文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループにおいては、2023年2月に2023年から2025年までの3年間を対象とするローリング中期経営計画「T-2025」を策定・開示し、「主力事業の成長軌道回帰」「事業ポートフォリオの最適化(選択と集中)」「サステナビリティ経営基盤構築」の3つの基本方針を掲げ、事業活動を展開してまいりました。主力事業である黒鉛電極やカーボンブラックを中心に、原材料価格等の原価上昇を売価に転嫁することにより適正利潤確保を図るとともに、将来の需要拡大を睨んだ生産性の向上と生産能力の増強も着実に進めたものの、対面業界である鉄鋼・半導体の市況低迷や競争激化等により、T-2025初年度の2023年の実績については、当初想定した売上高4,100億円、営業利益450億円を下回り、売上高3,639億4千6百万円営業利益387億2千8百万円という結果となりました。
黒鉛電極事業は、世界的な鉄鋼景気の減速と電炉稼働率の低下による欧州を中心とした価格競争の激化や、安価な中国産黒鉛電極のアジア市場への流入により市場価格が下落する中、コスト削減や売価の維持・引き上げに取り組んできましたが、市況悪化を打ち返すには至らず、成長軌道回帰は道半ばという結果になりました。カーボンブラック事業は、半導体不足などサプライチェーンの混乱で低迷した自動車生産が着実に回復する中、環境設備投資等に着実に取り組む一方、原価上昇分の価格転嫁に取り組んだことにより、増収増益を果たし、当期当社業績を支えました。
2021年11月に決議した「事業ポートフォリオマネジメント基本方針」に基づき、自社の資本コストを踏まえた収益力・資本効率性の目標設定とモニタリングに加え、長期ビジョンとの整合性や中長期的な成長等の視点も加味して、適切に事業ポートフォリオの分析・評価を実施しております。成長事業であるファインカーボン事業や工業炉及び関連製品事業においては、将来の産業構造の変化も見据えた中長期的な成長を目指して、生産能力の増産投資を着実に実施しています。
カーボンニュートラルの実現に向け、2022年1月に発足したカーボンニュートラル推進委員会を中心に、2050年カーボンニュートラル実現を果たすべく、2030年にはCO2排出量の25%削減(2018年比)を目指し、社内外関係者と協働した関連技術の探求・調査にも取り組んでいます。また、2023年度より、役員報酬にサステナビリティ・パフォーマンスを連動させることとする一方、従業員エンゲージメント・サーベイを活用したエンゲージメント向上策にも取り組んでいます。
2030年の長期ビジョン実現に向け、当社は、新たなローリング中期経営計画「T-2026」を策定・開示しました。「主力事業の収益基盤強化」「事業ポートフォリオマネジメントの高度化」「サステナビリティ経営の推進」の3つの基本方針を掲げ、取り組んでまいります。
「主力事業の収益基盤強化」のポイントは低迷を続ける黒鉛電極事業であり、抜本的な構造改革を断行し、事業体質の改善を図ります。
「事業ポートフォリオマネジメントの高度化」に関しては、資本コストや株価を意識した経営の実現に向け、事業の成長性と資本収益性を踏まえた「選択と集中」に取り組みます。
「サステナビリティ経営の推進」については、喫緊のカーボンニュートラル対応を推進する一方、人的資本を重視した経営にも取り組んでいきます。「サステナビリティ経営の推進」については、喫緊のカーボンニュートラル対応を推進する一方、人的資本を重視した経営にも取り組んでいきます。
これらの取り組みを通じ、2026年の売上高4,580億円、営業利益530億円、ROS12%を目指してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは次の通りです。
なお、文中の将来に関する記載事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
東海カーボングループは、ステークホルダーとの「信頼の絆」を基本理念に掲げ、企業活動を行っています。ステークホルダーからの信頼に確実に応えるべく、ESG(環境、社会、ガバナンス)に十分に配慮して経営戦略を立案し、事業を通じて社会課題の解決に取り組むことで、持続的な企業価値向上を図るとともに持続可能な社会の実現に貢献します。
①ガバナンス
2022年1月、取締役会の任意の諮問委員会としてサステナビリティ推進委員会を設置しました。社長を委員長とし、総務・法務部管掌役員、経営企画部管掌役員、人事部管掌役員、開発戦略本部長、技術本部長、主要4事業部長で構成され、原則四半期毎に開催することとしています。同委員会は、サステナビリティに関する重要事項について討議し、取締役会に付議・報告するほか、統合報告書作成等のサステナビリティに関する情報開示の統括も担っています。
また、気候変動に関しては、2021年5月に発足したカーボンニュートラル推進プロジェクトを、2022年1月に、社長を委員長とするカーボンニュートラル推進委員会として委員会化することにより、体制を強化しました。当社カーボンニュートラル対応の司令塔として、カーボンニュートラルに関する全社方針・計画を起案するとともに、産官学連携による社外第三者との共創も活用した取り組み状況をモニタリングし、取締役会に付議・報告を行っております。
②リスク管理
当社グループは、取締役会の任意の諮問委員会としてリスク・コンプライアンス委員会を設置しています。同委員会では、顕在化する可能性と顕在化した際の財務影響の観点から、気候変動リスクを含む重要リスクを評価・選定した上で、当該重要リスクへの対応状況を含めて、取締役会に報告しております。
サステナビリティ推進体制図

①気候変動対応
a. 戦略
当社グループは、気候変動への対応を経営の重要課題として認識し、2021年11月、取締役会決議を以て、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下、TCFD)への賛同を表明しました。
当社グループの気候変動におけるリスクと機会をより適切に把握するため、2020年12月にTCFD提言の要求項目であるシナリオ分析によるビジネスインパクトの初回の算定を実施し、2023年5月に見直しを実施しました。気候変動が事業に及ぼす影響を特定し、対策を進めています。
(シナリオ分析)
(4℃シナリオ)物性リスクは大きく、移行リスクは相対的に小さい
(1.5℃シナリオ)移行リスクは大きく、物理リスクは相対的に小さい
b. 指標と目標
(目標)
当社グループは、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2030年までにCO2排出量25%削減(2018比)を目指します。

(実績)
東海カーボングループの2023年GHG排出量は、再生可能エネルギーの活用や環境負荷の低い燃料への転換等により、2018年比約28%削減となりました。現在検討を進めている製品リサイクルに向けた研究や革新技術開発・導入、お客様・お取引先様・業界団体等との協働等を更に加速させ、目標達成に向け取り組んでいきます。
単位:千tCO2e
(※)2023年実績は、速報値。第三者保証取得後の値については、2024年6月頃、統合報告書およびホームページにて掲載予定。
[対象範囲]
[集計対象期間]
1月~12月
[算出方法]
CO2、CH4、N2Oの各ガスの地球温暖化係数を用いてCO2相当の排出量を計算している。HFCs、PFCs、SF6は排出量が微量であるため、集計対象外としている。
Scope1:企業活動による温室効果ガスの直接排出量とし、エネルギー起源GHG排出量および非エネルギー起源GHG排出量(工業プロセスによる排出)を集計。なお、非エネルギー起源GHG排出量は、原則として原料・副資材の使用量と製品・廃棄物の収支より算出。
Scope2:
• 企業活動のエネルギー利用にともなうCO2間接排出量。
• GHG プロトコルのマーケット基準手法を採用。国内は地球温暖化対策の推進に関する法律に基づく電気事業者別の排出係数を利用。海外は電気事業者が公表している排出係数(但し、一部の工場はIEAまたは国・地域で公表している最新の排出係数)を利用。
②人的資本
a.戦略
(人材の育成に関する方針)
当社グループの企業理念は「信頼の絆」、行動指針は「誠実」「変革」「挑戦」「共創」「スピード」です。当社グループは、これら企業理念や行動指針に共鳴頂ける人材を採用し、加速度的に変化する時代の中で、社内外の、多様な価値観やバックグラウンドを持つ仲間たちと積極的に協働して、スピード感を持って果敢に変革に挑戦することによって、持続可能な社会の実現に貢献できる人材を育成していきます。
(社内環境整備に関する方針)
当社グループは、長期ビジョン「先端素材とソリューションで、持続可能な社会の実現に貢献する」に向けて、多様な価値観やバックグラウンドを持つ社員が切磋琢磨し成長していける、自由闊達で風通しのよい組織・カルチャーを醸成していきます。
働き方改革を推進し、多様な人材を惹きつける、適切な人事制度・競争力のある処遇を実現する一方、社員の成長をサポートすべく、社員のステージや特性・希望を踏まえた、様々な研修プログラムを用意しています。社員の人権を最大限尊重し、ハラスメントは許しません。「東海カーボン健康経営宣言」を踏まえ、社員とその家族の健康を重視した経営に努めるとともに、年金制度や従業員持株会制度を通じて、社員の資産形成もサポートしていきます。
b.指標と目標
当社グループは人材の育成に関する方針および社内環境整備に関する方針について、目標を設定し進捗を管理しています。2024年度の目標および2023年度の実績は次の通りです。
業務運営上の損失の危険を回避するため、経理・財務管理、取引先管理、輸出管理、環境・防災管理、品質管理、情報管理及び投資管理等に関連する規程・規則に則り、日常的なリスク管理を各担当部署が実施するとともに、原則四半期毎に開催されるリスク・コンプライアンス委員会にてリスク及びコンプライアンスに関する重要事項について討議し、その結果を踏まえ、関係室部等に対する助言、取締役会他経営に対する報告・提言を行うことにより、リスクの把握と改善に努めております。また、子会社管理規程に基づき、当社及び当社グループ会社に著しい損害を及ぼす可能性のある事項が当社関係部署及び当社監査役に報告される体制を構築しております。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、主として次のようなものがあります。なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日(2024年3月28日)現在において当社グループが判断したものであります。
2.個別リスク項目
大地震、津波、台風、洪水等の自然災害や感染症の流行、戦争・テロ行為等は、当社事業の継続に影響を及ぼしかねない重大なリスクです。当社グループでは、これらの影響を低減するため、事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)策定をはじめとする事業継続マネジメントに取り組み、適切な保険を付保するとともに、各国の情勢や安全に関する情報収集等を進めておりますが、こうした取り組みが奏功しない、もしくは不十分である場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
2016年開催の国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)において「パリ協定」が採択、各国で批准されたことを機に、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出削減を目的とした取り組みが世界的に進められ、既に、一部の国・地域では、炭素税等の温室効果ガス排出量削減策が導入されております。当社グループは、2022年1月にカーボンニュートラル推進委員会を設立し、当社グループカーボンニュートラル対応の司令塔として、全社方針・戦略を起案するとともに、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、課題や取り組みを可視化し一元的に管理していますが、当社グループの温室効果ガス排出量削減の取り組みが奏功しない、もしくは不十分である場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、日本のみならず、アジア、欧米において事業活動を展開しておりますので、世界経済の動向は当社グループ業績に影響を及ぼします。ウクライナ危機の長期化や中東情勢悪化、中国経済の下振れ、米中の対立、保護主義的通商政策の拡がりとサプライチェーンの混乱、気候変動対応を巡る混乱、米国大統領選等、世界経済を巡る不確実性が顕在化していますが、これらが一層悪化する場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、原材料の輸入、製品輸出等、国際的な事業活動を行っており、その取引において外国通貨を用いていることから、為替レートの変動が当社グループ業績に影響を与えます。また、当社の海外における連結子会社・持分法適用関連会社の収益や費用については期中平均相場により円換算されており、為替相場の変動が、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループにおいて、特に影響の大きい、米ドル・ユーロに対する円高は、グループ業績に悪影響を及ぼし、円安は好影響を及ぼす傾向にあります。
なお、為替レートの変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。
当社グループは、当社グループとして必要な資金を金融機関からの借入の他、社債、コマーシャル・ペーパーの発行により調達しております。資金調達に際しては金融市場の動向を睨みながら資金繰り管理や安定的な資金確保に努めております。しかしながら、金融環境の急激な悪化により、資金調達の安定性が損なわれたり、著しく不利な資金調達を余儀なくされたりする局面においては、当社グループ業績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、市場金利の変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。
当社グループは、事業機会の創出・維持や取引・協業関係の構築・維持・強化等を通じ、中長期的な企業価値向上が図れると判断した場合に、取引先等の株式を取得・保有することがあり、定期的にその効果検証を行うことにより、保有方針を見直すこととしております。しかしながら、かかる有価証券には、市場性のある株式も含まれるため、内外経済及び株式市場の環境悪化や投資先の経営状況悪化により株価が下落した場合には、保有株式に評価損が発生する可能性があります(「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (5) 株式の保有状況」参照)。
なお、投資有価証券の価格変動リスクについては、VaR(Value at Risk)を用いて、統計的な手法による最大損失額を定期的に計量し、モニタリングしております。
当社グループは、各事業分野において、様々な企業との厳しい競争環境下にあり、この結果、多くの製品は価格低下圧力に晒されております。当社グループとしては、市場ニーズの把握、技術力の追求、品質管理の徹底、原価低減や効率性の向上等の努力を重ねていきますが、十分な成果が上がらない場合には、マーケットシェアの低下、販売価格の引き下げ等による売上高と利益率の低下を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、海外市場での事業拡大を戦略の一つとしておりますが、国際的な事業展開においては、経済・為替の不確実性や政情不安、法制・規制の想定外の変更、宗教・文化の相違、現地での労使問題等、国内事業と異なる様々なリスクが伴います。当社グループがこのようなリスクに適切に対処できない場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループにとって、良質な原材料をタイムリーかつ安定的に入手することが不可欠であることから、当社グループは、信頼のおけるサプライヤーを複数選定するとともに、新規サプライヤーの開拓を継続して行っています。しかし、災害、事故、戦争・テロ、感染症の流行等の不測の事態等により、供給が不足または中断した場合には、当社グループの生産に悪影響が生じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、需給の逼迫や投機目的の売買等により、当社グループが調達している原材料の価格が高騰し、生産性向上等の内部努力や売価への転嫁等により吸収できない場合には、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、持続的な企業価値向上のためには研究開発活動は不可欠との認識の下、富士研究所を中心に、次世代に向けた新製品や新規技術の開発を進めております。また、既存事業の製品については、顧客ニーズに適合する新品種の開発や、さらなる品質の向上、画期的なコストダウン等を各事業部の研究所を中心に推進しております。しかしながら、市場トレンドの変化によるニーズの衰退や脱炭素対応の失敗、同業他社の技術革新に対抗できる技術を速やかに開発できなかった場合には、当社グループの成長性や収益性を低下させ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、成長戦略の一環として、企業買収、業務提携、戦略的投資につき、積極的に取り組む方針としております。過去に実施した大型M&Aのシナジー早期現出に向け、生産技術の共有、人材の交流、現地経営陣の監督徹底等に取り組み、経営統合を進めております。しかしながら、経営環境・前提条件の変化等の理由により、当初想定した結果が得られない可能性もあり、予測される将来キャッシュ・フローの低下により、のれんの減損が必要になる等、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの売上の多くは、自動車業界、鉄鋼業界、半導体業界に集中しております。こうした特定業界に依存する体質を改善するため、主にアルミニウム市場を対面業界とする炭素黒鉛製品メーカー2社を買収、2020年7月にはスメルティング&ライニング事業部を新たに設置し、ポートフォリオの分散化を図っております。しかしながら、当社グループの対面業界の景況が大幅に悪化し、ポートフォリオの分散化が十分に機能しないような場合には、売上高と利益率の低下等を通じ、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループの競争力と将来性は、マネジメントはもちろん、研究開発、技術、製造、販売、企画、管理等、各部門における専門的知識や技能を持った有能・多様な人材の確保・育成、定着が重要な課題となります。しかしながら、近年は人材の流動化、少子高齢化による労働人口の減少等により人材の確保に係る競争も厳しくなっております。当社グループは多様な人材の積極的な採用、働き方の柔軟性・多様性を前提とした職場環境の整備、人事制度の見直し、新たな研修制度の導入、実施等を通じて有能・多様な人材の確保・育成、定着に取り組んでおりますが、想定どおりに進まない場合や人材の社外流出を防げないような場合には、業務遂行に制約を受けることにより、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは国内外において、各種の法令・規制に則り、事業活動を行っております。グループ全体として法令遵守の徹底を図っておりますが、法規制には、商取引法、独占禁止法、労働法、証券関連法、知的財産権法、環境法、税法、輸出入関連法、刑法等に加えて、事業活動や投資を行うために必要とされる様々な政府の許認可規制等があります。今後、新たな法規制の導入や法規制の想定外の変更により、事業活動に対する制約、コストの増加等を通じ、当社グループ業績に悪影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、法令遵守が事業活動の基盤であることを認識し、国内外の役員・従業員に対し、様々な形で法務・コンプライアンス教育を実施しておりますが、当社グループがこれらの法規制に抵触したと当局が判断した場合には、課徴金等の行政処分、刑事処分、訴訟等の対象となり、当社グループの社会的評価が低下し、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが事業活動を行う国において、会計制度や税制が大きく変更され、または当社グループに不利な解釈や適用がなされたりした場合には、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、知的財産を重要な経営資源と位置付け、知的財産管理に関する専門部署を設け、第三者からの知的財産権侵害の発見と保有する知的財産権の管理保護に努めております。しかしながら、見解の相違等の理由により、第三者が特許等への抵触を理由とした差止訴訟や損害賠償請求訴訟等を提起した場合や、第三者による知的財産権侵害により当社グループの競争優位性が脅かされた場合には、係争に多額の費用等が必要となる可能性や当社グループの評判、優位性を損ねる可能性があり、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、製造業の基本である労働安全と設備事故防止に注力し、全拠点で安全最優先での事業活動に努めております。労働災害は、労働者の健康や人命に関わる重大なリスクであり、当社グループは、安全活動をグローバルで推進し、拠点毎に具体的、継続的かつ自主的な活動を安全衛生計画として組み込み、労働災害の防止と労働者の健康増進、快適な職場環境の形成等、安全衛生水準の向上に努めております。製造設備の停止や製造設備に起因する事故等の発生は、事業活動に支障をきたす重大なリスクであり、潜在的なマイナス要因を最小化するため、すべての製造設備において定期的な点検・メンテナンスを行っております。しかしながら、不測の事態や不慮の事故等により、操業の中断・縮小、施設等の損害、多額の復旧費用等により、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、主要な生産拠点において、品質マネジメントシステム(ISO9001)を取得し、品質管理に関する規定、規格及び作業標準等を定め、品質チェック体制を構築し、品質監査を行う等グループをあげて品質向上を継続的に取り組み、製品の品質に万全を期すよう努めております。製造物責任賠償及び一部製品の製品瑕疵に起因して被る損害については保険に加入しておりますが、予測し難い原因により重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起等が発生した場合には、多額のコスト増大や、当社グループの社会的評価の低下とそれによる売上収益の減少が予想されることから、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、デジタル技術活用による製品やサービス、ビジネスプロセスの変革と、新たな価値の創出に取り組んでおります。しかし、取り組みの遅延やIoT、AI等のデジタル技術の進歩に適切に対応できない場合には、当社グループの競争力が低下し、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、事業遂行に当たり様々なシステムを構築、運用するとともに、生産技術・研究開発・調達・販売等の機密情報を保有し、その重要性は非常に高まっております。当社グループでは、IT、情報システム及び情報通信ネットワークを厳格に管理し、漏洩や紛失を未然防止する対策及びセキュリティインシデント発生時に影響を最小限に抑える対策を講じております。しかしながら、災害やサイバー攻撃等外的要因や人為的要因等により、障害等が生じると、重要な業務やサービスの停止、機密情報・データや個人情報の盗取や漏洩等のインシデントを引き起こし、事業活動の継続に支障をきたす等、当社グループ業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」をいう。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(2023年1月1日から2023年12月31日まで)の世界経済は、年初、供給制約の緩和や中国経済再開等のプラス要因が目立ったものの、その後は、欧米の高インフレ・高金利の持続や中国経済の減速等を受け停滞感が強まる展開となりました。ウクライナ危機の長期化や中東情勢悪化、米中対立等の地政学的緊張の高まり、中国経済の下振れ、インフレ再燃などがリスク要因となり、世界経済の先行きに係る不確実性は高まりました。
このような情勢下、当社グループにおいては、2023年2月に公表したローリング中期経営計画「T-2025」の中で、「主力事業の成長軌道回帰」「事業ポートフォリオの最適化(選択と集中)」「サステナビリティ経営基盤構築」の3つの基本方針を掲げ、2025年の定量目標として、売上高4,840億円、営業利益690億円、ROS14%、EBITDA1,130億円の達成を目指してまいりました。主力事業である黒鉛電極やカーボンブラックを中心に、原材料価格等の原価上昇を売価に転嫁することにより適正利潤確保を図るとともに、将来の需要拡大を睨んだ生産性の向上と生産能力の増強も着実に進めてきました。またカーボンニュートラルの実現に向け、2022年2月に発足したカーボンニュートラル推進委員会を中心に、連結ベースでのCO2排出量の削減を進める一方、関連技術の探求・調査にも取り組みました。
この結果、当連結会計年度の売上高は前期比6.9%増の3,639億4千6百万円となりました。営業利益は前期比4.6%減の387億2千8百万円となりました。経常利益は前期比2.2%減の416億7百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は前期比13.6%増の254億6千8百万円となりました。
セグメント別の経営成績は下記のとおりです。
[黒鉛電極事業]
北米を中心に大口径電極が堅調に推移しましたが、欧州ではエネルギーコストの高止まりと稼働率低下により製造コストが増加する一方で、同地域の鉄鋼生産の低迷を受け、販売量が落ち込む中、電極市況も軟化したため棚卸資産の評価損を計上するに至りました。
この結果、当事業の売上高は前期比1.0%増の602億3千5百万円となり、営業利益は前期比90.6%減の7億5千2百万円(前期は80億3千2百万円の営業利益)となりました。
自動車生産の回復に伴い新車用タイヤ需要は増加していますが、補修用タイヤ需要は顧客の在庫調整により減少したため、販売数量は前期比で減少しました。販売価格については、米国を中心に引き上げられ、環境設備投資の減価償却費負担の一部が補填されたことで前期比増収増益となりました。
この結果、当事業の売上高は前期比7.2%増の1,484億2千3百万円となり、営業利益は前期比73.5%増の213億3百万円となりました。
[ファインカーボン事業]
スマートフォンやパソコン需要低下による顧客の在庫調整及び米国の対中半導体規制長期化の影響を受けメモリ半導体市場向けの製品需要が停滞しました。これによりメモリ半導体向けのエッチング装置にて使用されるSolid SiC製品の販売が落ち込み、パワー半導体向け製品や一般産業向け需要の堅調さにより一部補填されたものの、前期比減収減益となりました。
この結果、当事業の売上高は前期比8.2%減の453億1千9百万円となり、営業利益は前期比28.4%減の106億1千7百万円となりました。
カソードブロックのユーザーであるアルミ電解炉事業者の操業率は、エネルギーコストの違いで地域的な濃淡が出ているものの、特に新興国向けの出荷が堅調に推移しました。原材料やエネルギーコストは大きく上昇したものの、販売価格へ転嫁することで採算の維持に努めました。
この結果、当事業の売上高は前期比27.0%増の828億2千万円となり、営業利益は前期比71.3%増の23億5百万円となりました。
工業炉及び発熱体の売上高及び営業利益は、主要顧客であるエネルギー関連業界及び電子部品関連業界の在庫調整やプロジェクトの遅れ等により前期比減となりました。
この結果、当事業の売上高は前期比4.0%減の156億1千4百万円となり、営業利益は前期比13.7%減の38億6千万円となりました。
摩擦材
二輪については北米・欧州を中心に堅調に推移したものの、建機、電磁向けで中国の需要低下に伴い減販となり減収となりました。
この結果、摩擦材の売上高は前期比3.9%減の89億9千5百万円となりました。
当社材が採用されているEVおよびESS(Energy Storage System)の一時的な販売回復がありました。
この結果、負極材の売上高は前期比27.3%増の24億4百万円となりました。
不動産賃貸等その他の売上高は、前期比2.8%減の1億3千2百万円となりました。
以上により、当事業の売上高は前期比1.3%増の115億3千2百万円となり、営業利益は前期比17.3%増の12億9千9百万円となりました。
(資産の部)
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末比635億4千万円増の6,400億5百万円となりました。
流動資産は、現金及び預金や棚卸資産等の増加により、前連結会計年度末比161億9千8百万円増の2,628億9千万円となりました。固定資産は、有形固定資産や、投資有価証券等の増加により、前連結会計年度末比473億4千1百万円増の3,771億1千4百万円となりました。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末比43億5百万円増の2,799億2百万円となりました。流動負債は、1年内返済予定の長期借入金や短期借入金等の減少により、前連結会計年度末比97億2千4百万円減の1,369億7千1百万円となりました。固定負債は、繰延税金負債や長期借入金等が増加したことにより、前連結会計年度末比140億3千万円増の1,429億3千万円となりました。
当連結会計年度末における純資産合計は、為替換算調整勘定や利益剰余金等の増加により、前連結会計年度末比592億3千4百万円増の3,601億3百万円となりました。
この結果、自己資本比率は、前連結会計年度末比4.1ポイント増の50.7%となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末比70億8千1百万円増の564億5千9百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動によるキャッシュ・フローは、620億7千4百万円の収入(前期比208億6千8百万円の収入の増加)となりました。
これは主として、税金等調整前当期純利益や、減価償却費等によるものであります。
当連結会計年度における投資活動によるキャッシュ・フローは、476億3千2百万円の支出(前期比22億6千7百万円の支出の減少)となりました。
これは主として、有形固定資産の取得による支出によるものであります。
当連結会計年度における財務活動によるキャッシュ・フローは、145億1千2百万円の支出(前期比38億8千2百万円の支出の増加)となりました。
これは主として、短期借入金の返済や、配当金の支払等によるものであります。
④ 生産、受注及び販売の状況
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しております。
2.金額は、販売価格によっております。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
なお、工業炉及び関連製品については、受注生産を行っております。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況による分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当連結会計年度の売上高は、スメルティング&ライニング事業及びカーボンブラック事業における売価上昇により、前期比6.9%増の3,639億4千6百万円となりました。売上原価率は、前期比で概ね横ばいとなり、0.5%ポイントアップの72.9%となりました。
販売費及び一般管理費は従業員給与賞与額の増加等により、前期比12.2%増の599億9千8百万円となりました。この結果、営業利益は前期比4.6%減の387億2千8百万円となりました。
営業外収益については、受取利息の増加等により、前期比32.5%増の57億8千9百万円となりました。営業外費用については、支払利息の増加等により、前期比19.5%増の29億1千1百万円となりました。
特別利益については、当社及び連結子会社において投資有価証券売却益4億1百万円を計上しております。特別損失については、当社及び連結子会社において製造設備に対する固定資産除却損1億7千万円を計上しております。この結果、税金等調整前当期純利益は前期比0.3%減の419億9千8百万円となりました。
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額の合計は、前期比10.4%減の132億4千3百万円となり、また、非支配株主に帰属する当期純利益に32億8千5百万円を計上しました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は前期比13.6%増の254億6千8百万円となりました。
また、当連結会計年度末の総資産については、流動資産は現金及び預金や棚卸資産等の増加により、前連結会計年度末比161億9千8百万円増の2,628億9千万円となり、固定資産は有形固定資産及び投資有価証券等の増加により、前連結会計年度末比473億4千1百万円増の3,771億1千4百万円となりました。
キャッシュ・フローの状況については、 (1) ③ キャッシュ・フローに記載のとおりであります。
当社グループは、持続的成長と株主価値向上の実現のため、資本効率を高めつつ、財務健全性維持、流動性確保及び金融費用の抑制を図ることを基本方針としております。
事業成長を支える十分な財務健全性を確保する最適な資本構成の範囲内で、ハードル・レートを踏まえた資本配分により事業収益の拡大を目指しております。
グループの資金は、本社にて一括調達の上、GCMS(グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム)を活用し、手元資金の効率性を高めています。資金は事業が生み出す営業キャッシュ・フローおよび手元資金で賄うことを基本とし、手元資金を上回る投資等の外部資金需要については、金融機関からの借入や資本市場における社債発行などの負債調達を基本に、市場環境に応じて、調達手法を選択していきます。
また、金利変動リスクや流動性リスクについては、リスク量のモニタリングや分析を基にコントロールしつつ、金融費用の抑制を図っております。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
連結財務諸表の作成にあたり、見積りが必要な事項につきましては、合理的な基準に基づき会計上の見積りを行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性により、これらの見積りと異なる場合があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社は、企業の持続的な成長と中長期的な価値向上のために、研究開発活動は重要な取り組みの一つと位置付けております。
そのため、当社グループ(当社及び当社の関係会社)では、当社の開発・技術部門と連携のもと、富士研究所、茅ヶ崎研究所、知多研究所、防府研究所、田ノ浦研究所が主体となり、基礎研究をベースにした新製品の開発、生産技術研究及び既存製品の高性能化、品質改良等諸研究開発を積極的に推進しております。また、自社の技術や製品の保護と他社技術に対する抵触回避という観点から、開発戦略本部の傘下に知的財産部を置き、関係部署間の迅速な情報共有と技術的なシナジーの発現により、研究開発活動を支えています。研究開発活動の内容は、定期的に取締役会に報告する仕組みとしております。なお、当社グループの研究開発活動の内容及び金額は、特定のセグメントに関連付けることが困難であるため、一括して記載しております。
(主な研究開発の内容)
当社において、成長分野に位置するファインカーボン、ファインセラミックスは優れた材料特性を有し、用途は多岐にわたりますが、近年、エネルギー関連、半導体、エレクトロニクス、環境分野への伸びが著しく、これらのハイテクニーズに合った製品の開発を行っております。
東海高熱工業㈱においては、電子部品及び二次電池関連向けに高性能工業炉及び炭化けい素製品の商品開発を進めております。
また、“先端素材とソリューションで持続可能な社会の実現に貢献する”という長期ビジョンであるカーボンニュートラルに関連する特許出願にも注力しており、特許登録件数の割合は増しております。
当連結会計年度の研究開発費は