当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)企業理念
当社グループの企業理念は、「わたしたちの目的 / Our Purpose」、「わたしたちの価値観 / Our Values」、「わたしたちのDNA / Who We Are」から構成されています。
「わたしたちの目的 / Our Purpose」、「わたしたちの価値観 / Our Values」はサントリーグループ企業理念と共通であり、事業を営む目的や企業として目指す方向性と、目的を実現するために全ての従業員が大切にすべき価値観を定義しています。
また、真のグローバル飲料企業として“質の高い成長”を実現するために、普遍的な当社グループらしさを「わたしたちのDNA / Who We Are」と定義しています。
<わたしたちの目的 / Our Purpose>
人と自然と響きあい、豊かな生活文化を創造し、「人間の生命(いのち)の輝き」をめざす。
<わたしたちの価値観 /Our Values>
Growing for Good / やってみなはれ / 利益三分主義
<わたしたちのDNA / Who We Are>
Always Together with Seikatsusha
We connect with your feelings to enrich every moment of life
生活者の喜怒哀楽に寄り添い、潤い豊かな人生を提供します。
(2)中期経営戦略
真のグローバル飲料企業として、“質の高い成長”を実現していく中で、「既存事業で市場を上回る成長」に加え、「新規成長投資による増分獲得」により、2030年売上2.5兆円を目指します。
また、売上成長を上回る利益成長の実現を目指します。
この目標を達成するために、以下の重点項目を中心に積極的に事業展開していきます。
<ブランド戦略>
・コアブランドイノベーション強化
・戦略ブランドでクロスセル展開エリア拡大
・グローバルなサントリーブランドの育成
<構造改革>
・日本 収益力強化に向けた構造改革の加速
・海外 事業成長加速と更なる収益力強化
・事業ポートフォリオの更なる拡充、強化(RTD展開等)
<DEI>
・異なる考え、価値観の融合による企業競争力の向上
<サステナビリティ>
・環境、社会課題への取組み強化
(3)中期経営計画(2024-2026)
中期経営戦略に基づく2026年までの目標は以下のとおりです。
オーガニック成長
(2023年を起点、為替中立)
売上収益
平均年率1桁台半ばの成長
営業利益
平均年率1桁台後半の成長
営業利益率
2026年までに 10%超
フリーキャッシュフロー
2026年に1,400億円強創出
※フリーキャッシュフロー=営業キャッシュフロー - 投資キャッシュフロー
成長投資
・3,000~6,000億円の投資枠を設定
・M&A、戦略的な設備投資(サステナビリティ投資含む)、戦略ブランドのグローバル展開に注力
配当方針
・2024年度以降、目標配当性向40%以上
※親会社の所有者に帰属する当期利益に対する連結配当性向の目安
(4)経営環境及び優先的に対処すべき課題
2024年は、不透明なマクロ環境や厳しい競争環境が続くとの想定のもと、コアブランドを中心とした積極的なマーケティング投資・販促活動を徹底することに加え、RGM(レベニューグロースマネジメント)活動を強化し、更なる売上収益成長を目指します。コストマネジメント徹底も継続し、全セグメントで増益を目指します。
加えて、持続的な成長に向けて、引き続きM&A等の投資機会の探索や生産設備の増強に取り組みます。また、DEI(Diversity, Equity & Inclusion)への取組みとして、多様な従業員が「やってみなはれ」を発揮できるよう、従業員の属性の多様化を推進し、違いを受け入れ、活かす組織づくりを更に進めます。更に、サステナビリティの取組みとして、「人と自然と響きあう」という使命のもと、「環境目標2030」達成に向けた「水」と「温室効果ガス」に関する活動、及び「プラスチック基本方針」に掲げた活動を強化するとともに、サステナビリティ投資を強化していきます。
[日本事業]
「コアブランドイノベーション」、「自販機事業の構造改革」、「サプライチェーン構造革新」を事業戦略の重点領域とし、売上収益と利益を成長させていきます。マーケティング活動においては、引き続き「サントリー天然水」、「BOSS」、「伊右衛門」、「GREEN DA・KA・RA」及び「特茶」への活動を更に強化していきます。
「サントリー天然水」、「BOSS」は、ポートフォリオの更なる拡大による持続的な成長を目指します。「伊右衛門」は、ブランドの成長トレンド回帰に向けてリニューアルを実施します。「特茶」は飲用習慣化の実現に向けて、一層マーケティング活動を強化するとともに、「特茶」独自の機能を訴求していきます。
[アジアパシフィック事業]
アジアパシフィックでは、フルバリューチェーンの総合力を発揮し、コアブランドの更なる成長を目指します。売上収益の伸長及び生産設備の増強による収益力の強化に取り組みます。
ベトナムでは、需要の回復を着実に捉え、エナジードリンク「Sting」や茶飲料「TEA+」等の主力ブランドの更なる成長を図るとともに、営業活動強化にも継続して取り組みます。タイでは、ペプシブランドの強化や生産効率の更なる向上に加えて、高まる健康志向への需要の取込みに向け、引き続き低糖商品の強化にも取り組みます。オセアニアでは、引き続き主力ブランドであるエナジードリンク「V」に注力するとともに、「BOSS」の更なる成長に向けて販促活動を強化していきます。併せて、オーストラリア新工場の稼働により飲料の強固なサプライチェーンを確立していくとともに、2025年からのRTD販売開始への準備にも着手していきます。健康食品においては、主力の「BRAND'S Essence of Chicken」の販売トレンド回復に向けて、マーケティング活動を強化していきます。
[欧州事業]
欧州では、各国のコアブランドへの集中活動を更に強化し、販売数量を成長させることで売上収益の伸長を目指します。RGM活動を進化させ、更なる収益性の強化に取り組みます。
フランスでは、「Oasis」、「Schweppes」のマーケティング強化に取り組みます。英国では、「Lucozade」へ集中投資していきます。スペインでは、「Schweppes」の家庭用市場及び業務用市場での活動を強化していきます。
[米州事業]
主力である炭酸カテゴリーの強化を進めるとともに、伸長する非炭酸カテゴリーの更なる拡大に取り組みます。併せて、更なるサプライチェーンの取組みにより、収益力の強化を図ります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりです。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1)サステナビリティ全般
①ガバナンス
当社グループでは、サステナビリティ委員会が、当社グループ全体のサステナビリティ経営を推進する役割を担い、社会と事業の持続的な発展に向けて、サステナビリティ戦略の立案・推進を行っています。
また、リスクマネジメントコミッティが、当社グループ全体のリスクマネジメント活動を推進する役割を担い、サステナビリティに関する種々の課題を含むリスクの抽出、対応策の立案及び対応状況の進捗確認を行っています。
サステナビリティ委員会とリスクマネジメントコミッティは、常に連携をとっており、重要な意思決定事項については、取締役会で更なる議論を行い、審議・決議を行います。サステナビリティ戦略の進捗や事業のリスクと成長機会は、適宜取締役会に報告を行っています。また、取締役会では、外部の専門家を講師とした研修、生産研究開発施設等における取締役会の開催や意見交換等を実施することで、サステナビリティに関する知見を深める機会を設けています。
また、役員報酬の決定に用いる目標には「サステナビリティ」の項目が設定されています。
②戦略
当社グループでは、中長期的なマクロ環境の変化を踏まえたサステナビリティ経営を推進していくため、当社グループにとっての重要課題(マテリアリティ)を特定し、サステナビリティ戦略へと反映しています。
当社グループは、当連結会計年度において、2017年に実施したマテリアリティ分析の結果の見直しを行いました。今回のマテリアリティ分析では、ダブルマテリアリティの概念のもと、当社グループの財務へのインパクト及び環境・社会への外部インパクトを特定し、評価を実施しました。また、マテリアリティ分析の結果を踏まえ、「サントリー食品インターナショナルグループ サステナビリティビジョン」を制定しました。
「サントリー食品インターナショナルグループ サステナビリティビジョン」に掲げる7つの重要テーマは、“NATURE”(水、容器・包装、気候変動、原料)と“PEOPLE”(健康、人権、生活文化)から構成されており、当社グループは、“NATURE”と“PEOPLE”は、相互依存関係があることを意識し、双方が「響きあう」社会の実現を目指してステークホルダーの皆様とともに活動を行っています。
③リスク管理
当社グループでは、リスクマネジメントコミッティにおいて、毎年当社グループ全社を対象にした重要リスクの抽出・評価を行い、当社グループにとって優先的に取り組むべきリスクを特定し、当社グループ全体でリスクの低減活動を推進しています。これらの活動につきましては、その内容を取締役会において定期的に報告しています。
リスク抽出・評価のアプローチ及び特定したリスクの管理方法は、次のとおりです。
■リスク抽出・評価のアプローチ
抽出されたリスクに対し、「リスクエクスポージャー(発生可能性×影響度)」及び「対策レベル(対策の準備の度合い)」の二軸で評価し、優先的に取り組むリスクを特定しています。
■特定したリスクの管理方法
特定した優先的に取り組むリスクについては、責任者及びモニタリング機関を任命のうえ、リスクへの対応策を実施します。対応状況はリスクマネジメントコミッティにおいて報告・議論し、対応結果を踏まえて次年度の重要リスクを選定することで、抽出・評価・対策・モニタリングのPDCAサイクルを回しています。
④指標及び目標
当社を含むサントリーグループでは、サステナビリティの課題の中でも特に事業への影響が大きいと想定している水及び気候変動について、2050年を目標年とする長期ビジョン「環境ビジョン2050」を設定しています。当社グループでは、2030年を目標年として、水及び気候変動に関する「環境目標2030」及び容器・包装に関する目標を設定し、活動を推進しています。
また、人的資本に関する指標及び目標については、後記「
■「環境ビジョン2050」及び「環境目標2030」
※1 製品を製造するサントリーグループの工場
※2 2015年における事業領域を前提とした原単位での削減
※3 製品を製造する当社グループの工場
※4 コーヒー等
※5 目標の100万人はサントリーグループの人数
※6 当社グループの拠点
※7 2019年の排出量を基準とする
■水、気候変動及び容器・包装に関する2030年目標並びに進捗
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重点分野 |
2030年目標 |
2023年実績 |
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水 |
工場節水 |
自社工場※1の水使用量の原単位をグローバルで20%削減※2 特に水ストレスの高い地域においては、水課題の実態を評価し、水総使用量の削減の必要性を検証 |
基準年比21%削減※2 |
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水源涵養 |
自社工場※1の半数以上で、水源涵養活動により使用する水の100%以上をそれぞれの水源に還元 特に水ストレスの高い地域においては全ての工場で上記の取組みを実施 |
全世界の自社工場※1の32%で水源涵養を実施。水ストレスの高い地域にある工場においては、その33%で活動を実施 |
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原料生産 |
水ストレスの高い地域における水消費量の多い重要原料※3を特定し、その生産における水使用効率の改善をサプライヤーと協働で推進 |
ブラジル・セラード地域のコーヒー農家に対して、再生農業を通じた水利用の評価・支援等を行うパイロットプログラムの構築を開始 |
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水の啓発 |
水に関する啓発プログラムに加えて、安全な水の提供にも取り組み、合わせて100万人※4以上に展開 |
累計107万人※5に展開 ・次世代環境教育「水育」等の水啓発プログラム:71万人 ・安全な水の提供:36万人 |
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気候変動 |
GHG排出削減 |
自社拠点※6でのGHG排出量を50%削減※7 |
基準年比22%削減※7 |
|
バリューチェーン全体におけるGHG排出量を30%削減※7 |
2024年7月末に |
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容器・包装 |
ペットボトルのサステナブル素材使用率※8 |
グローバルでのペットボトルの サステナブル素材使用率※8100% |
33% |
※1 製品を製造する当社グループの工場
※2 2015年における事業領域を前提とした原単位での削減
※3 コーヒー等
※4 目標の100万人はサントリーグループの人数
※5 累計の107万人はサントリーグループの人数
※6 当社グループの拠点
※7 2019年の排出量を基準とする
※8 ペットボトル重量のうちサステナブル素材(リサイクル素材あるいは植物由来素材等)の比率
(2)サステナビリティに関する重点テーマの取組み
①気候変動関連課題への対応(TCFDに基づく開示)
地球温暖化による水資源への影響は、飲料製品の安定供給にも影響を及ぼすと考えられます。また、資源の枯渇により、生産コストの増加も大きなリスクとなる可能性があることから、当社グループでは、気候変動を事業継続のうえで重要な課題の一つと認識しています。このことから、地球温暖化の緩和を目指す政府や地方自治体の環境取組みと連携するとともに、バリューチェーン全体での環境負荷低減を目指し、グループ一体となって気候変動対策に取り組んでいます。
当社を含むサントリーグループでは、気候変動によるリスクや事業への影響を特定し、適切に対応していく必要があると考え、金融安定理事会(FSB)により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を2019年に表明し、以降、毎年TCFD提言に基づく重要情報を当社サステナビリティサイトにおいて開示しています。
本項目では主要な情報を記載しています。
(ⅰ)ガバナンス
前記「
(ⅱ)戦略
当社グループでは、シナリオ分析を通じて特定したリスク・機会の中でも、カーボンプライシングの導入による生産コストの増加、生産拠点への水の供給不足による操業影響、農産物の収量減少による調達コストの増加の3点が、特に大きな財務的影響を及ぼす可能性があることを認識し、これらの影響額の試算及び開示を行っています。
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1.主要なリスク・機会の抽出 |
2.各リスク・機会の事業への影響を評価 (最重要リスクは事業に対する影響額を試算) |
3.対応策の検討/実施 |
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リスク・機会の種類・分類 |
想定される事業への影響 |
リスク軽減・機会取り込みへの 対応策 |
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移行 リスク |
新たな 規制 |
カーボンプライシング導入による生産コスト増 |
・炭素税の導入や税率の引き上げによる財務上の負担増 ・事業に対する試算影響額95億円(2030年)、180億円(2050年)※1 |
・内部炭素価格を導入し、投資意思決定の際に考慮 ・2030年までに脱炭素を促進する投資(再生可能エネルギーへの転換・ヒートポンプの活用等)を実施予定 ・「環境目標2030」「環境ビジョン2050」で設定した目標を達成した場合には、47.5億円(2030年)、180億円(2050年)の削減効果 |
|
物理的 リスク |
慢性 リスク |
生産拠点への水供給不足による操業影響 |
・グループにとって最も重要な原料である水の供給不足で工場が操業停止することによる機会損失 ・事業に対する試算影響額65億円※2 |
・当社グループ工場の全拠点を対象に、工場流域の利用可能な水資源量に関するリスクを評価 ・工場での水総使用量の削減の検討や、水源涵養活動により工場で使用する水の100%以上還元する目標を掲げて取組み実施 |
|
農産物の収量減による調達コストの増加 |
・現状と同品質の原料調達のためのコスト上昇 ・事業に対する試算影響額51億円(RCP8.5シナリオ、2050年) |
・原料産地別に気候変動による将来収量予測等の影響評価を行い、原料の安定調達のための戦略を策定 ・持続可能な農業に向けたパイロットの開始 |
||
|
急性 リスク |
大型台風やゲリラ豪雨を 要因とした洪水等の発生 |
・洪水被害による浸水、バリューチェーン分断等による操業停止 |
・リスクマネジメントコミッティにおいて、全ての当社グループ生産拠点のリスク評価を行う仕組みを構築 |
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機会 |
商品/ サービス |
気温上昇に伴う健康への影響 |
・平均気温の上昇や猛暑等により、熱中症対策飲料や水飲料へのニーズが高まる |
・生産能力増強や安定供給体制構築のための設備投資を実施 ・消費者ニーズを捉えた商品開発 |
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環境意識の高まりによる顧客行動の変化 |
・水資源を大切にする企業姿勢が社会に認知されることによるブランド価値の向上 |
・科学的データに基づく水源涵養活動、工場での節水・水質管理の取組み、水に関する啓発プログラム「水育」等を継続・強化するとともに、社外に情報発信 |
||
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資源効率 |
新技術導入によるコスト削減 |
・新技術開発による石油資源の使用量とCO2排出量の削減 ・ワンウェイプラスチック関連課税に対するコスト削減 |
・PETプリフォーム製造プロセスの効率化を目的とした新たな技術開発(「FtoPダイレクトリサイクル技術」等) ・効率的な使用済みプラスチックの再資源化技術開発(㈱アールプラスジャパン) |
|
※1 2019年の当社グループ排出量(Scope1、2)をもとにIEA NZEの予測値から独自に推計した炭素税価格を使用し試算(為替は1ドル=145円で計算)
・2030年 日本、欧州、米州 140ドル/t、APAC 90ドル/t
・2050年 日本、欧州、米州 250ドル/t、APAC 200ドル/t
※2 水ストレスが高いエリアに立地する全当社グループ工場において、取水制限を想定した場合の利益インパクトを試算。なお、工場所在地の水ストレス評価は、世界資源研究所のAqueduct 3.0と世界自然保護基金(WWF)のWater Risk Filter 6.0を使用
(為替は1ドル=145円で計算)
(ⅲ)リスク管理
前記「
(ⅳ)指標・目標
前記「
②水の取組み
水は当社グループにとって最も重要な原料の一つであり、かつ、貴重な共有資源であるため、水に関するリスク評価に基づきグループの事業活動や地域社会、生態系へのインパクトを把握することは持続的な事業成長のために不可欠です。
当社グループでは、地球の環境と開発の問題に関するグローバルな非営利研究団体である世界資源研究所(World Resources Institute)が開発したAqueduct Baseline Water Stress及び2040 Water Stress、世界最大規模の自然環境保護団体である世界自然保護基金(WWF)が開発したWater Risk Filterを使用して、当社グループの製品を製造する当社グループ工場を対象に、水の供給のサステナビリティに関するリスク評価を実施しています。
リスク評価の結果に基づいて1次選定した拠点に対して、水マネジメント(取水と節水)及び地域との共生の観点から各拠点に対して質問票による個別評価を行い、リスク低減対策の状況把握と進捗管理を行っています。
また、「環境目標2030」の達成に向け、バリューチェーン上の各拠点の属する流域における自然環境の保全・再生活動等、水に関わる様々な取組みをグローバルに推進しています。当社を含むサントリーグループは、日本において、2003年から水を育む森を育てる「天然水の森」の活動を進めており、2023年12月末時点では「天然水の森」を全国15都府県22ヵ所、約1万2千ヘクタールまで拡大し、国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養する森林面積の整備活動を進めています。また、2023年11月にはスペインのトレド工場の水源にあたるグアハラス貯水池の流域において、貯水池に流れ込むラヨス川の水質環境改善を目指し、ラヨス川の河畔やその周辺の植生回復に向けた活動を2024年から本格的に開始するための協定をラヨス市と締結しました。
更に、当社を含むサントリーグループでは、水の保全やスチュワードシップ(管理する責任)をグローバルに推進する国際標準の権威ある機関「Alliance for Water Stewardship(AWS)」による国際規格に基づくAWS認証を、「サントリー天然水 奥大山ブナの森工場(鳥取県)」、「サントリー九州熊本工場(熊本県)」、「サントリー天然水 南アルプス白州工場(山梨県)」の3工場で取得しています。また、当連結会計年度において九州熊本工場でAWS認証のレベルの中で最高位にあたる「Platinum」を取得しました。2021年に、当社を含むサントリーグループは、AWSと日本企業等へのウォーター・スチュワードシップの浸透を目的とした連携協定を締結し、日本で初となるAWS会議をAWS国際事務局、WWFジャパンと共同で開催し、産業セクターを超えて、様々な企業、NGOや行政機関の参画を呼びかけ、日本で初となる日本企業向けのAWS公式のトレーニングセミナーの開催を支援する等、啓発活動を推進しています。
③容器・包装の取組み
使用済みプラスチックの不適切な取扱いによって引き起こされる環境汚染や廃棄時のGHG排出量の増加等は大きな社会問題になっており、ワンウェイプラスチック関連課税によるコスト増加等のリスクがある一方で、新規技術の開発・導入により石油使用量の削減が可能となる機会があります。
当社を含むサントリーグループでは、循環型社会の実現に向けて、「プラスチック基本方針」のもと、“2030年までにグローバルで使用する全てのペットボトルに、リサイクル素材あるいは植物由来素材等のみを使用することで、化石由来原料の新規使用をゼロにする”という「ペットボトルの100%サステナブル化」を目標として掲げて活動を行っています。
ペットボトルのメカニカルリサイクルの推進に加え、更にGHG排出量を低減する世界初の「FtoPダイレクトリサイクル技術」を開発する等、長年にわたって技術革新にも取り組み、使用済みペットボトルを新たなペットボトルに生まれ変わらせる、「ボトルtoボトル」水平リサイクルを積極的に推進しています。
④原料の取組み
当社グループの製品に不可欠な農作物やその他原料は、気候変動による平均気温の上昇や、干ばつ、洪水といった異常気象の発生により、収量の変動、栽培適域の移動等、当社グループの生産活動に大きな影響を及ぼすものがあります。
当社を含むサントリーグループでは、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によるRCP2.6(2℃未満シナリオ)、RCP8.5(4℃シナリオ)及び国際エネルギー機関(IEA)によるシナリオ等を参照しながら、リスクと機会の把握を進めています。
原料の安定調達のための取組みとして、原料産地別に気候変動による将来収量予測等の影響評価を行い、戦略を策定し、原料由来のGHG排出量削減や気候変動の緩和・適応効果が期待される再生農業を農家等と連携して試験的に実施しています。
なお、主要原料に関する人権の尊重への取組みについては、後記「⑤人権の尊重への取組み」に記載のとおりです。
⑤人権の尊重への取組み
当社を含むサントリーグループは、人権に配慮した活動を推進するため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」(UNGPs)等の枠組みに沿った「サントリーグループ人権方針」のもと、人権デュー・ディリジェンスの活動をグローバルに推進しています。また、サプライチェーンにおける人権尊重に関しては、「サントリーグループサステナブル調達基本方針」及び「サントリーグループ・サプライヤーガイドライン」に則り、Sedexのプラットフォームを通じて取引先と連携して、人権・労働基準・環境等の社会的責任にも配慮した調達活動を推進しています。原料における人権リスクについては、グローバルリスクコンサルティング会社のVerisk Maplecroft社と連携し、一般的な国・業界データを用いて当社グループが購買する主要原料における潜在リスク評価を実施しました。評価の結果、潜在リスクが特定されたコーヒー豆については、サプライチェーンを遡ったリスク評価を開始しています。
(3)人的資本
当社グループでは創業以来、「人」こそが経営の最も重要な基盤であるという「人本(じんぽん)主義」に基づき、従業員一人ひとりがイキイキと、やりがいを持って働き、それぞれの個性と能力を最大限発揮して成長し続けることを目指し、様々な取組みを進めています。
①ガバナンス
当社グループでは、人的資本経営の実行体制として、前記「(1)サステナビリティ全般 ①ガバナンス」のガバナンス体制に加え、当社取締役会で、当社グループ全体の人事戦略を審議し、当社グループ全体の重要人事を決定しています。
当社グループの人事戦略の立案・推進は、当社の人事部門が担っています。当社の人事部門は、サントリーホールディングス㈱の人事部門、及び当社グループ会社各社の人事部門と、定期的に意見交換及び情報共有する場を設け、当社グループ全体で人事戦略を着実に推進・実行できる体制を整えています。
また、タレントマネジメント、人材育成・キャリア開発、エンゲージメント向上に向けた施策の立案実施、人権問題への対応、DEI及び健康経営に関する方針・戦略の立案実施等、様々な取組みにおいて、国内外のグループ各社と情報を共有し、議論・連携できる体制としています。
なお、当社は、任意の人事委員会を設置しています。人事委員会は、委員の過半数を独立社外取締役とすることで、客観性及び透明性を確保しつつ、当社経営陣及びサントリーホールディングス㈱からの独立性も確保し、当社取締役候補者案、当社最高経営責任者及び社外取締役の後継者計画(プランニング)の策定、並びに取締役報酬水準を審議しています。また、より実効的に当社取締役候補者案の審議を実施すべく、経営幹部候補人材のタレントマネジメントの進捗状況についても、人事委員会へ、適宜報告しています。
②戦略
当社グループは、以下の方針を立て、様々な取組みを進めています。
■人材育成方針
人材育成を「中長期的な視点」で捉え、国籍や年齢等に関わらず、全ての従業員に成長の機会を提供することに努めています。
・成長フィールド(事業・リージョン・機能)の拡がりを活用した新たなチャレンジの機会提供
当社を含むサントリーグループは、創業以来の洋酒事業を起点に、ビール・清涼飲料・健康食品・外食・花等、様々な分野に事業を展開しています。また、日本から世界へフィールドを拡げ、今日では、米州・欧州・アジア・オセアニアにおいて、メーカーとして幅広いバリューチェーン・機能を有しています。グローバル食品酒類総合企業グループへ成長する中、「全社員型タレントマネジメント」の実践を掲げ、従業員が挑戦・成長を続けられる機会を提供できるよう努めています。
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全部門育成会議/Talent Review |
グローバル共通の指標を活用し、各社・各部門・各組織において年間を通じて育成会議/Talent Reviewを実施。複数・多様な視点で一人ひとりの今後のキャリアの方向性・育成ポイントについて議論を重ね、個人・組織の成長を支援 |
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戦略的ローテーション加速 |
事業・リージョン・職種を跨いだ戦略的ローテーション加速により、多様なキャリアの拡大を促進。組織の活性化や事業間のシナジーの創出 |
・世界中のサントリー従業員の学び舎「サントリー大学」における企業理念の浸透と能力開発
当社を含むサントリーグループは人が育つための、日常の学びの仕組み・学びの風土づくりを強化するため、2015年4月に企業内大学「サントリー大学」を開校しました。「サントリー大学」は、「自ら学び、成長しつづける風土の醸成」、「創業の精神の共有と実践」、「リーダーシップ開発」及び「未来に向けた能力開発」の4つの視点からサントリーグループに属する全ての従業員に様々なプログラムを開発、提供しています。
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「企業理念・創業精神の浸透」「グローバル経営人材の育成強化」に向けたプログラム |
Global Leadership Forum/Suntory Harvard Program/Beyond Borders/Global Leadership Development Program/次世代経営者研修/グローバルチャレンジ/トレーニー制度等、国境を越えた真の“Global One Suntory”を実現し、事業の枠を超えてサントリーグループ全体を牽引するリーダーを育成することを目的としたプログラムの数々を実施 |
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学習プラットフォーム 「MySU(My Suntory University)」 |
世界中の従業員がいつでもどこでも自発的かつ効果的に学習できる環境を整備 |
以上の人材育成方針を各現場で浸透・実行できるよう、当社を含むサントリーグループでは、サントリーリーダーシップ考動項目(Suntory Leadership Spirit)(以下「SLS」という。)を設定し、リーダー層に求められる考動をグローバル共通で明確化しています。
SLSは、「やってみなはれ」「お客様志向 現場発想」「組織の壁を乗り越える」「中長期視点も踏まえた、機敏な判断・考動」「人を育てる 自らも育つ」の5項目からなり、当社を含むサントリーグループならではのバリューやユニークネスを生み出すリーダーシップの基盤となっています。
とりわけ「人を育てる 自らも育つ」という項目では、中長期視点で部下の育成計画を定め、成長を積極的に支援すること・マネジャー自らの成長を常に意識し、不断の努力を行うことを求めています。
■社内環境整備方針
・DEI推進
当社を含むサントリーグループは、新たな価値を絶えず創造していくためには、国籍や年齢等にとらわれることなく、多様な人材、多様な価値観を積極的に取り入れ、公平性を担保し、活かすことが重要であるという考えのもと、「DEI Vision Statement」と「Strategic Pillars」を制定し、その実現に向けてグループグローバルで様々な取組みを進めています。
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女性の登用・活躍推進 |
・ストレッチ機会提供による意識・考動変革、ライフイベントとの両立に向けた制度・環境整備、グローバルでの啓発活動、部門ごとの状況・課題に応じた目標設定とサクセッション・パイプライン形成 ・年に3回程度、DEI推進状況を確認する協議会の実施 |
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男性育休推進 |
5日間の有給育休制度の活用(ウェルカム・ベビー・ケア・リーブ)、男性従業員の第一子が出生した際のwelcome baby セミナーへの参加必須化、配偶者の出産予定申請制度、出生時の育児休職期間中の就業の条件付き認可 |
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LGBTQ+に関する活動の展開 |
同性パートナーを配偶者に加える等の制度改定、相談窓口設置、グローバルでの啓発活動、東京・九州のレインボープライドへゴールドスポンサーとして協賛し体験を通じた理解促進を推進 |
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障がい者の活躍推進 |
職域を限定しない採用活動、「コラボレイティブセンター」の活躍とコラボる体験(コラボレイティブセンターのメンバーの仕事を学ぶ体験)を通じたインクルーシブな風土の醸成 |
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シニア層の多様な働き方支援 |
制度改定、キャリアワークショップの実施、地方創生人材支援 |
・健康経営の推進
当社を含むサントリーグループは、従業員・家族の健康がサントリーの挑戦・革新の源であるという考えのもと、全従業員が心身ともに健康でやる気に満ちて働いている状態を目指しています。
2016年に「健康経営宣言」を掲げ、Global Chief Health Officer(健康管理最高責任者)が中心となり、健康保険組合や労働組合と連携しながら様々な取組みを進めています。
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生活習慣病対策 |
食事、運動、睡眠、禁煙、適正飲酒等の観点で、従業員が主体的、継続的に健康増進に向けて取り組むための支援 |
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メンタルヘルス対策 |
セルフケア、ラインケア、事業場内産業保健スタッフ等によるケア、事業場外資源によるケアの4つの観点での支援 |
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安全衛生管理体制の整備・推進 |
事業所ごとに健康レポートを配布。健康課題に対する目標を各事業所が計画し実行するPDCAサイクルを推進 |
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女性の健康支援 |
女性活躍支援の一環として、女性が健康で安心して働ける環境を整備するため、婦人科専門の相談窓口を設置 |
・エンゲージメントの強化
世界に4万人超の従業員を有する当社を含むサントリーグループは、様々な個性やバックグラウンドを持つ従業員同士が仲間として積極的に繋がり、ミッションに向かってともに成長していくうえで、「エンゲージメントの強さ」が重要であると考えています。「ONE SUNTORY、One Family」を合言葉に、様々な取組みを進めています。
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One Suntory Walk |
健康×社会貢献×一体感醸成の3つの価値を持ち合わせた、世界30か国から7,500人以上が参加するユニークなイベント |
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ソフトバレーボール大会 |
全国8会場にて、国内グループ会社従業員とその家族約17,000人が参加する一大イベント |
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アルムナイネットワーク |
・社会で幅広く挑戦、活躍しているOB、OG(自己都合退職者)の新たなネットワーク(約130人が登録) ・定年退職した従業員が旧交を温める会員組織(約2,100人が所属) |
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組織風土調査 |
エンゲージメント、企業理念の理解、コンプライアンスについてどのような意識を従業員が持っているのかを毎年調査 |
③リスク管理
リスク管理については、前記「
④指標及び目標
当社を含むサントリーグループは、人材育成を中長期的な視点で捉え、全ての従業員に成長の機会を提供するという方針に基づき、チャレンジの機会創出や、「サントリー大学」における企業理念の浸透と能力開発に取り組んでいます。
また、新たな価値を絶えず創造していくために、国籍や年齢等にとらわれることなく、多様な人材、価値観を積極的に取り入れ、公平性を担保して活かすことが重要であるとの考えから「DEI Vision Statement」を掲げ、従業員・家族の健康がサントリーの挑戦・革新の源であり、全ての従業員が心身ともに健康でやる気に満ちて働いている状態を目指して「健康経営宣言」を掲げています。世界中の従業員同士が仲間として積極的に繋がり、ミッションに向かってともに成長すべく「ONE SUNTORY、One Family」の精神で、一人ひとりがイキイキと働ける環境づくりを進めています。
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指標 |
目標 |
2023年実績 |
対象範囲 |
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人材育成方針 |
当社グループで自分自身のキャリアを築いていく様々なチャンスの機会についての好意的回答割合 |
2030年目標 80% |
70% |
※1 |
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当社グループの企業理念の意味合いの理解についての好意的回答割合 |
2030年目標 95% |
93% |
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社内環境整備方針 |
DEI推進 |
女性管理職比率 |
2030年目標 30% |
8.7% |
※2 |
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男性育休取得率 |
2024年以降 100%以上維持 |
113.0% |
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健康経営の 推進 |
再検査・精密検査受診率 |
2030年目標 100% |
90.0% |
※1 |
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プレゼンティーイズム※3 |
2030年目標 90% |
79.7% |
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従業員エンゲージメント |
当社グループで働く誇りについての好意的回答割合 |
2030年目標 90% |
88% |
※1 |
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※1 当社の雇用する従業員(一部の海外グループ会社への出向者等を除く)が対象
※2 当社の正規雇用従業員(当社から他社への出向者を含み、他社から当社への出向者を除く)が対象
※3 病気やケガがない時を100%とした場合の仕事の生産性 4週間の平均
当社グループでは、リスクマネジメントコミッティが当社グループ全体のリスクマネジメント活動を推進する役割を担っており、定期的に当社グループにおけるリスクの抽出、当該リスクの顕在化する可能性及び経営成績等の状況に与える影響の内容の検討、当該リスクへの対応策の立案及び対応状況の進捗確認を行っています。また、リスクマネジメントコミッティはその活動内容を取締役会に報告しています。
経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクのうち、リスクマネジメントコミッティにおいて、特に重要なリスク及びその他重要なリスクに分類しているリスクは、以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものです。
<特に重要なリスク>
(事業計画及び経営戦略に基づく事業戦略に関するリスク)
当社グループは、中長期的成長の実現のために中期経営戦略を策定していますが、中期経営戦略を実行し、目標を達成できる保証はありません。中期経営戦略の実行・目標達成のためには、企業買収、事業提携・資本提携による規模の拡大と、既存事業の成長とが必要となりますが、企業買収等の機会の獲得及び実行並びにその後の事業統合に際して当社グループが直面するリスク(企業買収及び事業提携・資本提携に関するリスク)に加えて、既存事業の成長の実現に関しても、中期経営戦略を実現できないリスクがあります。
(企業買収及び事業提携・資本提携に関するリスク)
日本や他の先進国市場及び新興国市場において新たな企業買収や市場参入の機会を見い出し、活用することは、当社グループの成長戦略の重要な要素であるため、当社グループは、大規模なものや重要性の高いものも含め、企業買収及び事業提携・資本提携の可能性を常に検討しています。このような企業買収等に関しては、以下に掲げるような問題が生じる可能性があります。
・ 企業買収等の適切な機会を見い出せないこと、又は、競合的な買収による場合を含め相手先候補との間で企業買収等に係る条件について合意できないこと
・ 企業買収等に関連して必要な同意、許認可又は承認を得ることができないこと
・ 必要資金を有利な条件で調達できないこと
・ 新たな地域又は商品カテゴリーに参入することにより、当社グループの事業内容が変化すること、また、当社グループが精通していない又は予測することができない課題に直面すること
・ 企業買収等の結果として、予期していた利益や経費削減効果を実現できないこと
当社グループの企業買収等が成功しない場合、当社グループの中長期的な成長目標を実現することができない可能性があります。
(経済情勢等に関するリスク)
日本その他の主要市場における将来の景気後退又は経済減速等の経済不振は、当社グループの商品に対する購買力や消費者需要に影響を及ぼす可能性があります。低迷する経済情勢の下では、消費者が買い控えを行い、又は低価格帯商品を志向する可能性があります。日本その他の主要市場における当社グループの商品に対する消費者需要の低下は当社グループの収益性を低下させ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
日本の長期的な人口動向は、全体として高齢化及び減少の傾向にあり、消費者需要に影響を与える可能性があります。仮に、日本の人口動向により当社グループの商品の需要が減少し、又は価格低下圧力が増加した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(当社商品の安全性に関するリスク)
当社グループは、飲料・食品メーカーとして商品の安全性を最重要課題として認識し、適用される規制を遵守し商品に要求される全ての品質基準を満たすよう努めています。更に、当社グループは、品質、環境、健康及び安全に関する様々な基準を採用しています。しかしながら、当社グループの努力にもかかわらず、商品がこれらの基準を満たさず、又は、その品質が低下し、安全性に問題が生じる可能性があります。このような問題は、当社グループにおいて生じ得るのみならず、当社の管理が及ばない販売先や仕入先・製造委託先において生じる可能性があります。これにより、多額の費用を伴う製造中止、リコール又は損害賠償請求が発生し、また、当社グループのブランド及び信用に悪影響を及ぼす可能性があります。更に、当社グループの信用は、根拠のない若しくは僅少な金額の損害賠償の申立て又は限定的なリコールによっても低下する可能性があります。
(商品開発及び商品供給に関するリスク)
当社グループが事業を展開する飲料・食品市場は、消費者嗜好の変化による影響を非常に受けやすい市場です。当社グループが収益及び利益を確保するためには、消費者の嗜好にあった魅力的な商品を提供することが必要となります。当社グループは、市場の変化を的確に把握するよう努めていますが、当社グループが消費者の嗜好にあった魅力的な新商品を開発できる保証はありません。また、当社グループは、健康志向を有する消費者にとって魅力的な商品を開発することを重要な商品戦略の一つとしていますが、他社が同様に健康を訴求する商品に注力し競争が激化する可能性があります。消費者の嗜好に何らかの重大な変化が生じた場合や、当社グループがこのような変化を的確に把握し、又はこれに対応することができない場合、当社グループの商品の需要が減少し、また当社グループの競争力が低下し、経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
当社グループは、商品の供給に関して、消費者の嗜好等を踏まえて需要を予測し、需給計画を立案していますが、当社グループの予測を超える需要が発生した場合等、需要に適切に応じられない可能性があります。この場合、当社グループは販売機会を喪失し、また、当社グループのブランドイメージに悪影響を及ぼし、当社グループの商品の需要が低下する可能性があり、これらにより経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
また、当社グループの事業の継続的な成否は、新商品の継続的な市場への投入、商品デザインや広告宣伝活動の更なる改善といった革新活動にも依存しています。当社グループは、ブランド力の強化及び新商品投入のために多大な経営資源を投入していますが、消費者環境の変化に伴い、当社グループの販売計画を達成できる保証はありません。当社グループが市場動向・技術革新に対応した有効な販売施策や適切な革新を実現できず、また、新たなヒット商品を市場に投入できなかった場合、当社グループのブランドイメージに悪影響を及ぼし、当社グループの商品の需要が低下する可能性があり、また、これにより、棚卸資産の評価減その他の費用が発生する可能性もあります。
(原材料調達に関するリスク)
当社グループは原材料として主に、アルミニウム製・スチール製の缶及び缶蓋、ガラス瓶、ペットボトル、キャップ、段ボール、コーヒー豆、茶葉、果汁、果物、甘味料、添加物等を使用しています。かかる原材料の価格は、天候や市場における需給の変化により影響を受けます。また、原材料から商品を製造するには、電気や天然ガスを使用します。これらの原材料及びエネルギーに係る費用は著しく変動する可能性があります。これらの原材料及びエネルギーの価格が継続的に上昇した場合、当社グループの原価を押し上げる可能性があります。増加した原価を販売価格に十分に転嫁できない場合や、高騰した原価の販売価格への転嫁により当社グループの商品に対する需要が減少する場合には、当社グループの事業並びに経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが使用する原材料の中には、供給源が限られているものがあります。当社グループは、原材料の仕入先と強固な関係を築いていると考えていますが、仕入先が当社グループの要求に応えることができない場合、原材料不足に陥る可能性があります。仕入先が当社グループの要求に応えることができないという事態は、気候変動、天候、自然災害、火災、作物の不作、疾病、労働力不足、労働衛生・労働安全上の問題、ストライキ、製造上の問題、輸送上の問題、供給妨害、政府による規制、国家間の対立、戦争の勃発、政治不安、テロリズム及び各国のエネルギー危機等様々な要因により生じる可能性があります。かかるリスクは、仕入先又はその施設が、上記の事態が生じる危険性の高い国や地域に所在する場合により深刻な問題となる可能性があります。また、仕入先の変更には長期のリードタイムを要する可能性があり、原材料の供給が長期にわたり滞る場合、当社グループの事業並びに経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組み」に記載のとおり、取組みを進めています。また、当社を含むサントリーグループが賛同を表明しているTCFDに沿った情報開示を拡充するとともに、原材料安定調達の取組みについても情報開示を行っています。
(水の供給に関するリスク)
水は当社グループのほぼ全ての商品の主要な原料ですが、世界の多くの地域において、水資源は、人口増加による消費量の増加、水質汚染、管理不足や気候変動に起因するかつてない難題に直面しています。世界中で水資源の需要が高まるにつれて、当社グループを含む、豊富な水資源に依存している企業は、製造コストの増加や、生産量についての制約に直面する可能性があり、その結果、長期にわたって当社グループの収益性又は成長戦略に影響を及ぼす可能性があります。
(天候に関するリスク)
当社グループが販売する商品の中には、天候により売上が大きく左右されるものがあります。当社グループの商品は、通常春から夏にかけての暑い時期に販売数量が最大となりますが、この時期に気温が低くなった場合、商品需要が落ち込み、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(サプライチェーンに関するリスク)
当社グループ及び当社グループの取引先は、世界各国で原材料を調達し、製造を行っています。サプライチェーンマネジメントにより適切な品質管理、経費削減及び収益性の向上を実現することは、当社グループの事業戦略の一つですが、当社グループは、当社グループの管理が及ばない要因による場合を含め、目標とする効率性を達成できない可能性があります。気候変動、天候、自然災害、火災、作物の不作、疾病、労働力不足、労働衛生・労働安全上の問題、ストライキ、製造上の問題、輸送上の問題、供給妨害、政府による規制、行政措置、感染症、国家間の対立、戦争の勃発、政治不安及びテロリズム等の事由により当社グループの製造又は販売活動に支障が生じる結果、当社グループの製造又は販売能力が損なわれる可能性があります。かかる事由の発生可能性を減少させその潜在的影響を低減するための十分な措置が取られない場合、又はかかる事由が発生したときに適切な対処ができない場合には、当社グループの事業並びに経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があるとともに、当社グループのサプライチェーンを修復するための追加的な経営資源の投入が必要となる可能性があります。
当社を含むサントリーグループでは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組み」に記載のとおり、「サントリーグループサステナブル調達基本方針」を制定し、取引先と連携して、人権・労働基準・環境等の社会的責任にも配慮した調達活動を推進しています。
(当社ブランドの信用に関するリスク)
当社グループにとって、当社グループの信用を維持することは極めて重要です。商品の汚染若しくは異物混入、供給元から調達する原材料及び含有物等に関するものを含め商品の品質、安全性及び完全性を高い水準で維持できないこと、真実であるか否かを問わず、商品の品質問題、不正表示若しくは汚染に関する疑惑、又は、マスメディアやインターネット上に流通するネガティブな評価により、当社グループの信用が損なわれ、また、当社グループの商品に対する需要の低下又は製造・販売活動への支障が生じる可能性があります。当社グループの商品が、一定の品質基準を満たさない場合、消費者等に損害を与えた場合又は商品について不正な表示がなされた場合、当社グループは商品を回収し、損害賠償責任を負わなければならない可能性があります。更に、当社グループの管理が及ばないサントリーホールディングス㈱及びそのグループ会社もサントリーブランドを使用して事業を行いますが、サントリーホールディングス㈱又はそのグループ会社において同様の問題が生じ、又はコンプライアンス違反があった場合や当社グループの業務委託先においてコンプライアンス上の問題等が生じた場合には、当社グループのブランドにも影響を及ぼす可能性があります。当社グループの信用が損なわれ、又は当社グループの商品に対する消費者の信頼を失った場合、当社グループの商品の需要の低下に繋がる可能性があり、また、当社グループの事業並びに経営成績及び財政状態に重大な影響を及ぼし、更には当社グループの信用を回復するための追加的な経営資源の投入が必要となる可能性があります。
(企業の社会的責任に関するリスク)
当社グループは、地球環境を経営資源の一つと認識して環境保全活動に真剣に取り組み、次の世代に持続可能な社会を引き渡すことができるよう努力しています。水使用量削減、GHG排出量削減、廃棄物再資源化、容器リサイクルの徹底を図り、事業を遂行していく上で、関連する各種環境規制を遵守しています。また、当社グループは、調達先と連携して、人権・労働基準・環境等の社会的責任にも配慮した調達活動を推進しています。しかしながら、当社グループの努力にもかかわらず、事業活動及びサプライチェーンにおいて、地球規模での気候変動や資源枯渇等による地球環境問題、海洋プラスチック問題、事故・トラブル等による環境汚染や、関係法令の改正等によって新規設備への投資によるコスト増加及び生産量の制約、労働安全衛生や児童労働等の人権に係る問題等が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(情報システム及び情報サービスに関するリスク)
当社グループは、取引業務の遂行、顧客との連絡、経営陣への情報提供及び財務に関する報告書の作成等を正確かつ効率的に行うため、情報システムを利用しています。また、当社グループは、主要な情報システムの多くを、サントリーホールディングス㈱の子会社を含む外部業者に依存しています。当社グループは、情報システムの安全性を高めるための方策及び手続を実施していますが、情報システムは、ハードウェア、ソフトウェア、設備若しくは遠隔通信の欠陥・障害、処理エラー、地震その他の自然災害、テロリストによる攻撃、コンピュータ・ウイルス感染、ハッキング・悪意をもった不正アクセス等のサイバー攻撃、その他のセキュリティ上の問題又は供給業者の債務不履行等に起因する障害又は不具合に対して脆弱です。セキュリティ、バックアップ及び災害復旧に係る対策は、これらの障害又は不具合を回避する手段として十分ではない可能性があり、また、これらが適切に実施されない可能性もあります。これらの障害又は不具合が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(法規制の遵守に関するリスク)
当社グループは、日本、アジアパシフィック、欧州、米州その他当社グループが事業を行う地域において、様々な法令による規制を受けています。これらの規制は、当社グループによる商品の製造、表示、輸送、宣伝広告及び販売等の事業活動の様々な側面に適用されます。特にかかる規制の不遵守や事故により環境汚染が発生した場合、当社グループは損害賠償請求や行政処分により多額の費用を負担することがあります。また、当社グループは国際的に事業を展開していることから、日本法及び外国法における腐敗防止規定を遵守する必要があります。当社グループに適用のある法規制に違反した場合、当社グループの信用が失われ、また、厳格な罰則又は多額の損害を伴う規制上の処分又は私法上の訴訟提起が行われる可能性があります。更に、当該法規制の内容が大幅に改正され、若しくはその解釈に大幅な変更が生じ、又はより高い基準若しくは厳格な法規制が導入された場合、コンプライアンス体制構築に係る費用が増加する可能性があります。
また、近時、多くの地域において、健康上の理由から、炭酸飲料等の加糖飲料の販売に関して、特別物品税の課税及び新たな表示の義務化又は商品の販売サイズの制限その他の規制等の導入若しくは導入の検討がすすんでいます。当社グループは、商品ラインナップについて、他の国際的飲料メーカーと比べて、非炭酸商品及び健康志向商品の割合が大きいと考えていますが、かかる規制措置により、当社グループの経営成績及び財政状態に影響が及ぶ可能性があります。
(経営陣及び従業員に関するリスク)
当社グループが持続的に成長するためには、リーダーシップのある経営陣及び有能な従業員を継続して雇用し、かつ、育成することが必要となります。また、当社グループは、新たな従業員を雇用し、教育し、その技術及び能力を育成しなければなりません。計画外の退職が生じ、又は現経営陣の適切な後継者の育成に失敗した場合には、当社グループの組織的ノウハウが失われ、当社グループの競争優位性が損なわれる可能性があります。また、ジェンダー、性的指向、年齢、障がい、国籍、文化、民族、宗教、信条、経歴、生活様式等のあらゆる多様性が受容されるとともに、従業員の人権問題が適切に予防・把握・対処されることで、多様な人材がパフォーマンスを発揮できる制度や職場環境を醸成できない場合には、当社グループのレピュテーションが損なわれる可能性及び優秀な人材を確保できず、多様性がもたらすイノベーション創出やリスク管理が達成できない可能性があります。
従業員の雇用に関する競争の激化、従業員の退職率の上昇、従業員の福利厚生費の増加に起因するコストの増加又は適切な労務管理ができないことによる従業員の健康阻害等が発生することにより、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。
当社グループでは、人材評価をグループ全体及び地域毎に行い、人材の確保の観点も踏まえて、育成施策や配置を討議し、人材ローテーションやグローバル共通の人材開発に取り組んでいます。国内では、戦略領域での人材獲得をより一層進める等して事業経営人材を計画的かつ構造的に育成しています。
なお、人材育成方針及び社内環境整備方針については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)サステナビリティに関する重点テーマの取組み」に記載のとおりです。
<その他重要なリスク>
(競合に関するリスク)
当社グループが事業を展開している飲料・食品市場の競争は厳しく、当社グループは、当社グループと同様に国際的に事業を展開する大手の飲料メーカーや、特定の地域に根ざした事業活動を行う多数の飲料メーカーと競合しています。大手競合企業は、その経営資源や規模の活用による、新商品の導入、商品価格の値下げ、広告宣伝活動の強化により、競争圧力及び消費者嗜好の変化に迅速に対応することができます。また、当社グループは、独自ブランドを有し、特定の商品カテゴリー等において従来から強みをもつ様々な飲料メーカーとも競合しています。当社グループがこれらの競合企業との競争において優位に立てない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(国際事業に関するリスク)
当社グループは、国際的に事業を展開しており、先進国市場のみならず、新興国市場に対しても投資を行っていますが、これにより、当社グループは以下に掲げるものを含む国際事業一般に内在するリスクを負っています。
・ 通常と大きく異なる又は十分に整備されていない法制度・税制
・ 経済、政治情勢の悪化
・ 為替レートの変動
・ テロリズム、政治不安若しくは暴動等の非常事態又は感染症の流行による混乱
また、当社グループは、当社又は当社の主要な海外子会社が有する商品開発技術及び既存の商品ラインナップを活用して、他の地域に商品を展開していくことを予定しています。しかしながら、当該地域における競争、価格、文化の相違その他の要因により、当社グループの商品が当該地域において受け入れられない可能性があります。当社グループにとって経験が乏しい新規市場において、消費者嗜好に合致した商品を開発することができない場合、当社グループの成長目標を達成できない可能性があります。
(為替の変動に関するリスク)
当社グループは、原材料の一部を、主に米ドルを中心とした、日本円以外の通貨建てで海外から調達しています。当社グループは、為替相場の変動リスクを軽減するためにデリバティブ取引を利用しているものの、かかるヘッジ取引によっても全ての為替相場の変動リスクを回避できるわけではなく、為替の変動が当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。更に、当社グループの連結財務諸表は日本円により表示されているため、海外子会社の収益及び費用並びに資産及び負債の金額を、各決算期の期中平均又は期末における為替レートに基づき日本円に換算する必要があります。したがって、外国通貨の為替変動は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(販売チャネルに関するリスク)
当社グループは、卸売業者及び大手小売業者を含む多数の販売チャネルを通じて商品を販売しています。日本においては、自動販売機等もまた重要な販売チャネルとなっています。このような販売チャネルに関して、当社グループが直面する課題には以下のものが含まれます。
・ 多くの市場において卸売業者同士又は小売業者同士が合併・統合することにより、価格設定及び販売促進活動に関して強い交渉力を有する大規模卸売業者又は大規模小売業者が誕生し、当社グループがこれらの重要な販売先を何らかの理由で喪失したり、これらの業者との間の価格設定その他の条件について不利益な変更を余儀なくされたりすること
・ 国内外において、小売業者が価格競争力のあるプライベートブランド商品を導入しており、これにより価格競争が激化していること
・ 日本には多数の自動販売機が既に設置されており、今後の増設の余地が限られていること。更に、コンビニエンスストアの店舗数の増加に伴い、コンビニエンスストアでの商品の販売量が伸長することにより、自動販売機一台当たりの売上が減少する可能性のあること
販売チャネルに関するこのようなリスクが、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(金利の変動に関するリスク)
当社グループは、必要資金の一部を有利子負債で調達しており、将来的な資金需要に応じて今後も金融機関からの借入や社債発行等による資金調達を行う可能性があります。また、当社グループは将来の企業買収等のための資金調達を行う可能性があります。金利の変動リスクを軽減するために、固定金利での調達やデリバティブ取引を利用しているものの、金利の大幅な上昇があった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(のれん、無形資産に関するリスク)
2023年12月末日現在、当社グループののれんは2,782億円、無形資産は4,953億円あります。無形資産のうち商標権が3,788億円を占めています。
のれんの大部分はOrangina Schweppes Holding B.V.及びその子会社並びに㈱ジャパンビバレッジホールディングス等の株式の取得に関するものです。また、無形資産の大部分は商標権であり、商標権の大部分はGlaxoSmithKline plcより譲り受けた「Lucozade」「Ribena」の製造・販売事業に関するもの及びOrangina Schweppes Holding B.V.及びその子会社の買収により取得した「Schweppes」「Orangina」「Oasis」等の製造・販売事業に関するものです。
当社グループが将来新たに企業買収等を行うことにより、新たなのれん、無形資産を計上する可能性があります。
当社グループは、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産について償却は行わず、毎期又は減損の兆候が存在する場合には、その都度、減損テストを実施し、その結果によって減損損失を計上する必要があり、かかる減損損失の計上は当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(退職給付債務に関するリスク)
当社グループにおける従業員の退職給付費用及び退職給付債務並びに制度資産は、割引率等数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。実際の結果が前提条件と相違した場合又は前提条件が変更された場合は、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(知的財産権等に関するリスク)
当社グループは、サントリーホールディングス㈱からサントリーブランドの使用許諾を受けており、今後も引き続き使用許諾を受ける予定です。今後、当社がサントリーホールディングス㈱の子会社でなくなったこと等を理由として当該使用許諾が終了した場合、当社グループの企業イメージやマーケティング活動に影響を及ぼす可能性があり、当社グループの独自ブランドを構築するために莫大な投資を行わなければならない可能性があります。
また、当社グループは他にも様々な商標に関する使用許諾を第三者から受けるとともに、当社グループが所有する商標の使用を第三者に許諾しています。
当社グループが第三者から使用許諾を受けている商標等については、ライセンス契約等が解約された場合、関連する商品が製造・販売できなくなる可能性があります。重要なライセンス契約等が解約された場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが第三者に使用を許諾している商標等については、当該第三者による商標等の使用や関連商品に問題が生じた場合、当社グループによる当該商標等の使用や当社グループのブランドに影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社グループが商標を登録していない地域において当社グループの商標と同じ又は類似する商標を、第三者が所有又は使用していることがあります。当該第三者による商標等の使用や関連商品に問題が生じた場合、当社グループのブランドに悪影響を及ぼし、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、当社の事業にとって重要な知的財産権を所有しています。かかる知的財産権には、商標権、著作権、特許権その他営業秘密が含まれます。当社グループと第三者との間で、知的財産権に関する紛争が生じる可能性があります。こうした紛争が生じた場合、当社グループの事業に支障を及ぼし、当社グループの権利保護又は相手方からの主張に対する防御のために多額の費用を費やさなければならない可能性があります。当社グループは、その知的財産権保護のために講じる措置が十分であり、又は第三者が当社グループの権利を侵害し若しくは悪用しないことを保証することはできません。当社グループがその知的財産権を保護できない場合、当社グループのブランド、商品及び事業に損害が生じる可能性があります。
(親会社が支配権を有することに伴うリスク)
本書提出日現在において、当社の親会社であるサントリーホールディングス㈱は当社発行済普通株式の59.48%を所有し、当社取締役の選解任、合併その他の組織再編の承認、重要な事業の譲渡、当社定款の変更及び剰余金の配当等の当社の基本的事項についての決定権又は拒否権を有しています。株主総会の承認が必要となる全ての事項の決定に関して、他の株主の意向にかかわらずサントリーホールディングス㈱が影響を与える可能性があります。なお、サントリーホールディングス㈱の事前承認事項はなく、当社が独自に経営の意思決定を行っています。
当社とサントリーホールディングス㈱及びその子会社との間の主な関係等についての詳細は、以下のとおりです。
① サントリーグループとの取引関係について
当社グループは、サントリーグループに属する会社と取引を行っています。
当連結会計年度における主な取引は次のとおりです。
(単位:百万円)
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取引内容 |
取引先 |
金額 |
取引条件等の決定方法 |
|
製品輸送業務の委託 |
サントリーロジスティクス㈱ |
28,243 |
品質及び類似サービスの市場相場価格を勘案し、両者協議のうえ決定 |
|
ブランドロイヤリティの支払 |
サントリーホールディングス㈱ |
24,129 |
ブランド価値等を勘案し、両者協議のうえ使用対価として妥当な料率を決定 |
|
コーヒー豆の仕入 |
サントリーコーヒーロースタリー㈱ |
16,294 |
品質及び類似商品の市場相場価格を勘案し、両者協議のうえ決定 |
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ウーロン茶葉・コーヒーエキスの仕入 |
三得利貿易(香港)有限公司 |
15,557 |
品質及び類似商品の市場相場価格を勘案し、両者協議のうえ決定 |
サントリーホールディングス㈱を含むサントリーグループとの取引・行為等については、社内規程に従い、取引・行為等を実施する部署において、また、法務部門及び財務・経理部門において、サントリーホールディングス㈱からの独立性の観点も踏まえ、必要性・合理性、条件等の妥当性、公正性について、事前に確認を行うこととしています。更に、一定金額以上の取引、及び、ブランド・人材・重要な資産・情報等の当社の企業価値の源泉となる経営資源に関する取引・行為等(以下、合わせて「重要取引・行為等」という。)については、特別委員会の事前審議・答申を経た上で、取締役会において、その重要取引・行為等の必要性・合理性、条件等の妥当性、公正性について十分に審議した後、意思決定を行います。事前の審議に加え、事後、審議の内容に基づいた取引・行為等が行われたかどうかについて、社内規程に従い、法務部門、財務・経理部門、内部監査部門によるチェックと、監査等委員会による監査を実施します。また、重要取引・行為等については、特別委員会及び取締役会に実施状況を報告し、実施結果を確認することとしています。これらの体制により、サントリーグループとの取引・行為等の公正性・透明性・客観性を確保していきます。
② サントリーホールディングス㈱との人的関係について
当社の取締役(監査等委員である取締役を含む。)9名のうち、サントリーホールディングス㈱の執行役員である宮森洋氏が、当社の取締役に就任しています。これは、同氏の有する、サントリーグループの飲料事業・酒類事業における豊富な海外での経営経験と、法務・リスクマネジメント部門の部門長としての高い見識が、当社取締役会の更なる機能強化に資すると判断したためです。
また、当社では、サントリーホールディングス㈱より受け入れる従業員につきましては、出向ではなく、転籍としています。
③ 商標権、特許権、包括ライセンス契約等について
当社グループは、サントリーホールディングス㈱との間でコーポレートブランド「サントリー」についての使用許諾契約を締結しており、これに基づき「サントリー」の名称・ブランドを使用することを許諾されています。当該契約に基づく「サントリー」の使用については、当社がサントリーグループに属していることが条件となっています。なお、当社は当該契約に基づきサントリーホールディングス㈱にロイヤリティの支払を行っています。
また、当社グループの事業に関連する特許権、意匠権、商標権等の知的財産権については、サントリーグループにおける知的財産権の有効活用の促進及び維持管理集中化による効率化のため、一部をサントリーホールディングス㈱が保有し、当社はサントリーホールディングス㈱から独占的実施権等を付与されています。なお、当社はサントリーホールディングス㈱に当該独占的実施権等に伴うロイヤリティの支払を行っていません。また、当該許諾関係が終了する場合には、これらの知的財産権についてはサントリーホールディングス㈱から当社に無償で譲渡されることになっています。
(1)経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績等の状況の概要
(ⅰ)経営成績
当連結会計年度の業績は、売上収益は1兆5,917億円(前年同期比9.7%増、為替中立5.7%増)、営業利益は1,417億円(前年同期比1.5%増、為替中立3.6%減)となりました。
販売費及び一般管理費は、4,454億円計上しましたが、この主な内容は、広告宣伝及び販売促進費が1,507億円、従業員給付費用が1,562億円等であり、その結果、営業利益は1,417億円(前年同期比1.5%増、為替中立3.6%減)となりました。
金融収益は43億円となりました。また、金融費用は42億円となりました。
これらの結果、税引前利益は1,418億円(前年同期比1.8%増、為替中立3.2%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は827億円(前年同期比0.5%増、為替中立4.0%減)となりました。また、1株当たり当期利益は267円78銭となりました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
なお、組織変更に伴い、従来「アジアパシフィック事業」に含めていたアフリカ事業を、当連結会計年度より「アジアパシフィック事業」から「欧州事業」に組み替えています。これに伴い以下の前年同期比較については、前年同期の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しています。
[日本事業]
売上収益は7,081億円(前年同期比8.4%増)、セグメント利益は405億円(前年同期比21.0%増)となりました。
[アジアパシフィック事業]
売上収益は3,714億円(前年同期比5.3%増、為替中立0.0%増)、セグメント利益は431億円(前年同期比25.4%減、為替中立27.7%減)となりました。
[欧州事業]
売上収益は3,393億円(前年同期比13.4%増、為替中立4.1%増)、セグメント利益は517億円(前年同期比22.8%増、為替中立10.8%増)となりました。
[米州事業]
売上収益は1,729億円(前年同期比18.8%増、為替中立11.2%増)、セグメント利益は210億円(前年同期比15.2%増、為替中立7.8%増)となりました。
(ⅱ)財政状態
当連結会計年度末の資産合計は、売上債権及びその他の債権の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,291億円増加して1兆9,124億円となりました。
負債は、社債及び借入金の減少等があった一方、仕入債務及びその他の債務の増加等により、前連結会計年度末に比べ41億円増加して7,274億円となりました。
資本合計は、利益剰余金の増加等により、前連結会計年度末に比べ1,249億円増加して1兆1,850億円となりました。
以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は56.9%となり、1株当たり親会社所有者帰属持分は3,519円00銭となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ289億円減少し、1,718億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益1,418億円、減価償却費及び償却費731億円等に対し、法人所得税の支払365億円、売上債権及びその他の債権の増加293億円、棚卸資産の増加47億円等により、資金の収入は前連結会計年度に比べ78億円増加し、1,583億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出792億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ354億円増加し、778億円の支出となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払501億円、長期借入金の返済による支出300億円、社債の償還による支出150億円等により、資金の支出は前連結会計年度に比べ232億円増加し、1,154億円の支出となりました。
③生産、受注及び販売の実績
(ⅰ)生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
656,794 |
109.4 |
|
アジアパシフィック |
368,195 |
106.7 |
|
欧州 |
249,626 |
114.9 |
|
米州 |
129,754 |
108.0 |
|
合計 |
1,404,371 |
109.5 |
(注)1.金額は、最終販売価格によっています。
2.生産実績には外注分を含んでいます。
(ⅱ)受注実績
当社グループは、原則として見込み生産を主体としているため、記載を省略しています。
(ⅲ)販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。
|
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
日本 |
708,141 |
108.4 |
|
アジアパシフィック |
371,435 |
105.3 |
|
欧州 |
339,274 |
113.4 |
|
米州 |
172,871 |
118.8 |
|
合計 |
1,591,722 |
109.7 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。
2.主な相手先別の記載については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しています。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成されています。
連結財務諸表を作成するに当たり、重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針」に記載しています。重要な見積り及び判断については「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び判断」に記載しています。また、過去の実績や取引状況を勘案し、合理的と判断される前提に基づき見積りを行っている部分があり、これらの見積りについては不確実性が存在するため、実際の結果と異なる場合があります。
②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
(ⅰ)経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは、中期経営戦略及び中期経営計画を「第2 事業の状況 1.経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)中期経営戦略及び(3)中期経営計画(2024-2026)」に記載のとおり策定しています。その実現に向けて、当社グループが実施した活動は以下のとおりです。
当社グループは、お客さまの嗜好・ニーズを捉えた上質でユニークな商品を提案し、お客さまとともに新たなおいしさ、健やかさ、楽しさを創造し続けそれぞれの市場で最も愛される会社となることを目指すという考えのもと、ブランド強化や新規需要の創造に注力したほか、品質の向上に取り組みました。また、各エリアにおいて事業構造改革を進め、収益力の強化にも取り組みました。
2023年は、主要国の需要を着実に捉え、全セグメントでコアブランドへの集中活動を継続しました。日本においては、好天の影響もあり、販売数量は過去最高を達成するとともに、市場シェアを更に拡大しました。海外においても、欧州における天候不順やベトナムにおける景況感の悪化等の影響を受けましたが、主要国において販売数量が堅調に推移しました。
売上収益は、日本における価格改定及び海外における機動的な価格改定を含めたRGMも寄与し、1兆5,917億円(前年同期比9.7%増、為替中立5.7%増)となりました。
営業利益は、原材料高及び為替変動によるコスト増の影響を概ね想定どおりに受けましたが、売上収益の伸長とコストマネジメントの徹底により吸収し、1,417億円(前年同期比1.5%増、為替中立3.6%減)となり、グループ全体で前連結会計年度に比べ20億円の増益となりました。
税引前利益は、営業利益の増加により、前連結会計年度に比べ25億円増加して1,418億円(前年同期比1.8%増、為替中立3.2%減)となりました。
当期利益は、税引前利益の増加により、前連結会計年度に比べ34億円増加して1,045億円(前年同期比3.3%増、為替中立1.9%減)となりました。
非支配持分に帰属する当期利益は、Suntory PepsiCo Vietnam Beverage Co., Ltd.やPepsi Bottling Ventures LLCにおいて業績が伸長した影響により30億円増加し、親会社の所有者に帰属する当期利益は、827億円(前年同期比0.5%増、為替中立4.0%減)となりました。
セグメント別の業績は次のとおりです。
なお、組織変更に伴い、従来「アジアパシフィック事業」に含めていたアフリカ事業を、当連結会計年度より「アジアパシフィック事業」から「欧州事業」に組み替えています。これに伴い以下の前年同期比較については、前連結会計年度の数値を変更後のセグメント区分に組み替えた数値で比較分析しています。
[日本事業]
人流の回復や、第3四半期連結会計期間における記録的な猛暑に伴い需要が増加しましたが、価格改定の影響もあり、清涼飲料市場(当社推定)は前年同期並みとなりました。水・コーヒー・無糖茶カテゴリーを中心にコアブランド強化に取り組み、新商品発売やマーケティング活動が貢献したことに加え、清涼飲料市場と同様に猛暑が寄与し、販売数量は当連結会計年度において過去最高を達成するとともに、市場シェアを更に拡大しました。「サントリー天然水」及び「GREEN DA・KA・RA」が、当連結会計年度において、過去最高の販売数量となりました。
「サントリー天然水」は、ナチュラルミネラルウォーターで、力強い伸長が続いたことに加え、「きりっと果実」シリーズが販売数量の増分に寄与しました。「BOSS」は、ブランド全体の販売数量が前年同期をわずかに下回りましたが、「ボス カフェイン」等の増分もあり缶製品の販売数量は市場を上回って堅調に推移しました。「伊右衛門」は、緑茶市場全体が価格改定の影響を大きく受ける中、ブランド全体の販売数量が前年同期を下回りました。機能性表示食品の「伊右衛門 濃い味」は、引き続き好調に推移しました。「GREEN DA・KA・RA」は、2023年4月に「GREEN DA・KA・RA」本体及び「やさしい麦茶」のリニューアルを実施したことや、新商品の「やさしいルイボス」が好調に推移したことが販売数量の増分に寄与しました。
売上収益は、販売数量増に加え、価格改定効果も寄与したことにより、増収となりました。
セグメント利益については、売上収益の伸長に加え、原材料高及び為替変動の影響が想定内に収まったこともあり、増益となりました。
日本事業の売上収益は7,081億円(前年同期比8.4%増)、セグメント利益は405億円(前年同期比21.0%増)となりました。
[アジアパシフィック事業]
アジアパシフィックでは、清涼飲料事業及び健康食品事業のコアブランド集中活動を継続しました。
売上収益は、ベトナム経済の回復や健康食品事業の回復に時間がかかっている中、タイ及びオセアニアにおける清涼飲料事業の堅調な販売数量増に加え、主要市場における価格改定効果も継続的に寄与し、前年同期並みとなりました。
セグメント利益については、清涼飲料事業は増収効果により原材料高等のコスト影響を吸収しましたが、健康食品事業の売上収益減少の影響を大きく受けるとともに、前第2四半期連結会計期間において計上したオセアニアのフレッシュコーヒー事業譲渡による譲渡益の反動もあり、減益となりました。
清涼飲料事業では、ベトナムでは、景況感の悪化や前年の需要拡大の反動影響を受ける中、主力のエナジードリンク「Sting」、茶飲料「TEA+」を含め、主要ブランドの活動を強化した結果、販売数量が堅調に推移しました。タイでは、インフレの低下や観光客需要の回復が進む中、低糖製品を含めた「PEPSI」及び「TEA+」が好調に推移し、販売数量が伸長しました。オセアニアでは、主力ブランドであるエナジードリンク「V」のマーケティング活動強化や、「BOSS」の販売数量が前年同期と比べ二桁成長したことが寄与し、引き続き販売数量が前年同期を上回りました。健康食品事業では、健康食品市場全体に対する消費者の需要減少の影響を大きく受ける中、主力の「BRAND'S Essence of Chicken」のマーケティング活動を徹底し、販売トレンドは徐々に回復してきました。
アジアパシフィック事業の売上収益は3,714億円(前年同期比5.3%増、為替中立0.0%増)、セグメント利益は431億円(前年同期比25.4%減、為替中立27.7%減)となりました。
[欧州事業]
欧州では、不安定な天候の影響を大きく受けたこともあり、当連結会計年度において、主要国において需要が減少し、主要国の販売数量は前年同期を下回りました。
売上収益は、主要国における価格改定を含めたRGMも寄与し、増収となりました。
セグメント利益については、原材料高やエネルギー価格上昇の影響を受けましたが、売上収益の伸長及びコスト削減活動により吸収し、増益となりました。
主要国別には、フランスでは、主力ブランド「Oasis」、「Schweppes」及び「Orangina」に引き続き活動を集中しました。「Oasis」の販売数量は過去最高となりました。英国では、主力ブランド「Lucozade」の販売数量が前年同期を上回りました。無糖製品「Lucozade Sport Zero」が好調に推移したことも寄与し、「Lucozade Sport」が、大きく伸長しました。スペインでは、天候の影響を大きく受ける中、主力ブランド「Schweppes」の活動を強化した結果、販売数量が前年同期並みとなりました。
欧州事業の売上収益は3,393億円(前年同期比13.4%増、為替中立4.1%増)、セグメント利益は517億円(前年同期比22.8%増、為替中立10.8%増)となりました。
[米州事業]
米州では、主力の炭酸カテゴリー及び非炭酸カテゴリーの活動強化に加えて、「Gatorade」の販路拡大が寄与し、販売数量は堅調に推移しました。売上収益は、価格改定効果も寄与し、想定を上回る進捗となりました。
セグメント利益については、売上収益の伸長により、原材料価格や人件費高騰の影響を吸収し、想定を上回る進捗となりました。
米州事業の売上収益は1,729億円(前年同期比18.8%増、為替中立11.2%増)、セグメント利益は210億円(前年同期比15.2%増、為替中立7.8%増)となりました。
セグメント利益合計は1,417億円(前年同期比1.5%増、為替中立3.6%減)であり、連結損益計算書の営業利益と一致しています。
2024年は、不透明なマクロ環境や厳しい競争環境が続くとの想定のもと、コアブランドを中心とした積極的なマーケティング投資・販促活動を徹底することに加え、RGM活動を強化し、更なる売上収益成長を目指します。コストマネジメント徹底も継続し、全セグメントで増益を目指します。
また、各セグメントにおいては以下の取組みに注力します。
日本では、「コアブランドイノベーション」、「自販機事業の構造改革」、「サプライチェーン構造革新」を事業戦略の重点領域とし、売上収益と利益を成長させていきます。
アジアパシフィックでは、フルバリューチェーンの総合力を発揮し、コアブランドの更なる成長を目指します。売上収益の伸長及び生産設備の増強による収益力の強化に取り組みます。
欧州では、各国のコアブランドへの集中活動を更に強化し、販売数量を成長させることで売上収益の伸長を目指します。RGM活動を進化させ、更なる収益性の強化に取り組みます。
米州では、主力である炭酸カテゴリーの強化を進めるとともに、伸長する非炭酸カテゴリーの更なる拡大に取り組みます。併せて、更なるサプライチェーンの取組みにより、収益力の強化を図ります。
経営陣一体となって、以上の取組みを、強力に迅速に進めていきます。
(ⅱ)財政状態の分析
当社グループは日本のみならずアジアパシフィック、欧州、米州の各地に活動拠点を有しています。各拠点の機能通貨で算定された資産・負債は連結財務諸表の表示通貨である日本円に換算するため、当社グループの資産・負債残高は各種通貨の日本円に対する為替変動に大きく影響されます。各通貨の期首及び期末の為替レートについては「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 3.重要性がある会計方針 (3)外貨換算」に記載のとおりです。当連結会計年度は主要な通貨が期末にかけて円安に推移したことが要因となり、資産・負債がそれぞれ増加しています。
のれん及び無形資産は当社グループの資産総額の約40.4%を占める重要な構成要素であり、過去に実施した企業買収等の結果、取得したブランドや統合により得られるシナジーを評価して計上したものです。このうち、のれん及び耐用年数を確定できない無形資産については定期的な償却は行わず、年に一度実施する減損テストを実施しています。減損テストの回収可能価額は、使用価値と処分コスト控除後の公正価値のうちいずれか大きい金額として算定しています。これらの回収可能価額は、経営者が承認した事業計画及び事業計画期間後の長期成長率に基づいたキャッシュ・フローの見積額を、当該資金生成単位及び資金生成単位グループの税引前加重平均資本コスト(WACC)により現在価値に割り引いて算定しています。ブランドごとに販売する地域の景気や天候、ブランドコンディションには違いがあり、翌連結会計年度以降、個別には減損損失が発生する場合がありますが、現時点において、当社グループがこれまでに実施したM&Aとその後の統合プロセスはいずれも全体としては順調に推移していると評価しています。当社グループは、今後ものれん及び無形資産の適正な評価に取り組む方針です。
また、負債は、社債及び借入金の減少等により減少しています。借入金が毎期着実に減少しており、ネットD/Eレシオは△0.04となりました。
(ⅲ)キャッシュ・フローの状況の分析
当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ289億円減少し、1,718億円となりました。
営業活動によるキャッシュ・フローは、法人所得税の支払額の増加65億円に対し、税引前利益の増加25億円、子会社株式売却益の減少160億円等により、資金の収入が前連結会計年度に比べ78億円増加し、1,583億円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産及び無形資産の取得による支出の増加190億円、子会社の売却による収入の減少184億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ354億円増加し、778億円の支出となりました。フリーキャッシュフローは805億円の収入となり、前連結会計年度から276億円減少しました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、前連結会計年度は短期借入金及びコマーシャル・ペーパー、長期借入金の減少による支出375億円、配当金の支払額411億円等に対し、当連結会計年度は短期借入金及びコマーシャル・ペーパー、長期借入金、社債の減少による支出498億円、配当金の支払額501億円等により、資金の支出は前連結会計年度と比べ232億円増加し、1,154億円となりました。
(資本の財源及び資金の流動性について)
当社グループにおける資金需要のうち、主なものは設備投資、事業投資、有利子負債の返済及び運転資金等です。当社グループは資金の流動性確保のため、市場環境や長短のバランスを勘案して、銀行借入やリース等による間接調達のほか、社債やコマーシャル・ペーパーの発行等の直接調達を行い、資金調達手段の多様化を図っています。
また、事業活動等により創出したキャッシュ・フローに加えて、金融機関より随時利用可能な信用枠を確保しており、資金需要に対応しています。
なお、今後予定されている設備投資に係る資金需要の主なものは、「第3 設備の状況 3設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりです。
|
契約会社名 |
契約締結先 |
国名 |
契約内容 |
締結年月 |
|
サントリー食品 インターナショナル㈱ |
PepsiCo, Inc. |
U.S.A. |
ペプシブランド製品の製造・販売に関するライセンス契約 |
1997年12月 (注)1 |
|
サントリー食品 インターナショナル㈱ |
Pepsi Lipton Trading SARL |
Switzerland |
リプトンブランド紅茶飲料の製造・販売に関するライセンス契約 |
2000年9月 (注)1 |
|
サントリー食品 インターナショナル㈱ |
㈱福寿園 |
日本 |
日本茶製品の共同開発と商品展開に関する業務提携契約 |
2003年7月 (注)1 |
|
サントリー食品 インターナショナル㈱ |
STARBUCKS CORPORATION |
U.S.A. |
スターバックスブランドRTDコーヒーの製造・販売に関するライセンス契約 |
2005年3月 |
|
サントリー食品 インターナショナル㈱ |
サントリー ホールディングス㈱ |
日本 |
サントリーホールディングス㈱の有するコーポレートブランドの使用に関する契約 |
2009年4月 (注)2 |
|
Greatwall Capital PTE LTD |
PT DOMULYO MAJU BERSAMA PT SENTOSA TEKNIK MANDIRI |
Indonesia |
インドネシアにおける飲料の製造・販売に関する合弁契約 |
2011年10月 (注)3 |
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Suntory Beverage & Food Asia Pte. Ltd. |
PepsiCo, Inc.他 |
U.S.A. |
ベトナムにおける飲料の製造・販売に関する合弁契約 |
2012年8月 (注)1 |
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Suntory Beverage & Food Asia Pte. Ltd. |
PepsiCo, Inc.他 |
U.S.A. |
タイにおける飲料の製造・販売に関する合弁契約 |
2017年11月 |
|
Pepsi Bottling Ventures LLC |
PepsiCo, Inc. |
U.S.A. |
ペプシブランド製品に関するフランチャイズ契約 |
1999年7月 (注)2 |
|
Suntory International Corp. |
Pepsi Ventures Holdings, Inc. |
U.S.A. |
ペプシブランド製品の製造・販売に関する合弁契約 |
1999年7月 (注)2 |
|
Pepsi Bottling Ventures LLC |
Keurig Dr Pepper Inc. |
U.S.A. |
ドクターペッパーブランド製品に関するフランチャイズ契約 |
1999年7月 (注)2 |
(注)1.自動更新の定めがあります。
2.契約の終期は定めていません。
3.当契約は、2024年1月に終了しています。
当社グループでは、安全、安心に裏付けられた「おいしさ」を価値の中心に据え、国内・海外に研究開発を担当する部門・部署を設置し、高付加価値商品の開発に取り組んでいます。
当社グループ横断での研究開発活動は、R&D部が行っています。
R&D部では、当社グループにおけるR&D戦略の立案・実施、R&Dに関する資源投入・配分計画の立案・実施、競争力の源泉となるグローバル中長期技術戦略の立案、関係部署との連携による技術戦略の推進と完遂、商品開発活動の支援を行っています。
また、研究開発部門を有するグループ各社においても研究開発活動を行っています。
セグメント別の研究開発活動は次のとおりです。
[日本事業]
研究開発活動の担当部署は、SBFジャパン内の商品開発部及びSCM部です。
商品開発部では、飲料の中味開発に関して、基本戦略に基づく中味開発戦略(中長期及び年次計画)の立案・推進・管理、新規原料の探索・開発、香味評価及び安全性リスク評価による新価値創出、新製品中味の香味・品質・収益性の設計、新製品中味開発における研究開発投資効率の追求、既存製品中味の原価・品質チェック及び再設計、中味製造に関する標準規格類の起案を行っています。
SCM部では、主に飲料のサプライチェーンマネジメント及びプロダクトライフサイクルマネジメントに関する中長期及び年次の基本戦略の立案・推進・管理、並びに新製品・リニューアル品・特発品の上市までの生産から販売に至る各部運営コントロール及び収益性・投資効率の追求を行っています。
研究開発活動は、神奈川県の商品開発センターにおいて行っています。
当連結会計年度は、水・コーヒー・無糖茶カテゴリーを中心に商品開発に取り組みました。
ブランド別に見ると、「サントリー天然水」ブランドにおいて、爽やかな甘酸っぱさが特長のピンクグレープフルーツに、華やかな香りとみずみずしい甘みが特長のマスカットを組み合わせ、果実の満足感と飲み飽きない味わいに加え、1日分のビタミン補給が出来る設計に仕上げた「サントリー天然水 きりっと果実 ピンクグレープフルーツ&マスカット」を発売しました。
「BOSS」ブランドにおいて、“豊かなコーヒーとミルク感”を両立させ、その味わいを最大限引き立たせるために甘さを抑えることでペットボトルラテなのに満足感のある味わいを実現した「クラフトボス 甘くないイタリアーノ」を発売しました。また、ソイとの相性を考え抜いた特性ブレンドのコーヒーを使用し、サントリー独自技術で実現した、クセがなくて飲みやすい、植物性原料100%のラテで作った「クラフトボス ソイラテ」を発売しました。
「伊右衛門」ブランドにおいて、サントリー緑茶「伊右衛門」をリニューアルし、新しい中味技術開発により、更に清々しい緑の水色(すいしょく)を実現し、また茶葉の配合や香り立ちを総合的に見直すことで「香ばしい香り立ちがありながら、すっきり飲める」味わいとしました。
「GREEN DA・KA・RA」ブランドにおいて、「GREEN DA・KA・RA」をリニューアルし、汗で失われるミネラルの一種であるカリウムを強化し、発汗時等の乾いたカラダへの補給感・満足感を高めました。また、「GREEN DA・KA・RA やさしい麦茶」をリニューアルし、ビール製造において培っている麦加工技術のノウハウを活かし、麦茶のためだけに独自に新規開発した“発芽大麦”を中心に、厳選素材のブレンドにこだわることで、甘香ばしさと飲みごたえを強化しました。
[アジアパシフィック事業]
タイにおいて、「BRAND'S」ブランドから「BRAND'S Bird's Nest Beverage Classic with Rock sugar」等、5種のフレーバーを発売し、3種のフレーバーをリニューアルました。オーストラリア及びニュージーランドでは、「V」ブランドから「V Green」、「V Sugarfree」をリニューアルしました。
[欧州事業]
英国において、「Lucozade」ブランドから「Lucozade Energy Orange」、「Lucozade Energy Original」等、3種のフレーバーを発売し、2種のフレーバーをリニューアルしました。フランスにおいて、「Oasis」ブランドから「Oasis Ice Tea Raspberry Blackcurrant」を発売しました。スペインにおいて、「Schweppes」ブランドから「Tonica Schweppes Original」をリニューアルしました。
以上により、当連結会計年度における研究開発費は、日本セグメント