第2  【事業の状況】

 

1  【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループでは、創業100周年にあたる2029年を見据え、Missionとして「感受性のスイッチを全開にする」、Visionとして「ブランドひとつひとつの異なる個性を生かして、世界中の人々の人生を彩る企業グループ」、更にこれらを実現するための5つの行動指針を加えたグループ理念を掲げております。この企業理念のもと、個性・特徴を持ったブランドを複数保有し、それぞれの事業が成長することでグループ全体の企業価値向上を図っていく「マルチブランド戦略」を展開しております。グループ各社の自主自立した経営を志向し、持株会社である当社はグループ各社の経営に対するモニタリング機能を持つことで、グループ全体の経営の健全性確保と効率性向上に努めております。

 

(2) 目標とする経営指標(2024年~2026年)

2024年から始まる新たな中期経営計画は、3カ年平均の連結売上高成長率5%(国内+4%、海外+12%)、2026年時点で連結売上高2,000億円を目指します。連結営業利益率は12~13%の達成を計画しております。また、ROEは10%以上、配当性向は引き続き60%以上を目標値としております。加えて、引き続き重点テーマである海外売上高比率は、2026年末までに20%まで高めることを目標としております。

 

(3) 経営環境及び対処すべき課題

 今後のわが国の経済は、雇用・所得環境が改善する中で、緩やかな回復が続くことが見込まれます。一方で、世界的な金融引締めに伴う影響や中国経済の先行き懸念等の海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスク、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動等の影響について十分注意が必要な状況です。また、消費者の価値観やニーズ、ライフスタイルの多様化が益々進む今日では、これらの変化に柔軟かつ速やかな対応を実現すべく、デジタルテクノロジーの応用や消費者ニーズに応える新製品・新サービスの提供は勿論、新規事業開発、新領域の開拓といった取り組みの重要性は更に高まってくると考えております。

 このような状況の中、当社グループは、長期経営計画・VISION 2029の達成に向けた2ndステージとして、2024年から始まる新たな中期経営計画の重点戦略として、4つの事業成長戦略「国内事業の顧客基盤強化、持続的成長と収益性改善」「海外事業の更なる成長と新市場での基盤確立」「育成ブランドの成長を伴う黒字化による持続的収益貢献」「ブランドポートフォリオ拡充と事業領域拡張」と、それを支える持続的な経営基盤の強化として「新価値創出に向けた研究開発力強化」「社会課題対応と独自性を兼ね備えたサステナビリティ強化」と掲げ、事業成長を加速させるべく以下に取り組んでまいります。

 

① 国内事業の顧客基盤強化、持続的成長と収益性改善

●国内既存ブランドにおける利益創出力向上と持続的な成長を実現するとともに、成長領域・新規事業投資の原資とする

<POLAブランド>

・新規顧客獲得から高LTV化までの転換促進を実現するブランド体験(One POLAモデル)の構築

・顧客とのリレーション構築の柱となるオフラインは新たなサロンモデルを展開

<ORBISブランド>

・スキンケアを軸にした直販事業の安定成長と強固な利益基盤の構築

・未開拓市場へ参入し、新領域でのトップライン拡大

 

② 海外事業の更なる成長と新市場での基盤確立

中国市場における再成長

・中国事業の統括会社設立が完了。現地主導のグループ横断体制を構築

・POLAブランドを軸とした事業拡大とマルチブランドでの成長を実現するために、

 グループの経営資源を集中的に投下

・POLAブランドは中国大陸を引き続き最重点市場と位置づけ、環境変化に対応した戦略再構築を実行。

 ハイプレステージロイヤル顧客層拡大が見込める接点を強化し、ブランド認知向上

Next Market開拓

・新たな戦略地域としてASEANを設定。グループ体制で戦略を策定し実行スピードを加速

・北米における成長シナリオ策定とテスト展開の早期実行

・M&Aや外部連携等、新たなブランドによる成長機会の探索

Jurliqueブランドの黒字化必達

・重点市場を中国大陸・豪州へ絞り込み、黒字化タイミングを2025年に再設定

・リソースを集中させトップライン拡大、販管費効率化

 

③ 育成ブランドの成長を伴う黒字化による持続的収益貢献

●育成ブランドは早期の黒字化が継続課題

<THREEブランド>

・差別性である「精油」「香り」を軸とした顧客アプローチでブランド再生、ライフスタイルブランドへと進化

<DECENCIAブランド>

・2023年下期の顧客数の増加トレンドを更に強化し、顧客の定着とLTV向上をより重視したマーケティングの実行

・投資効率を良化させ、利益を伴う成長を実現

<FUJIMIブランド>

・更なる市場拡大が見込めるプロテインを軸としビューティウェルネス商材を拡張、

 顧客体験価値を高めクロスセルを強化

・2024年黒字化

 

④ ブランドポートフォリオ拡充と事業領域拡張

●新規事業の継続的な種まきとマネタイズ

・VISION 2029「多様化する『美』の価値観に応える個性的な事業の集合体」に向け、

 新規事業の種まきが複数進捗。早期のマネタイズを目指す

 

⑤ 新価値創出に向けた研究開発力強化

●研究開発力強化、差別化された新価値の持続的な創出

・TDC(Technical Development Center)が2024年1月に稼働開始

・新素材パイプライン拡大は計画どおり進捗、業界初の新効能素材創出を狙う

・VISION 2029に向けて化粧品の枠を超えた新価値創出を志向

 

⑥ 社会課題対応と独自性を兼ね備えたサステナビリティ強化

●サステナビリティ戦略の推進

・サステナブルな社会の実現に向けた独自性のあるKPIの設定

 

 

 

 

2  【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

 

(1)気候変動対応

① ガバナンス

当社グループでは、事業継続に影響しうるリスクを管理するための体制を構築しています。リスクマネジメントの執行を担うグループCSR委員会は、優先的に対応すべきリスクをコーポレートリスクとして選定、対応方法を計画化し実行しています。コーポレートリスクの進捗状況は四半期ごとに取締役会に報告し、取締役会の監督が図られる体制となります。

また、気候変動を含むサステナビリティの現状と課題についても取締役会に報告し、グループ各社の事業計画の策定に際して、サステナビリティに関連するリスクと機会を勘案して計画化しています。なお、非財務KPI目標の一つに気候変動・CO2排出量の削減を設定しており、その達成状況を役員報酬と連動させることで目標達成に向けた実効性を高めています。

 

② 戦略

脱炭素社会への移行に伴い不確実性の高い将来を見据えて、どのようなビジネス上の課題が顕在しうるか、2℃シナリオ(SSP1-2.6)と4℃シナリオ(SSP5-8.5)のそれぞれにおいてTCFDが提言するシナリオ分析を行っています。

<シナリオ分析結果>

イ 気候関連リスク

項目

カテゴリ

考察:リスクと機会の内容

移行リスク

新たな規制

GHG排出量規制の強化/カーボンプライシングの導入によるリスク

プラスチック規制導入による、代替素材の研究開発、原材料高騰によるリスク

水使用に関する規制の導入によるリスク

技術

環境負荷低減等に特化したスタートアップ企業や、中国や新興国等の新規参入によるリスク

環境対応への技術・研究開発が投資回収できないリスク

市場

お客さまの環境配慮商品への需要シフトに対応できないリスク

評判

気候変動への対応遅れや、社会との不十分なコミュニケーションによるリスク

物理的リスク

急性

異常気象の激甚化によるサプライチェーン上のリスク

製品供給が滞るリスク

慢性的

気候変動に伴う原料調達のリスク

 

 

ロ 気候関連機会

項目

考察:リスクと機会の内容

資源効率

ダイレクトマーケティングを活用した資源循環モデルの構築による機会

物流プロセスの省エネ化・効率化やDX化、ダイレクトマーケティング手法の活用による機会

エネルギー源

自社施設における再生可能エネルギー利用や省エネ推進の機会

製品及びサービス

気候変動の影響で拡大する肌の悩みに対応できる製品の開発・販売の機会

市場

気候変動の影響での消費者の好みの変化による新たな需要の機会

グローバル市場での需要拡大の機会

レジリエンス

気候変動に対応することで、研究開発力を強化し気候対策となる新製品開発、ライフスタイルブランドとしての事業拡大、当社独自の資源循環モデルの構築等の機会

 

 

シナリオ分析の結果に基づき、自社のみならず外部(政府、お客さま、サプライヤー、新規参入・代替品、投資家・社会)の視点も含めた考察により、当社グループの強みとリンクした戦略・アクションを設定しています。

当社グループの強み

戦略・アクション

研究技術力

・Science, Life, Communicationを軸とした化粧品の枠にとらわれない研究開発

・サステナブル素材活用等による環境配慮製品、容器開発

・次世代技術革新のための研究開発投資の増加

ダイレクトマーケティング

・ECでのお客さまとの関係性強化

・輸送・配送の効率化(サプライヤーとの協業を含む)

マルチブランド

・時代とともに変化するライフスタイルや価値観に応えるブランド構築

 

 

③ リスク管理

全社の統合的なリスクマネジメントプロセスを用いて気候関連リスクを含むリスクの洗い出しを行っています。その上で、リスクの回避・低減・移転・保有、またリスクの影響度・発生頻度・対応状況の視点から総合的に判断し、グループ全体のコーポレートリスクとして特定、評価を行っています。

また、気候変動に関連する機会も事業戦略上の重要な経営テーマとして認識しており、グループ横断のプロジェクトやタスクフォースにより、事業化に向けた取り組み等を推進しています。なお、グループ各社においても同様のプロセスを用いてリスクと機会を評価しています。

 

④ 指標及び目標

当社グループは、2050年に向けた低炭素移行計画を策定しています。

<長期目標>

・ 2040年を目処に自社CO2排出量(Scope1/2)についてネットゼロを目指す。

・ 2050年を目処にプロダクトライフサイクルを通し事業活動に掛かるCO2排出量(Scope3)についてネットゼロを目指す。

 

<中期目標>

・ SBT1.5℃認定を取得、2029年に向けCO2排出量の削減目標を策定しています。

CO2排出量

2019年基準値

削減率目標

2029年目標値

2022年実績

Scope1/2

11,659t-CO2

42%

6,762t-CO2

6,645t-CO2

Scope3

425,869t-CO2

30%

298,108t-CO2

220,203t-CO2

 

 

 

(2)人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略

①人材育成方針

当社グループはダイバーシティ経営を掲げ、個性を尊重し、性別、国籍、年齢等にかかわらず、一人ひとりが自身の持つ能力を最大限に発揮できる環境づくりを推進しております。

そして、「人」を最も重要な資産に位置づけ、グループの多彩なブランドの成長を牽引できる個性豊かなリーダー人材の創出へ向け取り組んでおります。

グループ全体を大局的視点で捉えられる人材を育成するため、組織の壁を越えて学び合うグループ横断次世代リーダー育成プログラム研修の実施、一定条件を充たした人材がグループ内の希望会社・部署への異動にチャレンジできるFA制度や新規事業を従業員から公募するベンチャー制度等を展開しております。

また、2019年よりグループの経営人材候補者づくりを効果的に進める仕組みとして人材開発委員会を始動させ、重要なキーポジションを定め、各ポジションの要件に合致する候補者を選定し、一人ひとりの課題に応じた育成計画策定から進捗のモニタリングを実施しております。

 

② 社内環境整備方針

ポーラ・オルビスグループでは労働基準法等の法令に基づき、ワークライフバランスに配慮した労働環境整備を行うとともに、一人ひとりが個性を発揮し、組織として新たな価値を創造することを目指し、リモートワークをはじめとした多様な働き方を推進しています。更に、働きやすいだけなく、より働きがいのある環境を整備するため、定期的にエンゲージメントサーベイを通じた職場改善の取り組みを強化しています。

また、「ポーラ・オルビスグループ健康経営宣言」のもと、グループ理念で重要視している“多様な個性・感受性を育み発揮する”ためには従業員の健康が源泉であると認識し、グループ横断で健康経営に取り組んでいます。

 

 

(3)人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた目標及び実績、 

   指標及び目標

  <人材活躍に関する指標及び目標>

KPI項目

2029年までの主な取り組み

2023年

実績

2029年

目標

働きがい・エンゲージメントスコア(※)

働きがいと働きやすさへの施策(GPTW)

59.9%

75%

女性役員比率

経営のリーダーシップによる多様性促進

22.4%

30~50%

女性管理職比率

キャリアプランを設計できる制度・風土

43.3%

50%以上

経営人材候補者の充足率

経営人材のパイプライン整備・強化

165.2%

200%

 

(※)働きがい・エンゲージメントスコアはGreat Place To Work® Institute Japanの「働きがいのある会社調査」にて測定・算出しています。

なお、当社グループの人材活躍に関する具体的な取組み内容は、当社ウェブサイトにて紹介しておりますのでご参照ください。

・人材活躍について:https://www.po-holdings.co.jp/csr/employee/

 

 

① 人材育成方針に関する指標の内容等

キーポジション候補者の充足率をKPIとして設定し、2024年150%、2029年には200%の実現に向け、継続的に候補者づくりを進めてまいります。また、創業当初より化粧品事業を通じて時代の変化に対応した“女性の社会進出”を応援している当社グループでは、年齢、性別にかかわらず意欲・能力の高い社員に活躍の場を提供しております。若年層から段階的にライフイベントと仕事を統合したキャリアプランを描くための支援策の導入、ポーラにおいては2018年より定年再雇用制度を改定し、年齢制限を撤廃しました。個人が培ってきた経験を生かし続けることができる職場づくりをしております。

2020年より当社とポーラは、日本社会のジェンダーギャップ解消に貢献すべく(※)30%クラブに参加いたしました。2022年1月からは、当社上席執行役員(兼㈱ポーラ代表取締役社長)の竹永美紀がグループダイバーシティ担当に就任しました。ダイバーシティ・マネジメントの統括責任者として、グループ全体のダイバーシティ推進を主導し、取り組みを加速させてまいります。

具体的な数値目標値として、女性役員比率を2024年までに30%、2029年までに30~50%とするKPIを設定し、今後も一人ひとりが自立的に自身のキャリアを構築し、自分らしく働き続けていくための制度・環境整備に取り組んでまいります。

※30%クラブ・・・・経営陣における女性比率の向上が、企業のリーダーシップやガバナンス強化、また業績の向上にもつながると考える企業のトップで構成される世界的な取り組みであり、「TOPIX100」の取締役会に占める女性比率を2020年末までに10%、2030年末までに30%に引き上げることを目標としています。

(https://30percentclub.org/about/chapters/japan)

 

② 社内環境整備方針に関する指標の内容等

2029年の長期目標として、生産性指標(プレゼンティーイズム・アブセンティーイズム)、エンゲージメント指標、健康診断の有所見率を設定し、当社人事部門の管掌下である健康経営推進チームを中心に、健康管理センター・健康保険組合・グループ各社人事部門と連携のうえ、生活習慣病予防・がん対策・メンタルヘルス・男女特有の健康課題対策等の各種施策を推進しています。

 

 

3  【事業等のリスク】

当社グループの事業その他に関して、投資者の投資判断上重要であると考えられるリスクは、以下の通りです。なお、本項においては、将来に関する事項は、別段の表示がない限り、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 事業に係るリスク

①ブランド価値の毀損・人権課題

当社グループは、「POLA」「ORBIS」等のマルチブランド戦略による展開を図っており、各ブランドは、誠実な企業経営とお客さまの信頼に応えた製品・サービスの提供により、ブランドイメージの形成とその維持向上に十分努めております。しかしながら、当社グループにおける研究開発・調達・製造・物流・広告/宣伝・販売・使用・廃棄に至るサプライチェーンへの否定的な評判や評価が世間に流布することによって信用が低下し、ブランドイメージが毀損された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、近年では、企業のサプライチェーンにおける、強制労働や児童労働等の人権に関する問題が提起されており、化粧品事業を展開する当社グループとの関連性が高いものとして、インドネシアやマレーシアを調達先の中心としているパーム油を生産する農園での強制労働や児童労働は重大な人権課題として懸念しております。当社グループでは、今後、認証パーム油を調達していくとともに、パーム油農園への支援の一環として、「持続可能なパーム油のための円卓会議:Roundtable on Sustainable Palm Oil(RSPO)」を通じたクレジットの購入やサプライチェーン認証を伴った認証品の調達を行ってまいります。また人権デュー・デリジェンスを毎年実施し、事業への影響も評価することで、実効性を確保した企業としての責任ある行動に取り組んでおります。

 

②グループ内の競合

当社グループは、マルチブランド・マルチチャネル戦略を掲げ、既存の各ブランド及び新規ブランドをターゲット(購買層)別・価格帯別・販売チャネル別にカテゴライズして展開しており、競合は軽微であると認識しております。しかし、グループ戦略として既存ブランドの価値最大化及びマルチブランド化への展開を加速させていく過程において、当社グループ内での競合が発生する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このことから、取締役会では、各ブランドの事業が意図した成果を得られていることが確認できるよう、ブランド別、事業別の重要指標を複数設定し、各ブランドにおける独自性の維持・管理の状況をモニタリングすることで、リスク低減に取り組んでおります。

 

③販売パートナー(ショップオーナー/マネージャー、ビューティーディレクター)の確保

当社グループのビューティケア事業の主軸となる株式会社ポーラでは、委託販売契約に基づく事業展開を行っております。委託販売契約先となる販売パートナーの人材確保は、事業拡大に向けた重要な事業活動の一つであり、恒常的に取り組んでおります。しかし、特定商取引に関する法律の規制強化や労働環境の変化があった際に、人材確保のための施策が困難になる場合や、ビューティーディレクター希望者の減少等から、十分な人材の手当が行えない可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、従来の委託販売契約に追加して、新たなパートナーシップの導入を進めており、また、今後も継続的に検討を進めてまいります。

 

④戦略的投資活動

当社グループは、アジア太平洋地域を中心とした海外展開、M&A及び新規事業に対し戦略的投資を行っております。戦略的投資活動の意思決定に際しては、必要な情報収集及び検討を実施しておりますが、予期し得ない環境変化等により、当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、事業用資産やM&Aに伴い計上されるのれん等の資産については、今後の業績動向によって、期待されるキャッシュ・フローを生み出さない場合には、減損損失を計上する可能性があります。このため、M&A対象会社に関する各種のデュー・デリジェンス及び企業価値並びに株式価値算出に際しては、外部の専門家を活用し、精度向上に努め、適切な買収プロセス及び適正な企業価値評価に努めてまいります。

 

 

⑤化粧品市場環境

国内化粧品市場は成熟期を迎えており、M&Aによる企業グループの再編、異業種からの新規参入、流通業及び小売業の提携・統合に伴う影響力の増大等、競争環境は厳しさを増しております。従って、当社グループが予期せぬ競争環境の変化に的確に対処できない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このため、特に中国、ASEAN地域を中心とした海外市場の開拓を積極的に進める他、新中期経営計画では、新たな事業領域の開拓にも注力すること等に努めてまいります。

 

⑥研究開発

研究開発は当社グループの競争力の源泉の一つであり、継続的に研究開発投資を行っております。年度研究開発計画に基づき、効果的・効率的な研究開発活動を行っておりますが、新製品の開発が長期にわたる場合、成果が翌期以降に及ぶことがあります。また、予定どおりの成果が得られない場合や、期間の延長や投資額の増加を強いられる場合、結果として製品化できない場合もあります。更に、製品化できた場合でも、様々な要因による不確実性が伴うため、必ずしもお客さまに受け容れられるとは限りません。このように当初意図した成果が得られない場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。このことから、製品化に向けた開発期間の短縮及び確度向上を企図して、新研究開発拠点(Technical Development Center)を設置し、2024年から稼働してまいります。

 

⑦製造及び品質保証

製品生産に不可欠な原材料等は、購買を担当する部署の統括管理のもと、調達先を分散するとともに、調達先と良好な関係を保ち、常に適正な価格で必要量を調達できるよう努めております。しかしながら、外的要因により不測の事態が発生した場合は、必要な原材料の調達に支障が出る可能性があります。また、当社グループの化粧品製造はポーラ化成工業株式会社の袋井工場(静岡県袋井市)、Jurlique International Pty. Ltd.のマウントバーカー工場(オーストラリアサウスオーストラリア州)の2ヶ所で行われており、品質管理基準に基づいた製品品質の維持及び向上に努めておりますが、万一製品の品質について何らかの問題が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの問題を未然に防止するため、グループ各社の品質保証担当者で構成した品質保証委員会では、グループ品質保証指針の策定、外注先監査結果の共有を行い、グループ品質保証体制の強化に取り組んでおります。

 

⑧海外での事業活動(グローバル経済の不安定等)

当社グループの主たる販売拠点は国内ですが、マーケットの拡大が期待されるアジア太平洋地域にも展開しており、今後一層の拡大を目指しております。これらの海外での事業活動におきましては、予期し得ない経済的・政治的な不安、労働問題、テロ・戦争の勃発、感染症の流行による社会的混乱等のリスクが潜在するため、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。これらのことから、子会社である海外現地法人や当社の海外事業担当部門による情報収集に加え、当社グループの経営及び事業を展開する上で重要な情報収集を行うMultiple Intelligence Research Center(MIRC)にて世界中の情報をいち早く収集することで、早期のリスク認識によるリスク回避は勿論、機会認識することにより、既存事業の拡大や新事業領域の開拓、更には他企業や異業種、大学や研究機関とのアライアンスの強化を進めており、中長期的な企業価値向上に資する活動に取り組んでおります。

 

⑨為替

当社グループでは、海外事業活動の展開により生じた輸出入取引等の外貨建て決済や、海外子会社への貸付金について、為替レートの変動リスクを負っております。また、在外連結子会社の現地通貨建ての報告数値についても、連結財務諸表作成時に円換算することから、為替レートの変動が当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。このため、為替の動向を踏まえつつ、必要に応じて為替予約等のリスクヘッジをしております。

 

 

⑩知的財産権保護の限界

当社グループでは、知的財産権を確保する措置を講じておりますが、第三者による予測を超えた手段等により知的財産が侵害され、結果として技術の不正流用や模倣品の開発等により当社グループの事業活動に悪影響を及ぼす可能性や、当社グループにおける認識の範囲外で第三者の知的財産権を侵害する可能性があります。このことから、当社にグループの知的財産の管理及び戦略を専門とする知財・薬事センターを設置し、国内外の活動拠点において、当社グループにおける特許権や商標権の確保といった知財戦略の策定と実行、及び当社が保有する権利への不当な侵害の有無についてのモニタリングを実施しております。また、当社グループによる意図しない第三者への権利侵害を防止するため、社内審査等を実施しております。

 

⑪情報セキュリティ

当社グループでは、個人情報や研究開発情報等の機密情報の取扱いについては、情報セキュリティシステムの整備、情報セキュリティ委員会による社内規程の制定・教育を実施しております。また、内部監査の実施や外部機関を活用したセキュリティシステムの脆弱性診断等を実施することでセキュリティ管理の徹底を図っております。しかしながら、何らかの原因によりこれらの情報が流出した場合には、当社グループに対する損害賠償請求の提起、信用失墜等が生じることにより、事業に悪影響が及ぶ可能性があります。昨今高まりを見せるサイバー攻撃等による情報漏洩リスクには、定期的にサーバへのアタックテストを実施する等、最新の防御体制を整えて対応しております。

 

⑫重要な訴訟

当連結会計年度において、当社グループに重大な影響を及ぼす訴訟等は提起されておりませんが、将来、重要な訴訟等が発生し、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑬災害等

当社グループの主たる生産拠点は、化粧品については、ポーラ化成工業株式会社の袋井工場であります。そのため、東海地方における大規模な震災、水害等が生じた場合、長期にわたって製品供給が不可能になる可能性があります。更に、東海地方以外においても想定外の大規模災害や事故等が発生した場合においては、原材料の調達、商品供給及び販売の中断等により当社グループの経営状態に影響を及ぼす可能性があります。このため災害発生に伴う一定期間の袋井工場操業停止や製品・原料調達困難を想定して、事業継続上重要な品目(グループ優先品目)を選定し、製品や代替困難な原料のBCP在庫を確保しております。また、当社グループの主軸である株式会社ポーラ及びオルビス株式会社を中心に、一部の品目を外部の製造委託先による生産に切り替える他、新研究開発拠点(Technical Development Center)にもグループ優先品目の生産機能を持たせることで、リスク回避と分散化に取り組んでおります。

 

⑭感染症の流行

社会的影響の大きい感染症の拡大が発生した場合、日々の活動でお客さまや取引先と直接対面する事業の特性から、接客活動や営業活動の自粛、又は販売店の営業停止等により、国内外において当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。感染症の拡大により外出の自粛や時短営業等の措置がとられた際は、対面型サービスを利用した消費行動は著しく制約を受けるため、EC等通信販売へ購買がシフトすることが想定されます。通信販売を主要な販売チャネルとして展開するオルビス株式会社や株式会社DECENCIAではデジタルマーケティングを一層強化し、対面販売を主要な販売チャネルとする株式会社ポーラ及び株式会社ACRO等においても、オフラインとオンラインの融合等を図るチャネル強化を実行し、更なる事業成長に向けて取り組んでまいります。

 

 

⑮気候変動

気候変動の深刻化が進むことで、自然災害の頻発化や生態系の変化等の悪影響が想定され、当社グループにおいても、企業活動を行う上でのリスクとして、温暖化による化粧品商品選択の変化(サマー品、紫外線対策品へのシフト、清涼感促進商品の増加)による影響が生じる可能性があります。また洪水による河川や海浜沿岸の事業所・工場の操業停止、温暖化要因による山火事の頻発による近隣の事業所・工場の操業停止(主にオーストラリア)、調達が困難になる原料の増加により、製品の成分や処方変更を強いられる可能性があります。

化粧品の製造・販売を主たる事業として展開する当社グループにおいても、温室効果ガス(CO2)の排出削減に取り組んでおります。SBT(Science Based Targets)に基づき、2029年までのCO2排出量の削減目標を定め、太陽光発電システムの増設や再生可能エネルギー由来の電力への切り替え等、具体的な対策を進めております。また、当社グループの役員を対象に支給する株式報酬(LTI)と連動させることで、気候変動課題の解決に向けた実効性の向上を図っております。

 

⑯国内人口の減少

化粧品市場に限らず国内の多くの業種において、今後は人口減少によりインバウンド需要等の影響を除いた国内需要の大幅な拡大が想定しづらく、事業の停滞等の悪影響を及ぼすおそれがあります。このことのから、当社グループでは、海外事業展開の飛躍を重点テーマに掲げ、海外ブランドのM&A、既存ブランドの海外展開を加速させてまいりました。新中期経営計画(2024年~2026年)においても、引き続き、海外事業の更なる成長と新市場での基盤確立をテーマに、グローバル展開を強化してまいります。

また、人口減少による影響は業績のみに留まらず、事業運営に携わる人材獲得という点においても、悪影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大を機に、今後も進むことが想定される新しい生活様式への対応として、在宅勤務制度の拡大や副業制度の導入等の働き方改革、雇用延長の無制限化の一部導入を行ってまいりました。今後も多種多様な働き方をグループ全社で促進し、労働力確保に注力してまいります。

 

 

(2) 業界に係るリスク

①法的規制等

ビューティケア事業     :医薬品医療機器法、食品衛生法、栄養改善法、保健機能食品制度等

委託販売・通信販売     :特定商取引に関する法律等

全般            :製造物責任法、特許法、消費者基本法、不当景品類及び不当表示防止法等

 

イ 医薬品医療機器法

当社グループの主たる事業領域において、化粧品及び医薬部外品を国内にて製造販売するためには、医薬品医療機器法に基づく製造販売業・製造業の許可を必要とし、当社グループの該当事業会社各社ではその許可を取得しており、法令の定めに基づき5年毎の更新その他必要な手続きを行っております。当社グループでは、医薬品医療機器法及び上記の関連法規制の遵守を徹底しておりますが、医薬品医療機器法第74条の2(許可の取消し等)等に抵触し、業務の全部もしくは一部の停止を命ぜられ、又は化粧品事業の製造・販売に関する厚生労働省からの許可を取り消された場合、あるいは、これらの法規制が変更された場合、また予測していない法規制等が新たに設けられた場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(ビューティケア事業に係る主要な許可の取得状況等)

取得会社

許可の名称

有効期限

取消事由及び該当状況

株式会社ポーラ

化粧品製造業許可

(株式会社ポーラ流通センター)

2027年1月23日

(取消事由)

医薬品医療機器法に定められる事由に該当した場合

 

(該当状況)

上記取消事由に該当する事項はありません。

 

化粧品製造業許可

(株式会社ポーラ流通センター袋井作業場

2024年5月25日

 

医薬部外品製造業許可

(株式会社ポーラ流通センター)

2027年1月23日

 

医薬部外品製造業許可

(株式会社ポーラ流通センター袋井作業場

2024年5月25日

 

化粧品製造販売業許可

2027年5月13日

 

医薬部外品製造販売業許可

2027年5月13日

オルビス株式会社

化粧品製造販売業許可

2024年4月30日

 

医薬部外品製造販売業許可

2024年4月30日

ポーラ化成工業株式会社

化粧品製造業許可

2024年10月31日

 

医薬部外品製造業許可

2024年10月31日

 

化粧品製造販売業許可

2024年10月31日

 

医薬部外品製造販売業許可

2024年10月31日

 

 

ロ 特定商取引に関する法律(以下「特定商取引法」)

当社グループでは、特定商取引の関連法令の遵守に努めておりますが、当社グループにおいて販売パートナー(ショップオーナー/マネージャー、ビューティーディレクター)が特定商取引法に違反するような事態に至った際の社会的信用の失墜や、特定商取引法の改正により委託販売活動が著しく制限された場合等は、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

②原材料価格の高騰

当社グループでは、製品生産に不可欠な原材料等は、購買を担当する部署の統括管理のもと、調達先を分散するとともに、調達先と良好な関係を保ち、常に適正な価格で必要量を調達できるよう努めております。しかし、原油等素材価格の動向により、主要原材料の仕入価格が上昇した場合は、製品の製造原価も上昇し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(3) 持株会社としてのリスク

当社は持株会社であり、収入の大部分は当社が直接保有している子会社からの経営管理料、業務委託料及び受取配当となっております。このうち受取配当については、一定の状況下で、会社法等の規制等により、子会社が当社に支払うことのできる金額が制限される場合があります。また、子会社が十分な利益を計上することができず、当社に対して配当を支払えない状況が生じた場合等には、当社は株主に対して配当を支払えなくなる可能性があります。

 

(4) 公益財団法人ポーラ美術振興財団との関係について

公益財団法人ポーラ美術振興財団は、1996年5月、当社グループの元会長であった故鈴木常司が、「わが国の芸術文化の向上に寄与する」ことを目的に設立した財団法人であります。当社グループは、創業時より「美と健康に関わる事業を通じて社会に貢献すること」を企業理念としていることから、同財団に対して、設立当初よりその活動に賛同し、様々な支援(寄付の実施、美術館建設資金の借入に対する債務保証、学芸員等の人員を出向させる等の人的支援(注)、美術品の寄託(無償)等)を行ってまいりました。なお、寄付の実施及び債務保証は既に解消されており、今後もこれらの実施予定はありませんが、人的支援及び美術品の寄託(無償)等については今後とも継続する予定であります。

また、同財団は、期末日現在、当社株式78,616千株を保有しており、これは、発行済株式数の34.31%(議決権比率35.50%)にあたります。当社代表取締役会長鈴木郷史は同財団の理事長を兼務しておりますが、当社代表取締役会長を含む当社グループ関係者の理事は、同財団の保有する当社株式に係る議決権行使については関与しない方針です。

(注)出向者の人件費相当額については、同財団が負担しております。

 

 

4  【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当連結会計年度(2023年1月1日~2023年12月31日)における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、経営成績等)の状況の概要は次の通りであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度(2023年1月1日~2023年12月31日)におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染症法上での扱いが5類に移行したこと等により経済社会活動の正常化が進み、一部に足踏みがみられるものの、緩やかな景気回復がみられる状況です。一方で、賃金の上昇を上回る物価上昇等を背景に、消費者マインドの持ち直しは停滞する状況がみられております。

国内化粧品市場においては、経済活動の正常化による外出機会の増加により、個人消費が持ち直す状況となりました。また、円安も呼び水となった訪日外国人客によるインバウンド需要の伸びが売上を後押ししました。一方で、人々のライフスタイルの変容による消費行動や消費構成の変化、販売チャネルの構造変化、EC市場での広告費の高騰等がみられており、環境変化への対応により一層の工夫が求められる状況にあります。

海外化粧品市場においては、景気は一部の地域で弱さがみられるものの、持ち直している状況です。中国市場においては、ゼロコロナ政策の解除により経済活動が正常化へと向かい、人の流れが活発化してサービス関連の消費を中心に回復基調にありましたが、雇用不安等により景気の持ち直しに足踏みがみられる状況にあります。また、原子力発電所によるALPS処理水の海洋放出に端を発した日本製品を回避する動きがみられております。

このような市場環境のもと、2021年からスタートした中期経営計画(2021年から2023年)に基づき、「国内ダイレクトセリングの進化」「海外事業の利益ある成長」「育成ブランドの利益貢献」「経営基盤の強化」「新ブランド、“美”に関する領域拡張」を重点テーマに掲げ、取り組んでまいりました。

以上の結果、当連結会計年度における業績は次の通りとなりました。

売上高は、コロナ禍の混乱からの回復を受けて前年同期比4.2%増173,304百万円となりました。営業利益は、売上高増による売上総利益増加により、前年同期比27.8%増16,080百万円、経常利益は前年同期比23.7%増18,469百万円となりました。また、前年に計上した法人税等調整額が減少した影響により、親会社株主に帰属する当期純利益は年同期比15.6%減9,665百万円となりました。

 

[業績の概要]

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

前年同期

増減額(百万円)

増減率(%)

売上高

166,307

173,304

6,996

4.2

営業利益

12,581

16,080

3,499

27.8

経常利益

14,928

18,469

3,541

23.7

親会社株主に帰属する
当期純利益

11,446

9,665

△1,781

△15.6

 

 

 

 セグメントごとの経営成績は、次の通りであります。

 

[セグメント別の業績]

売上高(外部顧客への売上高)

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

前年同期

増減額(百万円)

増減率(%)

ビューティケア事業

161,654

168,477

6,822

4.2

不動産事業

2,083

2,078

△5

△0.2

その他

2,569

2,748

178

7.0

合 計

166,307

173,304

6,996

4.2

 

 

セグメント利益(営業利益)

 

前連結会計年度
(百万円)

当連結会計年度
(百万円)

前年同期

増減額(百万円)

増減率(%)

ビューティケア事業

13,793

16,354

2,561

18.6

不動産事業

491

440

△51

△10.5

その他

96

149

52

54.7

セグメント利益の調整額
(注)

△1,800

△863

936

合 計

12,581

16,080

3,499

27.8

 

(注) セグメント利益の調整額とは、グループの内部取引に伴う利益及びセグメントに含まれない経費等を連結時に消去・加算した金額であります。なお、セグメント利益の調整額の詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(セグメント情報等) 3 報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産その他の項目の金額に関する情報(注2)」をご覧ください。

 

(ビューティケア事業)

ビューティケア事業は、基幹ブランドとして「POLA」「ORBIS」を、海外ブランドとして「Jurlique」を、育成ブランドとして「THREE」「DECENCIA」「FUJIMI」を展開しております。

POLAブランドでは、エイジングケア・美白を中心とした高機能商品の投入による更なるブランド価値の向上と、中長期的な顧客基盤構築を進めております。国内事業では、オンラインとオフラインのチャネル融合(OMO:Online Merges with Offline)の推進により、各チャネルの特性や強みを生かした高LTV事業の実現に取り組んでおります。2023年4月に始動した新メンバーシッププログラム「ポーラ プレミアム パス」により、全ての販売チャネルの顧客IDを統合し、国内全てのお客さまへ共通のサービス体験のお届けを開始しました。経済活動の正常化による人流の戻りや訪日外国人客の戻りに加えて、新商品の「B.Aミルクフォーム」やリニューアル発売した「B.AグランラグゼⅣ」、エステの好調等により、国内事業全体で前年を上回る実績で推移しております。海外事業では、引き続き、最重点市場である中国でブランドプレゼンスの確立のための顧客接点の拡充に取り組んでおります。中国及び一部のアジア地域における景気減速等の影響が生じたものの、海外事業全体で前年を上回る実績となりました。以上の結果、POLAブランドは前年同期を上回る売上高となりました。一方で、下半期に生じた海外事業の減速影響等により、前年同期を下回る営業利益となりました。

ORBISブランドでは、高収益事業へと再成長を遂げるため、ブランド差別性の創出によるプレゼンス及び顧客ロイヤリティの向上と、「オルビスユー」シリーズを中心に据えたスキンケア顧客の拡大を進めております。国内事業では、ブランド体験の基軸となるワンストップアプリによる顧客に寄り添った伴走型コミュニケーションの提供と、新商品の継続投下により、拡大に転じた顧客数の更なる増加とLTV最大化に取り組んでおります。直販チャネルでは、成長を牽引する「オルビスユードット」のリニューアルや、ベストコスメを多数受賞しているUVのスペシャルケア品等の伸長により、顧客数、顧客単価ともに前年超過となりました。外部チャネルでは、ロングセラー商品のヘアケア品がベストコスメ総合大賞を受賞する等、新たな顧客接点の開拓に寄与しており、販路も拡大し前年同期より大幅に伸長しております。海外事業では、重点市場の中国を中心に事業の成長加速と黒字化に向けた取り組みを進めております。中国では顧客接点の拡大とブランド認知向上に向けた投資の強化に取り組んでおり、景況の悪化やALPS処理水海洋放出に伴う影響が生じたものの、前年を上回る実績となりました。以上の結果、ORBISブランドは前年同期を上回る売上高・営業利益となりました。

Jurliqueブランドでは、豪州及び中国、その他アジア市場での成長に向けた取り組みを継続しております。重点市場の豪州においてオフライン売上の回復が進み、前年を上回る実績となりました。また中国においては、景気回復ペースの減速の影響を受けながらも、新商品の投入及び戦略商品への注力によるブランド価値の向上等により、前年を上回る実績で推移しております。以上の結果、Jurliqueブランドは前年同期を上回る売上高となりました。一方で、免税事業の減速等の影響により、営業損失が拡大する結果となりました。

育成ブランドでは、THREEブランドで、黒字化に向けた構造改革の取り組みを進めております。リニューアル発売した基幹スキンケアシリーズやブランド初のフレグランス発売等により顧客の動きが活性化し、国内事業は前年を上回る実績で推移しております。DECENCIAブランドでは、2023年9月に主力商品のシワ改善美容液をリニューアル発売しました。顧客属性にあわせた購買促進施策の展開により顧客数が増加し、国内事業は前年を上回る実績で推移しております。FUJIMIブランドでは、2023年1月に新ブランドメッセージを策定し、リブランディングを進めております。以上の結果、育成ブランド全体では前年同期を上回る売上高となりました。また、各ブランドにおいて厳格な費用コントロールを実施したことが奏功し、営業損失は改善しております。なお、ビューティケア事業におけるブランドポートフォリオの改革と更なる収益性向上を目指す一環として、2023年3月6日付で「Amplitude」「ITRIM」の2ブランドの撤退を決定し、年内での撤退が完了しております。

以上の結果、売上高(外部顧客に対する売上高)は168,477百万円前年同期比4.2%増)、営業利益は16,354百万円前年同期比18.6%増)となりました。

 

(不動産事業)

不動産事業では、都市部のオフィスビル賃貸を中心に、魅力的なオフィス環境の整備による賃料の維持向上と空室率の低下に取り組むとともに、子育て支援に特化した賃貸マンション事業も展開しております。当連結会計年度は、前年にオフィスビルを一部売却した影響等により、前年同期を下回る売上高・営業利益となりました。

以上の結果、売上高(外部顧客に対する売上高)は2,078百万円前年同期比0.2%減)、営業利益は440百万円前年同期比10.5%減)となりました。

 

(その他)

   その他に含まれている事業は、ビルメンテナンス事業であります。

 ビルメンテナンス事業は、主にビルの運営管理を行っております。当連結会計年度は、契約件数の増加等により、前年同期を上回る売上高、営業利益となりました。

以上の結果、売上高(外部顧客に対する売上高)は2,748百万円前年同期比7.0%増)、営業利益は149百万円前年同期比54.7%増)となりました。

 

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ4,727百万円減少し、201,207百万円前連結会計年度末比2.3%減)となりました。主な増減項目は、建設仮勘定の増加9,136百万円、流動資産その他の増加4,333百万円、投資有価証券の増加1,206百万円により増加し、一方で現金及び預金の減少16,117百万円、繰延税金資産の減少4,342百万円により減少しております。

負債につきましては、前連結会計年度末に比べ1,666百万円減少し、32,809百万円前連結会計年度末比4.8%減)となりました。主な増減項目は、未払金の増加1,266百万円により増加し、一方で退職給付に係る負債の減少1,073百万円、流動負債その他の減少1,031百万円より減少しております。

純資産につきましては、前連結会計年度末に比べ3,060百万円減少し、168,398百万円前連結会計年度末比1.8%減)となりました。主な増減項目は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上9,665百万円により増加し、一方で剰余金の配当11,516百万円、為替換算調整勘定の減少1,468百万円により減少しております。

 

 

 ②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ16,185百万円減少し、46,376百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とその要因は次の通りであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、14,423百万円の収入前年同期比7.2%減)となりました。

主な要因は、税金等調整前当期純利益15,360百万円、減価償却費7,712百万円並びに減損損失1,813百万円により資金は増加し、一方で退職給付に係る負債の増減額971百万円、為替差損益2,176百万円、棚卸資産の増減額1,464百万円、法人税等の支払額6,586百万円により資金は減少しております。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、18,734百万円の支出前年同期比51.5%増)となりました。主な要因は、有価証券の売却及び償還による収入11,100百万円により資金は増加し、一方で、有価証券の取得による支出1,000百万円、有形固定資産の取得による支出12,146百万円、無形固定資産の取得による支出4,088百万円、投資有価証券の取得による支出11,403百万円により資金は減少しております。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、12,375百万円の支出前年同期比2.3%減)となりました。主な要因は、リース債務の返済による支出815百万円、配当金の支払額11,547百万円によるものであります。

 

(参考)キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

自己資本比率(%)

83.9

83.2

83.1

83.0

83.4

時価ベースの自己資本比率(%)

254.5

227.4

203.9

199.8

174.2

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年)

0.1

0.1

0.1

0.1

0.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

251.1

264.6

264.1

168.6

137.4

 

 

自己資本比率:自己資本/総資産

時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い

(注)1  いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。

   2  株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

   3  キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。

   4  有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象
  としております。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

(生産実績)

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

 

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

ビューティケア事業

27,984

+8.2

合計

27,984

+8.2

 

(注) 1  金額は製造会社販売価額によっており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。

2  不動産及びその他事業については、生産活動を行っておりません。

 

(受注実績)

重要な受注生産を行っておりませんので記載を省略しております。

 

(販売実績)

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次の通りであります。

 

セグメントの名称

 販売高(百万円)

前年同期比(%)

ビューティケア事業

168,477

+4.2

不動産事業

2,078

△0.2

その他

2,748

+7.0

合計

173,304

+4.2

 

(注)   セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。なお、その作成には経営者の判断に基づく会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となります。この判断及び見積りに関しては過去の実績等を勘案し合理的に判断しております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性が伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。

当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

また、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計上の見積り及び仮定は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(経営成績)

 イ 売上高

当連結会計年度の売上高は173,304百万円前年同期比4.2%増)となりました。セグメントごと(セグメント間取引を除く)では、ビューティケア事業で168,477百万円前年同期比4.2%増)、不動産事業で2,078百万円前年同期比0.2%減)、その他の事業で2,748百万円前年同期比7.0%増)となりました。ビューティケア事業における増加の主な要因は、コロナ禍の混乱からの回復を受けたPOLAブランド、ORBISブランド等の百貨店・EC事業の好調によるものであります。

 

   ロ 売上総利益

当連結会計年度の売上総利益は、売上高の増加に伴い、前連結会計年度より6,806百万円増加し、142,076百万円前年同期比5.0%増)となりました。

 

 ハ 販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度より3,307百万円増加し、125,996百万円前年同期比2.7%増)となりました。売上高の増加に伴い変動費である販売関連費や一部の固定費の負担が増加しましたが、売上高に対する比率は前年を下回っております。

 

 ニ 営業利益

営業利益は、前連結会計年度より3,499百万円増加し、16,080百万円前年同期比27.8%増)となりました。前述の売上高の増加による売上総利益増加によるものであります。

 

 ホ 経常利益

経常利益は、前連結会計年度より3,541百万円増加し、18,469百万円前年同期比23.7%増)となりました。前述の営業利益の増加が主な要因です。

 

 ヘ 税金等調整前当期純利益

税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度より3,049百万円増加し、15,360百万円前年同期比24.8%増)となりました。主に前述の経常利益の増加によるものであります。また、特別損失としてFUJIMIブランドの減損損失及びAmplitudeとITRIMブランド終了に伴う損失を計上しております。

 

 ト 法人税等

法人税等は、前連結会計年度より4,823百万円増加し、5,627百万円前年同期比599.9%増)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益の増加に加え、前年に計上したH2O PLUSの清算に伴う法人税等調整額の減少の影響であります。

 

 チ 親会社株主に帰属する当期純利益

以上の結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度より1,781百万円減少し、9,665百万円前年同期比15.6%減)となりました。

 

(財政状態)

当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末に比べ4,727百万円減少し、201,207百万円となりました。

当連結会計年度末における負債は、前連結会計年度末に比べ1,666百万円減少し、32,809百万円となりました。

当連結会計年度末における純資産は、前連結会計年度末に比べ3,060百万円減少し、168,398百万円となりました。

主な増減内容については、『(1)経営成績等の状況の概要』に記載の通りであります。

以上の結果、財務指標としては、流動比率が前連結会計年度末の455.7%から420.0%に低下し、自己資本比率が前連結会計年度末の83.0%から83.4%に増加しております。

 

 

(経営戦略の現状と見通し)

経営戦略の現状と見通しについては、『経営方針、経営環境及び対処すべき課題等』にて報告しております。

 

(資本の財源及び資金の流動性についての分析)

当社グループは、事業継続に必要と考える資金は確保していると認識しております。今後の資金使途につきましては、新価値創出に向けた研究開発投資、店舗の出店・リニューアルや生産性向上のための設備投資、M&Aを含む新規ブランドの創出・育成に取り組むことで、将来のキャッシュ・フローの創出を目指します。なお、キャッシュ・マネジメント・システムを導入し、子会社における資金業務を当社に集中させることにより、当社グループ全体の資金効率化を図っております。

事業資金と余剰資金については、それぞれ資金運用管理規程及び資金運用管理基準をもとに運用しております。当連結会計年度末の現金及び預金残高は47,200百万円と前連結会計年度末に比べ16,117百万円減少しております。

 

(経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等)

長期経営計画・VISION 2029の実現に向けて、2021年から始まった前中期経営計画では、1stステージとして、短中期の課題解決を通じ、長期的な成長に繋がる基盤の構築とコロナ禍以前の売上高・営業利益水準への回復を目指し取り組んでまいりました。2023年の経営指標は、連結売上高は2,050億円~2,150億円、連結営業利益は営業利益率12%以上の達成を掲げ、また、ROEについては9%以上、配当性向は引き続き60%以上を目標としてまいりました。コロナ禍の混乱からの国内事業の立て直しに時間を要したことや中国市場における市況悪化もあり、経営指標は計画未達となったものの、2022年を底に業績は回復し収益性の良化を実現しております。また国内EC売上高比率の向上は進捗し、ビジネスモデルの構造改革に一定の成果を得ることができました。

2024年から始まる新たな中期経営計画は、VISION 2029の達成に向けた2ndステージとして「再挑戦と成長基盤確立の3年間」と位置づけ、ブランドをより先鋭化して国内利益創出力を強化し、海外や新事業等の成長領域へ投資をしてまいります。連結売上高は年平均で5%(国内+4%、海外+12%)の成長、2026年時点で2,000億円を目指します。連結営業利益率は12~13%の達成を計画しております。また、ROEは10%以上、配当性向は引き続き60%以上を目標値としております。加えて、引き続き重点テーマである海外売上高比率は、2026年末までに20%まで高めることを目標としております。

来期(2024年12月期)につきましては、売上高179,000百万円(前年同期比3.3%増)、営業利益17,900百万円(前年同期比11.3%増)、経常利益17,900百万円(前年同期比3.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益11,600百万円(前年同期比20.0%増)を見込んでおります。『経営方針、経営環境及び対処すべき課題等』に記載の重点戦略に取り組み、目標とする経営指標の達成を目指してまいります。

 

 

5  【経営上の重要な契約等】

(1)委託販売契約

当社グループのビューティケア事業の主要子会社である株式会社ポーラでは、委託販売を主力として展開しており、全国の販売パートナーと委託販売契約を締結しております。

契約会社名

相手先の名称

契約内容

契約期間

株式会社ポーラ

ショップオーナー/マネージャー
(個人事業主法人)
 

株式会社ポーラが商品の販売を委託したショップオーナー/マネージャーと、各ショップオーナー/マネージャーから販売の再委託を受けたビューティーディレクターが、お客さまに商品を販売し、同社は、ショップオーナー/マネージャー及びビューティーディレクターに、それぞれの販売実績に応じた販売手数料を支払う旨を主に定めた委託販売に関する基本契約

契約日より1年間(1年毎の自動更新)

 

 

(2)その他

契約会社名

契約先

契約内容

契約期間

株式会社ピーオーリアルエステート

鹿島建設株式会社

工事の請負

2021年3月30日~

2024年3月1日

ポーラ化成工業株式会社

株式会社竹中工務店

工事の請負

2021年10月25日~

2024年3月15日

 

 

6  【研究開発活動】

当社グループでは、グループの長期的発展の成長エンジンとなる新価値創出を加速するべく、主として当社(全社費用)及びビューティケア事業のセグメントにおいて、研究開発活動を行っております。

商品やサービスという形で、最新の美容理論及び効果の高い独自素材をお客さまに提供できるよう、技術面で牽引することを研究開発方針としております。研究開発活動の成果は、IFSCC(国際化粧品技術者会連盟)等の各種国際学会や学術誌、各ブランドが開催する新製品発表会等において独自性の高い研究内容が注目され、高い評価を得ております。

その結果、当連結会計年度における研究開発費の総額は4,625百万円となりました。

 

セグメントごとの研究開発活動は、以下の通りであります。

 

(1)当社(全社費用)

グループ全体の研究統括機能を担う当社の「MIRC(Multiple Intelligence Research Center)」は、化粧品の枠を超えた新価値創出を狙い、研究戦略、研究成果のグループ最適配分、技術に立脚した新規事業開発等を担います。また、イギリスに拠点を置くSTYLUS社等、企業や大学と連携しながら世界の次世代ニーズや美の情報を収集するとともに、オープンイノベーションの促進や投資案件を探索しております。共同研究や協業は、「MIRC」及びビューティケア事業の研究の実行を担うポーラ化成工業株式会社の「FRC(Frontier Research Center)」において、ユニバーサルマテリアルズインキュベーター株式会社(UMI)やペプチドリーム株式会社、ANAホールディングス株式会社、イギリス ヨーク大学、国立長寿医療研究センターをはじめとするパートナーとの間で、約20件が進行しております。

当連結会計年度における研究開発費の金額は634百万円となりました。

 

(2)ビューティケア事業

主たる研究開発は、ポーラ化成工業株式会社にて実施しております。「FRC」では、「MIRC」で決定した中長期的な研究戦略に基づき、Science、Life、Communicationの3つの重点研究カテゴリを設定し、化粧品の基礎研究だけでなく、化粧品の枠を超える新価値創造に向け、最先端科学の深耕・新領域の開拓を行っております。また、製品開発に特化した製品設計開発部では、新原料成分や剤型の検討、製品設計・開発、製品の安全性・安定性・有効性評価、品質確保を担当し、お客さまのニーズに迅速に応え、精度の高い製品づくりを進めております。また、研究・開発・生産を連動させた新たな技術開発拠点として「新剤型研究機能の強化」と「高付加価値商品の生産機能」を担うべく新設を進めてきた「TDC(Technical Development Center)」は、既に建屋が完成し、2024年1月からTDC内の新工場での生産活動をスタートしております。TDCに関する詳細な情報は、2024年4月に予定の竣工式を機に発信いたします。

Jurliqueブランドの製品に関しては、Jurlique International Pty. Ltd. のサウスオーストラリア州マウントバーカーで研究開発を行っております。「農園から生まれる化粧品」に重点を置き、自社農園にてバイオダイナミック無農薬有機農法で育てた植物から独自の方法で成分を抽出することで、ピュアでパワフルな化粧品の開発を行っております。

当連結会計年度における研究開発費の金額は、3,990百万円となりました。