第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

当社グループは「ウェルビーイングのスタンダードを創る」というビジョンを掲げております。

当社グループが定義している「ウェルビーイング」とは、以下のとおりです。

「毎日、楽しくて仕方がない」という気持ちで目が覚める。

信頼できる職場で一日を過ごし、満ち足りた気持ちで家に帰る。

やる気に満ち溢れ、自らだけではなくチームを奮い立たせ、そして、信じるビジョンを達成する。

 

多くの労働者は、限界まで働き、心や身体の健康を失って、初めて、「その重要性に気付く」ということが少なくないのではないかと考えます。

当社グループはメンタルヘルスの問題の解決を通じて、働く人々が健康問題で不幸に陥らない「心身の健康問題を考えることが身近になる世界」を実現したいと考えております。

当社グループでは、このビジョンのもと、企業にとって最適なメンタルヘルスケア体制をクラウドサービスを活用しながら構築運用し、多くの職場における従業員のメンタルヘルス問題に取り組み、解決の方策を探し続けていきたいと考えております。

 

(2)経営戦略及び市場戦略等

①メンタルヘルスソリューション事業の成長戦略

当社グループでは、中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業の成長のため、以下の戦略をとっております。

ⅰ. 売上高に占めるエンタープライズの比率向上

当社グループでは、従業員1,000名以上かつ「産業医クラウド」の売上高月額20万円以上(見込を含む)の企業(グループ)を「エンタープライズ」と定義しております。エンタープライズは一件当たり売上金額が大きく、MRR(月次経常収益)の増加に大きく貢献するため、売上全体におけるエンタープライズの比率向上を目指しております。

2023年12月末現在で、1,000人以上の従業員の顧客企業数は当社の総契約件数中7.8%の125グループであります。

 

ⅱ. エンタープライズの一顧客グループ当たり単価の向上

エンタープライズは、従業員に比例して取引金額が大きいこと、ニーズが多種多様であること、グループ全体の労働安全衛生の対応等から、単価向上が見込みやすい顧客グループです。エンタープライズは、産業医業務の「形式運用」から職場のメンタルヘルスケア対応にかかる「課題解決型運用」への道を模索している先が多く、当社スタッフによるカウンセリングを実施することで、ニーズに則した産業医及び保健師による役務提供、企業の内実に合致した「ELPIS」サービスの追加が期待できるため、長期契約による売上単価の向上を見込んでおります。

実際に、毎年エンタープライズ一顧客グループ当たりの単価は向上しており、平均単価向上を加速させていくことが、当事業の継続的な成長に重要と考えております。

 

ⅲ.「ELPIS」導入促進によるメンタルヘルスソリューション事業のセグメント利益の向上

従来は産業医が役務提供を行っていた業務の一部を「ELPIS」で代替することにより、クラウドサービス比率を向上させることが重要であると考えております。当該マーケットは、単純に産業医による役務を提供するだけであれば価格競争に陥ってしまいます。新規契約時には産業医の役務提供からスタートしつつも、メンタルヘルスケアや健康管理に関するサービスである「ELPIS」を顧客に採用・継続利用してもらうことによって、セグメント利益を向上することが可能と考えております。

 

ⅳ.「産業医クラウド」契約に関するチャーンレート(解約率)の改善

当社グループとしては、月次のチャーンレートに改善の余地があると考え、多種多様なサービスを顧客企業に提供すること、及びカスマターサクセス機能の強化を実施することが、当社の継続的な成長に重要と考えております。

 

②当社グループ内事業によるシナジー戦略

当社グループは、メンタルヘルスソリューション事業、メディカルキャリア支援事業、デジタルマーケティング事業の3つの事業を行っております。これら3つの事業は当社グループが提供するメンタルヘルス関連サービスにおいて密接に関連しております。

デジタルマーケティング事業において創業以来実施している医学会向けサービスによって蓄積された医師のデータベースとWebマーケティングのノウハウを活用することで、当社グループの中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業、並びにメディカルキャリア支援事業における成約確率の高い見込み顧客の開拓に結びつけるための戦略をとっております。

また、メディカルキャリア支援事業においては、売上向上を目指して地方の医療機関と接触を深めておりますが、それによって地方における産業医候補の医師の情報を獲得し、地方の企業におけるメンタルヘルスソリューション事業の見込み顧客開拓につなげることを目指しております。

上記戦略を実行することにより、見込み顧客開拓をグループ全体で実施することで、シナジーを発揮し、マーケティングコストの低減を図っていきます。

 

(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、当社グループの中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業に関し、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、月次経常収益(MRR)を重要な経営指標と位置付けております。また、MRRを構成する指標として、①エンタープライズ企業の契約社数及び全体の件数に占める比率、②企業規模別契約単価、③「産業医クラウド」契約に関するチャーンレート(解約率)、④売上継続率(NRR)も、同様に重要な経営指標であると捉えております。

 

(4)経営環境

厚生労働省より3年ごとに公表されている「患者調査(傷病分類編)」によると、精神疾患により医療機関を受診している患者数は、近年大幅に増加しており、2002年では258万人であったものが、2017年は419万人、2020年では615万人になっています。特に、気分(感情)障害(躁うつ病を含む)、神経症性障害,ストレス関連障害及び身体表現性障害は、2002年137万人であったものが2017年は248万人、2020年には386万人と、大幅な増加がみられます。さらに、「令和2年 労働安全衛生調査(実態調査)」及び「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)」によれば、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業・退職した労働者の割合は全体では0.5%から0.8%へ増加、労働者1,000人以上の事業所においては0.8%から1.2%へと増加しております。2020年以降の新型コロナウイルス感染症蔓延によってテレワークが普及したことから、メンタルヘルス不調は増加傾向にあると推察されます。

こうした状況変化に伴い、行政によるメンタルヘルス関連の規制が強化されてきています。産業医については、労働安全衛生法により、企業規模に応じた産業医の選任義務と選任人数等が定められておりますが、それに加え、2015年には労働安全衛生法が改正されてストレスチェック制度が義務化されました。また、2019年には働き方改革関連法が施行され、有休休暇取得の義務化や大企業における時間外労働時間の罰則付き上限規制が法制化されました。5年間猶予されていた医師、建設、運輸業については、2024年4月より時間外労働時間の上限規制の適用が予定されております。また、厚生労働省が2020年3月に改定した「テレワークガイドライン」でも、事業主・企業の労務担当者用の「テレワークを行う労働者の安全衛生を確保するためのチェックリスト」の中に、メンタルヘルス対策のチェック項目が入っております。

企業は法令上の必要性から産業医を選任するといった「形式運用」から職場のメンタルヘルスケア対応にかかる「課題解決型運用」に移行している最中であり、従業員のメンタルヘルスケア対応を強化し、健康問題を解決していこうという流れが起き始めています。経済産業省が進めている健康経営優良法人の取得企業(注1)は毎年増加しており、企業による従業員への健康配慮の気運が高まっております。しかし、多くの企業で選任している産業医では、新型コロナウイルス感染症による環境変化等の最新の動向を踏まえたメンタルヘルスケアへの対応ができていない可能性があります。

当社は、企業が従業員のメンタルヘルスケアを実現していくためには、高い専門性を持つ産業医、そして、厚生労働省が推奨する通称「4つのケア(セルフケア、ラインによるケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケア)」による体制整備を実現し、各種ハラスメント対策を含め、適正な運用を実現し続けることが重要と考えています。そのため、こうした企業から当社への問い合わせの多くは、既存産業医の交代、保健師の登用、メンタルヘルス対応、健康管理室(注2)の立ち上げ等となっております。

総務省・経済産業省「令和3年経済センサス-活動調査 (企業等に関する集計 産業横断的集計) (2023年6月27日)」によれば、産業医選任義務の対象となる従業員50人以上の企業数は、日本国内に約10万社ありますが、上記の「形式運用」から「課題解決型運用」への変化により、メンタルヘルスソリューション事業の事業拡大の余地は大きいものと考えております。

 

(注1)健康経営は、日本再興戦略、未来投資戦略に位置づけられた「国民の健康寿命の延伸」に関する取り組みの一つ。経済産業省では、健康経営に係る各種顕彰制度として、2014年度から「健康経営銘柄」の選定を行っており、2016年度には「健康経営優良法人認定制度」を創設している。

(注2)健康管理室: 社員の健康管理業務全般を担う機能

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループでは、優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題として、下記の4点があると考えております。

 

① 収益基盤の強化

当社グループは、これまでも各事業において、収益基盤を構築してまいりましたが、今後の中長期的な成長を実現するために、さらなる収益基盤の強化が重要な課題であると認識しております。

この課題に対応するために、まずメンタルヘルスに関する認知活動の強化が重要であると考え、メディアやセミナーを通じたメンタルヘルスに関する広報活動を強化するため、2024年1月にデジタルマーケティング事業部をビジネスインキュベーション部へ改組し、グループ内のマーケティング支援活動及び新規事業開発を行うことといたしました。加えて、当社の事業と親和性の高い企業との業務提携や企業の買収などを通じ、業容拡大を目指しております。

また、メンタルヘルスソリューション事業においては、多くの職場でのメンタルヘルスケア、健康経営に貢献できるようなサービスコンテンツの開発や、産業医の登録数の増加と産業医業務の質的向上、カスタマーサクセスチームによるカスタマーサポート体制の一層の強化が必要であると考えております。メディカルキャリア支援事業においては、求職医師の登録数の増加、求人医療機関数の増加等を実現するための方策の検討、株式会社「ヘルスケアDX」のクリニック運営支援を通じた医療機関ネットワークの構築などを進めてまいります。

 

② サービスの健全性の維持及び向上

当社グループの事業において、インターネットを通じたビジネスとなっているものに関しては、システムを安定的に稼働させることが重要な課題であると認識しております。今後においても、セキュリティの向上等に適時に対応し、技術革新等の事業環境の変化にも柔軟に対応できるシステム開発体制を構築することで、システムの安定稼動や高度なセキュリティが担保されたサービス運営に努めてまいります。

 

③ 組織力、内部管理体制の強化

ⅰ.優秀な人材の確保及び育成

当社グループでは、産業保健、メンタルヘルス、医療関連の専門的知識を有した優秀な人材の確保及び育成が重要な課題であると認識しております。事業規模に応じた効率的な運営を意識し、高度な知識・経験のある人材の確保に積極的に取り組んでまいります。また、人材育成のために各種研修等の教育・研修制度も充実させてまいります。

 

ⅱ.内部管理体制の強化

当社グループが継続的に成長し続けるためには、内部管理体制の強化が必要不可欠な課題であると認識しております。今後においても、内部統制システムの運用を徹底し、事業運営上のリスクの把握と管理を適切に行える体制構築に努めてまいります。

 

ⅲ.情報管理体制の強化

当社グループでは、個人情報等の機密情報につきまして、ネットワークの管理、「個人情報保護規程」の制定及び遵守、全従業員を対象とした社内研修の徹底、内部監査によるチェック等により、情報管理体制を構築しております。今後においても、コンプライアンスを重視し、情報管理体制の強化に努めてまいります。

 

④ 財務上の課題

当社グループの中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業においては、現状を未だ投資フェーズと捉えており、事業の親和性の高い企業の買収や、サービス開発・広告宣伝等に注力しております。そのため、事業拡大のための成長資金の調達も視野に入れ、資金調達の多様化を含む財務体質の強化を図っていきたいと考えております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

  当社グループでは、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めておらず、サステナビリティ関連のリスク及び機会、管理するためのガバナンスの過程、統制及び手続等の体制をその他のコーポレート・ガバナンスの体制と区別しておりません。詳細は、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。

 

 

(2)戦略

 当社グループでは、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連の戦略における、リスク及び機会に対処するための重要な取り組みは検討中であります。

 また、当社グループは、「第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」」に記載したとおり、持続的な成長や企業価値向上を実現していくうえで、人材は最も重要な経営資源であり、人材の採用及び育成が重要であると認識しております。

 人材の確保及び教育体制、各種制度の整備における目標及び実施について、今後、検討しながら具体的に取り組んでまいります。

 

(3)リスク管理

 現在、当社ではサステナビリティに関する組織は設定しておりませんが、全社的なコンプライアンス及びリスク管理については、代表取締役社長を委員長とするコンプライアンス委員会、及びコーポレート本部担当取締役を委員長とするリスク管理委員会で行っております。詳細は、「第4提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」」をご参照ください。

 

(4)指標及び目標

 当社グループでは、現状、サステナビリティに係る基本方針を定めていないことから、サステナビリティ関連の具体的な指標及び目標については、今後、サステナビリティの基本方針の策定と併せて検討を進めてまいります。

 また、当社では、「(2)戦略」において記載した、多様な人材の維持及び育成並びに社内環境整備に係る指標について、具体的な取り組みを行っているものの、本報告書提出日現在においては、当該指標についての目標を設定しておりません。

 今後、関連する指標のデータの収集と分析を進め、目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討してまいります。

 

 

3【事業等のリスク】

 

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりであります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)事業環境に関するリスク

① インターネット関連市場の動向について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、メンタルヘルスソリューション事業、メディカルキャリア支援事業、デジタルマーケティング事業の3つの事業において、見込み顧客の獲得やサービスの提供等に関し、インターネットを利用した事業を展開しており、当社グループ事業の継続的な発展のためには、さらなるインターネット環境の整備、インターネットの利用拡大が不可欠と考えております。

しかしながら、例えば、個人情報に関するより厳しい規制が生じるなど、インターネットの利用等に関する新たな法的規制の導入やその他予期せぬ要因等により、今後、インターネット利用の順調な発展が阻害された場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 検索エンジンへの対応について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループが展開する3つの事業では、主に特定の検索エンジン(「Google」、「Yahoo! JAPAN」等)から見込み顧客を集客しております。そのため、当社グループでは、SEO(検索エンジンの最適化)等の必要な施策を講じて集客力を強化しております。

しかしながら、検索エンジンにおける表示結果(順位)は、その運営者のロジックや判断によるものであり、当社グループが関与する余地はありません。そのため、検索エンジン運営者の方針やロジック変更等により、これまでのSEOが有効に機能しなくなった場合、集客効果が低下し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ システムの安全性について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループが行う事業において、インターネットや各種業務系システムを利用しております。それらの安定稼働が業務の遂行上、必要不可欠であります。そのため、ネットワーク、システムの監視、日常的な保守管理等により、システム障害を未然に防ぎ、万一発生してしまった場合でも迅速に適切な対応を行える体制を構築しております。

しかしながら、システムへの一時的な過負荷や電力供給の停止、ソフトウエアの不具合、巧妙化・複雑化したサイバー攻撃、不正アクセス、コンピュータウイルスの侵入、自然災害や大規模な事故、その他予期せぬ要因等により、当社グループのシステム障害や情報漏洩が発生した場合、相当な費用負担や社会的信用の低下により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 技術革新について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

インターネット関連市場では、技術革新が活発に行われており、その速度は早く、新しいサービスが次々と生まれております。当社グループでは、インターネットを活用したサービスの展開を行っており、常に業界の動向を注視し、適時に事業戦略を見直し、必要に応じて迅速に技術革新に対応するため、既存サービスに新たな技術を展開できる開発体制を構築してまいります。

しかしながら、技術革新の内容によっては、対応するための相当な開発費用が発生する可能性があり、また、適切な対応ができない場合は当社サービスの競争力が相対的に低下する可能性があります。そのような場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 大規模な自然災害・感染症等について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社では、有事に備えた危機管理体制の整備に努め対策を講じておりますが、大地震、台風等の自然災害や事故、火災等、また新型コロナウイルス感染症等の感染症の流行が、想定を大きく上回る規模で発生し、事業・サービスの停止、設備の損壊や電力供給の制限等、不測の事態が発生した場合には、当社グループによる事業・サービスの提供に支障が生じる可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。特に、新型コロナウイルス感染症の影響は、当社グループの業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があり、引き続き注視し必要な開示を行ってまいります。

 

⑥ 競合について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当連結会計年度末現在において、当社グループが展開する3つの事業において、競争環境は厳しい状況にあると認識しております。

当社グループは、今後とも顧客ニーズへの対応を図り、サービスの充実、向上を進めていく方針ではありますが、これらの取り組みが予測どおりの成果を上げられない場合や、より魅力的・画期的なサービスやより競争力のある条件でサービスを提供する競合他社の出現や、高い資本力や知名度を有する企業等の参入などにより、競争が激化した場合、ユーザーの流出や集客コストの増加等が想定されます。そのような場合には、当社グループが優位性を確保し、企業価値の維持向上が図れるか否かは不確実であるため、競合の状況により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 業界の成長性について(発生可能性:小、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループの中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業は、顧客企業と準委託契約により、産業医に関する業務を引受け、一方で、産業医との準委任契約により、当該産業医が顧客企業の産業医に関する業務を行うことを中心とした事業であります。

様々な職場におけるメンタルヘルス問題は複雑化、深刻化しております。また、働き方改革の推進もあり、各職場における産業医及び保健師等が果たす役割の重要性が高まってきている状況にあります。こうしたことから、今後一層、働く人々の健康管理に関して、良質な対応を行えるレベルの高い産業医を求める企業が増えていくことが予想されます。当社グループは、産業医や保健師等と連携しながら、受託業務の質的レベルを高め、顧客企業に満足して頂ける努力を続け、この事業をますます拡大していく所存であります。

しかしながら、業界を取り巻く法規制、競合の状況、景気動向、社会の変化など、様々な要因により、当該市場の成長が鈍化したり、当社グループの売上が予想どおりに拡大しない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業体制に関するリスク

① 事業拡大に伴うシステム及びサービス開発について

 (発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループは、サービスの安定稼働やユーザー満足度向上を図るため、システムやサービスの保守、開発、コンテンツ及び機能の拡充を継続的に行っていくことが必要であると認識しており、新サービスの導入、セキュリティ向上に備えて継続的な開発を計画しております。効果を十分に検証しつつ、計画的に開発を進めるべく、体制を一層、強化してまいります。

しかしながら、システムやサービス開発計画の前倒しや事業拡大により予定外の開発費用が生じる可能性、また、適切な対応ができない場合はサービスの稼働やユーザー満足度が低下する可能性があります。また、それらのシステムやサービス開発が想定どおりに進捗しない、期待する成果が得られない、さらには法的もしくは事業上の新たなリスク要因が発生する可能性があります。そのような場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 特定事業への依存について(発生可能性:小、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループにおいて、メンタルヘルスソリューション事業は当社グループの中核事業であり、今後の成長に大きく寄与するものと考えております。当社グループの人的、資本的経営資源をこの事業に集中投下しており、当該事業の推進に支障がないような体制を継続的に維持していく所存であります。

しかしながら、当該事業における競争激化や事業環境の変化等により、当該事業が縮小し、その対応が適切でない場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 子会社・株式会社Avenirのメディカルキャリア支援事業における業績変動について

 (発生可能性:大、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社子会社である株式会社Avenirのメディカルキャリア支援事業においては、医療業界における医師の労働市場の変化の影響を受けるとともに、医療機関の医師採用における季節的な変動要因があり、下期に比較して上期(特に4月頃)に売上、利益が集中する傾向があります。メディカルキャリア支援事業の業績は、このような季節的な変動要因により、概ね利益が上期に偏る傾向があります。また、医師の労働市場の全般的な状況変化、他社との競合状況等により、当該事業の業績は大きな影響を受け、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

こうした中、医療機関による非常勤の医師採用を推進するなど、季節的な業績変動をできる限り抑えるような対応を図ってまいります。

 

④ 子会社・株式会社Avenirのメディカルキャリア支援事業における免許について

 (発生可能性:小、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社子会社である株式会社Avenirにおいて行うメディカルキャリア支援事業は、職業安定法に基づき、有料職業紹介事業として厚生労働大臣の許可(許可番号:13‐ユ‐307447)を受けて行っており、主に医師を医療機関に紹介する事業を行っております。

事業主としての欠格事由に該当したり、法令に違反した場合には、事業の許可を取り消し、又は事業の停止を命じられることがあります。当社グループでは、徹底して社員教育に努めるとともに、内部監査等により関連法規の遵守状況を日頃より監視し、法令違反等の防止に努めております。しかしながら、当社グループ各社及び役職員による重大な法令違反等が発生し、事業許可の取消し又は事業停止を命じられるようなことがあれば、当該事業を行えなくなることがあり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 継続的な投資について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループは、継続的な成長のため、認知度、信頼度を向上させることにより、より多くのリード(見込み顧客)を獲得し、また既存の顧客を維持していくことが必要であると考え、積極的に広告宣伝費等にコストを投下してきており、今後も継続して広告宣伝等を行っていく方針であります。費用対効果を検証しつつ、有効な広告宣伝の方法を継続的に模索しながら対応してまいります。

しかしながら、広告宣伝等が十分な成果が得られない場合やコストの上昇等が生じた場合、投資が計画どおりの収益に結びつかない場合等には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)社内体制に関するリスク

① 小規模組織であることについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは組織規模が小さく、規模に応じた業務執行体制となっております。また、今後の堅調な事業成長のためには、有能な人材の確保と育成が必要であると認識しており、適宜、採用を行い、社内研修制度の充実を図り、組織力の強化に注力してまいります。

しかしながら、適切なタイミングで当社グループの求める人材の確保が十分にできない場合や、当社グループの役員や重要な業務を担当する従業員の流出等により、必要な人材を確保できなくなった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 内部管理体制の強化について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、内部管理体制の一層の充実を図ることが必要であると認識しております。業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するための内部統制システムを構築、整備、運用するため、コーポレート本部の人員増強・教育、外部の専門家の活用等により内部管理体制を一層、強化してまいります。

しかしながら、事業の急速な拡大等により、それに応じた内部管理体制の構築に遅れが生じたり、また内部統制システムに重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、将来にわたっても常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません、その場合には、適切な事業運営が困難となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 特定の人物への依存について(発生可能性:小、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社創業より代表取締役社長を務めております刀禰真之介は、当社グループが中核事業とするメンタルヘルス業界について、豊富な知識と事業経験、並びに多数の人的関係を有しており、当社グループの経営において極めて重要な役割を果たしております。

当社グループでは、役員、幹部社員の情報共有や権限の委譲を徐々に進め、経営組織の強化を図り、過度の依存を避けた体制の構築を図って参りますが、何らかの理由で同氏が当社グループの経営に参画できなくなった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)法的な問題に関するリスク

① 法的規制について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループは、「会社法」「労働基準法」等、株式会社が一般的に幅広く遵守しなくてはならない法的規制のほか、事業を展開する上での固有の法的規制を受けております。当社の行う事業は職業安定法「労働安全衛生法」不当景品類及び不当表示防止法」「個人情報の保護に関する法律」「下請代金支払遅延等防止法多数の法令や、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告知)各法令の監督官庁が定める省令・指針・ガイドライン等により規制を受けています当社グループでは各事業部やコーポレート本部において、法令変更有無及び変更内容、法令違反などを確認しております各種法令に関する情報関係各省庁のホームページを確認し最新の情報を随時アップデートすることで法令変更がある場合の法令違反を未然に防止しまた変化に対して迅速な対応をとれるように努めております

このような法令の制定や改正監督官庁による行政処分新たな規制の策定又は改定等により当社グルー プの事業が新たな制約を受け又は既存の規制が強化された場合には当社の業績及び事業運営に影響を及ぼす可能性がありますその場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 個人情報の管理について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:大)

当社グループは、事業を行う上で、顧客企業、医師、医療機関等の住所、氏名、電話番号等の個人を特定できる情報を取得しており、当社グループには「個人情報の保護に関する法律」が定める個人情報取扱事業者としての義務が課せられております。

当社グループでは、同法及び関連法令等を遵守し、それらの個人情報や取引データの取り扱いに細心の注意を払い、流出防止の体制を維持することを事業運営上の重要事項と認識しております。そのため、当社グループでは、ネットワークの管理、個人情報保護方針及び個人情報保護規程の制定及び遵守、社内研修の徹底、内部監査によるチェック等により、個人情報保護に積極的に取り組んでおります。また、当社グループは、個人情報の保護及び管理の観点からPマークを取得しております。

しかしながら、外部からの不正アクセスや、当社グループの関係者や業務提携先等の故意又は過失による漏洩、改ざん、不正使用等の不測の事態により、個人情報が外部に流出した場合には、法令抵触への適切な対応を行うための費用の発生や、当社グループに対する損害賠償の請求、当社グループの社会的信用の低下等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 知的財産権について(発生可能性:小、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、当社グループが行う事業に関する知的財産権の獲得に努めることに加え、第三者の知的財産権を侵害しないよう、十分な注意を払うことを基本方針としておりますが、当社グループの事業分野において、現在、申請すべき知的財産権及び侵害が危惧されるような知的財産権の認識はありません。しかしながら、既に当社グループの認識していない知的財産権が成立している可能性、又は今後新たに第三者により著作権等が成立する可能性があります。このような場合においては、当社グループが第三者の知的財産権を侵害したことによる損害賠償や差止の請求、又は当社グループに対するロイヤリティの支払い要求等を受けることにより、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

また、当社グループの知的財産権が第三者からの侵害を把握しきれない、もしくは適切な対応がなされない場合、又は知的財産権の保護のために多額の費用が発生する場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

④ 訴訟に関するリスクについて(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当連結会計年度末現在において、当社グループが当事者として関与している事業上の問題に関する重要な訴訟はありません。しかしながら、当社グループの今後の事業展開において、違法行為、トラブル、第三者への権利侵害があった場合等には、当社グループに対して、損害賠償請求等の訴訟その他の法的手続きが行われる可能性があります。その訴訟等の内容や、損害賠償の金額によっては、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

このような訴訟等が発生しないように、コンプライアンス重視、リスク回避の対策、社員教育を徹底していく方針であります。

 

(5)その他に関するリスク

① 風評被害について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループが行う事業にかかるトラブル、クレーム等、ソーシャルメディアの普及に伴い、インターネット上の書き込みや、悪意のある口コミ投稿、並びにそれらを起因とするマスコミ報道などによる風評被害が発生・拡散した場合、その内容の正確性にかかわらず、当社グループのブランドイメージ及び社会的信用に影響が生じ、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

このような風評被害等が発生しないように、コンプライアンス重視、クレーム対応、社員教育を徹底していく方針であります。

 

② 配当政策について(発生可能性:中、発生する時期:特定時期なし、影響度:中)

当社グループは、成長途上であるため、株主に対する利益還元と同時に、財務体質の強化、当社グループの事業分野での競争力の確保を経営上の重要課題と認識しております。そのため、当社グループは創業以来配当を実施しておらず、内部留保を充実させ、事業効率化と事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。

今後においても、企業価値の最大化のため、当面の間は内部留保の充実を図る方針であります。将来的には、各事業年度の経営成績を勘案しながら株主に対する利益還元を検討していく方針ですが、現時点においては、配当実施の可能性、その実施時期等については未定であります。

 

③ 新株予約権行使による株式価値の希薄化について(発生可能性:大、発生する時期:数年以内、影響度:中)

当社グループは、取締役、従業員等に対し、インセンティブを目的とした新株予約権(以下「ストック・オプション」という)を付与しております。これらのストック・オプションに加え、今後、付与されるストック・オプションの行使が行われた場合には、当社株式が新たに発行又は交付されることにより、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があるとともに、かかる株式が大量に市場で売却されることとなった場合には、適切な株価形成に影響を与える可能性があります。

なお、本書提出日の前月末現在(2024年2月末)における、これらのストック・オプションによる潜在株式数は1,058,200株であり、潜在株式数を含めた発行済株式総数11,165,500株の9.5%に相当しております。

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ437,720千円増加し、1,733,835千円となりました。

流動資産は前連結会計年度末に比べ345,362千円増加し、1,335,626千円となりました。これは主に、事業の拡大により現金及び預金が254,203千円、売掛金が125,955千円増加し、それぞれ913,714千円、365,411千円となったことによるものであります。

固定資産は前連結会計年度末に比べ92,357千円増加し、398,209千円となりました。これは主に、本社及び子会社事務所増床等により有形固定資産が24,443千円増加し38,009千円となったこと及び投資その他の資産の差入保証金が20,604千円増加し28,463千円になったことによるものです。

 

(負債)

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ22,426千円減少し、618,319千円となりました。

流動負債は前連結会計年度末に比べ100,937千円減少し、405,858千円となりました。これは主に、未払法人税等が77,393千円減少し57,065千円となったこと、未払金が39,811千円減少し71,383千円となったこと、及び買掛金が36,976千円減少し、96,547千円となったことによるものであります。

固定負債は前連結会計年度末に比べ78,511千円増加し、212,461千円となりました。これは、長期借入金が78,511千円増加し、212,461と千円となったことによるものです。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ460,146千円増加し、1,115,516千円となりました。これは親会社株主に帰属する当期純利益441,371千円の計上により利益剰余金が441,371千円増加したこと、並びに新株予約権の行使により資本金及び資本剰余金がそれぞれ9,400千円増加したことによるものです。

 

② 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国の経済においては、新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後のイベント再開や観光等のインバウンド需要の増加等により経済活動再開の動きが活発化しましたが、円安進行、中国経済の減速、東欧や中東の地政学リスクの高まり等の下押し要因により、全体としては不透明感のぬぐえない状況となりました。

このような状況のなかで当社グループは、不確実な環境下でも着実な成長を実現できるように、主力事業であるメンタルヘルスソリューション事業において「ELPIS」のサービス強化や顧客サポート体制の向上に取り組みました。また、前連結会計年度に新規サービス提供を目的として設立した子会社「株式会社ヘルスケアDX」、東海地域における営業基盤の強化等を目指して連結子会社化した「株式会社明照会労働衛生コンサルタント事務所」も業績を伸ばしており、当社グループの成長に寄与しております。

 この結果、当連結会計年度の売上高は2,608,600千円(前連結会計年度比14.0%増)、営業利益は501,093千円(同35.5%増)、経常利益は495,854千円(同43.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は441,371千円(同66.5%増)となりました。

 

セグメント別業績は次のとおりであります。

※2024年1月1日より、デジタルマーケティング事業部をビジネス・インキュベーション部へと改組しております。

 

a. メンタルヘルスソリューション事業

当連結会計年度においては、大手上場企業を主な対象としたコンサルティング提案営業の体制を整備し、既存顧客への追加サービスの提案や追加の事業場獲得などの契約単価向上施策を取ってまいりました。さらに、新規顧客獲得のための追加のマーケティング施策を実施しました。これらに加え、「株式会社ヘルスケアDX」及び「株式会社明照会労働衛生コンサルタント事務所」が売上に貢献しました。

この結果、当連結会計年度における当セグメントの業績は、売上高2,173,595千円(前連結会計年度比43.0%増)、セグメント利益278,352千円(前連結会計年度比233.2%増)となりました。

 

b. メディカルキャリア支援事業

当連結会計年度においては、自治体や職場におけるワクチン接種の体制構築に係る医師紹介等による売上は前連結会計年度と比較して減少しました。しかしながら、医師の転職市場の環境変化に柔軟に対応したことにより、常勤医師の紹介は予想を上回る結果となりました。

この結果、当連結会計年度における当セグメントの業績は、売上高370,753千円(前連結会計年度比46.9%減)、セグメント利益177,887千円(前連結会計年度比46.4%減)となりました。

 

c. デジタルマーケティング事業

当連結会計年度においては、Webサイト制作受注市場での個人事業主との価格競争による受注単価、及び粗利の低下傾向を受けて、医学会を中心とした既存顧客の保守案件の受注に注力しました。また、デジタルマーケティング支援業務では、グループ内事業のウェビナー等による集客サービスを活発化させ、マーケティングを内製化することにより全体の利益率向上に寄与しました。

 この結果、当連結会計年度における当セグメントの業績は、売上高64,251千円(前連結会計年度比8.4%減)、セグメント利益55,253千円(前連結会計年度比343.9%増)となりました。

 

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末の現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ254,203千円増加し、913,714千円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は前連結会計年度末に比べ199,948千円減少し、177,541千円となりました。これは主な増加要因としては、税金等調整前当期純利益522,831千円、減価償却費24,480千円、支払利息3,241千円、未収消費税等の減少1,720千円等があった一方で、減少要因としては、売上債権の増加125,955千円、未払金の減少39,811千円、仕入債務の減少36,976千円等があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は前連結会計年度末に比べ169,715千円減少し、90,615千円となりました。これは事務所増床に伴う有形固定資産の取得による支出30,845千円、敷金及び保証金の差入による支出24,902千円、及びソフト開発のための無形固定資産の取得による支出34,867千円はあったものの、前連結会計年度に実施した連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出が当連結会計年度に実施されなかったことによるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は前連結会計年度末に比べ48,424千円増加し、167,277千円となりました。これは主な増加要因としては、長期借入金の借入れによる収入200,000千円及び株式の発行による収入18,800千円があった一方で、減少要因として、長期借入金の返済による支出84,783千円、リース債務の返済による支出1,705千円等があったことによるものであります。

④ 生産、受注及び販売の実績

(1) 生産実績

当社グループの事業は、提供するサービスの性質上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

(2) 受注実績

当社グループは、受注制作を行っておりますが、受注から制作・納品までの期間が短いため、記載を省略しております。

 

 

(3) 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

金額(千円)

前年度比(%)

メンタルヘルスソリューション事業

2,173,595

143.0

メディカルキャリア支援事業

370,753

53.1

デジタルマーケティング事業

64,251

91.9

合計

2,608,600

114.0

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年1月1日

至  2022年12月31日)

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

医療法人社団大瑛会

572,715

25.0

126,142

4.8

 

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りにつきましては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りによる不確実性のため、実際の結果はこれらの見積りとは異なる場合があります。この連結財務諸表を作成するに当たっての重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 

②財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)財政状態の分析

財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

(b)経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は2,608,600千円となり、前連結会計年度と比較して320,411千円増加(前期比14.0%増)となりました。これは、主要事業であるメンタルヘルスソリューション事業の売上高が、エンタープライズ向けの月額報酬が増加したことなどにより、前連結会計年度と比較して654,108千円増加し、2,173,595千円(前期比43.0%増)となった一方、及びメディカルキャリア支援事業の売上高が新型コロナワクチン接種に関連する医師紹介等の減少により前連結会計年度と比較して327,780千円減少し、370,753千円(前期比46.9%減)となったことによるものであります。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度と比較して302,994千円増加し、1,161,579千円(前期比35.3%増)となりました。これは主に、メンタルヘルスソリューション事業の売上拡大による産業医への業務委託料支払が前連結会計年度と比較して214,601千円増加し、975,812千円(前期比28.2%増)となったことによるものであります。

その結果、売上総利益は前連結会計年度と比較して17,416千円増加し、1,447,021千円(前期比1.2%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は前連結会計年度と比較して113,753千円減少し、945,927千円(前期比10.7%減)となりました。これは主に、メディカルキャリア支援事業の新型コロナワクチン接種に関連する医師紹介等の減少に関連して、医師募集費が前連結会計年度と比較して157,258千円減少し、66,203千円(前期比70.4%減)となったこと、及びプロモーション施策実施のための広告宣伝費が前連結会計年度と比較して69,554千円減少し、117,994千円(前期比37.1%減)によるものであります。その結果、営業利益は前連結会計年度と比較して131,170千円増加し、501,093千円(前期比35.5%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

当連結会計年度の営業外収益は前連結会計年度と比較して195千円減少し、25千円(前期比88.6%減)となりました。これは主に消費税還付金850千円を計上しなくなったことによるものです。営業外費用は前連結会計年度と比較して19,205千円減少し、5,264千円(前期比78.5%減)となりました。これは主に、前連結会計年度に計上していた上場関連費用がなくなったことによるものです。

この結果、経常利益は前連結会計年度と比較して150,180千円増加し、495,854千円(前期比43.4%増)となりました。

 

(特別損益、法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度は、受取損害賠償金を26,889千円計上しております。また、特別損失は計上しておりません。法人税等合計は、81,459千円(前連結会計年度は132,590千円)となりました。

その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度と比較して176,250千円増加し、441,371千円(前期比66.5%増)となりました。

 

(c)キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等について

経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標(以下KPIと呼ぶ。KPIは、Key Performance Indicatorの略称であり、重要業績指標を意味する)につきましては、「第2事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。

当社グループの中核事業であるメンタルヘルスソリューション事業のKPIの推移は以下のとおりとなっております。当事業の成長が当社グループ全体の成長の推進力であるため、当該KPIの進捗を注視し、経営上の目標達成状況を判断しております。なお、当社グループでは当該KPI及び顧客グループについて、下記のように定義しております 。

 

ENT(Enterpriseの略称)

従業員1,000名以上かつメンタルヘルスソリューション事業の売上高が月額20万円以上(見込を含む)の顧客(グループ)

 

SMB(Small and Medium Businessの略称)

メンタルヘルスソリューション事業の売上高が月額20万円未満の顧客

 

MRR(Monthly Recurring Revenueの略称)

メンタルヘルスソリューション事業における「月次経常収益」を意味します。毎月発生する月額料金のみを集計対象としており、単発的に発生する収益は集計対象外としております。継続利用によって発生する経常収益の積み重ねが、当社事業の継続的な成長を測るための最も重要な指標であり、重視しております。
 

NRR(Net Revenue Retentionの略称)

「産業医クラウド」サービスにおける「売上継続率」を意味します。顧客がサービスに払う金額の増減割合を示す指標であり、特にENTについては当社事業の継続的な成長を測る指標として重視しております。

 

契約社(グループ)数

SMBについては法人単位、ENTについてはグループ(企業群)単位で月次の契約件数を集計しております。顧客数を増加させることが収益に直結するため、指標として重視しております。
 

契約単価

SMB、ENTの売上高を契約社(グループ)数で除算して算出した契約単価を集計しております。特にENTについては、「産業医クラウド」を導入した顧客に対し追加提案を行うことで、顧客数を増やすことなく売上高を伸長させることができるため、効率の良い売上向上策として指標を重視しております。
 

解約率(Customer Churn Rate)

月次の顧客の解約率を集計しております。メンタルヘルスソリューション事業においては、堅固な顧客基盤を構築することで、安定的かつ長期的な収益を確保することを目指しており、当社事業における指標として重視しております。
 

MRR(月次経常収益)四半期累計額(単位:百万円)

SMB

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

 

ENT

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

2021年

35

41

44

46

 

2021年

41

42

44

51

2022年

48

54

55

57

 

2022年

56

60

65

68

2023年

59

64

67

69

 

2023年

75

78

84

91

※毎月発生する月額料金のみを集計しており、単発的に発生する収益は対象外

 

契約社数(単位:社)               (単位:グループ)

SMB

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

 

ENT

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

2021年

760

879

943

1,000

 

2021年

84

86

90

96

2022年

1,048

1,152

1,222

1,275

 

2022年

100

103

105

108

2023年

1,329

1,433

1,517

1,598

 

2023年

112

118

125

125

※四半期毎(3月、6月、9月、12月)の各末日時点における集計

 

契約単価(単位:千円)

SMB

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

 

ENT

第1

四半期

第2

四半期

第3

四半期

第4

四半期

2021年

53

52

52

52

 

2021年

506

522

506

556

2022年

53

52

51

50

 

2022年

583

605

641

662

2023年

52

50

49

48

 

2023年

699

688

708

761

※SMB及びENTの売上高を契約件数で除して算出

 

 

解約率(単位:%)

SMB

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

2021年

0.1

0.1

0.9

0.4

0.4

0.5

0.3

0.3

0.8

0.6

0.5

0.3

2022年

0.3

0.5

1.0

0.7

0.4

0.3

0.6

0.1

0.5

0.5

0.2%

0.0%

2023年

0.0

0.2

0.8

0.0

0.6

1.0

0.8

0.3

0.2

0.3

0.4

0.3

 

ENT

1月

2月

3月

4月

5月

6月

7月

8月

9月

10月

11月

12月

2021年

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

2022年

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

1.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

0.0

2023年

0.0

0.0

0.0

0.9

0.0

0.0

0.0

0.0

0.8

0.0

0.8

0.0

※月次については当月解約となった契約数を当月末時点の契約総数で除して算出

 

NRR(売上継続率)(単位:%)

 

2021年12月

2022年12月

2023年12月

ENT

101

129

115

※2021-2023年の12月末時点において、12か月前に契約があったグループについての12月MRRを

 12か月前の12月MRRで除して算出

 

④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループの資本の財源及び資金の流動性についての分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。

当社グループにおける資金需要は、事業拡大のためのM&A及び新サービス開発のための資金、採用費及び人件費、マーケティング費用等に伴う運転資金等であります。これらの資金需要につきましては、自己資金及び銀行からの借入金による対応を基本としております。今後の資金需要に関しては、必要に応じて、適切な方法による資金調達にて対応する方針であります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6【研究開発活動】

該当事項はありません。