第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営の基本方針

当社グループは1951年の㈱NJS創設以来、上下水道を中心とした水と環境のコンサルタントビジネスを展開してきました。パーパスは「健全な水と環境を次世代に引き継ぐ」であり、水と環境のサービスを通じて豊かで安全な社会を創造することをミッションとしています。

また、経済のグローバル化・デジタル化に対して「水と環境のConsulting & Software」を掲げて、ソフトウェアや関連システムの開発を推進しています。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、2024年2月に24-26中期経営計画を公表し、当社グループの業績目標を、2026年度に売上高250.0億円、営業利益25.0億円、親会社株主に帰属する当期純利益17.0億円としています。

 

(3) 経営環境及び中長期的な会社の経営戦略

今日の上下水道事業は、人口減少やインフラ老朽化などの事業の持続に関する問題と同時に気候変動や災害激化などの地球環境の保全と適応に関する問題に直面しています。こうした事業環境の変化に対応するとともに健全なインフラ機能と地域の安全を確保していく必要があります。

事業課題は、こうした社会課題の対応とともに事業の持続可能性を向上することであり、地域社会との連携や民間リソースの活用を推進することです。そしてこれを推進する事業手法としてPPPが着目されています。政府は水分野のPPPを促進するスキームとしてウォーターPPPを打ち出しました。今後、上下水道におけるPPPが普及し、水分野のオペレーション市場が急拡大する見込みです。

こうした事業環境の変化を受けて、オペレーション分野に積極的に参入しビジネスの拡大と成長を図る「オペレーションカンパニーを目指す成長戦略」を策定しました。

 

「オペレーションカンパニーを目指す成長戦略」

コンサルタントからオペレーションカンパニーに成長することにより、オペレーションビジネスだけでなく、コンサルティングを含むビジネス全体の強化と拡大を実現します。

①ビジネスの拡大

オペレーションの取り組みを通じて、コンサルティング、ソフトウェア、インスペクションのビジネス強化と拡大を図る。

②ソリューションの強化

責任とリスクが増大するオペレーションの実務を通じて、ソリューション(課題解決能力)の強化を図る。

③イノベーションの促進

オペレーションに必要な課題解決、サービスの向上、効率化に焦点をあてたイノベーションを促進する。

④人的資本強化

幅広い分野の専門人材、マネジメント人材を確保するほか、社員の意識改革と能力開発を進める。

⑤ビジネスパートナー

同業種、異業種、地域企業、NPO、大学・研究機関など幅広い分野で協働と共創を進める。

 

なお、「オペレーションカンパニーを目指す成長戦略」の詳細については、当社ウェブサイト及び統合報告書をご参照下さい。(https://www.njs.co.jp/ir/strategy.html)

 

 

(4) 対処すべき課題 

NJSパーパス「健全な水と環境を次世代に引き継ぐ」のもとに、地域における水と環境の課題に積極的に取り組み、企業価値の向上を実現してまいります。

① インフラの老朽化への対応

インフラの健全性維持を目的として、インフラの点検・調査、異常の早期発見、予防保全の実現、改築更新の最適化に取り組みます。

② 自然災害の激化への対応

災害に強いまちづくりを推進するため、インフラの強靭化、雨水対策情報等の活用、被災施設の早期復旧、グリーンインフラの整備に取り組みます。

③ 活力ある地域の創出

持続可能な地域の形成を目的として、業務オペレーション事業、官民連携事業の推進、地域の資源・エネルギー活用事業を推進します。

④ 脱炭素・循環型社会の構築

温室効果ガスの排出削減と循環型社会の構築に向けて、省エネ・創エネ・再エネの推進、既存ストック・資源の活用、脱炭素マテリアルの開発に取り組みます。

⑤ 世界における安全な水と衛生の確保

進行する世界の水不足と環境悪化に対応して、上下水道インフラの整備、インフラの調査とリハビリ、現地企業との連携、現地人材の育成を推進します。

⑥ 人的資本の強化

事業の最重要基盤として人的資本を位置づけ、人材確保、人材育成、人材の成長支援に関する取り組みを強化してまいります。

⑦ ガバナンスの強化

健全で透明性の高い経営と事業価値の向上を目的として、経営情報の発信強化とステークホルダーとの対話を促進します。事業領域の拡大と関係会社の増加に対応して、グループの一体性と経営の効率性を高めてまいります。

 

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

当社グループの事業活動の基本方針は、上下水道サービスの安定供給を支え、次世代に継承していくことです。 施設の老朽化や大雨等の災害激化、脱炭素化等、上下水道事業の課題は山積しています。当事業においてクリティカルな問題は人的資本の強化と地域との連携です。当社は、環境・社会・ガバナンスに対し、人・コミュニティの軸を加え、「ESG+2経営」でサステナビリティ課題に取り組んでいます。

 

(1)サステナビリティに関するガバナンスおよびリスク管理

① ガバナンス及びリスク管理

サステナビリティの課題への取り組みを推進するため、社内にコーポレート・サステナビリティ委員会を設置し情報の集約、取り組み課題の策定及び事業のモニタリングを行っています。コーポレート・サステナビリティ委員会は常勤の取締役と関係部門の責任者により構成されており、委員会で協議した重要事項は取締役会に報告され議論しています。

また、コーポレート・サステナビリティ委員会において、気候変動に関するリスクについて事業単位で評価し管理しています。評価結果のうち重要と判断された内容は取締役会に報告し、取締役会で審議しています。

【コーポレート・サステナビリティ推進体制】


 

② マテリアリティの特定

当社グループは事業環境を分析し持続可能性を高め企業価値の向上を目指すため、自社の企業価値と関係が深い重要課題(マテリアリティ)を設定しました。マテリアリティの設定は、①事業環境の分析、②キーワードの抽出と分類、③テーマ別のキーワードの整理、④テーマのポジショニングの設定、⑤マテリアリティの設定、⑥目標(KPI)の設定のステップで行っています。当社グループの具体的なマテリアリティの詳細は次のとおりです。

 


 

③ 指標及び目標

当社グループはマテリアリティに併せて目標とする指標を設定しています。具体的な指標は以下の通りです。

テーマ

マテリアリティ

目  標

健全な水と環境

健全な水と環境により持続可能な社会をつくる

上下水道業務売上高 330億円 (2030年)

災害対策業務売上高 50億円 (2030年)

上下水道PPA事業・雨水対策業務の推進

地域との協創

安全で活力ある地域を地域とともにつくる

運営関連業務売上高 60億円 (2030年)

オペレーション事業拠点 50箇所 (2030年)

地域創生事業への積極的な参画

イノベーション

社会価値を創造するイノベーションを推進する

研究開発投資額 15億円 (2030年)

研究開発費の対売上高比率 4.5% (2030年)

特許等知的財産権出願数 100件 (2030年累計)

プロアクティブ

主体的に思考し行動するプロアクティブ集団の形成

プロポーザル等提案件数の拡大

論文・研究発表・委員会活動の充実

年間一人当たりCPD(単体) 50 ポイント

ダイバーシティ

ウェルビーイングを高め多様な人材を育成する

連結従業員数 1,600名 (2030年)

人材育成投資額(単体) 7億円 (2030年)

社員エンゲージメント指数  12~13ポイント

ガバナンス

コーポレートガバナンスにより社会的信用を高める

内部統制システム(内部監査・公益通報等)の確実な運用

コンプライアンス研修受講率100%

各種マネジメントシステムの継続的見直し

 

 

(2)気候変動に対する取り組み

当社グループでは、気候変動に関連したマテリアリティとして「健全な水と環境により持続可能な社会をつくる」を特定しています。カーボンニュートラルの実現へ向けて、炭素マネジメント、地域マネジメント、雨水マネジメントの各事業で気候変動対策に取り組んでいます。

 

① 戦略

当社グループは水と環境のソリューションパートナーとして気候変動リスクが各事業活動に影響を与えうる「リスク」と「機会」について、次のように分析し対応します。

 

[気候変動に対するリスクと機会]

リスク

機会

脱炭素関連の技術やサービスの開発の遅れによる競争力の低下

気候変動に伴う自然災害の激化に対応した災害対策業務の拡大

・再生可能エネルギー導入、脱炭素化計画業務等での競合他社に対する劣後

・雨水管理関連業務のコンサルティング業務拡大

・点検調査において、効率やエネルギー消費で優位なツールの出現

 

・ソフトウェアにおける気候変動データ管理機能の競合他社に対する劣後

施設の脱炭素化促進による新たなコンサルティング業務の需要拡大

・気候変動に伴う災害に対応した技術およびサービスやソフトウェア開発の遅れ

・脱炭素化の促進によるコンサルティング業務拡大

・施設の省エネや創エネに関する調査・設計業務拡大

人材育成の遅れや適切な事業パートナーとの連携不足による競争力の低下

 

・エネルギー管理や脱炭素技術の開発に関する人材育成の遅れ

インスペクション、オペレーション業務の脱炭素化に関する需要拡大

・行政や異業種(プラント、ロボティクス、DX関連等)との連携不足

・低炭素化に向けた点検調査サービスやツールの需要拡大

当社の温室効果ガス排出削減の取り組み不足に基づく受注機会の減少

・運転管理の効率化、スマートメーター導入、脱炭素化支援の需要拡大

・温室効果ガス排出削減の取り組み不足による顧客からの発注制限

 

・入札等評価点の低下による受注減少

 

 

 

② 指標及び目標

当社グループは、「再エネ100宣言 RE Action」に参加し、事業活動における電力使用量を2030年までに全て再生可能エネルギーに転換することを宣言しています。再生可能エネルギーへの転換を通じて2050年のカーボンニュートラル達成にコミットしていきます。

 

(3)人的資本・ダイバーシティ

当社グループでは、「主体的に思考し行動するプロアクティブ集団の形成」と「ウェルビーイングを高め多様な人材を育成する」をマテリアリティとして特定しています。オペレーションカンパニーの実現には大幅な人的資本の拡充が必要になります。このため、ダイバーシティ、プロアクティブ、働き方改革、人事制度改革を推進します。

 

① 人的資本戦略

a. ダイバーシティ

オペレーションカンパニーの実現に向けて幅広い分野の専門人材の確保と育成を推進する。

b. プロアクティブ

発注仕様や顧客の指示に基づいて仕事をする思考から、自ら主体的に思考し行動する仕事のやり方に転換する。

c. 働き方改革

 多様な人材が各自の能力をいかして働けるように、心理的安全性の確保と場所と時間にとらわれない働き方を実 現する。

d. 人事制度改革

事業環境の変化、社員ニーズ対応、働き方改革の推進に向けて、人事制度改革を実施する。

 

② 人材育成

建設から維持管理の時代への転換、事業課題の多様化に対応し、業務領域の拡大を図っていくためには、継続的なスキル習得が欠かせません。当社グループでは、新入社員からエキスパートまで、幅広いニーズに対応した研修を実施しています。

テクニカルスキルとしては、各分野の技術研修、トラブル事例研究、また、新任管理職研修、OJTトレーナー研修など、マネジメントに関する研修にも力を入れています。各分野の技術士などの資格取得をサポートする勉強会のほか、研究発表会などへの参加・発表も推奨しています。

 

【キャリアアップに対応した研修制度】


 

③ 指標及び目標

人材の多様性の確保を含む人材育成に関する方針について、次の指標を用いています。当該目標に関する目標及び実績は、次の通りです。

指標

実績(2023年度)

目標(年度)

男性育休取得率

100.0%

100.0%(2024年度~)

女性管理職割合

3.0%

7.0%(2030年度) 

 

 

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

① 官公庁への依存度について

当社グループの国内業務の売上高は大部分が官公庁等(国土交通省他省庁、公団、都道府県、市町村等)向けであり、民間会社からの受注はあるものの、この大半も官公庁発注案件です。したがって、当社グループの業績は国及び地方公共団体の整備計画、財政政策等に基づく公共投資動向の影響を受ける可能性があります。

② 業績の季節変動について

当社グループの売上高は、官公庁等からの受注によるものが大半を占め、その納期に対応して官公庁等の年度末が含まれる第2四半期連結累計期間(1月~6月)に売上計上が集中するため、連結会計年度の前半6ヶ月間の売上高と後半6ヶ月間の売上高の間に著しい相違があり、業績に季節的変動があります。

③ 入札制度について

当社グループの売上高は、官公庁等からの受注によるものが大半を占め、各発注者の定めに従い、競争入札方式によるものが大きな割合を占めています。この入札条件や入札制度そのものに予期せぬ変更が生じた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 成果品やサービスの品質について

当社グループの業務は、契約に定める仕様を充足する成果品やサービスを顧客に提供する業務が大半を占めています。当社グループでは顧客第一主義を掲げ、顧客とのコミュニケ―ションを密にし品質の確保・向上に努めていますが、予期せぬ対応費用が発生した場合や、当社グループの成果品やサービスに起因して賠償責任を負った場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 為替変動について

当社グループは海外に拠点を設置しグローバルに事業を展開しており、外国為替相場の変動は外貨建て取引の円貨換算及び外貨建て資産・負債の円貨換算に伴って当社グループの業績や財務状況に影響を与える可能性があります。

⑥ 海外での事業活動について

当社グループは世界各国で事業活動を行っていますが、当社グループが事業拠点を置く国や地域において、戦争・テロ・暴動等による政情の不安定化、法制度の予期せぬ変更など事業環境に著しい変化が生じた場合、当社グループの業績や財政状況に影響を与える可能性があります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりです。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当期における世界経済は、ウクライナ危機が長期化する一方で中東情勢の緊張の高まり、物価上昇に対応した世界的な金融引き締めと中国景気の低迷等、先行き不透明な状況で推移しました。国内では、雇用・所得環境が改善し景気は緩やかな回復基調にありましたが、能登半島地震の影響が心配されます。

上下水道事業については、ナショナルミニマムの時代から新たな社会課題や地域のニーズに対応して価値創出する時代に入っています。人口減少やインフラ老朽化など事業の持続に関する問題と同時に気候変動や災害激化などの社会課題に対応していくことが求められています。また、能登半島地震では一刻も早い上下水道サービスの回復が求められるとともに復興まちづくりに基づくインフラ再整備が必要になっています。

こうしたインフラが生み出す社会価値に焦点を置き、サービスとパフォーマンスの向上を図る時代となり、そこに民間リソースを活用する動きが強まっています。昨年6月、政府は水分野の官民連携事業を促進するスキームとして、ウォーターPPPを打ち出しました。民間企業にとっては、新たなマーケットの創出である一方、高いレベルの運営スキルや人材の確保が求められます。

これに対し、当社グループは「オペレーションカンパニーを目指す成長戦略」を公表し、事業運営の担い手としてのビジネスの創出を図る成長戦略を明確にしました。ソリューション機能とオペレーション機能の強化を図り、事業計画・施設更新計画の最適化、インフラ点検システムの開発、地震対策及び浸水シミュレーションの強化、地域の資源循環・エネルギーシステムの開発などに取り組んでまいりました。

事業基盤の整備として、異業種との連携によるイノベーション、提案型人材の育成に向けた研修、心理的安全性の確保、ウェルビーイングの向上、男性育休推進などに取り組みました。

この結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、連結受注高は22,671百万円(前連結会計年度比22.9%増)、連結売上高は22,027百万円(同14.5%増)となりました。

利益面では、積極的な人材投資、IT投資、技術開発などにより、営業利益は1,618百万円(同16.3%減)、経常利益は1,704百万円(同15.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,997百万円(同15.7%増)となりました。

 

セグメント別の経営成績は、次のとおりです。

(国内業務)

国内業務については、インフラの再構築に向けた調査・設計業務、災害対策業務、インフラの点検・調査を効率化するインスペクション事業、官民連携事業を推進するPPP業務・オペレーション事業等に取り組んでまいりました。

この結果、受注高は18,521百万円(前連結会計年度比8.4%増)、売上高は17,230百万円(同3.1%増)、営業利益は1,521百万円(同30.8%減)となりました。

 

(海外業務)

海外業務については、アジア、中東、アフリカ等の新興国における水インフラ整備プロジェクトを推進してきました。

この結果、受注高は4,150百万円(前連結会計年度比205.1%増)、売上高は4,594百万円(同101.1%増)、営業利益は37百万円(前連結会計年度は営業損失364百万円)となりました。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,315百万円増加し29,493百万円となりました。この主な要因は、現金及び預金の増加3,208百万円、受取手形、完成業務未収入金及び契約資産の増加541百万円、未成業務支出金の減少1,107百万円、不動産売却等により有形固定資産の減少1,892百万円、株式市場活性化による保有株式の時価上昇に伴う投資有価証券の増加417百万円です。

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ154百万円減少し4,941百万円となりました。この主な要因は、業務未払金の減少598百万円、未払法人税等の増加258百万円、その他流動負債の増加199百万円です。

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ1,469百万円増加し24,552百万円となりました。この主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益と配当金支払いの純額による利益剰余金の増加1,232百万円、その他有価証券評価差額金の増加290百万円です。この結果、自己資本比率は83.0%となりました。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は、前連結会計年度末に比べ3,208百万円増加し17,188百万円となりました。

 (営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は1,550百万円(前連結会計年度は1,953百万円の獲得)となりました。

収入の主な内訳は、税金等調整前当期純利益2,867百万円、未成業務支出金の減少1,123百万円です。また、支出の主な内訳は、固定資産除売却損益△1,301百万円、受取手形、完成業務未収入金及び契約資産の増加△514百万円、業務未払金の減少△600百万円、法人税等の支払額△643百万円です。

 (投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果獲得した資金は2,419百万円(前連結会計年度は950百万円の使用)となりました。

この主な内訳は、有形固定資産の取得による支出△252百万円、無形固定資産の取得による支出△243百万円、有形固定資産売却による収入3,100百万円、敷金及び保証金の差入による支出△216百万円です。

 (財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は771百万円(前連結会計年度は866百万円の使用)となりました。

支出の主な内訳は、配当金の支払額△764百万円です。

 

なお、当社グループのキャッシュ・フロー指標のトレンドは次のとおりです。

 

指標

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

自己資本比率

(%)

75.6

78.5

78.0

81.7

83.0

時価ベースの自己資本比率

(%)

67.7

75.8

67.0

68.9

88.1

キャッシュ・フロー対有利子負債比率

(年)

0.1

0.0

0.0

0.0

インタレスト・カバレッジ・レシオ

(倍)

295.9

16,652.9

4,759.4

102,929.7

952,020.1

 

(注) 各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表数値により以下のとおり算出しています。

(1) 自己資本比率:自己資本/総資産

(2) 時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産

  株式時価総額は、自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しています。

(3) キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/営業活動によるキャッシュ・フロー

(4) インタレスト・カバレッジ・レシオ:営業活動によるキャッシュ・フロー/利息支払額

 

 

(資本の財源及び資金の流動性)

当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としており、運転資金及び設備投資資金は、自己資金を基本としていますが、必要に応じて銀行借入による調達も行っています。

なお、当連結会計年度末時点で、重要な資本的支出の予定はありません。

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

 a.生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

国内業務

17,230,124

3.1

海外業務

4,594,163

101.1

その他

203,289

△11.6

合計

22,027,578

14.5

 

(注) 1.当社グループの業務は、業務の性格上生産として把握することが困難であるため販売実績を記載しています。

2.セグメント間取引については、相殺消去しています。

3.海外業務セグメントの生産実績に著しい変動がありますが、これは主にイラク共和国における受注案件が完成し売上計上された影響によるものです。

 

b.受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

国内業務

18,521,006

8.4

18,480,852

7.5

海外業務

4,150,039

205.1

1,559,871

△22.2

合計

22,671,045

22.9

20,040,724

4.4

 

(注) 1.セグメント間取引については、相殺消去しています。

   2.海外業務セグメントの受注高に著しい変動がありますが、これは主にイラク共和国における大型案件の受注の影響によるものです。

 

c.販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

 

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

国内業務

17,230,124

3.1

海外業務

4,594,163

101.1

その他

203,289

△11.6

合計

22,027,578

14.5

 

(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.前連結会計年度及び当連結会計年度における主な相手先別販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりです。

3.海外業務セグメントの販売実績に著しい変動がありますが、これは主にイラク共和国における受注案件が完成し売上計上された影響によるものです。

 

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年1月1日

至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

日本下水道事業団

2,801,255

14.6

2,701,769

12.3

Ministry of Construction, Housing, Municipalities and Public Works (IRAQ)

2,224,507

10.1

 

(注)前連結会計年度の販売実績の割合が10%未満の相手先につきましては記載を省略しています。

 

(4) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりです。

当社グループは、退職給付会計、税効果会計、棚卸資産の評価、投資その他の資産の評価などに関して、過去の実績や当該取引の状況に照らして合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産・負債の帳簿価額及び収益・費用の金額に反映して連結財務諸表を作成していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しています。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、「次世代型インフラマネジメントの創出」に向けて、水と環境の①サステナビリティ向上、②強靭な社会の構築、③DX推進、④脱炭素社会の実現をテーマとして取り組んでいます。

 

①サステナビリティ向上:アセットマネジメントの構築と運用に関する技術開発

高度経済成長期に急速に発展した我が国のインフラは、現在その多くが耐用年数を迎えようとしており、施設の老朽化による事故のリスクが高まっています。また、自治体における財政の悪化などにより、上下水道事業のサービスの持続性確保が困難な状況にあります。当社グループでは、アセットマネジメントを適切に導入及び運用するため、資産の状態を正確かつ効率的に把握するインスペクション技術、施設の内容や維持管理履歴をデータ化し一元管理するソフトウェアサービスを開発しています。

 

②強靭な社会の構築:災害対策に関する技術開発

気候変動に伴い局所的な豪雨が増加し、浸水や交通・ライフラインの遮断等の被害が多発しています。能登半島地震による上下道インフラの被害からの復旧、東海・南海トラフ地震等将来の震災への備えも重要性が増しています。当社グループは、施設の耐震・耐津波・耐水化等のコンサルティング技術の開発(ハード面)、浸水・津波シミュレーション及び災害情報の発信等のソフトウェア技術(ソフト面)等の開発に取り組んでいます。

 

③DX推進:生産性向上・官民連携強化に寄与する技術開発

インフラオーナーである国や地方自治体等の公共団体では、熟練技術者の不足が大きな課題となっています。また、人口減少社会にあって使用料収入は減少し既存のインフラ機能を維持するための財源確保が困難となっています。さらに、インフラ分野における官民連携強化に向けウォーターPPPとして新たな手法が開始されます。これに対し当社グループは、インフラ管理へのAI・IoT・センサー・ドローン・三次元モデル(BIM/CIM等)先端技術の導入による業務効率化、作業安全性向上、品質向上、オペレーション手法の効率化等の技術開発に取り組んでいます。

 

④脱炭素社会の実現:インフラに関するエネルギーマネジメントと資源化の技術開発

地球温暖化の進行がカナダなどの森林被害や各地での大洪水発生などの気候危機を起こし、温暖化の主な原因が人間の活動によって生じるCO2を中心とした温室効果ガス(GHG)であることが明らかになってきました。また、ウクライナや中東情勢の緊迫化により資源・エネルギーの枯渇が進み、カーボンニュートラルに向けた取り組みが全ての産業において必要となっています。当社グループは、上下水道施設の省エネ化、再生可能エネルギーの導入支援、下水バイオマスの有効利用、エネルギー・温室効果ガス排出量管理システム等の技術開発に取り組んでいます。

これらの研究開発により水と環境のインフラを健全な状態で次の世代に引き継ぐことが、当社のパーパスであり経営理念です。

技術開発中の主な課題は次のとおりです。なお、当社の研究開発活動については、特定のセグメントに関連づけられないため、全社一括で記載しています。

 

Ⅰ.コンサルティング

A.点検・調査・計画

・ 新たな設備調査・診断方法の開発(施設)

・ 診断ツールの開発

B.BIM/CIM

・ BIM/CIMデータと数量計算との連携検討

・ BIM/CIM作業効率化ツールの開発

・  NJS版:BIM/CIM標準の整備

・  NJS版:BIM/CIM教育プログラムの構築

・ SkyScraperFCとBIM/CIMの連携

 

C.災害対策

(1)雨水対策

・ 雨水マネジメント計画策定体制強化

・ リアルタイム・浸水予測サービスの案件形成

・  雨水施設管理者情報提供サービスの開発

・ 雨水対策情報の市民向け提供サービスの開発

・ グリーンインフラ施設の計画・設計手法の構築

(2)地震対策

・ 耐震・耐津波作業担当人材育成

・ 非線形有限要素技術を用いたせん断力に対する評価手法の開発

D.環境(環境・エネルギー)

・ 再エネ・創エネ、CO2回収・活用技術、カーボンプライシング研究

・ 再エネ電力等PPA事業化技術、地域脱炭素化の事業化に関する技術

・ エネルギー業務支援のプラットフォーム構築

・ SkyScraperFC/EMの脱炭素バージョン構築

・ 下水道CO2のSCOPE123対応

・ 下水道サーベイランス予測精度向上技術の研究

E.管理運営

・ 経営戦略算定支援ツールの整理

・ 使用料改定シミュレーションツール

・ 新領域コンセッションの案件形成

・ アドバイザリー業務の支援ツール作成(水道版)

・ 地域密着型官民連携スキームの構築

・ 下水道事業の垂直統合型事業統合スキームの構築

F.計画手法

・ 計画手法の水平展開

G.海外事業

・ 開発技術の評価

 

Ⅱ.ソフトウェア

A.SkyScraper(クラウド型統合インフラ管理システム)

・ SkyScraperFC(施設情報システム)      機能拡張

・ SkyScraperDA(設備劣化診断システム)    製品開発

・ SkyScraperPL(管路情報システム)      機能拡張

・  SkyScraperPL_WEBGIS(管路維持管理システム) 機能拡張

・ SkyScraperFI(現場点検システム)      製品開発

・ SkyScraperEM(イージーモニター)      機能拡張

・ SkyScraperRM(雨水管理システム)      機能拡張

・ SkyScraperRI(水位等計測システム)     機能拡張

・ SkyScraperFA(固定資産管理システム)    機能拡張

・ SkyScraperEA(企業会計システム)      機能拡張

・ SkyScraperBC(料金徴収システム)      機能拡張

・ SkyScraperCV(管内画像解析システム)    製品開発

・ SkyScraperBI(意思決定支援システム)    OEM開発

・ SkyScraperML(AIを活用したシミュレーション)製品開発

・  各システムの共通機能開発

・  モバイルアプリ製品開発(複数OS・モバイル対応)

・  ライトアプリ製品開発(汎用製品化)

・ クラウド基盤整備(プラットフォーム機能開発含む)

・ IoT・AI基盤整備(SkyScraperML共通ソフト含む)

B.SkyManhole(LPWAを活用したIoTセンサー)

・ ゲートウェイ型LPWA(リアルタイムモニター)  機能拡張

 ・ ゲートウェイ型LPWA(オフラインモニター)   機能拡張

 ・ セルラーLPWA(リアルタイムモニター)     製品開発

 ・ センサー開発                 製品開発

C.水道管路の管理の高度化             製品開発

  D.BioWin   (下水処理プロセスシミュレーター)  販売促進

 

Ⅲ.インスペクション

A.点検・調査

・ 下水道管劣化予測に関する実証

B.AirSlider(閉鎖性空間点検調査用ドローン)

  ・ 水道橋点検手法開発             製品開発

・ AirSider(AS400、600、2000)        製品開発(㈱ACSLと共同開発)

・ 点検調査ロボット開発            製品開発

・ 鉄管膜厚測定機器開発            製品開発(㈱KANSOテクノスと共同開発)

・ 背面空洞探査装置              製品開発(㈱KANSOテクノスと共同開発)

・ 道路排水用点検機器開発           製品開発(他社との共同開発)

 

Ⅳ.オペレーション

A.災害時支援

 ・ 災害訓練企画運営支援手法の開発

B.管理運営支援

 ・ PPP/PFI事業モニタリングマニュアル作成   

C.市民窓口

 ・ 各種申請書データベース化ツール作成

 ・ 上水道窓口申請FAQ用チャットボットツール作成

 

 

なお、当連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)の研究開発費の総額は790,588千円です。

 

 注)FC:Facility database、DA:Diagnosis&Analysis、PL:Pipe Line database、FI:Field Inspection、

EM:Easy Monitor、RM:Rain Management、RI:RainManagement Indicator、FA:Fixed Assets database、

EA:Enterprise Accounting、BC:Billing&Collection、CV:Computer Vision、

BI:Business Intelligence、ML:Machine Learning