第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の結果とは様々な要因により大きく異なる可能性があります。

 

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは、『愛の精神の実践』を創業からの想いとして受け継ぎ、パーパス(存在意義)「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign(リ デザイン))」を経営の起点とし、人々の健康で快適、清潔・衛生的な暮らしに役立つ優良製品・サービスを提供することにより、サステナブルな社会に貢献していくことが使命であると認識しております。

人々の価値観の変化や企業に求められる社会的な役割を的確に捉え、お客様満足を最優先とする製品開発、サービスの提供に取り組むとともに、環境保全活動の推進やコーポレート・ガバナンス体制の充実を図り、株主、お客様、お取引先、地域・社会、従業員等のすべてのステークホルダーからの期待に応えられる信頼性の高い企業として、企業価値の一層の向上に努めてまいります。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2030年のありたい姿として経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げています。

ビジョン実現に向けては、パーパス(存在意義)を起点とした経営を一層強化し、サステナブルな社会への貢献と事業の成長を目指すべく中長期経営戦略フレーム「Vision(ビジョン)2030」を策定しており、2022年からは3ヵ年の中期経営計画「Vision(ビジョン)2030 1st(ファースト) STAGE(ステージ)」をスタートさせています。

 

<中長期経営戦略フレーム「Vision2030」の概要>

 

◇経営ビジョン

「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」

 

◇3つの成長戦略の推進

事業成長を加速させるため、3つの成長戦略を推進します。

① 「4つの提供価値領域における成長加速」

② 「成長に向けた事業基盤への変革」

③ 「変革を実現するダイナミズムの創出」

 

◇サステナビリティ重要課題への取組み強化

「健康な生活習慣づくり」「サステナブルな地球環境への取組み推進」を最重要課題として、成長戦略と相乗的に推進してまいります。

 


 


 

 

<2030年の目指す業績イメージ>

・連結売上高               6,000億円水準(海外事業の構成比50%水準)

・EBITDA ※1      800億円水準

・事業利益 ※2               500億円水準

・ROIC                       8~12%

・ROE                        10~14%

※1 事業利益に減価償却費(使用権資産の減価償却費を除く)を合算したものであり、キャッシュベースの収益力を測る指標です。

※2 売上総利益から販売費及び一般管理費を控除したもので、恒常的な事業の業績を測る当社の利益指標です。

 

(3) 会社の対処すべき課題

経営ビジョン実現に向け、2022年からスタートさせた3ヵ年の中期経営計画「Vision2030 1st STAGE」に掲げる戦略をスピーディに実行し、着実な成果につなげることが当社グループの課題であると認識しております。

 

◇経営ビジョン実現に向けた経営戦略

<3つの成長戦略とその推進状況

①4つの提供価値領域における成長加速

オーラルヘルス領域では、企業や自治体のウェルビーイング経営(健康経営)を支援する『おくちプラスユー』を2022年7月より開始する等、人々の健康な生活習慣づくりを通じて市場の拡大に資する新しい事業機会の創出を進めています。

また、事業成長の最重点国と位置付けている中国では、2030年1,000億円の売上規模を目指し、オーラルケアを起点として、販売エリア・チャネル、商品カテゴリーの拡大を進めています。

 

②成長に向けた事業基盤への変革

2021年に完成したハミガキ新工場(香川県坂出市)を当社グループのハミガキ生産の主力工場の一つとして位置づけ、効率的でサステナブルな生産・供給体制の構築に向け最大限活用してまいります。

新基幹システムを2022年に稼働させており、需給計画、調達、生産、販売など経営情報の迅速なアウトプットとそれらを活かした経営管理、サプライチェーンマネジメントの高度化に取り組んでいます。

海外事業の成長基盤構築については、バングラデシュ(2022年)、ベトナム(2023年)と、中期経営計画で目標としている2ヵ国への新規参入を実現しました。今後は、上記2ヵ国における早期の事業軌道化を目指すとともに、更なる進出国の探索を継続してまいります。

 

③変革を実現するダイナミズムの創出

人事処遇制度や人材開発体系等の人材マネジメントシステムを刷新し、従業員の自律的な成長や専門性の高い人材の創出を通じた組織力の向上を進めています。

また、従業員一人ひとりが描くライフプランとライフスタイルの実現に向けて、より柔軟な働き方を選択できる制度の充実や、新本社への移転など快適なオフィス環境の整備を進めています。

 

<サステナビリティ重要課題への取組み強化>

最重要課題に掲げる「サステナブルな地球環境への取組み推進」について、自治体や他企業と連携した資源循環に向けた取組みや省資源型商品の開発を推進しています。同じく「健康な生活習慣づくり」については、オーラルケアの新習慣を提案するサービス型事業の開始などの施策を進めています。

また、気候変動が当社に及ぼすリスクと機会について、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)のフレームワークに沿ったシナリオ分析を実施し、2023年にその結果について開示を行っています。

 

 

(4) セグメント別の課題と戦略

①一般用消費財事業

一般用消費財事業は、主要分野において、付加価値の高い新製品や環境に配慮した新製品の導入と育成を図るとともに、4つの提供価値領域における新たな価値創造に向けた取組みを加速させます。

 

②産業用品事業

産業用品事業は、モビリティ、エレクトロニクス等の主要分野で重点施策を着実に推進し、事業基盤の強化と製品の販売を通じたサステナビリティへの貢献に努めてまいります。また、業務用洗浄剤分野では、重点顧客への取組みを強化するとともに、衛生関連事業の拡大にも注力します。

 

③海外事業

海外事業は、ホームケア分野の収益性向上に取り組むとともに、オーラルケア、ビューティケアなどパーソナルケア分野を中心にマーケティング施策を展開し、特に成長が続く中国を重点国として、事業規模の拡大に努めます。併せて、新規参入したバングラデシュ、ベトナムにおいて、成長に向けた事業基盤の構築を進めるとともに、更なる新規国・エリアへの参入の検討も進めてまいります。

 

(5) 中期経営計画の進捗状況

当社グループは、中長期経営戦略フレーム「Vision2030」にもとづき、2022年度から、中期経営計画「Vision2030 1st STAGE」を推進しております。

 

<中期経営計画「Vision2030 1st STAGE」>

中長期経営戦略フレーム「Vision2030」の実現に向け、2030年まで3年毎の中期経営計画を3回設定し、経営環境の変化に対応した戦略推進を図ります。

「1st STAGE」では、「成長加速へのギアチェンジ」をテーマとして、「成長戦略の実行」と「経営基盤の変革」を推進し、成長しながら変革を加速させます。また、ROICマネジメントの活用によるマネジメントコントロールの強化を図ります。

 

◇成長戦略の推進

(1)4つの提供価値領域における成長加速

・4つの提供価値領域における既存ビジネスの進化と新たなビジネスモデルの創出により収益機会を獲得しま

 す。

・中国事業の高成長を維持し2ヵ国以上の新規国・エリアへの参入を目指します。

・エコ習慣づくりにより社会貢献を拡大します。

 

(2)成長に向けた事業基盤への変革

・ビジネス基盤・システム基盤を強化し、業務効率化のためにDX推進を加速します。

・経営マネジメントの高度化を図ります。

・サステナブルなSCM基盤を構築するとともに、サステナビリティ戦略の推進を加速します。

 

(3)変革を実現するダイナミズムの創出

・ライオン流働きがい改革の推進等により従業員エンゲージメントの向上を図ります。

・人材育成・人的資本への投資を拡大します。

 

 

◇サステナビリティ重要課題への取組み

(1)健康な生活習慣づくり

インクルーシブ・オーラルケアなどを通じて、人々の健康で快適、清潔・衛生的な暮らしの実現と健康寿命の延伸に貢献します。

 

(2)サステナブルな地球環境への取組み推進

・生活者と共につくる「エコの習慣化」により、脱炭素社会と資源循環型社会の実現に貢献します。

・家庭での環境負荷を低減する「節水・節電習慣」と「詰め替え習慣・捨てない習慣」を、業界・他社と連携

 して日本を含むアジアに展開します。

 

◇キャッシュアロケーション

3ヵ年で1,200億円超のキャッシュ獲得を想定し、その内の800億円超を将来に向けた戦略投資に投下するとともに、配当および自己株式取得による300億円超の株主還元を行うことを想定しています。

 

◇連結業績目標

・連結売上高                 4,200億円

・EBITDA                 520億円

・事業利益                     320億円

・営業利益                     320億円

・ROIC                   7.5%水準

・ROE                     9.0%水準

 

 

<進捗と課題>

3つの成長戦略にもとづく施策を推進した結果、連結売上高は、本計画開始前3ヵ年の成長率を上回る水準で推移し、中期経営計画で掲げた「成長加速へのギアチェンジ」を一定レベルで果たしました。とりわけ、2030年度売上構成比50%水準を目指している海外事業では、中国をはじめとする既存参入国・エリアにおけるプレゼンス拡大により、2023年12月期の売上構成比は33%と順調に拡大しています。

一方で利益については、世界的な資源価格高騰による原材料価格上昇の影響を受けたことに加え、国内のファブリックケア分野において、高い目標を置いて発売した新製品が想定を下回ったこと等から、当初目指していた水準に達することができておりません。

このような状況を踏まえ、当社グループは「Vision2030 1st STAGE」の最終年度となる本年を、次期中期経営計画に向けた基盤再構築の年と捉え、低収益事業の整理および経営資源のアロケーションを通じた事業ポートフォリオの見直しや、事業運営の効率化を一層強力に推し進めます。併せて、重点国・エリア、重点分野への投資の先鋭化を推進し、2030年のビジョン実現に向け企業価値の向上を目指してまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組み】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) サステナビリティ全般

当社は、「事業を通じて社会のお役に立つ」という創業の精神を受け継ぎ、経済的発展のみならず、地球環境や社会の課題についても長期的かつ継続的に取り組んでまいりました。

現在、2030年に向けた経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げ、中長期経営戦略フレーム「Vision2030」においても、サステナビリティ重要課題への取組みと成長戦略を相乗的に推進することで、サステナブルな社会への貢献と事業の成長を目指しています。

 

① ガバナンス

サステナブルな経営を推進するにあたり、2021年より社長を含む業務執行取締役全員と関連部門で構成する「サステナビリティ推進協議会」を年2回開催し、当社グループのサステナビリティに関する協議を行っています。

協議会の傘下には、執行役員を責任者とするE、S、G、3つの分科会を設け、サステナビリティ重要課題に対する取組みの推進ならびにモニタリングを行っています。協議会で決定した内容は経営会議で共有され、必要に応じて執行役員会・取締役会に付議・上程し、各業務執行部門の事業活動に反映しています。

 


 

② 戦略

当社グループでは、バリューチェーン全体およびステークホルダーを網羅し、リスクと機会の両面を勘案して、13のサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しています。

その中で特に「健康な生活習慣づくり」と「サステナブルな地球環境への取組み推進」については、経営資源を投下して取り組むべき最重要課題に位置づけています。

 

 

<健康な生活習慣づくり>

当社の製品・サービス、および情報の提供を通じて、歯みがきや手洗いといった健康に直結する生活習慣の定着を進めています。当社グループのパーパス「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」に基づいた「健康な生活習慣づくり」を事業展開エリアののべ10億人に提供することで、より多くの人々の毎日に貢献するとともに、事業の拡大をはかります。

 

<サステナブルな地球環境への取組み推進>

企業活動を通じて生活者の皆様に健康、快適、清潔・衛生を通じた顧客体験価値を提供することとあわせ、人々の健康やくらしの基盤となる地球環境を守ることは、「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を経営ビジョンとして掲げる当社グループにとって大変重要な責務であると考えています。

持続可能な地球環境の実現に向けては、長期環境目標「LION Eco Challenge 2050」を掲げ、脱炭素社会、資源循環型社会の実現にチャレンジしています。

 

③ リスク管理

サステナビリティに関する事項を含む具体的なリスクと対応策に関しては「3.事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

サステナビリティ最重要課題に関する指標と目標は以下のとおりであります。

なお、2023年12月期の実績につきましては、2024年5月末公開予定の「ライオン統合レポート2024」をご参照ください。

 

<健康な生活習慣づくり>

 

目標(2030年)

指標(2030年目標)

すべての人が必要な時に、いつでも、オーラルケアを行える機会を提供し、誰もが健康でいられるよう、オーラルケアの習慣化を目指します。

健康な生活習慣づくりに貢献する製品・サービス、および情報を提供した人数

⇒のべ10億人

(オーラルケア 5億人、清潔・衛生 5億人)

日常生活のあらゆるシーンの中で、菌・ウイルスの体内侵入を防ぎ、誰もが健康でいられるよう、清潔・衛生行動の習慣化を目指します。

 

 

<サステナブルな地球環境への取組み推進>

 

 

長期目標(2050年)

指標(2030年目標)

脱炭素社会

事業所活動におけるCO2排出量ゼロ

事業所活動におけるCO2排出量

⇒55%削減(対2017年、絶対量)

ライフサイクルにおけるCO2排出量半減

ライフサイクルにおけるCO2排出量

⇒30%削減(対2017年、絶対量)

カーボンネガティブの実現

自社の排出量を上回るCO2削減貢献(国内)

資源循環型社会

循環し続けるプラスチック利用の実現

石化由来のプラスチック使用率

⇒70%以下

持続可能な水使用の実現

ライフサイクル水使用量

⇒30%削減(対2017年、売上高原単位)

 

 

 

(2) 気候変動

近年、気候変動は喫緊の社会課題であり、企業経営においても将来の重大なリスクであると同時に、企業活動の新たな機会創出の可能性もあると認識しています。

当社グループでは、2019年5月にTCFD*提言への賛同を表明し、2022年には4.0℃、1.5℃を想定した本格的なシナリオ分析を実施しました。

*Task Force on Climate-related Financial Disclousures(気候関連財務情報開示タスクフォース)

 

① ガバナンス

気候変動リスク・機会は、サステナビリティ推進協議会傘下のE分科会より、同協議会(年2回開催)に報告され、必要に応じ、経営会議・執行役員会・取締役会にも報告される体制となっています。

また、気候変動による人々を取り巻く世界観の変化を事業機会とすべく、同協議会直下にワーキンググループを設置して機動的な検討を行っています。

 

② 戦略

当社グループでは、短・中・長期の気候変動リスク・機会を現在~2050年まで特定・評価し、事業・戦略・財務計画検討時に考慮しています。

2030年、2050年における一般用消費財事業(オーラルケア、ビューティケア、ファブリックケア、リビングケア、薬品の各分野)、海外事業(中国、タイ)について、産業革命比で2100年までに世界の平均気温が1.5℃・4℃上昇することを想定したシナリオを用いて、シナリオ分析を実施しました。

分析結果のまとめは次のとおりです。

 

<4℃シナリオ>

・化石燃料由来の原料高騰を大きなリスクと認識し、植物由来原料への代替等、脱炭素化に向けた取組みを推進しています。

・洪水や水ストレス等、物理的リスクの増加に対しては、BCPの強化やサプライチェーンのデータ連携等の対応を進めています。

・機会面では感染症予防や洗濯関連商品等の市場の拡大が想定され、関連する商品開発やサービスの強化に取り組んでいます。

また、感染症拡大のリスク増加に対しては、当社の強みを発揮できるオーラルヘルスやインフェクションコントロール領域での成長機会の探索を続けます。

 

<1.5℃シナリオ>

・プラスチック由来・アルミ由来・パーム油由来の原材料・包材価格の上昇が大きなリスクとなりますが、石化由来のプラスチック使用量の削減やパーム油・パーム核油誘導体のRSPO認証品の調達等、リスク低減に向けた取組みを進めています。

・機会面では、環境配慮製品の大幅な需要拡大が見込まれ、ライオンエコ製品の拡充等による事業の拡大が期待されます。

また、サステナブルファッションなど生活スタイルの変化に適合する技術開発の推進や、EV普及等、脱炭素交通の進展に伴い必要となる導電性カーボンの供給拡大など、さらなる成長機会の獲得についても検討を進めています。

 

当社グループでは、各シナリオへの対応はこれまでも進めておりますが、変化への対応力を一層強化すべく経営努力を傾注してまいります。

 

※詳細については、ウェブサイトをご覧ください。

https://www.lion.co.jp/ja/sustainability/env/tcfd/

 

 

③ リスク管理

事業に大きな影響を及ぼす気候変動関連のリスクと対応策に関しては「3.事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

当社および国内外連結子会社のCO2排出量(Scope1、2、3)についてウェブサイトで開示しております。また、長期環境目標「LION Eco Challenge 2050」における、2050年に向けた取組み「脱炭素社会と資源循環型社会の実現」の方向性と、2030年時点のCO2排出量、石化由来のプラスチック使用率、水資源使用量の指標については、「(1)サステナビリティ全般 ④指標と目標」をご参照ください。

 

(3) 人的資本

当社グループは、「変革を実現するダイナミズムの創出」をVision2030の成長戦略のひとつに掲げており、一人ひとりの従業員が成長過程で相互に刺激し合い「自律した個」の躍動によって、組織全体に変革の波(ダイナミズム)をもたらすことを目指しています。

主体的な学びや自律的キャリア形成の機会、健康行動の習慣化、柔軟な働き方など様々な取組みを推進し、個々の働きがい追求を支援するとともに、経営課題に応じた柔軟な組織運営と適所適材を可能とするためのポジションマネジメント、さらに専門性の高い人材を確保・育成するための職群別人事管理を進めることで、戦略を遂行する組織能力を高めていきます。

これらの取組みを通じ、個の躍動を促し、組織としてそれらを活かすことで、人材の成長を企業価値向上へとつなげてまいります。

 

① ガバナンス

当社グループは人的資本の充実を重要な経営課題と認識し、経営トップを委員長とする「人材開発委員会」を設置して、トップタレントの育成、若手社員の選抜育成、社員の語学力向上など、人的資本に関するさまざまな課題や施策について議論し、進捗状況の共有を行っています。

また、プロフェッショナル人材の育成と活用に向け、職種・職能領域を「職群」として束ね、組織横断的な人材育成やキャリア開発に取り組むとともに、従業員の自律的な成長を支えるためのプラットフォームとして、E-learningシステムやケース講義等からなる「ライオンキャリアビレッジ」を整備しています。

 

 

② 戦略

当社グループは、多様で多彩な専門性を有する人材の採用から、育成・処遇、健康行動の習慣化など、人材開発の視点から「働きやすさ」のみならず、従業員一人ひとりの「働きがい」を重視する「ライオン流働きがい改革」を推進することで、生産性の向上と新しい価値の創出を図っていきます。マネジメントのポストや重要職務については業務・役割の定義と等級付けを行い、最適な人材の登用を進めることとあわせ、柔軟な働き方やダイバーシティの推進、健康経営への取組みを通じ、企業を支える人的資本の充実と活性化に努めています。

 


 

<人材開発>

当社グループでは、一人ひとりの自己実現に寄り添った支援施策を用意するだけでなく、従業員の成長を促す風土創りにも全社で取り組んでいます。上司と部下間の関係性をより高めていくことで、全ての部所において心理的安全性の高い状態の醸成に努めています。また、自ら設計したキャリアを実現させるために、自律的に知識を習得して、経験を積むことで、自己成長を遂げる人材の育成を支援し、多彩な能力発揮を促しています。

 

<ワークライフエンリッチメントの推進>

当社グループでは、ワークライフエンリッチメント(“ワーク”と“ライフ”が相互に作用し質を高め合うこと)の考え方に基づき、従業員が仕事を含む生活全体を充実できる環境を目指しています。仕事だけでなく仕事以外の生活(プライベートでの役割や社外活動など)も重視し、柔軟に働ける制度や育児・介護支援、マネープラン教育などライフスタイルとライフプランの両面から支援しています。

 

<ダイバーシティ&インクルージョンの推進>

当社グループでは、従業員の多様な知と経験を活かすことは、より良い習慣作りに向けた新しい発想やイノベーションに繋がると考えています。意思決定層の多様性の向上や、国籍・性別など属性を問わず多様な価値観や考えを持った人材が、個性や能力を発揮して活躍できる組織風土づくりを進めています。

 

<従業員の健康増進>

当社グループでは、従業員の健康は「会社の健全な成長を支える経営基盤である」との考えを基本とし、従業員一人ひとりの「心と身体のヘルスケア」の実現を目指しています。会社・従業員・健康保険組合が一体となり、生活習慣改善とヘルスリテラシーの向上、お口の健康、がん予防、禁煙支援、メンタルヘルス対策など健康行動の習慣化を目指す活動「GENKIアクション」に取り組んでいます。

 

※詳細については、ウェブサイトをご覧ください。

https://www.lion.co.jp/ja/sustainability/employee/

 

 

③ リスク管理

人材に関するリスクと対応策については、「3.事業等のリスク」をご参照ください。

 

④ 指標と目標

人的資本に関する主な指標と目標は以下のとおりであります。

 

重要課題

目標

指標(2030年目標)

実績(2023年)

人材開発

従業員一人ひとりが、多彩な能力を最大限に発揮し挑戦できる環境を整備することで、変革を実現するダイナミズムを創出する人材の育成を目指します。

・一人ひとりのスキル習得と

 能力開発に対応した多彩な

 教育プログラム(ライオン

 ・キャリアビレッジ)を受

 講している従業員の割合

 ⇒100%

・57%

ワークライフエンリッチメントの推進

従業員一人ひとりが、ワークとライフの相乗作用により、人生のWILLを実現できる環境を目指します。

・「仕事以外の生活(家庭で

 の役割や社外活動等)が仕

 事に良い影響を与えている

 」と思う従業員の割合

 ⇒75%以上

・54%(国内)

ダイバーシティ&インクルージョンの推進

多様な価値観や考えを持った人材が、個性や能力を存分に発揮して活躍することを目指します。

・管理職に占める女性労働者

 の割合

 ⇒30%以上

・「多様な価値観を持った従

 業員が活躍できている」と

 思う従業員の割合

 ⇒80%以上

・管理職に占める女

 性労働者の割合

 ⇒24%

・従業員割合

 ⇒56%(国内)

従業員の健康増進

従業員の心と身体のヘルスケアを支えることで、人材力の強化につなげ、持続可能な企業成長を目指します。

・歯科健診の受診率

 ⇒100%

・アブセンティーズム

 ⇒2021年比改善

・歯科健診受診率

 ⇒90%(国内)

 ※海外は、算出方

 法を検討中

・アブセンティーズ

 ム

 ⇒0.9%

 (国内単体、

 2021年比微増)

 ※海外は、算出方

 法を検討中

 

 

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの経営成績および財政状態は、今後事業を行っていく上で起こりうる様々なリスクによって影響を受ける可能性があり、特に投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項について、以下に記載しております。
 なお、将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において入手しうる情報に基づいて判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限られるものではありません。
 

<リスクマネジメントの基本方針>
・当社の役員および従業員は、「内部統制システムの基本方針」に基づき、平時から、当社グループの事業運営を
 阻害するリスクの未然防止に努める。
・万が一、リスクが顕在化した場合には、従業員、株主、顧客、地域社会等各ステークホルダーの損失の最小化に
 努める。
・顕在化したリスクはいち早く経営トップに報告し、事実確認、経緯把握、原因究明、改善策立案等を速やかに実
 施したうえで、再発防止に努める。
 
<当社のリスクマネジメント体制>
 当社グループは、事業活動に関わるあらゆるリスクの発生頻度や経営への影響を低減していくために、全社的な視点でリスクマネジメントを統括する「リスク統括管理担当役員」を選任するとともに、経営企画部を事務局として具体的な施策の推進を図っております。

経営成績および財政状態に重大な影響を及ぼすリスクについては、経営会議で「経営リスク」として特定・評価し、そのリスクの低減等に全社的に取り組んでおります。

環境、品質責任、事故・災害に関するリスクについては、それぞれサステナビリティ推進協議会、CS/PL委員会、安全衛生防災会議において事前に対応策を検討、必要に応じて経営会議または執行役員会で審議し、リスク管理を行っております。

各部所においては、「リスクマネジメントシート」を活用し、全社に共通の「共通リスク」と部門固有の「個別リスク」を識別・評価し、対応策を検討し年間を通じて実践しております。また、全社にわたりISO9001、加えて各工場においてはISO14001の認証を受け、品質管理および環境保全に積極的に取り組んでおります。

リスク統括管理担当役員は、リスク管理の推進状況を随時、執行役員会、取締役会に報告します。また、監査室は当社グループ各部所のリスク管理の状況を監査し、その結果を執行役員会、取締役会に報告します。

 

<経営リスクと主な対応策>

No

経営リスク

内容

主な対応策

1

市場や顧客の変化に関わるリスク

市場や流通、顧客の消費・購買行動等の変化への対応が遅れ、競合との競争に劣後し、市場シェアや売上高を保てなくなるリスク

・市場や生活者の消費・購買行動を多角的に

 分析し、顧客の価値に繋がる新しい習慣の

 創出・提供に努める

・流通環境や購買環境の変化にあわせた、効

 率的なサプライチェーンの構築

2

製品品質に関わるリスク

想定外の製品不良やお客様の誤使用による想定外の製品事故等の製品トラブルが発生するリスク

・関連法規の遵守はもとより、JISQ9000ファ

 ミリー規格に基づく「製品マネジメントシ

 ステム」に則り、誤使用、異常使用を含め

 た発売前のリスク抽出・最小化等のステッ

 プを経た製品開発等を実践

・万が一トラブルが発生した場合には、健康

 被害等を最小限に食い止めるべく、品質保

 証体制を整備

・お客様相談窓口に寄せられたお客様の声を

 活かし、製品や容器・包装、表示等の改善

 に努める

・ISO9001認証を取得し、品質に関わる組織

 マネジメント体制を強化

3

原材料調達に関わるリスク

気候変動や国際的な需要動向変化に伴う調達競争激化による購入価格の高騰、地政学リスクや購入先の事故等によるサプライチェーンが停滞あるいは寸断されるリスク

・互換化、複数購買、グローバル調達等によ

 り安定した原材料調達、さらに「調達基本

 方針」に基づく責任ある調達活動を推進

・サプライチェーンにおける人権・労働、環

 境、公正な事業慣行、消費者課題等に関す

 るリスク回避に向け、「ライオングループ

 サプライヤーCSRガイドライン」に基づく

 チェックを実施

4

海外事業に関わるリスク

海外事業の構成拡大に伴い、事業展開国や地域における政治経済の動向や法規制の強化・変更により、対応コストの発生や事業活動が制約されるリスク

事業運営における重要なステークホルダーの政策や財政に変化が生じるリスク

・各国・地域の政治・経済情勢や法規制の動

 向等には十分な注意を払いながら、継続的

 な情報の収集を行い、変化に対応

・M&Aの際には、対象企業のビジネス、財務

 内容および法務等について詳細なデューデ

 リジェンスを実施

・国や地域、事業のポートフォリオを多様化

 し、リスク分散を図る

・合弁事業においては、パートナーとの継続

 的な方針の擦り合わせ等、継続的コミュニ

 ケーションを強化し、良好な関係性を構築

5

人材に関わるリスク

労働人口減少や雇用情勢変化等により、必要人材を計画通りに確保・育成できないことにより企業の成長が滞るリスク

価値観の多様性を尊重し、組織での関係性が向上する風土が醸成できない場合には、人材の流出が起こり、事業活動が停滞するリスク

以下の施策を中心とした人的資本経営の

 践

 ・通年採用やキャリア採用の実施による専

  門人材の拡充

 ・ワークマネジメント施策やワークスタイ

  ル施策等からなる「ライオン流働きがい

  改革」を実施

 ・競争力のある人事処遇制度の適正な運営

  と報酬水準の維持

 ・経営戦略と連動した人材のグループ内ア

  ロケーション

6

情報管理に関するリスク

コンピュータウイルス感染、不正アクセス等の不測の出来事によって、情報漏洩やシステム停止等のインシデントが発生するリスク

・「情報取扱に関する基本方針」等のもと、

 機密情報の保管や取扱い等の手続きを定め

 たマニュアルを整備し、就労環境の変化に

 合わせた情報管理を徹底

・システム障害に対する対策を「情報セキュ

 リティ規程」に定め、随時更新

・情報セキュリティやソーシャルメディアの

 リスクに関する研修を、役員を含む全従業

 員が毎年受講

7

コンプライアンスに関するリスク

予期せぬ関係法令の制定や改廃、規制の大幅な変更や強化等により、重大な法令違反を犯すリスク

・行動規範である「ライオン企業行動憲章」

 「行動指針」を制定し、全社員に定期的な

 教育等を実施

・「企業倫理委員会」を中心に、コンプライ

 アンスに関わる具体的な施策を推進

・社内外通報システムとして「AL心のホット

 ライン」を整備し、運用

 

8

風評に関わるリスク

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)等へ不適切な発言や書き込みが行われ、即座に拡散・炎上してしまうリスク

・「ソーシャルメディアポリシー」を定め、

 SNSに関わるリスク等についての研修を全

 社員が受講

・SNS等の継続的なモニタリングにより不適

 切な情報の早期発見に努めるとともに、

 「ソーシャルメディアリスク対応マニュア

 ル」を策定し、初期段階で迅速、慎重かつ

 適切に対応するための体制を整備

9

為替変動に関わるリスク

商品供給、原材料調達等の輸出入取引が為替変動の影響を受けるリスク

連結財務諸表作成時に円換算を行うことから、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼすリスク

・主要通貨の為替動向を注視するとともに、

 ヘッジ等を通じて、為替変動によるリスク

 を低減

10

重要な訴訟に関わるリスク

重大な訴訟が提起され、当社グループに不利益な判断により経済的損失が発生するリスク、また、ブランドイメージや社会的信用の低下につながるリスク

・法令遵守の徹底、契約条件明示や事前協議

 の実施、知的財産権の適切な管理等によ

 り、訴訟等の発生を防止

・事業を展開する国・地域の現地法人の法

 務・知財部門と連携、必要に応じて弁護士

 等と協力し、訴訟などに迅速かつ適切に対

 応する体制を整備

11

新型インフルエンザ等の感染症に関わるリスク

新型インフルエンザウイルス等の感染症の拡大、長期化により、人やモノの移動が制限され、事業活動に制約が生じるリスク

・平時の感染予防対策を徹底する一方、感染

 拡大時の対応を「新型インフルエンザ等感

 染症対策マニュアル」で定め、迅速かつ適

 切な行動がとれる体制を整備

・社内外への先行した予防策の発信・周知

 と、平時のみならず緊急時においても感染

 予防に資する製品を安定的に供給

12

大規模地震、台風等の自然災害、事故に関わるリスク

大規模地震や大型台風等の自然災害、生産拠点における安全活動の未充足や設備上の不具合等により、従業員の死傷等の人的被害、製造設備や倉庫の被害等物的被害が発生するリスク、またこれらの結果、事業の継続や商品供給に支障が生じるリスク

・以下の施策を中心とした安全防災活動の高

 度化

 ・災害発生時の緊急連絡体制や安否確認シ

  ステムの運用

 ・災害対策本部体制の整備や定期的な訓練

  の実施

 ・生産拠点の定期的な安全監査や設備更新

  の実施

・被災時の事業継続・早期復旧のための「事

 業継続計画(BCP)要綱」を定め、在庫の

 確保、工場の複数拠点化、代替輸送による

 供給ルート確保等の施策の実施

13

気候変動等の地球環境変化に関わるリスク

気候変動による地球規模での気温上昇等の影響により、規制強化への対応、原材料価格の上昇、コスト増加、対応遅れによる風評が発生するリスク

・持続可能な社会の実現に向け、2050年に向

 けた長期環境目標「LION Eco Challenge

 2050」を策定し、脱炭素社会、資源循環型

 社会の実現にチャレンジ

・環境に配慮した設計にもとづく商品やサー

 ビスの提供により、原材料の調達から生

 産、輸送、使用、廃棄に至るまで、ステー

 クホルダーと連携しながら製品ライフサイ

 クルのあらゆる段階で環境負荷の削減を推

 進

・当社環境対応に対する考え方・戦略・施策

 の積極的・有効な対外発信

 

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用会社)の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要ならびに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 経営成績・財政状態に関する概況

 ① 経営成績の状況

a. 当期(2023年1月1日~2023年12月31日)の経営成績

<全体概況>

当社グループは中期経営計画「Vision(ビジョン)2030 1st(ファースト) STAGE(ステージ)」に掲げる3つの成長戦略である「4つの提供価値領域における成長加速」、「成長に向けた事業基盤への変革」、「変革を実現するダイナミズムの創出」にもとづく施策を推進しております。

当期は、地政学的な問題や金融引き締めを背景として、世界的に先行き不透明な状況が継続しました。当社グループを取り巻く事業環境は、特に国内では、円安の進行が原材料価格の高止まりに影響を及ぼしましたが、全体としては緩やかな回復基調で推移しました。このような環境の中、当社は柔軟剤、洗濯用洗剤等で高付加価値の新製品を投入するとともに、主力ブランドの育成に取り組みました。

海外においては、主要参入国であるタイ、中国を中心に景気は回復基調で推移しましたが、中国では期の後半、不動産投資減少の影響などにより足踏みがみられました。このような環境の中、当社はオーラルケア、ビューティケア等のパーソナルケア分野の拡大、洗濯用洗剤等のホームケア分野の競争力強化に注力しました。加えて、新たな成長起点の創出に向けてベトナムのヘルスケア企業に資本参加しました。

以上の結果、当期の連結業績は、売上高4,027億6千7百万円(前期比3.3%増、為替変動の影響を除いた実質前期比1.3%増)となりましたが、競争費用の増加や本社移転に伴う一時費用の発生等により、事業利益201億3千3百万円(前期比14.5%減)、営業利益205億5百万円(同28.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益146億2千4百万円(同33.3%減)となりました。

 

<連結業績の概況>                                      (単位:百万円)

 

当  期

売上比

前  期

売上比

増減額

増減率

売上高

402,767

 

 

389,869

 

 

12,897

3.3

%

事業利益

20,133

5.0

%

23,559

6.0

%

△3,425

△14.5

%

営業利益

20,505

5.1

%

28,843

7.4

%

△8,338

△28.9

%

親会社の所有者に帰属する当期利益

14,624

3.6

%

21,939

5.6

%

△7,314

△33.3

%

 

(注)事業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除したもので、恒常的な事業の業績を測る当社の利益指標です。

 (注)前期の営業利益には、連結子会社が所有していた土地の譲渡益が含まれています。(2022年1月31日付譲渡)

 

<セグメント別の業績>                                                              (単位:百万円)

 

売上高

セグメント利益(事業利益)

 

当 期

前 期

増減額

増減率

当 期

前 期

増減額

増減率

一般用消費財事業

267,380

265,555

1,824

0.7

%

4,799

11,454

△6,655

△58.1

%

産業用品事業

57,191

58,076

△885

△1.5

%

3,013

3,132

△118

△3.8

%

海外事業

148,067

129,342

18,724

14.5

%

8,587

5,116

3,471

67.8

%

その他

20,909

15,394

5,515

35.8

%

1,375

1,202

173

14.4

%

小計

493,548

468,368

25,180

5.4

%

17,775

20,904

△3,129

△15.0

%

調整額

△90,781

△78,499

△12,282

 

2,358

2,654

△295

 

合計

402,767

389,869

12,897

3.3

%

20,133

23,559

△3,425

△14.5

%

 

 

 


 


 

(注)売上高構成比は、各部門の売上高から部門間の内部売上高・振替高を控除した外部顧客への売上高にもとづき算出しております。

 

<セグメント別概況>

1) 一般用消費財事業

当事業は、「オーラルケア分野」、「ビューティケア分野」、「ファブリックケア分野」、「リビングケア分野」、「薬品分野」、「その他の分野」で構成されています。全体の売上高は、前期比0.7%の増加となりました。セグメント利益は、原材料価格の上昇などにより、前期比58.1%の減少となりました。

 

 

当期(百万円)

前期(百万円)

増減率

売上高

267,380

265,555

0.7

%

セグメント利益

4,799

11,454

△58.1

%

 

 


 


 

(注)以降、グラフの単位は億円

 

[売上高の分野別状況]

 

当期(百万円)

前期(百万円)

増減率

オーラルケア分野

72,847

72,299

0.8

%

ビューティケア分野

24,348

26,482

△8.1

%

ファブリックケア分野

60,957

60,120

1.4

%

リビングケア分野

22,187

23,630

△6.1

%

薬品分野

26,341

25,144

4.8

%

その他の分野

60,697

57,877

4.9

%

 

 


 


 

 

(オーラルケア分野)

当分野は、「ハミガキ」、「ハブラシ」、「デンタルリンス」等で構成されています。

ハミガキは、「クリニカPRO(プロ) ハミガキ」や「NONIO(ノニオ)プラスホワイトニング ハミガキ」が好調に推移しましたが、一部ブランドにおいて販売促進の内容を見直したことなどから、全体の売上は前期を下回りました。

ハブラシは、新製品「LION(ライオン)電動アシストブラシ」を発売するとともに、ブラシ部にラバー素材を採用した新製品「クリニカPRO(プロ)ハブラシ ラバーヘッド」がお客様のご好評をいただき、全体の売上は前期を上回りました。

デンタルリンスは、「NONIO(ノニオ)マウスウォッシュ」が前期を下回り、全体の売上も前期を下回りました。

以上により、分野全体の売上は、前期比0.8%の増加となりました。

 


 

(ビューティケア分野)

当分野は、「ハンドソープ」、「ボディソープ」、「制汗剤」等で構成されています。

ハンドソープは、「キレイキレイ薬用ハンドコンディショニングソープ」が堅調に推移しましたが、市場縮小の影響を受け、全体の売上は前期を下回りました。

ボディソープは、「hadakara(ハダカラ)ボディソープ 泡で出てくるタイプ」が順調に推移したものの、液体タイプが前期を下回り、全体の売上も前期を下回りました。

以上により、分野全体の売上は、前期比8.1%の減少となりました。

 


 

(ファブリックケア分野)

当分野は、「柔軟剤」、「洗濯用洗剤」等で構成されています。

柔軟剤は、「ソフラン プレミアム消臭」が前期を下回りましたが、新製品「ソフラン エアリス」が加わり、全体の売上は前期を上回りました。

洗濯用洗剤は、高い洗浄・消臭力と衣類本来の色を保つ機能を両立させた液体高濃度洗剤の新製品「NANOX(ナノックス) one(ワン)」を発売し、全体の売上は前期を上回りました。

当期は、当分野においてこれら新製品の導入による大幅な事業拡大を目指しましたが、目標には届かない水準で推移したことから、分野全体の売上は、前期比1.4%の増加に留まりました。

 


 

(リビングケア分野)

当分野は、「住居用洗剤」、「台所用洗剤」等で構成されています。

住居用洗剤は、トイレ用洗剤が前期を下回るとともに、浴室用洗剤「ルックプラス バスタブクレンジング」が伸びなやみ、全体の売上は前期を下回りました。

台所用洗剤は、「CHARMY(チャーミー) Magica(マジカ)」が堅調に推移しましたが、食器洗い機専用洗剤「CHARMY(チャーミー) クリスタ」が前期を下回り、全体の売上も前期を下回りました。

以上により、分野全体の売上は、前期比6.1%の減少となりました。

 


 

(薬品分野)

当分野は、「解熱鎮痛薬」、「点眼剤」、「ニキビ薬」等で構成されています。

解熱鎮痛薬は、「バファリン プレミアムDX(ディーエックス)」が好調に推移しましたが、「バファリン プレミアム」、「バファリンA」が前期を下回り、全体の売上も前期を下回りました。

点眼剤は、「スマイル40ゴールド」シリーズが堅調に推移し、全体の売上は前期を上回りました。

ニキビ薬は、「ペアアクネクリームW」が好調に推移し、全体の売上は前期を大幅に上回りました。

足用冷却シートは、インバウンド需要の回復により「休足時間 足すっきりシート」が好調に推移し、全体の売上は前期を大幅に上回りました。

以上により、分野全体の売上は、前期比4.8%の増加となりました。

 


 

(その他の分野)

当分野は、「ペット用品」、「ギフト・ノベルティ」、「歯科ルート品」等で構成されています。

ペット用品は、猫用トイレの砂「ニオイをとる砂」が堅調に推移するとともに、オーラルケア用品が好調に推移し、全体の売上は前期を上回りました。

ギフト・ノベルティは、ギフトが減収となり、全体の売上は前期を下回りました。

以上により、分野全体の売上は、前期比4.9%の増加となりました。

 


 

2) 産業用品事業

当事業は、タイヤ用ゴムの防着剤等を取り扱う「モビリティ分野」、二次電池用導電性カーボン等の「エレクトロニクス分野」、施設・厨房向け洗浄剤等の「業務用洗浄剤分野」等で構成されています。全体の売上高は、前期比1.5%の減少となりました。セグメント利益は、前期比3.8%の減少となりました。

 

 

当期(百万円)

前期(百万円)

増減率

売上高

57,191

58,076

△1.5

%

セグメント利益

3,013

3,132

△3.8

%

 

 


 


 

 

モビリティ分野では、タイヤ用ゴムの防着剤が順調に推移し、全体の売上は前期を上回りました。

エレクトロニクス分野では、二次電池用導電性カーボンが堅調に推移し、全体の売上は前期を上回りました。

業務用洗浄剤分野では、ハンドソープが前期を下回りましたが、衣料用洗剤が好調に推移し、全体の売上は前期を上回りました。

なお、製造子会社のグループ内部売上高が減少したため、当事業全体の売上高は前期を下回りました。

 

 

3) 海外事業

海外は、タイ、マレーシア等の東南・南アジア、中国、韓国等の北東アジアにおいて事業を展開しております。

全体の売上高は、前期比14.5%の増加(為替変動の影響を除いた実質前期比は8.0%の増加)となりました。セグメント利益は、前期比67.8%の増加となりました。

 

 

当期(百万円)

前期(百万円)

増減率

売上高

148,067

129,342

14.5

%

セグメント利益

8,587

5,116

67.8

%

 

 


 


 

 

 

   [地域別状況]

 

 

当期(百万円)

前期(百万円)

増減率

東南・南アジア

売上高

90,521

81,249

11.4

%

セグメント利益

5,122

2,378

115.4

%

北東アジア

売上高

57,546

48,093

19.7

%

セグメント利益

3,464

2,737

26.6

%

 

(注) 前期にバングラデシュ人民共和国に合弁会社を設立したことから、従来の「東南アジア」の表記を

   「東南・南アジア」に変更しております。

 

 


 


 


 

 

 

(地域別の状況)

東南・南アジア全体の売上高は、前期比11.4%の増加(為替変動の影響を除いた実質前期比は3.8%の増加)、セグメント利益は115.4%の増加となりました。

タイでは、洗濯用洗剤が前期を上回るとともに、ボディソープ「植物物語」が好調に推移し、円貨換算後の全体の売上は前期を大幅に上回りました。

また、マレーシアでは洗濯用洗剤「トップ」が順調に推移し、円貨換算後の全体の売上は前期を上回りました。

北東アジア全体の売上高は、前期比19.7%の増加(為替変動の影響を除いた実質前期比は15.2%の増加)、セグメント利益は26.6%の増加となりました

中国では、ハミガキ「ホワイト&ホワイト」、ハブラシ「システマ」がともに好調に推移し、円貨換算後の全体の売上は前期を大幅に上回りました。

また、韓国では洗濯用洗剤が好調に推移し、円貨換算後の全体の売上は前期を上回りました。

 

4) その他

建設請負事業等を含むその他では、全体の売上高は、前期比35.8%の増加、セグメント利益は、前期比14.4%の増加となりました。

 

 

当期(百万円)

前期(百万円)

増減率

売上高

20,909

15,394

35.8

%

セグメント利益

1,375

1,202

14.4

%

 

 


 


 

 

 

b. 次期(2024年1月1日~2024年12月31日)の業績見通し

<連結>

 

次期予想

当期

増減額

増減率

売上高(百万円)

410,000

402,767

7,232

1.8

事業利益(百万円)(注)

23,000

20,133

2,866

14.2

営業利益(百万円)

27,000

20,505

6,494

31.7

親会社の所有者に帰属する

当期利益(百万円)

19,000

14,624

4,375

29.9

基本的1株当たり当期利益(円)

66.81

51.42

15.39

29.9

 

 (注)事業利益は、売上総利益から販売費及び一般管理費を控除したもので、恒常的な事業の業績を測る当社の利益指標です。

当社グループを取り巻く事業環境は、国内外の消費財市場は堅調に推移するものと見込まれますが、物価上昇による消費者の買い控えや、地政学的要因による原材料価格の上昇、為替変動の影響などがリスクとして想定されます。

 このような中、当社グループは事業ポートフォリオの見直しや事業効率の改善を進めるとともに、各セグメントにおいて以下のような施策に注力し、事業成長と収益性の向上に努めてまいります。

 

一般用消費財事業

オーラルケア分野での新ブランドの導入や、薬品分野での高付加価値の新製品発売など、高収益分野での事業成長に向けた取組みに注力するとともに、低収益分野の見直しを進めます。

産業用品事業

主要分野である二次電池用導電性カーボンを中心とした環境対応素材の事業拡大に取り組み、収益性の向上と、製品を通じたサステナビリティへの貢献に努めてまいります。

海外事業

引き続きオーラルケア、ビューティケアなどパーソナルケア分野の育成に取り組むと併せ、ホームケア分野の収益性向上に努めます。国別には中国を最重点国とするとともに、新規参入国(バングラデシュ、ベトナム)において、早期の事業拡大に向けた取組みを進めてまいります。

 

以上により、次期の連結業績見通しは、売上高4,100億円(前期比1.8%増)、事業利益230億円(同14.2%増)、営業利益270億円(同31.7%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益190億円(同29.9%増)を予想しております。

 

② 財政状態に関する概況

 a.財政の状況

(連結財政状態)

 

当期

前期

増減額

資産合計(百万円)

486,363

469,278

17,084

資本合計(百万円)

298,134

279,168

18,966

親会社所有者帰属持分比率(%)(注1)

57.6

56.3

1.3

1株当たり親会社所有者帰属持分(円)(注2)

985.43

929.72

55.72

 

  (注1) 親会社所有者帰属持分比率は、(資本合計-非支配持分)/資産合計で計算しております。

  (注2) 1株当たり親会社所有者帰属持分は、非支配持分を含まずに計算しております。

 資産合計は、有形固定資産の増加等により、前期末と比較して170億8千4百万円増加し、4,863億6千3百万円となりました。資本合計は、189億6千6百万円増加し、2,981億3千4百万円となり、親会社所有者帰属持分比率は57.6%となりました

 

  b.当期のキャッシュ・フローの状況

(連結キャッシュ・フロー)                                                           (単位:百万円)

 

当期

前期

増減額

営業活動によるキャッシュ・フロー

30,068

41,962

△11,893

投資活動によるキャッシュ・フロー

△34,790

△19,535

△15,254

財務活動によるキャッシュ・フロー

△11,762

△19,821

8,058

換算差額等

931

1,222

△290

増減

△15,552

3,827

△19,379

現金及び現金同等物の期末残高

85,526

101,078

△15,552

 

 

 営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前当期利益等により、300億6千8百万円の資金の増加となりました。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、347億9千万円の資金の減少となりました。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払額等により、117億6千2百万円の資金の減少となりました。

  以上の結果、当期の現金及び現金同等物の期末残高は、前期末に比べ155億5千2百万円減少し、855億2千6百万円となりました。

 

(キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

2019年

12月期

2020年

12月期

2021年

12月期

2022年

12月期

2023年

12月期

親会社所有者帰属持分比率(%)

54.7

53.2

58.8

56.3

57.6

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%)

162.3

166.8

104.4

91.7

76.5

債務償還年数(年)

0.3

0.3

0.6

0.8

1.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ

431.9

719.4

564.8

1,021.4

1,622.7

 

  (注) 親会社所有者帰属持分比率 :親会社の所有者に帰属する持分/資産合計  

      時価ベースの親会社所有者帰属持分比率 : 株式時価総額/資産合計

      債務償還年数 : 有利子負債/営業キャッシュ・フロー

      インタレスト・カバレッジ・レシオ : 営業キャッシュ・フロー/利払い

     ※各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しております。

     ※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。

※営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

 有利子負債は、連結財政状態計算書に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。また、利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。

 

c. 次期のキャッシュ・フローの見通し

営業活動によるキャッシュ・フローでは、税引前当期利益は290億円程度と予想しております。

減価償却費及び償却費は200億円程度となる見込みです。一方、法人税等の支払いなどにより、180億円程度の資金の減少を予想しております。

投資活動によるキャッシュ・フローでは、設備投資による支出は200億円程度を予定しております。

財務活動によるキャッシュ・フローでは、配当の支払いなどにより、100億円程度の資金の減少を予想しております。

以上により、次期の現金及び現金同等物の期末残高は、当期末に比べて10億円程度の増加と予想しております。

 

d. 利益配分に関する基本方針

「第4 提出会社の状況 3配当政策」に記載のとおりであります。

 

 e.生産、受注、販売の実績

 [生産実績]

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

一般用消費財事業

214,278

3.9

産業用品事業

24,253

△1.6

海外事業

135,677

15.5

その他

374,209

7.5

 

  (注) 金額は生産者販売価格で算出しております。

 

 [受注状況]

受注生産は行っておりません。

 

 [販売実績]

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

至 2023年12月31日)

金額(百万円)

前期比(%)

一般用消費財事業

228,679

△0.8

産業用品事業

38,349

1.3

海外事業

134,118

13.6

その他

1,619

△53.4

402,767

3.3

 

  (注)  1 セグメント間の内部取引については、相殺消去しております。

   2 主な相手先別の販売実績および当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

㈱PALTAC

101,628

26.1

98,531

24.5

㈱あらた

43,363

11.1

41,925

10.4

 

 

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析

 ① 重要性がある会計方針および見積り

当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(1976年大蔵省令第28号。以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定により、国際財務報告基準(以下「IFRS」という。)に準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たり採用した会計方針およびその適用方法ならびに見積りの評価については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しているため省略しております。

 

 ② 経営方針、経営戦略等または目標とする経営指標に照らした分析、検討内容

当社グループの経営方針、経営戦略等又は目標とする経営指標は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。経営成績等の状況に関する認識・分析は以下のとおりです。

 

a. 売上の状況

当連結会計年度の売上高は、4,027億6千7百万円(前期比3.3%増、為替変動の影響を除いた実質前期比1.3%増)となりました。売上高は、一般用消費財ではインバウンド需要により薬品が増収となりましたが、二桁増収を目指し、新製品を発売したファブリックケア分野は、わずかな増収に留まりました。海外は主要進出国(タイ、マレーシア、中国、韓国)でそれぞれ大幅に売上を伸ばすことができました。

 

b. 損益の状況

当連結会計年度の損益は、事業利益201億3千3百万円(前期比14.5%減)、営業利益205億5百万円(同28.9%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益146億2千4百万円(同33.3%減)となりました。事業利益は、競争費用の増加や、本社移転に伴う一時費用の発生などで減益となり、営業利益、親会社所有者に帰属する当期利益の減益には、2022年1月に土地の譲渡益を計上した反動も含まれております。

 


 

以上の結果、当連結会計年度のROEは5.4%となりました。

 

 

 ③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析

a. 基本的な考え方

当社グループは、「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」というパーパスを起点とし、2030年に向けた経営ビジョン「次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ」を掲げ、その実現への企業活動を進めております。

資金については、中長期的な成長を継続させるための投資資金の確実な確保と、財務健全性の維持を基本方針とし、成長投資や運転資金の需要に合わせて、機動的に対応することとしています。また、投資や事業成長から創出した資金を、更なる成長に向けて再投資するとともに、マルチステークホルダーへの還元を強化することで、企業価値拡大スパイラルの実現を目指します。

 

b. 資金の需要

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、商品および製品製造のための原材料の購入、製造経費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものです。営業費用の主なものは販売促進費、広告宣伝費および人件費等です。また、当社グループの投資資金需要のうち主なものは、主力の製造拠点である国内工場の設備維持更新に加え、生産能力増強および生産効率向上のための設備投資です。将来の成長に向けた戦略的な資金需要に対しては、財務基盤の安定と資本効率の向上を図りながら対応してまいります。
 剰余金の配当等の決定に関する方針は、継続的かつ安定的な利益還元を行うことを経営の最重要課題と考えております。配当は累進配当を基本とし、連結配当性向30%を目安に、収益の向上を通じて増配を実現してまいります。自己株式の取得は中長期的な成長のための内部留保等を総合的に判断して実施を検討してまいります。内部留保は、企業成長力の強化、永続的な事業基盤の整備を行うことを目的として、研究開発・生産設備等への投資や外部資源獲得に充当してまいります。
 

c. 資金調達

当社グループの運転資金および設備投資資金は、主として営業活動で得られた資金により充当し、必要に応じて金融機関からの借入や社債等による資金調達を行う方針であります。当社は国内格付機関である格付投資情報センター(R&I)から格付を取得しており、本報告書提出日時点における長期発行体格付はA(安定的)となっております。また、当社は複数の銀行との間で借入枠を有しており、緊急時の流動性を確保しております。これらにより、当社グループの事業運営に必要な運転資金や将来の成長に向けた投資資金は適切に調達することが可能であると考えております。
 なお、当社グループでは、国内連結子会社にキャッシュ・マネジメント・システムを導入しており、グループ資金を当社に集中するとともに、各社の必要資金を当社が貸し付けることで、資金効率の向上と支払利息の低減を図っております。
 

 ④ 経営成績等に重要な影響を与える要因

「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、経営ビジョン『次世代ヘルスケアのリーディングカンパニーへ』の実現に向け、「健康」、「快適」、「清潔・衛生」を通じた新たな顧客体験価値を創造し、お客様一人ひとりの「心と身体のヘルスケア」を実現する製品の開発や、未来の生活を提案する研究開発に取り組んでいます。健やかで自立した人生や、清潔で快適な生活の実現、さらに、未来にわたり安心して暮らせる社会を目指し、確かな科学的根拠に基づく研究を進めています。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、11,217百万円であります。

各セグメントの研究開発活動は下記のとおりです。

 

(1) 一般用消費財事業

一般用消費財事業では、オーラルケア、ビューティケア、ファブリックケア、リビングケア、薬品、その他の6つの事業分野に分け、研究開発を行っています。

 

① オーラルケア事業分野では、口腔科学を中心とする研究成果を活かして、ハミガキ、ハブラシ、デンタルリンスなどの開発をしています。

今ある歯を1本でも多く守る「デントヘルス」ブランドから、歯を失う2大リスク歯槽膿漏およびムシ歯を予防し、弱ってきた歯ぐきと、歯を守る高密着処方の薬用ハミガキ『デントヘルス薬用ハミガキDX』を新発売しました。歯周病セルフケアをリードする「システマ」ブランドからは、歯ぐき細胞を活性化し、歯ぐきのコラーゲンを守り、組織を修復して歯周病を防ぐ「システマハグキプラス」シリーズとして、『システマハグキプラスハミガキ』、『システマハグキプラスデンタルリンス』を改良新発売しました。また、「システマ」ブランドに加え、予防歯科から生まれた「クリニカ」、口臭科学から生まれた「NONIO」を含めた各ブランドから、お口に合わせて付替ブラシを選ぶことができる『LION電動アシストブラシ』を新発売しました。すべての付替ブラシはお口の奥まで届きやすい薄型ヘッドで、手みがきによる汚れ除去を音波振動がアシストします。また、質の高い予防歯科の実践をサポートする「クリニカPRO」シリーズから、弾力のあるラバー毛が、しなりながら歯面に密着して歯垢をぬぐい取り、ツルツルの仕上がりになるハブラシとして『クリニカPROハブラシラバーヘッド』を新発売しました。さらに、2023年に始動した、子どもの成長段階に合わせたきちんとした歯みがき習慣づくりや、良い歯ならびの土台づくりを支援するオーラルケアプログラム「おくち育」から、歯ならびの土台づくりが重要な6~12歳の生え変わり期の子ども向けに、噛む力を育む『噛もっと!グミ』、噛む力をチェックする『噛もっと!ガム』、おくち育会員サイトでの『歯ならびチェック』の3点がセットになった『おくち育噛もっと!』を専用ECサイトより新発売しました。

歯科医院向け製品では、ラウンド毛とスーパーテーパード毛のダブル植毛が歯間部・咬合面、さらに臼歯部まで届き、高いプラーク除去効果を発揮する歯ブラシ『Check-Up歯ブラシstandardタイプ』を発売しました。

 

② ビューティケア事業分野では、皮膚科学、界面科学を中心とする研究成果を活かして、ハンドソープ、ボディソープ、制汗デオドラントなどを開発しています。
 「キレイキレイ」ブランドからは、より抗菌成分の滞留性を高めた『キレイキレイ薬用泡ハンドソープ』を改良新発売しました。また、吸着保湿処方で肌にうるおいを与えるボディソープ「hadakara」ブランドからは、肌にうるおいを与えつつ、透明感のある肌に導く『hadakaraボディソープ 泡で出てくるタイプ ヒーリングフルーティの香り』、夏に向けて濃密泡がもこもこ増え続けて全身が気持ちよく洗え、保湿しながらもひんやり洗い上がる『hadakaraボディソープ 泡で出てくるひんやりタイプ クールアクアミントの香り』を数量限定発売しました。

 

 

③ ファブリックケア事業分野では、界面科学を中心とする研究成果を活かして、衣料用洗剤、柔軟仕上げ剤などの製品開発をしています。
 洗濯用洗剤ブランド「NANOX」から、ニオイ、汚れ、衣類の色変化(黄ばみ、黒ずみ、色あせ)を1本で全部断つ高濃度コンプリートジェル『NANOX one』を新発売しました。また「アクロン」ブランドから、すすぎゼロ洗浄で「キレイ」と「時短」、「ECO」を実現した柔軟成分入り洗濯用洗剤(おしゃれ着用)『アクロン スマートケア』を新発売しました。柔軟剤ブランド「ソフラン」から、透明が生み出す新感覚の柔軟剤『ソフラン エアリス』を新発売しました。また、『ソフラン アロマリッチ』の本体ボトルが、再生プラスチックの活用とキャップの軽量化による石油由来プラスチック使用量削減により、環境負荷を低減した点が評価され日本包装技術協会 木下賞・研究開発部門を受賞しました。さらに、花王株式会社と協働で実施しているリサイクリエーションにおいて、『トップ スーパーNANOX ニオイ専用 つめかえ用超特大』で採用した『おかえりつめかえパック』が、公益社団法人日本包装技術協会 会長賞(ジャパンスター賞)、およびアジア包装連盟アジアスター賞を受賞しました。
 

④ リビングケア事業分野は、界面科学を中心とする研究成果を活かして、台所用洗剤、住居用洗剤などの製品開発をしています。
 台所用洗剤分野では、「CHARMY」ブランドから、除菌性能と圧倒的な水切れによる速乾性能はそのままに、グラスが乾いた後の白い水あかがつきにくい手洗い用食器用洗剤『CHARMY Magica 速乾+(プラス) カラッと除菌』を改良新発売しました。また、住居用洗剤分野ではトイレ用液体洗浄剤『ルックプラス泡ピタ洗浄スプレー』に活用された特許が令和5年度関東地方発明表彰「発明奨励賞」を受賞し、便器のフチ裏掃除に対して“こすらず洗い”を謳える洗浄力を高く評価されました。
 

⑤ 薬品事業分野では、製剤技術や薬効・薬理技術を中心とする研究成果を活かして、人々のセルフメディケーション意識を支える一般用医薬品などの開発をしています。

乾燥肌治療薬「フェルゼア」ブランドでは、年齢とともに乾燥など様々な肌悩みを感じるようになった女性に向けて、肌の表面だけでなく、乾燥肌を土台から治す濃密泡タイプの乾燥肌治療薬『フェルゼアプレミアム HPブーストフォーム』を新発売しました。また、解熱鎮痛ブランド「バファリン」に配合されている解熱鎮痛成分アセトアミノフェンによる消化管傷害に対する抑制作用を見出し、第50回日本潰瘍学会にて準学術奨励賞を受賞しました。

 

⑥ その他の事業分野では、ペット事業において、当社獣医師、社外獣医師との協働による動物行動学、口腔科学の研究とライオングループ内の技術を活かしてペットサニタリー用品、オーラルケア用品、ボディケア用品などの開発を行っています。

サニタリー分野では、動物行動学に基づくサイズ設計の「獣医師開発 ニオイをとる砂専用 猫トイレ」から、新色「ナチュラルブラウン」/「ナチュラルグレー」2品を発売しました。

オーラルケア分野では、ペットの好きな香りで歯みがき実施をサポートする「ペットキス 歯みがきジェル アップルの香り」を発売しました。

ボディケア分野では、やさしい泡でしっかり洗える「泡シャンプーシリーズ」3品、独自のフラワー型クッション構造を持つ「イヌハピブラシ」、ボディに広げてふき取るだけの「水のいらない泡リンスインシャンプー」2品を発売しました。

空間分野では、おそうじシリーズをリニューアル、パッケージも一新し「おそうじシリーズ(犬用、猫用)」6品を発売しました。

獣医品では、動物病院向け製品「ペットキッス・ベッツドクタースペック・オーラルケアサプリメント・お口の健康サポート」を発売しました。

 

一般用消費財事業に関わる研究開発費は、9,240百万円であります。

 

 

(2) 産業用品事業

 

① ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ㈱は、界面科学、合成技術を中心とする固有技術を生かし、導電性材料、ゴム用添加剤、機能性ポリマー、繊維加工薬剤、脂肪酸窒素誘導体、土木建築用途を含むインフラ薬剤などについて、お客様に密着した開発を行っております。当連結会計年度の主な研究成果は次のとおりです。

導電性材料では、主力商品である「ケッチェンブラック(カーボンブラック)」の応用研究、新規導電性炭素材料およびこれらの複合材料の開発を行っています。特に「電気自動車用二次電池向けカーボン」の開発に注力し、その普及を通じてCO2排出削減へ貢献するため供給量拡大に取り組んでおります。

ゴム用添加剤では、タイヤへ直接機能性を付与する内部添加剤やタイヤ製造現場で使われる防着剤の開発を行っています。なかでもSDGsに繋がるエコタイヤの製造に必要なシリカ分散剤や製造環境美化に繋がる液状防着剤につきましては、国内外のお客様からご好評を頂いており採用が拡大しております。

機能性ポリマーでは、スマートフォン用の保護フィルムやポップラベル用の粘着剤、また繊維用の耐久帯電防止剤、耐久撥水剤の開発を行っています。同分野におきましても、「環境対応型製品」の開発に向け、フッ素化合物の不使用、バイオマス由来基剤の採用など、原料面からのアプローチにも注力しております。

脂肪酸窒素誘導体では、アミン化合物やその誘導体を中心に植物系原料への転換を進めると共に、特徴ある除菌・除ウイルス効果を持つ基剤の提供により、お客様の事業を通じた循環型社会の構築と安心・安全なより良い生活習慣づくりへの貢献を進めております。

インフラ薬剤では、地盤改良薬剤やアスファルト舗装用薬剤など、工事現場の施工性向上ならびに施工時の使用エネルギーや廃棄物の低減に貢献する薬剤を開発し、市場展開を進めております。

 

② 飲食店や集団給食などの外食産業、医療・介護施設、クリーニングや食品工場など、業務用の様々な場面で使用される洗浄剤等の製品開発と製造販売、ならびにこれらのお客様の食の安全・安心をサポートする衛生診断をはじめとする総合衛生ビジネスをライオンハイジーン㈱が行っております。

当連結会計年度の主な成果といたしましては、食品工場分野では、次世代のカット野菜殺菌システム「野菜キレイSaOシステム」を新発売いたしました。「野菜キレイSaOシステム」は、野菜をカットしながら殺菌する新しいシステムで、カット野菜の品位の保持や製造工程の短縮化に貢献いたします。実際にシステムを導入したカット野菜製造業者の方から、ご好評をいただいております。

また、頑固な油汚れを発泡洗浄で簡単に落とす「リッチフォームGB」を新発売いたしました。発泡洗浄による洗浄作業の平準化や時間短縮にお役立ていただいております。

衣料用の分野では、3つの当社最新技術を備え「コンプリート洗浄」を実現する「NANOX one PRO 4L」。新配合成分により「すすぎ0回の洗浄」ができる柔軟成分入り洗濯用洗剤「アクロン スマートケア4L」。さらに、咲きたてアロマ製法で香りが持続するだけでなく、防臭・抗菌効果で衣類につく嫌なニオイを抑える「ソフランアロマリッチ キャサリン4L」を新発売いたしました。介護施設やサービス業などの幅広いビジネスユーザーで使用する衣料の洗濯にお役立ていただいております。

サニテーションの分野では、手指衛生の新製品として「キレイキレイ薬用泡ハンドソープ フローラル10L」と手指消毒剤の「サニテートAハンドミスト10L」を新発売し、大容量のニーズにお応えいたしました。さらに「サニテートAハンドミスト」は、商品やサービスが日常時および非常時の価値を共に有していることを審査し、証明する制度の「フェーズフリー認証」を取得いたしました。

今後ともお客様のニーズや社会的要請に対応したソリューションを提供し、ビジネスユースを通じて、衛生的な環境作りと食の安全に貢献して参ります。

 

産業用品事業に関わる研究開発費は、1,190百万円であります。

 

 

(3) 海外事業

海外事業では、コロナによる市場縮小からの回復傾向や、円安、原材料の高騰による影響などの変動要素が多いアジアの消費財市場に対して、変化に対応しながら成長加速を目的として積極的に新製品の発売や製品開発体制の強化を行いました。

地域別・事業別の主要な新製品・改良品は以下の通りです。

北東アジア地域では、中国の主力分野であるオーラルケア分野で「クリニカ」ブランドの製品群を積極的に拡大しました。同ブランドの基本機能である「ムシ歯予防」機能を維持したうえで、中国市場専売品として「酵素+酵母入りハミガキ」および「酵素+知覚過敏ハミガキ」を日本の当社工場生産品として発売した他、当社中国現地法人の青島工場生産品で「酵素+美白ハミガキ」も発売しました。今後も2つの生産拠点を効果的に活用して事業成長を支えていきます。また口臭予防ブランドのNONIO洗口液では、中国で、刺激の少ない「フルーティ洗口液」を、香港では「ガム・トータル洗口液」を追加し拡大する洗口液市場での地位を強化しています。衣料用洗剤分野では、中国、香港で「NANOX」ブランドより、アジアで市場拡大中のカプセル型洗剤を発売しました。この他、韓国では、点眼剤事業で「スマイル(韓国名アイミル)40EXゴールドコンタクト」を発売しました。韓国初のビタミンA配合コンタクト用点眼剤としてお客様に好評を頂いています。

なお中国では、上海にて当社の100%子会社「獅王(上海)創新科技有限公司」を2023年5月に設立しました。2024年1月より本格稼働し、製品開発スピード向上、付加価値製品を生み出す技術開発を進め、中国での更なる事業拡大を目指します。

東南・南アジア地域では、マレーシアの主力分野であるホームケア分野で、衣料用粉末洗剤「トップ・マジカルインフュージョン」を発売しました。残香性が高い機能性香料を活用し、発売当初より好評を頂いています。また「トップ・スーパーハイジニック(粉末洗剤)/ トップ・オドーバスター(悪臭除去機能の液体洗剤)」を改良発売、銀イオンを活用し、汗臭や頑固な汚れ落ちを強化しました。今後もマレーシアで最も支持をいただいているブランド「トップ」の市場地位強化に取り組みます。この他、バングラデシュにおいて、衣料用洗剤ブランド「JET」を新酵素配合により洗浄力を高め改良新発売、シンガポールでは5つの衛生機能を1つにしたカプセル洗剤「NANOX 凄ワザ」を新発売しました。オーラルケア分野では、日本で先行した薄型・大き目ヘッドの「システマ」極細毛ハブラシの展開を拡大、タイで「スリムテック XL」を、マレーシアで「超濃密植毛ガムプロテクト」を発売しました。またインドネシアでは、ハミガキにもハラル製品を求めるお客様が多いことに着目し、伝統的な清掃具のひとつである歯木(シワック)と緑茶の香味が続く「バラカット」ハミガキを発売、現地特有のお客様ニーズに応えています。

海外事業では、今後も日本の先進技術を応用して、海外のお客様に向けた利便性と嗜好性の高い製品を展開して参ります。

 

海外事業に関わる研究開発費は、786百万円であります。

なお、海外事業に関連する日本国内での研究開発費は、一般用消費財事業に含まれております。