文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループは、創業以来一貫して、良品廉価・顧客本位、製品をもって世に問うというヤマザキの精神を具現化すべく、今日到達しうるベストクオリティー・ベストサービスを追求することをめざし、パン、和・洋菓子、製菓類、調理パン・米飯類の製造販売事業に携わり、常に積極果敢に技術革新に取り組み、高品質な製品を全国各地に安定的に供給することを通じて社会の負託に応え、業績の向上につとめてまいりました。
また、当社グループは、西暦2000年以来、特に「食の安全・安心」を社会の要請と積極的に受けとめ、徹底した食品安全衛生管理体制の確立をはかり、さらに、食品安全衛生管理体制の上に築き上げる事業経営手法として、部門別製品施策、営業戦略、小委員会による「なぜなぜ改善」を取り上げ、積極的に部門別製品開発、技術開発に取り組み、お客様に喜ばれる製品とサービスの提供に万全を期してまいりました。
今般、当社は、21世紀の事業環境と社会の変化に対応するため、「企業経営を通じて社会の進展と文化の向上に寄与することを使命とし、自主独立の協力体制を作り、もって使命達成に邁進する」という顧客本位の精神で、潜在需要に着目しイノベーション(技術革新)によって需要を創造するという、前向き積極的なピーター・ドラッカー博士の経営理論に導かれる山崎製パン株式会社の「経営基本方針(綱領および具体方針)」を改めて高く掲げると同時に、これを補完するものとして、「ヤマザキパンの中に神のみこころにかなう会社の実現を期す」という飯島藤十郎社主の祈りに導かれ、「日々、お取引先からご注文いただいた品は、どんな試練や困難に出会うことがあっても、良品廉価・顧客本位の精神でその品を製造し、お取引先を通してお客様に提供する」という新しいヤマザキの精神に導かれ、科学的根拠の上に立った食品安全衛生管理体制の上に築き上げる科学的・合理的・効率的な事業経営手法として、「いのちの道の教え」に従ったすべての仕事を種蒔きの仕事から開始する部門別製品施策・営業戦略、小委員会による「なぜなぜ改善」を実践、実行、実証することで、新しい価値と新しい需要を創造し、社会の負託に応え社業を前進させることを21世紀のヤマザキの経営方針といたします。
事業経営の具体的遂行に当たっては、経営陣、管理職は、本物の5S・全員参加の5Sとピーター・ドラッカー博士の5つの質問を連動させる「2本立ての5S」を行うとともに、「いのちの道の教え」に従った部門別製品施策・営業戦略をピーター・ドラッカーの5つの質問と連動させ、「私たちの使命は何ですか」(What is our mission?)と問うだけでなく「私の使命は何ですか」(What is my mission? )と問い、生産部門・営業部門一体となった業務を推進するとともに、内部管理体制を充実・強化して、各部門毎の自主独立の協力体制を構築いたします。また、「良品廉価・顧客本位の精神で品質と製品、サービスをもって世に問う」というヤマザキの精神と「知恵と知識によって変化に挑戦し、新しい価値と新しい需要を創造する」という「いのちの道」を導く言葉によって日々の仕事の実践、実行、実証に励み、業績の着実な向上を期してまいります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループは持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、積極的な設備投資を継続するとともに、財務基盤の安定、収益性の改善、資本効率の向上に取り組んでまいります。具体的には、連結売上高経常利益率4%以上の達成を経営目標とするとともに、連結ROEを重要な経営指標として位置付け、7%以上の達成を経営指標として効率的な事業経営に取り組んでまいります。また、株主還元に関しましては、連結配当性向30%を目標に安定した配当を継続することを基本方針とし、今後も業績と連動した増配をめざしてまいります。
(3) 食品安全衛生管理体制の強化
当社グループは、従来から全社的組織で取り組んでおります細菌面における食品衛生管理システム、表示の適正管理システムに加え、AIB(American Institute of Baking)の「国際検査統合基準」に基づく教育指導・監査システムを活用し、異物混入防止対策を含む科学的根拠の上に立った総合的な食品安全衛生管理体制を整備し運用しております。当社グループは、一般社団法人日本パン技術研究所によるAIBフードセーフティ監査を受けるとともに、自主監査によって各工場の食品安全衛生管理体制の充実強化をはかっております。また、当社の食品衛生管理センターが要注意製品群を定め、定期的な製品の市場買付による細菌検査を通じて安全性の検証を行うとともに、当社の食品安全衛生管理本部の食品衛生管理課が専任の部署として、製品表示のチェックシステムにより原材料の成分管理やアレルゲン表示管理を含め製品表示の管理徹底をはかっております。
今後、なお一層、食品安全衛生管理体制の強化につとめてまいる所存でございます。
(4)新型コロナウイルス感染症の影響と対策
新型コロナウイルスの5類感染症への移行により経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復基調で推移しましたが、個人消費につきましては実質賃金の伸び悩みもあり力強さを欠くものとなりました。また、コンビニエンスストアやフレッシュベーカリーの小売事業におきましては、行動制限の撤廃による人流の回復やインバウンドの増加により来店客数が増加し、おにぎりやサンドイッチ、焼き立てパンなどの需要が増加しました。
このような情勢下にありまして、当社グループは、緊急事態においてパン、和菓子、洋菓子ならびに調理パン・米飯類を緊急食糧として社会に提供するという新しいヤマザキの精神に従い、製品の安定供給を確保するため、全従業員に対して検温を実施し、37.2℃以上の発熱がある者を自宅待機とし、また発熱がない場合でも新型コロナウイルス独特の自覚症状がある者も自宅待機とし、この自宅待機者数とPCR検査陽性者数を日々管理するとともに、工場・事業所内の感染防止対策として、炭酸ガス濃度測定器によって、常時職場内の換気をしながら炭酸ガス濃度を700ppm以下に保つなど、社会的使命の達成に全力を挙げて取り組んでまいります。
(5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
今後の見通しといたしましては、わが国経済は、企業収益が好調に推移し設備投資など内需が持ち直していく中で、政府の経済対策もあり、景気は緩やかに回復していくことが期待されますが、当業界におきましては、物価高の一服感はあるもののお客様の生活防衛意識により節約志向が続く中で、糖類やレーズン、包材など原材料価格の上昇が予測され、厳しい経営環境になるものと思われます。
このような状況下にありまして、当社グループは、引き続き「いのちの道」の教えに従い、すべての仕事を種蒔きの仕事から開始する営業・生産が一体となった部門別製品施策・営業戦略、小委員会による「なぜなぜ改善」を推進し、主力製品の品質向上をはかるとともに、2極化・3極化戦略によってお客様のニーズに対応した価格帯に隙のない製品対応をはかり、新しい価値の創造と新しい需要の創造に取り組んでまいります。
また、デイリーヤマザキやフレッシュベーカリーの小売事業につきましては、小売事業業績改善プロジェクトにおける具体的取組みや、戦略製品・戦略商品開発推進チームと連携した女性製品開発担当者による商品開発など、日次管理・週次管理・時間管理を推進して日々の仕事の精度向上につとめ、業績向上をめざしてまいります。
食パンは、主力の「ロイヤルブレッド」につきまして品質訴求や食べ方提案により更なる売上拡大をはかるとともに、「モーニングスター」や「スイートブレッド」などの低価格食パンやハーフサイズ食パンの取扱店数の拡大をはかってまいります。また、本年1月に品質を向上させた「ダブルソフト」につきましては、店頭での品質訴求や食べ方提案に加えて、新たに発売した「2枚入り」と併せて売場づくりを推進し、売上拡大をはかってまいります。
菓子パンは、主力製品の品質向上をはかるとともに、2極化・3極化に対応した新製品開発を推進し、売上拡大をはかってまいります。また、薄皮シリーズに新たに惣菜製品をラインアップし売場の拡大をはかるとともに、ランチパックにつきましては価格帯毎の新製品開発に取り組み、売上拡大をはかってまいります。
和菓子は、主力製品の品質向上をはかるとともに、2極化・3極化戦略を徹底し、女性製品開発担当者を中心に、チルド対応製品や和洋折衷製品など市場動向やお客様のニーズに対応した新製品開発に取り組み、売上拡大をはかってまいります。
洋菓子は、プレミアムスイーツや大きなシューシリーズなど主力製品の品質向上をはかり取扱店数の拡大をはかるとともに、「喫茶気分」シリーズなど値頃感のある製品の充実に取り組んでまいります。また、女性製品開発担当者による新製品開発を推進し、コンビニエンスストア向け製品も含め充実強化をはかってまいります。
調理パン・米飯類は、お客様のニーズに対応した製品開発を推進するとともに、売上好調なおにぎりの品質向上と品揃えの強化や、和紙バーガー、こだわりシリーズなど主力製品の取扱店数の拡大に取り組み、売上拡大をはかってまいります。
製菓・米菓・その他商品類は、グループ各社の特徴ある製品群を活用した部門別のブランド戦略を推進し売上拡大をはかってまいります。デイリーヤマザキのコンビニエンスストア事業につきましては、お客様に喜ばれるヤマザキ独自のコンビニエンスストアチェーンとして、新しい価値と新しいサービスの提供につとめ、業績回復につとめてまいります。引き続き、戦略製品・戦略商品開発推進チームと連携して魅力ある商品の開発を推進するとともに、松戸・杉並ドミナントプロジェクトにおける、デイリーヤマザキの強みであるデイリーホットの充実強化や既存店の改装によるヤマザキらしい店づくりなど、具体的取組みを各工場においても着実に推進し、デイリーヤマザキ1店1店の店舗収益の改善に取り組んでまいります。
2024年1月1日に発生した「令和6年能登半島地震」に際しましては、緊急事態においてパン、和菓子、洋菓子ならびに調理パン・米飯類を緊急食糧として社会に提供するという新しいヤマザキの精神のもと、地震発生直後より状況確認を行い、パン類の緊急食糧の供給に取り組みました。また、特定非営利活動法人ワールド・ビジョン・ジャパンおよび公益財団法人国際開発救援財団が共催・実施し、当社が協賛している「ヤマザキ『ラブ・ローフ』募金」におきまして、被災地の救援のための募金活動を決定したことを受け、当社は、当社グループ約3,500の販売店に設置している「ラブ・ローフ」募金箱を通じて募金活動を支援いたしました。このたび被災された方々に対して心からお見舞い申しあげますとともに、被災地の一日も早い復旧をお祈り申しあげます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社の取締役会は、大変早い速度で回転し変化する事業経営に対応して、その実態を素早く把握し適切に対処することを求められており、そのため生産部門、営業部門、総務・人事部門、経理部門それぞれの部門を代表する取締役が選任されており、事業遂行上積み重ねた経験をもって事業経営に当たっております。
取締役会は、法定事項及び経営上の重要事項について判断・決定しております。
業務執行の実務の検討は、各部門の統括的な代表者である役付役員を構成員とする常務会で審議し、また、常務会の下部機関のコーポレートガバナンス(企業統治)小委員会、営業生産合同(現業)小委員会、関係会社小委員会で協議検討するなど、社内外の問題課題への対応について方向付けを行い、その中の重要事項については常務会、取締役会で決議し、山崎製パン株式会社の「経営基本方針(綱領及び具体方針)」及び「21世紀のヤマザキの経営方針」に則り、「いのちの道」の教えに従って、適切な対応を期しております。
サステナビリティについても、同様な対応をしております。
当社グループは、「山崎製パングループリスク管理規程」に基づき、リスクを事業経営上または業務遂行上の対処すべき課題・問題として捉え、リスクに対処するためのあるべき姿を求めて努力を傾注しています。規程に基づき常勤取締役をはじめ経営幹部で構成するリスク管理委員会を定期的に開催し、子会社を含め発生したリスクへの対応状況および想定されるリスクへの対策などを協議・検討し実施する管理体制を整備・運用するとともに重要な事項については、取締役会に報告する体制を構築しています。
サステナビリティ関連のリスクを含む当社事業等のリスクについては、「
①環境に対する取り組み
地球規模の環境問題につきましては、当社は、気候変動の緩和に貢献するため、生産・物流それぞれにおいて省エネルギー化を推進し、CO2排出量の削減に取り組むとともに、食品産業全体の課題である食品ロス削減やプラスチック容器包装削減の取り組みについて、一般社団法人日本パン工業会と連携を図り、さらなる環境負荷低減に努めてまいります。
a 環境マネジメント
環境管理体制
当社は、環境管理活動を効果的に行うために、工場に「工場環境推進会議」を設置し、本社総務本部総務部環境対策課と連携しながら、それぞれの工場の実態に即した環境への取り組みを推進することで、継続的な環境負荷の低減を図っています。特にCO2排出量の削減、食品ロスやプラスチックの削減に工場と本社が一体となって取り組んでいます。
b 気候変動への対応
TCFD提言に基づく情報開示
当社は、金融安定理事会により設置されたTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に賛同するとともに、今後、気候変動が事業に与えるリスクと機会について検討し、TCFDの枠組みに基づいた情報開示を進めていきます。
c 循環型社会の形成、廃棄物の削減
1)循環型社会への考え方
食品産業は、大気、水、土壌、食料などの地球環境の恵みによって成り立っており、当社が製造するパンや和洋菓子は、小麦や卵、砂糖、パン酵母など、豊かな自然の恩恵を受けた原料から生まれています。資源の効率的な利用やリサイクルを進めることにより環境負荷を低減させるという循環型社会の形成は、当社にとって重要な課題と考えています。
当社では、食品副産物の活用や、容器包装の削減など、限られた資源の有効利用に取り組んでいます。日々の生産活動においては、貴重な食料資源をムダなく利用するために、食品ロスを発生させないことを第一に取り組んでいます。そのうえで、製品づくりの過程で生じた食品副産物も貴重な資源と考えています。例えば、製造過程でカットした食パンの耳などは、適正な品質管理を行うことで、菓子やパン粉などの食品への再利用や家畜飼料として有効利用しています。また、食の安全と品質を担保したうえで、可能な限り容器包装の簡素化・軽量化を進め、プラスチック資源の節約とご家庭での廃棄物の発生抑制につなげています。
2)食品ロスの削減と有効活用に向けての考え方
当社では、貴重な食料資源をムダなく利用するために、食品ロスを発生させないことを第一に取り組んでおり、製造現場での改善活動を通じ、製造過程で発生する食品ロスの削減に努めています。やむを得ず発生してしまう副産物は食品原料への利用を進め、そのうえで、食品リサイクル法に基づき飼料化を最優先に再生利用を行っています。また、地産地消製品の開発による国産食材の利用拡大や未利用農産物の有効活用にも力を入れています。さらに、科学的根拠に基づいた消費期限の延長に取り組み、販売や消費段階での食品ロスの発生抑制につなげています。
②人的資本に関する取り組み
人材面においては、日本社会における人口減少・高齢化の進展の中で、女性の活躍推進をはじめとして、多様な人材が活躍できる仕組みづくりに取り組むとともに、人的資本への投資として、中央研究所・総合研修所・飯島藤十郎社主記念LLCホール・宿泊施設からなる複合施設「山崎製パン総合クリエイションセンター」を21世紀のヤマザキの前進基地として積極的に活用し、当社グループの将来を担う人材の育成と、ヤマザキの精神の継承と醸成に力を尽くしてまいります。
a 人的資本マネジメント
人的資本および人材育成に関する考え方
当社は、「新しい価値の創造」の実現を継続し、社会に貢献し続けることにより、持続的な企業成長と中長期的な企業価値の向上を期しています。「新しい価値の創造」には、新製品開発の取り組みが重要となりますが、当社では、本社だけでなく全国各工場の製造各課がそれぞれのラインの特性や地域ニーズに合わせた新製品開発に取り組む体制づくりをしています。このシステムが有効に機能した事業経営が行われており、人的資本マネジメントの中核になるものと考えています。
全国各地の工場間や製造各課同士が、日々の業務として新製品開発を競い合い、切磋琢磨し、お客様に喜ばれる製品を提供していく取り組みの中で、そこに従事する従業員は、やりがいを持ち、仕事に喜びを見い出し、その結果として、従業員エンゲージメントが高まり、会社の業績向上につながっています。近年は、女性従業員による新製品開発を促進する取り組みを強化しており、着実に成果が現れています。
また、当社は、2016年に創業の地である千葉県市川市に、21世紀のヤマザキの前進基地とし竣工した「山崎製パン総合クリエイションセンター」を人材育成の拠点として活用しています。同センターは、中央研究所、総合研修所、飯島藤十郎社主記念LLCホールならびに宿泊施設からなる複合施設です。パン、和菓子、洋菓子それぞれの研修室を備えており、長年にわたり当社の製造現場に従事したスタッフが後進へ製造理論や技術を伝承しています。また、管理職を中心として、21世紀のヤマザキの経営手法の研修を通して、創業者飯島藤十郎社主の心であるヤマザキの精神を継承し醸成し、ヤマザキパングループの将来を担う人材の育成を図っています。
さらに、当社は、多様な人材が活躍できる職場環境づくりを推進するとともに、管理職と従業員のコミュニケーションの活性化に取り組み、人材の定着につなげています。
b 人材の多様性(ダイバーシティ)の尊重
1)多様性尊重に関する考え方
当社では、基本的人権尊重の考えに基づき、国籍や人種、思想、信条、性別、性的指向、障がいの有無、年齢などによる差別のない、従業員同士が多様な個性を認め合う職場風土の醸成に努めています。ダイバーシティの推進によりさまざまな背景、経験、価値観を持つ人材が集まることで、多様な意見交換が可能となり、均一的な組織からは生まれにくい柔軟で新しいアイデア創出の可能性を高めます。また、多様な価値観を持った人材の採用は、従業員が生き生きと働くことのできる職場づくりにつながり、優秀な人材の獲得と離職防止の効果が見込めると考えています。多様な人材が新たな価値を創造することが企業の持続的成長の源泉となると考え、すべての従業員が意欲を持って働くことのできる環境を整備していきます。
2)女性の活躍推進
当社では、性別にかかわらず個人の能力や適性に応じた適材適所の人材配置を基本としています。女性も安心して生き生きと活躍することのできる環境を整備するため、積極的な女性の採用と役職登用を推進するとともに、結婚・出産・育児というさまざまなライフイベントの中、継続して勤務することのできる両立支援制度の拡充を図り、研修の実施や積極的な広報による制度の周知に取り組んでいます。また、当社の製品には女性消費者も多く、女性目線での積極的な製品開発にも取り組んでおり、業績の向上に寄与しています。
当社は、提出日現在において、人材育成方針や社内環境整備方針に関する具体的な指標及び目標は設定しておりません。具体的な目標設定や状況の開示については、今後の課題として検討してまいります。
管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異についての実績は、「
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項については、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 食品安全衛生
近年、食品業界におきましては、原材料や製品の消費又は賞味期限管理の問題、製品の規格や農畜水産物の産地の偽装、輸入食品の安全対策等、食品の品質、安全性に関わる問題が発生しております。当社グループは、製品の安全性確保と今後発生が予見されるリスクへの予防措置を講ずる目的から、当社本社内に食品安全衛生管理本部を設置し、下部組織として食品衛生管理センター(微生物、表示業務)、食品品質管理部(異物混入防止業務)、お客様相談室を設け、更に各工場において食品衛生管理センター分室(微生物、表示業務)、食品品質管理センター分室(異物混入防止業務)を設置するとともに、工場長を委員長とする食品衛生委員会を設け、日々の管理の万全を期しております。さらに、中央検査室において、食品衛生事故の防止のための研究をいたしておりますが、社会全般にわたる品質問題等、上記の取組みの範囲を超えた事象が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
食品安全衛生へのリスクに対応するため、微生物に関する安全性確保の手段としてHACCPに基づく衛生管理を行い、JFS-B規格を取得し、当社グループの各工場において日々の細菌検査による衛生管理を検証するとともに、本社食品衛生管理センターにおいて要注意製品を定めて各工場毎に月次で市場買付による細菌検査を実施、全工場の衛生管理体制の検証を行っています。さらに、異物混入防止対策としてAIB(American Institute of Baking)の「国際検査統合基準」による指導・監査システムを導入し、関係会社を含む全工場に管理を徹底するとともに順次監査を実施しております。また、表示に関しましては、当社及びグループ各社が発売する製品について、食品衛生管理センターの表示確認決定システムにより管理を徹底しております。
(2) 原材料の調達及び価格高騰
当社グループの食品事業の主要原料は、小麦粉、砂糖、油脂等農産物の一次加工品であり、卵、レーズン、苺等の農産物も原料として多量に使用しております。これらは生産地域の地球温暖化などの影響に伴う異常気象等による収穫量の減少や消費量の急激な増加のために需給が逼迫することがあり、また、投機資金の流入によって穀物等の国際相場が攪乱されることがあります。特に、輸入原料の場合は紛争発生や感染性疾病の流行により特定地域からの輸入が停止される可能性があります。また、原油価格の上昇等により、軽油、重油等の燃料や石油製品である包装材料、容器類の価格上昇が生じる可能性があります。
当社グループでは、調達先の多様化によるリスク分散や市場原理に沿った様々な対応策を講じておりますが、突発的事情により原材料の安定的調達ができなくなった場合、又は仕入価格が高騰した場合、業績に影響を及ぼす可能性があります。
原材料の調達及び価格高騰へのリスクに対応するため、この様なリスクは常に発生する可能性があるとの認識を持ち、原材料に係る情報の積極的な収集に努めるとともに、複数社による調達、国や産地の分散化、代替原材料の検討、諸外国との経済連携協定等の活用、生産販売部門との情報の共有などにより、サプライチェーンとの信頼関係の下、コストの削減及び安定供給に努めております。
(3) 自然災害
当社グループは、生産拠点として国内外に多数の工場を有しており、地震や台風等の自然災害が発生し、重大な被害を受けた工場が操業停止となった場合、当該工場の生産分を他の複数工場の増産とグループ会社を含めた自社物流網を活用して緊急的に製品を供給し事業継続する体制を構築しておりますが、万一、当社グループの危機管理対策の想定範囲を超えた大規模な災害が発生した場合には、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
なお、地震や洪水等の自然災害時において、ライフラインが停止した状況でも直ぐに利用できるパンや米飯・調理パンは緊急食糧に適しており、多くの場合被災地の自治体から緊急食糧の供給要請があります。当社は緊急食糧の供給を含め、安定した食料供給は食品企業としての当社の社会的使命と考え、過去に発生いたしました阪神淡路大震災や東日本大震災、熊本地震などの大規模自然災害に際しましてもグループの総力を上げて対応してまいりました。
今後も自然災害に際し、直ちに本社および被災地に緊急対策本部を設置し、本社支援チームの速やかな現地派遣等により連携して早期復旧にあたる体制の強化、災害時通信網の整備、非常用発電装置の配備、情報システム2拠点化など、自然災害へ対応する事業継続体制整備へ向けて、さらに精度を上げた取り組みを推進してまいります。
(4) 取引先の経営破綻
当社グループは、各社が連携して調査機関や業界からの情報収集に基づき取引先の与信管理を徹底し、債権保全に万全を期しておりますが、当社グループの主要な得意先である広域営業の量販店、コンビニエンスストアチェーンにつきましては、取引金額が多額であることもあり、万一、経営破綻が発生し売掛債権が回収不能になった場合には、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
取引先の経営破綻のリスクに対応するため、債権管理システムを活用した入金遅延情報の早期把握や、店頭情報及び同業他社からの情報収集の強化を図り、経営破綻の兆候を発見するとともに、信用調査を定期的に実施し、支払条件の短縮及び保証金預りの交渉等の対策により、売掛債権の回収不能防止に取り組んでおります。
(5) 退職給付費用及び債務
当社グループの退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の長期期待運用収益率に基づいて算定されておりますが、前提条件が変更され数理計算差異が発生した場合や企業年金基金の運用成績が著しく悪化した場合には、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
退職給付費用及び債務のリスクに対応するため、年金資産運用の情報収集を行うとともに、年金資産運用受託機関からの詳細な情報を得て運用状況の改善に努めております。
(6) 海外事業
当社グループは、海外10ヶ国・地域において現地法人17社を有し、16ヶ所の製パン等の工場を運営するとともに、当社独自の冷凍生地技術を活用して245店のベーカリーを展開しております。海外事業のリスクとしては、次のような事業展開地域の政治、経済、社会情勢の変化等に起因する事業上の不利益要因が発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
①予期しない法的規制・制度の変更(外資規制、営業許可制度、関税・輸出入規制等)
②他社による類似商標、看板の使用等、知的財産権の侵害
③自然災害、紛争、テロの発生
④為替・金利変動
なお、為替変動のリスクについては、海外子会社の資金調達における金利負担軽減のため、親会社である当社から直接貸付を行う場合があり、為替の変動によって業績に影響を及ぼす可能性があります。
海外事業のリスクに対応するため、当該政府、金融機関、監査法人、弁護士等から情報収集を行い、予防、回避に努めております。上記のリスクが発生した場合に備え、事業の継続を念頭に対応策を早期に検討し実施する体制を構築しております。また、紛争、テロ等が発生した場合は従業員とその家族の安全確保を第一とし、状況により出向者及び家族の一時退避等の対策を実施いたします。
(7) 新型コロナウイルス感染症
新型コロナウイルスは5類感染症へ移行されておりますが、今後の経過によっては、当社グループの事業活動及び収益確保に影響を及ぼす可能性があります。
新型コロナウイルス感染症のリスクに対し、当社グループは、緊急事態においてパン、和菓子、洋菓子ならびに調理パン・米飯類を緊急食糧として社会に提供するという新しいヤマザキの精神に従い、製品の安定供給を確保するため、全従業員に対して検温を実施し、37.2℃以上の発熱がある者を自宅待機とし、また発熱がない場合でも新型コロナウイルス独特の自覚症状がある者も自宅待機とし、この自宅待機者数とPCR検査陽性者数を日々管理するとともに、工場・事業所内の感染防止対策として、炭酸ガス濃度測定器によって、常時職場内の換気をしながら炭酸ガス濃度を700ppm以下に保つなど、社会的使命の達成に全力を挙げて取り組んでおります。
(8) 情報セキュリティ
当社グループは、事業活動においてITシステムを幅広く活用しております。このため、サイバー攻撃やシステム運用上のトラブル等によって、ITシステムの停止や重要情報の漏洩・喪失が発生した場合には、事業の中断、損害賠償請求、セキュリティ対策費用の増加等により、事業及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、当社グループは、基幹系システム等の重要システムを堅牢性の高いデータセンターで管理しており、外部からのサイバー攻撃に対する多層的な防御・監視を24時間365日体制で運用しております。データセンター内のITシステムは二重化しており、非常時はバックアップシステムに切り替えることにより事業を継続可能な構成としております。また、サイバー攻撃やシステム運用上のトラブル等によって発生しうる損害賠償に対応するため「サイバー保険」に加入しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当期におけるわが国の一般経済環境は、新型コロナウイルスの5類感染症への移行により経済活動の正常化が進み、景気は緩やかな回復基調で推移しましたが、個人消費につきましては実質賃金の伸び悩みもあり力強さを欠くものとなりました。
当業界におきましては、物価高の影響によりお客様の生活防衛意識が高まり、節約志向が強まる中で販売競争が激化するとともに、主原料の小麦粉や卵、油脂などの原材料価格の上昇もあり、厳しい経営環境となりました。また、コンビニエンスストアやフレッシュベーカリーの小売事業におきましては、行動制限の撤廃による人流の回復やインバウンドの増加により来店客数が増加し、おにぎりやサンドイッチ、焼きたてパンなどの需要が増加しました。
このような情勢下にありまして、当社グループは、「いのちの道」の教えに従い、すべての仕事を種蒔きの仕事から開始する営業・生産が一体となった部門別製品施策・営業戦略、小委員会による「なぜなぜ改善」を推進し、主力製品の品質向上をはかるとともに、2極化・3極化戦略によって低価格製品や複数個入りで値頃感のある製品を充実する一方で、女性製品開発担当者による高付加価値製品の開発に取り組むなど、変化するお客様のニーズに対応した価格帯に隙のない製品対応を推進してまいりました。また、輸入小麦の政府売渡価格が、2022年10月期は緊急措置により据置きとなり、2023年4月期には激変緩和措置により上昇幅が抑制されました。これを踏まえ、当社は2023年7月1日出荷分から、一部の食パン、菓子パンの価格改定を実施しましたが、価格改定幅を抑えることができるとともに、改定と同時に2極化・3極化戦略によって、これらを下支えする製品を準備して価格帯に隙のない製品対応を推進したこともあり、業績は好調に推移しました。
また、当社は、2023年3月31日付けで、㈱神戸屋から包装パン事業の子会社㈱YKベーキングカンパニーの発行済株式全部を譲り受け、当第4四半期から当社の連結子会社といたしました。同社は、新経営体制のもとでヤマザキの技術を最大限活用した製品の品質改善や新製品開発に取り組むとともに、収益改善に取り組んでまいりました。
デイリーヤマザキやフレッシュベーカリーの小売事業につきましては、小売事業業績改善プロジェクトにおいて、日次管理・週次管理・時間管理の経営手法のもと、小売事業本部内の戦略製品・戦略商品開発推進チームと連携し、女性製品開発担当者による魅力ある商品開発を推進するなど、日々の仕事の精度向上につとめ業績回復に取り組んでまいりました。
新型コロナウイルスへの対応といたしまして、当社グループは、緊急事態においてパン、和菓子、洋菓子ならびに調理パン・米飯類を緊急食糧として社会に提供するという新しいヤマザキの精神に従い、製品の安定供給を確保するため、全従業員に対して検温を実施し、37.2℃以上の発熱がある者を自宅待機とし、また発熱がない場合でも新型コロナウイルス独特の自覚症状がある者も自宅待機とし、この自宅待機者数とPCR検査陽性者数を日々管理するとともに、工場・事業所内の感染防止対策として、炭酸ガス濃度測定器によって、常時職場内の換気をしながら炭酸ガス濃度を700ppm以下に保つなど、社会的使命の達成に全力を挙げて取り組んでまいりました。
当期の連結業績につきましては、売上高は1兆1,755億62百万円(対前期比109.2%)、営業利益は419億62百万円(対前期比190.5%)、経常利益は455億26百万円(対前期比174.2%)、親会社株主に帰属する当期純利益は301億68百万円(対前期比243.9%)となりました。山崎製パン㈱単体の菓子パンを中心に業績が好調に推移し、連結子会社の業績が改善したことに加え、㈱YKベーキングカンパニーを新規連結したことに伴う売上増や負ののれん発生益を特別利益に計上したこともあり、大幅な増収増益を達成することができました。
セグメント別の業績は次のとおりであります。
〔食品事業〕
a 食パン部門(売上高1,085億69百万円、対前連結会計年度比108.2%)
食パンは、7月にルヴァン種を活用し品質を向上させた主力の「ロイヤルブレッド」が好調に推移するとともに、「モーニングスター」や「スイートブレッド」などの低価格食パンが伸長しました。さらに、主力製品のハーフサイズ食パンの取扱店数の拡大やサンドイッチ用食パンの回復もあり、前期の売上を上回りました。
b 菓子パン部門(売上高4,333億62百万円、対前連結会計年度比114.0%)
菓子パンは、「コッペパン」や「まるごとソーセージ」などの主力菓子パンが大きく伸長するとともに、ヤマザキ菓子パンや「ドーナツステーション」などの低価格製品が伸長しました。また、1月の規格改定により入数を変更し1個当たりを充実させた薄皮シリーズが好調に推移するとともに、生クリーム入りの生地とフィリングを使用した新製品「生ドーナツ」シリーズや惣菜パンの「たっぷり満足」シリーズが売上に寄与するなど、前期の売上を大きく上回りました。
c 和菓子部門(売上高737億93百万円、対前連結会計年度比104.2%)
和菓子は、主力の串団子や饅頭、大福が堅調に推移するとともに、チルド製品の「クリームたっぷり生どら焼」や和洋折衷の新製品「やわらか生大福」が売上に寄与するなど、前期の売上を上回りました。
d 洋菓子部門(売上高1,519億18百万円、対前連結会計年度比104.8%)
洋菓子は、主力の2個入り生ケーキや大きなシューシリーズが好調に推移するとともに、「5つに切ったロールケーキ」の寄与もありスイスロールが伸長し、前期の売上を上回りました。
e 調理パン・米飯類部門(売上高1,529億62百万円、対前連結会計年度比105.7%)
調理パン・米飯類は、おにぎりやサンドイッチが好調に推移するとともに、大徳食品㈱において麺の品質向上により調理麺の売上が拡大したこともあり、前期の売上を上回りました。
f 製菓・米菓・その他商品類部門(売上高1,731億56百万円、対前連結会計年度比107.5%)
製菓・米菓・その他商品類は、㈱不二家の「ホームパイ」や㈱東ハトの「ポテコ」、ヤマザキビスケット㈱の「チップスター」が好調に推移し、前期の売上を上回りました。
以上の結果、食品事業の売上高は1兆937億62百万円(対前連結会計年度比109.1%)、営業利益は407億4百万円(対前連結会計年度比182.3%)となりました。
[食品事業 前期比較]
〔流通事業〕
デイリーヤマザキのコンビニエンスストア事業につきましては、戦略製品・戦略商品開発推進チームと連携して、「ランチパック 大盛り」シリーズやデイリーホット商品など、女性製品開発担当者による魅力ある商品の開発を推進し、お客様に喜ばれるヤマザキ独自のコンビニエンスストアチェーンをめざしました。また、松戸・杉並ドミナントプロジェクトにより、デイリーホットを中心に品質の向上と収益改善に取り組むとともに、既存店舗の改装によりヤマザキらしい店づくりを推進し、競争力の強化をはかりました。
この結果、チェーン全店売上高は前期を上回るとともに、営業総収入は直営店舗数の増加もあり増収となりました。
当期末の店舗数は、「デイリーヤマザキ」1,006店(23店減)、「ニューヤマザキデイリーストア」298店(11店減)、「ヤマザキデイリーストアー」11店(増減なし)、総店舗数1,315店(34店減)となりました。
以上の結果、流通事業の売上高は679億52百万円(対前連結会計年度比110.2%)、営業損失は17億89百万円(前連結会計年度は31億1百万円の営業損失)となりました。
[流通事業 前期比較]
〔その他事業〕
その他事業につきましては、売上高は138億47百万円(対前連結会計年度比104.9%)、営業利益は26億82百万円(対前連結会計年度比110.5%)となりました。
[その他事業 前期比較]
②財政状態の状況
当連結会計年度末の資産合計は8,020億35百万円で、前連結会計年度末に比べ440億4百万円増加しました。
当連結会計年度末の負債合計は3,559億2百万円で、前連結会計年度末に比べ57億69百万円増加しました。
当連結会計年度末の純資産合計は4,461億32百万円で、前連結会計年度末に比べ382億35百万円増加しました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は1,295億82百万円となり、前連結会計年度に対しては100億22百万円の増加となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益458億21百万円に加え、減価償却費403億18百万円などにより736億89百万円のプラスとなりました。前連結会計年度に対しては209億16百万円収入が増加しました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出などにより456億59百万円のマイナスとなり、前連結会計年度に対しては36億74百万円支出が増加しました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度において財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済、自己株式の取得、配当金の支払などにより188億34百万円のマイナスとなりましたが、前連結会計年度に対しては78億61百万円支出が減少しました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
当連結会計年度の商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
当社グループの食品事業における製品は特に鮮度が重要視されますので、取引先からの日々の注文により生産しておりますが、納入時間の関係上受注締切以前に見込数で生産を開始し、最終的に生産数量の調整を行う受注方式であり、翌日繰越受注残はありません。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
a 貸倒引当金
当社グループは、貸倒懸念債権等特定の債権について個別に回収可能性を検討し、回収不能見込額を計上しておりますが、将来、顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合は、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
b 投資有価証券の減損処理
当社グループは、投資有価証券を所有しておりますが、その価値が50%以上下落した場合及び2ヶ年以上継続して30%から50%下落している場合は、減損処理を実施しております。将来の市況悪化や投資先の業績不振等によっては、更に減損処理が必要となる可能性があります。
c 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産については、将来の課税所得の見込み及び税務計画に基づき、回収可能性を十分に検討し、回収可能な額を計上しております。なお、既に計上した繰延税金資産については、その実現可能性について毎期検討し、内容の見直しを行なっておりますが、将来の課税所得の見込みの変化やその他の要因に基づき繰延税金資産の実現可能性の評価が変更された場合、繰延税金資産の取崩又は追加計上により親会社株主に帰属する当期純利益が変動する可能性があります。
d 退職給付費用及び債務
退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準、退職率、直近の統計数値に基づいて死亡率及び年金資産の長期期待運用収益率等が含まれます。当社及び国内子会社の年金制度においては、割引率は優良社債の利回りに基づき、長期期待運用収益率については年金資産の過去の運用実績等に基づき決定しております。
実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、その影響は将来にわたって規則的に認識されるため、将来の期間において認識される費用及び計上される債務に影響を及ぼします。
当社グル-プの当連結会計年度の経営成績は、売上高は1兆1,755億62百万円(前連結会計年度比9.2%増) で、「いのちの道」の教えに従い、すべての仕事を種蒔きの仕事から開始する営業・生産が一体となった部門別製品施策・営業戦略により、主力製品の品質向上をはかるとともに、2極化・3極化戦略によって低価格帯製品や値頃感のある製品の品揃えを充実する一方で、女性製品開発担当者による高付加価値製品の開発に取り組みました。また2023年7月1日出荷分から、一部の食パン、菓子パンの価格改定を実施しましたが、価格帯に隙の無い製品対応をはかった事で、菓子パンを中心に好調に推移し、前連結会計年度を上回りました。営業利益は419億62百万円(前連結会計年度比 90.5%増)、経常利益は455億26百万円(前連結会計年度比74.2%増) で、増収に加え人件費率、販売コストのダウンもあり、営業利益、経常利益ともに増益となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益も、301億68百万円(前連結会計年度比143.9%増)で、㈱YKベーキングカンパニーを連結した事に伴う負ののれん発生益の計上もあり、前連結会計年度を大きく上回りました。
当社グループは、引き続き「いのちの道」の教えに従い、すべての仕事を種蒔きの仕事から開始する営業・生産が一体となった部門別製品施策・営業戦略、小委員会による「なぜなぜ改善」を推進し、主力製品の品質向上をはかるとともに、2極化・3極化戦略によってお客様のニーズに対応した価格帯に隙の無い製品対応をはかり、新しい価値の創造と新しい需要の創造に取り組んでまいります。
また、小売事業においては、小売事業業績改善プロジェクトにおける具体的な取り組みや、戦略製品・戦略商品開発チ-ムと連携した女性製品開発担当者による商品開発など、日次管理・週次管理・時間管理を推進して、日々の仕事の精度向上につとめ、業績の向上をめざします。
今後も当社グル-プは、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を実現するため、財政基盤の安定、収益性の改善、資本効率の向上に取り組み、連結経常利益率4%以上、連結ROE7%以上を達成すべく全力を挙げて取り組んでまいります。
a 売上高
売上高を事業の種類別に見ますと、食品事業は主力製品の品質の向上と2極化・3極化戦略によって、低価格帯製品や値頃感のある製品を充実する一方で、女性製品開発担当者による高付加価値製品の開発に取り組んだ事もあり、食パン・菓子パン部門が好調に推移しました。和菓子部門は主力の串団子や大福などが伸長し、洋菓子部門は主力の2個入生ケーキやスイスロールが伸長しました。フレッシュベーカリーの小売事業やコンビニエンスストア向け製品が主要販路の調理パン・米飯類部門も、人流の回復により伸長しました。製菓・米菓・その他商品類部門も一部の子会社で既存の主力製品が伸長した事もあり、食品事業全体では1兆937億62百万円(前連結会計年度比9.1%増) で前期を上回りました。流通事業はデイリ-ヤマザキで、ヤマザキの技術を活用した魅力ある商品の開発とヤマザキらしい店づくりに加え、直営店舗数の増加もあり、679億52百万円(前連結会計年度比10.2%増)、その他事業は138億47百万円(前連結会計年度比4.9%増) でした。
なお、売上高の詳細については、「第2 事業の状況」「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況に記載の通りです。
b 営業利益
売上総利益率は、原材料費率や光熱費等の増加もあり、32.2%で前連結会計年度を0.3%上回りました。
販売費及び一般管理費は3,370億84百万円、売上高に対する比率は28.6%で、人件費率や運搬費率等の販売コストの減少もあり、前連結会計年度を1.3%下回りました。
以上の結果、営業利益は419億62百万円(前連結会計年度比90.5%増)となりました。
セグメント別では、食品事業の営業利益は増収と人件費率の減少もあり、407億4百万円(前連結会計年度比82.3%増)、流通事業はロイヤリティ収入の増や値入率の改善、ロス率の低減等もあり、営業損失は 17億89百万円(前連結会計年度は31億1百万円の営業損失)と縮小、その他事業の営業利益は増収により26億82百万円(前連結会計年度比10.5%増)でした。
c 経常利益
営業外収益面で、外貨建貸付金に係る為替差益の減少はありましたが、経常利益は455億26百万円(前連結会計年度比74.2%増) となりました。なお、目標とする経営指標の連結売上高経常利益率4%以上に対し、当連結会計年度は3.9%でしたが、前連結会計年度に対しては1.5%上回りました。
d 親会社株主に帰属する当期純利益
㈱YKベーキングカンパニー連結に伴う負ののれんの計上もあり、税金等調整前当期純利益は458億21百万円(前連結会計年度比97.3%増) 、親会社株主に帰属する当期純利益は301億68百万円で、前連結会計年度に対し143.9%の増益となりました。当連結会計年度の1株当たり当期純利益は146円19銭で、前連結会計年度に比べ87円9銭増加しました。なお、目標とする経営指標の連結ROEの7%以上に対し、当連結会計年度は7.9%で、前連結会計年度に対しては4.4%上回りました。
③財政状態の分析
当連結会計年度末の資産合計は8,020億35百万円で、前連結会計年度末に対し440億4百万円増加しました。主な要因は、流動資産が3,147億87百万円で、売掛金の増加等により234億66百万円増加したことと、固定資産が4,872億47百万円で、有形固定資産が152億円増加し、投資有価証券が147億3百万円増加したこと等により、前連結会計年度末に対し205億37百万円増加したことによるものです。
負債は3,559億2百万円で、退職給付に係る負債の減少はありましたが、買掛金や未払金の増加等により、前連結会計年度末に対し57億69百万円増加しました。
純資産は4,461億32百万円で、自己株式の取得による減少はありましたが、利益剰余金が255億78百万円、その他有価証券評価差額金が82億73百万円それぞれ増加したこと等により、前連結会計年度末に対し382億35百万円増加しました。なお、自己資本比率は49.9%で前連結会計年度に比べ1.9%の増、1株当たり純資産は1,942円85銭で前連結会計年度に比べ199円43銭の増となりました。
当連結会計年度末の借入金残高は722億99百万円でありますが、営業活動によるキャッシュ・フローや現金及び現金同等物の残高を考慮すると、当社グループは将来必要とされる成長資金及び有利子負債の返済に対し、当面充分な流動性を確保しております。
また、当社グループは、第1に、手元流動性を極力最小限に抑える。第2に営業活動によるキャッシュ・フローは会社の維持発展に必要な設備投資に充当する。なお、今後の重要な設備投資の計画につきましては、「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画 (1)重要な設備の新設等」に記載のとおりであります。第3に余剰資金は金利負担の軽減をはかるため適宜借入金の返済に充当する。以上の3項目を目標にしてキャッシュ・フローの有効活用に努めます。株主還元につきましては、株主の皆様への安定配当を継続することを基本方針とし、連結配当性向30%を目標にしております。なお、当期の連結配当性向は17.1%であります。
⑤当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因は、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(注) 1 対価として一定額のロイヤルティを支払っております。
2 対価として一定料率のロイヤルティを支払っております。
3 デリフランス・エス・エイ社は、デリフランス・フランチャイズ・インターナショナル・エス・エイ社
からの事業譲受により、2021年10月4日付けで本件契約を承継しております。
(注) 出資額は、当社のミヨシ油脂㈱に対する出資額であります。
当社グループは、「良品廉価、顧客本位の精神で、製品と品質、サービスをもって世に問う」、「知恵と知識によって変化に挑戦し、新しい価値と新しい需要を創造する」という新しいヤマザキの精神に則り、社会の変化に対応し先取りする真に価値ある製品とサービスの提供を目指し、基礎研究、製品開発、品質の安定・向上に関する研究等に積極的に取り組んでおります。2016年に当社創業の地市川に完成した、21世紀のヤマザキの前進の基地となる総合クリエイションセンターを活用し、研究・開発・研修機能のさらなる充実・強化をはかっています。なお、当連結会計年度における当社グループの研究開発費は
セグメントごとの主な研究内容は、次のとおりであります。
(食品事業)
食品事業では、パン、和・洋菓子、調理パン・米飯類、調理麺、製菓・米菓の各部門別に、主要原材料に関する基礎的分析・研究のさらなる充実をはかり、食の安全・安心という社会的要請に科学的に対処するとともに、原料選別、配合・工程の改善研究を中心とした製品の品質向上や、多様化する市場ニーズに的確に対応した製品の開発に積極的に取り組みました。また、多くの原料が高騰するなか、製品品質を維持しつつ代替となりうる原料の検討を広範囲に進めました。
パン部門においては、主要食パン製品の風味・食感のさらなる向上を目的に、新規素材や発酵種(ルヴァン種)の有効活用、パン生地改良剤を含めた品質向上の検討を進めるとともに、ビタミン・ミネラルや食物繊維等を強化した健康志向製品の開発や焼成後冷凍製品の品質向上等の取り組みを行いました。
和菓子部門においては、餡の風味のさらなる向上のための製餡工程の見直しや蒸しパン製品の品質向上に関する研究等を進めました。
洋菓子部門では、卵の一部を代替する技術を確立するとともに、クリスマス低糖質製品の品質向上に関する取り組み等を進めました。
米飯・調理麺部門においては、チルド米飯並びにレンジ麺などの調理麺のさらなる品質向上に関する研究を、また加工食品部門では惣菜パン製品に使用する揚物類の品質向上や秋冬向け新規LLデザート製品の開発等を精力的に行いました。
製菓部門においては、個食化や健康志向等消費動向の変化に対応した製品開発を進め、米菓製品の品質向上のため原料米や揚油に関する研究等に取り組み、さらにグループ各社に対する機能性表示食品開発の技術的支援を行いました。
また、食品安全衛生に関しては、AIB(American Institute of Baking)の「国際検査統合基準」に基づく管理手法の工場への順次指導の継続実施を中心として、微生物関係食品事故防止体制の強化をはかるとともに、最新鋭分析機器の導入を積極的に進め、原材料や製品中の微量成分などの確認を行い、クレーム問題への的確かつ迅速な対応を行いました。
以上の結果、食品事業の研究開発費は
(流通事業)
コンビニエンスストア事業では、中具を1.5倍に増量した「大盛ランチパック」シリーズの充実とベストセレクションパンの単品力向上に努め、市場ニーズが高く話題性のある新製品開発を進めました。店内調理では、メディアを通じて紹介されて以降、引き続き好調に推移した「味わいタマゴサンド」につづく、季節に応じた新商品の開発、定番10品の品質向上、女性開発員が女性目線で製品化した「空飛ぶハニードーナツ」「スイートロール」「チョコの塩バターパン」などの新製品の開発を進めてまいりました。
以上の結果、流通事業の研究開発費は