第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

当社は、在宅での看取りを増やしていくこと、利用者様の健康寿命を延伸すること、医療従事者がいきいき働ける職場環境を提供することが使命であると感じております。

「もう一人のあたたかい家族として在宅生活の安心を届け地域社会へ貢献」することを理念とし、利用者目線のサービスを追求すること及び自発的な相互扶助を推進することで主体的に社会課題へ挑戦することを基本的な価値観としております。

 

(2) 経営方針、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題等

① 市場環境
a. 我が国の高齢化の進展

訪問看護は、病気や障がいを持った方が住み慣れた地域でその人らしく療養生活を送れるように看護師等が医師の指示の元、生活の場へ訪問し支援するサービスであり、高齢者を中心として病気や障がいのある方で訪問看護を必要としている方を対象に療養上の世話または必要な診療の補助を行うものです。

現在、我が国は、諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行しております。厚生労働省によると、65歳以上の人口は、現在3,500万人を超えており、2042年の約3,900万人でピークを迎え、その後も、75歳以上の人口割合は増加し続けることが予想されております。このような状況の中、団塊の世代が75歳以上となる2025年以降は、国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれております。(出所:厚生労働省ホームページ「地域包括ケアシステム_地域包括ケアシステムの実現へ向けて」)

 

b. 医療・介護市場の拡大

2023年に内閣府が発表したところによれば、65~74歳と75歳以上の介護保険の被保険者について、それぞれ要支援、要介護の認定(注)を受けた人の割合をみると、65~74歳は要支援1.4%、要介護3.0%であるのに対して、75歳以上では要支援8.9%、要介護23.4%となっており、75歳以上になると要介護の認定割合が大きく上昇するため、当社は75歳以上の人口をエリアマーケティングの中心に置いております。(出所:内閣府「令和5年版_高齢社会白書」)

(注) 介護保険制度では、家事や身支度等の日常生活に支援が必要であり、特に介護予防サービスが効果的な状態(要支援状態)になった場合や、寝たきりや認知症等で常時介護を必要とする状態(要介護状態)になった場合に介護サービスを受けることができます。介護サービスの必要度を判定するのが要支援認定、要介護認定であり、要支援状態は2段階、要介護状態は5段階にその程度が区分されており、要支援よりも要介護の方がより介護サービスを必要としている状態です。この判定は介護サービス給付額と連動しています。

また、介護保険制度が定着し、サービス利用の大幅な伸びに伴い介護費用が急速に増大しております。介護保険制度開始当時の2000年度は3.6兆円だった介護費用は、2018年度には10.7兆円となっており、高齢化がさらに進展し団塊の世代が75歳以上となる2025年度には15.3兆円、高齢化率が3割を超えると予測される2040年度には25.8兆円になると推計されております。同様に、医療費は、2018年度は39.2兆円となっており、2025年度には47.4兆円、2040年には68.5兆円となり、医療・介護保険合計で94兆円になると推計されております。(出所:内閣官房・改革府・財務省・厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し」(計画ベース・経済ベースラインケース)(2018年5月公表))

 

c. 訪問看護市場の拡大

1か月当たりの訪問看護の利用者数は、増加が続いており、2022年は医療保険と介護保険の利用者合計で約111万人と2013年と比べ2.65倍になっております。

 


(出所:厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」(平成22年~令和4年の各年9月))

 

医療保険における訪問看護費は、2013年の約1,086億円から2021年には約3,929億円に増加し、国民医療費に対する割合も0.27%から0.87%に拡大しております

 


 (出所:厚生労働省「国民医療費」(平成 18 年~令和3年))
 

また、介護保険における訪問看護費は、2013年の約1,853億円から2022年には約3,937億円に増加し、国民介護費に対する割合も2.08%から3.52%に拡大しております。
 従って、医療・介護両保険を合計した訪問看護費は、2021年で約7,652億円であり、2013年の約2,939億円から2.6倍に増加しており、訪問看護の利用者数と共に拡大傾向であります。

 


(出所:厚生労働省「介護給付費等実態調査」(平成22年~令和4年))

なお、厚生労働省が2018年5月21日に公表した「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)」によれば、2040年の在宅医療市場は28兆円、在宅介護市場は8.2兆円となる見通しであり、両者の合計は36.2兆円であります。

上記見通しに加え、医療・介護両保険における訪問看護費及び利用者が増加傾向であることを踏まえると、当社では、訪問看護市場についても継続的に拡大していくものと考えております

 


(注) 1.2040年の予測値(出所:厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)2018年5月21日公表」

2.厚生労働省:「国民医療費」「介護サービス施設・事業所調査」掲載の令和3年(2021年)の数値を合算

 

 

② 訪問看護が注目される理由

以下の調査結果を踏まえ、当社では今後も高齢者数の増加に伴い、重度な要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けたいと願う高齢者が増加していくと考えております。

(ア) 60歳以上の男女に、現在住んでいる地域に住み続ける予定があるかどうかを聞いたところ、93.1%の人が「ある」と回答しております。

(イ) 60歳以上の人に、万一治る見込みがない病気になった場合、最期を迎えたい場所はどこか聞いたところ、51%の人が「自宅」と回答しております。なお、死亡した場所のうち「自宅」の割合は、日本は16.6%であり、国際的に見て低い水準です。(他国例:オランダ31%、フランス24.2%)

(出所:内閣府「令和元年高齢者白書_高齢期の生活に関する意識」、厚生労働省_医療と介護の連携に関する意見交換_看取り)

また、これに伴い、今後も質の高い在宅医療・訪問看護の確保の重要性が高まっていくものと考えております。厚生労働省は、2025年を目途に、高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで、可能な限り住み慣れた地域で、自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう、地域の包括的な支援・サービス提供体制(「地域包括ケアシステム」)の構築を推進しております。医療機関(病院)は機能分化され、大学病院や総合病院は高度医療に特化し、慢性疾患患者や軽症患者は地域のクリニックへ移され、病院(入院)看護から在宅看護へと移行が進められております。地域のクリニックから大学病院や総合病院への紹介が一般的でありましたが、今後は大学病院や総合病院から地域のクリニックへと“逆紹介”の多い医療機関は診療報酬にて評価されることが予測されるため、入院から在宅への流れは加速し、在宅医療の需要は今まで以上に高まることになります。この「地域包括ケアシステム」において、地域に点在する様々なサービスが包括的に連携し、1人の利用者様を支えるために、中心的存在として期待されているのが訪問看護サービスです。

 

③ 訪問看護業界の現状と課題

このような中、訪問看護が注目される一方で、現状の訪問看護業界には課題があり、当社では以下のように認識しております。

a. 地域における訪問看護サービスの存在感が薄い

1事業所当たりの平均従業員数が常勤換算で8.1人であり(出所:公益財団法人 日本訪問看護財団_令和4年3月訪問看護の評価指標の標準化に関する調査研究事業)、小規模零細で運営していることが非常に多い現状があります。小規模であるため、事業所が所在している地域からの認知度が低く、当該地域における信頼関係の構築に課題があります。

 

b. 紙文化中心の非効率経営

医療業界は紙文化が浸透しており、訪問看護業界においても病院で経験を積んだ医療職者が同様の運営をしているケースが多く、また、許認可の手続きは紙面で行う必要があるため、情報のクラウド化が進んでおらず、ペーパーレス化が進んでいない現状があります。そのため、情報管理・伝達・処理がITを駆使した場合と比較し、相対的に非効率であるという課題があります。

 

c. 訪問看護師人材の不足

厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、訪問看護師の数は2022年10月時点で約11万人であり、日本看護協会「訪問看護 アクションプラン2025」による在宅死の割合をオランダやフランスなどの水準に引き上げる場合に必要な人数である15万人から大きく不足しております。そのため、訪問看護師不足が課題であります。

 

d. 訪問看護ステーションの閉鎖や偏在

訪問看護ステーションの数は年々増加傾向にある一方、資金繰りの悪化や人員不足等が原因で閉鎖するステーションも多いのが現状であり(出所:一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護ステーション数調査」(2020年6月公表))、また、下表の通り地域によって偏在が見られ、人口10万人当たりの訪問看護ステーション数は最大3倍程度の格差があります

 


(出所:公益社団法人日本看護協会、公益財団法人日本訪問看護財団、一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護アクションプラン2025~2025年を目指した訪問看護~」(2014年公表))

 

現在、東京都を中心に訪問看護の拠点を多数展開する大規模事業者は複数ある一方で、地方への積極な進出は、看護師等の人材確保や移動時間等の面から難しいのが現状と考えております

 

 

④ これまでの当社の取り組み

上記の訪問看護業界における課題認識の下、これまでに当社が取り組んでまいりました主な事項は以下のとおりです。

 

a. 医療専門職である訪問看護師を活用した訪問看護サービスの認知度向上と信頼の獲得

当社では、事業所が所在する地域での認知度向上と信頼を獲得するため、事業所当たり看護師6名及び理学療法士等のリハビリ職5名の合計11名体制を基本とし、各事業所をドミナント戦略で地理的に隣接するよう拠点展開することで、事業展開する地域の中で小規模零細に陥らないよう取り組んでまいりました。また、看護師、准看護師のみならず、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士も配置することで、特定の疾患に限らず、様々な疾患の利用者様を幅広く受け入れることができ、地域からの信頼獲得に努めております。

 

b. ドミナント戦略による事業所展開

前述「第1 企業の概況 3 事業の内容」で記載のとおり、IT活用により訪問エリアを定義し、新規の利用依頼を訪問エリア内に堅持することで、当社の事業所同士で新規利用者様の獲得を競争する状況が生じることなく、事業所を展開してまいりました。その結果、複数の事業所間で「競争」ではなく「協力」して1人の利用者様を診る体制を整備し、看護師等の退職による利用者様への影響を軽減することができました。また、看護師等の休暇取得も容易になる等、働きやすさの観点でもドミナント戦略のメリットを最大限享受できるよう取り組んでおります。

 

c. 訪問看護未経験者の積極採用と早期育成

訪問看護人材の不足に対処するため、当社は訪問看護未経験者の積極採用を行っております。当社に入社する看護師等の従前は病院勤務者であることが多く、9割以上が訪問看護未経験者となっております。このため、当社では、早期に1人で利用者様を診ることができるよう、早期育成プログラムを整備しております。未経験者であっても概ね3ヵ月で主担当として、1人で訪問看護ができるレベルまで引き上げる育成プログラムを整備し、看護師等の早期戦力化を図っております。

 

d. 東京以外の地域への拠点展開

上記訪問看護ステーションの偏在という課題への対応として、東京以外の地域(兵庫県、高知県、沖縄県)へ拠点展開しております。

 

⑤ 今後当社が対処すべき重点課題

当社は、安全・安心を届ける利用者目線の追求を前提としたうえで、対処すべき重点課題として以下の取り組みを推進する方針です。

 

a. 訪問看護師による地域連携先との関係強化

訪問看護サービスの認知度向上という課題に対して、当社では営業の専門職を雇わず、医療専門職である訪問看護師自らが、地域の医療機関、居宅介護支援事業所、施設サービス事業所等の地域連携先とタイムリーな情報共有を行っており、この取り組みを通じて、訪問看護サービスと当社の認知度向上を図り、信頼関係を構築することで新規利用者様の増加に繋げる活動を継続的に実施してまいります。

 

b. 複数の人材採用チャネルの強化

訪問看護師の不足という課題に対して、人材紹介会社との連携を深め、看護師等の安定した雇用数を確保するとともに、インスタグラムやYouTubeチャンネルなどのSNSを利用した情報発信によるブランディング強化をすることで、紹介料の負担が無い直接雇用の割合も増やしてまいります。

 

c. マネジメント層の育成

訪問看護ステーションの偏在という課題に対して、今後のドミナント展開、新たな地域への拠点設置を見据え、従業員の地域連携、拠点運営マネジメント能力の向上を図り、マネジメント層の育成に努めてまいります。

 

⑥ 今後の事業所展開の方針

高齢化社会の進展に伴い、当社では訪問看護市場は継続的に拡大すると推測しており、当社の特長である利用者獲得力、オペレーションの効率化、人材開発力を活かして継続的に拠点を展開してまいります。

今後も事業所ごとに看護師6人、リハビリ職5人の合計11名体制という業界内でも比較的規模の大きい人員数を基本とした運営を推進し、これらの事業所を数多く展開することで訪問看護サービス事業の規模の拡大を図る方針です。なお、当社の拠点数の2023年12月期までの推移及び2024年12月期に計画している拠点数は以下のとおりです。

 


 

(3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社は重要なKPIを「延べ訪問件数」(注1)とし、経営陣のみならず役職者全員がこの指標を意識した事業所運営を行っております。訪問看護サービス事業の売上は「延べ訪問件数×訪問1件当たりの単価」にて算出されるため、その母数となる「延べ介入利用者数」(注2)の増加も重視しております。また、訪問看護サービス事業は労働集約型事業であるため、当社がさらに成長していくためには、延べ訪問件数の増加は当然のことながら、その前提として訪問看護師等となる従業員を継続的に採用、育成し、事業所規模拡大及び拠点展開による事業所数拡大を継続していくことが必要と考えております。

 

第10期事業年度及び第11期事業年度における延べ訪問件数、延べ介入利用者数、訪問看護要員数の推移は次のとおりです。

 

指標

第10期事業年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

第11期事業年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

延べ訪問件数(注1)

172,689件

201,862件

延べ介入利用者数(注2)

21,349人

25,165人

訪問看護要員数(期末時点)

176人

212人

 

(注) 1.延べ訪問件数は、従業員1人当たり訪問件数の総和です。

2.延べ介入利用者数は、月間介入者数の総数です。「介入」とは、看護師等が訪問看護契約に基づき訪問することを言います。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社のサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

当社は、「もう一人のあたたかい家族」を経営理念として掲げ、高齢化が急速に進む中で、住み慣れたご家庭で最後を迎えたいというご利用者様の意思をニーズとして捉え、安全安心なサービスを安定して提供しております。

理念に共感した活力あふれる訪問看護師等による、心があたたまるケアを通じて、ご利用者様本人とそのご家族様を支えていくことで、より多くの在宅で過ごされたいというご利用者様ニーズに応え、持続的な成長及び中長期的な企業価値の向上を目指して訪問看護事業に取り組んでおります。

当社にとってのサステナビリティとは、事業を通じて社会課題の解決に貢献することです。今後さらなる高齢化が継続していくことが予測されている中で、24時間365日の訪問看護を提供する当社の持続的な成長そのものが、社会の持続的な発展に貢献できるものであると考えており、その実現に向けて、以下のサステナビリティに関する取り組みを進めております。

 

(2)ガバナンス

サステナビリティに関連した課題については、代表取締役が議長を務める経営会議において、サステナビリティに関する重要課題に関するリスク及び機会に対応するための実行計画の立案、目標の進捗管理を行い、経営会議で議論された内容は適宜、取締役会へ報告しております。

取締役会はサステナビリティ全般に関するリスク及び機会の監督に対する責任と権限を有しており、経営会議で協議された内容の報告を受け、当社のサステナビリティのリスク及び機会への対応方針及び実行計画等についての審議・監督を行っております。

なお、コーポレート・ガバナンスの状況については、「第4 提出会社の状況、4コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。
 

(3)戦略

当社は、「第2 事業の状況、1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の通り、在宅での看取りを増やしていくこと、利用者様の健康寿命を延伸すること、医療従事者がいきいき働ける職場環境を提供することが使命であると考えております。

「もう一人のあたたかい家族」として、在宅生活の安心を届け地域社会へ貢献するという理念に基づき、利用者目線のサービスを追求すること及び自発的な相互扶助を推進することで主体的に社会課題へ挑戦することを基本的な価値観としております。

これらの取り組みにあたって人材は最も重要な経営資源と考えており、サステナビリティ関連の項目の中で、特に人的資本を重視しております。

基本的価値観を重視しながら、人材を獲得・育成し事業を成長させることで上記の使命を実現してまいりたいと考えております。

なお、気候変動などの環境問題については、当社が事業を通じて直接貢献できる範囲が限定されることから、記載を省略しております。

 

(4)リスク管理

サステナビリティ関連のリスク及び機会の識別・評価及び管理するための過程については、当社の主要事業が環境に与える負荷が小さく、また、気候変動に係るリスク及び収益機会が当社の事業活動や収益等に与える影響が少ないと判断しております。

当社のリスク管理に関する詳細は、「第2 事業の状況 3事業等のリスク」に記載しておりますが、重要な課題が生じた場合には、取締役会及び経営会議において、適時・適切に協議し決定してまいります。

 

 

(5)指標及び目標

当社の現時点において定めている人的資本に関する指標及び目標は下記のとおりでありますが、今後必要に応じて追加を協議・検討してまいります。

 

指標

目標

(2026年12月期)

実績

(2023年11月1日時点)

管理職に占める女性労働者割合

女性管理職を10%以上増やし、管理職の女性比率と全社員の女性比率が同程度となるようにする。※

54.6%

男性の平均勤続年数に対する女性の平均勤続年数割合

看護職員における男性の平均勤続年数に対する女性の平均勤続年数割合を70%以上にする

57.0%

 

※目標の基準となる全社員の女性比率は67.5%であります。

 

3 【事業等のリスク】

以下に、当社の事業展開上のリスク要因になる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、当社として必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資判断上あるいは当社の事業活動を理解するうえで重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。当社は、これらのリスクの発生可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であり、当社株式等に関する投資判断は本項及び本項以外の記載内容も合わせて慎重に判断したうえで行われる必要があると考えております。

文中における将来に係る事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。

なお、当社の事業等のリスクの把握及び管理体制については、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」をご参照ください。

 

(1) 事業展開のための人員確保について

当社は訪問看護サービス事業を展開するにあたり、事業所数の拡大に伴い看護師及びリハビリ職を積極的に採用して組織体制を強化し、事業所等が所在する地域周辺のコミュニケーションを強化し、地域に根差した訪問看護サービスを展開していく方針です。

労働集約型産業である訪問看護サービス事業の業容の維持と拡大には人材確保、及び適正な要員配置と労働環境整備により従業員の定着を図ることが重要です。しかしながら、求職している看護師及びリハビリ職の中で、訪問看護へ転職しようとする看護師を見出すことには限界があると考えられます。当社は、人材紹介会社を通じて効果的な採用活動を展開するとともに、インスタグラムやYouTubeチャンネルなどのSNSを利用した情報発信によるブランディング強化をするなど、人材獲得のための方法を常に模索しております。また、訪問看護が初めての看護師及びリハビリ職でも安心して働けるようにチューターを配置しOJTによりきめ細かい指導を行うとともに、従業員を適切に育成、フォローできるよう役職者にマネジメント研修を実施する等、社内教育体制等を整備することで、人員の定着に努めております。

しかしながら、万が一、安定した人材確保を行うことができない場合、また、マネジメント人材の輩出ができず、人員計画と実際の人員配置に大幅な乖離が生じた場合には、新規利用者の獲得が計画どおりに進捗せず、財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

なお、当社は、人材確保及び人材定着の観点のみならず、医療従事者がいきいき働ける職場環境を提供することを使命のひとつとしており、月間の平均時間外勤務時間が概ね10時間前後に収まるようにワークライフバランスを確保できる環境の整備に努めております。

 

(2) 訪問看護サービス事業に関する法的規制について

① 訪問看護の医療及び介護報酬に係るリスク

当社は、「医療保険制度」及び「介護保険制度」のそれぞれに基づく訪問看護サービスを行っております。医療保険制度に基づく診療報酬は、2年に1回、介護保険制度に基づく介護報酬は、3年に1回改定が行われます。

2021年4月に行われた介護報酬改定は、新型コロナウイルス感染症や大規模災害が発生する中で「感染症や災害への対応力強化」を図るとともに、団塊の世代の全てが75歳以上となる2025年に向けて、2040年も見据えながら、「地域包括ケアシステムの推進」、「自立支援・重度化防止の取組の推進」、「制度の安定性・持続可能性の確保」を図るものとなりましたが、当社の事業は地域包括ケアシステムの一環として機能しており、当該改定の大きな影響はありませんでした。

また、2022年度の診療報酬改定では、「質の高い訪問看護の確保として」利用者が安心して24時間対応を受けられる体制を実現するための改定が実施されました。当社では以前より理念の一つとして、「在宅生活の安心を届ける」を掲げ「24時間365日」対応できる体制作りを推進してきており、当該改定において大きな影響はありませんでした。

2024年は診療報酬及び介護報酬の改定を予定しており、当社サービスに関連する報酬単価や加算等が、下方改定となった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 訪問看護サービス事業に必要な指定に係るリスク

当社は、以下のとおり訪問看護サービス事業を行ううえで必要な指定を都道府県知事等あるいは地方厚生局長から受けております。それぞれの指定には、従業者の資格要件、人員要件、設備要件及び運営要件等が規定されており、また、療養費算定や加算請求においてもそれぞれの要件規定があり、訪問看護サービス事業はこれらの規定に従って事業を運営し、各種申請を適切に行うことが非常に重要です。

 

(訪問看護事業者としての指定等の状況)

 

取得

事業所

所管官庁

許認可等の名称

許認可の内容

有効

期限

主な指定取消事由

全ステーション

 

 

 

都道府県等

 

 

 

訪問看護・介護予防訪問看護事業所の指定

 

介護保険に基づく訪問看護事業者として訪問看護費の請求が可能となる

 

 

6年ごとの更新

 

 

 

介護保険法第77条(指定の取消し等)、115条の9(指定の取消し等)に抵触した場合

 

全ステーション

 

 

 

 

厚生労働省

地方厚生局

 

 

 

訪問看護ステーションの指定

 

 

 

医療保険に基づく訪問看護事業者として訪問看護療養費の請求が可能となる

 

介護保険の指定・更新により自動更新される。

 

介護保険法第77条(指定の取消し等)、115条の9(指定の取消し等)に抵触した場合

 

 

 

当社は常に上記指定に基づく従業者の資格要件、人員要件、設備要件及び運営要件等、定められた基準に従って管理運営を行っております。看護師及びリハビリ職の入退職、及び事業所の開設・移転時には、必要な変更届や更新手続きに漏れがないよう社内の手続きやフローを整備した管理体制を構築し、細心の注意を払って運営しております。また、毎年、内部監査において、これらの手続きに不備がないか、重点的に監査を実施しております。

しかし、何らかの手違いにより、万が一、これらの指定要件を満たさなくなった場合、また報酬を不正に請求していることが発覚した場合等においては、指定の取消または停止処分を受ける可能性があります。当社では、保険適用サービスに係る売上高は全社売上の98.6%を占めており(第11期事業年度)、指定の取消または停止処分を受ける場合、財政状態及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

なお、現時点において、指定の取消事由、更新欠落に該当する事実はありません。

 

(参考)保険適用サービスに係る売上高と保険適用外サービスに係る売上高の構成割合の推移

売上種類

第10期事業年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

第11期事業年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

保険適用サービスに係る

売上高の構成割合

介護保険

62.1%

61.2%

医療保険

36.6%

37.4%

98.7%

98.6%

保険適用外サービスに係る

売上高の構成割合

1.3%

1.4%

 

 

 

(3) 訪問移動中の交通事故に係るリスク

当社が提供する訪問看護サービスは、ほとんどの従業員が自動車または自転車を使用して利用者様の自宅へ訪問し提供しており、訪問移動中に交通事故に遭ってしまった場合はサービスを提供することが困難となる可能性があります。

当社は、訪問看護サービスを提供する看護師及びリハビリ職に対して、交通事故防止のための教育研修を実施しており、事故発生時にもサービスへの影響を最小限に抑えるための多様な状況に対応できるマニュアルを整備する等により、事故の発生防止や事故発生後の事態に対応できるよう備えております。

しかし、災害等なんらかの事情により交通事故が多発し、当社の従業員の多くに被害があった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の従業員が加害者となる重大交通事故を起こしてしまった場合には、社会的信用が低下し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 訴訟リスクについて

当社の看護師及びリハビリ職は、主治医の指示書を遵守することを大前提として訪問看護サービスを提供しております。当社は訪問看護サービスを提供する看護師及びリハビリ職に対して、社内及び外部機関を利用した教育研修を実施し、また、事業所等で発生したインシデント事案と再発防止策の共有、利用者様の多様な状況に対応できるマニュアルを整備する等、サービス提供に係る事故の発生防止や利用者様の容態悪化等の緊急事態に対応できるように備え、事業における最重要事項として取り組んでおります。

しかしながら、サービス提供に係る重大なトラブル・クレームの発生、過失による医療事故の発生、あるいは当社のサービスとの因果関係が認められない場合であっても利用者様の病状悪化等による訴訟等で過失責任が問われるような事態が生じ、損害賠償金の支払いや、それに伴う社会的信用の低下等があった場合には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

なお、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(貸借対照表関係)1.偶発債務」に記載のとおり、当社は、食物誤嚥による窒息で死亡した元利用者の遺族から2019年4月に、損害賠償金及び慰謝料の合計110百万円超の支払いを求めた訴訟を提起されておりましたが、2022年10月17日、東京地方裁判所は判決を言い渡し、原告の請求は棄却されました。

本判決に対し、元利用者の遺族は2022年10月21日に、東京高等裁判所へ控訴を提起しておりましたが、2023年9月14日、東京高等裁判所は判決を言い渡し、控訴人の請求は棄却されました。

なお、本第2審の判決を不服として、元利用者の遺族より最高裁判所に対し、一部の損害に限定して57百万円超の上告提起及び上告受理の申立がなされ、現在、最高裁判所の判断待ちの状況であります。

 

 

(5) 個人情報の漏洩について

当社では、訪問看護サービス事業の特性上、利用者様の氏名(ご家族も含む)、住所、生年月日、病歴等の重要な個人情報を取り扱っております。

当社は、個人情報保護の理念を明確にしたうえで個人情報保護方針を定めるとともに、これを適切に管理運用するために「個人情報保護管理規程」を制定しております。また、「情報システム管理規程」を定め、組織全体の情報セキュリティ・リスクを識別のうえ、情報セキュリティの適切な確保に努めております。情報システム部門は、情報システムのセキュリティ状況についてモニタリングを実施しており、内部監査において、情報セキュリティの適切な確保について、監査を行っております。また、介護ビジネスを中心に展開しているIT企業が提供する請求システムを使用することで、適切な情報セキュリティの確保に努めております。

このように、当社は、情報管理につきまして情報漏洩防止の厳重な対策を講じておりますが、万が一システム等からの情報流出等が発生し、当社の社会的信用が低下した場合には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6) 風評等の影響について

訪問看護サービス事業は、利用者様やそのご家族のみならず地域住民や行政・医療機関に係る方々からの信頼のもとに成り立つものと認識しております。当社の従業員には企業理念である「もう一人のあたたかい家族」、「在宅生活の安心を届ける」、「地域社会へ貢献」を浸透させ、安定的かつ質の高い訪問看護を提供するよう指導、教育を行っております。しかしながら利用者様にご満足いただけなかった場合、従業員の不祥事等何らかの事象の発生等により、当社に対して不利益な情報や風評が流れた場合には、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7) 大規模な災害の影響について

当社は、東京都では新宿区にステーションを設置し、以西にサテライト事業所を置くドミナント展開を基本としておりますが、これとは別に地方進出に挑戦し、全国的な事業所展開を推進しております。しかしながら、当社が拠点展開している地域において、大規模な地震、台風、洪水等災害の発生により、事業所あるいは看護師やリハビリ職の従業員並びに利用者様が被災した場合には財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

   (注) ADL(Activities of Daily Living)とは日常生活動作の指標であり、「運動ADL」の13項目と「認知ADL」5項目で構成され、食事・更衣等のセルフケア、排尿・排便等の排泄、椅子・ベッド・トイレ・浴槽等への移乗、歩行・階段等の移動、視覚・聴覚等による理解、音声・非音声による表出等のコミュニケーション、社会的交流・問題解決・記憶等の社会認識の状況を評価したものです。

 

(8) 新規参入の脅威について

当社が属する訪問看護業界は、人員基準、初期投資額の観点から参入障壁が低いうえに、高齢化社会の一層の進展や医療機関における病床数の減少等により在宅医療ニーズのさらなる増加が見込まれるという社会的背景により、異業種からの新規参入や同業他社の事業規模の拡大が予想されます。

当社では、前述の重点課題(「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営方針、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題等 ⑤今後当社が対処すべき重点課題」をご参照)の遂行により、事業を成長させることに努める所存ですが、他の事業者との競争の激化が生じた場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(9) 拠点展開について

当社は拠点別採算を勘案した出退店基準に基づき事業所展開を調整しリスクの低減を図っておりますが、看護師等の採用や新規利用者獲得数が計画通りに進捗せず、開設後の採算悪化が続いた場合や、拠点閉鎖に至った場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(10) 新株予約権行使の影響について

当社は、当社従業員及び役員に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しております。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社の株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、本書提出日現在これらの新株予約権による潜在株式数は35,000株であり、発行済株式総数1,414,000株の2.47%に相当しております。

 

(11) システム障害について

当社は、売上債権管理や各利用者様の請求管理に関してシステムを利用しており、また、高収益を実現する重要な要素のひとつであるIT推進のために、システム管理の専門部署を設置するとともに、社内規程やマニュアルを整備し施策を講じております。

しかしながら、何らかの事情によりシステム障害が発生した場合、適切な売上請求等を行うことができず、売上債権の回収ができなくなる恐れがあります。この場合、資金繰りの悪化やIT推進施策の遅延等が生じ、財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものです。

また、当社は訪問看護サービス事業の単一セグメントのため、セグメント情報は記載しておりません。

 

(1) 経営成績の状況

当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の5類移行に伴い経済活動の回復が進みながらも、世界的な原材料価格やエネルギー価格の高騰、中国の景気不安の懸念に加え、物価上昇の影響などもあり、先行き不透明な状況が続いております。一方で、当社が属する訪問看護業界においては、団塊の世代が75歳以上となる「2025年問題」を見据えて、高齢者の病気や障害があっても安心できる高度な医療・介護へのニーズ、また住み慣れた地域で暮らしたいという在宅医療へのニーズに応えることができる体制を構築することが急務となっております。

このような状況のもと、当社は「もう一人のあたたかい家族として在宅生活の安心を届け地域社会へ貢献します」という企業理念のもと、利用者様に寄り添った訪問看護をより多くの方に享受いただけるよう、人材確保と新規拠点開設に取り組んでおります。

当事業年度においては、収益性の向上、人材確保に注力するとともに2023年4月に東京都港区及び墨田区、5月に東京都練馬区、9月に東京都新宿区及び杉並区、12月に東京都江東区に新規拠点を開設しました。

この結果、当事業年度の業績は、売上高1,605,016千円(前年同期比15.9%増)となりました。また、営業利益は150,487千円(前年同期比2.8%減)、経常利益は153,557千円(前年同期比3.0%増)となり、当期純利益は110,138千円(前年同期比1.7%増)となりました。

なお、当社は訪問看護サービス事業のみの単一セグメントであるため、セグメント別の業績の記載をしておりません。

 

 

(2) 財政状態の状況

当事業年度末における財政状態については次のとおりです。

 

(流動資産)

当事業年度末における流動資産の残高は856,879千円(前事業年度末残高756,058千円)となり、前事業年度末に比べ100,820千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が72,297千円、売上高増加に伴い売掛金が20,719千円増加したことによるものであります。

 

(固定資産)

当事業年度末における固定資産の残高は44,505千円(前事業年度末残高27,969千円)となり、前事業年度末に比べ16,536千円増加いたしました。これは主に、差入保証金が12,112千円、繰延税金資産が3,149千円増加したことによるものであります。

 

(流動負債)

当事業年度末における流動負債の残高は220,023千円(前事業年度末残高199,849千円)となり、前事業年度末に比べ20,173千円増加いたしました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が5,426千円減少した一方で、未払金が10,067千円、未払費用が15,226千円増加したことによるものであります。

 

(固定負債)

当事業年度末における固定負債の残高は26,623千円(前事業年度末残高39,484千円)となり、前事業年度末に比べ12,861千円減少いたしました。これは主に、退職給付引当金が3,804千円増加した一方で、長期借入金が17,350千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

当事業年度末における純資産の残高は654,738千円(前事業年度末残高544,693千円)となり、前事業年度末に比べ110,044千円増加いたしました。これは主に、当期純利益の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります 。

 

 

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当事業年度末における現金及び現金同等物は、524,103千円(前年度末比72,297千円増)となりました。現金及び現金同等物の主な変動要因につきましては次の通りであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、114,805千円の収入(前年同期は87,699千円の収入)となりました。

主な増加要因は、税引前当期純利益153,557千円、減価償却費7,122千円、未払費用の増加15,254千円、未払金の増加10,067千円であります。

主な減少要因は、売上債権の増加20,719千円、前払費用の増加6,376千円、法人税等の支払額46,023千円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、19,637千円の支出(前年同期は9,570千円の収入)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出5,789千円、差入保証金の差入による支出12,184千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは22,870千円の支出(前年同期は171,538千円の収入)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出22,776千円によるものであります。

 

(4) 生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

該当事項はありません。

 

② 受注実績

該当事項はありません。

 

③ 販売の実績

当事業年度における販売実績は次のとおりです。

 

セグメントの名称

金額(千円)

前年同期比(%)

訪問看護サービス事業

1,605,016

15.9

合計

1,605,016

15.9

 

(注) 1.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

第10期事業年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

第11期事業年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

東京都国民健康保険団体連合会

724,389

66.9

973,702

60.7

高知県国民健康保険団体連合会

124,921

11.5

 

    3.当事業年度における高知県国民健康保険団体連合会に対する販売実績は、損益計算書の販売実績の10%未満であるため、記載を省略しております。

 

(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針及び見積り

当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りを行うにあたり、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる結果をもたらす場合があります。なお、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」に記載しております。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

当社は、ドミナント戦略による収益最大化を目指して管理の仕組みを構築し、エリアマーケティングを実施するとともに、人材確保については人材紹介会社との連携強化やリファーラル等の自社採用に向けた取り組みにより、要員計画に沿った人材獲得を進めてまいりました。

また、医療機関や居宅介護支援事業所等の地域連携機関に積極的に働きかけを行い、新規利用者の獲得に注力してまいりました。その結果、当事業年度の売上高は1,605,016千円(前年同期比15.9%増)となりました。上記の他、当事業年度における経営成績等の状況につきましては、「(1)経営成績の状況」に記載しております。

 

(売上原価、売上総利益)

売上高の増加に応じて、積極的に訪問看護師等の人材確保に注力してまいりました。

以上の結果、当事業年度における売上原価は957,673千円(前年同期比14.2%増)となりました。主なものは、訪問看護サービス事業の人件費932,562千円(同14.2%増)であり、売上原価率は59.7%となりました。この結果、売上総利益は647,342千円(同18.4%増)、売上総利益率は40.3%となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当社の販売費及び一般管理費は、主に間接部門の人件費、採用関係費、地代家賃及びその他の経費で構成されております。事業拡大に応じて看護師等の採用を強化したため、採用関係費が増加しました。

以上の結果、当事業年度における営業利益は150,487千円(前年同期比2.8%減)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用及び経常利益)

主な営業外収益として物価高騰緊急対策支援金を含む助成金収入3,141千円が発生致しました。主な営業外費用として、借入に伴う支払利息が376千円発生いたしました。

以上の結果、当事業年度における経常利益は153,557千円(前年同期比3.0%増)、当期純利益は110,138千円(前年同期比1.7%増)となりました。

 

③ 財政状態の状況に関する認識及び分析・検討内容

第11期事業年度の財政状態の分析については、「(2)財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の達成・進捗状況

当社は重要なKPIを延べ訪問件数とし、経営陣のみならず役職者全員がこの指標を意識した事業所運営を行っております。訪問件数を増加させるために、当社は営業担当を置かず、看護師及びリハビリ職が医療の専門性を活かした地域連携活動を行うことにより、新規利用者の獲得を行う方針であります。また、訪問看護サービス事業は労働集約型事業であるため、当社がさらに成長していくためには、利用者数の増加は当然のことながら、その前提として看護師等訪問看護要員となる従業員を継続的に採用、育成し、事業所規模拡大及び拠点展開による事業所数拡大を継続していくことが必要です。

当事業年度における各指標の推移は以下のとおりです。

 

指標

第10期事業年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

第11期事業年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

延べ訪問件数(注1)

172,689件

201,862件

延べ介入利用者数(注2)

21,349人

25,165人

訪問看護要員数(期末時点)

176人

212人

 

(注) 1.延べ訪問件数は、従業員1人当たり訪問件数の総和です。

2.延べ介入利用者数は、月間介入者数の総数です。「介入」とは、看護師等が訪問看護契約に基づき訪問することを言います。

 

⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因について

経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑥ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性

当事業年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、114,805千円の資金増加(前事業年度は87,699千円の資金増加)、投資活動によるキャッシュ・フローは、19,637千円の資金減少(前事業年度は9,570千円の資金増加)、財務活動によるキャッシュ・フローは、22,870千円の資金減少(前事業年度は171,538千円の資金増加)となり、その結果、当事業年度の現金及び現金同等物は、前年同期に比べ72,297千円増加し、524,103千円となりました。

上記の他、当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(3) キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

当社における資金需要は、既存事業の安定的な成長にかかる運転資金及び新規拠点開設時の設備投資資金と、新規事業への投資コストであり、これらの財政状態と投資のバランスを重視しております。また、これらの財源については、自己資金の効率的な運用を基本としており、事業活動を円滑に実行できるよう適正な水準の資金の流動性の維持及び確保を最優先としております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。