比9.1%増)であり、受注ソフトウェアのうちシステムインテグレーションの2023年度売上高は6兆6,843億円(前年比9.3%増)となっております。
IDC Japan株式会社の「国内ITサービス市場 産業分野別/従業員規模別/年商規模別予測、2023年~2027年」によれば、2022年の国内ITサービス市場は、既存システムの刷新/クラウド移行、企業のデジタルビジネス化に関連する案件の増加と範囲拡大に伴う支出が牽引し、6兆734億円となりました。2023年は世界的なインフレや景気後退懸念といった先行き不透明感の増大に伴う投資抑制の影響が懸念されるものの、デジタルビジネス化を図る国内企業のシステム刷新および新規システム構築の需要に支えられ、堅調な成長を見込んでおり、2022年~2027年の年間平均成長率(CAGR)を2.9%と予測しております。
上記のとおり、当社の事業の大半を占める、顧客(エンドユーザー)から直接DX支援の受注を獲得する0次システム開発を含む市場の規模は大きく、また持続的な成長が見込まれております。DX投資の増加やIT人材需給ギャップの拡大が今後も予測されていることは、当社にとって良好な事業環境と考えております。
当社は年商1千億円以上の大手企業グループを主要顧客としておりますが、それらの企業では既存取引先である大手のシステム開発会社やITコンサルティング会社に何らかの不満を感じていることが多く、当社の顧客は既存取引先からの乗り換えが多くなっており、大手のシステム開発会社やITコンサルティング会社が主な競合となります。当社の優位性は、0次システム開発という開発姿勢、アジャイル開発という開発手法、アジャイル開発及びそれを担う優秀なエンジニアによる費用・品質の適正化にあると考えております。当社の事業の特徴につきましては、「第1 企業の概況 3 事業の内容 (2)事業の特徴」に記載のとおりです。
(3)経営戦略等
当社はITコンサルティングからシステム開発までを一気通貫でサービス提供するための優秀なエンジニアを抱え、顧客と協働して業務上の課題を解決することのできるシステム開発企業であり、ユーザー企業に直接営業できる体制を整えております。
当社の0次システム開発は、顧客(エンドユーザー)から直接受注を獲得し、多重下請けを行わないことで、比較的高い価格水準でありながら、不必要なコストを見積る必要のないアジャイル開発により、大手1次請け企業よりも競争力のある価格となっていることから優位性があると考えております。また当社は、小規模な案件からリーディングカンパニーとの取引を開始することで徐々に取引実績を積み重ねてきており、システム開発においては、取引先を変更することに係るコスト(スイッチングコスト)が大きいことから、競合他社への切り替えが発生しにくく、受注の継続性が高くなっております。その結果、売上高がミルフィーユ状に重なっていく事業モデルになっており、安定的に収益が成長しております。
顧客と協働してシステム開発を進める0次システム開発においては、既存顧客の深耕及び新規大手顧客の開拓を進める方針であり、併せて優秀なエンジニアの採用及びパートナー企業の開拓を推進してまいります。システム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」は、短期的には、会員数増加を通じて0次システム開発の収益に貢献することを目指しており、長期的には、システム開発業界において欠かせないサービスとして業界変革を促すことを目指しております。
(4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標
当社は、システム開発業界の構造改革を推進し、優秀な人材がシステム開発業界を目指すようになるためのエンジニアの地位向上を目指していることから、全社においては規模拡大が重要であるとの認識に基づいて売上高及び営業利益、0次システム開発においては売上規模の拡大を牽引する社員エンジニアの人数及び当社エンジニアの対外的価値を示す社員エンジニア1人当たり売上高、WhiteBoxにおいてはプラットフォームの規模を示す総会員数を重要な経営指標と考えております。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①人材の確保と育成
顧客との間で提案・相談を繰り返しながら協働して開発していくアジャイル型の開発手法である0次システム開発を担う、ITコンサルティングからシステム開発までを一気通貫でサービス提供するための優秀なエンジニアを、いかに採用し育成するかが、持続的に事業を拡大する上での重要な課題と考えております。採用費の増加、リファラル採用の強化により今後も積極的な採用を進めるとともに、採用人数を安定的に確保し、人材の定着率を高めるため、給与水準の向上や福利厚生の充実、評価制度の整備、労働時間の管理、社内勉強会の開催等によるスキルアップ支援等、働きがいのある・働きやすい企業づくりに取り組んでおります。
②パートナー企業との連携の拡大
当社が目指しているシステム開発業界の構造改革は、当社単独で実現するものではなく、当社理念に共感し、ともに業界改革を推進するパートナー企業の拡大が必要であると考えております。また、既存顧客の深耕により案件規模の拡大を目指す上でも、当社エンジニアだけでは技術面又はリソース面で不足することが想定され、必要なときに必要な能力・リソースを提供できるパートナー企業の拡大が重要と考えております。当社は、所属エンジニアの開発経歴(スキルシート)の登録管理等、基本的な機能を無料で利用することができるWhiteBoxをオープンなプラットフォームサービスとして全てのシステム開発企業に対して提供することを通じて、0次システム開発の推進において連携可能なパートナー企業の開拓を進めることにより、事業の拡大を持続していく方針です。
③技術力の持続的強化
当社の0次システム開発はアジャイル型の開発手法であり、当社では、アジャイル開発の中でも代表的な手法であるスクラム開発を担えるエンジニアの育成に引き続き取り組んでまいります。また、当社が注力している、段階的に投資額を増やしていくことが可能なクラウドサービスであるAWSの認定エンジニアを増加させ、AWS上で実装可能なAI、データサイエンス、IoT等の最先端の技術力の強化にも取り組んでまいります。
④情報管理体制の持続的強化
当社は、顧客のシステム開発の内製支援というサービスの特性上、並びに当社以外のシステム開発企業も利用するオープンプラットフォームサービスである「WhiteBox」サービスの特性上、顧客の機密情報や個人情報を多く取り扱っております。そのため、機密情報・個人情報やIT機器に関する各種規程やセキュリティ・ポリシーを定め、セキュリティ・テストの定期的な実施等により、セキュリティ意識の喚起や情報リテラシーの向上に努めるなど、万全の注意を払っておりますが、今後も情報管理体制や管理方法の持続的な強化に取り組んでまいります。
⑤内部管理体制の持続的強化
当社が今後の事業環境の変化に対応しながら、さらに事業拡大を進める上では、内部管理体制を強化していくことが重要であると認識しております。今後もコンプライアンス体制及びコーポレート・ガバナンスの充実・強化を図ってまいります。またそのため、組織の拡大に応じて、マネジメント人材やバックオフィス要員の採用・育成を実施していく方針です。
なお、当社は、銀行借入及び上場に伴う資金調達により十分な手許現預金を有していることから、優先的に対処すべき財務上の課題があると考えておりません。今後、リーマンショックと同等の金融危機が生じた場合や当社の業績が著しく悪化した場合には、現在と同水準の銀行借入を維持することが難しくなる可能性がありますが、その発生の可能性は低いと考えており、また今後の業績拡大によって銀行借入への依存度を下げながら十分な手許現預金を確保していく方針です。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。
当社は、顧客満足の最大化とゴーイングコンサーン(企業が将来に亘って存続する前提)が何にも勝る大前提であり、事業活動を通じて社会課題の解決に取り組むことにより、社会の持続的な発展に貢献できると考えております。
その実現のために、チャレンジする人を増やし、努力する社員に対し、能力に応じた活躍の場を創造することと、働きやすい環境の整備に取り組んでおります。
また、企業価値向上に向けて、公正且つ透明性の高い経営を目指します。
(1)ガバナンス体制及びリスク管理
当社は、サステナビリティ関連のリスク及び機会に対するガバナンス体制を構築しております。ガバナンス体制図については、「
サステナビリティ関連のリスク及び機会については、四半期毎に開催するリスク・コンプライアンス委員会でリスクの早期発見と対応策の検討を行い、取締役会へ報告しております。
(2)戦略(人的資本について)
顧客との間で提案・相談を繰り返しながら協働して開発していくアジャイル型の開発手法である0次システム開発を担う、ITコンサルティングからシステム開発までを一気通貫でサービス提供するための優秀なエンジニアを、いかに採用し育成するかが、持続的に事業を拡大する上での重要な課題と考えております。
そのため、当社は、最も重要な経営資源である人材の育成、及び人材の維持のための社内環境の整備に関して、以下の方針で取り組んでおります。
・人材の育成方針
エンジニアについては、スクラム開発の認定資格であるスクラムマスターやAWS認定資格その他の資格取得費用、技術関連書籍の購入費用を会社負担とすることで、自律的な技術能力向上を支援しております。また、エンジニア相互の学習機会として各種技術研修が行われております。さらに、技術能力向上に対する支援及び研修に止まらず、ビジネスパーソンとしてのレベルアップを目的とする研修や、上長との定期的な面談を通じたキャリア形成に係る相談を実施しております。
エンジニア以外も含めて、新卒研修やマネジメント研修といった集合研修(オンライン研修を含む)を実施しているほか、eラーニングサービスの導入、自己研鑽のための書籍購入費用の会社負担を行っております。
・社内環境の整備方針
エンジニアの就業環境の整備は以下のとおり進めており、優秀なエンジニアが多く採用できるよう、且つ長く就業できるよう努めております。
・実績・行動・努力を漏らさず反映できるよう、細かく評価項目を設定した評価制度。
・マネジメント職以外にもスペシャリスト、またその知見を活かしエンジニア以外の道も広く用意。
・全工程+クライアントとのコミュニケーションを担当しても、1日当たりの平均残業時間は1時間未満(社内業務含む)。
エンジニア以外も含めて、業務上支障のない範囲でテレワークを実施しているほか、フレックスタイム制、時短勤務制度を導入しており、社員のワーク・ライフ・バランスに配慮しております。
社員相互のコミュニケーションを活性化するため、部門横断の懇親会を人事部門が定期的に企画しているほか、社員が自主的に行う懇親会費用を所定の条件内で会社負担としております。全社員が集まる社員総会も年2回開催し、社員間の交流促進と帰属意識の向上に努めております。
これらの取り組みにより、性別や年齢に関係なく多様な人材が活躍できるような組織を目指しております。
(3)指標及び目標
当社では、(3)戦略(人的資本について)において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成方針及び社内環境の整備方針に係る取り組みを行っているものの、本書提出日現在においては、具体的な指標及び目標を設定しておりません。今後、目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討してまいります。
なお、「
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
事業に関するリスク
(1) 景気変動リスクについて(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社が0次システム開発として提供するシステム開発の主要顧客は、各業界における主要企業、又は国内外に事業を展開する企業が中心であります。そのため国内外の景気動向に伴い、これら主要顧客の経営状態や業績及び事業方針の変更等により事業投資やIT投資を抑制した場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、市場動向を注視し、顧客企業やパートナー企業から詳細な情報収集と分析に努めております。
(2) 競合について(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社が0次システム開発として提供するシステム開発は、顧客視点に立ち、顧客によるシステム開発の内製を支援している点で、多くのシステム開発企業が提供している、顧客による要件定義に基づく受託型のシステム開発と異なるものです。要件定義に基づく受託開発主体の多くのシステム開発企業は、現在獲得している収益の一部を失うことになりかねないシステム開発内製支援には消極的と見受けられます。しかしながら、当社と全く同じ戦略及びサービス品質でシステム開発内製支援を専門に事業を行う専門能力の高い企業が多数現れた場合や、事業及びITコンサルティングを専門に事業を行う企業がM&Aによる場合を含めてエンジニアの採用を拡大した場合には、それら競合他社との競争が激化し、価格の下落又は価格競争以外の要因でも既存案件を失注する、または新規案件を獲得できないおそれがあり、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、顧客との密なコミュニケーションにより顕在及び潜在ニーズを把握し、既存顧客との取引継続率を高めると同時に深耕によるアップセルを図り、システム開発の全工程におけるサービス品質を向上することで差別化を図り、競争力の維持向上に努めております。
(3) エンジニアの採用及び育成について(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、顧客のDX推進のためにシステム開発に企画提案段階から参画でき、システム開発の実装に係る十分な知識を有するエンジニアの採用及び育成が、今後の事業展開のために重要であると考えております。しかしながら、当社が必要とする優秀な人材の採用及び育成が計画通りに進まない場合や、人材の離職が計画を超えて生じた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、人材採用支援会社や人材紹介会社の活用により計画的な新卒及び中途採用を継続的に推進するとともに、リファラル採用の拡大を図ることにより、当社が求める水準を満たす人材の採用を行っております。また、エンジニアの技術能力向上に対する支援及び研修に止まらず、ビジネスパーソンとしてのレベルアップを目的とする研修を実施しております。更に、上長との定期的な面談を通じたキャリア形成に係る相談、多様な福利厚生制度の導入、業務環境の改善等により離職率の低減を図っております。
(4) 品質リスクについて(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、顧客のDXを協働して推進することによって顧客の価値創造、課題解決を支援するサービスを提供しております。しかしながら、顧客が期待する品質のサービスが提供できない場合には、契約の継続性に支障を来し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、提供サービスの品質を維持・向上するため、資格取得の費用や技術書籍の購入費を負担するなどしてエンジニアの能力向上を奨励するとともに、社内勉強会を実施するなどの対策をとっております。
(5) 外注委託先(パートナー)のリスクについて(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、外部の知識・ノウハウの活用及び人的リソースの確保のため、システム開発業務の一部を信頼できる外部委託先(パートナー)とともに実施することがあり、パートナーの確保が重要と考えております。しかしながら、必要なタイミングで適切なパートナーの確保ができない場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、パートナーにおいて当社との契約義務違反等の事態が発生した場合には、システム開発の品質保持のためのコスト増、顧客からの損害賠償等が発生し、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、WhiteBoxの会員獲得等により継続的にパートナーの新規開拓を実施しており、当社が求める水準を満たすパートナーの安定的な確保に努めております。加えて、パートナーに対してサービスの品質水準及び管理体制に関して定期的な確認を実施し、必要に応じて改善指導を行うなどにより品質管理と関係強化に努めております。
(6) 機密情報及び個人情報の管理について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の0次システム開発においては、顧客のシステムに係る非常に機密性の高い情報を取り扱っており、また個人情報を取り扱うことがあります。更に、WhiteBoxにおいては、会員企業に所属するエンジニア及びフリーランスエンジニアの個人情報を取り扱っております。しかしながら、不測の事態により、機密情報及び個人情報が外部に漏洩した場合には、対応費用や損害賠償に止まらず、当社の社会的信用に重大な影響を与え、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、機密情報の取り扱いに係る規程等を定めるとともに、プライバシーマークを取得しており、役職員に対して、入社時及び定期的に機密情報及び個人情報の取り扱いについて教育・指導を行っております。
(7) 法的規制のリスクについて(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社が0次システム開発として提供するシステム開発は、専ら準委任契約の締結により行っております。「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年4月17日 労働省告示第37号)に従い、労働者派遣事業との違いを厳正に適用し、法令に則った事業運営を行っているほか、「個人情報の保護に関する法律」、「下請代金支払遅延等防止法」その他の関係法令に従っております。また、派遣契約を締結する場合もあることから、「労働者派遣法」に基づき、厚生労働大臣の許可を受けております。法令の制定や改定、監督官庁による行政処分、新たな規制の策定又は改定等により、当社の事業が新たな制約を受け、又は既存の規制が強化された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、取締役及び従業員の職務の執行が法令に適合することを確保するために定めているリスク・コンプライアンス規程を、職務を遂行するにあたり遵守すべき行動基準とし、全ての役員及び従業員に対し周知徹底を図っております。また、関連法令等に精通した弁護士と情報を共有し、関連法令等の動向についてリスク・コンプライアンス委員会を通じて役職員に共有するなど、対応に不備がないよう細心の注意を払っております。
(8) コンプライアンスリスクについて(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大)
当社は、リスク・コンプライアンス規程を定め、役職員に対して法令遵守意識を浸透させております。しかしながら、万が一、当社の役職員がコンプライアンスに違反する行為を行った場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、当該規程の周知徹底を図るとともに、内部監査による遵守状況の確認等を行い、法令遵守のための定期的な教育・指導に努めております。
(9) 知的財産について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社が事業活動を行うに当たり、第三者が保有する知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っておりますが、万が一、第三者の知的財産権を侵害し、当該第三者より損害賠償請求、使用差止請求等がなされた場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、当社が保有する商標権、当社が開発するソフトウェアに係る著作権等の知的財産権が適切に保護されないときは、当社の事業展開及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、引き続き教育・指導及び社内管理体制を強化するとともに、上記のような事実が判明したときは直ちに、事例に応じて弁護士・弁理士等と連携し解決に努める体制を整えております。
組織に関するリスク
(10) 特定人物への依存について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社代表取締役社長である髙井淳は、当社設立以来の代表者であり、本書提出日現在、同氏及び同氏の資産管理会社が当社株式の74.0%を所有する株主であります。同氏はシステム開発に関する経験と知識を有しており、経営方針や事業戦略の決定等、当社の事業活動全般において重要な役割を果たしております。しかしながら、何らかの理由により同氏の業務遂行が困難になった場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては現在、取締役会及び経営会議を通じて他の役員への情報共有を図っており、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めております。
その他リスク
(11) 風評リスクについて(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社及び当社サービスや役職員に対して意図的に根拠のない噂や悪意を持った評判等を流布された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、高品質のサービスの提供に努めるとともに、役職員に対して、情報管理やコンプライアンスに係る教育・指導を定期的に実施するなど、注意喚起を行い、経営の健全性の確保を図っております。
(12) 訴訟等のリスクについて(発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社は、顧客やパートナーと契約を締結する際に、損害賠償の上限額を定めるなど、過大な損害賠償の請求をされないようリスク管理を行っております。しかしながら、契約時に想定していないトラブルの発生や、取引先等との何らかの問題が生じた場合等により、他社から損害賠償請求等の訴訟を提起された場合には、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、顧問弁護士や外部専門家と連携することで、訴訟等のリスク低減に努めてまいります。
(13) 新株予約権行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:小)
当社は、当社の役職員に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。本書提出日現在における新株予約権における潜在株式は940,000株であり、発行済株式総数9,970,000株の9.43%に相当します。
これらストック・オプションが行使された場合、新株式が発行され、株式価値が希薄化する可能性があります。
(14) 配当政策について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
当社は、将来の事業拡大と、それに即応できる財務体質の強化のため、現時点では配当を実施しておりませんが、株主への利益還元の重要性について認識しております。今後、収益力の強化や、経営基盤の安定化を進め、株主に対して安定的且つ継続的な配当の実施を検討していく方針ですが、現時点においては配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。
(15) 調達資金について(発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:小)
当社株式の新規株式上場時における公募増資による調達資金は、人員増員等による人件費の増加、本社施設拡張のための設備投資や地代家賃の増加のために充当の予定です。しかしながら、急激な事業環境等の変化により、計画外の資金使用の可能性や、計画どおりの資金使用を行ったとしても想定通りの投資効果が得られない可能性があります。
(16) 自然災害、事故等について(発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小)
当社の事業拠点は本社所在地である東京都渋谷区にあり、また当社の顧客は首都圏に集中しております。首都圏において大地震、台風等の自然災害及び事故、火災等により、業務の停止、設備の損壊や電力供給の制限等の不測の事態が発生した場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社としては、大規模地震等の緊急事態に遭遇した場合において、損害を最小限に止めつつ、中核となる事業の継続又は早期復旧を可能とするために、緊急時における事業継続のための方針、事前対策等を取り決めております。
(17) 当社株式の流動性について(発生可能性:中、顕在化する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中)
当社株式は、本書提出日現在、代表取締役社長である髙井淳及び同氏の資産管理会社により議決権の70%以上を保有されており、東京証券取引所の定める流通株式比率に係る上場維持基準は25%であるところ、流通株式比率は25.1%にとどまっております。
今後は、既存株主への一部売出しの要請、新株予約権の行使による流通株式数の増加分を勘案し、これらの組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当社はDX関連事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。
① 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国経済は、当社の主要顧客である大企業の業況判断において製造業・非製造業ともに改善が見られました。大企業製造業ではエネルギー価格のピーク時からの下落や円安等が、大企業非製造業ではコロナ禍での経済活動に対する制約の解消等が、業況感の改善に寄与しました。大企業製造業では海外景気の先行きへの不安から、大企業非製造業では物価上昇に伴う需要の減少やコストの増加、人手不足の深刻化等による悪影響への懸念から、先行きについては慎重な見方となっております。
そのような状況において、当社の主要事業領域であるデジタルトランスフォーメーション(DX)に関連するIT投資需要は依然として旺盛であります。当社の定義する「DX」とは、ITを活用して業務の効率化(コスト低減)や付加価値の増加(収益アップ)を実現し、それを通じて事業の競争力を向上することであり、各企業とも存続のために不可欠な取り組みとなっております。DX関連投資を牽引役として、情報サービス業界では今後も売上増加が見込まれている一方、人材不足の深刻化が懸念されております。
このような経営環境のもと、顧客のIT投資効率の最大化を実現するため、当社は各業界大手企業のシステム開発のDX内製支援「0次DX」を推進してまいりました。当社の定義する「内製」とは、事業会社がシステム会社任せにせず自ら主導的にシステム開発を推進することを指しています。当社は顧客の「DX内製」を支援するにあたり、第三者的な受託者という意識ではなく、顧客との間で相談・提案を繰り返しながら協働してシステム開発を進めることを特徴としており、それを「1次」請けを超えた「0次」と表現しております。
当事業年度においては、「0次DX」実現のために顧客と協働してシステム開発を進める「0次システム開発」において、前事業年度に引き続き既存顧客の深耕と新規顧客の開拓を進めました。エンジニアが提供する価値に見合った価格改定や、より市場価値の高い社員の中途採用を進めたことにより、新卒入社者を除くエンジニア社員の平均月単価を、前事業年度末時点の109万円から当事業年度末時点で116万円へアップいたしました。社員エンジニア数は、順調な中途採用と新卒の採用拡大により、前事業年度末時点の182名から当事業年度末時点で219名へ増加いたしました。
パートナー企業の拡大に資するシステム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」においては、会員の獲得及び有償化を推進し、総会員数は前事業年度末時点の1,330社から当事業年度末時点で2,091社へ増加いたしました。
これらの結果、当事業年度の経営成績は、売上高5,298,404千円(前期比7.3%増)、営業利益388,134千円(同28.5%増)、経常利益385,057千円(同15.8%増)、当期純利益275,454千円(同3.5%減)となりました。
② 財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産合計は1,719,358千円となり、前事業年度末に比べ114,376千円増加いたしました。これは主に、売上高の増加により現金及び預金が88,274千円、売掛金が21,065千円増加したことによるものです。
固定資産合計は118,496千円となり、前事業年度末に比べ12,641千円減少いたしました。これは主に、役員退職慰労引当金の支給等により繰延税金資産が9,768千円減少したこと等によるものです。
(負債)
当事業年度末における流動負債合計は950,201千円となり、前事業年度末に比べ7,684千円増加いたしました。これは主に、従業員の増加に伴い賞与引当金が8,321千円増加したことによるものです。
固定負債合計は173,768千円となり、前事業年度末に比べ181,404千円減少いたしました。これは、長期借入金の返済により長期借入金が181,404千円減少したことによるものです。
(純資産)
当事業年度末における純資産は713,885千円であり、前事業年度末に比べ275,454千円増加いたしました。これは、当期純利益の計上により利益剰余金が275,454千円増加したことによるものです。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は1,155,771千円となり、前事業年度末と比べ88,274千円増加しております。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果、得られた資金は292,204千円(前事業年度は92,320千円の収入)となりました。主な内訳は、税引前当期純利益385,057千円(前事業年度は314,094千円)を計上した一方で、売上債権の増加21,065千円(前事業年度は111,104千円増加)、仕入債務の減少25,371千円(前事業年度は94,744千円減少)、役員退職慰労引当金の減少40,000千円(前事業年度は40,000千円増加)等によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果、使用した資金は7,327千円(前事業年度は30,992千円の収入)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出7,071千円(前事業年度は14,336千円の支出)によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果、使用した資金は196,602千円(前事業年度は228,164千円の支出)となりました。これは、長期借入金返済による支出196,602千円(前事業年度は228,164千円の支出)によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当事業年度 (自2023年1月1日 至2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
DX関連事業(千円) |
5,298,404 |
107.3 |
(注)1.当社は、DX関連事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前事業年度 (自2022年1月1日 至2022年12月31日) |
当事業年度 (自2023年1月1日 至2023年12月31日) |
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販売高(千円) |
割合(%) |
販売高(千円) |
割合(%) |
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株式会社セブン&アイ・ネットメディア |
572,488 |
11.6 |
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(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、次の文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。財務諸表の作成に際し、資産・負債及び収益・費用の決算数値に影響を与える見積り項目について、過去の実績や状況を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
この財務諸表作成のための基本となる重要な事項につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりです。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(売上高)
当事業年度において、売上高は5,298,404千円(前期比7.3%増)となりました。既存顧客の売上高の前事業年度比での増加に加え、新規顧客の開拓が進んだことにより増収となりました。また、エンジニアのレベルに応じた価格改定の推進や単価の高いプロジェクトマネージャーの採用を引き続き推進したこと等により、新卒入社者を除くエンジニア社員の当事業年度末における平均月単価は116万円を超え、前事業年度末より6.7%上昇しました。当事業年度末におけるエンジニア社員数は新卒採用・中途採用とも拡大して219名となり、前事業年度末より20.3%増加しました。売上拡大において必要な外部協力企業(業務委託先)の開拓に資するプラットフォームサービスであるWhiteBoxの総会員数は、広告宣伝投資の効果等により当事業年度末で2,091社となり、前事業年度末より57.2%増加しました。これらの結果、売上高が順調に拡大しております。
(売上原価、売上総利益)
当事業年度の売上原価は3,750,945千円(前期比4.9%増)となりました。これは、売上高の拡大に伴う給与手当及び業務委託費等の人件費を中心とした開発関連費用の増加によるものです。この結果、売上総利益は1,547,459千円(同13.5%増)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
当事業年度において、販売費及び一般管理費は1,159,324千円(前期比9.2%増)となりました。社員の採用に伴い、給与手当、賞与及び法定福利費が前期比78,919千円、採用募集費が同63,695千円増加しました。また、業務改善・業務効率化及び上場準備を進めるにあたって社外の支援を受けるための業務委託費が同27,520千円増加しました。これらの結果、営業利益は388,134千円(同28.5%増)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
当事業年度の営業外収益は主に助成金収入の発生により、1,837千円(前期比94.7%減)となりました。営業外費用は主に支払利息の計上により、4,914千円(同15.1%増)となりました。これらの結果、経常利益は385,057千円(同15.8%増)となりました。
(法人税等合計、当期純利益)
当事業年度の法人税、住民税及び事業税は99,834千円計上しております。また、税効果会計の適用により法人税等調整額を9,768千円計上しております。これらの結果、当期純利益は275,454千円(前期比3.5%減)となりました。
③キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
④資本の財源及び資金の流動性
当社の運転資金需要のうち主なものは、受注拡大のための人件費及び業務委託費や、人員獲得のための採用募集費であります。
当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保するため、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入により資金調達を行っております。設備投資をする場合等、必要に応じてエクイティファイナンスも検討する方針であります。
なお、当事業年度末における有利子負債の残高は505,172千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,155,771千円となっております。
⑤経営成績に重要な影響を与える要因について
「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
⑥経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析
経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおり、全社においては売上高及び営業利益、0次システム開発においては社員エンジニアの人数及び社員エンジニア1人当たり売上高、WhiteBoxにおいては総会員数を経営指標として重視しております。
当該指標は次のとおり推移しております。なお、社員エンジニア1人当たり売上高については、当該年に入社した新卒エンジニアを除いて計算しております。
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前事業年度 (自2022年1月1日 至2022年12月31日) |
当事業年度 (自2023年1月1日 至2023年12月31日) |
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売上高(通期) |
4,939,952千円 |
5,298,404千円 |
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営業利益(通期) |
302,037千円 |
388,134千円 |
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社員エンジニアの人数(期末) |
182人 |
219人 |
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社員エンジニア1人当たり売上高(期末) |
1,095千円 |
1,168千円 |
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WhiteBox総会員数(期末) |
1,330社 |
2,091社 |
⑦経営者の問題意識と今後の方針について
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
該当事項はありません。
該当事項はありません。