第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

 当社グループは、"Smart Work, Smart Life~テクノロジーでビジネススタイルをスマートに"をミッションに掲げております。ミッションの実現に向けて、当社ではITを活用して顧客の業務を効率化するサービスを提供することで、企業と働く人の生産性向上に貢献し続けて参りたいと考えております。

 

(2)経営戦略等

 当社グループは、SMSの配信プラットフォーム「絶対リーチ!SMS」を主力サービスとして位置付け、顧客への直販及び販売代理店の開拓により事業を拡大して参りました。また、HR関連サービスを第2の収益の柱とすべく事業を推進して参りましたが、昨今のメッセージング領域の市場成長のスピード及びポテンシャル、当社のポジショニング等を鑑みる中で、メッセージング領域への経営資源の選択と集中を進めることが、今後の事業成長・企業価値向上のために最善の選択であると判断し、HR関連サービスを終了することといたしました。なお、更なる収益拡大のため、SMSの新たな利用シーンを開拓し、AIの活用により顧客への価値提供を目指すことを「Smart AI Engagement事業」として取り組んで参ります。

 またM&Aやベンチャー投資により自社事業周辺領域への進出を行い、市場でのポジショニング確立及び占有率の更なる拡大により成長を加速させて参りたいと考えております。

 

(3)経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、収益性と効率性の拡大に伴い企業価値の向上を経営目標としております。経営指標としては、「売上高営業利益率」を重視しております。

 

(4)経営環境

 我が国経済は、各種政策の効果もあり、緩やかな景気回復が見られます。他方で、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクや物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある状況となっております。

 当社グループのサービスを展開するビジネスコミュニケーションプラットフォーム関連の市場は成長を続けており、2028年度にはSMSの配信数が9,506百万通にも及ぶという調査結果(出所:デロイト トーマツ ミック経済研究所「ミックITリポート2024年1月号」)があります。今後も、本人認証や未入金の督促等の通知だけでなく、SMSの次世代規格である、「RCS(Rich Communication Services)」が適したプロモーション、マーケティングオートメーションとの連携が進むことで、関連市場は高い成長を続けていくものと予測されております。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 (1)及び(2)に記載の、経営方針及び経営戦略等を実行していく上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下の通りであります。

 

① システム及びセキュリティの強化

 当社グループは、収益の基盤となるサービスをインターネット上で展開していることから、システム稼働の安定性を確保することが経営上の重要な課題であると認識しております。そのため、システムを安全かつ安定的に稼働させるための人員体制の強化及びセキュリティ品質の向上に努めて参ります。

 

② 優秀な人材の採用及び育成

 当社グループは、AIでコミュニケーションの次元を高める会社を目指し、組織力、営業力、開発力を高め、ユーザーの多様なニーズに最適に対応し、当社グループの成長を確かなものとすることが最重要課題と考えております。そのため、優秀なグローバル人材やデータサイエンティストの採用と既存従業員のスキルの底上げを実施し、従業員に対して魅力的な労働環境を提供すると共に当社グループのミッション・バリューを深く浸透させ、優秀な人材を育成するよう努めて参ります。

 

③ 内部管理体制の強化

 当社グループは、今後もより一層の事業拡大を見込んでおります。そのため、当社グループの持続的な成長を支える盤石な内部管理体制の構築を図ると共に、金融商品取引法における内部統制報告制度の適用や子会社管理等を行い、より一層のコーポレート・ガバナンスの充実に取り組んで参ります。

 

④ 知的財産権の確保

 当社グループでは、日々の開発業務から生じた新規性のある独自技術を保護するために、当社グループ単独又は共同開発企業と共同で、特許権等の知的財産権の取得を図っております。しかしながら、AIに関する開発分野においては、多くの国内外企業が積極的に取り組んでいるため、当社グループも特許権等の取得により当社グループの活動領域を確保することが課題であると考えております。今後、様々な業界において有用な知見が得られることが期待されるため、他社に先駆けて戦略的な特許権等の取得に取り組んで参ります。

 

⑤ 新技術への対応

 当社グループが事業を行うAI関連の技術は、世界的に研究開発が活発に行われております。このような環境の下で当社グループが事業を継続的に拡大していくためには、様々な新技術に適時に対応していくことが必要であると認識しております。そのため、最先端の情報収集に努め、最先端の技術の開発と導入を行いながら技術力の向上に取り組んで参ります。

 

⑥ 携帯電話事業者との関係強化

 携帯電話事業者により、SMS送信単価の引き上げや契約が継続できなかった場合に、業績に重要な影響を及ぼすと考えております。そのため携帯電話事業者との強固なリレーションを継続し、今後より深い関係を構築できるよう努めて参ります。

 

⑦ 新規事業の創出

 経営環境が急激に変化する中、当社グループがサステナブルに企業価値を向上させていくためには、新規事業の創出による収益の多様化を図っていくことが必要であると考えております。このような環境下、従来より取り組んできたAIを活用したサービスの早期事業化を図り、メッセージングサービスとの融合により、顧客への提供価値の拡張性を高める仕組みづくりに積極的に挑戦して参ります。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)サステナビリティ全般に関するガバナンス

 当社グループは、"Smart Work, Smart Life~テクノロジーでビジネススタイルをスマートに"をミッションに掲げております。ミッションの実現に向けて、当社グループではITを活用して顧客の業務を効率化するサービスを提供することで、企業と働く人の生産性向上に貢献し続けて参りたいと考えております。

 サステナビリティに関する方針や戦略の検討、立案について適切に対応していくための体制の整備を行い、サステナビリティへの取り組みを推進することを検討しております。また、重要な案件については、取締役会への報告を行い、適切な意思決定と監督を行うことで、実効性を確保して参ります。

 

(2)サステナビリティ全般に関するリスク管理

当社グループは「リスク管理規程」を設定し、事業の継続及び安定的発展の確保や地球環境を含めたステークホルダーの利益阻害要因の除去・軽減、役職員のコンプライアンスの精神に則った行動の推進を強化しております。

また、取締役を中心に構成するリスク・コンプライアンス委員会を設置し、原則として四半期に1度開催し、諸法令等に対する役職員の意識向上及び様々なリスクに対する対応策等について協議し、リスクマネジメントの推進及びコンプライアンスの徹底を図っております。

 

(3)重要なサステナビリティ項目

 上記ガバナンス及びリスク管理を通して識別された当社グループにおける重要なサステナビリティ項目は、人的資本であると認識しております。人的資本に係る当社の戦略、指標及び目標は次の通りです。

 

① 戦略

 当社グループのSmart AI Engagement事業における収益確保を継続するため、優秀な人材を獲得し続ける必要があると考えております。しかしながら、今後の働く人口と求人案件数の需給バランスを考慮すると採用難易度が上がることが考えられます。そのため、人材採用において従来の採用手法に加え、当社グループ自身の採用力強化が必要だと考えております。なお、採用強化のための各方針については以下の通りです。

(ア) 人材採用

 人材採用に関して、今までは人材紹介をメインに利用して参りました。しかしながら先述の通り、現在よりも採用難易度が上がることが考えられるため、リファラル採用(注1)や、ダイレクトリクルーティング(注2)に注力して参ります。
 ダイレクトリクルーティングにおいては、面接や面談などで1度何らかの機会により接点があった求職者情報を本人同意の下に蓄積し、当社求人状況と人材の転職タイミングがあった際に改めて面接を行うというタレントプールの手法を取り入れ、他社を経験しスキルアップした優秀な人材を効率的に採用するプロセスを構築いたします。

(イ) エンゲージメント

 採用力強化のために、社内エンゲージメント(注3)の向上が重要であると考えており、社内エンゲージメントの向上施策として「賞賛の総量を増やす」取り組みに注力し個人間の信頼とよりコミュニケーションを取りやすい環境の醸成及び社内活性化を推進して参ります。

② 指標及び目標

 当社グループでは「① 戦略」に記載の方針で取り組みを行っているものの、本報告書提出日現在において、具体的な指標及び目標を設定しておりません。

今後、各方針に関連するデータの収集及び分析を進め、具体的な指標及び目標を設定し、その進捗に合わせて開示項目を検討して参ります。

 

(注1)リファラル採用:自社の社員に採用条件とマッチする知人や友人を紹介してもらい、採用選考につなげる採用手法。

(注2)ダイレクトリクルーティング:「欲しい」人材を採用するために、企業自身が採れる手段を主体的に考え、能動的に実行する採用活動。

(注3)社内エンゲージメント:自社社員が仕事に対して積極的に関わり、貢献意欲ややりがいを感じる状態を表す指標。

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、以下の記載は、当社株式への投資に関連する全てのリスクを網羅するものではありませんので、ご留意ください。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)市場動向に係るリスク

 当社グループが属するビジネスコミュニケーションプラットフォーム関連の市場は成長を続けており、サービスの導入が進むことによって、今後も高い成長を続けていくことが予想されます。しかしながら、SMS配信サービス市場でいえば、当社グループを含め4社により市場の大半を占めて寡占市場となっています。それゆえ、市場の成長スピードが大きく鈍化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。そして、逆に市場の拡大が急速に進んだ場合であっても、当社グループが同様のペースで順調に成長しない可能性があります。さらには、市場が成熟していないため、今後、新規参入等により市場シェアの構成が急激に変化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)競合他社に係るリスク

 当社グループのSmart AI Engagement事業としては、「メッセージングサービス」及び「HR関連サービス」を展開しており、当連結会計年度末において、国内外に競合他社が存在しております。当社グループとしましては、これまで培ってきた技術を生かして、顧客のニーズに合致したサービスの開発を継続して参りますが、競争環境の更なる激化等、競合の状況によっては、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)取引先に対する依存に係るリスク

 ①取引先に関するリスク

 当社グループの売上高のうち、メッセージングサービスの海外の主要顧客割合が15.0%を占めております。同社の方針変更等により大幅に金額が減少した場合に当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 ②仕入先に関するリスク

 SMS配信プラットフォームを運営するに当たり、当社は主要な携帯電話事業者4社と直接接続契約を締結しており、当社グループでは企業から依頼された配信コンテンツを当社システムから携帯電話事業者のSMS配信ルートを利用して、一般ユーザーに配信しております。現在、携帯電話事業者と当社の間の契約の継続に支障を来す要因は発生しておりませんが、携帯電話事業者の経営方針が変更となった場合、SMS送信単価の引き上げ等が実施された場合、その他何かしらの事情により当社といずれかの携帯電話事業者との契約が継続できなかった場合に、業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)技術革新に係るリスク

 当社グループが、サービスを提供するAI技術を活用した業界においては新技術の開発及びそれに基づく新サービスの導入が頻繁に行われており非常に変化の激しい業界となっております。そのため常に新しい技術要素を取り入れて参りますが、何らかの理由で技術革新への対応が遅れた場合、当社グループが提供するサービスの競争力が低下する可能性があります。また、新技術への対応のため、予定していないシステムの投資が必要となった場合、当社の事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(5)システム障害に係るリスク

 当社グループの事業は、サービスの基盤をインターネットに依存しているため、自然災害や事故等により通信ネットワークが遮断された場合には、サービスを提供することが不可能となる場合があります。また、アクセスの一時的な増加による負荷増大によって、当社のサーバーが停止し、サービス提供に支障が出る場合があります。

 さらには、外部からの不正な手段によるコンピューター内への侵入等の犯罪や当社担当者の過誤等によって、当社のシステムに重大な影響が出る場合があります。当社といたしましては、定期的なシステムのバックアップを実施すると共に、外部のデータセンターを利用することでセキュリティ強化や安定的なシステム運用ができるような体制の構築に努めておりますが、前述のような状況が発生した場合には、当社への損害賠償請求等により直接的な損害が生じる可能性の他、当社グループ及び当社システムへの信頼の低下により、間接的に当社の事業及び業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)人材の確保及び育成に係るリスク

 当社グループが、今後更なる業容拡大に対応するためには、継続して優秀な人材の確保、育成することが重要な課題となります。現在も採用活動による人材の獲得に加え、入社後の社内における研修・育成等、人材の流出に対応した各種施策を推進しております。しかし、人材の採用や社内における人材の育成が計画通りに進まず、適正な人員配置が困難になった場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(7)顧客情報の管理に係るリスク

 当社グループは、提供するサービスに関連して顧客企業の機密情報や個人情報を取扱っております。これらの情報資産を保護するため、プライバシーマーク(有効期限:2024年10月16日)及びISO/IEC 27001:2013(有効期限:2024年8月28日)を取得している他、情報セキュリティに関する方針を定め、この方針に従って情報資産を適切に管理、保護しております。しかしながら、このような対策にもかかわらず重要な情報資産が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用の失墜、損害賠償請求の発生等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。また、個人情報に関する事故等の発生や重大な認証違反があり不適合の是正進捗がない場合は、認証取消となり当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 

(8)法的規制に係るリスク

 ①電気通信事業法

 当社グループは、電気通信事業者として総務省に届出を行っており、電気通信事業法に基づく通信役務の提供を行っております。今後、これらの法令や規則等の予測不能な変更あるいは新設が各事業の営業成績に影響を及ぼす可能性があります。また、当該法令に基づく命令若しくは処分に違反した場合において、公共の利益を阻害すると認められた場合、許認可取消を受ける可能性があります。

 当社グループは、当該法令の遵守に努めており、当連結会計年度末において、こうした取消事由に該当する事項は生じておりませんが、かかる事態が発生した場合には、当社事業及び業績に影響を与える可能性があります。

 ②特定電子メールの送信の適正化等に関する法律

 特定電子メールの送信の適正化等に関する法律は、一時に多数の者に対してなされる特定電子メールの送信等による電子メールの送受信上の支障を防止する必要性が生じていることに鑑み、電子メールの利用についての良好な環境の整備を図り、高度情報通信社会の健全な発展に寄与することを目的としており、SMS配信も対象となっております。

 当社グループでは、SMS配信審査の中で法令違反が発生しないように利用目的を事前に確認する等の対応を行っておりますが、万一当社顧客が法令違反をし、業務改善命令や罰則等を受けた場合に当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(9)知的財産権に係るリスク

 当社グループは、運営するサービスに関する知的財産権の獲得に努めております。また、第三者の知的財産権を侵害しないよう、十分注意を払っております。しかしながら、今後当社グループが属する事業分野において第三者の権利侵害が成立した場合は、第三者より損害賠償及び使用差止め等の訴えを起こされる可能性及び権利に関する使用料等の対価の支払いが発生する可能性があり、また当社グループの知的財産権が侵害された場合においても、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)自然災害、事故等に係るリスク

 当社グループでは、自然災害、事故等に備え、定期的なバックアップ、稼働状況の監視等によりトラブルの事前防止または回避に努めておりますが、当社グループ所在地周辺において、大地震等の自然災害が発生した場合、当社グループ設備の破壊や電力供給の制限等の事業継続に支障を来す事象が発生して、当社グループの事業及び業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)内部管理体制に係るリスク

 当社グループは、企業価値の持続的な増大を図るためには、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識の下、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しております。

 また、小規模組織の当社グループでは特定の人材に過度に依存しないよう組織的な経営体制を整備し、全般的な経営リスクの軽減に努めると共に、管理体制の整備・強化を図っております。しかしながら、管理体制の拡充を上回る速度で拡大した場合、適切な代替要員の不在や人員増強の遅延等により、当社グループの内部管理体制に支障が生ずる可能性があります。

 

(12)新株予約権の行使による株主価値の希薄化に係るリスク

 当社グループは、取締役及び従業員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブ等を目的として、新株予約権を付与している他、今後も優秀な人材確保のため新株予約権を発行する可能性があります。現在付与されている、または今後付与する新株予約権の行使が行われた場合、発行済株式総数が増加し、1株当たりの株式価値を希薄化させる可能性があります。当連結会計年度末、これらの新株予約権による潜在株式数は194,090株であり、発行済株式総数4,037,350株の4.81%に相当しております。なお、新株予約権の詳細は、後記「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

(13)訴訟等に係るリスク

 当社グループでは、これまでに訴訟は発生しておりません。しかしながら、将来において当社の取締役、従業員の法令違反等の有無にかかわらず、予期せぬトラブルや訴訟等が発生する可能性は否定できません。かかる訴訟が発生した場合には、その内容や賠償金額によって、当社グループの業績及び事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)資本提携及びM&Aに関するリスク

 当社グループは、事業規模の拡大や営業基盤の強化による収益性及び競争力向上を目的として、当社グループ

の事業と関連性があり、事象シナジーを見込める企業を対象とした資本業務提携及びM&Aを積極的に実施して参ります。このような活動においては、譲受対価によっては償却費用が増加し、あるいは提携先及び出資先の業績によっては、評価損を計上する等の状況となり、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、M&Aにおいては、のれん計上後の経営環境の変動等により、のれんの超過収益力が著しく低下した場合には減損損失が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当該リスクへの対応については、当社グループでは、経営会議及び取締役会において、案件の妥当性及び合理性を慎重に審議し実行し、M&A後のモニタリング状況についても同様の会議体において報告を行い、リスクの把握に努めて参ります。

 

(15)ソフトウエアの投資に関するリスク

 当社グループにおけるソフトウエア投資は、競争力の確保及び維持、収益力向上の観点で重要であり、継続的かつ積極的なソフトウエア投資が重要課題の一つとなっております。当社グループにおいては、ソフトウエアの開発計画の大幅な遅延、開発コストの増加、収益計画の下振れ等により、投資回収が当初計画どおり見込めない場合には減損損失が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループでは、当該リスクへの対応について、経営会議及び取締役会にて案件の妥当性及び合理性等を慎重に審議し投資を行っており、投資実行後も定期的なモニタリングを行い、同様の会議体において報告を行い、減損に関するリスク回避をするように努めております。

 

(16)CVC投資に関するリスク

 当社グループにおけるCVC事業は、コミュニケーション事業領域のスタートアップ企業や女性起業家を中心に投資を展開しております。具体的な投資対象は、当社グループにおける既存事業領域の拡大、新規事業創出に繋がる独自の技術・サービスを持つ国内外のスタートアップ企業が対象となります。従いまして、実質的な財務リターンを求めるというよりは、戦略リターンを重点においた投資を行っております。

 投資に際しては、当社グループが定める投資ルールに基づく投資・運用プロセスに従い、投資検討時は詳細なデューデリジェンス、投資実施後は事業進捗に対する定期的にモニタリング等を徹底し、可能な限りリスクを回避するよう努めております。

 しかしながら、投資先企業の財政状況の悪化などにより、投資価値が毀損したと判断した場合には減損計上の処理を行います。これら減損処理により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響が及ぶ可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次の通りであります。

 

 ①財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べて87,384千円増加し、2,124,610千円となりました。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べて107,980千円増加し、1,876,017千円となりました。これは主に、未収消費税等が73,741千円、未収法人税等が37,186千円それぞれ減少した一方で、現金及び預金が42,234千円、預け金が155,130千円それぞれ増加したことによるものであります。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べて20,596千円減少し、248,593千円となりました。これは主に、ソフトウエアが19,456千円、繰延税金資産が23,435千円それぞれ増加した一方で、建物(純額)が14,909千円、ソフトウエア仮勘定が19,513千円、投資有価証券が10,223千円、差入保証金が23,088千円それぞれ減少したことによるものであります。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べて41,794千円増加し、445,127千円となりました。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べて48,190千円増加し、442,442千円となりました。これは主に、買掛金が75,543千円減少した一方で、未払金が24,034千円、未払法人税等が84,476千円それぞれ増加したことによるものであります。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べて6,396千円減少し、2,685千円となりました。これは長期借入金が6,396千円減少したことによるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べて45,590千円増加し、1,679,483千円となりました。これは主に、自己株式の取得により自己株式が144,649千円増加した一方で、資本金が10,271千円、資本剰余金が10,271千円、利益剰余金が156,724千円、新株予約権が13,308千円それぞれ増加したことによるものであります。

 

 ②経営成績の状況

 我が国経済は、各種政策の効果もあり、緩やかな景気回復が見られます。他方で、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクや物価上昇、金融資本市場の変動等の影響に十分注意する必要がある状況となっております。

 当社グループのサービスを展開するビジネスコミュニケーションプラットフォーム関連の市場は成長を続けており、2028年度にはSMSの配信数が9,506百万通にも及ぶという調査結果(出所:デロイト トーマツ ミック経済研究所「ミックITリポート2024年1月号」)があります。今後も、本人認証や未入金の督促等の通知だけでなく、SMSの次世代規格である、「RCS(Rich Communication Services)」が適したプロモーション、マーケティングオートメーションとの連携が進むことで、関連市場は高い成長を続けていくものと予測されております。

 このような事業環境の中、当社グループは 「Smart Work, Smart Life」の理念の下、コミュニケーションの次元を高めることを目指し、企業の更なる業務効率向上と、働く従業員の多様な働き方の革新を支援するテクノロジーカンパニーとして、メッセージングサービスであるSMS配信プラットフォーム「絶対リーチ!SMS」及びRCS配信及びチャットボットプラットフォーム「Smart X Chat」を展開し、配信数を拡大しております。一方で、配信の平均単価は減少傾向であり、配信価値向上のため、新たなSMS活用方法の検討やデータ分析のメッセージングサービスへの取り込みについて研究、開発を進めて参りました。

 当社の連結子会社であるAIX Tech Ventures株式会社が保有する投資有価証券のうち、簿価に比べて実質価額が著しく下落したものについて投資有価証券評価損28,684千円を計上いたしました。

 これらの結果、当連結会計年度の業績は、売上高3,254,384千円(前年同期比1.5%減)、営業利益292,247千円(前年同期比30.8%増)、経常利益291,136千円(前年同期比33.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益156,724千円(前年同期比64.4%増)となりました。

 

 ③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末より42,234千円増加し、1,254,762千円となりました。

 当連結会計年度末における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は360,657千円(前連結会計年度は4,271千円の支出)となりました。これは主に、増加要因として税金等調整前当期純利益246,838千円、未収消費税等の減少額74,681千円、減少要因として仕入債務の減少額75,543千円によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果支出した資金は29,313千円(前年同期比68.9%減)となりました。これは主に、差入保証金の回収による収入23,769千円、投資有価証券の取得による支出19,980千円、無形固定資産の取得による支出23,066千円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果支出した資金は289,109千円(前連結会計年度は15,743千円の支出)となりました。これは主に、新株予約権の行使による株式の発行による収入20,543千円、自己株式の取得による支出145,126千円、自己株式取得のための預け金増加額155,130千円によるものであります。

 

 ④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。

 

b.受注実績

提供するサービスの性質上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績は次の通りであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

Smart AI Engagement事業

3,254,384

98.47

合計

3,254,384

98.47

(注)1.当社の事業セグメントは、Smart AI Engagement事業の単一セグメントであるため、サービス別の販売実績は次の通りです。

サービスの名称

当連結会計年度

(自  2023年1月1日

至  2023年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

メッセージングサービス

3,233,097

98.13

HR関連サービス

21,287

205.45

合計

3,254,384

98.47

 

(注)2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次の通りであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Twilio Inc.

937,766

28.3

488,619

15.0

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において認識及び分析・検討したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成に当たって、経営者により、一定の会計基準の範囲内で、かつ、合理的であると考えられる見積りについては、過去実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、見積りには不確実性が伴うため、実際の結果はこれらの見積りと異なる場合があります。

 詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載の通りであります。

 当社グループの連結財務諸表の作成に当たって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)4.会計方針に関する事項」に記載しております。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態

 財政状態の状況分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載の通りであります。

 

b.経営成績

 経営成績の状況分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載の通りであります。

 

c.キャッシュ・フローの状況

 キャッシュ・フローの状況分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載の通りであります。

 

d.経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りであります。

 

e.資本の財源及び資金の流動性についての分析

 当社グループは、事業上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、営業活動によるキャッシュ・フローの他、一部資金を金融機関からの借入等により調達しております。なお、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は1,254,762千円となっており、当面事業を継続していく上で十分な流動性を確保しております。

 

5【経営上の重要な契約等】

携帯通信事業者との契約

相手方の名称

契約又は申込の名称

契約期間又は申込日

㈱NTTドコモ

電気通信サービスの提供に関する契約書

2022年11月1日から2024年10月31日

KDDI㈱

SMS(Cメール)配信システム使用契約書

2013年7月1日から2014年6月30日

(以後1年ごとの自動更新)

ソフトバンク㈱

API接続契約申込書

利用開始申込日 2017年12月8日

楽天モバイル㈱

楽天SMS配信サービス申込書

利用開始申込日 2019年9月17日

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、研究開発部門において、AI技術を活用したSmart AI Engagementの研究開発を行っております。研究開発体制としては、当該分野における研究経験や製品の開発経験がある者等、高い専門性を有するメンバーを中心に研究開発を行うと共に、当該分野の第1人者である東京大学の杉山将教授も顧問に加わっていただいております。

 なお、当社グループはSmart AI Engagement事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 当連結会計年度における研究開発費の総額は28,665千円であります。