文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社片倉工業㈱は、1873年の創業以来、国内最大手のシルクメーカーとして「カタクラシルク」のブランドを世界に広めると同時に、わが国近代産業の発展に寄与してまいりました。また、長い歴史の中で培われてきた信頼と有形無形の財産の有効活用により事業の多角化を推進し、カタクラグループとして広く社会に貢献してまいりました。
当社は、2023年に創業150周年を迎えたことを契機に、変化の激しい時代の中で、今後の10年、20年先の未来に向けて、私たちが大切にすべきことを改めて明確化し、役員・全従業員の羅針盤とすること、そして、ステークホルダーの皆様と共有化を図るべく、新たに企業理念を刷新しました。当社グループが目指すべき方向性を「ミッション」、ミッションを実現するために、役員・全従業員が大切にすべき考え方を「わたしたちの価値観」として設定いたしました。
さらに、「ミッション」と「わたしたちの価値観」を、役員・全従業員が正しく運用できるよう、「行動指針」も制定しております。当社の企業理念である「ミッション」、「わたしたちの価値観」、「行動指針」を活用し、企業価値向上に努めて参ります。企業理念の全体像は、当社ホームページで開示しております。
URL:https://www.katakura.co.jp/company/philosophy/index.html
(2) 対処すべき課題
今後のわが国経済は、パンデミック後の社会経済活動の正常化に伴い雇用・所得環境が改善する中で緩やかな回復が続くことが期待されますが、世界的な金融引き締めや中国経済の減速、中東やロシア・ウクライナ等の地政学リスクの高まりにより、引き続き不透明な状況が続くものと思われます。
これらの環境変化に伴う物価上昇や為替変動によるコスト増等により、事業環境が一層厳しさを増す中、当社グループは、さらなる構造改革により事業の安定化、採算性の改善に向けた取り組みを強化してまいります。また、並行して既存事業における成長分野の伸長や、新しい事業の柱の創出に向けて積極的に経営資源を振り向け、企業価値の向上を目指してまいります。
当社グループは、本年、企業理念の見直しを行いました。新たに「昨日よりもっと、なくてはならない存在へ。」というミッションを掲げ、お客様、地域、社会から愛され、信頼される企業であり続けることを目指し、事業活動に取り組んでまいります。
また、サステナビリティ委員会の活動を通じて安全・安心な商品・サービスの提供に努め、持続可能な社会の構築に貢献するとともに、事業に係る様々なリスクについては、リスク統括委員会を通じてガバナンスの強化に努めてまいります。
さらに、当社では段階的に人材活性化のための各種施策の導入を進めております。人材を競争力の源泉と捉え、年齢・性別・経歴にとらわれず、個々の能力・専門性・人格を重視した採用を行い、その育成に注力することで持続的な成長を目指してまいります。
主要な事業の対処すべき課題は次のとおりです。
(不動産事業)
不動産事業については、中核不動産であるさいたま新都心社有地の中長期的な価値向上を目指し、コクーンシティのテナント入替や環境整備等に継続的に取り組むとともに、街の成長・発展を踏まえ、今後の開発計画を検討してまいります。その他地方不動産については、経年による老朽化等、物件ごとのライフサイクルを踏まえ、適切な維持管理に努めることで収益物件としての価値の持続を図ります。また、構造改革の結果生じた不動産については、建築費高騰や需給変化の状況を見極め、最適な活用を検討してまいります。
(医薬品事業)
医薬品事業については、毎年薬価改定をはじめとする医療費抑制政策等から、近年非常に厳しい事業環境に直面しております。当社では、2023年度に希望退職を実施するなど、各種固定費削減施策を進めてまいりましたが、収益構造の強化に向けて、構造改革の継続が必要であると考えております。また、将来の収益獲得のために、希少疾病医薬品を含む新薬パイプラインの強化に向けた高効率な研究開発体制の構築と上市後の価値最大化に向けた各種取り組みを進めてまいります。加えて、これら新薬の上市迄の期間を支える後発品の開発・発売に注力いたします。
(機械関連事業)
消防自動車事業については、車載用半導体不足に伴うシャシ入庫遅延の影響が未だ解消に至らず、繰越生産が継続している状況です。先行・見込み生産を行うほか、仕様の集約化・標準化を進めることで効率化を図るとともに、高単価製品の販売、及び営業体制を強化することで、収益性向上に向けた取り組みを進めてまいります。
(繊維事業)
機能性繊維事業については、素材特性を生かした用途開発を進めるほか、海外市場も含めた新規顧客の獲得を行い、更なる収益力の拡大を目指してまいります。
実用衣料事業については、機能性製品の開発及び営業活動の強化に加え、組織統合による共通機能の集約化を進め、一層の収益性改善に取り組んでまいります。
当社グループは、「昨日よりもっと、なくてはならない存在へ。」というミッションを掲げ、お客様、地域、社会から、愛され、信頼される企業であり続けることを目指し、事業活動に取り組んでおります。私たちは、法令や社会規範の順守はもちろん、人権の尊重、気候変動への対応を含む環境への配慮や地域社会との共生を目指し、施設の整備や生活基盤の充実などに取組んでいます。安全・安心な商品・サービスの提供に努め、取引先との公正かつ適正な取引を通じて相互に企業価値向上を目指し、持続可能な社会の構築に貢献してまいります。また、職場においては、多様性の重視、従業員が働きやすい安心・安全な環境の実現に努めてまいります。
①ガバナンス
持続可能な社会の構築に向けて、サステナビリティ施策の効果的な推進を目指し、2023年10月に社長を委員長とする「サステナビリティ委員会」を設置しました。
本委員会は、サステナビリティに関する当社グループの方針の立案、共通課題の検討、推進状況のモニタリングを行います。また、これらの活動を取締役会に報告し、そのフィードバックを通じて活動の実効性を高めていきます。
①戦略
当社は、企業価値のさらなる向上を目指し、2019 年から段階的に人材活性化のための各種施策を導入し、継続的に実施しています。規律を重んじつつも多様性を認め合う組織を目指し、年齢・性別・経歴にとらわれず、個々の能力・専門性・人格を重視した採用を行い、人材は競争力の源泉であるとの考えのもと、育成に注力しています。
具体的には、階層別研修、管理職研修、内部統制研修等を通じて、個人の成長機会と意欲の創出に努めるだけでなく、部署間の積極的な連携や人材の流動性を高めることで、各人のキャリア構築を支援しています。なお、内部統制研修については、ガバナンス体制の強化を目的として、グループ全社を対象に定期的に開催しています。
そして、従業員のマインド面や柔軟な働き方をサポートするため、若手社員向けのメンター制度や全社員向けのコミュニケーション支援ツールの導入、スライド勤務制度・テレワーク制度(サテライトオフィスの新設)・業務集中スペースの整備・時間単位の有給休暇制度を導入しています。また、男女ともに育児休業が取得できる環境整備に努めています。連続休暇制度や有給取得奨励制度は、積極的な利用を促し、心身のリフレッシュとワークライフバランスの維持を支援しています。
(注)上記取り組みについては、提出会社のものを記載しております。
②指標及び目標
当社は、上記①戦略において記載しました、人材の多様性の確保と人材の育成、ならびに社内環境整備に関する方針に基づき、以下の指標と目標を設定し、これらに取り組んでまいります。
イ.女性社員の採用割合
新卒採用・中途採用を含む女性社員の採用割合は、現在53%(直近3年間の平均)です。
採用において性別にとらわれない考え方を重視しておりますので、今後も継続して男女の採用割合50%を目安とすることを目標とします。
ロ.男性社員の育児休業取得率
現在100%の取得率を達成しており、この水準を維持することを目指します。
ハ.女性社員の職場復帰率
現在、出産後の育児休業を取得した女性社員の職場復帰率は100%です。この率を継続して確保します(ただし、育児以外の理由による自己都合退職はこの計算から除外します)。
ニ.女性管理職の比率
現在、管理職に占める女性の比率は12.5%です。
2030年までにこの比率を30%以上に引き上げることを目指します。
(注)本項目は、各連結子会社の業容や規模、人事制度の違いから一律の記載が困難であるため、提出会社の記載としております。
当社は性別等に関わらず、優秀な人材を積極的に採用するとともに、すべての社員に平等な評価及び管理職への登用機会を設けるという考え方のもと、社内環境整備に努めております。これらの目標を達成するために、当社は継続的な取組と改善を行ってまいります。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から記載しております。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
また、以下の記載事項は、当社株式への投資に関するリスクの全てを網羅したものではありません。
(1) 自然災害、人的災害
当社グループは、国内に生産工場やショッピングセンターなどの事業所を配置し、海外にも協力工場を持っております。これらの施設は、地震、台風、洪水、火災、停電、感染症の世界的流行(パンデミック)などの自然災害や、テロ、放火、犯罪などの人為的災害により被害を受ける可能性があります。これらの災害によって従業員が被災し、または当社グループが保有、管理、運営する不動産の価値が低下し、生産活動や営業活動に支障が出た場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 市場動向・競争激化等外部環境の変化
当社グループは、グループ各社における市場動向の把握及び競合他社の状況の理解に努めております。しかし、同業他社の新規参入や既存事業との価格競争の激化、政治・社会情勢の変化による市場シェアの急速な減少、政府の規制変更による製品開発や販売、サービス提供への影響などが生じる場合、これらの事象は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 金融市況の影響
当社グループは、市場性の高い株式を保有しております。しかし、株式市場が下落し、保有している株式の価値が大幅に減少した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、為替予約を通じて為替レートの変動リスクを管理しておりますが、為替変動が予想を超えた場合、同様に当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、将来の大規模な不動産開発や新規事業への投資資金を調達する際に、金利が大幅に上昇すれば、支払うべき金利が大きく増加し、これも当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。当社グループの退職給付制度は、主に確定給付型制度を採用しており、長期金利の変動や株式市場の下落は、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 人材の確保・育成、労務
当社グループは、企業価値のさらなる向上を目指し、優秀な人材の確保と育成を重要な課題と考えております。個々の能力、専門性、及び人格を重視した採用を行い、階層別研修や管理職研修を通じて、将来の会社を担う人材の育成に力を入れております。しかし、想定を超える退職者が出た場合や、事業展開に必要な人材の確保と育成が順調に進まない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、適正な労務管理を法令に基づいて実施し、労務関連リスクの低減に努めておりますが、労務関連のコンプライアンス違反(雇用問題、ハラスメント、人権侵害など)が発生した場合、訴訟の発生や会社イメージの低下を招き、これも同様に当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 投資・新規事業展開、事業再編
当社グループは、さらなる成長を目指し、不動産開発や新たな工場・設備への投資を進めております。しかし、景気動向の悪化、需要の減少、建築費の上昇などにより投資の収益性が低下し、予定した収益を得られない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、既存事業とのシナジー効果や事業計画を慎重に分析した上で、将来の業績向上に寄与すると判断した際にはM&Aを実施しております。しかし、市場や競争環境の急激な変化により期待したシナジー効果が得られず、予期せぬ偶発債務が発生したり、計画通りに事業が展開できない場合、減損損失が生じるなど、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、経営の効率化や競争力の強化のために不採算事業の構造改革や事業再構築を進めた場合、その過程で費用が増加することや、一時的な損失が発生することもあり、これらも当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 不動産事業および固定資産
当社グループの不動産事業では、景気動向などにより大型テナントが退店し、その後の建物利用が困難となる場合、多額の解体費用が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。特に、ショッピングセンター事業では、特定の取引先が複数のショッピングセンターで核テナントとして出店しているため、その取引先が退店する事態に至った場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、当社グループが所有する固定資産に環境問題や土壌汚染が判明した場合、追加の費用が発生すること、開発スケジュールの変更が必要となること、減損が生じることなどがあり、これらも当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 医薬品事業
医薬品の開発には多額な研究開発費用と長い期間が必要とされますが、開発過程で期待された効果が証明されない場合や、重篤な副作用が発生したなどの理由で開発を中止する必要が生じることがあり、その結果、製品の上市や事業の成功には不確実性が伴います。さらに、医薬品事業は医療政策の影響を受けるほか、薬事規制の下で運営されております。医療費の抑制策や医薬品の開発、製造、販売に関する規制が強化された場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 製品の品質・開発
機械関連事業などにおける製品は、独自の厳しい規格に基づき製造を行っておりますが、製造物責任賠償につながる製品の欠陥が発生した場合、また、予期せぬ事態により製造スケジュールが遅延した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) サプライチェーン
当社グループが製造する製品の原材料および製品は、基本的に多数の供給元から調達しておりますが、一部の特殊な材料については、供給源が限られており、特定の供給元に依存しております。これらの供給元が操業停止やサプライチェーンの中断など、予期せぬ事態に見舞われた場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、為替レートの変動、原材料の価格高騰、エネルギーコストの上昇などによるコスト増加が、安定した経営コストを維持できない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 内部統制・コンプライアンス
当社グループでは、コンプライアンスの強化、及び財務報告に係る内部統制を含めた整備を進めております。しかし、従業員による不正行為があった場合や、当社グループが適時に信頼できる財務報告を作成できない場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 情報セキュリティ
当社グループは、個人情報を含む情報資産の漏洩防止策を講じるとともに、情報システムの管理を徹底することで情報セキュリティの維持・向上に努めております。しかし、業務上の人為的ミスや災害、日々高度化するサイバー攻撃などにより、システムの障害やデータの改ざん、情報漏洩などの被害が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 知的財産
当社グループは、知的財産権の第三者からの侵害について継続的に注意を払っております。しかし、第三者が当社グループの技術を利用して当社グループ製品の市場ないしは関連する市場において知的財産権が侵害を受けた場合、また、当社グループの事業活動が他社製品の知的財産に抵触した場合、その結果次第では、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度(以下「当期」という。)におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症の収束に伴い社会経済活動の正常化が進む中、企業収益の改善や個人消費に持ち直しの動きがみられ、加えて雇用や所得環境の改善を背景に緩やかな景気回復の基調で推移しました。一方で、欧米各国のインフレ抑制目的の金融引き締めによる海外景気の下振れ懸念やロシア・ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化など地政学リスクの高まりなどもあり、依然としてわが国の景気の先行きは不透明な状況にあります。
このような環境のなか、当社グループの業況は、次のとおりとなりました。
当期の売上高は、前期に比べ56億98百万円増収の399億72百万円(前期比16.6%増)、営業利益は前期に比べ24億33百万円増益の38億3百万円(同177.7%増)となり、経常利益は50億68百万円(同96.3%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、30億45百万円(同8.1%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
<売上高の内訳>
イ. 不動産事業
不動産事業については、中核不動産であるコクーンシティ(さいたま新都心駅前社有地)において、テナント入替や環境整備等に取り組み、集客魅力、施設鮮度の維持向上に努めてまいりました。また、その他の物件では、物件ごとのライフサイクルを踏まえた維持管理を行い、収益物件としての価値の持続を図ってまいりました。
この結果、不動産事業の売上高は108億33百万円(前期比4.0%増)、営業利益は39億85百万円(同1.0%増)となりました。
ロ. 医薬品事業
医薬品事業では、毎年薬価改定に加え、ジェネリック医薬品における品質・安定供給に関する問題の発生等もあり、事業環境の厳しさが増しております。これらの環境変化に適応するために、人員体制の適正化等の固定費削減施策を実施するとともに希少疾病用医薬品の開発に取り組み、収益構造の再構築に努めてまいりました。
この結果、医薬品事業の売上高は130億59百万円(同28.9%増)、営業利益は2億2百万円(前期は19億40百万円の損失)となりました。
ハ. 機械関連事業
機械関連事業の消防自動車事業では、トラック業界における車載用半導体不足や法規制に伴うモデルチェンジ等がシャシ調達に影響を及ぼしているため、シャシの確保に努めるとともに、引き続き仕様の集約や生産性向上に取り組むことで更なる採算性の改善に努めてまいりました。
この結果、機械関連事業の売上高は59億72百万円(前期比15.1%増)、営業損益は83百万円の損失(前期は2億75百万円の損失)となりました。
ニ. 繊維事業
繊維事業の機能性繊維では、耐熱性繊維の用途開発・販路拡大に努めたほか、水溶性繊維では需要増の見込める自動車内装用途等への販売を強化してまいりました。また、実用衣料では、高付加価値商品の拡充による収益力の強化に加え、当社衣料品事業を連結子会社へ事業譲渡するなど組織統合による共通機能の集約化により一層の効率化を図ってまいりました。
この結果、繊維事業の売上高は74億81百万円(前期比6.2%増)、営業利益は7億6百万円(同59.3%増)となりました。
ホ. その他
その他の区分は、ビル管理サービス、ITサービス、印刷紙器の製造・販売及び訪花昆虫の販売等により構成しております。
その他の売上高は26億25百万円(同75.4%増)、営業利益は1億44百万円(同3.5%減)となりました。
当期末の総資産額は、前期末に比べ14億96百万円増加の1,396億11百万円(前期末比1.1%増)となりました。
当期末における負債総額は、前期末に比べ33億92百万円減少の502億46百万円(同6.3%減)となりました。
当期末における純資産額は、前期末に比べ48億89百万円増加の893億65百万円(同5.8%増)となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当期末における連結ベースの「現金及び現金同等物」(以下「資金」という。)は、108億37百万円となり、前期末に比べ3億75百万円の増加(前期末比3.6%増)となりました。
イ. 営業活動によるキャッシュ・フロー
営業活動の結果得られた資金は、35億76百万円(前期は7億12百万円の支出)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益(45億63百万円)、非資金項目である減価償却費(26億59百万円)があったものの、棚卸資産の増加額(14億98百万円)、法人税等の支払額(15億18百万円)があったことによるものであります。
ロ. 投資活動によるキャッシュ・フロー
投資活動の結果得られた資金は、6億6百万円(前期は36億23百万円の収入)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出(10億41百万円)があったものの、定期預金の純減少額(11億円)、投資有価証券の売却による収入(9億82百万円)があったことによるものであります。
ハ. 財務活動によるキャッシュ・フロー
財務活動の結果使用した資金は、40億62百万円(前期は32億62百万円の支出)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出(24億95百万円)、配当金の支払額(5億32百万円)があったことによるものであります。
当期における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 金額は、販売価格ベースで表示しております。
当社グループは、「機械関連事業」及び「その他」の一部を除き、原則として受注生産ではなく見込生産であります。
なお、受注生産を行っている「機械関連事業」及び「その他」の当期の受注高及び当期末の受注残高は、 次のとおりであります。
ハ. 販売実績
当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当期末現在において判断したものであります。
a. 経営成績の状況
当期における経営成績の概要については、「第2事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッ
シュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照ください。連結損
益計算書の主要項目ごとの前期との主な増減要因は次のとおりであります。
イ. 売上高
当期の売上高は、前期に比べ56億98百万円増収の399億72百万円(前期比16.6%増)となりました。
(不動産事業)
不動産事業は、当社運営のショッピングセンター「コクーンシティ」におけるテナントからの賃料収入の増加により増収となりました。
(医薬品事業)
医薬品事業は、前期の自社販売体制への商流切り替えのための一時的な販売減からの回復により増収となりました。
(機械関連事業)
機械関連事業は、消防自動車事業でシャシの入庫遅れにより繰り越した案件や大型車の売上が寄与したことにより増収となりました。
(繊維事業)
繊維事業は、耐熱性繊維等の機能性繊維及び実用衣料の肌着が堅調に推移したことにより増収となりました。
(その他)
当期より連結子会社化した東近紙工株式会社及び株式会社FPGテクノロジー(2023年5月8日付で株式会社カタクラ・クロステクノロジーに商号変更)の寄与により増収となりました。
ロ. 売上原価、販売費及び一般管理費、営業利益
売上原価は、前期に比べ32億36百万円増加の246億1百万円(同15.1%増)となりました。売上原価率は前期に比べ0.8ポイント低下して61.5%となりました。
売上総利益は、増収に加え売上原価率も低下したため、前期に比べ24億61百万円増益の153億71百万円(同19.1%増)となりました。
販売費及び一般管理費は、前期に比べ28百万円増加の115億67百万円(同0.2%増)となりました。
なお、売上高販管費率は、前期に比べ4.7ポイント低下し、28.9%となりました。
以上の結果、営業利益は、前期に比べ24億33百万円増益の38億3百万円(同177.7%増)となりました。
営業利益の増益は、不動産事業の当社運営のショッピングセンター「コクーンシティ」におけるテナントからの賃料収入の増加、医薬品事業における前期の自社販売体制への商流切り替えのための一時的な販売減からの回復、機械関連事業における消防自動車事業でシャシの入庫遅れにより繰り越した案件や大型車の売上が寄与したこと及び繊維事業における耐熱性繊維等の機能性繊維や実用衣料の肌着が堅調に推移したことによる増収によるものであります。
ハ. 営業外収益(費用)、経常利益
営業外収益(費用)は、前期・当期とも純額で収益となり、当期は受取配当金の増加があったこと等により、前期に比べ53百万円増益の12億65百万円(同4.4%増)となりました。
以上の結果、経常利益は、営業利益の増益に加え営業外損益が純額で増益となったことにより前期に比べ24億86百万円増益の50億68百万円(同96.3%増)となりました。
ニ. 特別利益(損失)、税金等調整前当期純利益
特別利益(損失)は、当期、純額で5億5百万円の損失計上(前期は11億99百万円の利益)となりました。当期は、投資有価証券の売却があったものの、割増退職金及び減損損失の計上により、前期に比べ純額で17億4百万円減益となりました。
以上の結果、税金等調整前当期純利益は、前期に比べ7億82百万円増益の45億63百万円(前期比20.7%増)となりました。
ホ. 法人税等、非支配株主に帰属する当期純利益、親会社株主に帰属する当期純利益
法人税、住民税及び事業税と法人税等調整額を合計した税金費用は、前期に比べ97百万円増加の13億31百万円(同7.9%増)となりました。
なお、税金等調整前当期純利益に対する負担率は29.2%となり、前期に比べ3.4ポイント低下しました。
非支配株主に帰属する当期純利益は、主に子会社であるトーアエイヨー㈱が増益となったため、前期に比べ4億56百万円増加の1億86百万円の利益(前期は2億70百万円の損失)となりました。
以上の結果、親会社株主に帰属する当期純利益は、前期に比べ2億28百万円増益の30億45百万円(前期比8.1%増)となりました。
b. 財政状態の状況
イ. 資産の部
流動資産は、前期末に比べ7億71百万円増加の571億51百万円(前期末比1.4%増)となりました。増減の主要な項目は、現金及び預金、商品及び製品、仕掛品であり、現金及び預金は7億24百万円減少し、商品及び製品、仕掛品はそれぞれ5億64百万円、7億87百万円増加しました。
固定資産は、前期末に比べ7億24百万円増加の824億59百万円(同0.9%増)となりました。増減の主要な項目は、建物及び構築物、投資有価証券、退職給付に係る資産であり、建物及び構築物は12億67百万円減少し、投資有価証券、退職給付に係る資産はそれぞれ12億48百万円、8億2百万円増加しました。
上記により総資産額は、前期末に比べ14億96百万円増加の1,396億11百万円(同1.1%増)となりました。
ロ. 負債の部
流動負債は、前期末に比べ13億15百万円減少の177億26百万円(同6.9%減)となりました。増減の主要な項目は、支払手形及び買掛金、短期借入金であり、それぞれ5億43百万円、3億12百万円減少しました。
固定負債は、前期末に比べ20億77百万円減少の325億19百万円(同6.0%減)となりました。増減の主要な項目は、長期借入金、繰延税金負債であり、長期借入金は22億66百万円減少し、繰延税金負債は6億8百万円増加しました。
上記により負債総額は、前期末に比べ33億92百万円減少の502億46百万円(同6.3%減)となりました。
ハ. 純資産の部
純資産は、前期末に比べ48億89百万円増加の893億65百万円(同5.8%増)となりました。増減の主要な項目は、利益剰余金、その他有価証券評価差額金であり、それぞれ29億13百万円、15億29百万円増加しました。
また、自己資本比率は前期末に比べ2.9ポイント上昇し、53.5%となりました。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
当期のキャッシュ・フローの分析については、「第2事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 経営成績に重要な影響を与える要因
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「第2事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであります。
c. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの資金需要の主なものは、不動産事業における商業施設等の運営費用や医薬品事業、機械関連事業、繊維事業における製品製造のための原材料等の購入、製造費、販売費等の運転資金に加え、設備投資や研究開発活動費、社有地における開発やM&A等による事業拡大の戦略的投資資金であります。
これらの資金需要につきましては、営業活動によるキャッシュ・フローのほか、金融機関からの借入による資金調達を行っております。
運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入金を基本とし、運転資金の効率的な調達を行うため、金融機関と当座貸越契約及び貸出コミットメントライン契約を締結しております。
また、当社及び連結子会社においてグループ・ファイナンス制度を導入し、資金効率の向上と金融収支の改善に努めております。
開発資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入金を基本としております。
また、キャッシュ・フロー関連指標の推移は以下のとおりです。
(キャッシュ・フロー関連指標の推移)
(注) 1.各指標の算出方法は次のとおりであります。
(1) 自己資本比率:自己資本/総資産
(2) 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
(3) キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
(4) インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により計算しております。
3.株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。
4.キャッシュ・フローは、営業キャッシュ・フローを利用しております。
5.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象
としております。
6.利払いについては、連結キャッシュ・フロー計算書の利息の支払額を使用しております。
7.2022年12月期のキャッシュ・フロー対有利子負債比率及びインタレスト・カバレッジ・レシオは、
営業キャッシュ・フローがマイナスのため記載しておりません。
③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、経営者は、会計方針の選択・適用、期末日における資産・負債及び会計期間における収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計上の見積りは、「第5経理の状況 1連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
該当事項はありません。
当社グループでは、医薬品事業、機械関連事業及び繊維事業の各事業領域で、新しい製・商品の開発、既存製・商品の品質の向上、新しい技術の発見等を目的とした研究開発活動を行っております。
セグメントにおける主な研究開発活動は、次のとおりであります。
(1) 医薬品事業
医薬品事業を営むトーアエイヨー㈱では、循環器領域及びその周辺領域に資源を集中させ、新薬のみならず、後発品を含めた付加価値製剤の開発、他社とのライセンス提携、共同開発や製品導入等を積極的に展開しております。
研究開発の状況につきましては、2023年8月に頻脈性不整脈・狭心症治療剤『ベプリジル塩酸塩錠50mg「TE」・100mg「TE」』の製造販売承認を取得しました。
また、希少疾病用医薬品の指定を受けました「CNT-01(中性脂肪蓄積心筋血管症治療薬)」は、国内第Ⅱb/Ⅲ
相臨床試験を実施しております。
海外におきましては、ビソノ®テープ(経皮吸収型・β1遮断剤)の中国での第Ⅲ相臨床試験を実施しております。
当事業に係る研究開発費は、
(2) 機械関連事業
消防自動車事業を営む日本機械工業㈱では、大型車の市場ニーズにマッチした仕様へのモデルチェンジの検討、及び既存製品の事業性と機能性の向上に関する研究開発を進めてまいります。
当事業に係る研究開発費は、
(3) 繊維事業
繊維事業では、機能性繊維で㈱ニチビが、実用衣料でオグランジャパン㈱が、それぞれ研究開発活動を行っております。
機能性繊維では、アルミナ長繊維の付加価値向上や機能性向上に繋がる開発に取り組んでおり、また、アルミナ長繊維に続く新たな高性能無機繊維の研究開発を進め、多様なニーズに対応できるよう取り組んでおります。
実用衣料では、着用者の視点に立ち、高機能・高感度・高付加価値を追求した機能性インナー(アクティブシニア向け、フェムテック等)の開発に取り組んでおります。
当事業に係る研究開発費は、
これらの結果、当連結会計年度の研究開発費は、