第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 営業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を軸としてBtoBビジネスの変革を支援する、さまざまなサービスを提供し、高成長かつ高収益な企業グループであることを目指します。

 

(2)経営戦略等

 コロナ禍収束後、企業活動においてテレワークやオンラインミーティングの活用等、新しい形態での事業運営が行われております。従来、訪問が中心であった法人営業活動も電話やメール、オンラインツールを活用したインサイドセールスが標準のモデルとなり、さらに営業部門全体のDXへの取り組み推進が拡大している状況にあります。また多くの企業は競争力向上を目的としたDX推進のための社内人材の育成やITリテラシーの強化を実施しており、その研修形態も集合型研修やオンライン研修など幅が広がっています。このような研修市場の拡大が見込まれる中、当社グループは総合的な改革を支援することでグループ全体の成長を目指しております。

 なお、今後の事業展開を踏まえた当社グループの成長戦略を明確にすべく、2024年12月期より当社グループの報告セグメントの区分を「インサイドセールスアウトソーシング事業」、「C&S事業」、「研修事業」の3つに変更しております。

 

①インサイドセールスアウトソーシング事業

当社グループは、上記の経営方針のもと、BtoBビジネスの課題に対応する一つの手法としてインサイドセールスに注目してサービスを提供しております。インサイドセールスとは実際には顧客には訪問せずに、内勤で電話やメールまたはWEBなどの様々な営業チャネルを活用し、法人営業の一部のプロセスを担当して実行する営業活動または営業担当者を意味します。従来の営業モデルは、一人の担当者がすべての営業プロセスを担当し、また訪問で活動を行う属人的なものでした。当社が提案する営業モデルはプロセス分業で、インサイドセールスで行うプロセスを取り入れるよう業務設計を行い、そのインサイドセールスの実行、そして実行するための道具であるシステム構築を提供するサービス事業を行っております。これまで、主な顧客であった外資系IT・国内IT企業に加え、金融業等で近年のインサイドセールスの認知度向上によって需要が増加しております。これらの収益余地の大きい顧客層へと集中した、顧客ポートフォリオ戦略を展開してまいります。

 

②C&S事業

当社グループはC&Sサービス(コンサルティング及びテクノロジー提供に関する事業を)今後の経営戦略の中での成長領域としており、既存の営業体制での顧客開拓とM&Aによる販路拡大を拡大戦略と位置付けております。顧客の営業・マーケティング課題を上流のコンサルティングサービスで整理、把握し、解決の実現策としてシステム及びテクノロジーソリューションを実装していくビジネスモデルを構築することを目指します。

 

「コンサルティングサービス」

営業活動のDX推進を支援するコンサルティングサービスを提供する子会社「ClieXito株式会社」において、企業戦略の上流領域である営業戦略立案のコンサルティングサービスを提供し、その後のアウトソーシングサービス、システムソリューションサービス、研修サービスでそのDX推進の実現を支援できるよう、提言を行います。

 

「システムソリューションサービス」

従来、受託開発(SFA・CRMのシステムインテグレーション)を始めとするフロー収益が中心のサービスでしたが、2020年12月期よりインサイドセールス支援顧客管理ツール「Funnel Navigator」を始めとするライセンスサブスクリプション及びインサイドセールスのAI支援システム「SAIN」のサブスクリプションサービスを中心とするストックビジネスへの転換を進めてまいりました。今後は営業データ分析ツール構築・利用料を加え、より顧客のDXを推進できるソリューションツールの提供を目指します。

 

③研修事業

研修事業を提供する連結子会社「株式会社アイ・ラーニング」は、従来、システムインテグレーター等のIT事業者向けの研修サービスの実績を生かし、今後は全事業会社向けに、また非エンジニア人材に対するDX人材育成、またリスキリング(※)のパートナーとして事業領域を拡大させてまいります。

 

※リスキリング

経済産業省が推奨する、コロナ禍による働き方の変化、デジタル時代の到来に対応した人材育成に企業が従業員に対して行う取り組み。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、売上高及び営業利益を重要な経営指標と位置づけ、2026年までに売上110億円、営業利益12億円達成のために、高成長領域としているC&S事業と研修事業の2つの高成長領域の事業で、売上の55%を形成するべく成長目標をおいています。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

当社グループの対処すべき課題は以下のとおりであります。

①安定的な人材確保

インサイドセールスアウトソーシング事業においては、人材獲得競争激化により、タイムリー且つ安定的な人材確保が困難な状況が続いております。このような環境のもと、前連結会計年度から引き続き、新卒及び中途採用の強化を継続しております。新卒入社社員の給与水準を大幅に引き上げ、初年度給与を増額しました。またフルリモートを含むテレワーク就業を支援するためのITツール導入及び規程の整備を実施し、出社を前提としない『フルリモート』従業員の採用を進めるなど、社員がより働きやすい環境を考え、働き方・ライフスタイルを考慮した労働環境を提供することで、人材確保策を強化してまいります。

 

②ITネットワークの安定性確保

当社グループは、通信・インターネットを活用して顧客にサービスを提供しており、ITネットワークシステムの安定稼働の確保は必要不可欠です。また、前述のようにリモート就業をはじめとする柔軟な働き方を取り入れております。そのため、サービスを安定的に提供できるよう、顧客社数の増加や社員の就業スタイルにあわせたサーバーの増設等の設備投資を継続的に行い、より効率的且つ強固なITシステム稼働環境を創造していくことに取り組んでおります。

 

③デジタルマーケティングによる販促活動強化

多くの企業が新型コロナウイルス流行以降、従来主流であった訪問による営業活動から、インサイドセールスなど非対面による顧客接点の確保・拡充へと転換し、本格的な営業モデルの改革を試みています。このような環境のもと、当社グループは、自社開催するセミナーを全面的にオンライン、ウェビナーへ切替えるなど、サービス紹介や事例提供をWebベースで行うマーケティング活動にシフトしてまいりました。今後も引き続きインサイドセールス及び営業・マーケティング活動のDX化を求める需要にお応えできるよう、デジタルマーケティングによるデータ活用、タッチポイントの強化など販促活動を強化してまいります。

 

④収益基盤の拡大

現在の国内外の経済活動の停滞リスクへの対応と、今後の就業人口の減少に備えるため、多くの企業は効率的・合理的な企業活動を実現する手段としてインサイドセールス組織の立ち上げや関連するITシステム整備を通じて、顧客向け営業活動を「対面型」から「非対面型」への変更を進めることが見込まれています。インサイドセールス関連サービスへの需要は引き続き高く、そのような環境のもと、当社グループは以下の課題に取り組んでまいります。

 

(アウトソーシングサービス)

当社アウトソーシングサービスの導入をきっかけとしたインサイドセールス組織の立ち上げ等を行い、顧客ニーズにあったサービス提供を進め、拡大するインサイドセールス市場での新規顧客獲得及び成長を図ってまいります。

 

(コンサルティングサービス)

当社連結子会社「ClieXito株式会社」より、企業の営業・マーケティング部門向けに営業生産性の最大化をするため、営業活動のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するコンサルティングサービスを提供し、法人営業改革の提言を行うことに注力してまいります。

 

(システムソリューションサービス)

それぞれの顧客に応じた対応を実現させるCRM等の受託開発や、セールステック・ソリューションの構築・提供を実施し、法人営業部門の改革(売上・利益の向上)を支援してまいります。

(研修サービス)

当社連結子会社「株式会社アイ・ラーニング」は、従来領域であるIT事業者のエンジニア人材育成の研修コンテンツを維持・拡大すると同時に、経済産業省が推奨する、リスキリングに対応した非エンジニア人材向けに研修コンテンツを強化し、社内のDX人材育成、アジャイル体制の構築など、IT事業者・エンジニア以外の新たな顧客獲得・拡大を行ってまいります。

 

⑤コーポレート・ガバナンス体制及び内部管理

当社グループが継続的な成長を続けるためには、コーポレート・ガバナンスのさらなる強化と内部管理体制の強化が重要であると認識しております。コーポレート・ガバナンスに関しては、経営の効率性、健全性を確保すべく、監査役監査、内部監査、会計監査及び内部統制システムの整備によりその強化を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 社会問題や価値観の多様化に伴い、ESGを重視したサステナビリティ経営がより一層求められています。当社も、持続的な社会環境の創造について、責任を持って取り組んでいくべきであると考えております。

 当社にとってのサステナビリティとは、事業を通して社会課題の解決に資することであり、当社の持続的な成長が社会の持続的な発展に寄与することを目指してまいります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社が判断したものであります。

 

(1)ガバナンス

 当社は、株主、お客様、従業員、地域社会及びその他のステークホルダーからの信頼に応え、企業価値を持続的に向上させ、社会の持続的な発展に寄与するためには、コーポレート・ガバナンスの強化が重要であると認識しております。詳細は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

 

(2)戦略

 当社における、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針は下記のとおりであります。

 全般的な戦略については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(1)経営方針」を参照ください。

 

人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

 当社が持続的な成長を目指すにあたっては人的資本が価値創造の源泉であり、人材力の強化を継続的に実行し、組織の人的資本を最適化することが重要であると考えております。そのために、以下のような取り組みを行っております。

1.採用:優秀な人材を採用するためには、求職者との良好な関係を築くことが重要と考えております。優秀な人材を採用するために、適切な求人広告を出し、求職者の能力や経験に基づいて選考を行います。

2.育成・教育:従業員が組織内で成長し続けられるように、トレーニング、コーチング、メンタリング、キャリア開発プログラムを提供することが重要であると考えております。従業員が最新の知識やスキルを習得できるよう、社内研修や外部研修などの機会を提供しております。

3.評価:従業員のパフォーマンスを評価し、目標を明確にすることが重要と考えております。業績評価制度やミーティングを通じて、従業員が仕事に関するフィードバックを受け取り、成長する仕組みを構築しております。

4.報酬:従業員の貢献に対して公正な報酬を提供することが大切と考えております。競合他社と比較して市場価値に基づいた報酬を得られる制度を設けております。

5.離職防止:従業員の離職を減らすために、従業員満足度を向上させ、ワークライフバランスやキャリア開発の機会を提供することに取り組んでおります。

6.組織文化:組織の文化を形成することが重要と考えております。従業員が目標やミッションを共有し、共通のビジョンに向かって働くことができるように、良好な企業文化を形成するように努めております。

 

(3)リスク管理

 当社を取り巻く市場環境や事業の状況には様々なリスクがあることを認識しており、リスクの全社的統括管理を経営企画本部が行っております。主要なリスクについては定期的に開催される経営会議においてモニタリング・評価・分析を行い、定期的に取締役会に報告することとしています。

 

(4)指標及び目標

 当社では、上記「人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略」について、当社が持続的な成長を目指すにあたっては人的資本の最適化が重要であり、それらを定量的に測定するために以下の指標を用いております。

 

指標

2023年度実績

2024年度目標

1.人材数

591

625

2.離職率

10.3%

10.0%

3.女性人材率

70.7%

70.0%

4.従業員の平均在籍期間

5.9年

6.0年

 

 

3【事業等のリスク】

 以下において、当社グループの事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。また、必ずしも、そのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)事業経営環境に関するリスクの変化について

 当社グループは、企業の法人営業課題に特化し各種サービスを提供しております。現在は、就業人口の減少、雇用の流動化といった労働環境の変化による顧客企業の営業やマーケティング関連への投資マインドの上昇を背景として事業を拡大しておりますが、今後国内外の経済情勢や景気動向等の理由により顧客企業の営業やマーケティング関連への投資マインドが減退するような場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)競合について

 当社グループのアウトソーシングサービスは、BtoB アウトバウンド市場に属しています。当社グループは、先行者メリットを活かし顧客数を伸長するとともに顧客のニーズに合ったサービスの開発を行うことで優位性を高めております。しかしながら、大小様々な競合が存在することから、参入障壁は著しく高いものとはいえず、資金力、ブランド力を有する大手企業をはじめとする競合他社により類似したサービスが開発され価格競争が激化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)新規サービスについて

 当社グループは、法人営業支援を中心としたサービスの業容拡大を目的として、今後もサービスの多様化や新規サービスへの取り組みを進めていく方針です。そのため、人材の採用、教育、システム開発費等の追加的な支出が発生する場合や、サービス内容の多様化や新規サービスが計画のとおりに推移しない場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)技術革新への対応について

 当社グループのシステムソリューションサービスは、クラウド上のシステム開発市場である「クラウドSI」市場に属しております。クラウドSI市場では、新技術の開発及びそれに基づく新しいサービスの導入が頻繁に行われており、あわせて顧客のニーズも非常に変化の激しい業界となっております。そのため常に新しい技術要素に対して情報の収集、蓄積、分析及び習得に取り組んでおりますが、技術革新において当社グループが予期しない急激な変化がありその対応が遅れた場合や、新技術に対応するために当初予定していなかったシステムへの投資が必要になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)システムトラブルによるリスクについて

 当社グループの各種サービスは、通信設備を通じて提供しており、サービスの保守、運用、管理は通信ネットワークに依存しております。各種サービスの安定的な提供のためのサーバー設備の増強や情報セキュリティ責任者が適切なセキュリティ手段を講じることにより外部からの不正アクセスの回避等を行っておりますが、以下のシステム障害が発生した場合は、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

①サービス提供コンピュータシステムへの急激なアクセス増加や電力供給の停止等の予測不可能な様々な要因に

よって当該コンピュータシステム及び周辺システムがダウンした場合。

②コンピュータウィルスやハッカーの侵入等によりシステム障害が生じた場合。

③従業員の過誤等によって、当社グループの提供サービスのプログラムが書き換えられることや、重要なデータが削除された際、事態に適切に対応できずに信頼失墜や損害賠償による損失が生じた場合。

 

(6)特定人物への依存について

 代表取締役社長である吉田融正は、当社の創業者であり、会社経営の最高責任者として経営方針や事業戦略の決定をはじめ、当社グループの事業推進において重要な役割を果たしています。当社グループは、吉田融正に過度に依存しない経営体制を整備するため、取締役会における役員間の相互の情報共有や事業部制の導入による経営組織の強化を図っております。しかしながら、何らかの理由により吉田融正が当社グループの業務を継続することが困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(7)人材の採用、育成について

 今後の業容拡大を図る中で、各サービスにおいて人材の採用、及びその維持は不可欠であると認識しております。また日本におけるインサイドセールス経験者の数は未だ限定的であり、入社後の社内における研修実施、育成を積極的かつ継続的に進めております。しかしながら、人材獲得競争が激化し、優秀な人材の採用が困難となる場合や在職している人材の大量の社外流出が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報管理体制について

 当社グループは、提供するサービスに関連して多数の顧客企業の機密情報や個人情報を取り扱っております。これらの情報資産を保護するために情報セキュリティ基本方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しておりますが、このような対策にもかかわらず重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信頼の失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)内部管理体制について

 当社グループは、企業価値の拡大を図るうえでコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であると認識しております。業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保のための内部統制システムの適切な運用、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守を徹底するために充分な体制を構築していると考えておりますが、未だ成長途上にあり、今後の事業運営及び事業拡大に対応するために、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。しかしながら、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の構築が追いつかない状況が生じた場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)知的財産権の侵害におけるリスクについて

 当社グループは、会社名及び提供しているサービスの名称について商標登録申請をしております。また、第三者の知的財産権の侵害の可能性については、社内規程に基づき顧問弁護士等を通じて事前調査を行い対応しております。しかしながら、万が一、当社グループが第三者の知的財産を侵害した場合、当社グループへの損害賠償請求やロイヤルティの支払い要求、使用差し止め請求等が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)自然災害について

 当社グループが提供するサービスにおいて顧客の情報資産が格納されるサーバーは、日本国内において2拠点以上で管理することでリスクを分散させておりますが、データセンターやその周辺のネットワーク設備等に被害を及ぼす災害、事故等が発生し情報資産の消失又はサービスの提供が維持できない状態に至った場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)配当政策に関するリスク

 当社グループは、株主に対する利益還元を重要な経営課題の一つとして認識しており、業績・財務状況及び事業環境等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当を行うことを基本方針としております。しかしながら中長期的な視点から、財務体質の強化と持続的な事業拡大の投資を目的とした内部留保の充実のために、配当を減少させるもしくは実施しない可能性があります。

 

(13)契約不適合責任及び品質保証引当金に関するリスク

①システムの不具合について

当社グループは、システムソリューションのサービスを実施するためのシステムの開発・提供をしておりますが、顧客の検収後にシステムの不具合(いわゆるバグ)等が発見される場合があります。当社グループにおきましては、品質管理の国際標準であるISO27001の認証を取得して、品質管理の徹底を図り、不具合等の発生防止に努めておりますが、それでもなお、製品に不具合等が発見された場合には、補修作業に伴う費用の増加、信用の低下、損害賠償などの要因により、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。

 

②製品の不具合の可能性について

一般にソフトウエア製品の高度化及び複雑化により、完全に不具合を解消することは不可能といわれております。そこで、顧客によるシステム運用段階で発生する不具合への対応を見込んでおりますが、想定以上の規模の不具合や当社グループの過失によるシステムの不具合が顧客に損害を与えた場合には、当社グループの信用力の低下により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国の経済は、雇用環境の改善と名目所得の上昇がみられる中で、各種社会・経済政策の効果を享受しつつ、緩やかな回復が続くことが期待されます。一方で、エネルギー価格、原材料価格が高止まりする中で、世界的な景気の下振れリスクが内在し、金融政策の引締めが予想されるものの、我が国の景気を下押しするリスクが継続しています。

当社グループを取り巻く事業環境においては、引き続き多くの企業の法人営業活動において、標準的な営業スタイルとしてインサイドセールスが本格導入され、その定着や拡大を進める企業が増えています。一方で、このような本格的なインサイドセールス導入に際しては、企業は依然として新規顧客へのアプローチシナリオの策定と改善、デジタルマーケティング機能や組織との連携、インサイドセールス活動に必要なスキル向上等の課題を抱えており、インサイドセールス関連サービス提供の需要も高い水準を維持しています。また、企業内で自社の価値創造を進めるDX(※1)時代の人材戦略としてリスキリング(※2)の必要性の高まりも継続しており、企業向け研修市場は継続的な拡大基調が続いています。

 

このような環境のもと、当社グループはそれぞれの事業拡大に注力した結果、当連結会計年度の売上高は、7,020百万円(前年同期比4.7%増)、営業利益は913百万円(同3.6%増)、経常利益は916百万円(同3.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は644百万円(同8.4%増)となりました。

 

※1「DX」:Digital Transformation デジタルトランスフォーメーションの略。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

 

※2「リスキリング」:経済産業省が推奨する、コロナ禍による働き方の変化・デジタル時代の到来に対応した人材育成を企業が従業員に対して行う取り組み。

 

当社グループの各事業のサービス別業績の概要は、以下のとおりであります。

 

・インサイドセールス事業

当社グループのインサイドセールス事業を取り巻く環境としては、非対面の営業モデルであるインサイドセールス関連サービスの需要は引き続き高く、当社のアウトソーシングサービスの利用をきっかけとしたインサイドセールス組織の立上げや、インサイドセールスの活動領域の拡大により関連するCRM(※)システムの追加開発の需要も高まっています。

このような環境のもと、主要サービスであるアウトソーシングサービスは、既存・新規ともに堅調に伸び当連結会計年度の売上高は、4,240百万円(前年同期比2.7%増)、コンサルティングサービスは、128百万円(同0.1%減)、システムソリューションサービスは、CRM等受託開発が309百万円(同32.7%増)と好調に伸び、AIを活用した営業活動支援ツール「SAIN(サイン)」の自社クラウドツール提供サービスは55百万円(同14.8%減)とした下振れをカバーし、システムソリューションサービス全体としては、489百万円(同17.4%増)となりました。インサイドセールス事業全体では、当連結会計年度における売上高は、4,857百万円(同3.9%増)、セグメント利益については621百万円(同7.9%増)となりました。

 

※「CRM」:Customer Relationship Managementの略。企業内でその顧客の属性やコンタクト履歴を記録・管理することにより、それぞれの顧客に応じた対応を可能にし、顧客満足度を向上させる取り組みを行うための情報システムを指します。

 

 

・研修事業

当社グループの研修事業が属する企業向け研修市場は、DX推進リーダー人材を対象とした研修や、現有社員の能力向上及び、生産性向上・業務効率向上を目指すリスキリング強化研修等の需要があるため、研修事業において、教育コンテンツ等の充実、人材コンサルティングの提供、人材育成プラットフォームの仕組みを提供し、人材育成トータル支援を行い、他社との差別化を図りビジネスを拡大させております。

当社グループの研修事業も、主に国内のIT事業者・システムインテグレーター企業におけるリスキリング強化の流れを受け、当連結会計年度における研修事業の売上高は、2,162百万円(前年同期比6.3%増)、セグメント利益は、291百万円(同4.6%減)となりました。

 

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は4,125百万円となり、前連結会計年度末に比べ662百万円の増加となりました。これは主に、現金及び預金が505百万円増加したこと、その他が125百万円増加したことを要因としたものであります。

当連結会計年度末における固定資産は1,051百万円となり、前連結会計年度末に比べ132百万円の減少となりました。これは主に、有形固定資産が36百万円減少したこと、無形固定資産が114百万円減少したことを要因としたものであります。

これらの結果、総資産は5,176百万円となり、前連結会計年度末の4,646百万円から530百万円の増加となりました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は942百万円となり、前連結会計年度末に比べ143百万円の減少となりました。これは主に、1年内返済予定の長期借入金が50百万円減少したこと、未払法人税等が42百万円減少したことを要因としたものであります。

当連結会計年度末における固定負債は72百万円となり、前連結会計年度末に比べ51百万円の増加となりました。これは主に、長期借入金が49百万円増加したことを要因としたものであります。

これらの結果、負債合計は1,014百万円となり、前連結会計年度末の1,107百万円から92百万円の減少となりました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産は4,161百万円となり、前連結会計年度末の3,539百万円から622百万円の増加となりました。これは主に、当連結会計年度末に親会社株主に帰属する当期純利益644百万円を計上したことにより利益剰余金が644百万円増加したことを要因としたものであります。

この結果、自己資本比率は80.4%(前連結会計年度末は76.2%)となりました。

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ505百万円増加(前年同期比23.3%増)し、2,674百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、677百万円の収入(同5.5%減)となりました。この主な内訳は、税金等調整前当期純利益916百万円、減価償却費224百万円、その他の資産の増加額128百万円、法人税等の支払額272百万円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、141百万円の支出(同27.2%減)となりました。この主な内訳は、投資有価証券の取得による支出59百万円、無形固定資産の取得による支出58百万円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、29百万円の支出(同73.3%減)となりました。この主な内訳は、長期借入れによる収入100百万円、長期借入金の返済による支出100百万円、自己株式の取得による支出36百万円であります。

 

③生産、受注及び販売の実績

(a)生産実績

当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

(b)受注実績

当社グループのサービス提供の実績は、販売実績とほぼ一致しておりますので、受注実績に関しては販売実績の項をご参照ください。

 

(c)販売実績

当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。

サービスの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

アウトソーシングサービス

4,240,428

2.7

コンサルティングサービス

128,179

△0.1

システムソリューションサービス

489,121

17.4

インサイドセールス事業 計

4,857,729

3.9

研修事業        計

2,162,931

6.3

合計

7,020,660

4.7

 

(2)経営者の視点による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たっては、期末日における資産・負債の数値、及び決算期における収益・費用に影響を与える見積りや判断を行う必要があります。

これら見積りや判断には不確実性が存在するため、見積った数値と実際の結果の間には乖離が生じる可能性があります。なお、当社グループの連結財務諸表の作成に際して採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項」に記載しております。

 

②経営成績等

(a)財政状態の分析

財政状態の分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

(b)経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は7,020百万円となり、前年同期に比べ312百万円増加いたしました。これは主に、研修事業の「ビジネス」や「新人研修」カテゴリでの売上が好調に推移したこと、及びインサイドセールス事業のシステムソリューションサービスの受託開発案件の売上が堅調に推移したことによります。

 

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は4,756百万円となり、前年同期に比べ211百万円増加いたしました。これは主に、売上高の増加に伴い労務費が150百万円の増加、外注委託費が100百万円の増加等によるものであります。

この結果、当連結会計年度の売上総利益は2,263百万円となり、前年同期に比べ101百万円増加いたしました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は1,349百万円となり、前年同期に比べ69百万円増加いたしました。これは主に、事業規模拡大に伴う給料及び手当の増加、業務委託費の増加等によるものであります。

この結果、当連結会計年度の営業利益は913百万円となり、前年同期に比べ32百万円増加いたしました。また、当連結会計年度の売上高営業利益率は13.0%となり、前年同期と比べ0.1%下がっております。

 

(営業外損益、経常利益)

当連結会計年度の営業外収益は4百万円となり、前年同期に比べ大きな増減はありません。

当連結会計年度の営業外費用は1百万円となり、こちらも前年同期に比べ大きな増減はありません。

この結果、当連結会計年度の経常利益は916百万円となり、前年同期に比べ29百万円増加いたしました。

 

(特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益)

当連結会計年度の特別損益の発生はありません。

この結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は644百万円となり、前年同期に比べ49百万円増加いたしました。

 

(c)キャッシュ・フローの分析

キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

③資本の財源及び資金の流動性

当社グループの資金需要のうち主なものは、運転資金及びシステム開発等にかかる設備投資によるものであります。当社グループの運転資金につきましては、自己資金(利益等の内部留保資金)で賄っており、資金の流動性は確保できております。また、自己資金で手当てできない場合は、金融機関からの借り入れによる資金調達となりますが、借入先・借入金額等の条件は所定の手続きにより資金調達を行うことになります。

 

④経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」をご参照ください。当社グループでは売上高及び営業利益を重要な指標としております。

当連結会計年度における売上高は前年同期に比べて312百万円増加し、7,020百万円となりました。また、営業利益は、前年同期に比べて32百万円増加し、913百万円となりました。引き続きこれらの指標について増加するよう取り組んでまいります。

 

⑤経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループは、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおり、事業環境の変化や組織体制の整備等、さまざまなリスク要因が当社グループの成長や経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社グループは、常に新技術の動向や市場動向に留意しつつ、内部管理体制を強化し、優秀な人材を確保育成し、顧客ニーズを満たす製品・サービスを提供していくことにより、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因の低減を図ってまいります。

 

⑥経営戦略の現状と見通し

当社グループは今後も拡大されることが予想されるIT市場において、競争優位性を確保するために、顧客企業に対して高付加価値を提供するサービスの創造に鋭意努めてまいります。また、より強固なポジションを獲得するために、開発体制及び営業体制の強化を重要な経営戦略と認識し、事業の拡大に取り組んでまいります。

 

⑦経営者の問題意識と今後の方針について

当社グループが今後事業を拡大し、より高品質なサービスを継続提供していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対処していく必要があると認識しております。それらの課題に対応するため、経営者は常に市場におけるニーズや事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を認識したうえで、当社グループの経営資源を最適に配分し、最適な解決策を実施していく方針であります。

 

5【経営上の重要な契約等】

①株式取得による会社の買収

当社は、2023年12月22日開催の取締役会において、トータルサポート株式会社の発行済株式の51.7%を取得し子会社化することについて決議し、2024年1月12日付で株式譲渡契約を締結し、2024年2月1日に株式を取得いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりです。

②株式取得による会社の買収及び当社への吸収合併

当社は、2023年11月13日開催の取締役会において、2BC株式会社の全株式を取得し子会社化すること、及び同社を吸収合併(簡易・略式合併)することについて決議し、2023年12月1日付で株式譲渡契約を締結し、2024年1月1日に株式を取得いたしました。また、2024年1月29日開催の取締役会において、同社を吸収合併することを決議し、同日付で合併契約を締結し、2024年3月15日付で吸収合併いたしました。詳細は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な後発事象)」に記載のとおりです。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。