文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サッポログループの経営理念
サッポログループは、「潤いを創造し 豊かさに貢献する」を経営理念に掲げ、「ステークホルダーの信頼を高める誠実な企業活動を実践し、持続的な企業価値の向上を目指す」ことを経営の基本方針として、企業活動を実践しています。
時代とともに変容する“豊かさ”の本質によりいっそう向き合い、明日につながる、自然、社会、心の“豊かさ”に貢献していきます。
(2)中期経営計画(2023~26)
1876年の創業以来、様々なイノベーションを発揮し、お客様に潤いと豊かさをもたらす商品やサービスをお届けしてきた当社グループは、2026年に創業150周年を迎えます。
150年を越えて独自の存在価値を発揮し続けるために、2023年~2026年までの4か年の経営計画を策定し、推進しております。本計画は「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」を基本方針とし、そのポイントは、事業ポートフォリオの見直しと、各事業のポジショニングに沿ったグループマネジメントを実現し、資本効率を高め企業価値を向上させていくことです。詳細は以下のとおりです。
(構造改革)
不確実性の高い環境に適応するべく、各事業を市場環境、独自の強み、サステナビリティ、収益性、シナジー、リソース配分の6つの視点から考察し、企業価値向上の実現に向け、事業ポートフォリオの最適化に取り組んでおります。
事業整理に位置付けた事業は速やかに整理を進め、再編に位置づけた事業は抜本的な見直し等、構造改革を断行しております。
(強化・成長)
海外酒類は2022年に子会社化したSTONE BREWING CO.,LLCの拠点を活用した「SAPPORO PREMIUM BEER」の現地製造開始とあわせ、マーケティング投資によるブランド強化を行います。海外飲料はシンガポールを起点にマレーシア、中東等での売上拡大を目指します。国内酒類は黒ラベル・ヱビスへの集中投資によるビールカテゴリーの強化を行うとともに、RTDは2023年に稼働を開始した自社製造拠点を活用した成長を目指します。不動産は恵比寿・札幌エリアでの保有物件の価値向上を行い、まちづくりを推進することにより、収益と効率を向上させます。
(財務目標)
・ROE:8%
・EBITDA年平均成長率(CAGR):10%程度
・海外売上高年平均成長率(CAGR):10%程度
(主な非財務目標)
・温室効果ガス排出削減(いずれも2022年比)
スコープ1、2 2030年 42%削減(2026年 21%削減)
スコープ3 2030年 25%削減(2026年 12.5%削減)
※SBT認定済
・女性役員比率、女性管理職比率:12%以上
(3)財務戦略
「持続的成長と資本効率重視」をテーマに、構造改革・事業成長による収益力強化と、資産や事業ポートフォリオの見直しにより資本効率を高め企業価値向上を確かなものにします。
財務の健全性は、現状格付けを維持することを基本とします。投資については、営業キャッシュフローとのバランスを取りながら、海外への投資を優先することで成長促進を図ると共に、サステナビリティ関連の投資も推進します。なお、M&A等の成長投資の機会には、現状格付を確保できる範囲で機動的に対応します。
株主の皆様への利益還元は、経営上の重要政策と位置付けており、業績や財務状況を勘案して安定した配当を行うことを基本方針としています。今後の配当水準につきましては、連結配当性向30%以上を基本に、現状水準を下限として、企業価値向上を伴わせた配当水準の向上を図ります。なお、特殊要因にかかる一時的な損失や利益計上により、当期利益が大きく変動する場合は、その影響を考慮して配当金額を決定することがあります。
(4)対処すべき課題
①中期経営計画(2023~26)の推進とモニタリングについて
当社グループは、「中期経営計画(2023~26)」の達成に向けて、内部運用ならびに外部開示の2つの観点からモニタリング体制を構築し、運用しております。内部運用の観点では、各事業セグメントにおける構造改革および成長戦略に関する具体的なアクションプランの進捗について、取締役会等を通じて綿密なモニタリングを行い、計画達成の裏付けを強化しております。また、外部開示の観点では、当社グループの取り組みを、従来以上に具体的に分かりやすく、且つタイムリーにステークホルダーの皆様にお伝えすることで、計画達成の蓋然性に対する信頼性の向上に努めております。
②サステナビリティ経営の推進について
「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」をご覧ください。
③DXの推進について
大きな環境変化が続く中で、サッポログループでは新たな時代のニーズに即した価値を創出する手段として、DXを推進しております。
以下のとおり「サッポログループDX方針」を策定し、グループ内でのDX・IT人財の育成と活用を進めております。
「サッポログループDX方針」
方針① お客様接点を拡大:お客さまとつながり、理解を深め、寄り添うこと
方針② 既存・新規ビジネスを拡大:お客さま起点で考えぬかれた新たな価値の創造と、稼ぐ力を増強すること
方針③ 働き方の改革:サッポログループにかかわるあらゆるステークホルダーと共に成長し続けるため
自分たちの仕事をもっと楽に、もっと楽しく、働くことに誇りを持てるものにしていくこと
DX推進体制
グループのDX・ITに関する経営資源配分の支援・調整・確認を行い、方向性を決定するための機関として、DX・IT担当役員を委員長とする「グループDX・IT委員会」を2022年4月1日付で設置しております。
DX推進戦略
2022年から2023年にかけて「DX・IT人財育成プログラム(DXP)」を通じて、200名のDX・IT推進基幹人財の育成を実施してまいりました。2024年以降は高度デジタル人財の育成強化、市民開発ツールの積極展開などの環境整備により育成人財の成果創出を推進してまいります。
④グループ価値向上のための中長期経営方針
サッポログループ「中期経営計画(2023~26)」の公表(2022年11月)後、IR及びSR活動等を通じ、資本市場から様々なご意見をいただきました。それらも踏まえ、当社では、2023年9月に社外有識者を含めた構成の「グループ戦略検討委員会(以下、「本委員会」という)」を設立し、第三者のアドバイザーを含めた多面的、客観的な視点も加え、現中期経営計画の先にある中長期的な企業価値向上のための経営方針について議論をしてきました。
今般、当社は本委員会からの提言も踏まえ、2024年2月の取締役会において「グループ価値向上のための中長期経営方針」を決議いたしました。その概要は以下のとおりです。
・中長期的な企業価値向上のためにより一層の経営リソース集中を進めます。競争優位な強みを有する事業と、その事業とシナジーを明確に見出せる事業に集中し、創業来のDNAである酒類の市場創造力に磨きをかけることで、世界をフィールドに豊かなビール体験、顧客体験を創造する企業として成長、資本収益性を向上させます。
・資本効率の改善を重要課題と捉え、ROE10%以上の達成を目指します。また、ROICを社内管理指標とし、事業別のWACCに基づいた事業継続判断基準の厳密化と、ROICツリーを用いた事業モニタリングを徹底します。さらに、外部から取り込む資本も活用して財務安定性を高めるとともに、政策保有株式の削減を前倒しし、酒類事業に向けた成長投資の機動力を高めていきます。
今後上記諸点の検討を進め、後日、より具体的な取り組み内容を開示する予定です。
<サッポログループの変革の方向性イメージ>
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
<サッポログループのサステナビリティに関する考え方>
サッポログループは、1876年の創業以来、酒類事業、食品飲料事業など、「食べる」「飲む」という人の根源的な営みに関わる事業を展開してきました。そして外食事業や不動産事業では、食事やショッピングを楽しむ、快適に住む・働くといった、人々が心豊かな時間を過ごせる空間を提供しております。このように、当社グループの事業はいずれも、人々の暮らしや社会に潤いをもたらし、その豊かさに貢献することを目指しており、こうした考え方のもと、グループの提供価値を「すべての事業が提供する時間と空間で、人々と地域社会のWell-beingに貢献」と定義しております。
サステナビリティ経営の推進にあたっては「サッポログループ サステナビリティ方針」のもと、「環境との調和」「社会との共栄」「人財の活躍」を柱とする重点課題9項目を特定し、それぞれ目標を設定しその達成に向けて、進捗をモニタリングしながら取り組みを推進しております。
これからも、世界中のサッポログループ従業員と、ステークホルダーとのパートナーシップのもとに、社会価値と経済価値の創出を両立させ、持続可能な社会の実現に向けて取り組んでまいります。
① ガバナンス
サッポログループは、サッポロホールディングス代表取締役社長を委員長とする「グループリスクマネジメント委員会」「グループサステナビリティ委員会」を「経営会議」の諮問機関として設置しております。
「グループリスクマネジメント委員会」では、委員会事務局が半期ごとにグループにおけるサステナビリティ関連リスクの発生状況や対応、再発防止について取締役会へ報告します。「グループサステナビリティ委員会」では、グループ全体でサステナビリティ経営を推進するための全体方針を策定し、グループ内の調整を行い、担当取締役が半期ごとに気候変動や人財に関する課題を含めたサステナビリティ全般に関する課題対応の進捗状況について取締役会へ報告しております。取締役会は、これら報告を受けた課題への取り組みや設定した目標をモニタリングし、監督しております。また、グループ各社のサステナビリティ活動推進のための諸施策を立案・実施しているほか、事業会社と連携し、情報共有と進捗の確認を行っております。
取締役の報酬に関して、業績連動型株式報酬の項目に、「ESG指標」「従業員エンゲージメント」を組み入れ、サステナビリティに関する取り組みを役員報酬に反映させております。
② 戦略
サッポログループは幅広い社会課題について、各事業との関連性を「事業による社会・環境への影響度」と「社会・環境による自社財務への影響度」の両面から、リスク・機会の観点で評価し、「環境との調和」「社会との共栄」「人財の活躍」を柱とするサステナビリティ重点課題9項目を特定しております。各課題の具体的取り組みを進めることで、経済価値創出に繋げます。中でも、グループの事業との関連性およびリスクと機会の影響度の大きさから、「脱炭素社会の実現」「地域との共栄」「多様な人財の活躍」を最注力課題と位置づけております。気候変動に対する戦略は
③ リスク管理
サッポログループは「事業と環境にかかわるリスクを包括的に把握し、重点的に対応すること」により事業の永続性を図っています。リスクを「将来に向けた不確実な事象」と定義し、未だ顕在化していない広義のリスクとすでに具現化した狭義のリスクをそれぞれ担当する機関がアプローチし、リスク管理を重点化することで、脅威の極小化、機会の最大化に努めています。
なお、「経営会議」、「グループサステナビリティ委員会」および「グループリスクマネジメント委員会」は、相互の役割を認識し、それぞれの機能に応じたアクションプランを設定して、「機会」と「脅威」のリスクに対応しております。
④ 指標および目標
サステナビリティ重点課題に対し、それぞれ目標を設定し、その達成に向けて、進捗をモニタリングしながら取り組みを推進しております。最注力課題3点の目標と実績は以下のとおりです。
*会社名の表記については以下の略称を使用しています。
SH:サッポロホールディングス㈱、SB:サッポロビール㈱、PS:ポッカサッポロフード&ビバレッジ㈱、SGF:サッポログループ食品㈱、SRE:サッポロ不動産開発㈱、SLN:㈱サッポロライオン、SBL:SLEEMAN BREWERIES LTD.、SVL:SAPPORO VIETNAM LTD.、PK:POKKA PTE. LTD.
SH+4事業会社:SH,SB,PS,SRE,SLN
*「☆」マークがついている、温室効果ガス排出量は、当社により策定した算定ルールおよび算定結果について国際的な基準であるISO14064-3に準拠した第三者検証を一般財団法人日本品質保証機構から受けています。算定範囲などの詳細は、当社WEBサイト(ESGデータ集)を参照願います。
https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/esg/
*温室効果ガス排出削減目標はSBT認定を取得しています。
*他の項目に関する目標及び最新の実績は下記に掲載しております。
https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/policy/systems/
*気候変動に対する指標及び目標は
<TCFDへの対応>
① ガバナンス
「<サッポログループのサステナビリティに関する考え方>①ガバナンス」に記載の通り、サッポロホールディングス代表取締役社長を委員長とする「グループサステナビリティ委員会」を「経営会議」の諮問機関として設置し、環境保全活動を推進・統括するとともに、各事業会社の環境経営の取り組みをサポートしております。
② 戦略
「サッポログループ環境ビジョン2050」に基づき、脱炭素を志向した事業構造改革、省エネ対策の徹底に加え、再生可能エネルギーの活用で脱炭素社会の実現に向けた取り組みを進めております。グループ全体での徹底した脱炭素の取り組みと、ビール事業で培ってきた原料づくりの取り組みで、気候変動へ緩和と適応の両面から課題解決に挑んでおります。なお、気候変動による影響が想定されるビール原料農産物の調達地域を対象としたシナリオ分析を実施し、戦略に反映しております。
Ⅰ.シナリオ分析結果
基軸のビール事業で気候変動による影響が想定されるビール原料農産物の調達地域を対象とした、シナリオ分析を実施しました。国際連合食糧農業機関(FAO)のシナリオ分析データなどを基に、異常気象などの要因を考慮して補正しており、気候変動要因、経済社会要因、生産量に関する要因がそれぞれ異なる3つのシナリオについて、2050年までの収量の変化を想定しております。
〇主要調達国の収量増減予想
サステナビリティ進展シナリオでは、化学肥料使用に規制がかかる影響等によって、収量に対してマイナスの影響が出る事を想定しております。収量推計が増加基調の国では上表のマイナス要因を受けても増加や横ばいを保つ場合があります。
〇財務影響
上記のシナリオ分析の結果をもとに、原材料の調達コストに影響が大きいと予想される以下の項目について財務影響を分析しました。本分析は、2022年度における全調達をもとに、気候変動関連の影響による価格増加分のみを試算しております。
・環境規制の強化による有機栽培の拡大
・エネルギー価格高騰による調達価格の上昇
・原材料(大麦、ホップ、トウモロコシ)の収量減少による原材料価格の上昇

各シナリオで最も財務影響の大きかったものは、停滞シナリオでした。停滞シナリオでは、「エネルギー価格高騰による調達価格の上昇」による影響が最も大きく、「原材料の収量減少による原材料価格の上昇」による影響で、2030年時点で2.5億円、2050年時点で7.7億円という結果になりました。次に影響の大きかった進展シナリオでは、「環境規制の強化による有機栽培の拡大」による影響で、2030年時点で2.0億円、2050年時点で5.5億円という結果になりました。標準シナリオでは、「原材料の収量減少による原材料価格の上昇」、「環境規制の強化による有機栽培の拡大」による影響で、2030年時点で1.3億円、2050年時点で5.0億円という結果になりました。
品目別にみると調達額の一番大きい大麦(麦芽含む)が、各シナリオで最も価格上昇のある品目となりました。進展シナリオでは、調達金額の大きさに連動して各品目の影響が生じていますが、標準シナリオと停滞シナリオでは、調達金額の一番少ないトウモロコシが2番目に高い金額となりました。これは、標準シナリオと停滞シナリオ共に、トウモロコシの収量が大きく減少することが予想されており、その影響が大きいと考えられます。
Ⅱ.炭素税導入によるスコープ1,2への影響
炭素税導入による財務影響は、国際エネルギー機関(IEA)のNZEシナリオ(Net Zero Emissions by 2050 Scenario)に基づき、当社拠点のエネルギー使用量から試算をしました。2030年、2050年時点において、当社もCO2削減目標が達成できた場合と出来なかった場合の財務影響を分析しました。
1USD=133.36円
IEA:NZEシナリオ
炭素税2030年:先進国130USD、新興国90USD、発展途上国15USD
炭素税2050年:先進国250USD、新興国200USD、発展途上国55USD
計画通りに排出量を削減できた場合、2030年:110千t、2050年:0tをそれぞれ見込んでおります。一方で、削減目標を達成できなかった場合、2022年の排出量が継続することを想定し2030年、2050年それぞれの排出量を189千tと見込みました。
削減目標を達成できなかった場合、できた場合をそれぞれ比較すると、2030年は約31.3億円、2050年は約60.6億円のインパクトがあるという結果となりました。
③ リスクと機会、対応・施策の方向性
シナリオ分析の結果によると、各シナリオでビール原料農産物の収量が減少する地域があることがわかりました。これらの影響を含めて、3つのシナリオが現実化した場合を想定し、サッポログループが直面するリスクと機会について検討を行いました。
リスクについては、異常気象による農作物の収量減少、規制強化、病虫害などによる品質低下などを認識しております。一方で機会については、品種改良による品質の安定化、新品種の開発、商品開発等による競争力の強化を認識しております。緩和策や適応策を強化することで、リスクの影響が低減され、機会を獲得できる可能性が大きくなると捉えております。
収量減少の傾向が各地域で生じますが、地域差に応じて、多角的に調達先を確保することにより対応します。また、農薬に関する規制強化、病害による収量減や品質低下には、協働契約栽培の活動や新品種の開発・実用化で対応していきます。これらは、いずれのシナリオに対しても効果を発揮する施策です。
〇移行計画
サッポログループは温室効果ガス削減目標についてSBT認定を取得しております。SBT1.5℃基準では、目標年に向かう毎年の削減水準が定められており、グループ全体で一定の傾きの削減を目指しております。
このような削減計画を達成させるため、2022年から2030年の8年で約21億円の脱炭素投資を行います。生産拠点では設備の老朽化対策に合わせて高効率化への更新や工程の合理化などの省エネ活動、また、電力を中心に再エネの転換を進めます。脱炭素を目的とした投資判断の枠組みでは、ICP(Internal Carbon Pricing)を主要事業会社で導入しており、今回投資額の試算では6千円/t-CO2を採用しています。

基幹事業である酒類事業では、サッポロビール原料開発研究所を拠点に国内外の大学や研究機関、サプライヤーと連携しながら新品種の開発に取り組んでいます。気候変動により影響が大きくなると想定されるビール主原料について、病害抵抗性に優れ、異常気象でも収量や品質が安定している品種の実用化を目指し、開発を進めております。
④ 指標および目標
緩和策
2030年
・自社拠点からの温室効果ガス排出量(スコープ1,2)を2022年比で42%削減する
・バリューチェーン全体の温室効果ガス排出量(スコープ3)を2022年比で25%削減する
・FLAGスコープ1,2,3の温室効果ガス排出量を2022年比で31%削減する
- 排出削減活動を国内の協働契約栽培全産地で展開
2050年
・スコープ1,2,3で温室効果ガス排出量ネットゼロを目指す
- 使用電力を100%再生可能エネルギー由来にする
適応策
・2030年までに気候変動に適応するための新品種(大麦、ホップ)を登録出願
・2035年までに気候変動に適応するための新品種(大麦、ホップ)を国内で実用化
・2050年までに上記品種の他、新たな環境適応性品種を開発し、国内外で実用化
*その他TCFDへの対応に関する詳細な情報は下記に記載しております。
https://www.sapporoholdings.jp/sustainability/environment/nature/climate/
<サッポログループ人財戦略>
① グループ人財戦略および人財育成方針・社内環境整備方針
サッポログループは、「中期経営計画(2023~26)」の基本方針「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」を実現するための重要な経営基盤を人財と位置づけ、2023年に新たな人財戦略を策定しました。
人財戦略では、北海道開拓使をルーツとする、創業以来の私たちの強みをベースとしながら、大きく変化する事業環境に合わせ、必要な場所で必要な力を蓄えた多様な人財が「ちがいを活かして変化に挑む越境集団となる」ことを目指しております。
人財は私たちすべての価値創出の源泉であるとの考えの下、3つの戦略、優先課題・主な方策とKPIを定め人財育成、社内環境整備に取り組むこととしております。


戦略①多様性×流動化=変化への挑戦
「1.多様性促進」
事業構造を転換し、新たな成長を目指す当社にとって、同質性の高さから脱却し、多様性を推進することは最重要課題であり、その中でも、女性活躍を優先課題と考えております。
2026年の最終目標をサッポロホールディングス社+4事業会社で女性取締役・管理職比率共に12%とし、ロードマップを作成、ローリングしながら確実な目標達成に向け取り組みを進めております。
2023年度は、女性中堅層の早期育成に向け、経営トップとの対話会やセミナー実施、現場TOPを育成責任者とし、育成計画への積極的関与のしくみづくりを行いました。結果、2023年12月末現在サッポロホールディングス社+4事業会社女性取締役比率7.9%、管理職比率6.7%となり、取締役比率は一時的に0.4%下がりましたが、管理職比率は、1.3%上昇しました。更に、2030年には、サッポロホールディングスの取締役比率30%、管理職比率20%の目標を掲げ、ちがいを活かして変化に挑む会社への進化を目指します。

これらスピードを上げた多様性の促進への取り組みを通じて、KPIとして掲げている社員意識調査「D&Iチーム力」3.2以上(現在3.0)の向上につなげていきたいと考えております。
「2.社内外人財の流動的な活用」
社員全員が「自分のキャリアは自分で切り拓く」ことを目指し、キャリア自律と挑戦できる風土を推進するための支援を強化しております。
(1)キャリア実現の場・機会の拡大
当社では30年以上前から、人財公募、フロンティア休職制度の導入等、自らの主体的意思でキャリアを選択・実現する場の拡大に取り組んでまいりました。その結果、人財公募は、2023年は年間35件、応募者68件と年々増加しております。2020年以降、社内外副業制度・社内インターン制度も導入し、2023年現在、社内外副業の経験者は累計175名となりました。2026年KPIである社内外副業経験者300名を目指し、2024年度以降も、社外での副業、社外からの副業者受入による他流試合の場を更に拡大することで、個々の社員のキャリアを拡大、挑戦への風土づくりを加速してまいります。
(2)一人一人に寄り添い、キャリアを丁寧に考える機会の提供
異動希望者全員、入社3年以内社員への人事配置担当との直接面談の実施、2010年より社内キャリアカウンセラーによるキャリアサポート制度導入等、一人一人のキャリアオーナーシップの意識向上を進めてまいりました。
2023年は、特に守りに入りがちなシニア層のキャリア開発を攻めに転換するマインドセットを目的に、希望者を対象にキャリア面談を導入し、2023年末現在50歳以上の約9%が面談を実施しております。
人生100年時代を見据えた新たなキャリアづくりへの積極的な支援も進めております。
戦略②人的資本投資=個と組織の強化
「3.経営人財育成」
「4.スピードある成長への積極投資」
中期経営計画で目指す「海外事業の成長」「コア事業における収益力向上」を実現するため、スピードを上げ集中投資する人財として経営、グローバル、DX・ITの3つを掲げ、人財確保・育成を重要課題と位置付けております。2023年は経営人財の潤沢な人財プールづくりにむけた計画的育成の仕組みづくり、グローバル中核人財は2026年100名の確保を目指し、人財のリストアップ、戦略的育成配置プランの策定、中堅層以上を対象とした新たな研修の展開、グローバルコミュニケーション力・ビジネススキル強化等に取り組んでおります。
*DX基軸人財戦略に関しては「

また、2023年11月、サッポロビール社では、ビジネスのタネ探索の仕組みづくりとして、「Wonder Works(未来を拓く挑戦)」を本格始動しております。新しいことにチャレンジしたくなる気運を全社で醸成、それを実現する人財を数多く生み出し、将来の新規事業創出に繋げることを目指しております。
このように、事業戦略を担う重要な経営基盤である人財への積極的な投資を進めてきた結果、2023年の人財育成投資額は279百万円、2020年の約3倍となりました。今後も必要な人財投資を進めるとともに、これらのKPIとして掲げている、社員意識調査「未来価値創造への挑戦」3.0以上(現在2.7)達成を目指します。
戦略③働き続けたい環境整備=100%の力発揮
「5.エンゲージメント向上と健康促進」
(1)多様な価値観に対する柔軟な働き方
10年前より在宅勤務、フレックスタイム制度、2016年には一時的に地域を限定して勤務できる制度の導入等、柔軟な働き方への対応を進めてまいりました。2024年以降、サッポロビール社では「リージョナル型社員のどこでも勤務制度」や出張型の営業職において単身赴任又は自宅から通勤を選択できる制度、サッポロライオン社では、管理職時短制度導入を予定しております。
また、サッポロビール社では2017年よりプラチナくるみん、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社ではくるみんの認定を取得する等、子育て支援へも積極的に取り組んでまいりました。男性育児休職者増加に向け、休職中の年収試算ツールの開発や管理職の意識改革への粘り強い取り組みの結果、2023年サッポロビールでは男性育児休職率の目標であった100%を2年前倒しで達成となりました。サッポロホールディングス社+4事業会社平均の休職率は97.5%。育児休職日数は29.1日となりました。
更に病気と仕事の両立では、社内外へ越境し活動を深化させてきた取組みも評価され、「がんアライアワード2023」において、サッポロビール社は新設された最上位ランクの初代ダイヤモンド賞、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社はシルバー賞を受賞致しました。今後も、仕事と個々のメンバーが抱える課題との両立への環境づくりを進めてまいります。

(2)支援型マネジメント力の強化
心理的安全性やアンコンシャスバイアス研修の展開、1on1の実施や人財育成会議をはじめとする支援型マネジメントの更なる推進徹底等により、社員意識調査のメンバー自身の仕事への自信、強みの発揮、働きがいの3項目においていずれも、前年より0.2~0.4数値が向上致しました。
(3)健康経営の推進
2023年よりスタートした健康経営の中期経営計画では、重症化予防・こころと体の健康づくりを重点課題として掲げ、2026年迄のKPIを策定、健康意識の向上、健康行動の習慣化、職場での話題性喚起等をテーマに取り組み、2023年度大規模法人、中小規模法人健康経営優良法人で、グループ計7社が認定されました。

このような取り組みの結果、KPIとして掲げるワークエンゲージメント(2026年KPI54以上)は、前年より0.4上昇し、2023年度に54を達成しました。
また、出勤時の労働遂行能力の低下による労働損失の指標であるプレゼンティーズム(2026年KPI 33.4%以下)は、前年より120百万円の損失改善となり、0.6%改善され33.8%となりました。
今後も、健康、安全・安心、人権尊重を推進し、個の持てる力を100%発揮できる環境づくりを加速してまいります。
② 指標および目標
Ⅰ.多様性の促進
・女性取締役・管理職比率12%
Ⅱ.社内外人財の流動的な活用
・社内外副業経験保有者増、グループへの拡大
Ⅲ.経営人財育成
・サッポロホールディングス社+4事業会社の経営人財 サクセッションプラン実施
・人的資本情報の見える化
Ⅳ.スピードある成長に向けた積極投資
・グローバル中核人材100名 ※海外業務経験者、グローバル人財強化策対象者等
・DX・IT基幹人財200名
Ⅴ.エンゲージメント向上と健康促進
・ワークエンゲージメント 54以上 (2023年54.0)
・プレゼンティーイズム損失 33.4%以下 (2023年33.8%)
1.当社のリスクマネジメント体制
①リスクマネジメントに関する基本的な考え方
当社グループは「事業と環境に関わるリスクを包括的に把握し、重点的に対応すること」により事業の永続性を図っております。
リスクを「将来に向けた不確実な事象」と定義し、会社にとっての「機会」と「脅威」に分け、未だ顕在化しない広義のリスクと既に具現化した狭義のリスクを、それぞれ担当する機関がアプローチし、リスク管理を重点化することで、脅威の極小化、機会の最大化に努めております。
なお、経営会議及びグループサステナビリティ委員会、グループリスクマネジメント委員会は、相互の役割を認識し、それぞれの機能に応じたアクションプランを設定して、「機会」及び「脅威」のリスクに対応しています。また、取締役会、経営会議では四半期又は半期ごとに各機関から報告を受け、リスク管理のモニタリングを行っています。
②グループリスクマネジメント体制及び運用フロー
当社グループは、業務執行上の重要な意思決定ないし事業遂行等に内在するリスクは、経営会議において管理することとし、同会議における審議、報告事項等に対して、経営企画・総務・経理・法務等の管理部門がそれぞれ想定されるリスクを分析し、必要な報告を行う体制を構築しております。
緊急事態の発生、あるいは緊急事態につながるおそれのある事実が判明した際は、グループリスクマネジメント委員会が事業会社の危機管理組織等と連携して、情報開示も含む対応策を協議し、迅速かつ適正な対応を行い、早期解決及びリスクの低減に取り組んでいます。
2.事業等のリスク
当社グループの経営成績及び財務状況等(株価等を含む)に影響を及ぼす可能性のあるリスク要因を以下に記載しています。以下に掲げるリスクは、当社グループを取り巻くリスク事象のうち脅威とその対応について示しております。なお、文中の将来に関する事項は、2023年12月31日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経済情勢及び人口動態の変化について
グローバルな経済情勢の変化により、景気が悪化し、主要製品の出荷変動や保有資産の価値の低下につながる可能性があり、競争関係がさらに激化した場合は、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
また、当社グループでは、多様な人財が活躍できる環境を整備するために、ダイバーシティ&インクルージョンの環境整備や、ワークエンゲージメント向上策等を推進しています。しかしながら、国内の少子高齢化に伴う需要の縮小や、それに伴う従業員の雇用に関する競争激化、人財の流動化、また、職場環境の悪化による生産性の低下や退職者増加による人財不足等により、事業活動に必要な人財を十分に確保できない場合は、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(2)気候変動によるリスクについて
当社グループでは、「サッポログループ環境ビジョン2050」を踏まえ、中期経営計画とあわせたサステナビリティ重点課題である「環境との調和」「社会との共栄」「人財の活躍」及び「責任ある飲酒の推進」「安全な製品、施設の提供」の実現に向けて、取組を推進しております。また、当社は、2019年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しました。当社は今後も、環境保全に関する活動を一層強化しながら、TCFDの提言を踏まえた情報開示に取り組んでまいります。なお、本報告書では、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」において、TCFDの提言を踏まえた記載をしております。
しかしながら、将来的な気候変動によって主要な原材料や必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失が発生する可能性があり、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(3)法的規制等の影響について
当社グループは、酒税法や食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法的規制の適用を受けております。また、事業を展開する各国の法的規制の適用も受けております。このような中、法的手続による権利の保全にも万全を期しておりますが、将来において新たな法的規制等が設けられる可能性もあり、これらの法的規制等の適用を受けることとなった場合、事業活動の制限や、新たな費用が発生するなど当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、酒税や消費税の増税等が実施されることによる需要の減少、ビール・発泡酒を始めとする酒類の広告に対する規制や、酒販店店頭での販売時間、酒類販売場所に対する規制が広がっていく場合など、需要の減少や新たな規制に対応するための費用等が発生する可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(4)特定事業分野への依存度について
当社グループの売上収益において酒類事業の占める割合は約7割となっており、またその多くは国内市場での売上となっております。さらなる収益性の拡大を目指すため、事業ポートフォリオの見直しを適宜進め、海外市場での事業活動の拡充を図っております。
しかしながら、依然、国内市場への依存は高く、国内市場での需要が減少する中での競合他社との価格競争、2020年から段階的に実施されている酒税の税率変更、消費者の嗜好の変化、原料・資材及びエネルギーコストの高騰を受けた商品値上げ、冷夏や長期間にわたる梅雨等の要因によって売上が減少した場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(5)海外における事業活動について
当社グループは、海外市場での事業活動を拡充することにより利益の拡大を図っており、米国・カナダを中心に酒類事業を拡充しております。アジアにおいては、シンガポールを起点にマレーシア、中東などで飲料の事業活動を行っております。また、ベトナムにおいては、ロンアン工場で製造されたビールをベトナム国内で販売するとともに輸出も行っています。
事業活動を行う海外子会社との連携を密にして、現地の経営環境を踏まえた事業運営の適切な管理・サポート等を実施するとともに、経営管理・リスク管理体制の整備にも努めております。しかしながら、これらの当社グループの海外における事業活動においては、経済の動向、競争環境の変化や為替相場の変動に加えて、投資、貿易、税及び為替等に関する法的規制の変更、商慣習の相違、労使関係、地域紛争、テロリズム、伝染病並びにその他の政治的・社会的・経済的混乱等の要因により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(6)R&Dの影響について
当社グループでは「おいしさ」と「健康」を基軸に、お客様ニーズや生活様式の変化に対応した価値を提案できる研究開発、商品提案を継続的に実施しておりますが、消費者嗜好の変化や技術革新、法改正等によって予測できない事業環境の変化が起こり、市場における競争力が低下した場合には、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(7)食品の安全性について
当社グループでは、お客様への安全な商品提供を最優先課題とし、グループ各社の関係部門・部署に対してリスクマネジメント、リスクコミュニケーションに関する仕組みの維持及び啓発・講習を実施する等、品質保証体制の確立に向けて取組を強化しております。しかしながら、当社グループ固有の品質問題のみならず、社会全般にわたる一般的な製品及び原料に係る品質及び表示の問題等が発生した場合、製品回収、出荷不良品発生、製造物責任を追及される等の可能性があります。外食事業においては、食中毒が発生した場合、一定期間の営業停止等を命ぜられ、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(8)製造委託品及び仕入商品の安全性について
当社グループは一部の商品について外部に製造委託を行っております。また、仕入商品も取り扱っております。製造委託商品や仕入商品についても品質等については監査等により万全を期しておりますが、取組の範囲を超えた品質等の問題が発生した場合、販売休止、製品回収等の可能性があり、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(9)原料・資材調達及び価格について
当社グループの使用する主要な原料・資材には、その価格が商品相場や為替市場等の状況により変動するものがあります。また、継続する地域紛争は、グローバルサプライチェーンに悪影響を与えることがあります。市況の最新情報収集強化、調達先の分散・多様化、適正在庫の水準の維持、為替予約等様々な対策を進めておりますが、それら原料・資材の価格が高騰することにより、売上原価が上昇し、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(10)サプライチェーンに係るリスクについて
当社グループが主に事業展開する、酒類・食品の製造販売業界において、サプライチェーンは重要な機能となっております。国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」等の影響もあり運送ドライバーや荷役作業員の人手不足の拡大が予想されます。必要な物流機能を適切なコストで維持することが安定的な事業展開には不可欠ですが、サプライチェーン全体でのコスト上昇や機能低下により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、サプライチェーンにおける人権侵害や環境破壊等の問題が発生した場合、安定的なサプライチェーンを維持できず、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(11)事業・資本提携について
当社グループでは、成長に向けた競争力強化の一環として国内外他社との事業・資本提携を実施する可能性があります。その場合、対象会社の財務内容や契約関係等について、詳細なデューデリジェンスを行い、将来の損失を最大限回避するように努めております。しかしながら、市場環境や事業環境の変化等によっては、当初想定していた成果を得られず、場合によっては、提携先及び出資先の事業、経営及び資産の悪化等が生じた場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(12)アルコール関連問題について
アルコール関連問題につきましては、WHO(世界保健機関)が2010年に「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を採択し、日本でも2014年に「アルコール健康障害対策基本法」が施行されるなど、過度の摂取による健康面、社会的側面での悪影響が指摘されています。将来は世界的に規制の一層の強化が行われることが予想され、健康志向の高まりにより、アルコールに対する消費者需要が縮小し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
当社グループでは、アルコール関連問題に関係する広告表示・表現、販売促進企画に対し、自主ガイドラインに沿った事前審査を複数の部署で実施し、不適切な広告表現等を未然に防止しております。また、ビール酒造組合などと協働して情報収集に努め、「20歳未満飲酒」「飲酒運転」「妊産婦飲酒」等の不適切飲酒撲滅に向けた「責任ある飲酒の推進」を実施しております。
(13)固定資産の減損について
当社グループでは、減損会計を適用しております。重要かつ企業価値向上に資する買収・合併及び設備投資について、その事業環境や収益性に鑑み、慎重な投資を実施しておりますが、将来、当社グループが保有する固定資産及び企業結合により取得したのれん等について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、減損損失が発生した場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(14)金融負債について
当社グループでは、各事業の必要資金の多くを、社債や金融機関からの借入れにより調達しており、金融市場のリスクに晒されております。資金調達先の分散、借入期間の適正化、金利環境等を勘案のうえで必要資金の調達を行っておりますが、当社グループでは成長戦略の遂行に伴い大規模な投資等を行うことにより、さらに金融負債が増加する場合もあります。また、今後、市場金利が上昇した場合や、格付機関が当社の格付を引き下げた場合には、金利の負担や、資金調達の条件の悪化等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(15)退職給付債務について
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。企業年金基金に適切な人材を配置し、運用状況の適宜モニタリングを実施しておりますが、制度資産の公正価値の変動、金利の変動、年金資産の変更等、前提条件に大きな変動があった場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(16)自然災害の発生によるリスクについて
当社グループは、国内外に事業拠点を有しております。各拠点では自然災害に対する防災、事業継続性の確保に努めております。しかしながら、大規模な自然災害及び二次災害の影響により、想定をはるかに超えた震災や風水害及び土砂災害等が発生した場合は、当社グループの所有する建物、設備等に損害を受ける可能性があります。一時的な事業停止や物流網の混乱に伴い商品供給に支障を来し、機会損失、製品廃棄による損失等が発生した場合、当社グループの業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(17)感染症等のリスクについて
感染症等の感染拡大への対応について、当社グループでは、酒類や食品飲料の製造や外食に携わる企業として、お客様への供給責任を果たすべく、感染症リスク低減に対策を講じながら国内及び海外における各事業拠点で生産・物流業務を継続しております。あわせて、不動産事業において管理・運営する複合商業施設やオフィスビル等においても、感染防止に向けた取組を継続しております。
感染症等の流行や感染拡大により経済状況が悪化した場合は、原材料や資材コストの高騰、外出自粛要請による消費の減退、外食産業の低迷、業務用商品の需要低迷等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(18)コーポレートガバナンス上のリスクについて
当社では持株会社体制のもと、グループ内における業務監督機能の強化及び、グループ各社における内部統制の整備・運用に努めております。しかしながら、コーポレートガバナンスや、グループ内における内部統制が機能不全に陥った場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(19)コンプライアンスに関するリスクについて
当社グループでは、従業員への啓発活動や内部統制の強化を通じて、コンプライアンス違反の防止に努めております。しかしながら、グループ内において不正行為や犯罪行為、贈収賄など法令や社会要請に反した行為が行われることがあれば、当社グループの業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、そのことが各種メディアやSNS等で非難を受けることにより、会社のブランド、信用にも悪影響を与える可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(20)訴訟や罰金等の発生するリスクについて
当社グループでは、事業の遂行に当たり従業員啓発のための研修等コンプライアンスの推進により、各種法令違反等の低減に努めております。しかしながら、国内外の事業活動の遂行上、当社グループ各社及びその従業員の法令等に対する違反の有無にかかわらず、製造物責任法、知的財産法、税務等の問題で訴訟を提起される、又は罰金等を科される可能性があります。訴訟が提起される事態、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(21)情報セキュリティについて
当社グループでは、事業運営を行うために様々なシステムがあり、多くの重要情報を取り扱っております。外部からの攻撃に対して多層的な防御・監視体制を構築するとともに、標的型攻撃メール訓練による従業員への啓発を行い、情報システムの適切な管理体制の構築に努めております。しかしながら、サイバー攻撃等により、重要情報の改ざん、個人情報の流出等が発生した場合、業務運営に支障を来し、当社グループの業績や財政状態に重大な影響を与える可能性があります。当該リスクは、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(22)得意先の信用リスクについて
当社グループは、得意先や投資先の信用リスクに備えておりますが、予期せぬ倒産等の事態により債権回収に支障が生じた場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(1)業績等の概要
①業績 (単位:百万円)
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売上収益 |
事業利益(※) |
営業利益 |
親会社の所有者に 帰属する当期利益 |
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2023年12月期 |
518,632 |
15,633 |
11,820 |
8,724 |
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2022年12月期 |
478,422 |
9,312 |
10,106 |
5,450 |
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増減率(%) |
8.4 |
67.9 |
17.0 |
60.1 |
※事業利益は、売上収益から売上原価並びに販売費及び一般管理費を控除した、恒常的な事業の業績を測る当社グループ独自の利益指標です。
<売上収益>
売上収益は、食品飲料事業が減収となった一方で、酒類事業において業務用市場が順調に回復したことや、2022年8月末に連結子会社化したSTONE BREWING CO.,LLC(以下、Stone社)が当社グループへ加入し通年寄与したこと等により、全体では前期比8.4%増、402億円増収の5,186億円となりました。
<事業利益>
事業利益は、国内酒類事業の増収効果や、外食事業及び国内食品飲料事業の構造改革効果等により、前期比67.9%増、63億円増益の156億円となりました。
<営業利益>
営業利益は、事業ポートフォリオの見直しの一環で検討を進めておりました海外子会社の解散を決議したことに伴う減損損失の計上があった一方で、事業利益が改善したことや、投資不動産の売却等により、前期比17.0%増、17億円増益の118億円となりました。
<親会社の所有者に帰属する当期利益>
親会社の所有者に帰属する当期利益は、営業利益の増益等により、前期比60.1%増、前期比33億円増益の87億円となりました。また、基本的1株当たり利益は111.99円(前期69.96円)となり、親会社所有者帰属持分比率は27.5%(前期26.0%)となりました。
以下、報告セグメント別の概況は記載のとおりです。
〔酒類事業〕
売上収益は、業務用市場の順調な回復、価格改定、北米での好調な販売、2022年8月末にStone社が当社グループに加わったこと等により、前期から増収となりました。
事業利益は、原材料高騰等により変動費が増加したものの、業務用市場の回復等の増収効果及び外食事業の構造改革効果により、前期から増益となりました。
営業利益は、事業ポートフォリオの見直しの一環で検討を進めておりました海外子会社の解散を決議したことに伴う減損損失の計上があった一方で、事業利益が前期から増益したこと等により、前期から増益となりました。
■売上収益 3,769億円(前期比422億円、12.6%増)
■事業利益 160億円(前期比83億円、107.2%増)
■営業利益 90億円(前期比1億円、0.8%増)
酒類事業に属する国内酒類、海外酒類、外食の詳細は次のとおりです。
(国内酒類)
新型コロナウイルスの影響も一服したことで、経済活動の正常化が進み、業務用市場は回復基調にあった一方
で、家庭用市場は軟調に推移しました。日本国内のビール類(ビール・発泡酒・新ジャンルの総称)の総需要は前期比99%程度、ビールの総需要は前期比107%程度になったと推定されます。
2023年10月の酒税改定を踏まえ、ビール強化とRTD(※)強化により一層注力しています。
そのような中、当社グループの国内におけるビール類合計の売上数量は、前期比102%になりました。業務用商品の売上数量では、前期比123%となりました。また、家庭用商品では、酒税改正に伴う発泡酒・新ジャンル市場の縮小影響や、業務用市場の回復影響を受けながらも、黒ラベル缶の売上数量が前期比104%、RTD缶の売上数量が前期比116%となり、引き続き好調に推移しました。
(海外酒類)
カナダでは、新型コロナウイルス感染症対策により経済再開が進み、業務用市場は前期より回復傾向にありまし
たが、インフレ進行の影響等によりビール類総需要は前期を下回ったと推定されます。また、アメリカでも同様にインフレ進行の影響があり、前期を下回ったと推定されます。
そのような中、海外ブランドのビールの売上数量は、カナダでの業務用市場の回復に加えて、アメリカにおいてStone社の売上が加わったこともあり、前期を上回りました。また、注力している北米でのサッポロブランドビールの売上数量は、前期比104%となり、前期に引き続き過去最高を記録しました。
なお、2023年7月にANCHOR BREWING COMPANY, LLC(以下、Anchor社)の解散を決議しました。Anchor社は、業績不振が継続していたことから、中期経営計画において事業整理の対象として位置付けておりました。成長ドライバーとなるアメリカにおいては、構造改革を断行することでリソースをシフトし、Stone社とのシナジー創出により、サッポロブランドビールを中心としたさらなる成長を目指します。なお、2023年12月より「SAPPORO PREMIUM BEER」のStone社での製造を一部開始しております。
(外食)
新型コロナウイルスの影響も一服したことで、経済活動の正常化が進み、外食市場は回復基調が続いています。
そのような中、当社グループの外食事業は2019年比の既存店売上が106%となり、価格改定、来客数の回復、インバウンド層やシニア層の獲得により新型コロナウイルス拡大前の水準まで回復に至りました。
※ RTD : Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める、缶チューハイ等のアルコール飲料
〔食品飲料事業〕
売上収益は、2022年11月の自動販売機オペレーター子会社の清算に伴う稼働台数の減少や2022年4月にカフェ事業を売却した影響等もあり、前期から減収となりました。
事業利益及び営業利益は、価格改定や構造改革による効果が寄与したものの、原材料高騰の影響や海外飲料における滞留債権に対する貸倒引当金の計上等の影響を受け、前期から減益となりました。
■売上収益 1,199億円(前期比30億円、2.4%減)
■事業利益 16億円(前期比1億円、7.5%減)
■営業利益 17億円(前期比6億円、25.4%減)
(国内食品飲料)
新型コロナウイルスの5類移行に伴い、業務用市場や自動販売機における需要はほぼ回復したものの、国内における飲料総需要は、前期比99%に留まったものと推定されます。
そのような中、当社グループの国内飲料の売上金額は価格改定効果もあり、売上金額はレモン事業の主力ブランドであるキレートレモンが前期比109%、国産素材にこだわった無糖茶が前期比160%と好調のコーン茶を中心に堅調に推移しましたが、飲料全体では商品改廃や自動販売機稼働台数減少等により、前期比93%となりました。
レモン食品の売上金額は、主力ブランドのポッカレモン100が前期比102%となり、売上金額全体では前期比105%と好調に推移しました。
(海外飲料)
シンガポールにおいて、家庭用チャネルを中心とした売上金額が堅調に推移し、価格改定効果も貢献したことで、前期比106%となりました。また、注力エリアであるマレーシアの総需要は、コロナ禍以降の需要の回復が一段落し低調であったものの、当社グループでは販売体制の強化を進めたことで売上金額は前期比107%となりました。
中東等への輸出事業においては、財務状況の悪化が生じた取引先に対しての販売停止等があり、売上金額は前期比93%となりました。
〔不動産事業〕
首都圏のオフィス賃貸市場は、コロナ禍により低下した稼働率は横ばい、平均賃料水準は軟調に推移し回復には至っておりません。
そのような中、売上収益は、大型複合施設「恵比寿ガーデンプレイス」における「センタープラザ」の2022年11月のリニューアル開業による増収効果、多目的ホール「The Garden Hall/Room」の稼働率の増加等により、前期から増収となりました。
事業利益は、2022年より開始した「恵比寿ガーデンプレイス」のオフィス棟の空調機能更新工事に伴う稼働率の低下により、前期から減益となりました。
営業利益は、事業利益が前期から減益となった一方で、投資不動産の売却等により、前期から増益となりました。
■売上収益 217億円(前期比10億円、4.7%増)
■事業利益 58億円(前期比7億円、10.5%減)
■営業利益 89億円(前期比34億円、62.9%増)
②財政状態の状況
当連結会計年度末における資産、負債、資本の状況とそれらの要因は次のとおりです。
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(単位:百万円) |
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区分 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
増減額 |
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流動資産 |
179,431 |
176,353 |
△3,079 |
|
非流動資産 |
459,687 |
487,220 |
27,533 |
|
資産合計 |
639,118 |
663,573 |
24,455 |
|
流動負債 |
219,515 |
191,204 |
△28,311 |
|
非流動負債 |
252,402 |
289,121 |
36,719 |
|
負債合計 |
471,917 |
480,325 |
8,408 |
|
資本合計 |
167,201 |
183,248 |
16,047 |
|
負債及び資本合計 |
639,118 |
663,573 |
24,455 |
(資産)
資産合計は、投資有価証券の償還によるその他の金融資産(流動)の減少等があった一方、有形固定資産の増加、出資によるその他の金融資産(非流動)の増加等によって、前連結会計年度末と比較して245億円増加し、6,636億円となりました。
(負債)
負債合計は、社債及び借入金(流動)の減少等があった一方、社債の発行による社債及び借入金(非流動)の増加、設備投資に伴うその他の金融負債の増加等によって、前連結会計年度末と比較して84億円増加し、4,803億円となりました。
(資本)
資本合計は、期末配当の実施による利益剰余金の減少等があった一方、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産、在外営業活動体の換算差額の変動によるその他の資本の構成要素の増加により、前連結会計年度末と比較して160億円増加し、1,832億円となりました。
(各種財務指標)
流動比率は、流動資産が31億円減少し、流動負債が283億円減少したことにより、前連結会計年度の81.7%から92.2%に10.5ポイント増加しております。
親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度の26.0%から27.5%に増加しております。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する金融資産の増加等により親会社の所有者に帰属する持分が増加した一方、有形固定資産の取得等により資産合計が増加したことによるものです。
親会社所有者帰属持分当期利益率(ROE)は、前連結会計年度の3.3%から5.0%に増加しております。これは、親会社の所有者に帰属する当期利益が増加したことによるものです。
ネットD/Eレシオは、前連結会計年度の1.4倍から1.1倍に減少しております。これは、親会社の所有者に帰属する持分が増加し、社債及び借入金(流動)の減少等でネット有利子負債が減少したことによるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ18億円、12%増加し、当連結会計年度末には172億円となりました。
当期における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
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(単位:百万円) |
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区分 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
増減額 |
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営業活動によるキャッシュ・フロー |
7,814 |
45,446 |
37,631 |
|
投資活動によるキャッシュ・フロー |
△46,137 |
△16,439 |
29,698 |
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フリー・キャッシュ・フロー |
△38,323 |
29,007 |
67,330 |
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財務活動によるキャッシュ・フロー |
36,465 |
△27,140 |
△63,606 |
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現金及び現金同等物に係る換算差額 |
△131 |
△43 |
88 |
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現金及び現金同等物の増減額(△減少) |
△1,988 |
1,824 |
3,812 |
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現金及び現金同等物の期首残高 |
17,368 |
15,380 |
△1,988 |
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現金及び現金同等物の期末残高 |
15,380 |
17,204 |
1,824 |
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、454億円(前期は78億円の収入)となりました。これは主に、有形固定資産及び無形資産除売却損益37億円、利息の支払額21億円の減少要因があった一方、減価償却費及び償却費210億円、税引前利益121億円、減損損失及び減損損失戻入益73億円の増加要因があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、164億円(前期は461億円の支出)となりました。これは主に、投資有価証券の償還による収入が74億円あった一方、有形固定資産の取得による支出165億円、投資有価証券の取得による支出107億円、投資不動産の取得による支出105億円があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、271億円(前期は365億円の収入)となりました。これは主に、長期借入による収入が250億円、社債の発行による収入が200億円あった一方、長期借入金の返済による支出が215億円、コマーシャル・ペーパーの減少額が170億円、短期借入金の減少が163億円、社債の償還が100億円あったことによるものです。
なお、当連結会計年度末のセグメント別の設備投資額等の内訳は、以下のとおりです。
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(単位:百万円) |
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酒類 |
食品飲料 |
不動産 |
その他 |
全社又は消去 |
連結合計 |
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EBITDA(注) |
2023年12月期 |
26,624 |
4,420 |
11,261 |
15 |
△6,291 |
36,029 |
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2022年12月期 |
18,898 |
4,385 |
11,495 |
18 |
△4,916 |
29,879 |
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増減 |
7,725 |
35 |
△234 |
△2 |
△1,375 |
6,149 |
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設備投資 (支払ベース) |
2023年12月期 |
12,210 |
3,426 |
11,852 |
- |
1,435 |
28,923 |
|
2022年12月期 |
6,391 |
2,144 |
12,785 |
- |
1,006 |
22,326 |
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増減 |
5,819 |
1,282 |
△933 |
- |
429 |
6,597 |
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減価償却費及び 償却費 |
2023年12月期 |
11,195 |
2,786 |
5,477 |
- |
1,514 |
20,971 |
|
2022年12月期 |
11,843 |
2,617 |
5,036 |
- |
1,738 |
21,234 |
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増減 |
△648 |
169 |
441 |
- |
△224 |
△263 |
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(注) EBITDA(事業利益+減価償却費)算出の際の減価償却費につきまして、飲食店舗の家賃にかかる使用権資産の減価償却費を除いております。
(2)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの分析は、以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来に関する事項には不確実性を内在しており、あるいはリスクを含んでいるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。
①重要性がある会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されております。
連結財務諸表の作成においては、連結会計年度末日における資産・負債の金額及び偶発債務の開示、並びに連結会計年度における収益・費用の適正な計上を行うため、見積りや前提が必要となります。当社グループは、過去の実績又は各状況下で最も合理的と判断される前提に基づき見積りを実施しています。
重要性がある会計方針及び見積りの詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載のとおりです。
②当連結会計年度の経営成績の分析
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ① 業績」に記載のとおりです。
③経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの経営成績に重要な影響を及ぼすと思われる事項については、概ね「3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
中でも、当社グループでは海外での事業展開を進めており、日本国内の景気動向のみではなく、事業活動を行っている国・地域の経済動向及びその他の要因により影響を受ける可能性があり、リスク管理体制を一層強化する取り組みを進めます。
経営環境が依然として不透明な状況が続く中、環境変化への対応力を一層高める取り組みを進めます。
④事業戦略と見通し
〔2024年見通し〕
次期は、「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」をテーマに、「中期経営計画(2023~26)」の2年目として、構造改革に目処をつけ、2025年以降の成長戦略の実行を確かなものにしていきます。
2023年に引き続き、原材料高騰による物価上昇が見込まれることに加え、「物流の2024年問題(ドライバーの時間外労働の規制強化)」の影響により、物流費が高騰する見通しです。
このような中、当社グループは構造改革の断行と成長の加速により更なる収益力の強化を図ります。国内の酒類事業や食品飲料事業においては、更なる原材料や運搬費の高騰が見込まれますが、価格改定に加えて、コスト削減や不採算事業の抜本的な見直し等の構造改革で収益性改善に努めてまいります。不動産事業では、恵比寿及び札幌エリアのコア物件の価値向上を通じて、長期的な時間軸により総合的な資産価値向上を図ります。また、海外事業では、北米酒類、海外飲料の売上拡大を図るとともに、Stone社とのシナジーを最大限に創出し、グループの成長ドライバーにしていきます。これらの取り組みにより、グループ全体の収益力向上に努めます。
以上により、売上収益、事業利益、営業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益は、当期と比較して増収増益となる見通しです。
〔酒類事業〕
(国内酒類)
次期は、2023年10月の酒税改定を踏まえたビール強化とRTD強化により一層注力します。RTDは売上の成長と共
に、仙台工場のRTD生産設備により、生産性向上に努めます。2023年に引き続き、原材料等の高騰は国内酒類の業
績に強く影響を与えるものの、品種ミックス改善に努めること等によりその影響を吸収する見通しです。
(海外酒類)
アメリカにおいては、Stone社での「SAPPORO PREMIUM BEER」の製造を本格化させるとともに、シナジー効果を
最大限に創出していきます。また、サッポロブランドのマーケティング投資の拡大により、さらなる成長を目指す
とともに、その魅力を一層広めてまいります。カナダにおいては、プレミアムブランドのビール及びRTDの強化に
引き続き注力するとともに、コスト構造改革を進めることで事業の効率性を高めて更なる収益性の向上に努めま
す。
(外食)
需要が大きく回復に転じた2023年の基調を維持し、更に強固な経営体制の構築を図るべく、既存店の強化を柱
に、YEBISU BAR、銀座ライオンといった注力業態へのリソースシフトを進めます。引き続き原材料や諸コストの上
昇が見込まれますが、適時・適切な価格改定、顧客体験価値向上の取組みを通じ、収益確保を目指します。
〔食品飲料事業〕
(国内食品飲料)
次期は、成長領域であるレモン事業へのリソース集中に向けた取り組みを加速させます。原材料等の高騰が2023
年に引き続き見込まれますが、価格改定に加えて、更なるコスト削減や不採算事業の見直し等の構造改革を実行す
ることにより収益力の強化を図ります。
(海外飲料)
海外飲料は、原材料等の高騰の影響を受けるものの、価格改定等によりその対策を講じます。シンガポールを起
点にマレーシア、中東等の成長余地のある国や地域で販売及びマーケティングの体制を強化することで、グループ
の成長ドライバーとしていきます。
〔不動産事業〕
次期は、恵比寿及び札幌エリアのコア物件の価値向上とまちづくりの推進により競争力強化を図りながら、サッ
ポログループの価値向上に努め、長期的な時間軸で総合的な資産価値の向上に努めます。
⑤当連結会計年度末の連結財政状態の分析
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ② 財政状態の状況」に記載のとおりです。
⑥資本の財源及び資金の流動性についての分析
ⅰ)キャッシュ・フローの分析
「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)業績等の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
また、キャッシュ・フロー関連指標の推移は、以下のとおりです。
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|
2022年12月期 |
2023年12月期 |
|
親会社所有者帰属持分比率(%) |
26.0 |
27.5 |
|
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%) |
40.0 |
73.0 |
|
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
37.9 |
6.1 |
|
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
4.5 |
21.3 |
親会社所有者帰属持分比率:親会社の所有者に帰属する持分÷資産合計
時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額÷資産合計
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債÷キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー÷利払い
(注)1 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
2 キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
3 有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っているすべての負債を対象
としております。
ⅱ)資金の流動性及び資金の調達について
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、生産・販売活動のための製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用であります。投資を目的とした資金需要は、設備投資として酒類事業及び食品飲料事業における工場整備への投資、不動産事業による投資不動産への投資、また海外事業や新規事業等の成長分野に対するM&Aへの投資等によるものであります。
当社グループは、主要な連結子会社にキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)を導入し、日本国内のグループ内資金を当社が一元管理しています。各グループ会社において創出したキャッシュ・フローを当社に集中することで資金の流動性を確保し、また、機動的かつ効率的にグループ内で配分することにより、金融負債の極小化を図っています。
現在そして将来の営業活動及び債務の返済等の資金需要に備え十分な資金を確保するために、資金調達及び流動性の確保に努めています。必要な資金は、主に営業活動によって得られるキャッシュ・フロー、金融機関等からの借入れによって調達しています。
⑦経営者の問題認識と今後の方針について
経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。
今後の方針につきましては、「中期経営計画(2023~26)」の基本方針である「Beyond150 ~事業構造を転換し新たな成長へ~」をテーマに、経営課題への取り組みを推進します。
(3)生産、受注及び販売の実績
①生産実績
当連結会計年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
生産高(kl) |
|
|
前期比(%) |
||
|
酒類事業(ビール・発泡酒・新ジャンル等) |
805,115 |
6.8 |
|
酒類事業(ワイン・焼酎・RTD等) |
102,011 |
3.7 |
|
食品飲料事業(飲料水等) |
332,990 |
△7.2 |
②受注実績
当社グループでは、ほとんど受注生産を行っておりません。
③販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
|
|
前期比(%) |
||
|
酒類事業 |
376,862 |
12.6 |
|
食品飲料事業 |
119,922 |
△2.4 |
|
不動産事業 |
21,702 |
4.7 |
|
報告セグメント計 |
518,486 |
8.4 |
|
その他 |
146 |
4.3 |
|
合計 |
518,632 |
8.4 |
(注)1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合
|
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
販売高(百万円) |
割合(%) |
販売高(百万円) |
割合(%) |
|
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国分グループ本社㈱ |
62,061 |
13.0 |
73,854 |
14.2 |
(業務提携)
バカルディ ジャパン株式会社との業務提携
当社の子会社であるサッポロビール㈱は、2011年5月19日付で、ラムブランド「バカルディ」等多くの有力ブランドを所有するバカルディ ジャパン㈱と同社が日本国内で販売権を有するスピリッツをはじめとする各ブランドの、日本国内における独占販売に関する業務提携契約を締結しました。
当グループの研究開発は、さまざまな分野で培ってきたコア技術と強みとする素材とをかけ合わせ、さらにはオープンイノベーションも推進しながら、基盤研究から応用研究、商品技術開発までを行い、お客様が求める価値を継続的に提供するとともに、新たなカテゴリや市場を開拓することを目指しています。
当連結会計年度における当社グループ全体の研究開発費は
セグメント別の状況は次のとおりです。
[酒類事業]
1.研究開発について
サッポロビール社は「価値創造フロンティア研究所」「原料開発研究所」「技術開発部」「商品・技術イノベーション部」及び「R&D企画推進部」の体制で研究開発を進めております。これら5部門で総勢約90名(うち約20名が女性)が研究開発に取り組んでおります(研究補助者は含みません)。
2023年6月に開催された米国のビール学会であるThe American Society of Brewing Chemists (ASBC)(※1)2023年度年次大会にて、ホップの香りに着目した加工方法、活用方法や、サステナビリティに貢献できる大麦育種に関する学会発表を合計4件、また、10月に開催されたMaster Brewers Association of the Americas (MBAA)(※2)の年次大会でも、ホップ産地の違いがホップやビールの香気成分・香味に及ぼす影響(ホップのテロワール)、ビールへのコリアンダーシードの活用、さらにはビールの口当たりの新たな評価方法に関する3件の発表を行いました。その発表の件数、テーマの広範さで、ビール研究分野では、引き続き世界をリードし国際的にも高評価を得ております。
2023年4月、5月に限定発売された「サッポロ クラシック 春の薫り」、「サッポロ クラシック 夏の爽快」には本年のASBC年次大会で発表されたホップ加工技術のうち、サッポロビール社が独自開発した熟成ホップの技術(※3)が活用されました。これは、ホップを熟成(常温、長期間の保存)させた時に苦味成分が酸化で分解されて増える「分岐鎖脂肪酸(BCFA)」と言われる成分を隠し味として使うことで、香り付けに用いているホップの香りを強めることができるという技術です。また、米国を中心にクラフトビールが発展を遂げる中、米国醸造家の間で人気を博したサッポロビール社開発品種「ソラチエース」の香り成分に関する研究成果でも、食品化学分野で権威あるアメリカの学会誌に査読付き論文を発表しました(※4)。
また、サッポロビール社が開発したLOXレス大麦品種(※5)「CDC PlatinumStar」「CDC Goldstar」「きたのほし(商標名)」はカナダ及び北海道で協働契約栽培により生産されており、「旨さ長持ち麦芽」として「サッポロ生ビール黒ラベル」等の同社商品で採用しております。また、豪州においても、新たに開発したLOXレス大麦品種の普及を計画しています。
サステナビリティ視点の研究では、「短日製麦を可能にする大麦のパーリング(精麦)加工技術」について2023年3月に開催された日本農芸化学会2023年度大会(※6)で、「短日製麦の可能な大麦の育種」について上記の米国ビール学会ASBCにて2023年6月に発表しました。気候変動への対応策として、これらの研究成果も活用し、「気候変動に適応するための大麦・ホップの新品種を開発し、2035年までに国内で実用化する」ことで、持続可能な原料調達に貢献することを目指してまいります。
これらの研究成果を商品技術開発に応用し、これからもビールテイスト飲料のさらなる魅力を引き出すことで、多様なビールの楽しみ方を提案してまいります。また、品質保証研究では、これまで以上にお客様の安全・安心志向や健康意識に応えるため、原料・製品の安全性分析及びそれを支える分析新技術の研究に継続して取り組んでまいります。
「R&D企画推進部」では、経営・マーケティング・研究開発が三位一体の関係を形成できるような仕組みづくりや研究員のキャリアステージに合わせたきめ細かな研修の立案、実施などの人財育成活動等を行っております。また、サッポロビール社のR&D活動の全体像が一目でわかるコア技術マップを作成し、ホームページに掲載しました(※7)。これは研究方針策定や、ステークホルダーへの情報発信、採用活動等に寄与できるものと考えております。
※1 The American Society of Brewing Chemists (ASBC)は、1934年に設立された米国におけるビール醸造化学分野の学会です。2023年の年次大会は6月4日~6日(会場:ペンシルヴァニア州ピッツバーグ)。
The American Society of Brewing Chemistsホームページ:https://www.asbcnet.org/Pages/default.aspx
※2 Master Brewers Association of the Americas (MBAA)は、1887年に設立された米国におけるビール醸造、製麦、関連技術に関わる総合的な学会です。2023年の年次大会は10月6日~8日(会場:ワシントン州シアトル)。
Master Brewers Association of the Americasホームページ:https://www.mbaa.com/Pages/default.aspx
※3 サッポロビールが独自開発した熟成ホップの技術を本年の「サッポロ クラシック 夏の爽快」に活用。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002302.000012361.html
※4 掲載誌のJournal of Agricultural and Food Chemistryはアメリカ化学会(American Chemical Society)の発行する食品化学分野の学会誌(ソラチエース研究の掲載論文:https://doi.org/10.1021/acs.jafc.3c04740)。
※5 ビールの風味を劣化させる成分(LOX-1<ロックスワン>:脂質酸化酵素)を持たない大麦。
※6 「日本農芸化学会」は、1924年に設立されたバイオサイエンス・バイオテクノロジーを中心とする多彩な領域の研究者、技術者、学生、団体等によって構成される学術団体であり、国内の大学・研究所・企業などに所属する多くの研究者によって構成・運営されている。2023年度大会は3月14日~17日(会場:広島市・広島大学・オンライン開催)。(公社)日本農芸化学会ホームページ:https://www.jsbba.or.jp/
※7 サッポロビールのコア技術マップ。https://www.sapporoholdings.jp/research/topics/sb_core_technology/
2.商品開発について
酒類の商品開発については、2020年に策定されたサッポロビール社の経営ビジョンのもと「お酒と人との未来を創る」商品をお届けすべく活動を行ってまいりました。
「サッポロ生ビール黒ラベル」は、2023年12月製造分より順次リニューアルを実施しております。生ビールのおいしさを追求するべく、製造工程の改善を積み重ね「味や香りを鮮明に保つクリーミーな泡」に磨きをかけパッケージデザインと合わせてクオリティアップを行い、お客様の満足度向上に取り組みました。
ヱビスブランドでは、これまでの概念にとらわれない新たなビールのおいしさや楽しさに挑戦していく新ライン「ヱビス「CREATIVE BREW」をたちあげ、「ヱビス ニューオリジン」「ヱビス オランジェ」といった個性的な限定商品を展開、歴史を持つヱビスだからこそできる、ビールの多様なおいしさと楽しみ方を提案しました。
「ヱビスビール」のホップと「サッポロ生ビール黒ラベル」の麦芽を一部使用し、サッポロビール社の技術と信念をつぎ込んだ「サッポロ GOLD STAR」(発泡酒②)は、2023年12月製造分より麦の味わいをアップさせ、さらに力強く飲み飽きないうまさに磨きをかけるリニューアルを実施しております。また2023年10月には日本初(※1)、糖質・プリン体70%オフの生ビール「サッポロ生ビール ナナマル」を発売するなど新たな取り組みも行ってまいりました。
また、お客様との共創によるビールづくりを展開する「HOPPIN' GARAGE」は、定期的に新作ビールが届く会員制サービスを2021年4月に開始して以来、多くの魅力的な方々と当社の醸造技術を掛け合わせた共創を行い、個性豊かなビールを皆さまにお届けしてきました。本年はファッションビルなどでのPop-Upストアの展開を通じて、より多くの人に商品を手に取っていただく機会を設けるとともに、ECストアのリニューアルを行うことで、ストア会員数を倍増させ、売上も昨対比で114%まで成長しました。
RTD(※2)では、主力ブランドである「濃いめのレモンサワー」「男梅サワー」のお客様支持が拡大しました。また、2023年新商品として発売した「ニッポンのシン・レモンサワー」「クラフトスパイスソーダ」が好調に推移し、RTD事業としては、3年連続最高売上の1,411万ケース(※3)を販売しました。
酒類事業の研究開発費の金額は
※1 糖質・プリン体2つのオフを訴求する日本初のビール(Mintel GNPDを用いた当社調べ)
※2 RTD : Ready To Drinkの略。購入後そのまま飲める、缶チューハイ等のアルコール飲料
※3 250ml×24本換算
[食品飲料事業]
1.研究開発について
「おいしさを探す」一環として、ポッカサッポロフード&ビバレッジ社が、レモンの摂取による健康状態への効果を調査する研究を、国産レモンの産地である広島県の大崎上島町にて、5年間にわたって地元自治体や大学と協働して進めました。同地では、国産レモンの省力化栽培・供給拡大を念頭に、ICT(情報通信技術)を活用して天候に応じて自動で最適な肥料や水やりを行うレモン栽培、休耕田のレモン栽培への活用等の研究開発を継続しております。また、アルビレックス新潟のU-18の選手を対象として、レモンと牛乳の摂取が骨の健康維持に及ぼす影響についての食育活動の試験を進めました。
日本食品科学工学会第70回大会で「レモン果汁摂取による唾液中のオキシトシンと心理状態への影響」「レモン果汁のマリネが牛肉の軟化およびin vitro胃消化性に及ぼす影響」および日本官能評価学会2023年大会で「レモンの嗜好性および心理的効果に関する研究」を発表しました。
2.商品開発について
ポッカサッポロフード&ビバレッジ社の経営ビジョンにある「おいしい以上の価値」のもと開発活動を行いました。
レモンでは、「キレートレモン」ブランドにて、「マスクを外した自分にも自信をもちたい」というニーズに着目し、レモン1個分の果汁(※1)、ビタミンC1,350mg、コラーゲン1,000mg、ヒアルロン酸10mgが入った“身だしなみケアドリンク”である「キレートレモンBECARE」と、レモンに含まれるクエン酸がカルシウムを溶けやすい形に変える「キレート作用」の研究を活かした商品として、1本で1日に不足しているカルシウムをおいしく補給できる、栄養機能食品「キレートレモンサプリカルシウム」を発売しました。また、株式会社ヤクルト本社との協業商品として、酸度が高く発酵させることが難しいレモン果汁を当社独自開発の製法で発酵させて作った「レモンビネガー」を用いた「発酵果実みかん&レモン」を数量限定で発売しました。
スープでは、世の中の健康意識の高まりに応えたより健康感のあるスープをお届けするため、健康系オイルの中でも注目されているMCTオイル(中鎖脂肪酸油)が手軽に摂取できる「MCT SOUP完熟トマトポタージュ」「MCT SOUPほうれん草ポタージュ」を新発売しました。また、主力ブランド「じっくりコトコト」シリーズにおいては、フラッグシップとなる箱入りスープを8年ぶりにフルリニューアルしました。リニューアルでは、捨てられていた玉ねぎやキャベツの芯、規格外の人参など野菜の端材も一部活用した“特製野菜ブイヨン”や、特製野菜ブイヨンに真鯛の頭骨や中骨を加えた“特製野菜フィッシュブイヨン”を原料に採用し“素材のおいしさをまるごと楽しめる濃厚ポタージュ”として刷新しました。
植物性食品では、「アーモンド・ブリーズ」ブランドにてアーモンドミルクをベースにオーツミルクやココナッツミルクをブレンドした無糖タイプで1日分のビタミンEや1食分のカルシウムが手軽に摂れる「アーモンドミルク&オーツミルク無糖 200ml」と「アーモンドミルク&ココナッツミルク無糖 200ml」を上市しました。また、エシカル消費を意識した岩手県産雑穀の3種(たかきび・はとむぎ・いなきび)をブレンドし、穀物の香ばしさを活かしながら、甘味料を使わずすっきりした甘さで飲みやすく仕上げた「雑穀ミルク~milletmilk~」を上市しました。
飲料では、「ポッカコーヒー」ブランドより、深煎り豆を使用し、エスプレッソの香りが特徴でコーヒーのほろ苦さとコクをバランス良く仕上げた「ポッカコーヒーカフェラテ 260g ボトル缶」を発売しました。また茶の茎部分を使った棒茶を職人が伝統的な焙煎方法で仕上げた金沢発祥の「加賀棒ほうじ茶」から、環境負荷の軽減と、お客様のラベルを剥がす手間を削減することができる商品として、シュリンクラベルを巻かない「加賀棒ほうじ茶ラベルレス 525ml PET」を追加発売し、環境へのやさしさに配慮しました。
神州一味噌社では主力ブランドである「み子ちゃん印」が発売60周年を迎え、3月よりデザインをリニューアルしました。今後とも更にお客様から愛されるブランドへと育ててまいります。即席みそ汁では「おいしいね‼ かにだし汁カップ」「おいしいね‼ 風味豊かなかにだし汁 3食」を9月より発売し、好調なスタートを切っております。フードロス削減に向けた取り組みとして2023年9月に生みそ・即席みそ汁合わせて9品の賞味期限延長を実施しました。今後も他商品での展開を継続してまいります。
食品飲料事業の研究開発費の金額は
※1 レモン1個分=レモン果汁約30mlとして、1本当り1個分以上の果汁が含まれています。