第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりです。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

また、当社が事業を行う市場の状況及び競合他社との競争優位性に関する経営者の認識については、上記「第1 企業の概況 第3 事業の内容」も併せてご参照ください。

 

(1)経営の基本方針

当社グループでは、「医療福祉を中心とするエッセンシャル産業が抱える課題の解決に挑み、誰もが幸せに暮らせる未来を創造する。」というパーパスを掲げ、人材事業で培った経験・ノウハウ・強みを活かした幅広いサービス及びソリューションを提供することで、医療福祉業界の従事者にとって働きやすい職場環境づくりを推進し、さらには同業界に携わる全てのステークホルダーの課題解決に貢献したいと考えています。

 

医療福祉業界においては、社会保障費の増大や深刻な労働力不足のほか、医療福祉従事者及び求職者における医療福祉施設が持つ情報との非対称性、精神的・肉体的に負担のかかる職場環境、医療福祉施設側が求めるスキルとのミスマッチや給与水準の課題、また、医療福祉施設における労働生産性を高める取組みが不十分であること(他業種対比でオートメーション・ICT活用が進んでいない)や医療福祉従事者の早期離職等の課題があると認識しています。当社グループは、主軸サービスである人材紹介・人材派遣サービスに合わせて人材採用支援、人材育成・キャリア支援機能の強化及びICT並びにDXを活用した医療福祉施設の経営効率化を支援することで、上記基本方針を実践します。

 

(2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標

当社グループは、目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標として、売上収益、EBITDA(※1)及び営業利益を重視しており、併せて当期利益及び基本的1株当たり当期利益にも留意しています。また、財務健全性の観点より、純有利子負債(※2)÷EBITDAを重要な経営指標と考えています。

 

※1 EBITDA=当期利益+法人税+金融費用-金融収益+償却費(使用権資産、顧客関連資産、その他資産を含む)+固定資産減損・除却損

 2 純有利子負債=借入金+リース負債-現金及び現金同等物

 

(3)経営環境

① 当連結会計年度の経営環境

当連結会計年度においては、多くの業界で新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況を脱し、日本全体で人手不足に陥っています。特に当社グループが事業対象としている医療福祉・建設業界につきましては、その必要性の高さから人材不足が慢性化していることから、当連結会計年度の有効求人倍率も引き続き全産業平均対比で高い水準で推移しました。

 

② 中長期的な経営環境

当社グループが事業を営む医療福祉業界においては、中長期的には、少子高齢化(※)の進展により生産年齢人口が持続的に減少を続けることが予測され、構造的な採用難から労働力確保及び生産性改善が求められていくものと認識しています。

 

※ 内閣府「令和4年版高齢社会白書」(2022年6月14日)によれば、高齢化率(65歳以上人口割合)は、2019年で28.4%、2025年で30.0%、2040年で35.0%とされています。

 

特に医療福祉業界では、専門人材の獲得と非付加価値業務におけるDX推進による生産性改善への需要が今後も高まることが予測されます。

政府の計画ベースでは、医療福祉業界の従事者数は、2025年度には940万人になると見込まれています(※1)。他方で、2025年には約254万人、2040年には約291万人の介護従事者が必要とされ、2019年の介護職員数対比でそれぞれ約43万人、約80万人不足すると推計しており(※2、3)、当該領域での人材不足は業界の構造的な問題として解決が望まれます。

 

※1 厚生労働省「令和4年度版厚生労働白書」(2022年9月)図表1-1-6「医療・福祉分野における就業者の見通し」

2 かかる数値は、下記※3に記載の外部資料記載のデータ及び計算方法に基づき、当社が算出した推計値です。外部資料記載のデータの精度や推計に用いる計算方法には固有の限界があるため、実際の数値はかかる推計値と異なる可能性があります。下記「第2 事業の状況 3事業等のリスク (2)ビジネスに関するリスク ⑨ 市場規模等の推計に関するリスク」をご参照ください。

3 2019年度における介護職員の不足数(11万人)に、追加で必要となる介護職員の必要数(2025年度:約32万人、2040年度:約69万人)(厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)を加算して算出。

2019年度における介護職員の不足数(11万人)は、2019年度の介護職員の必要数(2,220千人)から、2019年の介護職員数211万人(厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)を差し引いて算出。

2019年度の介護職員の必要数(2,220千人)は、2019年3月31日時点の要介護者数6,670千人(厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」)に、3分の1(介護職員の人員配置基準である要介護者3人当たり介護職員1人(厚生労働省社会保障審議会介護給付費分科会第190回資料「介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)の報酬・基準について(検討の方向性)」(2020年10月)に基づく)を乗じて算出。

 

医療福祉分野における就業者数及び介護従事者の必要数の見通しは以下のとおりです。

 

 

2018年度

2025年度

(計画ベース)

2040年度

(計画ベース)

医療福祉分野における就業者数(万人)

823

931

1,065

就業者数全体(万人)

6,580

6,353

5,654

就業者数全体に対する医療福祉分野における就業者数の割合(%)

12.5

14.7

18.8

出典:厚生労働省「2040年を見据えた社会保障の将来見通し(議論の素材)(内閣官房・内閣府・財務省・厚生労働省 平成30年5月21日)」

 

 

2019年度

2023年度

2025年度

2040年度

介護従事者の必要数(万人)

約211

約233

約243

約280

追加で必要となる介護従事者数

(万人、2019年度比)

約22

約32

約69

出典:厚生労働省「第8期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」(2021年7月9日)

 

上記のとおり国内の生産年齢人口が減少する状況下においても、医療福祉業界における構造的な人材不足に照らせば、他業種からの流入が見込まれるものの、医療福祉業界における人材サービス事業への需要は、今後より一層増加することが予想されます。

また、労働力不足が深刻化する中、生産性改善・効率化の推進のために「採用・人材育成」、「経営効率化」等の分野におけるDX推進が一層求められるとともに、中小事業者及び従事者に対する「財務支援」に対する需要も顕在化していると認識しています。

 

③ 競争環境

当社グループは、法人顧客の現場に精通した豊富な営業社員を有することで職種ごとに異なる法人顧客のニーズに対応できるとともに、豊富な登録求職者データベース及び法人顧客との強固な関係性を有することから、強い競争力を有していると考えています。これらに加えて、デジタルマーケティングによる求職者の獲得ノウハウが競争力の源泉になると考えています。

 

(4)中長期的な経営戦略

当社グループでは、「医療福祉を中心とするエッセンシャル産業が抱える課題の解決に挑み、誰もが幸せに暮らせる未来を創造する。」というパーパスを掲げ、人材事業で培った経験・ノウハウ・強みを活かし、幅広いサービス及びソリューションを提供することで、医療福祉業界の従事者にとって充実した職場環境づくりを推進し、さらには同業界に携わる全てのステークホルダーの課題解決に貢献したいと考えています。

当社グループは、これまで「超高齢社会への進展」及び「女性の社会進出」といった社会構造の変化を契機として、強い求人需要が見込まれる介護・看護・保育領域を中心とした医療福祉分野の人材事業を積極的に拡大してまいりました。

上記のような経営環境の中、当社グループは2023-2025年度中期経営計画において、①人材ソリューション、②ICTソリューション、③データ活用などの複合的なサービスを提供することで、連結売上収益、調整後EBITDA、調整後当期利益の成長を目指し、以下の各施策を実行してまいります。

 

① CA型人材紹介サービス事業のさらなる成長の加速

当社グループの医療福祉業界におけるCA型人材紹介サービスの成長には、営業社員数と営業社員1人当たり売上高(※1)の向上が必要不可欠です。したがって、営業社員の離職率(※2)を適切に低減し、育成することが重要となります。

当社グループはCA型人材紹介サービスの成長のため、以下の施策を実行することを計画しています。

・営業社員数:離職率の低下及び継続的な採用により、営業社員数の着実な増加を推進します。なお、離職率の低下により、キャリアアドバイザー全体に占める当社在籍期間が1年を超える者の割合は、2023年12月末時点で72%となっており、2022年の同時点における割合である58%から上昇しています。

・営業社員1人当たり売上高:ITシステムの導入を通じた営業プロセスの自動化、高パフォーマンスの営業社員の定着率(※3)向上を推進し、営業社員1人当たりの生産性向上を目指しています。

 

※1 医療福祉紹介売上高÷医療福祉紹介事業における年平均営業社員数。なお、営業社員にはキャリアアドバイザーの他、管理職、営業企画に係る人員が含まれています。

2 離職率:当年退職者数/(前年末の在籍人数+当年入社数)

3 定着率:1-離職率

 

② DR型採用支援サービスの一体提供による成長拡大

DR型採用支援サービスは、CA型人材紹介サービスでは対応が難しい低コストでの採用という契約施設のニーズに合致しており、今後成長すると見込んでおります。DR型採用支援サービスの本格化は当社グループの更なる成長に貢献すると期待しています。

当社グループは、2021年8月の株式会社HAB&Co.買収を通じて、開発・エンジニアリングリソースを確保し、株式会社HAB&Co.の自社プロダクトである「SHIRAHA」をベースとしたDR型採用支援サービスの機能を実装することで、迅速な事業の立ち上げを実現しました。また、2022年1月には、保育領域において8万人の登録求職者数を擁してDR型採用支援サービスを展開していた株式会社ウェルクス(※)を買収することで更なる事業拡大に取り組んでおります。

これらの施策に加えて、今後は、登録求職者数が事業拡大の鍵になると考えており、当社グループは既存の約200万人(2023年12月末時点)の豊富な登録求職者のデータベースを活かした成長を目指します。CA型人材紹介サービスへの登録求職者は求職意欲が高い傾向があり、そこで培われたデータベースは量・質ともに競争優位性が高いと当社では考えています。したがって、CA型人材紹介サービスにより今後も拡大する登録求職者数をDR型採用支援サービスと連携させることで、成長が可能と考えています。

 

※ 株式会社ウェルクスは、2022年7月1日付で、株式会社トライトキャリアを存続会社、株式会社ウェルクスを消滅会社とする吸収合併により消滅しています。

 

③ 更なる成長ドライバーとしてのICTソリューション事業への取り組み

当社グループは、中期経営計画の期間において、これまでの人材紹介及び採用支援事業で培ってきた豊富な登録求職者データベース、豊富な契約施設とのネットワーク、強固な営業体制を基に、ICTを活用した医療福祉現場の業務効率化支援事業を加速させていく予定です。介護ソフトウエア等を通じた介護関連業務を支援するサービス展開を検討してまいります。

また、ICTソリューション及び、データ活用のサービスを迅速に拡大・展開するために、M&A・事業提携・共同研究等の機会を積極的に追求してまいります。

 

④ 非医療福祉事業の持続的な成長

非医療福祉事業である建設人材派遣サービスにおいては、派遣社員数(※)の向上をドライバーとして持続的な成長を目指します。

 

※ 建設人材派遣サービスにおける年平均月末在籍派遣人数。

 

(5)対処すべき課題

当社グループは、上記の経営戦略を遂行することで、以下の課題の解決を目指します。

 

① 医療・介護・保育人材のキャリア支援

医療・介護・保育業界では、年々深刻化する人材不足により1人当たりの業務量が増加していることに加え賃金格差が拡大した結果、退職者が増え、さらなる人材不足を生むという悪循環が生じています。このように、これまでは安定して長く勤めることができると言われていた専門職においても、長期にわたって勤務することに不安を覚える人が増加しています。

今後、さらなる人材の流出を防ぐためには、働く人々がどのような人生を歩んでいけるのか、長期的なキャリアの形成を支援していく必要があります。また、人生100年時代と言われている現代において、当社グループとしてもパラレルワークや仕事と育児の両立支援といった新しい働き方の価値観の創造に取組んでおります。

 

② 地方部の医療・介護・保育人材不足解消

医療施設、介護施設及び保育施設における人材不足は年々深刻化し、特に都市部と地方部では介護士、看護師及び保育士の数に差があり、一般利用者が受けられるサービスに地域格差が生じています。当社グループの提供する人材紹介サービスにおいても、地方の医療施設、介護施設及び保育施設による求人は増加しています。当社グループが新たに営業支社を地方に設立することにより、それら地域の医療施設、介護施設及び保育施設に対し、法人訪問によるニーズの把握や面接への同行など、より地域に根ざしたサービス提供をすることが可能となります。

当社グループは今後も事業拡大を推進するとともに、人材不足解消や地域経済への貢献に取組みます。

 

③ 労働移動支援

労働力不足を解消するための一手段として、新たなキャリアへ踏み出す方を応援するリスキリングの重要性が増しています。この様な環境下において、当社グループが運営している介護ワーカーカレッジ事業では、介護現場で即戦力となる人材育成を企図して、食事・入浴・排せつの支援などの実務講義を受講する機会を、介護業界への転職を希望する方に提供しています。

当社グループでは、今後も慢性的な人材不足が課題となっている介護業界への異業種からの労働移動支援に積極的に取組みます。

 

④ 建設派遣における安定的な雇用確保

当社グループとしては特定の派遣先の需要が減少した場合にも、別の法人へ派遣するなどの柔軟な対応により、派遣従業員の非稼働時間が可能な限り起こらないように努めています。また健全な事業成長のために、業法遵守は今後より重要なテーマになるものと認識しています。特に契約内容と実務上の作業の齟齬を防止するため、定期的な監査、当社グループ営業担当者による派遣先への訪問・確認作業を行うなど、より強固な管理体制の構築に取組みます。

 

⑤ 業務改善の更なる推進

ここ数年、システムの導入を積極的に進めた結果、業務改善が大幅に進みました。しかし、派遣先企業との情報連携が重要な派遣事業においては、現在においても一部の派遣先企業との間ではExcelによる管理やFAXによる情報連携が残っており、その後の作業工程での非効率な作業が発生しやすい状況です。当社グループとしては、これらに代表される事務業務・管理業務のシステム化を引き続き促進することで、効率性の改善のみならず統制の強化をも実現できるよう取組みます。

 

⑥ ダイバーシティ等への対応

近年、女性社員の活用について会社を挙げた戦略的な施策が社会的な要請となっています。これまで当社グループでは女性社員の積極的な採用に取組み、2023年12月末時点で34.0%が女性社員となり、その比率は本社部門においてより大きくなっています。また、営業部門においても、管理部門でも高い成果を収めてきた女性社員も多く存在いたします。常勤の取締役、監査役及び執行役員においては、11名中3名が女性(27.2%)とダイバーシティが進んだ状況にあります。一方、非執行役員の管理職においては、依然として女性比率は低く(12.5%)、採用・育成・登用の観点から制度の見直しを図っています。2021年3月に、女性が活躍する企業の実現を目的として代表取締役社長直轄の「女性活躍推進室」を設置し、定期的な研修や議論の場を設置するなど、さまざまな施策を展開しています。今後も女性が活躍できる組織の実現を目指します。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは以下のとおりです。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが合理的であると判断したものです。

 

 当社グループでは、「医療福祉を中心とするエッセンシャル産業が抱える課題の解決に挑み、誰もが幸せに暮らせる未来を創造する。」というパーパス(存在意義)を掲げています。医療福祉を中心とするエッセンシャル産業が抱える労働力不足の解消、現場の負担軽減、労働生産性の改善等の社会課題の解決や、働きやすい職場環境づくりの推進・支援を通じて、医療福祉業界の発展に貢献することを目指します。

 

 また、持続可能な社会の実現に向けて、社会を支えるエッセンシャルワーカーの方々や当社グループの従業員等、関わるすべてのステークホルダーと連携し、より良い未来に向けた新たな価値を創造するために、大きく4つの重点テーマを設定しています。経営戦略及び経営計画にそれらを組み込み、中期経営計画「TRYT2025」の最終年度である2025年度に向けた目標を設定し、目指す姿の実現に向けてグループ一丸となって取組んでまいります。

 

<重点テーマ>

1.医療福祉・建設業界の人材定着の促進と多様な就業機会の創出

2.医療福祉業界の従事者が働きやすい職場環境づくりへの支援

3.従業員の成長と働きがいを実現する企業風土の醸成

4.事業の持続的成長を支える経営基盤の構築と運営

 

(1)ガバナンス

 当社グループのサステナビリティ経営への取組みの強化、及び優先的に取組むべき課題である4つの重点テーマの推進に向け、2023年12月に当社代表取締役社長を最高責任者とする「サステナビリティ委員会」と、その事前協議機関である「ワーキンググループ」を設置しました。「サステナビリティ委員会」は、原則四半期に一度開催し、サステナビリティ活動推進に向けた進捗のモニタリング、課題の確認並びに開示について協議を行い、「リスク管理委員会」と連携しながら取締役会に報告します。取締役会による助言は経営戦略やリスク管理に反映させる体制としています。また、「サステナビリティ委員会」には常勤監査役、内部監査室長が出席し、必要に応じて意見を述べています。

 

(2)戦略

 医療福祉を中心とするエッセンシャル産業では、労働力不足の解消、現場の負担軽減、労働生産性の改善等の深刻な課題が存在しています。その解決に向けた取組みや、働きやすい職場環境づくりの推進・支援を通じて、医療福祉業界の発展に貢献することを目指しています。その実現のために、当社グループでは4つの重点テーマを掲げています。

 

重点テーマ 1.医療福祉・建設業界の人材定着の促進と多様な就業機会の創出

 当社グループは、キャリアアドバイザーを中心とする従業員の知見や経験を活かし、「人材ニーズを充足するマッチング」を実現することで、当社グループを通じて就業した入職者の定着率向上を目指しています。特に、人材不足が深刻化している介護業界においては、介護職に関心のある未経験者の資格取得支援や就業支援を推進しています。また、医療福祉業界の潜在資格保有者に対する復職支援にも注力しています。このような取組みを通じて、医療福祉業界に就業する人材と機会の創出に貢献します。さらに、建設業界においても、資格取得支援による能力開発や専任チームによる定着支援等に取組んでいます。

 

重点テーマ 2.医療福祉業界の従事者が働きやすい職場環境づくりへの支援

 医療福祉現場の負荷軽減と生産性向上の実現を目指し、ICTソリューションの提供や、ヘルスケア現場の経験と介護ソフトの知識を併せ持つ専門人材の育成を行っています。具体的には、2023年6月に買収した介護事業に特化したICTソリューションを提供する株式会社bright vieによる介護事業所向けシステムの開発・普及に注力しています。国内外のヘルステックメーカーの介護や医療における機器データの取得や連携、分析から活用までをサポートするデータ連携プラットフォーム「ケアデータコネクト」や、介護現場の人材定着に特化したコミュニケーションツール「ケアズ・コネクト」を提供し、働き続けたい介護現場づくりに取組んでいます。また、2023年10月に香川県高松市に開設した「ICT BPOセンター」では、看護職や介護職等の資格保有者に対してリスキリングを行い、介護現場のICT化を支援しています。

 

重点テーマ 3.従業員の成長と働きがいを実現する企業風土の醸成

 2023年7月の東京証券取引所への上場を機に、企業の存在意義であるパーパスと従業員の行動指針となるバリューを策定し、従業員のエンゲージメントの強化とモチベーションの向上を目指しています。経営陣と従業員との対話機会の創出や、全従業員がパーパスに基づく価値提供を協議・共有する等の「パーパスジャーニー(※)」というイベントを半期で2回開催するとともに、従業員の階層別研修を実施することで、業務の役割責任や範囲に基づく社会への価値提供の意識と行動変容を促す取組みをグループ全体で推進しました。また、従業員のモチベーション向上やベストプラクティスの共有を目的に、毎年様々な功績を上げた従業員を表彰する「TRYT Award」を実施し、2023年度は25名が受賞しています。さらに、当社グループの従業員に対する適切な人事評価とフィードバックを実施することで、従業員の定着率向上を目指しています。

 

 従業員の多様性を尊重するダイバーシティ推進に向けた取組みの中で、女性管理職の目標設定を掲げています。女性管理職の目標設定の詳細については、「人的資本への取組み」に記載のとおりです。

 

※ パーパスの実現に向けて、従業員一人一人がバリューに基づく自分の強みを活かし、自己成長と企業の成長を追求できる道筋や考え方を見いだす全社的な活動を指します。

 

重点テーマ 4.事業の持続的成長を支える経営基盤の構築と運営

 当社グループは、従業員が安心安全に働ける環境の確保、コンプライアンス・リスクの管理徹底、ガバナンス体制強化等を通じて、事業の持続的成長を支える経営基盤の構築と運営に取組んでいます。従業員が安心して業務ができるように「安全衛生委員会」による定期的な調査、審議と改善活動を行うとともに、健康診断の受診、ストレスチェックの実施、全国事業所へのAEDの設置等、従業員の安心安全の確保に努めています。

 

 また、持続的成長を実現し、社会からの信頼を得るために、従業員のコンプライアンス教育を重視し、法令遵守やハラスメント防止に向けた規程の制定と定期的な研修・モニタリングの推進、「コンプライアンス・ホットライン」の設置、持続的な運営と再発防止の推進等を行っています。この他にも、持続的成長を支える経営基盤の一つとして、サイバーセキュリティ体制を強化し、セキュリティ統括機能の構築と拡充、対処すべきリスクへの対応、低減・受容・移転・回避を含むトラッキングと対応方法の明確化に加えて、標的型攻撃を想定したメール対応訓練等、従業員のITリテラシー向上のための研修も実施しています。コンプライアンス、並びにサイバーセキュリティ研修の従業員の受講率は、2023年度の実績で100%となっています(※)。

 

※ サイバーセキュリティ研修の対象は、正社員、契約社員、嘱託社員です。

 

 社会課題の解決に向けた各事業の取組みについては「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に、事業活動に伴うリスクについては「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」、コーポレート・ガバナンスについては「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載のとおりです。

 

(3)リスク管理

 当社グループでは、事業に重大な影響を与える可能性があると特定したリスクについて、全社的なリスク管理の統括機関である「リスク管理委員会」において管理しています。また、サステナビリティに関するリスクで協議すべき内容がある場合、「サステナビリティ委員会」と「リスク管理委員会」が連携を取り、その中の重要事項については取締役会に報告し、協議を行うフローを構築しています。リスク管理の詳細については「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

(4)人的資本への取組み

 当社グループでは、属性や就業における制約等にとらわれず、誰もが働きやすく、働きがいのある職場の実現を目指しています。当社グループのパーパスにある「誰もが幸せに暮らせる未来の創造」に向けて、従業員が安心安全に働ける環境を確保することを大前提とし、成長機会の提供や育成を支援する体制の整備等に注力しています。また、当社グループの3つのバリュー「社会からの期待を超える。」「その先の人たちへ。」「変化することで進化する。」に基づき、従業員が働きがいをもち、社会により良い影響を与えられるような企業文化・風土づくりに力を入れています。

 

 ダイバーシティ推進に向けた取組みとして、在宅勤務等の多様な働き方の推進や年齢・性別・学歴・国籍等に関係なく活躍できる機会を提供しています。また、女性が活躍する企業の実現を目指し、代表取締役社長直轄の「女性活躍推進室」を設置しており、2023年度は43名が参加しました。キャリアマネージメントやコミュニケーションスキル等をテーマにした定期的な研修やディスカッション等を通じて、女性従業員同士が相談し合えるコミュニティづくりと、自分らしいキャリア形成の支援を目指しています。

 当社グループでは、年齢や入社年次等に関わらず、期待される役割とそれに対する成果により従業員の報酬を決定する「ミッショングレード制」を導入しています。このため、同一のミッショングレードや評価において男女間での賃金差異はありません。一方、男女間の賃金差異の低減については、女性管理職比率を高める取組みを推進してまいります。

 

 また、上記の考え方に基づき、当社グループは、重要指標と目標値を下記のとおり設定しています。

 

指標

2023年12月期の進捗

2025年12月期の目標値

女性社員比率(※1)

34.0%

36.0%

女性管理職比率(※1)(※2)

12.5%

20.0%

社外取締役の割合(※3)

50.0%

50%超

女性役員比率(※4)

18.8%

20.0%

※1 連結会社を対象とする正社員のものとなります。

 2 管理職とは、女性活躍推進法に基づき算出し、管理職相当の専門職を含みます。

 3 提出会社を対象としています。

 4 役員とは、提出会社を対象とする非常勤を含む取締役、監査役、執行役員を指しています。

 

3【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は本書提出日現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)事業環境に関するリスク

① 景気変動の変化に関するリスク

当社グループの事業は、日本でのみ行われており、日本経済の影響を受けます。また、当社グループが属する人材紹介・人材派遣業界は、景気の動向に大きく影響を受ける傾向があります。このため、日本国内の景気の悪化を要因として、法人顧客がコスト削減を進め、又は人材採用に関する方針を変更すること等により、法人顧客の当社グループのサービスに対する需要が減少した場合には、当社グループの売上収益が減少し、又は当社グループのサービスに対する値下げ圧力が生じる可能性があります。そのほかにも、女性の社会進出が想定よりも進まなかった場合には、保育の人材紹介に対する需要に悪影響が生じるなど、当社グループのサービスに対する需要は、日本経済情勢以外の様々な事情によっても悪影響を受ける可能性があります。

また、現在日本国内外における経済動向は非常に不安定になっており、加えて高齢化や労働人口も含む人口減少、近隣諸国との関係悪化、国際政治情勢、為替変動、金利動向、市場動向、円安や世界的なエネルギー価格等の高騰による物価上昇、国内外の金融政策の動向等により、日本経済は不透明な状況にあります。さらに、日本経済は、ロシアによるウクライナへの侵攻及びこれに対する制裁、アメリカと中国の間の貿易摩擦、台湾情勢など日本が直接的には関与していない地政学的な事象の影響を受ける可能性があります。これらの事情により国内外の景気が悪化し、また、当社グループがかかるマクロ経済や事業環境の変化に柔軟に対応できない場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

② 競合に関するリスク

当社グループが属する人材紹介・人材派遣業界は、参入障壁が低く、また、求職者及び法人顧客が複数の人材サービスを利用する傾向等があることから、競争が激しい状況にあり、特に近年はその激しさが増しています。また、競合他社(潜在的競合他社を含む。)が、革新的なサービスやより低い価格でサービスを開始する可能性、当社より魅力的な報酬を営業社員に対して提示する可能性、当社に優越する財務的余力、顧客基盤、技術力、営業・マーケティング等のリソースを有する可能性があります。このような競争環境において、当社グループが、求職者及び法人顧客のニーズに対応できず、又は、競合他社及び法人顧客の再編に応じた業界の動向の変化や法規制の変化に対応できない場合等には、当社グループの競争力が失われ、当社グループの事業、財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

加えて、インターネットなどの活用による市場環境の変化により、特に人材紹介分野において競争が激化する可能性があります。当社グループは、DR型採用支援サービスの提供を開始していますが、DR型採用支援サービスによる転職を希望する求職者が大幅に増加し、又は法人顧客におけるDR型採用支援サービスの活用がより一般的となった場合、当社グループのCA型人材紹介サービスの需要が減少し、結果として当社グループの収益性が悪影響を受けるなど、事業戦略の修正を余儀なくされる可能性があります。また、複数の求人・求職サイトの情報を収集することで大量の情報を提供することが可能となる価格競争力を有するプラットフォームの登場により、人材サービスの価格が下落する可能性があります。これらの事情により当社グループの事業、財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

③ 自然災害等に関するリスク

地震、台風、洪水、津波等の自然災害、火災、停電、感染症の流行並びに戦争及びテロ攻撃等(以下「自然災害等」という。)が発生した場合、当社グループや派遣先企業の設備が被害を受け、又は当社グループのサービスや業務に従事する従業員及び派遣社員が大量に罹災若しくは感染症等に罹患することなどにより、当社グループの情報システムを含め、事業運営が影響を受ける可能性があります。このような有事に備え、当社グループとしては事業継続計画(BCP)を導入しています。具体的には、「災害対策本部」を立ち上げ、本社での迅速な対応及び現場との連携が可能な体制を構築しています。また、安否確認システムの導入を行い、社員の安否状況等を迅速かつ確実に収集・集計することを可能としているほか、万が一自然災害等が発生した場合に従業員や来訪者の安全を守るため、ヘルメットや非常食など防災備蓄品も各支社に備えています。しかしながら、これらの対策にもかかわらず、想定を上回る規模で自然災害等が発生した場合には、当社グループのサービス提供、その他事業運営に影響が生じ、当社グループの顧客が当社グループのサービスの利用を停止し、又は競合他社に乗り換えること等により、当社グループの事業及び経営成績等が影響を受ける可能性があります。

加えて、自然災害等が発生した場合には、当社グループの顧客の事業運営が困難になり、又は壊滅的な打撃を受け、その他経済が悪化することにより、当社グループの人材紹介・人材派遣その他のサービスに対する需要が減少し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績等に重大な悪影響を与える可能性があります。

 

(2)ビジネスに関するリスク

① 求職者及び法人顧客のニーズの変化に関するリスク

当社グループが事業を営む人材サービス業界は求職者や法人顧客の需要に大きく左右されます。また、当社グループのビジネスモデルは、いかに求職者及び法人顧客に対して、それぞれのニーズや嗜好に合ったサービスを提供できるかにかかっており、キャリアアドバイザーは適切な候補を提案しマッチングさせるため、多種多様なニーズを適切に理解することが求められます。例えば、かつてはハローワークや直接応募など、有料職業紹介サービスを介さない採用活動が主流でしたが、近年は有料職業紹介サービスの認知度も上がってきており、当社グループの人材サービスも顧客からの評価を得ています。また、DR型採用支援サービスについても、一般職種に続き医療福祉領域でも徐々にではありますが市場で認知され始めています。当社グループとしては、このような事業環境の変化に対応すべく、2021年12月より試験的にDR型採用支援サービスを開始し、2022年12月の当社グループサービスサイトの大規模リニューアルに伴うパイロット運営を経て、2023年2月に同事業を本格展開しました。しかし、求職者や法人顧客のニーズや嗜好の変化を適時適切に把握し、適応することができない場合には、競争力やシェアを失う可能性があります。

また、当社グループは既存のサービスを改善し、又は新規かつ革新的なサービスを導入するため、相応の投資を行うことが必要となりますが、かかる投資が想定どおりの効果を上げる保証はありません。当社グループが求職者及び法人顧客のニーズの変化や、求職者と法人顧客の間でのニーズの変化の違いを正確に理解できなかった場合、又は当社グループがニーズの変化に応じて、適時適切に又は競合対比で費用対効果のある方法でサービスの改善や導入を行うことができなかった場合には、当社グループは顧客との取引を維持又は拡大できない可能性があり、投資に見合った収益が得られない可能性があります。

 

② 人材に関するリスク

当社グループが成長に向けて企業基盤を拡充するためには、経営陣、営業社員、IT技術者を含む優秀な人材の確保と育成が不可欠です。しかし、日本は人口減少に直面し、優秀な人材の獲得競争は激化しており、当社グループが期待する人材を採用できない可能性があり、又は、かかる人材を確保するためには相応のコストを要する可能性があります。優秀な人材の確保にあたっては、当社グループが事業を営む業界における競合他社との間では勿論、それ以外の会社との間でも激しい人材獲得競争が生じる可能性があるため、当社グループが魅力的な条件を提示したとしても、かかる人材が当社グループへの入社を選択する保証はありません。

また、当社は、事業戦略の策定や執行について、何らかの理由により経営陣の職務の執行が困難になった場合、当社グループの事業及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。また、優秀な営業社員の確保は当社グループの事業戦略の核であり、営業社員の数及び質を継続して増加・向上させることができない場合には、当社グループの事業戦略の遂行に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。加えて、競合他社が当社グループよりも魅力的な条件を提示したこと等により、優秀な営業社員をはじめとする優秀な人材が社外へ流出した場合、また、その後適時に代替する人材を採用することができない場合等には、当社グループの事業又は経営成績に重大な影響を与えるおそれがあります。

 

③ M&A等による事業拡大リスク

当社グループは、成長戦略の一環として事業、提供するサービス、顧客、関連する技術等の拡大のため、M&Aや事業提携等を実施する可能性があります。実際、2021年8月にはシステム開発強化のために株式会社HAB&Co.を、2022年1月には保育領域における人材紹介を強化するため株式会社ウェルクスを、2023年6月には介護・医療データ活用プラットフォームサービス及び介護事業特化型コミュニケーションツールを提供する株式会社bright vieを子会社化しました(なお、株式会社ウェルクスは、2022年7月1日付で、株式会社トライトキャリアを存続会社、株式会社ウェルクスを消滅会社とする吸収合併により消滅しています。)。M&Aの実施にあたってはデュー・デリジェンス等を実施しますが、M&Aにおける買収価格その他の買収条件が常に適正、妥当であるという保証はなく、対象会社の買収後の収益が、買収時に見込んだ収益予想を大幅に下回った場合、当社グループの事業、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、M&A後の当社グループとの統合が奏功する保証はなく、想定どおりのシナジーを発揮できない可能性や、当社グループの既存人材サービス業に悪影響を及ぼす可能性があるほか、対象会社の顧客、経営陣、従業員等を維持するために多額の費用を要する可能性、対象会社のコンプライアンスの水準を当社グループの水準にまで引き上げられない可能性などがあります。加えて、M&Aにより多額ののれんや無形資産を計上し、対象会社の将来のキャッシュ・フローの状況によっては減損損失を認識する可能性があるほか、M&Aのための借入により当社グループの財政状態が悪化する可能性があります。以上のとおり、M&Aや事業提携等は当初見込んだとおりの効果を生まず、又は当初想定した期間内で効果をあげることができない可能性があります。また、当社グループは戦略的に赤字企業を買収する可能性がありますが、その結果、当社グループの経営成績及び財政状態が悪影響を受ける可能性があります。

これらのリスクに対して、当社グループでは、対象会社の財務内容や契約関係等について専門家のアドバイス等によりデュー・デリジェンスの精度を上げるとともに、事業計画の策定や将来価値の測定について十分な検討を行う等の対策を行っています。しかし、これらの対策にもかかわらず、デュー・デリジェンスにおいて全てのリスク、法律上又はコンプライアンス上の問題、潜在的な損失又は債務等を発見することができる保証はなく、また、開示されたリスクや債務に対する当社グループの評価が適切である保証もありません。特に、スタートアップとのM&Aや事業提携等においては、潜在的なコンプライアンス上の問題等を発見することが困難である場合があります。当社グループがM&Aや事業提携等を行うにあたって、対象会社のリスク、債務又は損失を発見することができず、又はその評価を誤った場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績等に影響を与える可能性があります。

加えて、当社グループは継続的にM&Aや事業提携等の機会を模索していく予定ですが、当社グループがその成長戦略に合致した魅力的な機会を正確に見出すことができる保証はなく、また、対象会社が希望する条件を提供することができない可能性や、資金調達又は法規制上その他の問題により、M&Aや事業提携等が実現に至らない可能性があります。

 

④ 人材紹介サービスにおける返金制度に伴うリスク

人材紹介サービスにおいては、当社グループが紹介した求職者が、法人顧客に入社した日付を基準に、当該紹介に係る報酬を一括で売上収益に計上しています。当社グループの人材紹介サービスにおいては、原則として、求職者が入社から6ヶ月未満に自己都合により退職した場合には、その退職までの期間に応じて紹介料を返金する旨を法人顧客との契約において定めています。当社グループは、求職者と法人顧客の双方のニーズを勘案したうえで紹介を進めており、また、過去の返金実績に基づき一定の金額を返金負債として計上していますが、当社グループの想定した返金率を上回る返金が生じた場合には、当社グループの経営成績等に影響を与える可能性があります。

 

⑤ 売上収益等の季節的変動に関するリスク

当社グループの医療福祉業界向けの人材サービスに係る報酬は、当社グループが紹介した求職者が法人顧客に入社した日に一括して売上収益に計上されます。医療福祉業界の求職者の入社日は4月に集中する傾向があるため、当社グループにおいては4月が属する第2四半期に売上収益及び営業利益が集中する傾向にあります。そのため、特定の四半期業績のみによって通期の業績見通しを判断することは困難です。一方で、売上収益及び営業利益が集中する第2四半期において十分な売上収益及び営業利益を確保できなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 人材派遣サービスにおける固定費負担に関するリスク

当社グループの人材派遣サービスでは派遣する労働者を雇用しており、契約の解除や給与の減額が法律上制限されています。また、当社グループは、雇用する派遣労働者に対して、派遣が行われていない期間も給与の約60%を支払わなければなりません。さらに、当社グループでは、一部の派遣労働者を無期契約で雇用していますが、法人顧客の人材派遣に対する需要が減少した場合や、法人顧客の人材派遣に対する需要が当社の取り扱っていない職種に変化した場合、業界や市況の変化などにより法人顧客との間の契約更新がなされず又は契約期間が短縮した場合、他の人材派遣業者との競争が激化した場合、法規制が変更された場合、日本経済が悪化した場合、その他様々な事情により、当社グループが雇用する派遣労働者の稼働率が低下した場合には、当社グループの営業収益に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

同様に人材派遣サービスの収益性は、当社が派遣労働者に対して支払う給与と当社が法人顧客より受領する報酬との差額(マージン)の水準に依存します。当社グループは定期的に法人顧客との間で報酬の見直しについて交渉し、報酬の増額を求めていますが、常に適切な金額及びタイミングで報酬の見直しを行うことができるとは限りません。当社グループは、法人顧客の当社グループの人材派遣サービスに対する需要が減少した場合でも、派遣労働者との契約の終了又は給与の減額について法律上の制限があるため、法人顧客から受領する報酬が減少した場合には、当社グループの営業利益率は減少する可能性があります。当社グループが適切なマージンを維持できない場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績等に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 中期経営計画に関するリスク

当社グループの中期経営計画は、将来のマーケットトレンド、事業環境、営業社員の採用可能性及び生産性の向上その他利用可能な情報に基づく様々な前提のもとに作成されていますが、これらの前提が正確である保証はありません。当社グループが中期経営計画を想定どおりに進められるかは、中期経営計画における戦略を効果的に実行できるかによりますが、中期経営計画における戦略は、本「事業等のリスク」に記載の要因のほか、様々な要因により、奏功しない可能性があります。具体的には、採用における競争の激化により想定どおり営業社員の数を増やすことができない又は優秀な営業社員の離職率を十分に改善できない可能性、当社グループが現在開発又は導入を予定している営業やマーケティングのためのシステム又はツールを通じて十分な効果が得られないことにより、想定どおりにキャリアアドバイザーを中心とした営業社員の生産性を向上させることができない可能性、SEO(※1)及びCRM(※2)の強化により求職者のデータベースを増加させることができない可能性、医療福祉業界における賃金の改定は政府の施策の影響を受けるため、その上昇率が他業種に比べて低いことにより医療福祉業界における求職者が不足する可能性、計画どおりに出店する都道府県を拡大できないことにより法人顧客の新規獲得及び関係性の強化を実現できない可能性、当社グループがブランド力強化のために多額の投資を行ったにもかかわらず、想定どおりに登録求職者、法人顧客、派遣労働者等を増加させることができない可能性、DR型採用支援サービスを導入したものの想定どおり顧客の認知が進まず、登録求職者や法人顧客が増加しない可能性及びDR型採用支援サービスのためのインターネット技術の十分な開発を続けられず、競合他社との競争に勝つことができない可能性、ICT、データ活用等の新規事業について、第三者との提携が想定通り進捗しない等の理由により成長を加速することができない可能性、M&Aや事業提携等において、適切な対象会社を見つけることができない、受け入れ可能な条件を獲得することができない又は効果的にM&A後の統合を進めることができないなどの事情により当該M&A等が奏功しない可能性、既存事業又は新規事業において競争力を維持するために想定以上の投資が必要になる可能性、派遣社員を採用するためのデジタルマーケティングが奏功しない又は経験ある派遣社員の離職率を低減できないことにより、非医療福祉事業における派遣社員数を計画通り増加させることができない可能性、営業費用の想定外の増加や金利市場の変動、既存の借入金の借り換えができないことにより、財務目標を達成できない可能性などがあります。

 

※1 Search Engine Optimizationの略。検索エンジンの最適化を意味します。

2 Customer Relationship Managementの略。顧客関係の管理を意味します。

 

⑧ 新規事業に関するリスク

当社は、製品・サービスの着実な拡大と新規事業領域への参入を成長戦略の一つとしており、今後も新たな事業領域への拡大機会を模索していく予定です。例えば、システム開発力を強化するため、2021年8月に株式会社HAB&Co.を買収しました。2022年1月には株式会社ウェルクスを子会社化することにより保育領域におけるDR型採用支援サービスを開始し、2023年2月には、DR型採用支援サービスを拡大するため、DR型採用支援サービス用のポータルを開設しました。さらに、2023年6月には、SaaS(Software as a Service)事業の成長を加速させるため、株式会社bright vieを買収しました。また、ICT、データ活用サービスを開始するためのパートナーシップの構築や業務提携を行っています。当社グループの新規事業への参入は、買収や提携によるか否かに関わらず、既存事業とは異なるリスクを伴う可能性(新規従業員の獲得・育成に失敗するリスクや既存の競合他社との競争に勝てないリスク等)や、想定外の費用が発生する可能性、多額の経営資源の投下を必要とする可能性があります。また、新しいインフラ、従業員、技術への投資や、買収・業務提携契約の交渉に経営資源を割く必要が生じる可能性もあります。加えて、買収により新規事業領域に参入した場合、買収した事業の統合作業のため、既存事業に割かれる経営資源が相対的に減少せざるを得ない場合があります。新規事業により期待した利益を達成できない場合、投資資金を回収できず、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社が、適時・適切に、魅力的な新しいビジネスチャンスを見出し、また、顧客の嗜好の変化や市場の動向を予測できる保証はありません。当社グループが新たな事業機会を適切に見出すことができず、期待される収益を達成できない場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 市場規模等の推計に関するリスク

当社は、事業戦略の策定並びに財務及び経営リソースの配分を検討するにあたって、短期及び長期の潜在的市場規模や当社グループのシェア等を推計していますが、当該推計値は、第三者が提供するデータに基づき、当社グループが合理的と考える一定の前提を置いて試算した数値となります。なお、当社グループのシェアを試算するにあたって依拠した第三者による調査は、当社の依頼を受けて、当社の費用負担により行われたものです。当該推計値の算出に際して用いた第三者のデータは、独立した第三者の監査やレビューを経ておらず、また、当該推計値が当社グループによってアクセス可能な潜在的な市場機会を正確に示している保証はなく、当社が当該市場において実際に一定のシェアを獲得できる保証もありません。また、当社グループが獲得可能な求職者や法人顧客の市場規模も推計していますが、実際には多くの求職者や法人顧客は独力で職又は労働者を確保する可能性もあり、その場合、当社グループや競合他社が提供するサービスが利用されることはなく、したがって、市場規模として示された求職者や法人顧客のすべてが当社グループの顧客となる保証はありません。加えて、第三者のデータは、最新ではない可能性や、不正確・不完全である可能性、その他当社グループのマーケットシェア等を適切に表していない可能性があります。さらに、利用可能な第三者データの多くは必ずしも当社グループが想定する市場や時点と正確には一致していないため、かかる第三者のデータに基づいて推計値の試算を行うにあたっては、当社グループが独自に設定した様々な前提を置いています。

上記のような理由により、当社が推計した市場規模や当該市場における当社グループのマーケットにおける位置付けが誤っていた場合、当社グループは市場機会についての判断を誤り、誤った戦略を策定し、又は内部のリソースの分配を誤る可能性があり、その結果当社グループの事業及び経営成績等に悪影響を及ぼす可能性があります。したがって、これらの数値が当社グループの事業や成長に関する見通しを表しているものとして過度に依拠することはできません。

加えて、当社グループは数値の推計にあたって当社独自の定義を用いているため、これらの数値は他社の類似の指標と比較することはできず、そのような比較の結果に依拠することもできません。

 

(3)許認可に関するリスク

当社グループは人材紹介事業について、職業安定法に基づき、以下のとおり厚生労働大臣より有料職業紹介事業の許可を取得しています。

 

取得・登録者名

許可名称及び

所管官庁

許可番号

取得年月

有効期限

株式会社

トライトキャリア

有料職業紹介事業許可

厚生労働省

27-ユ-301770

2015年1月1日

2027年12月31日

株式会社トライト

エンジニアリング

有料職業紹介事業許可

厚生労働省

27-ユ-300349

2006年4月1日

2024年3月31日

株式会社HAB&Co.

有料職業紹介事業許可

厚生労働省

44-ユ-300143

2019年9月1日

2027年8月31日

※株式会社トライトエンジニアリングの有料職業紹介事業許可に関しては提出日現在、更新手続中です。

 

また、当社グループは、人材派遣事業について、労働者派遣法に基づき、以下のとおり厚生労働大臣より労働者派遣事業の許可を取得しています。

 

取得・登録者名

許可名称及び

所管官庁

許可番号

取得年月

有効期限

株式会社

トライトキャリア

労働者派遣事業許可

厚生労働省

派27-302147

2015年11月1日

2028年10月31日

株式会社トライト

エンジニアリング

労働者派遣事業許可

厚生労働省

派27-300607

2006年4月1日

2024年3月31日

※株式会社トライトエンジニアリングの労働派遣事業許可に関しては提出日現在、更新手続中です。

 

加えて、当社グループは、子会社である株式会社トライトキャリア及び株式会社HAB&Co.において、職業安定法に基づき、厚生労働大臣に対して、2022年12月22日及び2022年10月17日にそれぞれ特定募集情報等提供事業の届出を行っています。

厚生労働大臣は、職業安定法及び労働者派遣法に基づき、当社グループに対する監督権限を有しており、これらの法令又は関連する規則に違反した場合、当社グループは厚生労働大臣より、指導又は助言、業務改善命令、業務停止処分又は許可の取消し等の処分を受け、中核となる事業を営むことができなくなる可能性や、当社グループの社会的信用を害することにより、事業、財政状態又は経営成績等が重大な悪影響を受ける可能性があります。

なお、当社グループは、2020年2月27日に子会社である株式会社ティスメ(現株式会社トライトキャリア)のジョブエイト事業において、一部取引先との間で職業安定法第44条により禁止されている労働者供給と見做される人材紹介等業務委託契約及び労働者派遣契約を締結していたとして、労働者派遣法第14条第2項に基づく労働者派遣事業停止命令(業務停止期間は、株式会社ティスメの労働者派遣事業のうち、ジョブエイト事業部については2020年2月28日から2020年6月27日まで、ジョブエイト事業部以外の事業所における新規の労働者派遣については2020年2月28日から2020年3月27日までです。)及び同法第49条第1項に基づく労働者派遣事業改善命令を受けています。当社グループは、同事業停止命令及び業務改善命令を受けて、原因となった事業部門を廃止するとともに、その他の事業部門についても職業安定法及び労働者派遣法の違反の有無について総点検を行い、必要な再発防止策を講じています。また、当社グループは、職業安定法又は労働者派遣法の軽微な違反について、労働局から複数の指導又は是正勧告を受けていますが、これらについても、是正指導の内容に基づき、再発防止策を講じています。しかしながら、これらの再発防止策が有効に機能する保証は無く、再発防止策を講じたにもかかわらず再び法令違反が発生した場合、当社グループの社会的信用を害し、事業、財政状態又は経営成績等が重大な悪影響を受ける可能性があります。

なお、本書提出日現在において、上記許認可について、事業の停止、許認可取消事由及び事業廃止事由に該当する事実はありません。

 

(4)派遣スタッフの安全管理に関するリスク

当社グループの派遣スタッフが派遣先で業務上、又は通勤中に負傷し、疾病にかかり、障害を負い、又は死亡した場合には、労働基準法上、使用者である当社グループは補償義務を負います。当社グループでは、派遣先の就業環境を把握し、派遣スタッフにかかる事態が生じないように努めていますが、万が一このような事象が発生した場合には、当社グループの事業及び経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)社会保険料負担に関するリスク

当社グループは、従業員に加えて、派遣スタッフ及び受託業務に従事するスタッフについても社会保険への加入義務を負っています。

今後、社会保険制度の改正に伴い、保険料率や会社負担額が上昇した場合や、加入対象者の範囲が拡大された場合、当社グループの経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)のれんの減損リスク

当社の連結財務諸表に計上されているのれんについて、当社グループに対するLSDH出資以前から、現在に至るまでの変遷図を示すと以下のとおりです。

LSDH出資前

2018年12月

LSDH出資前の構成は以下のとおり。

LSDHによるティスWAYの増資引受及び株式譲受を行い、その後ティスWAYが創業家からメディアメイドの株式の100%取得、ティスメが創業家からTS工建株式の100%を取得し、以下の構成となる(のれんの計上)。

 

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2019年6月

2021年11月30日

2019年6月にティスWAYによる旧メディアメイドの吸収合併及びティスWAYをメディアメイドへ商号変更し、以下の構成となる。

2019年7月にLSDHによる創業家から株式40%追加取得、2020年9月のメディアメイドによるTS工建の株式の100%取得、2020年11月の各社商号変更、2021年8月に旧トライトによるHAB&Co.の株式の100%取得により、以下の構成となる。

 

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2021年12月1日

2021年12月1日

JSPC2(LSDHの100%子会社)がLSDHから旧トライトの株式50.1%を取得(のれん計上)。

JSPC2が旧トライトと吸収合併しトライトへ商号変更を行う。

 

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2022年12月31日

2023年12月31日

2022年1月にトライトによる株式会社ウェルクスの株式100%取得し、2022年7月1日付で株式会社ウェルクスを吸収合併。

2023年6月にトライトによる株式会社bright vieの株式100%取得。

 

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株式会社ティスWAY(旧トライト)は、2018年12月にBPEA(現BPEA EQT)が100%出資するLSDHからの出資受入れ(LSDHが有償第三者割当及び創業家からの株式譲受により株式会社ティスWAY(旧トライト)株式の60%を取得)を契機として、持続的成長基盤の構築に向けて関連会社であった旧メディアメイド及び株式会社ティスメ(現トライトキャリア)の株式を取得し、株式会社ティスメは株式会社TS工建(現トライトエンジニアリング)の株式を取得し完全子会社化しています。また、2019年6月には株式会社ティスWAY(旧トライト)を存続会社として、旧メディアメイドの吸収合併を行い(その後株式会社ティスWAYはメディアメイド株式会社に商号変更)、2019年7月にはLSDHによるメディアメイド株式会社(旧トライト)株式の40%の追加取得が実施され、LSDHのメディアメイド株式会社(旧トライト)に対する持株比率は100%となっています。これら一連の組織再編の結果、当社が採用するIFRSにおいて企業結合の原則を定めるIFRS第3号の取得法を適用する取引として、非流動資産にのれんを25,692百万円計上しています。

さらに、2021年12月1日には、当社(JSPC2)が旧トライトの株式をLSDHから50.1%取得のうえ、旧トライトと吸収合併を行っています(同日、JSPC2はトライトに商号変更)。LSDHによる当社グループへの出資から、当社による旧トライト株式取得(及びその後の合併取引)に至るまでの取引は、取引の時点としてはそれぞれ異なるものの、取引の性質としては当初から意図していた一連の企業結合取引です。このような取引形態となったのは、2018年12月及び2019年7月にLSDHが旧トライト株式を取得した際、買収資金について、一般的な買収案件で用いられるLBOローン調達が旧トライトグループにおいて調達困難であったことから、将来的には旧トライトグループで資金調達をする前提で一時的にファンド資金にて賄うこととなったためです。

以上より、当該企業結合取引の経済的実態を忠実に財務諸表に反映させるために、当社が旧トライト株式を取得及び旧トライトと合併するにあたって、IFRS第3号に従ってLSDHが旧トライト株式を取得した時点の資産及び負債をベースとして引き継がれる旧トライトの株主資本の額と当社の取得対価との差額をのれんとして計上しています。

なお、当該のれんにつきましては、仮にLSDHを頂点とする連結財務諸表を作成していたのであれば、その連結財務諸表に計上されていたはずののれんの一部を当社の連結財務諸表において計上していることとなりますので、自己創設のれんを計上しているものではありません。

その結果、当連結会計年度末におけるのれん残高は52,009百万円、総資産に占める割合が65.1%となっています。当連結会計年度末ののれん残高の内訳は以下のとおりです。

 

計上時期

計上内容

金額(百万円)

2018年12月

ティスWAYによるメディアメイド取得

5,712

2018年12月

ティスメによるTS工建取得

19,980

2021年8月

旧トライトによるHAB&Co.取得

288

2021年12月

当社(JSPC2)による旧トライト取得

24,444

2022年1月

当社によるウェルクス取得

986

2023年6月

当社によるbright vie取得

597

 

合計

52,009

 

当社グループは、のれんが配分された資金生成単位に減損の兆候がある場合、及び減損の兆候の有無に関わらず各年度の一定時期に減損テストを実施しています。減損テストの回収可能価額は、使用価値に基づき算定しています。当該テストの結果、のれんが配分された資金生成単位が十分な将来キャッシュ・フローを生み出さない場合は、減損損失を認識する必要性が生じます。多額の減損損失を認識した場合、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

減損テストに使用した主要な仮定を変更しなければならない事態となった場合には減損が発生するリスクがありますが、当連結会計年度末時点における回収可能価額は、帳簿価額を十分に上回っていることを確認しています。また、減損テストに使用した主要な仮定が合理的に予想可能な範囲で変化したとしても、使用価値が帳簿価額を下回る可能性は低いと判断しています。なお、減損テストに用いた主要な感応度を示す仮定は売上高成長率であり、仮に売上高成長率以外の条件が一定と仮定した場合において、予測成長率が5.0%程度に下がったとしても、回収可能価額が帳簿価額を大幅に上回っており、各資金生成単位において重要な減損が発生する可能性は低いと判断しています。なお、2023年12月期の対前年度売上高成長率は19.4%です。

将来の企業買収や資本提携等を検討する場合には、のれんの減損リスクを低減するために、対象会社の事業計画や財務内容、契約関係等についての詳細なデュー・デリジェンスを行うとともに、買収価格の妥当性を多角的に検証・精査することで、十分にリスクを検討することとしています。また、買収当初の事業計画に関する定期的なモニタリングを通じて、差異要因を正確に把握することで、のれんが配分された資金生成単位の業績改善・成長に向けたシナリオを策定していますが、のれんが配分された資金生成単位が十分な将来キャッシュ・フローを生み出さないこととなった場合には、多額の減損損失を認識することとなり、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

さらに、当社グループが買収した新興企業につき収益性が無いと判断された場合には、当該買収に関連して計上されたのれん及び無形資産について減損のリスクが生じる可能性があります。

また、有形固定資産及び無形資産についても、減損テストの結果、多額の減損損失を認識した場合には、当社グループの財政状況及び業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)有利子負債比率に関するリスク

当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金の確保及び資金需要に対する機動的な対応のために、資本コスト等を勘案しながら内部資金及び外部資金を有効に活用しています。借入債務があることにより、事業活動から得た資金が債務の返済に充てられ、事業活動資金及び普通株式の配当金の原資を確保できなくなる可能性があります。レバレッジが高くなっている現在の財務体質においては、経済環境悪化への耐性が脆弱となり、レバレッジの低い競合他社と比較して競争圧力に耐える能力が限定的となる可能性があります。

上記方針の下、当社グループは、金融機関を貸付人とする借入契約を締結しており、有利子負債残高(リース負債を含む。)は2023年12月末において42,438百万円であり、総資産に占める有利子負債の比率は53.1%となっていますが、将来、金利動向を含む資金調達環境全体に応じて、追加的に負債を抱える可能性があります。当該契約には一定の財務制限条項が付されており、これに抵触した場合には、当社グループは追加の担保提供を求められる可能性があり、また、貸付人の請求により同契約上の期限の利益を失う可能性があります。また、市場金利が急速に上昇した場合には、支払利息が急激に増加する可能性があるほか、資金調達コストが上昇し、必要な資金を適時に借り入れることができなくなる可能性があります。また、当社の資金調達能力は、金融市場の状況及び資金を提供する金融機関の利用可能性に左右されます。当社の財務状況や事業環境の悪化によって、当社の信用力が将来的に低下する可能性があり、その場合、将来的に追加の借入を行う能力に悪影響を及ぼす可能性があります。これらの事情により、当社グループの財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)主要株主との関係に伴うリスク

当社は、EQTが運営するLSDHより出資を受けており、LSDHは本書提出日時点で当社の発行済株式総数の60%を保有しています。当社の取締役のうち、原敬信は、当社の前身であるメディアメイド株式会社(旧トライト)の取締役に就任する2019年10月以前より、LSDHを運営していたBPEAのグループ会社であるベアリング・プライベート・エクイティ・アジア株式会社に所属しており(EQTによるBPEAの買収により、本書提出日時点でLSDHはEQTにより運営されています。また、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア株式会社は、2022年10月18日にBPEA EQT株式会社に商号を変更した後、2023年3月1日付でEQTパートナーズジャパン株式会社により吸収合併されています。原敬信は、メディアメイド株式会社の取締役就任後、2020年3月からEQTパートナーズジャパン株式会社による吸収合併までの間、ベアリング・プライベート・エクイティ・アジア株式会社(商号変更後はBPEA EQT株式会社)の代表取締役を務めています。)、本書提出日現在もEQTパートナーズジャパン株式会社に所属しています。当社グループは、EQTから、経営体制構築、各種内部管理体制強化、営業基盤の確立、マーケティング強化、先端施策・事業の開始による顧客提供価値拡大や業績伸長等、当社の企業価値向上に向けたサポートを得ています。

また、LSDHは、株主総会の普通決議を必要とする事項(例えば、取締役の選解任、剰余金の処分や配当等を含みますが、これらに限りません。)に関する決定権及び拒否権並びに特別決議を必要とする事項(例えば、吸収合併、事業譲渡、定款変更等を含みますが、これらに限りません。)に関する拒否権を有しており、当社について一般の株主と異なる利害関係を有する可能性があります。当社では経営の意思決定・監督機能と業務執行の分離及び迅速な業務執行を実現するため、執行役員制度を導入し、重要な意思決定については代表取締役社長と全ての執行役員等で構成される経営会議にて十分な議論を行ったうえで取締役会に諮ることとしています。なお、取締役会による監視・監督機能の観点から、取締役の半数を独立社外取締役が構成し、また、監査役会を構成する監査役は全て独立社外監査役とするなど、特定の株主の利害にかかわらず、独立した合理的な意思決定を行うための体制を敷いています。

 

(9)コンプライアンスに関するリスク

① 法規制に関するリスク

当社グループの事業に関連する主な法規制として、職業安定法、労働者派遣法、個人情報保護法等があります。特に、上記「(3)許認可に関するリスク」に記載のとおり、当社グループの運営する人材紹介事業・人材派遣事業は、職業安定法及び労働者派遣法に基づき、厚生労働大臣の許可を取得するとともに、当局の監督を受けています。当社グループが職業安定法及び労働者派遣法を含む関連する法令又は規則に違反した場合、厚生労働省その他の当局から指導又は助言、業務改善命令、業務停止処分、許可の取消し等の処分を受け、中核となる事業を営むことができなくなる可能性や、当社グループの社会的信用、事業、財政状態又は経営成績等が重大な悪影響を受ける可能性があります。当社グループとしては、営業部門をはじめとした各部門が法務部門、総務部門及び外部弁護士事務所と密に連携することにより、法令等を遵守する体制を整備しており、また、定期的な内部監査により、その運用状況を把握及び改善する仕組みを構築していますが、かかる対策が奏功する保証はありません。

また、職業安定法、労働者派遣法その他当社グループの事業に関係する諸法令は、経済環境、社会情勢の変化等に伴い、その内容の見直しが行われています。紹介又は派遣が可能な職種を減少させる改正、企業に労働者派遣よりも自社採用を促進する改正、当社グループが契約施設に請求できる紹介料・派遣料を制限する改正、当社グループが適応できない速さで人材紹介又は人材派遣市場全体を縮小させる改正その他当社グループの事業に不利な改正が実施された場合には、事業の収益性を悪化させる可能性、当該改正に対応するための追加的な支出が必要となる可能性や、契約施設における需要自体が減少する可能性等があり、これらの場合、当社グループの事業、財政状態又は経営成績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 個人情報・機密情報の取扱いによるリスク

当社グループは、その事業の運営に際し、求職者又は法人顧客その他の関係者の個人情報及び機密情報を大量に保有しています。当社グループは「個人情報の保護に関する法律」に定める個人情報取扱事業者に該当し、取得、収集した個人情報の漏洩等は当社グループの信用力低下に直結することから、経営者は、個人情報管理責任者を指名し、個人情報保護マニュアルを整備し、個人情報管理に関するシステムのセキュリティ対策を講ずるとともに、必要な教育計画を策定・実施し、個人情報の適正管理に努めています。また、事業子会社の株式会社トライトキャリア及び株式会社トライトエンジニアリングにおいてはプライバシーマークを取得しており、その更新及び当社における新規取得を検討しています。

これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃、システム上の欠陥、従業員等の人為的なミス等により、個人情報保護法その他の法令に違反し、又は個人情報や機密情報の紛失・漏えいが発生した場合、顧客による当社グループのサービスの継続的な利用が困難になり、求職者及び法人顧客の信用を失うなど、当社のレピュテーションが悪化し、又は当局からの調査や求職者及び法人顧客からの訴訟等を受けることにより、当社グループの事業、財政状態又は経営成績等が重大な悪影響を受ける可能性があります。

また、個人情報を巡っては、今後規制が強化される可能性がありますが、かかる規制の強化により、当社グループにおける個人情報の活用が制限される結果、当社グループの競争優位性が失われ、求職者及び法人顧客を失い、又はビジネスモデル、事業運営又は戦略の変更又は全面的な点検を余儀なくされ、追加のコスト負担が発生する可能性があります。

 

③ 訴訟等に関するリスク

当社グループは、当社グループの事業に関して、報酬その他雇用に関する訴訟の当事者となる場合があります。ソーシャル・メディアの普及により、当社グループが訴訟の当事者になった場合、当社グループの事業やレピュテーションへの影響が拡大する可能性があります。当社は、訴訟により損失が見込まれる場合、適切な評価の下、引当金を計上する方針ですが、実際の支払額が引当金の額よりも多額となった場合、当社グループの、事業、経営成績又は財政状態に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、派遣先企業がこれらの法令に違反した場合、当社グループも派遣労働者により訴訟を提起される可能性があり、加えて厚生労働省から行政処分を受けた場合、当社グループの社会的信用を害し、派遣労働者を採用又は維持することが困難となる結果、当社グループの事業、財政状態又は経営成績等が悪影響を受ける可能性があります。

 

(10)レピュテーションに関するリスク

当社グループのサービスの利用者にはブランドに敏感な一般個人を含んでおり、当社グループや当社グループのブランドに関するレピュテーションは当社グループの事業の成功に重要な役割を果たします。したがって、ブランド戦略の失敗、当社グループの役員・執行役員・従業員による不祥事、人材紹介・人材派遣サービスに関する求職者からの当社グループに対する訴訟、第三者による不正なブランド利用等の要因により、当社グループのレピュテーションが毀損された場合、当社グループの事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループや求職者・法人顧客が当社グループのサービスの利用に関して違法行為を行った場合にも、当社グループや当社グループのブランドが毀損され、又は当社グループと求職者や法人顧客との関係が悪化する可能性があります。当社グループが、求職者や法人顧客のかかる行動を抑止する有効な対策には限界があり、仮に対策を取ることができたとしても、その効果が十分である保証はありません。

以上の理由により、当社グループに対して訴訟が提起され、それにより当社グループのブランドやレピュテーションが毀損された場合、当社グループの事業又は経営成績に重大な悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)システムに関するリスク

当社グループはサービスの提供や事業運営にあたってITシステムを利用していますが、ITシステムは自然災害等、電力不足、ソフトウエア及びハードウエア並びにネットワークの不具合、サービスプロバイダーにおける障害、一時的な通信量の増大、ハッキング、コンピューターウイルスなど様々な原因によって障害やエラーを起こす可能性があります。当社グループは、近年IT技術を用いたサービスの提供を拡大しており、当社グループの対策にもかかわらずエラーが生じる可能性は高まっていますが、エラーが発生した場合、損害賠償その他の費用が発生し又は当社グループのレピュテーションが悪化する可能性があるほか、個人情報及び機密情報が漏洩する可能性又は当社サービスの使用に支障が生じる可能性などがあり、これらの事情により、規制当局による調査又は法的措置の対象となる可能性もあります。また、当社グループにおけるITシステムの維持開発には、多額のコスト負担が生じる可能性があります。当社は事業継続計画(BCP)を策定していますが、同計画がこれらの問題を適切に解決できる保証はなく、その結果、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループは、一定のサービスについて外部ベンダーのITシステムを利用しているため、当社グループがコントロールすることのできない当該外部ベンダーにおける障害等により当社グループのサービスが影響を受ける可能性があります。加えて、当社は、データセンターやクラウドについて外部のサービスプロバイダーのサービスを利用していますが、これらのサービスを有効活用できない場合、当社グループの事業が深刻な影響を受け、又は代替するサービスプロバイダーを探すために追加的な投資を余儀無くされる可能性があります。その結果、当社グループの事業、財政状態又は経営成績等が悪影響を受ける可能性があります。

 

(12)内部統制に関するリスク

当社グループは、法令に基づき、財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用していますが、内部統制システムには本質的に内在する固有の限界があるため、当社グループの財務報告に重要な不備が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重要な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。

なお、当社グループは、「人材サービス業」の単一セグメントのため、セグメント情報の記載を省略しています。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末の資産合計は、79,947百万円(前連結会計年度末比5,309百万円増)となりました。主な要因は、現金及び現金同等物が3,176百万円、営業債権が676百万円、有形固定資産が558百万円、のれんが597百万円、その他の金融資産が368百万円それぞれ増加したことによるものです。

 

(負債)

 当連結会計年度末の負債合計は、54,019百万円(前連結会計年度末比408百万円増)となりました。主な要因は、未払金が251百万円、リース負債が550百万円、未払法人所得税が981百万円、その他の流動負債が800百万円それぞれ増加し、短期借入金が800百万円、長期借入金(1年内返済予定の長期借入金を含む)が1,572百万円それぞれ減少したことによるものです。

 

(資本)

 当連結会計年度末の資本合計は、25,927百万円(前連結会計年度末比4,901百万円増)となりました。要因は、当期利益の計上により利益剰余金が4,901百万円増加したことによるものです。

 

② 経営成績の状況

当連結会計年度においては、多くの業界で新型コロナウイルス感染症の影響による厳しい状況を脱し、経済活動が活発化したことで、日本全体で人手不足が深刻化しています。特に当社グループが事業対象としている医療福祉・建設業界につきましては、その必要性の高さから人材不足が慢性化しているため、当連結会計年度の有効求人倍率も引き続き全産業平均対比で高い水準で推移しました。

このような事業環境の中、当社グループでは企業の社会的責務を果たすべく、既存サービスの強化に加えて、新たな注力分野の開拓、グループ内での連携強化等により、人材に関する顧客企業の課題解決をサポートし、顧客満足度の向上や他社との差別化に取り組んできました。特に当連結会計年度においては、6月に子会社化した株式会社bright vieを通じた医療福祉業界のICT化促進や、10月の医療福祉従事者向けリスキリング事業の新拠点開設等により、医療福祉業界が直面する労働力不足や生産性の改善といった社会課題の解決に多角的に貢献できる体制構築に励みました。

上記の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上収益52,767百万円(前年同期比19.4%増)、営業利益7,514百万円(前年同期比26.1%増)、税引前利益7,050百万円(前年同期比26.8%増)、当期利益4,901百万円(前年同期比35.3%増)、親会社の所有者に帰属する当期利益4,901百万円(前年同期比35.3%増)となりました。

なお、当連結会計年度の調整後EBITDAは9,385百万円(前年同期比15.0%増)、調整後親会社の所有者に帰属する当期利益は5,427百万円(前年同期比21.9%増)となりました。

 

主要な事業ごとの業績は下記のとおりです。

 

医療福祉事業

当連結会計年度においては、慢性的な人手不足に起因する事業者からの旺盛な需要に応えることで、売上収益は36,478百万円(前年同期比17.5%増)となりました。

 

非医療福祉事業

当連結会計年度においては、高い有効求人倍率を背景とした建設事業者からの旺盛な需要に応えることで、売上収益は16,288百万円(前年同期比23.9%増)となりました。

 

※ 調整後EBITDA及び調整後親会社の所有者に帰属する当期利益は、IFRSにより規定された指標ではなく、投資家が当社グループの業績を評価する上で、当社グループが有用と考える財務指標です。調整後EBITDA及び調整後親会社の所有者に帰属する当期利益は、一時的に発生する特定の費用・収益及び当期利益に影響を及ぼす項目の一部を除外しており、分析手段としては重要な制限があることから、IFRSに準拠して表示された他の指標の代替的指標として考慮されるべきではありません。当社グループにおける調整後EBITDA及び調整後親会社の所有者に帰属する当期利益は、同業他社の同指標あるいは類似の指標とは算定方法が異なるために、他社における指標とは比較可能でない場合があり、有用性が減少する可能性があります。

※ 調整後EBITDA及び調整後親会社の所有者に帰属する当期利益は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく監査の対象とはなっていません。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末より3,176百万円増加し、5,476百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は、以下のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による収入は、7,380百万円(前年同期は3,647百万円の収入)となりました。主な要因は、税引前利益7,050百万円、減価償却費及び償却費1,345百万円、営業債務及びその他の債務の増加額839百万円、その他による収入141百万円、補償金の受取額216百万円があった一方で、営業債権及びその他の債権の増加額622百万円、利息の支払額834百万円、法人所得税の支払額1,235百万円があったことによるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による支出は、981百万円(前年同期は1,550百万円の支出)となりました。主な要因は、有形固定資産の取得による支出119百万円、無形資産の取得による支出444百万円、連結範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出577百万円があった一方で、その他による収入160百万円があったことによるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による支出は、3,222百万円(前年同期は1,378百万円の支出)となりました。主な要因は、短期借入金の純減額800百万円、長期借入金の返済による支出1,498百万円、リース負債の返済による支出908百万円があったことによるものです。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは人材サービスを提供しており、提供するサービスの性格上、生産実績の記載に馴染まないため、生産実績に関する記載を省略しています。

 

b.受注実績

 生産実績と同様の理由により、記載を省略しています。

 

c.販売実績

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

至 2023年12月31日)

販売高(百万円)

前年同期比(%)

人材サービス業

52,767

19.4

合計

52,767

19.4

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は、以下のとおりです。

 

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、IFRSに準拠して作成しています。この連結財務諸表の作成にあたり採用した重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 連結財務諸表注記 4.重要な会計上の見積り及び見積りを伴う判断」に記載しています。

 

② 経営成績の分析

(売上収益)

当連結会計年度における売上収益は52,767百万円(前年同期比8,572百万円増)となりました。内容は医療福祉事業36,478百万円、非医療福祉事業16,288百万円です。

 

(売上原価)

当連結会計年度における売上原価は17,797百万円(前年同期比3,614百万円増)となりました。主な内容は派遣売上原価です。

 

(販売費及び一般管理費)

当連結会計年度における販売費及び一般管理費は27,582百万円(前年同期比3,244百万円増)となりました。主な内容は人件費13,260百万円、広告宣伝費8,641百万円です。

 

(営業利益)

当連結会計年度における営業利益は7,514百万円(前年同期比1,554百万円増)となりました。主な要因は上記のとおりです。

 

③ 財政状態の分析

「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりです。

 

④ 資本の財源及び資金の流動性に関する情報

当社グループの主な資金需要は、広告宣伝費、人件費及びM&A費用です。これらの資金需要に対しては、原則として、営業活動により得られたキャッシュ・フローから支出しますが、必要な流動性を確保するため、株式会社きらぼし銀行及び野村キャピタル・インベストメント株式会社との間で金銭消費貸借契約を締結しています。詳細は、「5 経営上の重要な契約等」をご参照ください。

 

⑤ キャッシュ・フローの状況の分析

「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。

 

⑥ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容

当社グループは、目標の達成状況を判断するための客観的な経営指標として、売上収益、EBITDA(※1)及び営業利益を重視しており、併せて当期利益及び基本的1株当たり当期利益にも留意しています。また、財務健全性の観点より、純有利子負債(※2)÷EBITDAを重要な経営指標と考えています。

なお、上場以前では上場準備等に係る一過性の費用が発生していたため、当該費用の影響を除いた調整後EBITDA及び調整後営業利益を経営指標として重視しておりました。

2019年12月期以降のEBITDA、営業利益、調整後EBITDA及び調整後営業利益の推移は以下のとおりです。

 

※1 EBITDA=当期利益+法人税+金融費用-金融収益+償却費(使用権資産、顧客関連資産、その他資産を含む)+固定資産減損・除却損

2 純有利子負債=借入金+リース負債-現金及び現金同等物

3 調整後EBITDA=EBITDA+M&A関連費用+リファイナンス関連費用(金融費用以外)+IPO関連費用

4 調整後営業利益=営業利益+M&A関連費用+リファイナンス関連費用(金融費用以外)+IPO関連費用

 

<調整後EBITDAの調整表>

(単位:百万円)

 

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

当期利益(IFRS)

3,688

4,226

4,366

3,621

4,901

(調整額)

+法人税

+金融費用

-金融収益

+償却費(使用権資産、顧客関連資産、その他資産を含む)

+固定資産減損・除去損

 

1,661

132

△51

637

 

 

19

 

1,789

151

△462

748

 

 

81

 

2,188

193

△478

878

 

 

80

 

1,937

837

△436

1,394

 

 

35

 

2,148

764

△300

1,345

 

 

7

EBITDA

6,088

6,534

7,228

7,389

8,867

+M&A関連費用

+リファイナンス関連費用(金融費用以外)

+IPO関連費用

(注)1

-

-

 

90

-

-

 

201

△27

163

 

328

233

16

 

521

-

-

 

518

調整後EBITDA(注)2

6,179

6,735

7,693

8,161

9,385

 

<調整後営業利益の調整表(注)4>

(単位:百万円)

 

2019年12月期

2020年12月期

2021年12月期

2022年12月期

2023年12月期

営業利益

5,431

5,704

6,269

5,959

7,514

(調整額)

+M&A関連費用

+リファイナンス関連費用(金融費用以外)

+IPO関連費用

(注)1

 

-

-

 

90

 

 

-

-

 

201

 

 

△27

163

 

328

 

 

233

16

 

521

 

 

-

-

 

518

 

調整後営業利益(注)2

5,522

5,906

6,734

6,731

8,032

 

 

(注)1.M&A関連費用はM&Aに係るアドバイザリー費用等です(なお、2021年12月期に関しては、ティスメ事業に係る譲渡益97百万円を含んでおり、その結果、2021年12月期のM&A関連費用の調整額は△27百万円となっています。)。リファイナンス関連費用(金融費用以外)はリファイナンスに係るアドバイザリー費用等(金融費用に該当するものを除く。)です。IPO関連費用は上場準備に係る人件費・業務委託費用・アドバイザリー費用、上場審査に係る費用、国内外オファリング費用等及び弁護士費用等の上場に関連する費用です。リファイナンス関連費用(金融費用)は、2021年12月に実施した組織再編及びリファイナンスに関連して一時的に発生したアレンジメント費用として連結損益計算書において金融費用に分類される費用です。これらの費用は一時的な費用であることから、経常的な収益を測る上で調整を行っています。

2.調整後EBITDA及び調整後営業利益は、IFRSにより規定された指標ではなく、投資家が当社グループの業績を評価する上で、当社グループが有用と考える財務指標です。調整後EBITDA及び調整後営業利益は、当期利益に影響を及ぼす項目の一部を除外しており、分析手段としては重要な制限があることから、IFRSに準拠して表示された他の指標の代替的指標として考慮されるべきではありません。当社グループにおける調整後EBITDA及び調整後営業利益は、同業他社の同指標あるいは類似の指標とは算定方法が異なるために、他社における指標とは比較可能でない場合があり、有用性が減少する可能性があります。

3.当社は、2021年12月1日に当社を存続会社として、旧トライトと吸収合併を行い、株式会社トライトに商号変更を行いました。そのため、2019年12月期及び2020年12月期については、吸収合併前の旧トライトを親会社とする連結経営指標等が、当社グループの状況をより反映すると考えられるため、旧トライトの経営指標等を記載しています。また、当社グループの経営成績の年間推移の比較を可能とするため、2021年12月期については、当社の2021年12月期の連結業績と旧トライトの2021年1月1日から同年11月30日までの連結業績を単純合算して算出した連結経営指標(すなわち、当社の2021年1月1日から2021年12月31日までの連結業績に、旧トライトの2021年1月1日から2021年11月30日までの連結業績を単純合算したもの)となっています。かかる数値については、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づいて算出されたものではなく、また、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づく太陽有限責任監査法人の監査を受けていません。そのため、当社グループの実際の経営成績及び財政状態を正確に示していない可能性があります。

4.2019年12月期から2023年12月期の平均調整後営業利益率は17.2%です。

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度末時点における当社グループが締結する経営上の重要な契約の概要は、以下のとおりです。

 

(株式会社きらぼし銀行及び野村キャピタル・インベストメント株式会社との借入契約)

当社(以下、本項目「(株式会社きらぼし銀行及び野村キャピタル・インベストメント株式会社との借入契約)」において「借入人」という。)と、株式会社きらぼし銀行及び野村キャピタル・インベストメント株式会社(以下「貸付人」という。)は、2021年12月1日付で、株式会社きらぼし銀行をエージェントとして、「金銭消費貸借契約」(以下「原契約」という。)を締結し、さらに、原契約の変更契約である「金銭消費貸借契約書に関する第一変更契約書」を締結しています。

 

主な契約内容は以下のとおりです。

 

(1)契約の相手先

契約の相手先は株式会社きらぼし銀行及び野村キャピタル・インベストメント株式会社となりますが、野村キャピタル・インベストメント株式会社から貸付債権を株式会社SBI新生銀行、株式会社千葉銀行、株式会社山陰合同銀行、株式会社静岡銀行、株式会社第四北越銀行、みずほリース株式会社、株式会社足利銀行、株式会社富山第一銀行、台新國際商業銀行、株式会社名古屋銀行へ譲渡しています。

 

(2)個別貸付実行金額及び貸付極度額

タームローンA個別貸付実行金額:12,000百万円、タームローンB個別貸付実行金額:22,500百万円

コミットメントライン貸付極度額:3,000百万円

 

(3)元本弁済

タームローンA元本弁済日:2028年12月1日(2022年6月末日より、6ヶ月ごとに分割弁済)

タームローンB元本弁済日:2028年12月1日

 

(4)主な借入人の義務

主な財務コベナンツは以下のとおりです。

① 利益維持

各中間期末及び各決算期末(いずれも直近12ヶ月)における借入人を頂点とする連結ベースでの営業利益(ただし、支払利息は控除する)を2回連続して赤字としないこと。

 

② 純資産維持

各決算期末における借入人の連結貸借対照表上の純資産の部の合計金額を13,344百万円以上に維持すること。

 

 なお、当連結会計年度末後、有価証券報告書提出日までに当社グループが新たに締結する経営上の重要な契約の概要は、以下のとおりです。

 

(借入金の借換え)

当社は、2024年3月18日開催の取締役会の決議に基づき、2024年3月26日付でシンジケートローンの契約を締結しています。

詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 33.後発事象」をご参照ください。

 

6【研究開発活動】

 該当事項はありません。