第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは「市場と顧客に対し、常に第一級の商品とサービスを創造し、日本及び海外市場に広く提供することによって、人類の豊かな生活の実現に寄与する」ことを経営理念として掲げ、ステークホルダー(お客様、株主の皆様、お取引先様、社員、社会)に対し、常に新しい価値創造に努め社会的責任を果たすことを目指した企業活動を基本方針としております。

 

(2)目標とする経営指標

当社グループは、継続的な「売上高」「利益」の成長と「ROE」の向上により、持続的な成長の土台形成やグローバル競争に勝ち抜くことができる資本効率の高い経営体質の構築を目指しております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、2024年1月から2026年12月の3ヵ年を期間とする第12次中期経営計画を現在遂行しております。その内容は、2024年2月7日に公表した「2023年12月期 決算説明資料」に記載しております。

当該決算説明資料は、次のURLからご覧いただけます。

(当社ウェブサイト)

https://www.unicharm.co.jp/ir/library/investors/index.html

 

(4)会社の対処すべき課題

日本を含め各国・各地域でCOVID-19の脅威から脱し、社会経済活動が活性化したことで緩やかに市場回復が進み、感染拡大前の状況に戻りつつありますが、今後の先行きが不透明な状況は継続しております。海外においては、主要参入国の多くで市場回復にばらつきがありながらも、COVID-19の拡大による景気の悪化からは持ち直しの動きが見られますが、ウクライナ情勢の長期化に伴う原材料価格や資源価格の高騰などによる世界経済への影響が不透明であり、COVID-19及びウクライナ情勢の長期化の影響以外にも、当社グループが事業展開している国・地域における地政学的リスク、経済、金融、為替変動などが、当該国・地域などの景気に少なからず影響を及ぼし、売上の停滞、輸入原材料価格や物価変動などに波及する恐れがあります。

国内においては、ウェルネスケア関連商品やペットケア関連商品への引き合いは強いものの、景気の先行き不透明感に加え、競争が激しい販売環境のなか、為替や原油価格に起因する輸入原材料価格の上昇が懸念されるとともに、パーソナルケア業界においては、ベビーケアやフェミニンケア関連商品の対象人口減少が今後も見込まれております。

こうした課題を背景に、当社グループは経営理念に則り、常に新しい市場創造及び価値創造に努め、日本製需要の最大化、並びに、アジアでの急速な高齢化への対応、感染症予防関連や顧客インサイトに応える商品ラインアップの拡大をスピーディーに進めることで、海外ではリスク管理を強化しながら積極的なエリア展開と成長市場におけるカテゴリーリーダーとしての地位確立により、国内では市場の活性化による業界総資産拡大、並びに、「共生社会」の実現を目指し、業績の向上に努めてまいります。

今後もより一層の企業変革に努め、全ての事業において、絶え間ない商品革新による価値向上に一層注力するとともに、原価低減と経営資源の効率的活用をさらに強力に推進してまいります。

一方、非財務面においても、環境(E)社会(S)ガバナンス(G)を中長期的かつ持続的な企業価値向上のための重要な基盤と位置付け、環境への配慮やガバナンス体制の強化等の施策推進を継続してまいります。また、企業経営の健全性と透明性をより高めるために、子会社の内部統制体制について、業務プロセスの適正性を検証する手続きの改善を推し進め、ガバナンスの強化を図ってまいります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する記述は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)サステナビリティ経営

①ガバナンス

当社グループでは、ステークホルダーに期待されるサステナビリティに関する取り組みを円滑に推進するべく、以下のような体制を構築しています。まず、社長執行役員を委員長としたグループ横断の推進組織「ESG委員会」を四半期に1度、年4回開催し、サステナビリティ全般及びガバナンスに関する方針及び活動内容について審議・決定し、その進捗状況をモニタリングしています。ESG委員会には、取締役や執行役員といった経営層に加えて、営業部門や開発部門、マーケティング部門、コーポレート部門、国内外の連結子会社の責任者が出席することで、決定したサステナビリティ関連の諸活動を迅速に実行できる体制を構築しています。なお、ESG委員会での審議・決定内容については、ESG担当執行役員より年1回以上取締役会に報告しています。

 

>>ESG推進体制図

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>>ESG委員会における主な取り組みテーマと分類

ISO26000
中核主題

組織統治、人権、労働慣行、環境、公正な事業慣行、消費者課題、コミュニティ参画および開発

 

主な取り組みテーマ

E

・気候変動: 温室効果ガス、エネルギー使用管理、気候変動リスク

・水資源:水使用、水使用量削減

・汚染と資源:廃棄物、資源使用、リサイクル

・サプライチェーン:サプライヤー方針、環境問題、持続可能な森林資源・持続可能なパーム油調達

・生物多様性

・環境配慮型商品の開発

S

・労働基準:児童労働の禁止、強制労働の禁止、差別禁止、結社の自由、団体交渉権、最低賃金、ハラスメントの防止

・健康、安全

・人権:デュー・ディリジェンス、子どもの権利、児童労働の禁止、地域雇用、苦情処理

・社会:コミュニティ投資、社会貢献活動

・顧客に対する責任:責任ある広告とマーケティング、顧客満足

・サプライチェーン:児童労働の禁止、強制労働の禁止、差別禁止、結社の自由、団体交渉権、最低賃金、健康安全、デュー・ディリジェンス、能力開発

・商品品質、商品安全

G

・腐敗防止:贈収賄、インサイダー取引、内部通報制度、教育、リスク評価

・コーポレート・ガバナンス

・全社的なリスクマネジメント:環境、社会、コーポレート・ガバナンス

・コンプライアンス

・税の透明性

 

②戦略

>>中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」

当社グループはコーポレート・ミッションに「『共生社会』の実現に寄与する」を掲げ、この一環として自然環境問題や社会課題の解決に事業活動を通じて貢献するようにしています。具体的には、2020年10月に中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030 ~ For a Diverse, Inclusive, and Sustainable World ~」(以下、「Kyo-sei Life Vision 2030」)を公表しました。この「Kyo-sei Life Vision 2030」の策定では、まず当社が想い描く『2030年のありたい姿』を具体化し、この将来像と現状のギャップを埋めるために必要なアプローチを整理しました。

この「Kyo-sei Life Vision 2030」を着実に実行することによって、自然環境問題や社会課題の解決、消費者や地域社会への貢献を、継続的な事業成長を通じて実現することを目指しています。

 

>>「Kyo-sei Life Vision 2030」の位置付け

当社グループはSDGsの達成に貢献することを「パーパス」(存在意義)と考えています。このパーパスを「ミッション」「ビジョン」「バリュー」の3つに分けて具体化しました。

まず「ミッション」とは「何を成したいか」を示したもので、具体的には「『共生社会』の実現に貢献すること」です。なお「共生社会」とは、「全ての人が自立し、互いに助け合うことで、自分らしく暮らし続けられる社会」です。

 

続く「ビジョン」とは「どのようにして『共生社会』を実現するか」を示すもので、当社の理念である「NOLA & DOLA (Necessity of Life with Activities & Dreams of Life with Activities)」を実践するとしています。この「NOLA」には、「生活者がさまざまな負担から解放されるよう、心と体をやさしくサポートする」ことを、「DOLA」には「生活者一人ひとりの夢を叶えることに貢献する」という想いを込めています。

そして「バリュー」とは「ミッション」「ビジョン」を支える根底にある「志」「使命感」で、全世界のユニ・チャームグループ社員全員で「共振の経営」という統一されたマネジメントモデルを推進することです。

以上の「パーパス=ミッション・ビジョン・バリュー」をより強力に推進することを目的に、「Kyo-sei Life Vision 2030」を策定しました。

 

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>>2050年・「共生社会」の実現に必要なアプローチ

「『Kyo-sei Life Vision 2030』の位置付け」に記したように、当社のミッションは「共生社会」の実現に貢献することです。2050年に「共生社会」が実現されると仮定して、「理想の将来像」を具体化し、この将来像と現状のギャップを埋めるために必要なアプローチを整理しました。

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>>Kyo-sei Life Vision 2030策定プロセス

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③リスク管理

当社グループでは、中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」の着実な推進にあたって、取締役会の下に設置されている「ESG委員会」(委員長・社長執行役員)が全体の管理・監督を行っています。日々の業務と密接に関連する重要取り組みテーマの運用は、関連部門が主体的に推進し、あらかじめ設定した管理項目・KPIに照らしてゲート管理を行い、PDCAサイクルを回しています。重要取り組みテーマの進捗状況の把握はESG本部が担い、四半期に1度、年4回開催しているESG委員会に報告します。ESG委員会での報告内容、討議事項については、ESG担当執行役員より年1回以上取締役会に報告しています。

また、「Kyo-sei Life Vision 2030」の重要取り組みテーマは、各部門の目標に落とし込み、部門から個人の目標や、週単位の行動計画に紐づけるといったきめ細かい活動を行っています。

 

④指標及び目標

>>「Kyo-sei Life Vision 2030」重要取り組みテーマ・指標・目標・実績一覧

重要取り組みテーマ

指 標

実績

中長期目標

2021年

2022年

目標値

目標年

私たちの健康を守る・支える

全ての人が「自分らしさ」を実感し、日々の暮らしを楽しむことができる社会の実現に貢献する商品・サービスの展開を目指します。

 

健康寿命延伸/QOL向上

どのようなときも、誰もが“自分らしさ”を実感して暮らすことのできる社会の実現に貢献する商品・サービスの展開比率。

100%継続

100%継続

100%

2030年

性別や性的指向等により活躍が制限されない社会への貢献

世界中全ての人が、性別や性的指向等によって制限を受けることなく活躍できる社会の実現に貢献する商品・サービスの展開比率。

100%継続

100%継続

100%

2030年

パートナー・アニマル(ペット)との共生

パートナー・アニマル(ペット)が、家族はもちろん、地域に暮らす人々から歓迎される社会の実現に貢献する商品・サービスの展開比率。

100%継続

100%継続

100%

2030年

育児生活の向上

赤ちゃんと家族が、すこやかに、かつ、ほがらかに暮らすことのできる社会の実現に貢献する商品・サービスの展開比率。

100%継続

100%継続

100%

2030年

衛生環境の向上

一人ひとりの努力で、予防可能な感染症(接触感染、飛沫感染)を抑制する活動に貢献する商品・サービスの展開比率。

100%継続

100%継続

100%

2030年

社会の健康を守る・支える

提供する商品・サービスを通じて、お客様の安全・安心・満足の向上と、社会課題の解決や持続可能性への貢献の両立を目指します。

 

「NOLA & DOLA」を実現するイノベーション

さまざまな負担からの解放を促し、生きる楽しさを満足することに貢献する商品・サービスの展開比率。

100%継続

100%継続

100%

2030年

持続可能なライフスタイルの実践

持続可能性に貢献する社内基準「SDGs Theme Guideline」に適合した商品・サービスの展開比率。

100%

10.5%

50%

2030年

持続可能性に考慮したバリューチェーンの構築

環境・社会・人権の観点を踏まえ、地域経済に貢献する『地産地消』で調達した原材料を用いた商品・サービスの展開比率。

開発継続中

開発継続中

倍増

(2020年比)

2030年

顧客満足度の向上

消費者から支持を獲得している(=No.1シェア)商品・サービスの比率。

23.4%

23.6%

50%

2030年

安心な商品の供給

品質に関する新たな安全性の社内基準を設定し、認証を付与した商品の比率。

100%継続

100%継続

100%

2030年

地球の健康を守る・支える

衛生的で便利な商品・サービスの提供と、地球環境をより良くする活動への貢献の両立を目指します。

 

環境配慮型商品の開発

今までにないユニ・チャームらしい考え方で「3R+2R」を実践する商品・サービスの展開件数。

開発継続中

2件

10件

以上

2030年

気候変動対応

事業展開に用いる全ての電力に占める再生可能電力の比率。

7.3%

11.0%

100%

2030年

リサイクルモデルの拡大

紙おむつリサイクル設備の導入件数。

開発継続中

1件

10件

以上

2030年

商品のリサイクル推進

資源を循環利用した不織布素材商品のマテリアル・リサイクルの実施。

開発継続中

開発継続中

商業利用開始

2030年

プラスチック使用量の削減

プラスチックに占めるバージン石化由来プラスチックの比率。

開発継続中

開発継続中

半減

(2020年比)

2030年

ユニ・チャーム プリンシプル

全てのステークホルダーから信頼を得られるような公正で透明性の高い企業運営を目指します。

 

持続可能性を念頭においた経営

外部評価機関による評価レベルの維持・向上の推進。

最高レベル

26年から毎年

バリューチェーンにおける重大な人権違反の発生件数。

発生 ゼロ

1件

(是正済)

発生 ゼロ

毎年

適切なコーポレート・ガバナンスの実践

重大なコンプライアンス違反件数。

発生 ゼロ

発生 ゼロ

発生 ゼロ

毎年

ダイバーシティマネジメントの推進

女性社員に様々な機会を提供することによる管理職における女性社員比率。

22.5%

23.2%

30%以上

2030年

優れた人材の育成・能力開発

社員意識調査の「仕事を通じた成長実感」における肯定的な回答の比率。

81.4%

(日本)

89.2%

80%以上

2030年

職場の健康と労働安全システムの構築

心身ともに社員が健康で安心して働くことができる職場環境整備による心身の不良を原因とした休職者の削減比率。

6名

(日本)

4名

(日本)

半減

(2020年比)

2030年

2023年度の実績は2024年6月発行予定の当社「統合レポート 2024」をご参照ください。

 

(2)気候変動対応

文中の将来に関する事項は、提出日時点において当社グループが判断したものです。

①ガバナンス

当社グループでは、気候変動に関するリスクと機会の評価、CO排出量削減目標の設定と施策に関する責任は社長執行役員が担っています。また、社長執行役員が委員長を務め、社内の取締役及び全執行役員が委員を務めるESG委員会を四半期に1度、年4回開催し、気候変動関連を含む自然環境活動全般(当社グループ中長期環境目標「環境目標2030」及び中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」の進捗状況も含む)及び社会課題への対応やガバナンス上の重点について報告・審議を行っています。開催にあたっては、全社の自然環境関連問題対応部門であるESG本部で各拠点の自然環境データ、活動状況の情報を毎月収集しチェックを行っています。その情報をESG担当執行役員と協議して、ESG委員会の議題を選定しています。

ESG委員会の活動状況は、ESG担当執行役員より年1回以上取締役会に報告し、取締役会の監督を受けています。ESG委員会や取締役会では、「環境目標2030」「Kyo-sei Life Vision 2030」の進捗状況に応じてチェックや指導、活動の指示を行います。加えて目標を達成するために投資回収年数や投資判断を適宜検討して必要な施策を実行し、目標達成を目指しています。具体的な計画については、TCFD※1の提言に基づき2021年から「環境目標2030」「Kyo-sei Life Vision 2030」をベースに情報公開を行っています。

また、取締役や執行役員が先頭に立ちESG戦略・目標の完遂を実行するために、2020年より取締役(監査等委員である取締役を除く)及び執行役員の評価指標にESG項目を導入しました。また、2023年より人事評価指標のESG項目導入を一般社員にまで拡大しました。

 

※1 TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures/気候関連財務情報開示タスクフォース

 

②戦略

当社グループは1年ごとの状況(短期)、経営計画に合わせた状況(3~5年の中期)、国際的な見通し(SDGsやパリ協定などのように10年、20年といった長期)に応じてリスクや機会を捉えています。また、ERM※2の考え方を踏まえ、全社的なリスクを抽出し、その中のひとつとして気候変動のリスクに取り組んでいます。抽出したリスクや機会に対応するために、財務計画とも連動して対応していきます。

 

 

>>シナリオ・プランニング

推定される物理的影響を計算するためのベースとして、RCPシナリオ※3を使用します。これには、海面が上昇する沿岸地域でのプラントの運用に関連するリスク、サイクロンなどによって引き起こされるサプライチェーンの混乱に関連する運用リスク、熱波による赤道地域のGDP低下のリスク、陸上生態系の変化による森林資源の生育や、農作物等の収穫の遅れのための原材料コスト上昇の影響などが含まれます。地球温暖化は地球環境だけでなく、当社の事業展開にも深く影響を及ぼします。パリ協定を遵守すべく、さまざまなステークホルダーと協働して対応を進めていきます。また、このような地球温暖化問題が深刻化する状況は、当社が有する「使用済み紙パンツのリサイクル技術」を広める機会でもあります。この技術によって森林保護や脱炭素といった取り組みに貢献していきます。

気候変動に関する最も重要な、ビジネス上の戦略への影響は、COP21パリ協定の2℃目標に科学的アプローチで参加することだと考えています。当社はSBT※4で2030年の削減目標の承認を受けたことから、2030年に向けた「Kyo-sei Life Vision 2030」と、当社の2050年のあるべき姿である「2050ビジョン」に向けたグループ全体の自然環境重点目標「環境目標2030」の目標達成に向けて、マーケティング部門と開発部門においては商品開発戦略の中に環境配慮を掲げ、生産部門においては省エネ活動、再生可能電力の導入など短期・長期それぞれの視点で計画を戦略に落とし込み、実施しています。

 

※2 ERM:Enterprise Risk Management/統合型リスク管理

※3 RCP(Representative Concentration Pathways/代表濃度経路)シナリオは、代表濃度経路を複数用意し、それぞれの将来の気候を予測するとともに、その濃度経路を実現する多様な社会経済シナリオを策定できる

※4 SBT:Science Based Targets/科学的根拠に基づく目標

 

③リスク管理

当社グループは、ERMの考え方を踏まえ、全社的なリスクを抽出し、その中のひとつとして気候変動のリスクにも取り組んでいます。グループ全体での気候関連のリスク評価は、ESG本部が行います。まず、TCFDの推奨に基づいて、重大度、範囲、移行リスク(カーボンプライシング、エネルギー価格など)を含む気候変動の影響のシミュレーションを行い、IPCC※5気候変動レポートやIEA※6のWorld Energy Outlook 2021などの情報を使用して、2050年までの複数の定性的なシナリオを構築します(2℃(1.5℃)目標シナリオと4℃目標シナリオ)。

これらのシナリオと、サイトレベルのリスク評価の一部として計算された被害の推定値は、グループ各社の被害の合計値を推定するために使用します。評価の結果はESG委員会及び取締役会に報告され、それに応じて事業戦略及び事業計画の策定にリンクされます。取締役及び全執行役員が参加するESG委員会が上記のシナリオに影響を与えると判断した場合は、対応担当部門を設定し、 ESG本部を事務局として計画を立案します。次回のESG委員会で承認後、担当部門が計画を実施します。さらに、担当部門はESG委員会で計画の進捗状況を報告します。

 

※5 IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change/気候変動に関する政府間パネル

※6 IEA:International Energy Agency/国際エネルギー機関

 

④指標及び目標

当社グループは気候変動緩和策の具体的な対応計画立案のため、国際的イニシアチブであるSBTに2017年5月より賛同し、2045年までのシミュレーションを行い、削減計画を立案しました。SBTと協議し2℃目標に整合した計画として、2018年6月に日本で17番目の認定を受けました。このため具体的なCO排出量削減の長期目標はScope1※7及びScope2※8のそれぞれについて設定しています。また、COP26を受け、1.5℃目標への修正を社内で検討しています。

また、当社グループは「2050ビジョン」と「環境目標2030」で、気候変動に関する中長期のビジョンと目標を定めています。気候変動対応に関する目標としては、ライフサイクルにおけるCOの排出量の割合が高い「原材料調達時CO排出量削減(Scope3 Category1※9)」「製造時CO 排出量削減(Scope1、Scope2)」「使用済み商品廃棄処理時CO排出量削減(Scope3 Category12※9)」を設定しています。Scope1及びScope2については、各拠点の活動推進者と年4回省エネワーキング活動を行い、年間計画と進捗を確認しています。Scope3の大部分を占める購入した資材のCO排出量については、商品機能とCO排出量の観点より設計段階から商品ごとのLCA※10によるCO排出量を計算し、商品開発者とESG本部で協議して対策を検討します。

 

 

>>当社グループにおけるScope1、2、3の全体像

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>>環境目標2030「気候変動対応」

実施項目

基準年

2021年

実績

2022年

目標

2022年

実績

2023年

目標

2030年

目標

2050

ビジョン

原材料調達時CO₂

排出量削減

Scope3 Category1

原単位

2016年

9.7%
(日本)

▲3.4%

▲12.6%
(日本)

▲14.3%

(日本)

▲17%

CO₂排出

“0”社会の実現

製造時CO₂

排出量削減

Scope1,Scope2

▲26.9%

▲28.0%

▲35.2%

▲38.6%

▲34%

使用済み商品

廃棄処理時CO₂

排出量削減

Scope3 Category12

23.7%
(日本)

▲5.2%

▲11.6%
(日本)

▲14.2%

(日本)

▲26%

2023年度の実績は2024年6月発行予定の当社「サステナビリティレポート 2024」をご参照ください。

 

>>GHG排出量可視化プロジェクト

当社グループは、「環境目標2030」及び「Kyo-sei Life Vision 2030」で掲げた「気候変動対応」への取り組みをより強力に推進するために、2022年5月、当社の商品別GHG排出量の開示を目指し、Scope3を含む包括的なGHG排出量可視化プロジェクトを開始しました。

本プロジェクトは、株式会社ウェイストボックスとの連携をはじめ、カーボンニュートラルの包括支援に知見・経験が豊富なデロイトトーマツコンサルティング合同会社の支援を得ています。

2022年は、GHG排出量可視化基盤の構築を実施し、再エネ・省エネ率の改善に向けた基準となる資材別のGHG排出量の一次データ収集を実施しました。「見えて、測れて、手が打てる」をスローガンに、今後は具体的な算定運用を開始するとともに、商品別GHG排出量の開示ならびに、排出量削減効果に向けた取り組みを実施します。

 

※7 Scope1:自社の工場・オフィス・車両などからの直接排出

※8 Scope2:電力など自社で消費したエネルギーを起源とする間接排出

※9 Scope3:Scope1、2以外の間接排出(事業活動に関連する他社の排出)。企業活動を分類した15個のCategoryから構成される。Category1は購入した商品・サービス、Category12は販売した製品の廃棄

※10 LCA:Life Cycle Assessment/製品の原材料調達から、生産、流通、使用、廃棄に至るまでのライフサイクルにおける投入資源、環境負荷、及びそれらによる地球や生態系への潜在的な環境影響を定量的に評価する手法

(3)人的資本

文中の将来に関する事項は、提出日時点において当社グループが判断したものです。

①ガバナンス

当社グループの人材育成については、人事担当執行役員を最高責任者として、グローバル人事総務本部が中心となり、「BOP-Ship※1を体現できる『共振人材』を世界中で育成する」ことを基本戦略として経営層へ定期的に報告し、承認を得て、グループ全体で人材育成戦略・人事施策の立案・実行を行っています。各種人材育成戦略や人事施策は、関連部門の人事担当者及びグループ関係会社の人事部門等が連動し、グループ全体に展開しています。

 

※1 BOP-Ship(ビーオーピーシップ):当社グループの活動の根幹を成す価値観

Best Practiceship(ベストプラクティスシップ):ベストプラクティスを集め、今までのこだわりを捨て、常にアップデートし、そのときの最高のものをスピード重視で取り入れていくこと

Ownership(オーナーシップ):何事も“自分事”として捉え、主体的に考え行動し、困難を突破していくこと

Partnership(パートナーシップ):利他の心で常に仲間と協働を重んじること

 

②戦略

当社グループ社員一人ひとりの「三つの豊かさ」を追求することを、人材育成の基本方針としています。「三つの豊かさ」とは、「志」「経済」「心と体」を指し、それぞれにバランスよく施策を運用することが肝要と考えています。

「志の豊かさ」では、高く広い視座を持ち、仕事を通じて社会全体に貢献することを目指します。当社では「私のキャリアビジョン&キャリアプラン」という独自のフォーマットを用いて、社員一人ひとりが主体的に自身のキャリア開発の計画を立案します。具体的には「10年後」「3年後」といった中長期的な視点でキャリアビジョン、キャリアプランを立案します。この際、仕事を通じた自己開発はもちろん、私生活を含めた社会への貢献も一緒に考え、行動するよう促しています。また、社員の自己実現を支援するために、教育メニューの充実を図ることで社員の学習意欲や成長意欲を高めています。

「経済の豊かさ」においては、常に業界トップクラスの報酬制度を構築・運用し、さらには中長期的なインセンティブが働くよう、譲渡制限付株式報酬制度を導入するなど、社員とのエンゲージメントの醸成・強化に努めています。

「心と体の豊かさ」においては、年1回の健康診断をはじめとした社員の健康維持・増進のためのさまざまな施策に加えて、メンタルヘルス対策に関する研修や、ストレスチェックによるモニタリングを通じて、社員が心身ともに健康で安心して働くことができる職場環境の整備に努めています。

以上のような取り組みを通じて、多様な人材がそれぞれの強みを最大限に発揮し、いきいきと働くことができる職場となることを目指すとともに、企業価値向上につながる人的資本への投資を継続し続けます。

 

>>ユニ・チャーム独自の経営手法「共振の経営」

当社グループは「現場の知恵を経営に活かし、経営の視点を現場が学ぶ」といった独自の経営手法を「共振の経営」と名付けています。具体的には「社員一人ひとりが革新の震源となり、個々の振動がより大きく会社全体で共鳴・変化しあい、それぞれのビジョンを実現できる企業経営の実践及び企業文化を創造すること」です。「共振の経営」の実践によって、経営陣は現場の生の情報や本音に頻度・鮮度良く触れることができ、現場の社員は経営陣との対話を通じて「経営者の視点、視座、時間軸」を学ぶことができるなど、それぞれに理解が進みます。こうして現場と経営陣が目的や目標をしっかりと共有することによって、厳しくも心地よい一体感が醸成されます。このような、日々の工夫や知恵が現場と経営の間を行ったり来たりする「振り子」のような共振を目指しています。

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>>人材育成プラットフォーム「KYOSHIN」

人材育成には、上司の適切な指導が欠かせません。この指導力をグループ全体で高めるべく、人材育成プラットフォーム「KYOSHIN」を2021年から運用しています。「KYOSHIN」の活用により、育成者による指導のバラつきを是正し、社員一人ひとりの成長履歴が確認できる体制をグローバル全体で整えています。具体的には「KYOSHIN」上に設定した目標設定フォーマットを半期毎に作成し、上司は面談で内容を確認した後に承認します。その後、四半期ごとの面談で進捗確認とフィードバックを行います。上司と部下のコミュニケーションの頻度と質を高め、高い目標にチャレンジすることへの理解と納得を促すとともに、人材育成力を組織的に強化しています。

 

③リスク管理

>>OODA-Loop(ウーダループ)メソッド

当社グループは、2003年よりPDCAサイクルを主体的に回し、目標完遂に自発的に取り組む「SAPS経営モデル」を運用し、社員の能力向上と組織力向上に活用してきました。しかしながら、環境変化が常態化したNew Normalな昨今においては、変化に機敏に対応するモデルへの修正が必要となりました。

このような課題認識に基づき、2019年に「SAPS経営モデル」から「OODA-Loopメソッド」へと、アップグレードを図りました。

「OODA-Loop」とは、「現状観察(Observation)」によって変化を素早く察知し、適切な「状況判断(Orientation)」と「意思決定(Decision)」を行い、「行動(Action)」に移すという一連の流れをループを描くようにくり返しながら「やり方自体」を常に見直し、抜本的に変更する仕組みです。この「OODA-Loop」を回すことによって、環境変化に素早く対処し、状況判断と意思決定を行い、成果につながる行動ができる人材へと成長します。

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④指標及び目標

>>ダイバーシティ&インクルージョンの推進

当社グループは、「ユニ・チャームグループ行動憲章」に則り、多様な人材が国籍・人種・宗教・性別・性的指向・年齢・家系・障がいの有無などの違いを認め、互いに尊重し合うことで、個性や能力を最大限に発揮し、活躍できる企業を目指しています。

1.女性の活躍推進

当社は、性別に関係なく、どのようなライフステージにおいても常に活躍できる職場環境と人事制度の整備を進めています。また、若手社員の交流会など、女性活躍推進に向けた取り組みを強化しています。

女性社員のネットワークづくりにつながる支援策として、2021年度に女性メンター制度「Room L+」を開始し、メンタリングや座談会を通じてキャリアやライフの悩みの払拭・解消につなげています。「産休育休Room L+」も設置し、産休育休復帰前や、職種に合わせた情報交換の場を提供し復職後の安心感を醸成しています。さらに、女性の部門長・役員候補者への個別支援として「エンパワーメント制度」を導入し、育成責任者ではない執行役員との1対1でのメンタリング、情報交換会を通じて、役員候補者の育成も推進しています。2023年は、社長と女性リーダーのランチ会を開催し、経営トップとの直接対話で経営者の視座を学ぶ機会を作りました。

これらの取り組みにより、2023年12月末時点の女性管理職比率は、24.7%(日本15.4%、海外30.7%)となりました。

2.多様な国籍の社員の採用と管理職登用

さまざまな国・地域で展開している現地法人では、経営幹部・管理職ともに、その国・地域で生まれ育ったナショナルスタッフを中心としています。また、日本においても国籍・人種を問わない人材採用と幹部社員への登用を進めています。グループ全体でグローバルな人材交流を実施し、国籍・人種を問わず活躍できる体制づくりと、企業文化の醸成に努めています。2023年度のナショナルスタッフ幹部(本部長以上)比率は、52.3%となりました。

3.経験者採用と管理職登用

当社では、多様な経験やスキル、専門知識を有する経験者採用を進めています。経験者採用で入社した社員は、能力発揮や適性などを見極めつつ、積極的に管理職への登用を推進しています。また、家庭の事情等を理由に当社を一度退職した社員の再雇用も進めています。2023年度の経験者採用数は43名、経験者採用管理職比率は33.5%となりました。

4.障がい者雇用の促進

障がいの有無にかかわらず、意欲ある人材を積極的に雇用し、一人ひとりが能力を発揮し、成長意欲を充足できる職場を目指しています。具体的には、それぞれの能力と意欲に合わせた適切な目標設定を行い、成果を期待することによって、チームで達成感を味わう組織風土づくりを推進しています。2023年には、本社オフィスでマッサージルームを新設し、視覚障がいがあり国家資格を持つ専属のあん摩マッサージ指圧師を採用しました。

職場環境においては、スロープや手すりの設置、動線上の障害物の撤去による移動の安全確保、メールやチャットを用いた業務指示の配慮など、障がいの特性に応じて、一人ひとりが能力を発揮できる適切な労働環境の提供に努めています。

また、ユニ・チャーム株式会社の水戸サテライトオフィスでは、障がいのある社員がスキャン業務等に従事しています。

5.年齢を問わず活躍できる職場

50代社員を対象に、これまでのキャリアを棚卸しし、Will(やりたいこと)・Can(できること)・Must(やらなければならないこと)を明確にした上で、異なる部門に応募することができる「Re-Create」制度を導入しています。また、定年を迎えても、次世代の社員へ技術やノウハウを伝承できるよう、能力を活かして働き続けられる環境を整え、継続勤務を希望したベテラン社員をプロフェッショナル社員として引き続き雇用しています。

これまでの経験・スキル・知識、新たに身につけたスキル・知識等を活かせる職務役割に応じて処遇を決定し、職務内容と処遇の一致を図っています。なお、プロフェッショナル社員の処遇決定においては、発揮し得る能力の市場での評価を参照しています。また、この雇用による若年層の採用への影響はありません。

 

6.文化や宗教に配慮した地域雇用の拡大

事業展開を通じて各国・地域の雇用拡大に貢献しています。その国や地域の特性、文化を尊重しながら就労機会を提供することで、潜在的な人材を掘り起こしています。

サウジアラビアでは、かつて文化や宗教などの理由により、女性は家族以外の男性と同室にいることや会話することが禁止されていたため、就労機会が著しく限られており、活躍には多くの制約がありました。そのような状況の中、当社は、2012年度に、現地の文化を尊重しながら女性に就労機会を提供できる女性専用の工場を設立しました。現在は、工場だけでなく、プロモーターや商品開発部員などとしても多くの女性が活躍しています。

7.性的指向への配慮

社員一人ひとりの性的指向や性自認を含む多様な性を尊重し、自分らしい環境で能力を発揮できる職場環境を整備しています。2022年に「ハラスメント防止規程」を見直し、SOGI(Sexual Orientation and Gender Identity/性的指向・性自認)・ハラスメントの禁止規定を追加した他、性的マイノリティへの理解を深めるためにeラーニングや階層別研修での啓発を進めています。

2023年は、ダイバーシティ&インクルージョン教育の一環として、性的マイノリティに関する基礎知識を深めるためのeラーニング、ハラスメントについて具体例を紹介し自分事として考えるためのeラーニング、アンコンシャス・バイアスについて動画を視聴しスクラム単位で事例や対処の仕方について話し合う勉強会を実施しました。また、性的マイノリティも異性婚と同様の福利厚生を受けられるように「同性パートナーシップ制度」を導入し多様性を活かす職場風土づくりを進めています。

 

>>優れた人材の育成・能力開発

当社グループは、人事理念に「企業価値の源泉は人にあり」を掲げており、これを具現化し続けるには次世代を担う人材育成が欠かせません。このため当社では、デジタル技術を駆使した教育プログラムを充実させ、いつでもどこでも学習できるようにサポートすることで、社員の自主性を尊重しつつ、一人ひとりが自分の夢やありたい姿に向かって自己研鑽に取り組める人事施策を拡充し、事業を通じて自然環境問題や社会課題の解決に貢献できる人材の創出につなげています。具体的には、社員の仕事に関する意識や満足度などを確認することを目的に、グループ全社で「社員意識調査」を毎年実施しています。海外現地法人で働く社員からも回答を得られるように8つの言語に翻訳し、継続的に調査することで、社員の活性化や、組織改革に活かすことはもちろん、さまざまな人事・経営施策を検討する際の参考にしています。当社は、「仕事を通じて社員が育ち、社員の成長によって業容が拡大する」といった好循環を目指しています。そのため、「社員意識調査」を活用して「仕事を通じた成長実感における肯定的な回答」の比率を確認しており、2022年は89.2%でした。

また、社員一人ひとりに成長機会を提供するため、時間や場所に縛られず、自分のペースに合わせて学習できるオンライン学習プラットフォーム「LinkedIn learning」を日本と12の海外現地法人で導入しました。2022年の年間トータル学習コース数は16,463コースで、約3,400名が利用し、1人あたりの年間平均学習時間は1.9時間でした。今後も社員が継続的に学習し、スキル習得等の意欲を維持できるよう定期的な情報発信を行います。

さらに日本では、スクラム※2リーダーを対象とした「スクラムリーダーOJT(On The Job Training)ワークショップ」を2022年に新設し、245名が参加しました。このワークショップは、スクラムリーダーが戦略遂行と人材育成を同時に実現するための行動変容を学ぶ機会としています。日々のOJTを通じて、リーダーとメンバーが共に成長することを目的としており、今後はスクラムリーダー着任時の必須研修として、グループ全体へ展開していきます。

 

※2 スクラム:グループや課といった最小単位の組織

 

>>職場の健康と労働安全システムの構築

当社グループが「『共生社会』の実現に貢献する」には、社員が健康でいきいきと活躍することが不可欠です。このため、健康診断をはじめとするさまざまな健康管理に関する取り組みや、メリハリのある働き方の推進、メンタルへルスケアなどを通じて、社員が心身ともに健康で、最大限に能力を発揮できる環境づくりに取り組んでいます。

具体的には、健康診断や体力測定会、パーソナルストレッチなどの社員の健康維持・増進に加え、毎月健康に関する旬なテーマをとりあげた「健康ラボニュースレター」を発行し、健康維持のポイントやメンタルヘルス維持のための情報提供、身体活動量の低下を防ぐための適度な運動推奨などを行っています。このような活動を通じて社員の健康リテラシーを高め、自らの健康を維持・増進できるように取り組んでいます。また、社員の健康を管理する状況から、さらに一歩踏み込み「予防」へと移行するために、メンタルヘルス対策に関する研修の実施や、ストレスチェックを年に1回実施しています。ストレス度合が高い社員を早期に発見し、産業医や保健師の健康相談につなげることで、社員が心身ともに健康で安心して働くことができる職場環境の整備に努めています。

 

3【事業等のリスク】

当社グループ(以下、本項目においては当社と総称)は、経営の基本方針(1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)会社の経営の基本方針をご参照下さい)としております企業活動の遂行・達成に影響を及ぼす様々なリスクを適切に把握し、その未然防止及び発生時の影響最小化と再発防止を、経営における重要な課題と位置付けております。その上で、当社全体のリスクマネジメント体制を構築し、その実践を推進するとともに継続的に事業等のリスク管理の見直し、改善を実施しております。

取締役会では、行動規範、倫理規程を監督すると同時に各部門長より報告されるリスクを分析・評価することによって改善策を審議し決定しております。監査等委員は、法令で定められた任期中、各種の監査等を実施することで責務を果たしております。

また、ESG委員会で当連結会計年度末現在においては事業上リスクとなる可能性があると考えられる主な12の事項を定め、同委員会で討議し必要に応じて適切な対応を行っております。この事項に該当しない喫緊のリスクを認識した場合は、ESG委員会で速やかに討議し対応することになっております。さらに、重大な事業等の危機が発生した場合には、危機管理に係る規程として制定した「クライシスコミュニケーションマニュアル」に基づき、「危機管理対応委員会」を設置し、迅速かつ適切な対応と早期復旧に努めることとしております。

以下の12の主要なリスクは、当有価証券報告書提出日(2024年3月28日)時点において当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があると認識している重要な事業上のリスク事項ですが、様々な対応策等の効果もあって現在のところいずれも経営に重大な影響を与えるまでのリスクの顕在化には至っておりません。また、今後顕在化する可能性の程度や時期は未確定です。なお、記載している主要なリスク以外にもリスクは存在し、将来当社が影響を受ける可能性があるリスクはここに掲げた事項に限定されるものではありません。

 

リスク事項

リスクの内容・当社への影響

当社の主な対応策等

競争下の販売環境に関するリスク

当社の主要商品の国内及び海外市場での競争は、景気や市場環境によっては、価格及び商品ラインの両面において、さらに厳しいものになる可能性があります。

消費者向けの商品という性格上、当社の主要商品は常に厳しい競争にさらされており、競合他社からも新商品が次々と発売されております。販売環境は、当社の製造コスト及び経費節減やマーケティング等の努力の如何にかかわらず、顧客の消費行動の変化や競合会社の対応によっても左右されます。

こうした販売環境に対し当社が適切に対応できない場合、売上や損益等に悪影響を与える可能性があります。

個々の国・地域の生活実態や消費実態を徹底的にリサーチし、文化や生活環境に合わせた商品開発を行い、景気の影響を受けにくい商品提供に努めております。こうしたリサーチや市場分析手法を展開エリアや国・地域の拡大にも活用し、安定した業績拡大を図っております。

また、生産面では調達コスト低減や生産効率の改善でコストを抑制し、営業面ではオンラインチャネルも含めた販売先の拡充に努めるとともに、デジタル技術を活用した顧客視点に立った売り方や買い方を小売店に提案することによって営業力を強化し、競争力の維持向上に努めております。

さらに、海外の現地子会社に権限委譲を進め、顧客の消費行動の変化に迅速に対応できる態勢作りを行っております。

 

 

リスク事項

リスクの内容・当社への影響

当社の主な対応策等

人口動態の変化に関するリスク

日本では、出生数の減少が長期間継続しており、乳幼児と月経期間のある女性の人口は減少傾向にあります。また、当社が事業展開している海外の一部の国・地域においても同様の傾向が見られます。こうした人口構成の変化により、当社の中核事業であるベビーケア関連商品並びにフェミニンケア関連商品の当該国・地域における需要は減少する可能性があります。

また、当社では事業遂行に必要な優秀な人材確保・育成に継続して努める必要があると考えております。一方で少子高齢化社会の進行に伴い、人材の確保は激しさを増しております。人材確保や育成が計画通り進まない場合、事業活動に影響を与える可能性があります。

世界中の人々が平等で不自由なく、その人らしさを尊重し、やさしさで包み支え合う、心つながる豊かな社会である「共生社会」の実現に寄与することをミッションとし、赤ちゃんからお年寄りまで全ての生活者と、ペットが抱える様々な負担からの解放を促し、生きる楽しさを満足することに貢献する商品とサービスを世界のあらゆる国・地域の中でバランスよく展開することで人口動態の影響を受けにくい企業活動を目指しております。また、市場の成長ステージに応じた商品戦略により、対象人口が減少してもラインアップ多様化や商品価値訴求で需要の維持拡大に努めております。

労働力人口減少の対策として、国籍・性別・年齢・障がいの有無に関わらず多様な人材が、強みを活かしていきいきと活躍でき働きがいを実感する職場環境づくりを推進しております。具体的には、個々のキャリアビジョン・キャリアプランに基づいた育成計画や適材適所の人員配置、四半期評価・階層別研修を実施することで成長機会を提供し、自ら課題設定し解決できる人材の輩出を目指しております。また、働き方や働きがいは自分で決めることを促すために、リモートワークの導入やコアタイムを撤廃、働く場所や時間の選択肢を増やし、創造性・生産性を高める柔軟な働き方を進めております。さらにシニア人材の活性化、女性活躍推進等にも積極的に取り組んでおります。

海外事業リスク

当社は、中国、インドネシア、タイ、インド、中東地域、ブラジル等で商品の製造を行っております。海外における事業展開では、為替相場の変動により原材料価格や設備費用へ相当の影響を受ける可能性があります。当該国・地域の規制、経済環境及び社会的・政治的情勢によっては、市場が大きく変化し当社の事業活動や保有資産の価値に影響を与える可能性もあります。また、在外連結子会社の当該国・地域通貨建での財務諸表は、連結財務諸表作成に際し円に換算されるため、円高時には当社の財政状態及び経営成績にマイナスの影響を与えます。

貿易取引では、製造拠点の稼働状況や為替等による収益性の観点から、場合によって出荷拠点を変更することで安定的な輸出入や収益の確保を図っております。為替変動に対しては、原材料仕入を含めた外貨建取引や保有債権・債務を総合的に勘案した為替ヘッジにより、リスクの最小化に努めております。また、安定的な株主還元や当社内資金循環にも寄与するよう、投資予定を上回る資金を保有する在外連結子会社からは配当を積極的に実行し、在外資産の円高でのマイナス影響を抑制する仕組みを構築しております。

 

 

リスク事項

リスクの内容・当社への影響

当社の主な対応策等

原材料価格変動リスク

当社は製造業者として、原材料価格の変動リスクに直面しております。現在、多くの仕入先からクロスボーダーで原材料を購入しており、特にパルプなどの原材料は、海外の仕入先から調達し、その取引は通常米ドル建てになっております。為替の変動幅次第では、原材料費用が増大する可能性があります。また、石油・ナフサ・パルプなどの粗原料市況価格の変動も材料価格へ影響を与えます。

主要な原材料価格の動向分析や将来価格の予測を行い、仕入の調整や原価見通しを定期的に改定して収益管理に反映しております。輸入が中断する不測の事態に備え、為替の輸入価格への変動リスクを抑制するためにも、現地・特恵関税国での調達先を絶えず開拓し、総合的な視点で安定的な原材料の仕入に努めております。また、海外事業リスクの事項で記載した為替ヘッジにより、為替による原材料費用の増大にも備えております。また、原材料の使用量を減少させ素材の機能性を高めるような研究も進めております。

環境問題に関するリスク

資源の枯渇の懸念や海洋プラスチックなどによる海洋汚染、生態系の破壊など地球的な規模で環境課題が増大し、環境保全や環境負荷低減などの取り組みが世界的に推進されております。また、紙おむつや生理用品などの使い捨て商品を製造する当社にとって、環境法規制の遵守はさることながら、地球環境に配慮したモノづくりは、重要な課題です。ステークホルダーから取り組みが不十分であると見なされた場合、当社の社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

2015年より、使用済み紙おむつの再資源化プロジェクトに取り組み、リサイクルパルプを使用した介護用紙おむつの販売を開始しました。また、中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」、「環境目標2030」において環境問題に対する数値目標を設定し、これを達成するために具体的な取り組みを策定、実行しています。また、当社行動憲章において、環境基本方針及びガイドラインを制定し、全社員で読み合わせを行い社員の意識向上を図りつつ、商品・サービス提供の各段階で環境負荷をできる限り低減するような商品設計・サービス設計に努めています。

気候変動に関するリスク

カーボンプライシング導入・引き上げやエネルギー価格の大幅な変動による操業コスト上昇、当社商品の主要原材料である森林由来の原料価格の高騰による調達コスト上昇が予測され、当社が注力しているアジアも大きな影響を受ける可能性があります。

また、気温上昇抑制につながるGHG排出量の削減等の取り組みやその情報開示が不十分な場合、当社の社会的信用の低下に至る可能性があります。

中長期ESG目標「Kyo-sei Life Vision 2030」で打ち出した、事業展開に用いる全ての電力に占める再生可能電力比率100%達成を目指します。また、Scope 3を含む包括的なGHG排出量可視化プロジェクトを開始し、再エネ・省エネ率の改善に向けた基準となる資材別のGHG排出量の一次データ収集、具体的な算定運用を開始するとともに、商品別GHG排出量の開示に向けた取り組みを進めています。

商品の信頼性に関するリスク

当社は消費者向け商品の製造・販売業者として、創業以来、商品の品質や安全性に関連して経営に大きな影響がある多額の補償金問題などは経験したことはありません。しかしながら、商品の製造・販売時に予期しなかった重大な品質や安全性等に関する問題が発生した場合には、当社商品の信頼性が大きく低下する可能性があります。

原材料の調達から開発、製造、物流、販売、使用後の商品の廃棄にいたるまで全ての工程において、関連法規制を遵守するだけでなく、各国の業界団体が定める業界自主基準の遵守並びに、自社で厳しい基準を設定しそれを遵守することで、商品の品質や安全性の向上を図っています。

また、正しい情報伝達のために、関連法規制遵守並びに、エビデンスに基づく適正な広告・表記に努めています。当社商品に関するクレームがあった場合は、その多少にかかわらず、迅速な原因究明や改善対処をし、商品の信頼性が低下しないよう体制を整えております。

法令の遵守違反に関するリスク

当社や当社社員が、国内及び海外の独占禁止法や不正競争防止法、税法などの法令に違反して、例えば、取引に際して不当な要求をしたり、公的手続のため贈賄を行なったりして、公的な罰則等を受けた場合、当社の企業業績や社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

当社行動憲章に、各ステークホルダーへの誓いを実現するために心掛ける行動に対する法令遵守を記載して、不正な行為の防止等のコンプライアンス意識を向上させるとともに、毎年の社員意識調査でもモニタリングを実施しております。また、法令遵守に関する意識向上と問題の発生を未然に防止することを目的に、コンプライアンスに関するテーマをカリキュラムに含む新入社員研修や海外赴任者向け研修、取締役と執行役員を対象としたコンプライアンス勉強会、コンプライアンスに関する講座を設けた全社員対象のeラーニングを実施して、法令遵守を徹底しております。

特許、商標など知的財産権に関するリスク

当社の保有する知的財産権に関して、第三者等が何らかの侵害を行った場合、期待される収益が失われるなど多大な損害を被る恐れがあります。一方で、当社が第三者の知的財産権を侵害した場合、多額の損害賠償責任を負う可能性や当社の事業活動が制限される可能性があります。

第三者等の侵害に対しては訴訟など断固とした姿勢で臨み、当社内で密接に協働するとともに、各国・地域の行政機関等とも連携しながら権利侵害品、模倣品の排除に努めています。また、商品開発段階での侵害予防調査の実施、社内コンプライアンス教育の一環としての特許や商標、景品表示法などに関するOJT、eラーニングを行うことで、当社及び他社の知的財産の保護・尊重を浸透させております。

災害や事故に関するリスク

当社は、大地震や大規模自然災害、火災、事故等によって生じる製造や販売の中断による損失を最小限に抑えるため、事業継続計画(BCP)に基づき、製造や物流拠点間での連携や迅速な情報システム、管理機能回復が可能な体制を整えております。2020年6月の当社インド子会社の工場火災ではBCPが機能して、インドの国内工場だけでなく、他国の工場からの供給体制を迅速に整え、火災による販売の落ち込みを最小限にとどめることができました。しかしながら、予測を上回る災害や事故等の発生により、製造の継続、原材料の確保、商品の安定供給などに支障が生じる可能性があります。

事業継続計画(BCP)は、(1)基本要件、(2)社員及びその家族の安全確保と安否確認、(3)事業を継続させるための具体的な対策、(4)事業継続とともに対応すべき重要事項、(5)運用していくために必要な対策、から構成されております。このうち(5)に定めている訓練として、シナリオに基づく緊急事態を想定した避難訓練を継続的に実施しております。また、国内では、リスク分散や代替拠点として九州工場を新たに建設し、2019年度から稼働しております。

買収、提携、事業統廃合等に関するリスク

当社は、常に保有する経営資源の効率的運用を考え、企業価値の最大化を追求するように努めております。将来もこの過程において、他社事業の買収や他社への出資、他社との提携、事業の統廃合や合理化・独立化等の施策を実行することが考えられます。しかしながら実行後、市場の変化や施策の成果が予想を下回ることなどで、のれんなどの保有リスク資産の価値下落による損失等が発生する可能性があります。

買収、提携、事業統合の検討を行う際には、十分な情報を収集し、将来の回収計画を綿密に立てて、計上する資産であるのれんや他の固定資産が将来減損される可能性が小さいことを関係部門で十分に確認した後に取締役会で決定しております。実行後は、適時に減損兆候の判定を行って減損等のリスクを把握、計画を下回っている対象事業会社はその原因を分析し必要に応じて事業計画の見直し等で計画収益が回収できるように努めております。そのうえで、計画収益の回収が出来ないと見込まれる場合には、会計基準に沿って資産の減損処理を行っております。

情報漏洩リスク

当社は社内で発生するものだけではなく、お客様など取引先の同意や機密保持契約に基づいて取得した個人情報を含む多くの情報を保有しております。万が一、何らかの情報漏洩が発生した場合には、情報管理に関する法的責任を問われる可能性や当社への信頼性が低下する可能性があります。

情報セキュリティポリシー、情報セキュリティ規程を制定し、取得した個人情報については、個人情報保護規程や特定個人情報取扱規程を定め、厳重な管理と漏洩防止に努めております。規程の厳格な運用のために、情報セキュリティ委員会を設置し、グローバル横断の情報セキュリティ対策の企画と社員教育、モニタリングを継続実施しております。

また、情報漏洩やサイバー攻撃などのインシデントが発生した際に、迅速に実態把握と影響を最小限とする対応ができるよう、情報セキュリティ規程に基づき、グローバルで対応方針を周知し、インシデントや災害に備えたIT事業継続計画の整備に着手しています。

一方、端末の紛失・盗難に伴う情報漏洩を防止する物理的な対策として、データを保管できないパソコンを採用し、データやシステムはサーバ上でしか利用できないクラ

ウド環境を完備しております。

公開Webサイトなどへの外部からのサイバー攻撃対策については、外部の専門家と連携して、適切なサーバ構築を始め、フィッシング対策、ウィルス対策、パスワード・ID管理、セキュリティ対策機器導入・監視

等の各種セキュリティ対策を講じております。

 

 

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループは2017年12月期より、財務情報の国際的な比較可能性と経営管理の品質向上を目指して、従来の日本基準に替えてIFRSを適用しております。

また、コア営業利益は売上総利益から販売費及び一般管理費を控除した利益であり、IFRSで定義されている指標ではありませんが、当社グループの経常的な事業業績を測る指標として有用な情報であると考えられるため、自主的に開示しております。

 

①財政状態及び経営成績の状況

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

売上高

898,022

941,790

43,768

4.9

コア営業利益

119,566

127,974

8,408

7.0

税引前当期利益

115,708

132,308

16,600

14.3

親会社の所有者に帰属する当期利益

67,608

86,053

18,445

27.3

基本的1株当たり当期利益(円)

113.61

145.42

31.81

28.0

 

当連結会計年度の業績は、売上高941,790百万円(前連結会計年度比4.9%増)、コア営業利益127,974百万円(前連結会計年度比7.0%増)、税引前当期利益132,308百万円(前連結会計年度比14.3%増)、当期利益97,982百万円(前連結会計年度比25.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益86,053百万円(前連結会計年度比27.3%増)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

 

(a)パーソナルケア

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

売上高(注)

764,908

793,845

28,938

3.8

コア営業利益

100,863

104,481

3,618

3.6

(注)外部顧客に対する売上高

 

●ウェルネスケア関連商品

海外においては、日本以上のスピードで高齢化が進行し、特に大人用排泄ケア用品の対象人口が多い中国では、積極的なマーケティング投資を継続し、大人用排泄ケア用品の認知拡大と普及促進に努めました。

また、タイ、インド、ベトナム、インドネシアといったアジア地域においても、大人用排泄ケア用品の需要が高まっていることから商品ラインアップの拡充と、日本で確立したケアモデルの普及促進に努めています。

国内の大人用排泄ケア用品においては、ADL※1に合わせた豊富な商品ラインアップの展開を強化しました。そのなかで、新たな価値提案として、ウエスト部分に“超音波接合”に関する特許技術を採用した紙パンツを発売し、はき心地の快適性向上と同時に、商品を梱包する際の圧縮率が改良され、積載効率の向上による配送効率の改善を実現し、環境負荷の軽減に貢献しました。これにより、新たな付加価値商品の展開による価値転嫁が順調に進んだ結果、高い市場シェアを維持しました。

昨年まで市場が大きく成長したマスクカテゴリーにおいては、『超快適』、『超立体』両ブランドの充実したラインアップで、消費者ニーズに応えましたが、第2四半期にはCOVID-19の感染症法※2上の位置付けの変更が行われたことや、夏場に入り気温が例年以上に上昇したことなどにより、売り場が急速に変化しました。加えて、消費者によるCOVID-19で備蓄したマスクの宅内在庫消化の影響もあり、市場は縮小したものの、依然としてCOVID-19拡大前以上の市場規模を維持しています。引き続き消費者ニーズを捉えた新商品を継続的に展開することで、市場の活性化と市場シェアの拡大を図ります。

 

※1 日常生活動作(Activities of Daily Living)の略語で、排泄・食事・入浴など日常生活で必要な基本動作を表し、介護される方の介護レベルを計る指標

※2 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律

 

●フェミニンケア関連商品

中国においては、引き続き景気の先行き不透明感による流通の不安定さがあるなか、沿岸部の都市を中心に、販売エリアと取扱店舗数の拡大を継続的に取り組みました。また、eコマースにおける新プラットフォームの活用による販売強化に取り組みながら、若年層をターゲットに継続的な新価値提案を実施し、高付加価値商品であるショーツ型ナプキンや、オーガニック系素材のナプキンなどの拡売に努めました。

タイ、インドネシア、ベトナムといったアジア地域においても、新コンセプトである、清涼感のあるつけ心地を実現したクールナプキンなどの高付加価値商品の展開を継続した結果、好調に推移しています。

中東においては、現地の習慣を捉えたオリーブオイルを配合した新商品などの積極的なマーケティング投資により、サウジアラビア国内販売が順調に推移したほか、近隣諸国への輸出も伸長し、高い売上高成長を実現しました。

国内においては、対象人口が減少傾向にあるなか、健康意識や安心志向の高まりや、ニーズに合わせた高付加価値商品による価値転嫁の拡大、SNSなどを活用した消費者とのコミュニケーションなどにより、売上高は伸長しました。また、妊活中の女性が普段通りの生活を送りながら気軽に妊活タイミング※3を予測できる『妊活タイミングをチェックできるおりものシート』を発売するなど、引き続きお一人でも多くの方の悩みを解決し、夢の実現に貢献するような商品・サービスの提供に努めました。

 

※3 妊活に適したタイミングである「排卵時期を含む約6日間」のこと

 

●ベビーケア関連商品

新興国のなかでも紙おむつの普及率が低いインドでは、パンツ型紙おむつの普及促進と販売エリアの拡大に努めた結果、市場シェアが上昇し、市場成長以上の売上高成長を実現しました。

出生数の減少に加え、COVID-19の拡大の影響により市場が伸び悩んだベトナムにおいては、消費者の実態に合わせた世界初※4の片側が開閉できるパンツ型紙おむつの発売により、早期にパンツ型紙おむつへの転換促進を目指して市場の活性化を図りました。

ローカル企業の台頭に加え、少子化が進んでいる中国においては、戦略的に日本製プレミアム商品の在庫調整を進めながら、現地のニーズを捉えた独自開発の中国製プレミアム商品『ムーニー』ブランドへのシフトを加速させ、収益性の改善を進めました。

少子化が進み、市場が縮小傾向の国内においては、『ムーニー』や『マミーポコ』の2ブランドで、新たな付加価値を搭載した豊富な商品ラインアップにて価値転嫁を継続し、笑顔あふれる育児生活の実現に取り組み、売上高は伸長しました。

 

※4 主要なグローバルメーカーで販売されるベビー用パンツ型紙おむつブランドにおいて、片方の胴回りの側面が開閉可能で、なおかつ、他方側の長さより長い構造体(2022年10月ユニ・チャーム㈱調べ)

 

●Kireiケア関連商品

国内においては、ウェットティッシュの市場が伸び悩むなか、『シルコット』ブランドにおいて、デザイン性を高めた商品などの展開によって市場シェアの拡大に努めました。

今後は、日本で培った独自の不織布加工・成型技術を活用し、日本だけではなくそれぞれの国や地域の使用習慣や消費者ニーズに合わせた高付加価値商品を開発することで、世界中の全ての人々が安心・安全でKireiな生活を送ることができる環境を目指します。

 

この結果、パーソナルケアの売上高は793,845百万円(前連結会計年度比3.8%増)、セグメント利益(コア営業利益)は104,481百万円(前連結会計年度比3.6%増)となりました。

 

(b)ぺットケア

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

売上高(注)

125,312

139,446

14,134

11.3

コア営業利益

18,352

23,083

4,732

25.8

(注)外部顧客に対する売上高

 

国内のペットフードにおいては、猫用では健康志向の高まりに応えた毛玉ケアや食事の吐き戻しを軽減する商品、犬用では犬種ごとの身体の特徴や年齢に合わせた商品、及び、新コンセプト商品である筋肉の健康を維持するカラダづくりフードなどで価値転嫁を進めた結果、高い売上高成長を実現しました。ペットトイレタリーにおいては、犬用ペットシートや猫用システムトイレなどが堅調に推移した結果、安定的な成長を実現しました。

昨年以来、北米では新たな高付加価値商品の展開による価値転嫁が順調に進んでいるなか、断続的なインフレーションによる消費者の購買抑制を懸念した流通による一時的な在庫圧縮の影響を受けましたが、日本の技術を搭載した新たなコンセプトの猫ウェットタイプ副食などの販売が好調に推移し、安定した売上高成長を実現しました。引き続き現地のニーズに合わせた新たな価値提案による高付加価値商品の展開を進めます。

北米に次ぐ世界第2位の市場規模を誇り、今後も成長が期待される中国においては、2022年11月に江蘇吉家寵物用品有限公司(以下、JIA PETS社)と資本業務提携を行いました。日本の消費者に支持された当社グループの製造技術及び生産管理ノウハウとJIA PETS社が保有する生産体制や研究開発、eコマースチャネルにおける販売力などを活用しペットケア事業の飛躍的な成長を目指します。

また、今後の市場成長が期待されるタイやインドネシアといったアジア地域においては、日本の技術を搭載した商品の認知拡大と普及促進に努め、事業成長を推進します。

 

この結果、ペットケアの売上高は139,446百万円(前連結会計年度比11.3%増)、セグメント利益(コア営業利益)は23,083百万円(前連結会計年度比25.8%増)となりました。

 

(c)その他

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

増減率

(%)

売上高(注)

7,802

8,498

697

8.9

コア営業利益

351

409

58

16.6

(注)外部顧客に対する売上高

 

不織布・吸収体の加工・成形技術を活かした業務用商品分野において、産業用資材を中心に販売を進めました。

 

この結果、その他の売上高は8,498百万円(前連結会計年度比8.9%増)、セグメント利益(コア営業利益)は409百万円(前連結会計年度比16.6%増)となりました。

 

当期の財政状態の概況は次のとおりであります。

 

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

資産合計

1,049,218

1,133,627

84,410

負債合計

340,605

345,377

4,772

資本合計

708,613

788,250

79,637

親会社所有者帰属持分比率(%)

59.0

61.4

 

当連結会計年度末の財政状態は、資産合計が1,133,627百万円と前連結会計年度末に比べ84,410百万円増加いたしました。主な増加は、現金及び現金同等物36,617百万円、その他有価証券等のその他の金融資産22,729百万円、持分法で会計処理されている投資17,569百万円によるものです。負債合計は、345,377百万円と前連結会計年度末に比べ4,772百万円増加いたしました。主な増加は、未払費用等のその他の流動負債10,666百万円、借入金1,543百万円、主な減少は、繰延税金負債6,915百万円によるものです。資本合計は、788,250百万円と前連結会計年度末に比べ79,637百万円増加いたしました。主な増加は、親会社の所有者に帰属する当期利益86,053百万円によるものです。

以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は、前期末の59.0%から61.4%となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

 

前連結会計年度

(百万円)

当連結会計年度

(百万円)

増減額

(百万円)

営業活動によるキャッシュ・フロー

92,216

162,415

70,199

投資活動によるキャッシュ・フロー

△7,145

△67,527

△60,382

財務活動によるキャッシュ・フロー

△61,652

△67,007

△5,354

現金及び現金同等物の期末残高

217,153

253,770

36,617

 

当連結会計年度末の現金及び現金同等物の期末残高は253,770百万円となり、前連結会計年度末に比べ36,617百万円増加しております。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動により得られたキャッシュ・フローは、162,415百万円の収入(前連結会計年度は、92,216百万円の収入)となりました。主な収入は、税引前当期利益、減価償却費及び償却費、主な支出は、法人所得税の支払によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動により使用したキャッシュ・フローは、67,527百万円の支出(前連結会計年度は、7,145百万円の支出)となりました。主な支出は、有形固定資産及び無形資産の取得による支出、その他の包括利益を通じて公正価値で測定する負債性金融資産の取得による支出によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動により使用したキャッシュ・フローは、67,007百万円の支出(前連結会計年度は、61,652百万円の支出)となりました。主な支出は、親会社の所有者への配当金支払額、自己株式の取得による支出、連結の範囲の変更を伴わない子会社株式の取得による支出、非支配持分への配当金支払額によるものです。

 

③生産、受注及び販売の実績

(a)生産実績

セグメントの名称

生産高

(百万円)

前年同期比

(%)

パーソナルケア

783,765

△1.2

ペットケア

128,576

△2.5

その他

7,877

△4.7

合計

920,217

△1.4

(注)1.セグメント間取引については、相殺消去しております。

2.金額は、販売価格によっております。

 

(b)受注実績

受注生産を行っていないので、該当事項はありません。

 

(c)販売実績

セグメントの名称

販売高

(百万円)

前年同期比

(%)

パーソナルケア

793,845

3.8

ペットケア

139,446

11.3

その他

8,498

8.9

合計

941,790

4.9

(注)セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(a)経営成績の分析

当連結会計年度における当社グループをとりまく経営環境は、日本を含め各国・各地域で新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の脅威から脱し、社会経済活動が活性化したことで緩やかに市場回復が進み、感染拡大前の状況に戻りつつあります。しかし、国・地域間での景気回復に強弱があることや、昨年から続く高水準の資源価格や為替変動などの影響によりインフレーションが長期化し、今後の先行きは不透明な状況が続いています。

海外においては、主要参入国の多くで市場回復にはばらつきがありながらも、COVID-19の拡大による景気の悪化からは持ち直しの動きが見られます。この状況のなかで、現地のニーズに合わせた新たな付加価値商品の提案による価値転嫁を遂行することで、消費者の満足度向上とコスト上昇への対応の両立を進めました。

特に、昨年からの突発的なCOVID-19の感染拡大やインフレーション、また今後はデフレーションが懸念される中国では、衛生関連市場は緩やかに回復したものの、景気は不安定で、先行き不透明な状況が続いています。そのようななかで、当社は、高付加価値商品の需要喚起と新規販売チャネルの開拓を進めるなど、中国事業全体の構造改革を進めました。

国内においては、景気の持ち直しの動きが続くなかで、各カテゴリーにおいて高付加価値商品の需要を喚起するための新たな価値提案を継続しながら価値転嫁を進め、消費者からの支持を得て、高い市場シェアを維持しました。

このような経営環境のなか、当社グループは“世界中の全ての人々のために、快適と感動と喜びを与えるような、世界初・世界No.1の商品とサービスを提供しつづけます”の基本方針に基づき、世界中の人々が平等で不自由なく、その人らしさを尊重し、やさしさで包み支え合う、心つながる豊かな社会である「共生社会」=Social Inclusionの実現に向けて取り組みました。

 

この結果、当連結会計年度の業績は、売上高941,790百万円(前連結会計年度比4.9%増)、コア営業利益127,974百万円(前連結会計年度比7.0%増)、税引前当期利益132,308百万円(前連結会計年度比14.3%増)、当期利益97,982百万円(前連結会計年度比25.0%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益86,053百万円(前連結会計年度比27.3%増)となりました。

 

(b)経営成績に重要な影響を与える要因

「3 事業等のリスク」をご参照下さい。

 

(c)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当連結会計年度においては、一部海外連結子会社において為替リスク軽減等の観点から外部借入を行った以外は、営業キャッシュ・フロー(当連結会計年度は162,415百万円のプラス)を主要な財源としております。また、事業活動や投資、自己株式取得を含めた株主還元を目的とした資金需要はできる限り自己資金で対応できるように資金の流動性を十分確保するように努めております。

なお、当連結会計年度のキャッシュ・フロー分析については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」をご参照下さい。

2024年度の設備投資資金についても、自己資金をもって充当する予定であります。

 

(d)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当連結会計年度で終了した第11次中期経営計画及び現在遂行中の第12次中期経営計画が目標とする主な指標の状況は次のとおりであります。

第11次中期経営計画に関しまして、売上高は為替影響を除いても、市場シェアの拡大や新商品の市場での受入れ・浸透などで、目標を大幅に上回って達成しましたが、コア営業利益率は、物流費や原材料価格の高騰する中、価値転嫁や収益性の高い商品構成への対応を進めたものの、コスト上昇の影響を補いきれず、中期経営計画の目標に対して未達成に終わりました。ROEについては、コア営業利益の増益に加え、Unicharm India Private Ltd. アーメダバード工場において発生した火災に係る保険金受領によるその他の収益の増加により前連結会計年度比で良化したものの、中期経営計画の目標に対して未達成に終わりました。

第12次中期経営計画の初年度である次期連結会計年度は、原材料価格高騰の長期化や市場環境の変化が想定されるなか、持続的な高成長へ向け消費者ニーズに即した新商品開発及び市場創造を通した価値転嫁に努めるとともに、高収益、高成長市場であるウェルネスケア、ペットケアへの経営資源投下を促進し、事業構造の変革を図ってまいります。

 

前連結会計年度

(2022年度)

当連結会計年度

(2023年度)

第11次中期経営計画

目標(2023年度)

第12次中期経営計画

目標(2026年度)

売上高

898,022百万円

941,790百万円

888,000百万円

1,150,000百万円

売上高成長率

14.7%

(前年度比)

4.9%

(前年度比)

(注)6.9%

CAGR

(年平均成長率)

(注)6.9%

CAGR

(年平均成長率)

コア営業利益率

13.3%

13.6%

15.5%

15.8%

ROE

(親会社所有者帰属持分

当期利益率)

11.5%

13.1%

15.0%

15.0%

(注)売上高CAGR(年平均成長率)は、為替変動の影響を除いた数値を目標としております。

 

(e)戦略的現状と見通し

当社グループを取り巻く経営環境は、ウクライナ情勢などの地政学的リスク、新興国経済の動向、金融市場の変動など依然として先行きに不確実性が見られますが、当社が事業展開しているアジア各国・地域においては、景気は緩やかに回復していくと想定しております。国内においても同様に、長期化する原材料価格の高騰や諸物価上昇の懸念はあるものの、景気回復基調に転じると想定しております。

このような経営環境のなかで、海外では、各国・地域のニーズを捉えた商品の提供と、積極的な販売活動を通じて、市場を上回るスピードで成長し、活性化を図ってまいります。国内では、パーソナルケアにおいては、消費者ニーズを捉えた高付加価値商品の提供による価値転嫁を推進し、市場の活性化をリードし収益性の改善に努めてまいります。

 

(f)セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

「(1)経営成績等の状況の概要」をご参照下さい。

 

②重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成しております。

なお、重要性がある会計方針及び見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表に対する注記」に記載しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、“尽くし続けてこそNo.1”の理念のもと、“テクノロジーイノベーションで新たな価値を創造し続ける”を基本に、香川県観音寺市のテクニカルセンター及びエンジニアリングセンターを中心として、不織布技術、特殊高分子吸収技術、紙並びにパルプに関するノウハウの開発と改良を絶え間なく行い、カテゴリーNo.1製品の育成と製品開発から市場導入までのリードタイム短縮による効率化に取り組んでまいりました。

当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費は、9,818百万円(連結売上高比1.0%)であり、主な成果は下記のとおりであります。

 

(1)パーソナルケア

●ウェルネスケア関連商品

大人用排泄ケアブランド『ライフリー』より、使用済み紙パンツのリサイクルによって抽出した「パルプ」を使用した新製品『ライフリーRefF(リーフ)横モレ安心テープ止め』の「Sサイズ」と「Lサイズ」を九州地区の病院・介護施設で発売いたしました。2022年5月には吸水紙の一部にリサイクル原材料を活用した『ライフリーRefF(リーフ)横モレ安心テープ止め』の「Mサイズ」を製造し、同年6月から鹿児島県の一部の介護施設様で使用を開始しており、このたび、より多くの利用者様にご利用いただくため、サイズのラインアップを拡充いたしました。滅菌処理にオゾンを使用する独自技術を開発し、衛生的で安全なパルプを生成することができるようになったことで、「消費されない消費財」を目指し、使用済みの紙パンツのリサイクルに取り組んでまいりました。

パンツタイプカテゴリーにおいては、『ライフリー うす型軽快パンツ』を改良発売いたしました。ウエスト部分に超音波で接合する技術を採用することで、快適なはき心地を実現すると共に、紙パンツを梱包する際の圧縮率が改良され積載効率上昇による配送効率を改善するなど、環境負荷の軽減にも努めてまいりました。

軽失禁カテゴリーにおいては、下着のようなつけ心地の男性用吸水シート『ライフリー さわやか男性用快適シート(3cc/5cc/10cc)』を新発売いたしました。尿もれトラブルに対応するため、薄くて快適なつけ心地を実現し、シートには「ぴったりスリット」で身体の動きに合わせたフィット性と、「装着ポイントガイド」搭載で適切な装着位置が確認できます。

海外においては、タイにて、尿吸収パッドとの併用で、洗って何度も使える尿吸収パンツ『LIFREE Sanitary pants For use together』を新発売いたしました。また、中国にて、パンツタイプカテゴリーにおいては、長時間使用向けの『楽互宜長時間安心内袴型成人紙尿袴(M/L/XL/XXL)』、通気性が良く薄型の『楽互宜軽透气内袴型成人紙尿袴(M-L/L-XL)』を、軽度失禁カテゴリーにおいては、『楽互宜吸水巾成人紙尿片(245mm/285mm/360mm/均碼(all fit))』をそれぞれ新発売いたしました。インドネシアでは、テープタイプカテゴリーにおいて、ダウンシリの香りで臭いをマスキングする『Lifree Daun Sirih(M/L/XL)』、ベッドシートカテゴリーにおいて、それぞれ無香とダウンシリの香りの『Lifree PAD Perlak Antibacterial』『Lifree PAD Perlak Daun Sirih』を新発売いたしました。各国の開発拠点にて現地のニーズにあった製品開発を行い、ラインアップの拡充を図るなど市場の活性化に努めてまいりました。

 

マスクカテゴリーにおいては、『超快適®マスクAirlish(エアリッシュ)Light Gray(大きめ)』を新発売いたしました。マスクの着用は新型コロナウイルス感染などのウイルス飛沫対策の一環として日常生活に広く浸透してきました。このようななか、マスクには機能性だけでなく、装着性やデザイン性も求められており、2022年12月に顔がすっきり見える『超快適®マスクAirlish(エアリッシュ)Light Gray』を発売し、多くの方からご支持いただき、お客様より「もう少し大きめのサイズが欲しい」とのお声をお寄せいただきました。大きめサイズの追加によって『超快適®マスク』ブランドのラインアップの拡充を図ることで、お客様満足度の向上とともに、マスク市場の拡大に努めてまいりました。

 

●Kireiケア関連商品

「シルコットⓇ」ブランドから、シルクのような肌触りの『シルコットⓇフェイシャルタオル素肌おもい』を新発売いたしました。マスク生活の長期化により、お肌をいたわるスキンケアへの関心が高まっており、洗顔後の肌に残る水分をふき取るアイテムに肌への刺激が少ないシートを求める人が増えています。一般的な布製タオルのパイル※1の約1/20の細さの繊維を使用することで、肌への摩擦を抑えることができます。

また、中国では、フェイスマスクカテゴリーにおいて、ハーブの一種であるセンテラ、ウチワサボテンのエキスをそれぞれ配合した『尤妮佳silcot緊致修護面膜』『尤妮佳silcot緊致提亮面膜』を新発売いたしました。

国内外にてニーズにあった製品開発を行い、新規市場の活性化に努めてまいりました。

 

※1 丸いループ状の糸

 

●フェミニンケア関連商品

生理ケア用品ブランド『ソフィ』から、『ソフィ 妊活タイミング※1をチェックできるおりものシート』を新発売いたしました。妊活中の女性の悩みを解決するため、『ソフィ』が独自に開発した妊活おしらせ物質を検出するバイオテスター技術によっておりものに反応し、その物質を検出すると2本線が現れるおりものシートで、妊娠活動※2をサポートする商品・サービスの開発に取り組んでまいりました。

また、肌にやさしいと好評の生理用ナプキン『ソフィ はだおもいオーガニックコットン※3極うすスリム』から、『特に多い昼用26㎝/特に多い昼用23㎝/軽い日用17.5㎝』を新発売いたしました。

海外においては、インドネシアにて、『CHARM Daun Sirih + Herbal Bio』を世界環境デーに合わせて期間限定発売いたしました。石油エネルギー問題に対応するため、昨年から環境に配慮した素材を使用した生理用品を発売しており、今年は肌に触れる表面シートに「搾汁後のサトウキビ」や石灰岩、ボタニカルオイル、天然樹脂といった“BIO MATERIAL”※4を原材料に用い、さらに石油由来原材料の使用量削減に努めました。また、中国にて、8時間の抑菌効果により、一晩中安心して眠れる『超熟睡抑菌系列極薄夜用(35cm/42cm)』を新発売いたしました。このほか、進出している各国・地域において現地のニーズにあった製品開発を行い、お客様満足度の向上を図ってまいりました。

 

※1 妊活に適したタイミングである「排卵時期を含む約6日間」のこと

※2 妊娠についての知識を身に付けたり、家族などとの話し合い、妊娠にあたって自分の身体の現状把握、医療による不妊治療などといった一連の活動のこと

※3 デリケートゾーンが触れる面の上層に100%オーガニックコットンを使用しています

※4 “BIO MATERIAL”は、バイオマスもしくは、バイオミネラル原料を使用した素材のこと

 

●ベビーケア関連商品

紙おむつ『ムーニー』ブランドから、はじめてのおむつ替えでも、正しい位置に簡単に装着できる「おしりガイド」を『ムーニーナチュラル(NB3000g/NB5000g/S)』『ムーニー(NB3000g/NB5000g/S)』に搭載いたしました。おしりガイドのマークは、赤ちゃんのおしりを正しく置く場所を示し、簡単におむつ替えができるようになっており、おしりガイドの効果性は脳波計実験により、従来品との比較でストレス値が30%減少いたしました。

また、多くの方にご愛用頂いている「ドラえもんデザイン」の紙おむつ『マミーポコ』ブランドから、大きめ設計で体重9kgまで長く使える『マミーポコパンツ Sサイズ』、低月齢のお子さまのおしっこの夜間モレにも安心してお使いいただける『マミーポコ夜用パンツ Mサイズ』を、それぞれ新発売いたしました。

海外においては、ベトナムにて、「Bobby(ボビー)」ブランドから、世界初※1片側が開閉できる赤ちゃん用紙パンツ『Bobby One side Open Pants(NB-S/S-M)』を新発売いたしました。ベトナムの保護者様は、「赤ちゃんの足を引っ張りあげてのおむつ交換は股関節脱臼につながる恐れがある」といった考えが浸透していますが、紙パンツのウエスト部分の片側が開閉できるので、新生児期の赤ちゃんを寝かせた状態で足を引っ張りあげることなく交換が可能です。また、タイにて、蚊に刺されることによるデング熱の感染を防止できるよう、嫌蚊効果の有るレモングラスの香り付きおむつ『MamyPoko pants Antimos(S/M/L/XL)』を新発売いたしました。このほか、インドネシア・インド・サウジアラビアなど各国の開発拠点を中心に、品質機能面での改良を図ってまいりました。

 

※1 主要なグローバルメーカーで販売されるベビー用紙パンツブランドにおいて、片方の胴回りの側面が開閉可能で、尚且つ、他方側の長さより長い構造体(2022年10月ユニ・チャーム㈱調べ)

 

●研究成果

クレインバイオ社、京都看護大学と共同研究の結果、女性の分泌物質である“おりもの”に、排卵日の予測に必要な黄体形成ホルモン(LH)※1を発見いたしました。また、“おりもの”によって排卵日を判定する感度※2は86%であることが確認でき、「排卵日を含む6日間」※3に90%の割合でLHが分泌されることが確認できました。本研究は、『妊活タイミングをチェックできるおりものシート』の開発検証に応用されております。

 

※1 妊活に適したタイミングである「排卵時期を含む約6日間」のこと

※2 感度とは、陽性を正しく陽性と判定できる割合

※3 妊娠可能な時期のこと、また妊娠活動にはこの6日間を捉えることが重要

 

以上の結果、当連結会計年度のパーソナルケアにおける研究開発費は、7,709百万円となりました。

(2)ペットケア

ペットケアにおける研究開発活動は、事業理念である“ペットが心身ともに健康で、ずっと一緒にいることができる幸せに溢れた生活を創造する”を基本に、ペットフード製品は兵庫県伊丹市にある当社工場内にて、ペットトイレタリー製品は香川県観音寺市にて、開発を行っております。

 

ペットフード製品においては、ペットが健康で長生きするため、年齢・体格といったそれぞれのペットの特徴に応じて必要な栄養バランスを実現しながら、よりペットに喜ばれるおいしさを実現した製品の開発に取り組んでおります。

犬用フードにおいて、遠赤外線で焼き上げた粒とフリーズドライの素材を脱酸素剤入りでアルミ蒸着包装することで、いつでも美味しさを実感できる『グラン・デリ Frecious(フレシャス)』シリーズから、愛犬の避妊・去勢手術の割合が約6割に達し、手術後は「肥満」や「運動不足」に陥りやすく、「筋力の低下」などを気にかけている飼い主様の声にお応えして、『避妊・去勢した犬の体重ケア』を発売しました。また、飼い主様の「愛犬といっしょに食事やおやつを楽しみたい」というご要望にお応えして、森永製菓株式会社と共同開発した『グラン・デリ ワンちゃん専用 マリービスケット』を新発売するなど、犬のフード市場の拡大に努めてまいりました。

猫用フードにおいて、着色料・香料不使用で、食事の吐き戻し軽減を中心とした7つの機能で健康をサポートする『All Well』を中国市場へ向け『佳楽滋 悦倍』として現地生産を開始し新発売いたしました。また、『銀のスプーン 三ツ星グルメ』シリーズから、愛猫の「食事に飽きっぽいことが気になる」という飼い主様の悩みにお応えし、お魚味の旨みがたっぷりしみこんだ『しみ旨お魚仕立て』を新発売いたしました。猫用ウェットフードの「栄養バランス」に対する関心の高まりにお応えし、『銀のスプーン パウチ』 から“総合栄養食”を8SKU、またインドネシアでは、日本で培った天然旨味成分配合技術を駆使し、原材料に鮮魚を100%使用した猫用おやつ『Deli-Joy』を新発売いたしました。着色料を一切使用せず、また豚肉の成分が入っていないため、ムスリムの消費者様にも安心してご使用いただける仕様となっており、世界各国のペットの健康で幸せな毎日をサポートできるよう取り組んでまいりました。

 

ペットトイレタリー製品においては、若い世代を中心に環境意識が高まっていることをうけ、原料の一部にバイオマス資源(植物由来原材料)を使用した、『デオトイレ 子猫~5kgの成猫用本体セット・ハーフカバー本体セット』を、期間限定で新発売いたしました。

また、複数のねこちゃんを飼育している飼い主様に向けて、消臭機能を強化した『デオトイレ 複数ねこ用 ふんわり香る消臭・抗菌シート(ナチュラルガーデンの香り/ナチュラルソープの香り)』を新発売いたしました。複数のねこちゃんを飼育されている方が増えており、消臭芳香成分を含む商品の市場構成比が高まっていることから、ニーズに応えたラインアップの拡充を図ることで、お客様満足度の向上とともに、猫用トイレ市場の拡大に努めてまいりました。

ペット用吸収ウェアにおいては、ねこちゃんのいわゆる“マーキング”や、トイレ以外での粗相といった排泄トラブルへの対処として、多くの飼い主様にご愛用いただいております「マナーウェア」ねこ用において、大きなねこちゃんの体型にフィットする『マナーウェア ねこ用 Lサイズ』を新発売いたしました。

また、犬用においては、近年ではマンションなどでも世話がしやすいことから、体重が1.0~2.5㎏の超小型犬種を愛犬に選ばれる方が増えています。しかしながら、従来の『マナーウェア』では、超小型犬や子犬の体形に適切なサイズがなく、フィット感などで御満足をいただけておりませんでした。そこでこのたび、超小型犬に合わせた『マナーウェア SSSSサイズ』を新発売いたしました。さらに、愛犬とオシャレを楽しめる『マナーウェア シンプルデザイン 男の子用(SSS/SS/S/M/L)/女の子用(SSS/SS/S/M/L)』を新発売するなど、『マナーウェア』ブランドのラインアップの拡充を図るなど市場の活性化に努めてまいりました。

 

以上の結果、当連結会計年度のペットケアにおける研究開発費は、2,108百万円となりました。

 

(3)その他

不織布・吸収体の技術を活かした業務用製品分野の製品ラインを拡充いたしました。

 

以上の結果、当連結会計年度のその他における研究開発費は、1百万円となりました。