第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

  当社グループは、「社会品質を創る。アライドテレシス」をコーポレートミッションとして掲げ、ネットワーク関連事業をビジネス領域として企業活動を行い、世界中の人々が安心して、いつでも、どこでも、快適にかつ安全に情報を利用できる豊かな社会の創出に貢献することを基本方針としています。

 

(2) 目標とする経営指標

 当社グループは、財務の健全性を保ち、持続的成長のための積極的な研究開発投資を行いつつ、株主をはじめ ステークホルダーへの利益還元を両立させるということを重点課題としております。そのため経営指標として、まずは売上高成長率、営業利益、営業利益率の向上に努めております。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

  当社グループは、次の4本の柱を基本戦略として経営を実践しております。

〔ソリューションビジネスの推進〕

  これまでに築き上げたブランド力、技術力そして培った豊富な知識や経験などを活かし、ネットワークスペシャリストとして顧客にとって最適なソリューションを提供することでビジネスの拡大を図ります。製品(モノ)の販売から、顧客ニーズに沿った価値あるサービスやサポートを含む包括的なソリューションの提供により収益力を向上させてまいります。

〔社会的ニーズに対応する研究開発の強化〕

  事業環境の変化をビジネスチャンスと捉え、社会の潮流を見据えた技術開発と成長分野へ経営資源を投入します。社会ニーズに合致した製品とサービスを安定的に提供することはもとより、IoT時代に求められるより快適なネットワークインフラを提供すること、さらには、社会の安心・安全を担保するIPネットワーク技術を活かした新しい価値の創造に取り組んでまいります。

〔製品・サービスの高付加価値化〕

  顧客のTCO(総所有コスト)を削減する製品やサービスを提供し、高付加価値化による収益率の向上を図ります。さらに、ソフトウェア製品やサービスのストックビジネス化により安定的な収益の確保を目指します。

〔グローバルオペレーションによる経営の効率化〕

  ローカライズされていた製品等をグローバルに統合・標準化し、開発、生産、販売活動及び物流の合理化を進めております。在庫管理等のロジスティック業務を集約化し、グローバルで最適な製品供給体制の強化によるさらなる経営の効率化を図ります。

 

(4) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループが属する情報通信機器業界は、半導体をはじめとする電子部品や材料等の世界的な需給ひっ迫の影響は軽減されたものの、エネルギー価格の高止まりや人件費及び物流コスト等の増加が原価を押し上げています。

一方で、経済・社会のデジタル化加速によって、ネットワークの強靭化やWi-Fi通信環境の更新需要が高まる中、増加するサイバー攻撃への情報セキュリティ対策、IT運用管理の複雑化に伴う業務負荷の軽減とIT専門分野の人材不足の解消といった喫緊の課題への対応は、当社グループの事業における拡大要素と捉えております。

このような経営環境の中で、競争力を維持するためには、潜在ニーズをいち早く捉えて、将来を見据えた技術の獲得や顧客ニーズへの様々な対応が不可欠であると同時に、サービスメニューの拡充など収益源の多様化が必須となります。

また、企業経営に対する健全性、透明性が求められる中、当社グループは、コーポレートガバナンスの確立、コンプライアンスの強化、会社情報の適時開示等を通して、これらの要求、要望に応えられるように取り組んでまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティに関する基本的な考え方

当社グループは、「社会品質を創る。アライドテレシス」をコーポレートミッションとして掲げ、ネットワーク関連事業をビジネス領域として企業活動を行い、世界中の人々が安心して、いつでも、どこでも、快適に情報を利用できる豊かな社会の創出に貢献することを基本方針としています。

上記のコーポレートミッション及び基本方針を通じて社会の持続可能な発展に貢献していくことが、当社グループに期待されているサステナビリティと考えております。日本国内各社、シンガポール及び中国の工場を対象にISO 14001を取得し、環境マネジメントシステムの構築・推進を通じて、社内での環境意識の浸透に努めており、今後さらにその推進に取り組んでまいります。

なお、当社グループのサステナビリティに関する具体的な取り組みについては当社ホームページ 環境保全活動 説明資料(https://www.allied-telesis.co.jp/company/environment/)に記載の通りです。

 

(2)サステナビリティに関する取組の状況

 ① ガバナンス

当社は、サステナビリティに関する重要な事項について、取締役会が監督する体制としております。取締役会は優先的に取り組むべき重要課題を踏まえて、個別の施策の状況を監督しておりますが、事業環境等の変化に応じて見直しを行うこととしております。

 

 ② リスク管理

サステナビリティ関連のリスク及び機会を識別し、管理するため、リスクマネジメント体制を整えてまいります。
 内部監査部門、総務部、各地域責任者が連携し、認識されたリスクの内容は、監査等委員会へ報告し、重要なリスクについては、取締役会へ報告するとともに、その対応を検討してまいります。

 

(3)人的資本

 ① 戦略

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

当社グループでは、「組織力」と「人材力」の両方を高めるために、多様性確保を含む人材の採用と育成は非常に重要な事項であると考えております。具体的な取り組み内容は、下記の通りです。

・男性社員を含めた育児休暇を積極的に取れる環境づくりの推進

・テレワーク制度の運用

・OJT:職場での仕事を通じた指導・教育

 

 ② 指標及び目標

人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、指標及び目標

社員が仕事と子育てを両立させることができ、社員全員が働きやすい環境をつくることによって、全ての社員がその能力を十分に発揮できるようにするため、次のように行動計画を策定しております。

また、当社グループでは、上記の「① 戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針に係る指標については、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属するすべての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標に関する目標及び実績は、連結グループにおける主要な事業を営む国内子会社のものを記載しております。

 

指標

目標

実績(当連結会計年度)

男性育児休業取得率 (注)

2025年12月期までに50.0%以上

20.0%

 

(注)男性の育児休業取得率(%)=「育児休業をした男性労働者数」÷「配偶者が出産した男性労働者数」×100

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。ただし、これらのリスクは必ずしも全てのリスクを網羅したものではなく、記載された以外にも重要性が低いと考えられるリスクや想定していないリスクも存在します。
 なお、記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づいて、当社グループが判断したものであります。

 

① 政治・経済情勢に関するリスク

 当社グループは20か国に連結子会社を有し事業を展開しております。各国・地域の政治・経済情勢の変化により、特定の国・地域での生産及び販売に支障が出た場合又は需要の急減等の事態が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループは、グループ内での情報収集や第三者機関を通じた政治・経済情勢の変化及び政策変更等をモニターすることにより、これらのリスク顕在化の兆候を早期に把握し対応する体制を取っております。また、生産拠点の分散化(中国、シンガポール及びインドネシア)や販売拠点の分散化により、特定の国・地域への依存を回避することで、リスクの逓減に努めております。

 

② 調達に関するリスク

 当社グループの製品には多数の精密電子部品(IC、メモリー、光デバイス等)を使用しており、複数のサプライヤーから調達しております。これらの部品は世界的な需給バランスの影響を強く受ける傾向があり、当社グループが属する産業以外や特定の地域からの需要の増加、災害等による供給の減少、また、特定の国・地域での人件費の高騰による部品価格の高騰等が発生する可能性があります。

 当社グループは、これらの部品の安定的な調達のため、調達先との関係強化、長期購買契約の締結等に加え、調達先の分散化、価格比較による安価な部品の調達、代替品の検討等も進めております。

 しかしながら、想定を超える需給バランスの変化により当社グループの調達に支障が出た場合や部品価格高騰によりコスト競争力が低下した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法規制に関するリスク

 各国・地域の安全基準、環境基準及び輸出関連規制等は様々であり、当社グループは、部品サプライヤーに対する安全基準、環境基準の確認、外部機関による監査を通じ、これらの基準や規制等に適合する製品を提供しております。また、グループ内での情報収集・共有化を図り輸出関連規制の改正による影響を把握し、違法性のモニタリングを通じて必要に応じ取引体制を整備しております。さらに、現地日系企業等との情報交換や専門機関の協力を得て、基準や規制の改正情報を早期に把握するように努めております。

 しかしながら、予期しない基準や規制等の改正により、製品の製造及び販売に支障が出た場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 品質に関するリスク

 当社グループは、開発から製造、販売、サポート・サービスに至る全てのプロセスで、品質確保及びお客様満足度の向上に取り組んでいます。製品調達は、調達先の認証取得や規格準拠の確認、実績やサポート体制等の事前調査を実施し、品質マネジメントシステムに基づく評価により、事前のリスク評価と対策を講じております。開発及び設計段階では、厳格な品質基準を定め、これに基づいて工程管理を行っております。製造段階では、工場の工程内での全数機能検査や出荷前の抜き取り検査等を実施し、不良品の流出防止体制を整えております。販売及びサポート・サービス段階では、お客様との綿密な対話を通じてニーズを的確に分析し、満足度の高い製品及びサポート・サービスの提供に努めるとともに、不具合の早期発見及び対応に努めております。さらに、適切な賠償保険に加入し、万一の事態に備えております。

 しかしながら、これらの対策にもかかわらず、想定を超える問題が生じ、顧客システムの停止等による損害や生命・身体に危険を及ぼすことによる多額の損害賠償責任や事実関係の当否にかかわらず当社グループの社会的信頼の損失などを負った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 為替に関するリスク

 当社グループの連結売上高に占める海外の比率はおおよそ30%~50%で推移しております。また、日本における当社グループの部品、製品等の仕入れは主にドル建で決済しており、為替変動の影響を受け易くなっております。さらに、当社グループは国外19か国で事業を行っているため、研究開発費等の海外の費用についても、為替変動の影響を受け易くなっております。これらの影響を軽減するため、市場リスク管理要領を定め、為替変動による損益インパクトの感応度分析を行うとともに、必要に応じて為替予約取引等のヘッジを行っております。

 しかしながら、すべてのリスクを排除することは困難であり、急激な為替相場の変動が起きた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 法令遵守に関するリスク

 当社グループは、企業倫理規程等のコンプライアンス体制に係る規程を制定し、全役職員が法令、定款及び社会規範を遵守した行動を取るための行動規範として教育等を実施するとともに、各国・地域の特性に応じ、拠点ごとの社内研修等を実施しております。また、コンプライアンス体制の運用評価及び整備・強化・有効性の維持・向上のために必要な諸施策の提言など、組織横断的なリスク状況の監視及び全社的対応を行う統合コンプライアンス委員会を設置するほか、法令上疑義ある行為等について使用人が直接に情報提供を行う手段としてコンプライアンス・ホットラインを設置し、法令遵守の徹底を図っております。

 しかしながら、これらの対策を講じても、役職員の故意又は過失により重大な法令違反等が発生し、社会的信用の失墜や損害賠償責任などを負った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 情報セキュリティに関するリスク

 当社グループはシステム構築やサポート・サービスにおいて、お客様や取引先の個人情報あるいは機密情報を入手することがありますが、これらの情報管理において、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊・紛失・漏洩等が発生する可能性があります。

  これらのリスクを回避するため、情報セキュリティ基本方針や個人情報保護方針等の社内ルールの制定、プライバシーマークや情報セキュリティマネジメントシステムの国際規格であるISO/IEC 27001の認証取得により、役職員の情報セキュリティに関する意識向上を図る教育・啓発活動を実施しております。また、業務データの暗号化やPCのシンクライアント化、外部からの不正アクセスに対する情報システムの構築等の対策を講じております。さらに、適切な賠償保険に加入し、万一の事態に備えております。

 しかしながら、予測できないサイバー攻撃やコンピュータウイルスの侵入等により、個人情報あるいは機密情報等が漏洩したことにより、多額の損害賠償責任や事実関係の当否にかかわらず当社グループの社会的信頼の損失などを負った場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑧ 知的財産権に関するリスク

 製品開発において、当社グループが第三者の知的財産権を侵害するリスク又は当社グループの知的財産権が第三者に侵害されるリスクが存在します。

  これらのリスクを回避するため、第三者の知的財産権に関しては、知的財産権の取得方針と責任者を定め、組織的に管理運用する体制を整備しております。製品の開発段階、出荷前、サービス提供等の各フェーズにおいて入念な調査・確認を実施し、第三者の知的財産権の侵害を回避しております。なお、万一見解の相違等により第三者から知的財産権の侵害を指摘された場合やライセンス条件の変更等に備え、知的財産の専門人材を配置するとともに、弁護士・弁理士等と連携し適切に対応する体制を整えております。また、当社グループは、製品開発の中で多くの技術やノウハウを蓄積し、それらの保護を目的に知的財産権の取得に努めております。しかしながら、一部の国・地域においては、知的財産権の保護制度が不十分な場合があり、第三者が当社グループの知的財産権を使用して類似製品を製造・販売する可能性があります。これらに対応するため、グループ各社で常に情報収集を行い、必要に応じて弁護士・弁理士等と連携し適切に対応する体制を整えております。

 しかしながら、リスクに十分に対応できなかった場合や当社グループが認識していない知的財産権が存在し、製品の製造・販売に支障が出た場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 災害等に関するリスク

当社グループが事業展開する国・地域等において地震等の自然災害やテロ等が発生した場合には、各拠点の設備等が壊滅的な被害を被り操業が中断するだけでなく、修復や代替設備等に関する巨額の費用が発生する可能性があります。

 これらの影響を最小限に抑えるため、販売・生産拠点の分散化、耐震工事の実施、適正在庫の保持並びに損害保険加入等の施策を講じておりますが、想定を超える災害等が突発的に発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の概要

  当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

   ① 財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度の世界経済は、ウクライナ紛争の長期化や中東情勢の緊迫化などによる地政学リスクの高まりや、各国の金融引き締めに伴う景気の減速見通し、不安定な為替相場など依然として先行きが不透明な状況が続きました。わが国経済は、コロナ後の新しい社会への対応が進む中、緩やかな回復を続けているものの、エネルギー価格の高止まりや人件費及び物流コストの増加などに伴う物価高が懸念材料となっています。

当社グループが属する情報通信機器業界におきましては、半導体をはじめとする電子部品や材料等供給の国際的ひっ迫の影響が軽減され、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進しデジタルファーストに向かう中で、その基盤としてのネットワーク構築に対する設備投資需要が高まっています。

そのような事業環境の下、当社グループは、ワイヤレスやクラウド最新技術動向を踏まえた開発と製品化を強化し、高付加価値製品やサービスの拡販に努めてまいりました。また、自社生産による柔軟な製品供給体制の強みを活かし、顧客ニーズに沿ったきめ細やかな対応で顧客満足度の向上を図るとともに、自社ブランドの訴求に努めてまいりました。

当連結会計年度の業績は、年間を通して日本で売上が好調に推移したことなどから、売上高は443億85百万円前連結会計年度比7.0%増)となりました。

利益面では、為替変動などの影響から売上原価が上昇し、海外におけるソフトウェア開発拠点での人員増強による研究開発費の増加などにより費用の増加となりましたが、それを上回る増収効果により、営業利益は22億8百万円前連結会計年度比17.1%増)となりました。しかしながら、前連結会計年度は外貨建資産負債に対する為替差益13億53百万円を計上しましたが、当連結会計年度は為替差損76百万円の計上となったことなどから、経常利益は19億21百万円前連結会計年度比35.6%減)となり、さらに、前連結会計年度は特別利益として受取和解金86億12百万円を計上しましたが、これは単年度のみの計上であったことなどから、親会社株主に帰属する当期純利益は10億89百万円前連結会計年度比87.3%減)となりました。

 

当連結会計年度における当社グループの所在地別セグメント売上高の概要は以下のとおりです。

■日本

日本では、引き続き人員増強による営業・サービス体制の増強を図り、ターゲット顧客市場に向けた提案型営業活動を強化してまいりました。このような取り組みの中、顧客市場別では、医療機関、自治体及び教育機関などからの受注が増加するなど、年間を通してソリューションビジネスの売上が好調となりました。製品別では、主力製品であるxシリーズ・スイッチ製品群が伸長し、サービス売上が増加しました。この結果、日本での売上高は279億97百万円前連結会計年度比10.1%増)となりました。

■米州

米州では、中南米での案件が好調となり、また、在日米軍基地の居住者向けのサブスク型サービス売上が引き続き好調となりました。一方、米国では、前連結会計年度における大型スポット受注からの反動減がみられました。製品別では、xシリーズ・スイッチ製品群が伸長しましたが、ネットワークインターフェースカードなどの出荷が減少しました。この結果、米州全体での売上高は74億19百万円前連結会計年度比1.0%減)となりました。

■EMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)

EMEAでは、フランス、イギリス、スペインなどでは文教及び公共案件からの受注が堅調となったものの、前連結会計年度に好調であったベネルクス三国などでの売上が当連結会計年度では減少しました。製品別では、xシリーズ・スイッチ製品群が堅調となり、産業用スイッチなどの出荷が増加しましたが、無線LAN製品やネットワークインターフェースカードなどの出荷が減少しました。この結果、EMEA全体での売上高は56億87百万円前連結会計年度比1.9%減)となりました。

 

■アジア・オセアニア

アジア・オセアニアでは、営業・サポート体制を再構築したほか、業種別ソリューションに沿ったパートナー開拓や大手ディストリビュータ開拓を強化したほか、キャンペーンの実施などによる拡販に取り組んでまいりました。このような取り組みの中、製品別では、xシリーズ・スイッチ製品群及び無線LAN製品の売上が好調となりました。この結果、アジア・オセアニア全体での売上高は32億80百万円前連結会計年度比18.2%増)となりました。

 

当連結会計年度末の資産合計は454億95百万円となり、前連結会計年度末に比べ38億58百万円の増加となりました。流動資産は328億5百万円となり、前連結会計年度末に比べ32億84百万円の増加となりました。これは主に現金及び預金が16億48百万円、受取手形、売掛金及び契約資産が4億81百万円、流動資産のその他が15億94百万円増加したことによるものです。また、固定資産は126億90百万円となり、前連結会計年度末に比べ5億73百万円の増加となりました。これは主に建物及び構築物が5億68百万円増加したことによるものです。

当連結会計年度末の負債合計は280億27百万円となり、前連結会計年度末に比べ21億58百万円の増加となりました。流動負債は198億61百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億8百万円の増加となりました。これは主に未払法人税等が15億95百万円減少した一方で、契約負債が17億91百万円増加したことによるものです。また、固定負債は81億65百万円となり、前連結会計年度末に比べ20億49百万円の増加となりました。これは主にリース債務が6億11百万円、固定負債のその他が5億80百万円減少した一方で、長期借入金が32億44百万円増加したことによるものです。

当連結会計年度末の純資産合計は174億67百万円となり、前連結会計年度末に比べ16億99百万円の増加となりました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益10億89百万円の計上等による利益剰余金が増加し、為替換算調整勘定が6億17百万円増加したことによるものです。

 以上の結果、自己資本比率は38.3%となり、前連結会計年度末より0.5ポイントの上昇となりました。

 

   ② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ16億48百万円増加となる107億円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの増減要因は、以下のとおりであります。

<営業活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度の営業活動による支出は74百万円となり、前連結会計年度に比べ84億81百万円の支出増加となりました。主たる営業活動によるキャッシュ・フロー(小計)が30億8百万円増加した一方で、前連結会計年度に計上した和解金の受取額86億12百万円が単年度のみの計上であったこと、また、法人税等の支払額が29億10百万円増加したことによるものです。

<投資活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度の投資活動による支出は9億67百万円となり、前連結会計年度に比べ4億87百万円の支出減少となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出が4億57百万円減少したことによるものです。

<財務活動によるキャッシュ・フロー>

当連結会計年度の財務活動による収入は25億84百万円となり、前連結会計年度に比べ68億30百万円の収入増加となりました。これは主に、長期借入による収入が49億円、短期借入金の純増減額(△は減少)が13億円増加したことによるものです。

 

   ③ 生産、受注及び販売の実績

  a. 生産実績

  当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

2023年12月31日)

前年同期比(%)

日本(千円)

米州(千円)

EMEA(注)1(千円)

アジア・オセアニア(千円)

9,822,099

106.9

合計(千円)

9,822,099

106.9

 

(注) 1  ヨーロッパ、中東及びアフリカ。

        2  金額は、製造原価によっております。

 

  当連結会計年度における商品仕入高、委託生産に伴う仕入高及び生産に伴う原材料・部品の仕入高の実績をセグメントごとに示すと次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

前年同期比(%)

日本(千円)

6,293,233

119.3

米州(千円)

1,030,616

132.3

EMEA(注)1(千円)

273,073

39.1

アジア・オセアニア(千円)

9,517,529

76.8

合計(千円)

17,114,452

89.4

 

(注) 1  ヨーロッパ、中東及びアフリカ。

        2  金額は、仕入価額によっております。

 

   b. 受注実績

  当社グループの取扱品目は原則として全てが標準製品でありますので、個別受注生産は行わず、見込み生産を行っております。

 

  c. 販売実績

  当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

前年同期比(%)

日本(千円)

27,997,872

110.1

米州(千円)

7,419,086

99.0

EMEA(注)1(千円)

5,687,765

98.1

アジア・オセアニア(千円)

3,280,997

118.2

合計(千円)

44,385,722

107.0

 

(注) 1  ヨーロッパ、中東及びアフリカ。

        2  セグメント間の取引については相殺消去しております。

        3  主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自  2022年1月1日

至  2022年12月31日)

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

ダイワボウ情報システム株式会社

8,157,009

19.7

7,761,362

17.5

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

  経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

   ① 連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

  当連結会計年度の業績は、売上高は443億85百万円前連結会計年度比7.0%増)、営業利益は22億8百万円前連結会計年度比17.1%増)、経常利益は19億21百万円前連結会計年度比35.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は、10億89百万円前連結会計年度比87.3%減)となりました。

<売上高>

  売上高は、年間を通して日本で売上が好調に推移したことなどから、前連結会計年度(414億97百万円)から28億88百万円増加し、443億85百万円と、大幅な増収となりました。

  地域別では、日本では、引き続き人員増強による営業・サービス体制の増強を図り、ターゲット顧客市場に向けた提案型営業活動を強化してまいりました。このような取り組みの中、顧客市場別では、医療機関、自治体及び教育機関などからの受注が増加するなど、年間を通してソリューションビジネスの売上が好調となりました。製品別では、主力製品であるxシリーズ・スイッチ製品群が伸長し、サービス売上が増加しました。この結果、日本での売上高は279億97百万円前連結会計年度比10.1%増)となりました。

  米州では、中南米での案件が好調となり、また、在日米軍基地の居住者向けのサブスク型サービス売上が引き続き好調となりました。一方、米国では、前連結会計年度における大型スポット受注からの反動減がみられました。製品別では、xシリーズ・スイッチ製品群が伸長しましたが、ネットワークインターフェースカードなどの出荷が減少しました。この結果、米州全体での売上高は74億19百万円前連結会計年度比1.0%減)となりました。

  EMEAでは、フランス、イギリス、スペインなどでは文教及び公共案件からの受注が堅調となったものの、前連結会計年度に好調であったベネルクス三国などでの売上が当連結会計年度では減少しました。製品別では、xシリーズ・スイッチ製品群が堅調となり、産業用スイッチなどの出荷が増加しましたが、無線LAN製品やネットワークインターフェースカードなどの出荷が減少しました。この結果、EMEA全体での売上高は56億87百万円前連結会計年度比1.9%減)となりました。

アジア・オセアニアでは、営業・サポート体制を再構築したほか、業種別ソリューションに沿ったパートナー開拓や大手ディストリビュータ開拓を強化したほか、キャンペーンの実施などによる拡販に取り組んでまいりました。このような取り組みの中、製品別では、xシリーズ・スイッチ製品群及び無線LAN製品の売上が好調となりました。この結果、アジア・オセアニア全体での売上高は32億80百万円前連結会計年度比18.2%増)となりました。

    <売上総利益>

  当連結会計年度の売上総利益は、前連結会計年度(242億12百万円)から8億30百万円増加し、250億43百万円となりました。これは、為替変動などの影響により売上原価が上昇したものの、増収に伴って増加したことによるものです。

<営業利益>

  当連結会計年度の営業利益は、前連結会計年度(18億85百万円)から3億22百万円増加し、22億8百万円となりました。これは、海外におけるソフトウェア開発拠点での人員増強による研究開発費の増加などにより費用の増加となりましたが、それを上回る増収効果により、増益となりました

 

経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2) 目標とする経営指標」に記載のとおりであります。

 

   ② 資本の財源及び資金の流動性

  当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製品の原材料の購入費用のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。

  当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金及び金融機関からの借入を基本としており、設備投資資金の調達につきましては自己資金及び一部は金融機関からの長期借入を行う等、資金調達の多様性を図っております。

  なお、当連結会計年度末現在における重要な資本的支出の予定はありません。

  当連結会計年度末における有利子負債の残高は98億87百万円となっております。また、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は107億円となっております。

 

   ③ 重要な会計方針及び見積り

  当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。海外の連結子会社は、各国の会計処理基準に準拠しております。連結財務諸表の作成にあたっては、連結会計年度末における資産、負債及び偶発債務並びに連結会計年度における収益、費用に影響を与える見積りを行っておりますが、実際の結果と異なる場合があります。有形固定資産は取得原価により計上し、見積り耐用年数に基づき減価償却を行っております。自社利用ソフトウェアについては見込利用期間に基づき償却を行っております。投資有価証券については時価又は実質価額が著しく下落した場合には、回復する見込があると認められる場合を除き減損処理をしております。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる事項」に記載しております。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、安全で豊かな社会をネットワークで創ることを目指し、情報通信分野の通信機器製品、通信システム製品などにおいて、高い安全性、信頼性、効率性、汎用性を実現する製品やシステムの研究開発活動を進めております。

当社グループは、日本、米州、EMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)及びアジア・オセアニアにおいて、研究開発機能を備えた連結子会社を有しており、開発リソースの有効活用、開発の迅速化・効率化のため、子会社間で連携を図りながら技術開発を進めております。そのほか、大学や連携先企業との共同開発を行っており、多くの英知を結集しております。

当連結会計年度の研究開発活動は、有線/無線製品の性能向上やラインナップを拡充するほか、機能や付加価値を高めるソフトウェアの開発及び新規事業・サービスの開拓を進めてまいりました。今後も環境に配慮した製品作りやサプライチェーンの透明性の確保に努め、付加価値の高いソリューションやソフトウェアの開発を強化し、ネットワークの可能性を追求する研究開発に取り組んでまいります。

なお、当連結会計年度の当社グループの研究開発費合計額は4,774百万円となっており、所在地別セグメントの研究開発活動及び研究開発費は、次のとおりです。

■日本

  日本における当連結会計年度の研究開発費は557百万円であり、主な活動内容は次のとおりです。

日本では、無線LAN通信技術の開発を強化しており、当連結会計年度は、最新無線通信規格、Wi-Fi 6E対応の無線LANアクセスポイントの開発を進めました。既存の無線LANソリューション「AWC(Autonomous Wave Control)」をWi-Fi 6Eで新たに加わった6GHz帯まで拡張させることで、より柔軟なチャネル設計により最適な無線環境を構築することが可能となりました。さらに既存の2つの無線LANソリューション「AWC-CB(AWC-Channel Blanket)」と「AWC-SC(AWC-Smart Connect)」を6GHz帯に拡張する研究開発に取り組んでまいります。

■米州及びEMEA(ヨーロッパ、中東及びアフリカ)

  米州及びEMEAにおける当連結会計年度の研究開発費は2,244百万円であり、主な活動内容は次のとおりです。

米州では、ハードウェア開発と新規事業・サービス等の開発を行っております。

カリフォルニア州サンノゼの研究所は、ネットワークの最先端技術や最新動向を踏まえた研究開発を行っております。昨今需要が拡大しているサイバーセキュリティ対策の分野において、大学などの研究機関との連携の下、日本と共同でシステムや各種サービスの開発を行っております。そのほかハードウェアでは、マルチレイヤー・モジュラー・スイッチやコア・スイッチの開発を行っております。

ノースカロライナ州ケーリーの研究所は、ハードウェアの開発を担い、主に産業用通信ネットワーク製品のラインナップ拡充を進めております。IoT化やDX化などデジタル化の需要拡大が見込まれる分野で、産業用途に求められる各種規格に準拠し、耐久性に優れ、広い動作環境温度に対応する製品の開発を行っております。

■アジア・オセアニア

  アジア・オセアニアにおける当連結会計年度の研究開発費は1,973百万円であり、主な活動内容は次のとおりです。

ニュージーランドの開発子会社は、ソフトウェア開発を担い、主にオペレーションシステム「AlliedWare Plus」の機能・性能拡張のためのファームウェア更新や、ハードウェア・プラットフォームの開発を行っております。当連結会計年度は、「AMF Plus」の拡張開発を進め、ML(機械学習)を用いてネットワーク上のデバイスをエージェントレス型監視ツールで検出し、リスト化するデジタル台帳によって資産の管理が可能となりました。さらに、このデジタル台帳とセキュリティーポリシーを連動させ、ネットワーク上で未登録のデバイスを排除する機能により、ネットワーク全体の安全性や安定性、堅牢性、健全性を大幅に向上させることが可能となりました。今後は、「AMF Plus」を無線LAN機器に応用する研究開発を行ってまいります。

台湾の開発子会社は、標準化した汎用性の高い小規模ネットワーク向けのスイッチの設計・開発を担っております。さらに、日本と共同で無線LAN機器のオペレーションシステムやハイブリット無線LANアクセスポイント開発、世界各国の電波法に適合するための開発・評価等を行っております。