文中の将来に関する事項は、当有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営の基本方針
当社グループは、精密かつ完璧にこだわるものづくりを超えて、ライフスタイルの変革を促す、ものづくりソリューションエキスパートとして次代を切り拓く世界のあらゆるお客様とともに、デジタル社会の心躍る価値創造に貢献することをコーポレートビジョンとして定めました。
これらのコーポレートビジョンを具現化するために、次の中期経営方針を柱として、経営強化してまいります。
(中期経営方針)
・次世代デジタル通信技術を支える電気・光伝送路の開発技術力強化を図る
・MEMS技術を活用し、新たな事業基盤の確立を図る
・自動車等電動化に伴う新市場への展開により、事業拡大を図る
・ロボット・ライフサイエンスの成長市場の開拓により、事業領域の拡大を図る
・コーポレート機能の強化により収益性と健全性の両立を図る
・コーポレート・ガバナンス及びコンプライアンス体制の更なる強化を図る
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①財務体質の強化
当社グループは、電気・電子部品及び自動車部品の製造、販売を主たる業務としており、いわゆる生産財といわれる金型や成形機、さらには自動組立装置を保有し、金型の設計から製造、成形、プレス・めっき、組立と一貫生産をしております。このため、設備の投資回収に時間が掛かることが、財務上課題となっております。これについては、設備投資案件の回収可能性と回収期間を十分に検討し、効率的な設備投資を実施するとともに、最大の効果が得られる生産技術の開発を目指す所存です。また、売上高の増加に伴い、全社的に、棚卸資産の増加や、売上債権が増加傾向であることも課題となりますが、的確な需要予測とリードタイムの短縮により、在庫の圧縮を進めたり、売掛金の早期回収をすることにより、キャッシュ・フローの向上に努めてまいります。
②事業構造の改革
当社グループの事業領域においては技術革新が著しく、各製品の高機能化が一層進むとともに、汎用化した製品については市況変動の影響を大きく受けることになります。そのような環境下で当社グループが投資回収リスクを回避しつつ持続的な成長を続けていくためには、各事業において選択と集中を進め、市場動向を見極めた上で限られた経営資源を自らの得意とする分野に集中的に投入し、付加価値の高い製品をタイムリーに市場に供給していくことが重要になります。
このような状況の下、当社グループにおきましては、資本コストを意識した企業経営に努め、事業の構造改革を推進することで事業ポートフォリオの最適化を実現し安定した収益を確保できる体制づくりを進めてまいります。
電気・電子部品事業は、ノートパソコン市場の回復が予想されるため、パソコン向けコネクタが伸長するものと思われます。また、収益基盤の強化を目指し、AIサーバーをはじめとするデータセンター等のエンタープライズ市場へ向けて、高周波・高速伝送に適した高機能コネクタの拡販に注力してまいります。HDD関連部品は、データセンター向け投資が回復することが予想されるため、大容量化が進むHDD部品の需要増に応えるべく、精密加工技術の深耕や生産効率の向上に努めてまいります。
自動車部品事業は、自動車市場の回復が一段と進むことが予想されるため、センサやコネクタ、各種成形品等の車載部品の受注拡大に注力してまいります。また、自動車部品事業における収益力向上を実現するため、選択と集中、生産拠点の最適化等を進めると同時に、車の電動化・電子化に即した新たなビジネスの獲得に努めてまいります。
設備事業は、堅調な需要が続く車載用半導体やパワー半導体向けの樹脂封止装置や金型の受注拡大に向けて営業活動を強化してまいります。また、半導体以外の市場を対象として、各種製造装置や金型の受注・販売を推進し、創業から培った当社の精密加工技術を活かした新たな事業展開を図ってまいります。
また、グループ全体の取り組みとして、2022年に策定した「I‐PEX Vision 2030」の達成に向けた種々の施策を着実に実行していくことで、企業価値向上を実現させてまいります。特にMEMS関連ビジネスにおきましては、世界で初めてPZT(MEMSの素材であるジルコン酸チタン酸鉛)の単結晶化に成功したKRYSTAL株式会社等(現I‐PEX Piezo Solutions株式会社)を子会社化したことで、材料開発から量産まで一連のプロセスをグループ内で完結できる体制を構築いたしました。この体制により、開発から量産に要する時間を短縮することで、量産化の早期実現に向け邁進しております。今後、I‐PEXグループの中長期的な成長に資する事業へと発展していくものと考えております。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組に関しては、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、実際の結果は様々な要因により大きく異なる可能性があります。
サステナビリティ基本方針
当社グループは、企業理念に基づき、その実践を通じてイノベーションによる快適・安全なデジタル社会へ貢献していくことが、当社グループの持続的な企業価値の向上と、よりよい社会へ向けた発展に繋がっていくものと考えています。その理念の下、長期ビジョンを掲げ、社会の一員として社会や地球環境で発生している課題の解決に寄与するため、経営課題や重要性から特定した重要課題(マテリアリティ)に取り組んでいくことで、持続可能なビジネスモデルの構築と中長期的な価値創造を実現し、社会の発展に貢献していきます。
持続的な企業価値向上に向けたマテリアリティ
・イノベーションによる快適・安全なデジタル社会への貢献
・気候変動対応と循環型社会への貢献
・事業構造変革と事業領域の拡大
・人材マネジメントの強化
・最適なものづくりシステムの構築と資本コスト・キャッシュフロー経営の推進
・コーポレート・ガバナンスの強化
(1)ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する業務執行の監督、取締役会への報告を行う組織として、2022年8月に取締役常務執行役員を委員長とする各事業部の執行役員等で構成されたサステナビリティ委員会を設置しました。同委員会は、企業価値(ROEなど)向上に必要な経営における重要課題(マテリアリティ)や、グローバル視点での議論が必要な課題について、重要度の高さに応じテーマを選定し、原則毎月1回の頻度で開催しています。取締役会は、サステナビリティ委員会で協議・決定された内容の報告を定期的に受け、議論・決議し監督することでサステナビリティの取り組みをより一層強化することを目指しています。
なお、提出会社におけるコーポレート・ガバナンスの状況等は、「
(2)戦略
①気候変動
当社グループは、中長期経営戦略「I‐PEX Vision 2030」策定にあたって、社会の変化に対応しながら、ビジョンを達成するための重要課題(マテリアリティ)を特定・体系化しました。その1つに「気候変動対応と循環型社会への貢献」を設定し、その取り組みに注力しています。当社グループでは、事業活動に影響を及ぼす可能性がある気候変動リスクについて、国際エネルギー機関(IEA)や気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の外部シナリオを参考に、脱炭素へ向けた移行リスク・機会については1.5-2℃シナリオ、気候変動の進行に起因する物理リスク・機会については4℃シナリオを参考に定性的な分析を行いました。
具体的には、当社事業へ影響する主な気候変動リスク・機会について外部情報に基づいて整理し、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会と、気候変動の進行に起因する物理リスクについて分析・議論し、2050年までに影響を与えうる重要なリスクと機会の特定を行いました。
今後も外部動向の変化も踏まえ、定期的にリスクと機会の分析・評価の見直しを実施し、財務的な影響額の算出や対応策の具体化を進め、積極的な情報開示ができるよう努めていきます。
当社グループの気候変動における重要なリスクと機会項目の分析
②人的資本
当社グループは、サステナビリティを巡る課題について、マテリアリティの1つとして「人材マネジメントの強化」を設定し、「従業員と会社が共に成長し続ける仕組みづくり」を掲げ、4つの方向性を定め、具体的な取り組みを進めています。
これは、当社グループが「ものづくりソリューションエキスパート」として、経済的価値と社会的価値を創出し、持続的に成長していくためには、継続的にイノベーションを生み出し、事業領域を拡大していくことが重要であり、その原動力となるのは多様な個人の掛け合わせであると考えております。知識や経験、価値観の多様性を積極的に取り込むことが必要と考え、多様な人材が能力を発揮できる環境を整え成長を促すための人材マネジメントの強化に力を入れ取り組んでいきます。
なお、今現在日本が中心となりがちな考え方から、よりグローバルな基準での仕組み作りや取り組みを推進していくことが課題であると考えており、海外拠点を含めたグループ全体における人材育成方針の再構築や環境整備を進めています。
a. 人材の育成に関する方針
当社グループは、多様な人材を確保し、挑戦し続けようとする人の成長を支援することを人材マネジメントの基本方針としています。この方針の下、コーポレートアイデンティティ(CI)に沿った人材マネジメントのグランドデザインを構築、運用することで、従業員と会社が共に成長する組織づくりを目指しています。時代のニーズのさらに一歩先を行き、新たな価値を創造し続けるため、従業員一人ひとりの成長が会社の持続的な成長につながる仕組みづくりを行い、人材育成などの制度設計や風土改革など多様な人材がそれぞれの強みを発揮できる環境整備を推進していきます。
従業員と会社が共に成長し続ける仕組みづくり
・多様な人材が適性に応じて、様々な事業領域で活躍できる仕組みをつくる
・従業員一人ひとりの人材価値を高め事業の拡大・成長につなげる
・組織を活性化することで、イノベーションの創出力を高める
b. 社内環境整備に関する方針
従業員の働き方の多様化やライフステージの変化にかかわらず、多様な人材が安心して活躍し続けられる支援制度を整えることで、働きやすい職場となるよう環境整備に取り組んでいます。日本国内の具体的な施策として、在宅勤務制度、選択就業時間制度、時間有給休暇制度(1時間単位)、事業所(会社敷地)外託児施設の設置、法定を上回る育児短時間勤務制度、介護短時間勤務制度等を導入しています。また、男性の育児休業取得も推進しており、整備するだけでなく社内制度をより広く従業員に利用してもらうため、従業員向けポータルサイトを活用した制度の紹介や利用者のインタビュー記事などを掲載し、推進活動に取り組んでいます。海外拠点においても、地域ごとの差はあるものの在宅勤務制度や選択就業時間制度などの仕組みを導入し実施しております。
(3)リスク管理
当社グループは、サステナビリティを巡る課題について、リスクの減少のみならず収益機会にも繋がる重要な経営課題と認識しており、前述のサステナビリティ委員会が主体となって、各マテリアリティに紐づいた分科会を設置し、課題解決と実現に向け推進しています。それぞれの分科会では、そのマテリアリティに関する機会とリスクを識別、評価し、課題解決に向けたアクションの進捗管理を行った上で、サステナビリティ委員会での審議・承認を経て、定期的に取締役会への報告を実施することで、リスク管理の強化とビジネス機会の創出に取り組んでいます。
(4)指標及び目標
①気候変動
当社グループは「気候変動対応と循環型社会への貢献」をマテリアリティに設定し、スコープ1とスコープ2におけるCO2排出量を2030年までに40%削減(基準年度2021年)することを中長期目標として設定し、2050年にはカーボンニュートラルの実現を目標に掲げています。当社グループにおいて、地球温暖化に伴う気候変動に最も影響を与える要因は、当社グループが使用する電力の発電時に排出されるCO2であることから、生産における省エネルギー化と再生可能エネルギーの拡大などの取り組みを推進しています。
2023年度は全従業員へ省エネルギーの重要性について教育を行い、拠点ごとに削減目標の設定やISO14001認証活動において、新たに電力使用量削減を活動項目に設定することで、グループの共通課題として省エネルギー化に取り組むための活動を推進しました。また、全事業部が在籍する生産拠点である小郡工場をモデル工場として「エコチャレンジ」と称し、生産現場の電力使用量10%削減(小郡工場前年比)を目標に生産設備および付帯設備類の運用見直しや無駄なエネルギー使用(過熱、エアー漏れ、待機電力)を特定し、改善・対策する活動を実施しています。2024年3月までエコチャレンジの取り組みを継続し、その結果から得た省エネルギー化の手法を全拠点に展開することで、更なる生産における省エネルギー化の実現に向け活動していきます。
CO2排出量削減目標と実績(当社グループ)
|
項目 |
(基準年度) 2021年12月末 |
2022年12月末 |
2023年12月末 |
(目標) 2030年12月期 |
|
CO2排出量実績(t-CO2) (スコープ1&スコープ2) |
66,190 |
49,061 |
48,674 |
39,714 |
|
削減量(t-CO2) (基準年度比) |
- |
△17,129 |
△17,516 |
△26,476 |
|
削減率 (基準年度比) |
- |
△25.9% |
△26.5% |
△40.0% |
(注)1.CO2排出量削減目標と実績における当社グループとは、単体+連結子会社(スコープ1・2については、生産およびそれに準ずる事業所を対象)としております。
2.2022年12月末の削減については、受注減による生産活動の低下に伴い、工場稼働が大きく減少したことが要因の1つであります。
気候変動対応における方向性と取り組み
②人的資本
当社グループは、持続的にイノベーションを創出するための原動力として、様々な視点や異なる経験を持った人材が、多様な個々の知識や経験・価値観を尊重しながらも意見を言い合える組織づくりが重要と考え、ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョンを推進しています。
その第一歩と言える女性活躍においては、海外拠点では比較的女性管理職比率が高く、多様性を実現できていると認識している一方で、日本国内においては監督職や管理職に占める女性の割合は増えているものの、相対的に低い水準であると認識しており、2022年に積極的な女性活躍推進を目的として女性社員の計画的な採用・育成を推進するため、2030年までに日本国内グループの女性管理職比率を10%にする目標を設定しました。
具体的な取組みとして、女性の年代別・階層別のキャリアアッププログラム実施や採用を強化するとともに、ライフイベントを経てもキャリアを継続できる職場環境の整備とキャリア形成支援を行っており、今後も多様な人材が活躍できる組織づくりを進めていきます。
なお、中途採用者の経験は組織の多様性を形づくる一要素であり、管理職のうち、中途採用者の割合は半数以上を占めております。今後も組織に多様な人材が加わることによるイノベーションの創出を目指し、これまでのキャリアと経験を生かし活躍できるような環境づくりと、継続した採用を推進していきます。
女性活躍推進目標と実績(日本国内グループ)
|
項目 |
2022年12月末 |
2023年12月末 |
2030年12月期目標 |
|
女性管理職比率 |
2.6% |
3.2% |
10% |
人材マネジメントの強化における方向性と取り組み
以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性についての事項を記載しております。また、当社グループとしては必ずしも事業上のリスクとは考えていない事項についても、投資判断上、あるいは当社グループの事業活動を理解する上で重要と考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。当社グループは、これらのリスクの発生の可能性を認識した上で、発生回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項目以外の記載内容も併せて、慎重に検討したうえで行われる必要があります。
なお、本文中における将来に関する事項は、本書提出日(2024年3月28日)現在において、当社グループが判断したものであります。
1.品質に関するリスク
当社グループでは、ISO9001やISO14001の認証を取得した工場又はそれらに準じるシステムで生産を行う工場が生産主力工場として稼働しております。しかし、全ての製品について、不良、不具合が無く、将来に亘ってリコールが発生しないという保証はありません。これらの不良、不具合及びリコールが、多額の費用発生や当社グループの信用低下に繋がった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
2.災害・事故のリスク
当社グループの国内生産工場は、山梨県山梨市、京都市伏見区、福岡県大野城市、福岡県小郡市、福岡県朝倉郡筑前町、島根県松江市、沖縄県うるま市、山口県宇部市の8ケ所に位置しております。大規模な自然災害や事故が発生した場合、同一業種のバックアップ生産は他地域でも可能と当社グループでは考えておりますが、特定製品については、特定の地域にしか生産工場が無いため、バックアップ生産が不可能となります。このような特定製品の生産拠点が自然災害等に見舞われた場合には、生産活動への支障等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、未知の感染症等が拡大した場合にも、急激な経済停滞や事業遂行の困難が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
3.カントリーリスク
当社グループは、海外8カ国に12工場(うちアジア7カ国に11工場)を有しております。これらの海外工場毎に生産する製品は異なっておりますが、多くの海外工場が政治及び経済的に不安定な国に所在していることから、それらのカントリーリスクが顕在化した場合には、生産活動への支障等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
4.保有技術に関するリスク
当社グループでは創業以来、50有余年にわたり生産等に関する様々な技術を蓄積し、伝承し、それらをもとに精密金型技術を基盤とした現在の事業を展開しております。また、当社グループでは常に時代に先行した新技術にも取り組んでおりますが、当社グループの予測の範囲を超えた技術革新がなされた場合には、当社グループの技術競争力が低下し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
5.知的財産権に関するリスク
当社グループは、創業以来の精密金型技術をベースにした、コネクタ等の電気・電子部品、センサー類等の自動車部品、そして半導体製造装置等々に関する様々な技術を有しています。これらの技術について、特許申請、意匠登録などを行って知的財産権の保護に注力しておりますが、技術流出を防止するために特許出願を意図的に行っていないものもあります。これらの特許未取得技術については、特許未取得であるがゆえに、万一これらの技術が流出した場合には、当社グループの技術が侵害され、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
一方、当社グループでは、他社の所有する知的財産権を侵害しないよう努めておりますが、当社グループの事業分野における知的財産権の現況を完全に把握することは困難であり、当社グループが把握できていないところで、他社の所有する知的財産を侵害する可能性もあります。かかる事態により損害賠償請求を受けた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
6.競合リスク
当社グループの事業は、同業他社と技術面、価格面、納期面において競合があります。当社グループでは、製品機能向上、生産技術の開発、生産ラインの効率化を図っておりますが、今後競合が激化した場合には、当社グループ製品の優位性の低下、販売価格の下落等により、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
7.多額の設備投資に関するリスク
当社グループは生産能力増強を図るため積極的な設備投資を実施しております。
設備投資の決定は極めて重要な経営判断事項であることから、当社グループでは市場動向、競合他社動向等を熟慮しつつ、事業戦略及び当該投資の収益性等を総合的に勘案し、実施していく方針であります。しかしながら経済動向や市場動向を正確に予測することは困難であり、多額の設備投資に対して製品需要が当社グループの想定どおりに拡大しなかった場合には、減価償却費負担が収益性を圧迫し、使用設備の除却や減損が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
8.原材料、購入部品の価格変動リスク
当社グループが製造・販売している製品の主原料は、プラスチック成形材料、金属材料(銅、鉄)、めっき材料(金)であります。原油価格の上昇によるプラスチック材料の調達コストの増加、銅材や鉄材の価格上昇、金価格の上昇や為替変動により、これらの価格が上昇する可能性があります。
また、当社グループでは、機械設備の外販や内製化を行っております。これらの機械設備は、鋼材の基盤に様々な電気部品、機械部品を組み付けて作られていますが、需要の逼迫等によって、これらの電気部品、機械部品の購入価格が上昇する可能性があります。
当社グループでは、これらに対応するために、生産技術力等を中心とした技術力によって、生産効率改善及び原価低減に努めるとともに、必要に応じて販売価格への転嫁を図る場合もあります。しかしながら、これらの施策により原材料及び購入部品の価格上昇分を吸収できない場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
9.在庫品に関するリスク
当社グループの電気・電子部品事業及び自動車部品事業に係る金型・製造設備及び設備事業に係る半導体製造装置は顧客からの短納期が要求されることから、顧客より入手する仕入の内示情報等に基づき、汎用部分の見込製造を一部採用しております。ただし、顧客からの正式受注時において内示情報等との間に差異が生じる場合もあり、数量的、仕様的差異によっては余剰在庫、滞留在庫として残り、その結果、評価損、廃棄損等に繋がる可能性もあります。このように在庫品について多額の評価損等が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
10.法的規制に関するリスク
当社グループは、製造分野における特許関連法規、工場運営における環境関連法規、人事労務における労務法関連法規、財務・税務分野における会計税務関連法規その他の法的規制を受けております。
当社グループが各種の法的規制を遵守できなかった場合、又は各種の法的規制の変更や新たな法的規制の制定が当社グループの予想を超えて実施された場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
11.為替リスク
当社グループの生産及び販売は海外にも及んでおり、11カ国の他国通貨を取り扱い保有しております。国内にも外貨建ての取引があるため、為替相場の変動による影響を受けます。当社グループは、このリスクを縮小するための対策を講じておりますが、すべてのリスクを排除することは不可能であり、急激に為替が変動した場合には当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
12.特定販売先への依存リスク
当社グループ製品の販売対象顧客は広範囲にわたっておりますが、2023年12月期の連結売上高の21.3%が自動車部品事業の主要顧客である株式会社デンソー及び同一の企業集団向けとなっており、今後も取引拡大を計画しております。現状、当社グループでは同社との良好な関係を保持しているものと認識しておりますが、今後同社で取り扱う部品構成の変更や協力会社との取引方針の変更等により、当社グループの部品供給が大きく減少した場合は、当社グループの事業展開に変化が生じ当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
13.与信リスク
当社グループでは、販売先との取引開始にあたっては、訪問調査、業界情報の収集又は銀行からのヒアリング、外部調査機関調査あるいは取引の進展状況、信用度、経営成績、資産内容等の調査を実施しており、継続販売先についても一定の経営成績の確認やヒアリングにより、与信管理を行っております。
しかしながら、販売先の急激な業績悪化等により、債権が回収不能となった場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
14.当社製品需要動向に係るリスク
当社グループの取り扱うコネクタは、パソコン、スマートフォン・携帯電話、デジタル家電、AV 機器などの最終製品にて使用されております。そのため、景気変動全般の影響を受けるほか、最終製品の新モデルの発売時期や最終製品市場の成長鈍化、及びそれらに伴う取引先顧客の購買動向、部品調達動向の変化により、当社売上に悪影響が及ぶ可能性があります。今後経済環境の悪化が進んだ場合、当社グループの事業、経営成績、財政状態に悪影響が及ぶ可能性があります。
15.のれん及びその他の無形固定資産に係るリスク
当社グループは、企業買収等に伴い、のれん及びその他の無形固定資産を計上しており、定期的に計画の進捗を確認し、事業収益性のモニタリングを行っておりますが、事業の展開が計画通り進捗しない等の理由により、収益性の低下が見込まれた場合には、減損損失を認識する可能性があり、当社グループの経営成績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
16.過去の経営成績の動向
当社個別財務諸表の経営成績の推移
|
(単位:百万円) |
|
|
2019年12月期 |
2020年12月期 |
2021年12月期 |
2022年12月期 |
2023年12月期 |
|
売上高 |
44,773 |
47,889 |
56,458 |
48,506 |
48,165 |
|
営業利益又は 営業損失(△) |
△550 |
△1,179 |
2,414 |
△53 |
△2,719 |
|
経常利益又は 経常損失(△) |
△283 |
△185 |
4,859 |
2,401 |
△1,206 |
|
当期純利益又は当期純損失(△) |
△365 |
△737 |
4,109 |
1,400 |
△1,693 |
|
|
|
|
|
|
|
|
関係会社からの受取配当金 |
324 |
1,111 |
1,875 |
1,762 |
1,261 |
当社個別財務諸表の経営成績については、連結財務諸表での経営成績に比して損益の振幅が大きく、また関係会社からの受取配当金の損益に与える影響が大きいことから、経営成績の推移を分析する際に留意が必要です。
当社が製造する電気・電子部品及び自動車部品は、ノートパソコンや自動車等に組み込まれるものであることから、最終製品の需要に左右され、ひいては景気動向全般の影響を受けます。また設備事業は、半導体業界の設備投資動向等の影響を受けます。
2019年12月期に営業損失を計上した主な要因は、販売管理費の増加であります。新規製品開発に伴う研究開発費の増加によるものであります。
2020年12月期に営業損失を計上した主な要因は、売上総利益率の低下であります。電気・電子部品事業における主力製品の受注が増加したものの、自動車部品事業、設備事業が低迷したことによるものであります。
2022年12月期に営業損失を計上した主な要因は、売上総利益率の低下であります。設備事業における主力製品の受注が増加したものの、電気・電子部品事業、自動車部品事業における主力製品の受注が減少し、設備稼働率が低下したことによるものであります。
2023年12月期に営業損失を計上した主な要因は、グループ会社に対する貸倒引当金の計上及び売上総利益率の低下であります。自動車部品事業における主力製品の受注が増加したものの、電気・電子部品事業、設備事業における主力製品の受注が減少し、設備稼働率が低下したことによるものであります。
また、関係会社からの配当につきましては、関係会社が稼得した利益は、親会社である当社が関係会社側の資金繰り事情等を総合的に勘案しながら、配当として受領する方針であります。
(1) 経営成績等の状況の概要
① 経営成績の状況
当連結会計年度において世界経済は、ウクライナ情勢の長期化に伴う原材料・エネルギー価格の高止まり、欧米先進国を中心としたインフレ率の上昇とそれに伴う金融引き締めによる内需の減少、不動産問題等を抱える中国経済の低迷、中東情勢の緊迫化等により緩やかに減速しました。
わが国でも、原材料価格の上昇や為替相場における円安傾向は継続しているものの、設備投資や個人消費が持ち直しており、景気に緩やかな回復基調が見られました。
そのような状況下において、当連結会計年度の売上高は59,014百万円(前年同期比1.1%減)、営業損失759百万円(前年同期は営業利益978百万円)、経常損失555百万円(前年同期は経常利益2,120百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失1,269百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益168百万円)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、報告セグメントごとの業績をより適切に反映させるため、全社費用の配分基準の見直しを行っております。それに伴い、以下の前年同期比較については、変更後の費用配分方法に基づいた数値で比較しております。
a. 電気・電子部品事業
電気・電子部品事業は、主力製品であるコネクタやHDD関連部品が低迷し、前年同期比減収となりました。ノートパソコン向けコネクタは第1四半期を底に回復基調に転じたものの、パソコンの販売台数が前年比で減少する等、市況低迷の影響を受け、伸び悩みました。HDD関連部品は、IT企業がデータセンター向け投資を抑制したことにより、大容量HDD向け関連部品の需要が減少しました。利益につきましては、上記需要の減少と、第4四半期の在庫圧縮による原価率悪化を受け、低迷いたしました。
その結果、当事業の当連結会計年度の売上高は33,083百万円(前年同期比9.6%減)となり、営業損失は577百万円(前年同期は営業利益2,545百万円)となりました。
b. 自動車部品事業
自動車部品事業は、コロナ禍の収束と車載半導体不足の緩和に伴い、自動車メーカーの生産活動が回復したことを受け、伸長しました。エアバックやブレーキ等の安全走行系のセンサが伸長したことに加え、LEDヘッドライト向けコネクタも堅調に推移し、前年同期比増収となりました。利益につきましては、好調な自動車市場を背景に、自動車部品需要が増え、工場稼働率が向上し、利益水準を押し上げる結果となりました。
その結果、当事業の当連結会計年度の売上高は21,343百万円(前年同期比19.9%増)となり、営業損失は708百万円(前年同期は営業損失2,314百万円)となりました。
c. 設備事業
設備事業は、当社が得意とする車載用半導体やパワー半導体向け樹脂封止装置の需要は引き続き高い水準で推移したものの、前期の前半まで過去最高レベルで続いた半導体市場の伸びが後半にかけて鈍化し、その流れが今期まで続いたことから結果として前期比減収となりました。利益につきましては、市況の影響に伴う装置需要の鈍化により前期比減益となりました。
その結果、当事業の当連結会計年度の売上高は4,587百万円(前年同期比12.3%減)となり、営業利益は527百万円(前年同期比29.3%減)となりました。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して634百万円減少し、91,603百万円となりました。主な減少要因は、建設仮勘定979百万円、機械装置及び運搬具781百万円、工具、器具及び備品592百万円等であり、主な増加要因は、受取手形及び売掛金1,655百万円等であります。
負債につきましては、675百万円減少の33,215百万円となり、主な減少要因は、長期未払金1,098百万円、未払金420百万円等であり、主な増加要因は、長期借入金983百万円等であります。
純資産につきましては、剰余金の配当等による利益剰余金の減少2,011百万円等がありましたが、為替レート変動の影響による為替換算調整勘定の増加1,780百万円、退職給付に係る調整累計額の増加275百万円等により41百万円増加し、58,387百万円となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失688百万円及び減価償却費6,645百万円の計上、棚卸資産の減少1,303百万円、仕入債務の増加458百万円、前受金の増加598百万円等に対し、売上債権の増加1,804百万円等により6,868百万円の増加(前連結会計年度は9,669百万円の増加)となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の売却による収入1,301百万円等に対し、有形固定資産の取得による支出3,998百万円、無形固定資産の取得による支出86百万円等により2,781百万円の減少(前連結会計年度は6,165百万円の減少)となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入れによる収入5,200百万円等に対し、短期借入金の純減額1,080百万円、長期借入金の返済による支出4,509百万円、リース債務の返済による支出588百万円、長期未払金の返済による支出1,344百万円、配当金の支払額742百万円等により3,066百万円の減少(前連結会計年度は3,690百万円の減少)となりました。
この結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ1,313百万円増加の15,582百万円となりました。
④ 生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|
|
生産金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
電気・電子部品事業 |
33,318 |
87.6 |
|
自動車部品事業 |
22,366 |
116.1 |
|
設備事業 |
4,358 |
83.9 |
|
合計 |
60,043 |
96.1 |
(注)電気・電子部品事業及び自動車部品事業には、自社生産設備となるものが含まれております。
b. 受注実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|||
|
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
電気・電子部品事業 |
32,699 |
92.3 |
3,867 |
91.0 |
|
自動車部品事業 |
21,201 |
120.1 |
1,237 |
89.7 |
|
設備事業 |
3,317 |
69.7 |
1,946 |
60.5 |
|
合計 |
57,218 |
98.9 |
7,051 |
79.7 |
c. 販売実績
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
|
|
販売金額(百万円) |
前年同期比(%) |
|
|
電気・電子部品事業 |
33,083 |
90.4 |
|
自動車部品事業 |
21,343 |
119.9 |
|
設備事業 |
4,587 |
87.7 |
|
合計 |
59,014 |
98.9 |
(注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
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|
株式会社デンソー |
10,639 |
17.8 |
12,556 |
21.3 |
2.株式会社デンソー及び同一の企業集団に対する売上高を含めております。
3.セグメント間の取引については相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)に記載のとおりであります。
② 経営成績の分析
a. 売上高
当連結会計年度は、売上高が59,014百万円と前連結会計年度に比べて1.1%の減収となりました。第1四半期を底に需要の持ち直しの動きが見られたことや為替相場の円安影響もあり、概ね前回の予想値どおりとなりました。コロナ禍の収束と車載半導体不足の緩和に伴い、自動車メーカーの生産活動が回復したことを受け、自動車部品事業が伸長したものの、一方で電気・電子部品事業においては、主力製品であるコネクタやHDD関連部品が低迷し、設備事業においても、得意とする車載用半導体やパワー半導体向け樹脂封止装置の需要は引き続き高い水準で推移したものの、前期の前半まで過去最高レベルで続いた半導体市場の伸びが後半にかけて鈍化し、その流れが今期まで続いたこともあり、全体の売上高は微減に留まりました。
b. 売上総利益
売上総利益は17,190百万円と前連結会計年度に比べて5.0%の減益となりました。売上高の回復に伴い同じく第1四半期を底に増加傾向となりましたが、第4四半期に入り、翌期第1四半期向けの需要が見通しより下回ったことから、工場稼働率の低下に伴う稼働損(不利差異)の増加による利益の減少、加えて、足元及び今後の市場や事業環境等を勘案し、棚卸資産の圧縮(第4四半期にて約9億円の棚卸資産の減少、前年度末比で約11億円の減少)を行ったことにより、全体の売上総利益は前年から大きく減少しました。
c. 営業利益
営業損失は759百万円(前連結会計年度は営業利益978百万円)となりました。上記の要因による売上総利益の減少に伴い、輸送費等が減少した一方で、当社が重点事業と位置付ける次世代向け製品に関する研究開発費の増加や人件費を含む営業マーケティング活動の強化による費用の増加、前期子会社の取得により発生した当該法人におけるのれんの償却費等、それらの販売費及び一般管理費が増加したことが主な要因です。
d. 経常利益
経常損失は555百万円(前連結会計年度は経常利益2,120百万円)となりました。主な要因としては、債権債務の期末評価替えによる為替差損益が前年同期の為替差益1,082百万円から為替差益196百万円と大きく減少したためです。
e. 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純損失は1,269百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純利益168百万円)となりました。固定資産の売却益が506百万円発生したものの、投資有価証券の評価損を429百万円、一部低稼働の生産設備であった固定資産の減損損失を209百万円計上したためです。
③ 財政状態の分析
当社グループは、適切な流動性の維持、事業活動のための資金確保及び健全なバランスシートの維持を考慮し、体質を強化すべく財務の運営にあたっております。
当連結会計年度末の財政状態の分析については、上記「(1) 経営成績等の状況の概要 ②財政状態の状況」に記載しております。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループでは、市場の求める新製品開発を進めるとともにそれらの新製品開発を支えるための生産設備の開発並びに増強・更新投資を継続して行っております。また、研究開発や教育の総合拠点の新設にも注力しております。詳細につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
運転資金及び設備投資資金については、自己資金及び借入によって安定的に確保することを基本方針としております。なお、当連結会計年度末の借入金残高は17,266百万円(前年同期比390百万円減)となっております。
該当事項はありません。
(1)研究開発活動の方針
当社グループの研究開発活動方針は、科学技術の発展と細分化する市場のニーズに応えていくために客先志向のR&D活動を行い、競争力と新規性を有した製品開発を積極的に進めていくと共に提案型技術を展開することで、「イノベーションによる快適・安全なデジタル社会への貢献」を目指しております。
また、近年急速な勢いで世界中の懸案事項となっている「環境問題」や「省エネルギー問題」への対応のため、「気候変動対応と循環型社会への貢献」をキーワードとした新製品の開発も積極的に行っており、市場のニーズを的確に捉えると共に当社技術の優位性をアピールし、企業の社会的責任を果たしてまいります。
(2)研究開発活動の体制
当社グループの研究開発活動は、電気・電子部品事業や自動車部品事業における新製品開発と既存製品の改良改善及び生産設備を中心とした新工法の開発や製造プロセスの中で生産技術的見地から見る新しい物づくりの技術提案、更には設備事業における新製品開発と既存製品の改良改善という大きくは3つの開発グループに分けております。
第一のグループとして、電子部品関連や自動車部品関連の新製品の開発と既存製品の改良改善に取り組んでおり、顧客ニーズを的確に把握し開発テーマを絞りながら魅力ある新製品の開発に取り組んでおります。
この新製品開発を製造プロセス面からバックアップしていくのが、生産設備の開発を主たる目的としている第二グループであり、短納期製作や低コストによる金型製作技術の開発、汎用マシンと成形機との融合による新たなインサートマシンの開発等を主たるテーマとして活動しており、製造技術や生産設備といった面からのオリジナルな技術開発に注力しております。
更に設備事業における新製品開発と既存製品の改良改善を担当する第三のグループがあります。主に全自動半導体封止装置の開発を行っておりますが、使用樹脂量の削減や省電力化等、環境や省エネルギーをキーワードとして新たな製品の開発に取り組んでおります。
(3)研究開発活動の成果
当連結会計年度の研究開発費の総額は
各セグメント別の主な研究開発活動は次のとおりであります。
①電気・電子部品事業
コネクタにおいて、データセンター等のエンタープライズ市場向けサーバーやスイッチ等における高速伝送化の急速な進展に伴い、各システムで使用される部品のシグナルインテグリティ性能(伝送信号品質)向上に寄与する細線同軸コネクタや、高速伝送に最適なTwinaxケーブルを用いたコネクタ、また、アクティブ光モジュールの開発を行いました。
コネクタの生産設備関連は、生産能力に応じた各ラインナップ設備の更なる効率化を図ると共に、多品種少量生産向けの新たな設備開発に取り組みました。
HDD関連部品は、高記録密度化及び大容量化が進むHDDの需要増に応えるべく、超精密インサート成形部品の安定供給を可能とする、高効率・高性能な生産設備開発に注力しました。また、データの信頼性と長期保存に対する要求の高まりを受け、長寿命・高耐久を可能とする部品デザインや、適正な成形材料の評価技術、薄肉金型加工技術等の研究に取り組みました。
当事業に係る研究開発費は
②自動車部品事業
車載用コネクタにおいて、LEDヘッドライトのドライバーモジュールに使用されるハーネス軽量化の要求に応えるべく、カードエッジタイプのコネクタを開発しました。自動運転分野において、センシング機能の高速通信化が進展する中、機器間通信に最適な基板対基板タイプや、基板対電線タイプの高速伝送用コネクタの開発も行いました。
その他、環境に関する社会課題の解決を目的とし、電気自動車のリユースバッテリーを活かした、バッテリーマネジメントシステムの開発を行いました。
自動車部品の生産設備関連は、基板対電線接続用コネクタの多品種少量生産における、高効率の自動組立機を開発しました。
当事業に係る研究開発費は
③設備事業
半導体樹脂封止装置において、パワー半導体の封止に必要な封止装置及び金型成形技術の改良を行いました。また、封止装置の稼働データを活用し、設備の予知保全に関する制御開発と消費電力削減に向けた設備開発に取り組みました。
当事業に係る研究開発費は