当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「創造」「実行」「苦労・克服」の精神のもと、お客様へ最高の価値を提供し、「未来を創る」企業としてものづくりを通して社会の持続的な発展に貢献することを基本理念とし、その実現に向け取り組んでおります。自動車や通信分野をはじめとした技術革新、省人化ニーズの高まり、カーボンニュートラル・持続可能な開発目標(SDGs)の促進を背景に、ものづくりの現場においても、更なる高精度化、高速化、自動化はもとより、操作性の向上、電力使用量や廃棄物の削減、工程集約、DX化の推進等が求められております。これらの「進化するものづくりへの貢献」を重要な経営課題と捉え、新製品開発の促進、トータルソリューションの展開、アフターサービスの充実、DXを活用した付加価値の提供等、事業の拡大とサステナビリティの取り組みを一体で推進しております。
① 構造改革の実施
当社は2019年2月に、設立50周年を迎える2026年をターゲットとした長期経営計画「Next Stage 2026」を発表し、自動車産業の変革、IoT・AI技術の進化、5Gの普及、ものづくりの高度化をはじめ、当社を取り巻く経営環境の変化に柔軟に対応しつつ、持続的な成長を目指し、各事業において取り組みを進めてきました。
しかしながら、市況、競争環境、為替変動など急激かつ大幅な外部環境の変化に加え、中国市場の変調により、当社全体の収益性が低下しており、計画達成が困難となったことから、従前の中長期経営計画を取り下げ、ビジネスモデルの変革により収益構造及び経営体制を抜本的に改革すべく、構造改革を推し進めております。
② 構造改革の基本方針
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1 |
中国依存脱却 |
中国の2工場の生産を1工場に集約したうえで国内製造の組織再編・生産品目拡充 |
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2 |
選択と集中 |
市場動向、競合環境等を踏まえた事業・製品の再編成により収益性を改善 |
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3 |
生産・販売体制の再構築 |
円安や需要の変化に応じた生産、販売体制をグローバルで再構築 |
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4 |
バランスシート改善 |
キャッシュコンバージョンサイクルの改善、長期滞留在庫の圧縮 非効率な固定資産の圧縮等によるキャッシュ・フローの改善 |
③ 新中期経営計画(2024年12月期-2026年12月期)
「脱中国依存」「選択と集中」「生産・販売体制の再構築」「バランスシート改善」を柱とする構造改革を断行することで今後の成長に向けた経営基盤を確立し、新中期経営計画のもとで低収益体質をより早期に改革します。
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目標(2026年12月期) |
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業績 目標 |
売上高 |
907億円 |
財務 方針 |
資本効率 |
ROE 8%以上(5年平均) |
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営業利益 |
73億円 |
財務健全性 |
自己資本比率50%以上 |
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株主還元 |
DOE 2%以上※1 かつ 総還元性向※2 40%以上 |
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※1 1株当たり配当金27円以上(2023年12月期期首・期末平均の株主資本×DOE 2%から計算)
※2 当社における総還元性向の計算式:
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総還元性向 |
= |
((n年度の配当)+(n+1年度の自己株式取得額)) |
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n年度の当期純利益 |
n年度の総還元性向実績の計算式:
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n年度の総還元性向実績 |
= |
((n年度の配当)+(n年度の自己株式取得額)) |
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n年度の当期純利益 |
事業別の事業計画及び具体的な施策は以下のとおりです。
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工作機械事業 |
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2023年実績 |
2026年計画 |
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売上高 |
46,706百万円 |
61,000百万円 |
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セグメント利益 |
798百万円 |
7,500百万円 |
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工作機械事業は放電加工機の競争力を強化しつつ、収益性の改善を図ります。 ●生産体制の最適化 蘇州工場の生産を厦門工場に集約し、中国の生産規模を適正化 国内生産を抜本的に増強し、為替環境に適合したグローバル3地域生産体制へ 人件費を中心に固定費を削減し、自動化設備の導入等で生産性を高めて収益力を回復 ●ストックビジネスの強化 安定的かつ収益性の高いアフター事業(消耗品販売、保守)を強化し、機械販売からアフターまで一気通貫で顧客のニーズに対応 ●脱中国依存 新興市場(メキシコ、インド等)での販売を強化 先端技術関連の国内及び欧米への生産回帰に柔軟に対応
また、中長期的には、今後成長が期待できる金属3Dプリンタやレーザ加工機の拡大を目指します。金属3Dプリンタについては、当社の強みを活かした製品展開の加速や主戦場である欧州・米国への本格展開に加え、新エネルギー車関連でのギガキャスト金型への対応強化により他社との差別化を図り販売を拡大させます。レーザ加工機については、従来にない加工性能の提供はもとより、他社とのアライアンスも含めた事業拡大やニッチ分野における事業展開を目指します。 |
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産業機械事業 |
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2023年実績 |
2026年計画 |
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売上高 |
8,630百万円 |
11,500百万円 |
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セグメント利益 |
△478百万円 |
1,000百万円 |
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産業機械事業は生産体制・製品ラインナップ見直しによる収益構造の改善を図り、販売台数・市場シェア拡大を目指します。 ●脱中国依存と生産体制の集約 厦門工場での生産を停止し、国内生産増によりコスト削減 ●収益性の高いモデルの販売へシフト 市場ニーズを精査し付加価値のある機種ラインナップに見直し ●自動化ソリューションの提供 子会社の株式会社ソディックエフ・ティとの連携を通じ、金型から成形品まで一気通貫した製造自動化ラインを販売 ●欧州市場への参入 競争力のある医療分野について、米国から欧州市場へ対象地域を拡張 |
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食品機械事業 |
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2023年実績 |
2026年計画 |
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売上高 |
6,902百万円 |
11,000百万円 |
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セグメント利益 |
876百万円 |
1,300百万円 |
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食品機械事業は、ASEAN市場での売上拡大と事業領域の拡大により、グローバルな総合食品機械メーカーとなることを目指します。 ●海外販売拡大 ASEANにおいて製麺機や米飯製造装置の営業体制を強化することで海外売上を増加 ●既存製品の改良 省エネルギー化、生産性向上、小型化、多機能化の観点から既存製品の改良を図る ●新規開発及び受託生産 食品機械の開発や受託生産等により事業領域拡大 |
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当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
「サステナビリティ基本方針」
当社グループは、「創造」「実行」「苦労・克服」の精神をもとに、お客様へ最高の価値を提供し、「未来を創る」企業として社会の持続的な発展に貢献することを基本理念としております。
その実現に向けて「ソディック・グループ企業倫理憲章」、「企業行動基準(コンプライアンス指針)」に則り、誠実な事業活動の実践を基本に「進化するものづくりへの貢献」、「環境マネジメントへの対応」、「人材の多様性の促進」、「ガバナンスの強化」のサステナビリティを巡る課題への対応を重要な経営課題であると認識し、中長期的な企業価値向上の観点から積極的に取り組んでおります。
(1)ガバナンス
当社グループはサステナビリティ委員会を設置し、グループ全体でサステナビリティの取り組みを推進しております。本委員会は代表取締役社長を委員長とし、年4回の頻度で開催され、気候変動対応を始めとする重要議題について議論し、本委員会と各部署が連携し、PDCAサイクルを回すことで、長期的かつ計画的にサステナビリティ活動を推進しております。決定した内容は年1回以上取締役会に報告され、必要に応じてその内容について審議され、グループ全体の経営に反映されております。
(2)戦略
(a)気候変動
当社グループは、気候変動が事業に及ぼすリスクと機会について気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に基づく検討を行い、様々な対応策を講じるとともに継続的な情報開示に努めております。
(b)人的資本・多様性
当社グループは、人財こそが中長期的に企業価値を向上する重要な資本と考えており、従業員が会社と共に成長し、性別や国籍、新卒・中途等の多様性を認め合い、全従業員が活躍できる職場環境・企業文化づくりを目指しております。
グローバルな事業展開や多様な市場ニーズに対応した新規ビジネスの開発、付加価値の創造等の事業環境の変化へ対応するためには、多様な視点や価値観を尊重することが重要であり、「一体感のある人財マネジメントの推進」、「人財の多様性を重視した採用と登用の継続」、「働きやすい社内環境整備、キャリア支援」の方針のもと、社員は専門性を高め、国内外の多様な人材との交流により人脈とキャリアを形成し、さらに様々な分野で経験・技能・キャリアが異なる人材を積極的に採用し、相互に融合することが新たな価値創造の源泉となると考えております。
(3)リスク管理
当社グループは、当社事業に関するリスクを管理するため、リスク管理委員会を設置しております。気候変動に関連するリスクについても、リスク管理委員会が統括する全社的なリスク管理に統合されており、四半期に1回子会社及び各部門からリスク情報が報告され、特定されたリスクは発生可能性と影響度の2軸で評価しております。特に重要なリスクについては、対応方針や施策を検討し、取締役会へ報告・審議された後に、事業戦略へ反映されております。
(4)指標及び目標
(a)気候変動
当社グループは、気候変動によるリスクと自社の環境経営推進を評価・管理する指標に、温室効果ガス排出量(Scope1,2)を設定しており、2030年に2013年比46%削減を目標として掲げております。また、今後は、Scope3を含めた全体での温室効果ガス排出量削減への取り組みを推し進め、2050年までのカーボンニュートラルを目指してまいります。今後、目標達成のため、自社施設への太陽光発電設備の設置拡張など積極的な再生可能エネルギーの導入の推進に加えて、社会全体の脱炭素化に向けた、自社製品の環境負荷低減の性能向上への技術開発に取り組んでまいります。
(b)人的資本・多様性
当社グループは、上記「(2)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、下表の指標を用いております。
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指標 |
目標 |
実績(当連結会計年度) |
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ES(従業員満足度)スコア |
2026年までに偏差値55以上 |
40 |
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管理職に占める女性労働者の割合 |
2026年までに5% |
3.1% |
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管理職になりたい女性労働者の割合 |
2026年までに20% |
10% |
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男性労働者の育児休業取得率 |
2026年までに90%以上 |
60.9% |
<エンゲージメントについて>
当社は、2022年社長方針より、従業員一人ひとりが心身ともに健康で、更なる成長へチャレンジが続けられるよう、職場環境の改善と健康づくりを積極的に推進し、会社と従業員の健全な成長の維持がモチベーションアップにつながり、会社全体の生産性向上、企業業績の向上につながると考えております。
これらを実現するためには、現状の課題を把握する必要があります。客観的なデータを取得するため、同年より従業員満足度調査を実施しており、会社全体の状態や、従業員が「期待していること」、「求めていること」を把握しながら改善し、従業員一人ひとりも当事者として組織に向き合い、より良い組織づくりを目指しながら健康経営も実現させていきます。
また、エンゲージメント向上がもたらすメリットとして主に次の5点を挙げております。
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労働生産性の向上 |
「エンゲージメントスコア」と「労働生産性」には正の相関が見られ、スコアの上昇に伴い労働生産性も上昇すると考えている。 |
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営業利益率の向上 |
「エンゲージメントスコア」と「当期の営業利益率」にも正の相関が見られ、スコアの上昇に伴い営業利益率も上昇すると考えている。 |
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退職率の低下 |
「エンゲージメントスコア」が高い組織ほど、「退職率」は下がる傾向が見られ、また、特にミドル層の退職率低下にも寄与すると考えている。 |
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顧客満足度の向上 |
「エンゲージメントスコア」が高いと、遅刻や早退の減少、事故の減少、商品欠品の減少、顧客満足度の上昇などに効果があると考えている。 |
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株価の向上 |
「エンゲージメントスコア」の向上に伴い、営業利益やROE(自己資本利益率)も向上すると考えている。 |
全社的にエンゲージメントスコアを上げるためには、不満に繋がる「衛生要因(制度待遇等)」と満足感を与える「促進要因(組織風土等)」の両方を並行してアプローチする必要があると考え、当社では、まず2022年下期に賞与の見直しと大幅なベースアップを実施しました。「衛生要因」は継続的に実施しなければ効果が消えてしまうため、今後も収益を改善しながら持続的なベースアップも視野に入れ、2034年には総合職の平均年収1.5倍を目標といたしました。「促進要因」へのアプローチにつきましては、組織風土を変えていく仕掛け作りを2024年度中に検討・実施し、継続的にPDCAを回すことで、エンゲージメントスコアの偏差値を現在の40から2026年までに55以上にいたします。
持続的にイノベーションを起こして継続的に業績を上げるためには従業員のやりがいを高めることが大事であり当社の最重要課題と認識しております。そのため、2024年4月以降の役員報酬改定に合わせてESスコアが役員報酬に連動する仕組みを導入する予定です。
<人材育成について>
当社の基本理念である、お客様へ最高の価値を提供し、「未来を創る」企業として社会の持続的な発展に貢献するためには、人が成長できる企業となり、従業員一人ひとりの成長機会を創出する必要があると考え、当社は持続的な成長に向け、2020年に人材育成チームを結成し、「全員挑戦者」を掲げ、全社一丸となって未来を先取りし、果敢に挑戦していく人材を育成することを教育理念としながら取り組んでおります。
■主な研修体系
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研修 |
内容 |
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階層別研修 |
等級ごとに期待するキーワードを抽出し、研修の狙いや重点テーマを設定して毎年昇格者を対象中心に運用。 |
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テーマ別研修 |
階層別研修の重点テーマに入らなかったキーワードのうち、特にニーズの高いものや、会社戦略に合わせたテーマについて、Eラーニングを中心に運用。 |
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その他当社独自の施策 としての動画配信 |
ESスコアで当社の弱みとして出ている「階層間の意思疎通」や「経営陣への信頼」の期待に対する満足度を上げる施策として「経営層インタビューリレー」を収録した動画配信や、コミュニケーション活性化のヒントを収録したショート動画を配信し、結節点を強化している。 |
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自己啓発 |
福利厚生の一環で多数用意されている研修メニューから従業員主体で学びを広げるもの。 |
■階層別研修受講実績と今期目標
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研修 |
狙い |
ポイント |
受講率 |
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階層別研修 (管理職層) |
各等級レベルに応じて経営戦略を理解した上で、中規模~大規模組織をマネジメント可能な人材に育成 |
より経営目線で部門運営する際に必要となるコンテンツに重点化 |
2024年目標 |
100% |
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2023年 |
93% |
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2022年 |
87% |
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2021年 |
95% |
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階層別研修 (非管理職層) |
各等級レベルに応じて業務に必要なスキルを設定し、上位等級は次世代管理職としてマネジメントの初歩を理解した人材に育成 |
課題解決手法を中心に実践に注力できる内容とし、上位等級はインバスケットやボスマネジメント、後進指導を充実化 |
2024年目標 |
100% |
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2023年 |
89% |
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2022年 |
98% |
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2021年 |
98% |
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環境変化の激しいVUCAの世の中で、今後、管理職層は昔ながらのマネジメントスタイルではなく、メンバーに寄り添って傾聴するスタイルも必要と考え、サーバントリーダーシップ研修を実施し、非管理職層は今までのような指示待ちではなく、自ら積極的に動くことにより自身のキャリアアップに繋がるというマインドを醸成するために自律型人材を育成する研修を実施し、階層間の連帯感強化を図ります。
■女性活躍推進
当社では、多様な視点や価値観を尊重する上で女性の活躍も重要であると考えており、全女性従業員を対象としたアンケートを実施、その結果、将来管理職になりたいと考えている方が全体の10%と低い結果となりました。当社における管理職の魅力不足も大きな課題と捉えており、働きやすい社内環境を整備しながら、管理職を目指している方への教育研修だけでなく、女性従業員全体の底上げに寄与する施策として、女性ワーキンググループと人材育成チームで連携し、長期的なキャリアを想起しやすい環境づくりに取り組みます。
■当社独自の施策
ESスコアで特に弱みとして出ている「階層間の意思疎通」「経営陣の信頼」の項目については、当社独自の施策として経営層インタビューリレーを実施、2023年度は第3弾まで配信しております。主に「部門管理」、「現場課題」、「組織改革」をテーマに意見交換し、「属人化の防止」、「翻訳編集コミュニケーション」、「フィードバック文化」等、さまざまな切り口で職場改善を意識できるポイントでの議論を動画配信しました。今後もESスコアを分析し、相対的に弱みと出ている項目について重点的なアプローチを図ります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財務状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループとしては、これらのリスク発生の可能性を認識した上で発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、当社の株式に関する投資判断は、本書中の本項以外の記載内容も合わせて慎重に検討した上で行う必要があると考えております。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点はご留意ください。
なお、文中における将来の事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 事業戦略リスク
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景気変動に関するリスク |
発生可能性 |
高 |
|
影響度 |
大 |
|
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<リスクの内容> 当社グループの工作機械事業及び産業機械事業の製品受注は顧客の設備投資活動に直接結びついているため、景況に対して極めて敏感であり、自動車、電気・電子部品、半導体、航空宇宙、医療機器、その他の業界の業績、設備投資動向に大きく影響を受ける傾向があります。また、世界同時不況のような状況に陥った場合は、当社グループの業績は大きな影響を受ける可能性があります。
<当社の対応> 当社グループでは、景気変動による影響が比較的少ない食品機械事業などの事業を拡充するほか、要素技術で新たな顧客を獲得し、景気変動リスクの低減を図っております。さらに、研究開発の成果によって新しい事業を興し、リスク分散を図り安定した事業ポートフォリオの構築を図ってまいります。 また、定期保守サービスや消耗品・サプライ品の販売拡大などによるアフターサービス事業の拡大のほか、自動化や省人化に貢献できるソリューション提案の推進などを通して、製品販売の増減に影響されない安定した収益の獲得を図ります。 さらに、地道な原価低減活動や調達先の見直し等を継続するとともに、自動化・省人化などの生産技術を積極的に展開し、最先端の技術を取り入れながら、市場の変化により柔軟かつ効率的に対応できる生産体制の構築を目指しております。 |
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新規事業に関するリスク |
発生可能性 |
中 |
|
影響度 |
小 |
|
|
<リスクの内容> 当社グループは、『世の中にないものは自分たちで創る』という開発理念のもと、お客様のご要望に耳を傾け、どんな困難な技術課題にも挑戦して克服し、問題を解決しており、創業以来放電加工機や高精度マシニングセンタ、金属3Dプリンタ、独自技術のV-LINE®方式を用いた射出成形機、製麺機、無菌包装米飯製造システム、加圧加熱殺菌装置などの食品機械など様々な製品を開発してきました。技術革新及び市場のニーズへの対応や将来の持続的成長に向けて、今後も常に新製品を市場に投入する必要があります。
<当社の対応> 当社では、世界最高水準の加工精度、加工速度とお客様が求める多様な機能の拡充を目指して、日本・中国・北米の世界3極の研究開発体制を敷き、最先端技術の研究及び市場動向のマーケティングを行うほか、大学、研究所、学識経験者とも協働して、技術開発・新製品開発に取り組んでおります。2023年はレーザ加工機事業を立上げフェムト秒レーザ加工機の販売に向け開発を推し進めております。また、サステナビリティに関する取り組みとして、省エネルギー・省資源・脱プラ・フードロス削減等に貢献する環境配慮型製品の開発を積極的に推進しております。 |
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人材の確保及び育成に関するリスク |
発生可能性 |
中 |
|
影響度 |
大 |
|
|
<リスクの内容> 当社グループが今後も成長を続けていくためには、高度な専門技術を持ったエンジニアや、経営戦略やグローバルな組織運営等のマネジメント能力に優れた人材の確保、育成が重要であると考えております。また、従業員の世代交代が進む中、当社グループにて長年培ってきた高度な技術・技能を有する人材から次世代を担う若手技術者へのコア技術の伝承も非常に重要な課題だと認識しております。しかし、必要な人材を継続的に獲得し、定着させるための競争は厳しく、日本国内では少子高齢化や労働人口の減少、また中国やタイ等の海外拠点においても雇用環境が急速に変化するなど、当社が求める人材の獲得及び育成が計画通りに進まなかった場合、当社グループの将来の成長に影響を及ぼす可能性があります。
<当社の対応> 高度な専門技術を持ったエンジニアや、経営戦略やグローバルな組織運営等のマネジメント能力に優れた人材の確保・育成においては、積極的な採用活動を行い優秀な人材の獲得に努めるほか、入社後の体系的な人材育成や幹部研修、階層別研修等を通した人材育成にも注力しております。 また、当社はマテリアリティの一つとして「人材の多様性」を掲げており、多様な社員が働きがい・働きやすさを感じ活躍できる企業風土の促進を図っております。 さらに、会社の持続的成長には従業員一人ひとりの心身の健康が重要との考えのもと、2022年1月に「ソディック 健康経営宣言」を制定し健康保持・増進に向けて取り組んでおります。その一環として、従業員エンゲージメントを高めるために、従業員満足度調査を実施し、その結果を踏まえた個別課題を抽出し、具体的な改善策を実行することで、従業員のやりがい及びモチベーションの向上や優秀な人材の確保及び定着を図ってまいります。 |
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為替相場の大幅な変動によるリスク |
発生可能性 |
高 |
|
影響度 |
大 |
|
|
<リスクの内容> 当社グループにおける海外売上高の連結売上高に占める割合は約70%を占めており、それぞれの国の経済状況に大きく依存します。また、海外との取引は米ドル、ユーロ、人民元等で決済されており、為替変動によっては、業績に影響を与える場合があります。特に工作機械事業において主要製品の約半数をタイ国の現地法人が製造しているため、タイバーツにおける対円・対米ドル為替相場の大幅な高騰が発生すると製品の製造コストの増大につながり、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。
<当社の対応> 当社グループでは、従来より主要製品等の海外生産を進め、為替変動による利益面への影響は、収益と費用の相殺効果により限定的となる生産・販売体制を取っておりますが、昨今の急激な円安局面における厳しい経営環境を踏まえ蘇州工場の移転縮小、厦門工場への集約等、中長期的な為替変動への対応のため生産体制の見直しに取り組んでおります。 また、米ドル、ユーロなどの主要通貨に対しては為替予約による為替ヘッジを行うなど、為替レート変動の影響低減に向けた取り組みを推進しております。また、当社における外貨建の商流等を精査した上で、必要に応じて為替予約の適用範囲を拡大してまいります。 |
||
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海外事業におけるリスク |
発生可能性 |
中 |
|
影響度 |
大 |
|
|
<リスクの内容> 当社グループはグローバルに事業を展開しており、主要製品の大半を海外にて生産しており、海外売上高比率も約70%を占めております。特に中国市場における売上高は30%以上を占めるなど同市場への依存度は高い状況です。また、昨今の国際情勢は変動が非常に激しく、米中貿易摩擦、台湾有事懸念、ロシア・ウクライナ情勢、各国の経済安全保障法制の強化など地政学リスクが非常に高まっております。当社グループが事業活動を展開する国や地域において、予期しない法律または規制の変更、不測の政治体制または経済政策の変化、テロ・戦争・天災・感染症の流行・その他の要因による社会混乱などが発生した場合、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。 <当社の対応> 当社グループでは、国際情勢の動向や各国の法規制の改正等を注視しつつ、状況の変化に迅速に対応できる社内体制を構築し、情報の共有及び対応策を実施しております。 また、特に中国市場に対しては、当社では他社に先駆け中国へ進出し、販売網や生産工場の拡充を行ってまいりましたが、中国国内販売は中国国内生産にて賄うなど地産地消の体制を整備して、中国並びに他国の通商政策等による影響低減に加え、蘇州工場の移転に伴う厦門工場への生産の集約化等、生産体制の見直しを図っております。 その他の地域につきましては、今後シェア拡大が見込める欧米地域ではテックセンターを活用した販売体制及び顧客サポートの強化を進めます。また、成長が期待できる東南アジア地域、インド、メキシコなどの新興国でも販売を推進し、地域別売上高比率の最適化による中国市場への依存度の低減を目指してまいります。 |
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法的規制のリスク |
発生可能性 |
低 |
|
影響度 |
大 |
|
|
<リスクの内容> 当社グループの技術及び製品(以下、「製品等」という)については、外国為替及び外国貿易法第25条及び第48条により、輸出等が規制されております。万が一、製品等が懸念される国や需要者等へ違法に販売された場合、法的な制裁や社会的な信用の失墜などで業績に影響を与える可能性があります。 <当社の対応> 当社グループとしては、輸出管理室において製品等が違法に輸出されないよう常に十分な注意を払い、管理しております。また、その他の法的規制の動向に関しても情報収集を行い、社内共有等を通じて法令遵守の徹底に努めております。 |
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企業の社会的責任に関するリスク |
発生可能性 |
中 |
|
影響度 |
中 |
|
|
<リスクの内容> 当社グループは、社会の持続可能な発展のために、地球環境への配慮・労働環境の整備・人権の尊重など企業の社会的責任を重要な経営課題と認識しております。しかしながら、事業活動において、環境汚染、労働災害の発生等の労働安全衛生に係る問題、または特定の労働者への差別やハラスメント等の人権に係る問題等が生じた場合、当社グループの社会的な信用が低下し、顧客からの取引停止、または一部事業からの撤退等により、事業活動に大きな影響を及ぼす可能性があります。 <当社の対応> 当社グループでは、社会的要請の変化を踏まえ、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会を設置し、体系的にコンプライアンス、社会貢献、人材育成、品質管理、環境などサステナビリティ関連の重要なテーマに対する取り組みを推進しております。 特に、働きやすい職場づくりを実現するために働き方改革を進めております。しっかり休んでリフレッシュし、また意欲的に仕事に取り組むという好循環を生むため、有給休暇促進日を定め有給休暇の取得を推進するほか、時間外労働の削減についても業務効率化やシステムを利用した労働時間管理の厳格化、管理職研修などを実施し、徹底を図っております。また、コンプライアンスの観点においては、「ソディック・グループ企業倫理憲章」・「企業行動基準(コンプライアンス指針)」を定め、全ての役員及び従業員が当社グループを取り巻く環境と社会的責任を自覚し、人権の尊重や関係法令及び規則の順守、社会倫理に則した行動を実践しております。人権・コンプライアンス通報窓口及び社外通報窓口の設置や従業員へのハラスメント研修の実施などにより働きやすい環境づくりに取り組んでおります。 また、環境への取り組みについては、EVや車両の軽量化、脱プラ、フードロス削減など環境負荷低減に向けたものづくりにも積極的に関与することで、地球環境に配慮したものづくりを通し、サステナブルな社会に寄与する事業展開を推進しております。また、事業運営においても、専門部署にて、カーボンニュートラルや省エネルギー、CO2排出削減等、気候変動に対する取り組みを推進しております。 |
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競合環境に関するリスク |
発生可能性 |
高 |
|
影響度 |
中 |
|
|
<リスクの内容> 国内外に競合企業が存在する中で、他社の技術により当社グループの技術でカバーできる範囲を大きく超えた製品が開発された場合、当社は市場占有率を失う可能性があります。また、当社グループに関しましては、競合他社とは、技術力で差別化する戦略をとっておりますが、他社の値下げ攻勢により、当社グループ製品の販売価格も引き下げざるを得ない状況になった場合、利益を圧迫する可能性があります。
<当社の対応> 当社グループでは、競合他社に対し技術力で差別化する戦略をとっており、工作機械事業においては、NC装置やリニアモータ、セラミックスなど製品の重要な基幹部品を内製化することにより、機械の性能を最大限向上させてまいりました。また、納入後のアフターサービスの強化やデジタル技術を活用したソリューション提供等によりお客様のものづくりを一貫してサポートできる体制を展開しております。 |
||
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原材料・部品の調達に関するリスク |
発生可能性 |
高 |
|
影響度 |
大 |
|
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<リスクの内容> 機械の主要構造体である鋳物や加工タンクなどに使用されるステンレス材、消耗品等に使われる真鍮や銅等の価格の高騰が長期化した場合、当社製品の原価に大きな影響を及ぼす可能性があります。また、受注の一時的集中や天災等の影響による仕入先の部材供給能力低下などのサプライチェーンの混乱により、部材の需要量が供給量を大きく超えた場合、生産数量の不足から受注機会の損失が生じる可能性があります。なお、棚卸資産の保有期間が長期化する場合には、販売及び消費可能性が低下し、棚卸資産の廃棄や評価減等が発生するリスクがあります。
<当社の対応> 当社グループでは、調達基本方針を定めており、サプライヤー様との相互理解と信頼関係を構築した上で、品質・価格・安定性など適正な基準に基づき、最適な部品をグローバルに調達しております。安定した部材調達を目指すべく、国内外の複数の調達ルート・サプライヤー様を確保することで調達先を分散し部材の供給不足や材料費・物流費等の高騰へのリスクに対応しております。また、在庫については、定期的にチェックを行い、規則的に簿価を切り下げており、不良棚卸資産発生と長期在庫化のリスク回避に努めております。 さらに、サプライチェーン全体のリスクを把握するため、サプライヤー様の事業継続計画(BCP)策定状況を調査しており、その調査結果を踏まえた上で、当社のBCPの診断・維持・更新を行っております。 足元では、半導体をはじめとする部材の調達難については解消しつつありますが、エネルギー価格・輸送コストの上昇及び原材料等の高騰などが継続しており、グループ全体での効率的な調達体制の整備を進めております。 |
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② 財務関連リスク
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有利子負債のリスク |
発生可能性 |
低 |
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影響度 |
大 |
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<リスクの内容> 2023年12月末現在の有利子負債残高は373億28百万円となっております。事業資金の調達及び返済は、金利情勢その他の外的環境に左右されるため、金利が上昇するなどした場合には業績に影響が及ぶ可能性があります。また、当社の業績が著しく悪化した場合には、金融機関からの資金調達が困難になる可能性があります。 なお、2023年12月末現在で、現金及び預金は346億21百万円(満期1年超の定期預金45億83百万円を含まず)で、短期融資枠(コミットメントライン)80億円を設定することで十分な流動性を確保しておりますが、借入契約の一部には財務制限条項が付されており、今後、抵触等があった場合は当社グループの資金調達に影響が生じる可能性があります。
<当社の対応> 当社グループでは、事業活動に必要な資金を銀行からの借入金や売掛債権の流動化、グループ会社との資金融通など多様な手段により調達のうえ最適配分を進めております。 固定金利での長期資金調達により金利上昇リスクを低減させるほか、設備投資・投融資の優先順位見直し、適切な棚卸資産管理によるバランスシート効率化などを通じて有利子負債を管理・削減し、資金効率を高めた財務運営に取り組んでおります。 |
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固定資産に関する減損リスク |
発生可能性 |
中 |
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影響度 |
小 |
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<リスクの内容> 当社グループは、自社製品の内製化を進めてきたことから、機械装置及び運搬具、工具、器具及び備品、ソフトウエアなどの固定資産等を保有しております。これらの固定資産等について、景気変動等の影響による設備投資の抑制及び需要の減退や当該事業の収益性低下等により帳簿価額が回収できない場合、必要な減損処理を実施することになり、将来の当社グループの財政状態や業績に影響を及ぼす可能性があります。 <当社の対応> 当社グループにおいては、事業計画や予実管理を通して、継続的な業績のモニタリングを行っており、早期に減損の兆候の把握に努めております。特に減損リスクの高い事業につきましては、業績改善計画の進捗を確認し、事業部門とコーポレート部門が連携し、事業収益性の改善の可能性を検討します。 |
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工事原価見積りのリスク |
発生可能性 |
中 |
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影響度 |
中 |
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<リスクの内容> 当社の食品機械事業においては、麺製造プラントや包装米飯製造装置などの開発・製造・販売を行っておりますが、各案件の個別性が高く、かつ受注から検収までの期間が長期になる傾向があります。食品機械事業の売上の大半は、履行義務を充足するにつれて一定の期間にわたり収益を認識する収益認識基準を適用しており、具体的な工事進捗度の見積りにおいては、当連結会計年度末までに発生した工事原価が工事原価総額に占める割合を工事進捗度とするコストに基づくインプット法を採用し、その見積りに基づき、進捗部分の確実性が認められる場合に収益を認識しております。しかしながら、工事内容の変更による契約金額の変更や原材料価格の変動等によりこれらの見直しが必要になった場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。 <当社の対応> 当社は案件ごとに継続的に工事原価総額や予定工事期間の見直しの必要性を確認し、変更が必要と認められた場合には工事原価総額を即時修正する等、適切な原価管理によって工事原価総額の見積りの精度向上を図っております。 |
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③ オペレーションリスク
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情報セキュリティのリスク |
発生可能性 |
中 |
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影響度 |
大 |
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<リスクの内容> 当社グループは、事業活動を通して個人情報を入手することがあるほか、営業上・技術上の機密情報を保有しております。これらの情報に関して、サイバー攻撃、コンピューターウイルスの感染、不正アクセス、インフラ障害、情報システムの不具合などにより情報が流出した場合や重要データの破壊、改ざん、システム停止など不測の事態が生じた場合には、当社グループに対する社会的信用の低下や事業活動の中断、対策費用の発生、多額の課徴金の支払い、取引の停止などにより、当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。 <当社の対応> 当社グループでは、適切なIT技術対策や社内体制の整備、従業員への教育などにより、営業上・技術上の機密情報の厳格な管理に努めております。社内標準端末としてシンクライアント利用の徹底に加え、IT資産管理・内部情報漏えい・サイバー攻撃等への対策として、総合型のセキュリティ管理ツールを導入するなどの対策を講じております。更なるセキュリティ体制強化に向け、定期的な第三者機関による脆弱性診断等も実施してまいります。また、テレワーク実施者の増加に合わせて、引き続き情報セキュリティの強化に努めております。 |
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災害等に関するリスク |
発生可能性 |
中 |
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影響度 |
大 |
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<リスクの内容> 当社グループの工場、事業所などにおいて、大きな産業事故、地震・津波・水害等の自然災害、戦争・テロ・暴動等の人為的災害、感染症の流行など各種災害が発生した場合には、部材調達、生産活動、製品の販売活動などの遅延や中断などによって当社グループの業績に影響を与える可能性があります。 <当社の対応> 当社グループでは、被害を最小限に抑え、事業継続を確実にするため、事業継続計画(BCP)を策定し運用しております。生産拠点の分散化による災害に強い生産体制の構築、災害後の復旧活動早期化に寄与する安否確認システムの導入のほか、自然災害による経済的な損失に対しては各種保険に加入しております。 |
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(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度の当社グループを取り巻く環境は、中国の景気減速、原材料・エネルギー価格の高止まりなど世界的なインフレ、金融政策の引き締めによる景気後退の懸念や円安の長期化、ウクライナ情勢をはじめとする地政学的リスクの高まりなど先行き不透明な状況で推移しました。
このような外部環境のもと、自動化や電動化が進む自動車市場ではCASE関連向けに一定程度の需要はあるものの、半導体・電子部品向けの需要は在庫調整や設備投資を抑制する調整局面が継続し、国内・海外市場ともに低調に推移しました。このような厳しい経営環境から回復し、今後の当社の企業価値向上のためにビジネスモデルの変革が不可欠と判断し、構造改革に取り組んでおります。「中国市場依存からの脱却」、収益性の改善と向上を目的とした「選択と集中」、「生産、販売体制をグローバルで再構築」を方針として掲げ、足元では工作機械事業において蘇州工場の生産の厦門工場への集約、海外工場の生産調整に伴う人員調整、産業機械事業においては販売機種戦略の見直し、食品機械事業においては製麺機・米飯装置以外の分野に向けた新製品の開発強化等の取り組みを開始し早期の収益改善を目指します。
以上のような収益性の改善に向けた構造改革に着手したものの中華圏の景気減速の影響が大きく、当連結会計年度の業績は、売上高671億74百万円(前年同期比16.5%減)となりました。利益面におきましては、生産調整に伴う海外工場の収益性の低下に加え、インフレに伴う人件費・製造原価の高止まりなどにより、営業損失28億19百万円(前年同期は営業利益58億13百万円)、経常損失12億57百万円(前年同期は経常利益82億75百万円)となりました。
また、産業機械事業において固定資産の減損損失を10億35百万円計上したほか、業績悪化を受け繰延税金資産の取り崩しを行ったことなどにより法人税等調整額を8億36百万円計上したため、親会社株主に帰属する当期純損失46億4百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益60億21百万円)となりました。
② セグメント別の状況
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工作機械事業 |
売上高 |
46,706百万円 |
(前年同期比 |
17.3%減 |
) |
|
営業利益 |
798百万円 |
(前年同期比 |
6,248百万円減 |
) |
|
|
日本、欧米において航空宇宙関連向けの需要は回復基調であるものの、日本、中華圏、アジアにおいて自動車・半導体・電子部品向けの需要が低調であり、売上高は前年同期比で減少となりました。 セグメント利益は、海外工場において円安やインフレに伴う製造原価の高止まり、生産調整に伴う工場の収益性低下、人件費の増加等により前年同期比で大幅に減少しました。 一方で、ものづくりの高度化への要請は今後も継続するとみられ、高速・高精度加工のニーズが高まるほか、操作性向上、省エネ対応、長時間の安定加工や加工物の大型化・複雑化等も重要な機会と認識しております。高精度な加工が求められる地域と顧客を視野に、強みのある放電加工機の一層の拡販と同時に、中長期的に成長が期待できる金属3Dプリンタ、精密マシニングセンタについても、技術開発の推進や販売体制の強化により、高付加価値加工ニーズを取り込んでまいります。また、構造改革として蘇州工場から厦門工場への生産集約に加え、大型燃料電池車の燃料電池用金属セパレータ金型加工等を想定したレーザ加工機業界への参入に向け開発等を進めております。 |
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産業機械事業 |
売上高 |
8,630百万円 |
(前年同期比 |
19.0%減 |
) |
|
営業利益 |
△478百万円 |
(前年同期比 |
1,299百万円減 |
) |
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|
半導体・電子部品向けの市況軟化に伴う顧客の在庫調整や投資先送りの影響等を受け、産業機械業界全体として需要は減少しており当社が事業展開する各地域・各業界においても全体として厳しい状況となりました。以上の結果、売上高は前年同期比で減少しました。 一方で長期的には、アジア地域等において、ものづくりの高精度化が進展し、当社が得意とする超高精度の射出成形機の需要が高まることが予測されます。また、構造改革として厦門工場における射出成形機の生産を停止、国内生産機種の増強による生産効率向上等に取り組んでおります。 |
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食品機械事業 |
売上高 |
6,902百万円 |
(前年同期比 |
1.3%増 |
) |
|
営業利益 |
876百万円 |
(前年同期比 |
428百万円増 |
) |
|
|
国内外における製麺機関連設備や海外向けの無菌包装米飯製造装置等の需要が堅調に推移しており、売上高は前年同期比で増加しました。 中華圏、アジアを中心とした海外市場にて食の高品質化やインフラの整備等で生麺や米飯の需要が高まりつつあります。新設した海外営業部門において、東アジア・東南アジア・アメリカを中心に事業展開を進めてまいります。 また、製麺機と米飯製造システムの生産体制強化に向け、2023年1月より中国厦門工場内に食品機械新工場が稼働開始したほか、同年11月には加賀事業所内の食品機械新工場の完成により、新技術の開発やコストダウン等を図るなど競争力をさらに強化しております。 構造改革として今後もこれまで実績のある米飯・製麺設備はもとより、惣菜をはじめとした別分野の市場への進出も視野に入れて営業活動を展開するほか、強みであるメンテナンスサービスをより一層強化することで事業拡大を図ってまいります。 |
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その他 |
売上高 |
4,934百万円 |
(前年同期比 |
24.5%減 |
) |
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営業利益 |
△954百万円 |
(前年同期比 |
1,268百万円減 |
) |
|
|
精密コネクタなどの受託生産を行う金型成形事業、リニアモータやセラミックス部材の販売等を行う要素技術事業から構成されております。金型成形事業においては自動車関連向けの需要が低調であることに加えて、セラミックスの外販についても、半導体製造装置市場の減速が継続するなど需要が弱含んでおり、売上高は前年同期比で減少しました。 |
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③ 財政状態の状況
当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末に比べ43億66百万円減少し、1,340億66百万円となりました。主な減少要因としては、減価償却累計額の増加33億9百万円、電子記録債権の減少14億79百万円、建設仮勘定の減少14億55百万円、現金及び預金の減少14億26百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の減少10億5百万円などがあげられますが、建物及び構築物の増加40億35百万円などにより一部相殺されております。
負債は、前連結会計年度末に比べ5億2百万円減少し、569億36百万円となりました。主な減少要因としては、電子記録債務の減少17億69百万円、契約負債の減少11億51百万円、支払手形及び買掛金の減少11億26百万円、未払法人税等の減少6億61百万円などがあげられますが、長期借入金の増加30億67百万円、短期借入金の増加12億4百万円などにより一部相殺されております。
純資産は、前連結会計年度末に比べ38億64百万円減少し、771億29百万円となりました。主な減少要因としては、利益剰余金の減少80億55百万円などがあげられますが、為替換算調整勘定の増加30億10百万円、自己株式の減少7億29百万円などにより一部相殺されております。以上の結果、自己資本比率は、57.5%となりました。
④ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、以下のキャッシュ・フローの増減により、前連結会計年度末に比べ1億46百万円増加し、当連結会計年度末の残高は333億5百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、14百万円(前連結会計年度は35億43百万円の獲得)となりました。これは主に税金等調整前当期純損失24億33百万円、仕入債務の減少30億20百万円などによるものですが、減価償却費37億92百万円などで一部相殺されております。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、24億92百万円(前連結会計年度は109億57百万円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出43億2百万円などによるものですが、定期預金の払戻による収入27億5百万円などで一部相殺されております。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、14億21百万円(前連結会計年度は60億12百万円の使用)となりました。これは主に、長期借入れによる収入125億円などによるものですが、長期借入金の返済による支出89億85百万円などで一部相殺されております。
⑤ 生産、受注及び販売の状況
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (2023年1月1日~2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
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工作機械事業 |
35,250 |
69.4% |
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産業機械事業 |
8,546 |
76.8% |
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食品機械事業 |
6,015 |
94.1% |
|
報告セグメント計 |
49,812 |
72.9% |
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その他 |
7,501 |
78.1% |
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合計 |
57,314 |
73.6% |
(注)1.金額は、販売価格によって表示しており、セグメント間の内部振替前の数値によっております。
2.上記の金額には、サービス売上等の生産を伴わないものは含めておりません。
b. 受注実績
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セグメントの名称 |
受注高(百万円) |
前年同期比(%) |
受注残高(百万円) |
前年同期比(%) |
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工作機械事業 |
31,568 |
75.4 |
8,218 |
77.1 |
|
産業機械事業 |
6,443 |
75.1 |
2,169 |
85.8 |
|
食品機械事業 |
4,652 |
51.7 |
4,972 |
79.7 |
|
合計 |
42,664 |
71.7 |
15,360 |
79.1 |
(注)上記の金額には、サービス・消耗品等の受注は含まれておりません。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
当連結会計年度(百万円) (2023年1月1日~2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
工作機械事業 |
46,754 |
82.4 |
|
産業機械事業 |
8,686 |
79.9 |
|
食品機械事業 |
6,902 |
101.3 |
|
報告セグメント計 |
62,343 |
83.8 |
|
その他 |
6,287 |
72.0 |
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計 |
68,630 |
82.6 |
|
調整額 |
△1,456 |
- |
|
合計 |
67,174 |
83.5 |
(注)金額にはセグメント間の内部売上高又は振替高を含めております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来の事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1.連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
売上高につきましては、主に中華圏の低迷により工作機械、産業機械の販売台数が大幅に減少し、前期と比較して16.5%減少の671億74百万円となりました。
利益面につきましては、海外工場での生産調整に伴う収益性低下のほか、原材料・エネルギー価格の高騰、人件費の増加等によるコスト増が継続し、営業損失28億19百万円(前年同期は営業利益58億13百万円)となりました。また、構造改革に伴う一定の費用に加え、産業機械事業における固定資産の減損損失(約10億円)及び業績悪化を受けた繰延税金資産の取崩しによる法人税等調整額の計上(約8億円)により、親会社株主に帰属する当期純損失46億4百万円(前年同期は親会社株主に帰属する当期純利益60億21百万円)となりました。
b. 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c. 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況は、「4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ④ キャッシュ・フローの状況」に詳細は記載しておりますが、営業活動によるキャッシュ・フローで14百万円の資金を使用し、設備投資など投資活動によるキャッシュ・フローで24億92百万円の支出となり、借入金の返済など財務活動によるキャッシュ・フローで14億21百万円の資金の獲得となりました。
当社グループの所要資金は、主に運転資金、設備投資などに対応するものであります。これらを自己資金、金融機関からの短期・長期借入金や社債(無利息の転換社債型新株予約権付社債についても対象としております。)により調達しており、運転資金の効率的な調達を行うため、複数の金融機関とコミットメント契約を締結しております。
なお、当連結会計年度末における有利子負債残高(短期借入金、1年内返済予定の長期借入金、1年内償還予定の社債、その他の流動負債に含まれるリース債務、社債、長期借入金、その他の固定負債に含まれるリース債務の合計)は373億28百万円であります。
d. 目標とする経営指標
当社の目標とする経営指標及び当該目標に対する当連結会計年度の達成度合は、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。
当連結会計年度において、新たに締結した重要な契約は次のとおりであります。
シンジケートローンの概要
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(1) |
融資枠設定金額 |
25億円 |
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(2) |
借入人 |
株式会社ソディックエフ・ティ |
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(3) |
変更契約日 |
2023年12月14日 |
|
(4) |
契約満了日 |
2025年12月19日 |
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(5) |
借入形態 |
コミットメントライン |
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(6) |
資金使途 |
運転資金 |
|
(7) |
アレンジャー |
株式会社横浜銀行 |
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(8) |
エージェント |
株式会社横浜銀行 |
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(9) |
貸付人 |
株式会社横浜銀行 株式会社北國銀行 株式会社宮崎銀行 |
研究開発活動の拠点として、横浜本社技術研修センター研究開発棟に研究開発部門を置き、中国上海、米国カリフォルニア州シリコンバレーに研究開発子会社を開設しております。この世界3極体制のもと、技術研修センターを軸に、機械構造設計開発、放電加工機用電源の開発、放電加工機及びマシニングセンタなどの性能向上の研究を行っております。さらに中国上海、カリフォルニア州シリコンバレーなどの地域性を利用し、各種ソフトウエア開発、CNC装置開発、モーションコントローラ開発などの工作機械の基礎技術となる研究開発を実施しております。
なお、当連結会計年度の研究開発費総額は
当連結会計年度における主な研究開発の成果は、以下のとおりであります。
・新世代のリニアモータ駆動高速・高性能大型形彫り放電加工機「AL100G」(工作機械事業)
長年培われたリニアモータ制御技術と最先端放電制御技術及びAI(人工知能)機能、IoTプラットフォームなどを融合、新開発の各種放電制御・回路の採用で従来機(AG100L)より最大45%加工時間短縮を実現したほか、電源ユニットの最適化により80Aフルパワー加工時に消費電力30%低減を達成いたしました。
・新世代リニアモータ駆動搭載大型・高精度・難加工用途向けフェムト秒レーザ加工機「LSP5070」(工作機械事業)
長年培われたリニアモータ制御技術と最先端のフェムト秒レーザ技術及びAI(人工知能)機能、IoTプラットフォームなどを融合、汎用性/高速性を追求し大型材料の加工に対応いたしました。大型FCV(燃料電池車)の燃料電池用金属セパレータ金型の加工向けをターゲットとしており、従来多く使われているプレス金型鋼SKD11の10倍以上の耐久性を持つ超硬度粉末高速度工具鋼製の金型加工に対応する精度及び速度を実現しました。
・竪型ロータリ式射出成形機「VR Gシリーズ」の小型機種「VR03G/VR20G/VR40G」(産業機械事業)
射出成形機の新製品「VR Gシリーズ」は、従来の「VR Eシリーズ」のV-LINE®による正確な充填と安定した可塑化、ハイブリッド直圧型締による正確で均一な型締力をそのまま継承するとともに、新たに国際安全規格ISO20430(JIS B 6711)に準拠しております。
・V-LINE®高応答射出モデル射出成形機「LP_EH4シリーズ」(産業機械事業)
安定した原材料の可塑化と精密計量による充填で、正確かつ再現性のある精密・安定成形を実現する自社開発のV-LINEを搭載。高応答を誇るLDDV(リニア・ダイレクト・ダブルモーター・バルブ)を射出制御バルブに採用し、低慣性のプランジャと組み合わせることで、業界最高クラスの射出加速度15Gを達成しました。
・可動式のCIPノズルを設置し洗浄力を強化した「CIP洗浄強化型自動茹麺装置」(食品機械事業)
茹槽部分のCIP洗浄能力の向上を図るべく、麺を茹でる際の溶質物付着度が高い茹槽移載部に、可動式のCIPノズルを設置することで洗浄力を強化したものです。従来、固定式だったCIPノズルを可動式に改良いたしました。ノズルの移行を可能にすることで従来の定置洗浄に比べ洗浄範囲が拡大し、洗浄性を大幅に向上させました。側面方向と上下方向に可動式のCIPノズルを搭載しており、シリンダーが収縮しながら茹槽移載部全体をくまなく洗浄することにより、人手作業による後洗浄の負担を軽減しました。