第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社グループは、ヘアデザイナーを通じて、美しい生き方を応援する事業を展開しております。

 顧客と長期的な信頼関係を結ぶため、当社グループは顧客との約束をコーポレートステートメントに表し、

その象徴としてスローガンを制定しております。

 

―コーポレートステートメント―

 

すべては、美しく生きるために。

 

私たちは、一人ひとりに、

自分らしさ、心の豊かさ、人生の彩りを価値にして届けます。

ヘアデザイナーと向き合い、ともに教え育み、

今を超えようと、磨き上げた結晶から、生まれ落ちる美しさ。

それは、私たちだけが創れる確かな価値。

美しい髪を自信に、新しい世界にはばたけるよう、

私たちは、今ここにない未来を創り続けます。

 

 

―コーポレートスローガン―

 

                『美しさを拓く。』 Find Your Beauty

 

 当社グループにとって企業価値の源泉は、以下の①から③と考えています。

 

①販売力=フィールドパーソンシステム
 当社グループは、美容室とヘアデザイナーを支援するために、独自の営業体制を確立しています。単なる商品販売ではなく、美容室、エンドユーザーの声を真摯に聴き、課題を発見、対処法を考え提案します。美容室への教育活動を中核に、美容室の増収・増益に貢献します。当社グループでは、そのような活動を行う営業部員をフィールドパーソンと呼んでいます。
 フィールドパーソンを育てるために、9ヶ月間に及ぶ社内研修を実施しています。ヘアケアやカラーリング、パーマなどの基本的な美容技術に加え、美容業界の幅広い知識・経営分析・企画立案などの様々なスキルを習得しています。競合他社が真似のできない、当社グループ独自のビジネスモデルとなっています。

 

②商品開発力=TAC製品開発システム
 美容室の現場で成功しているヘアデザイナー、さらにエンドユーザーに学びながら、美容ソフトと製品を開発するのが当社グループ独自の「TAC(Target Authority Customer)製品開発システム」です。
 ヘアカラー客が他店と比べて飛びぬけて多い美容室、ヘアケア客が飛びぬけて多い美容室など、テーマによって顧客からダントツの人気を集めている美容室・ヘアデザイナーには、成功技術(哲学、考え方、ヘアデザイン、美容技術)が存在しています。その成功技術を一般の美容室でも使えるように標準化し、それをサポートする製品を創ります。

 

③市場戦略=フィールド活動システム
 どのような市場環境においても、成長する美容室は存在しています。当社グループでは、成長している、または、成長する可能性の大きい美容室にフィールドパーソンの活動を集約することで、市場環境が悪化しても、当社グループも一緒に成長できるマーケティングを展開しています。

 

(2)中期事業構想(2022-2026)

 当社グループは、2022年度(第63期)より、次の未来を見据えた中期事業構想(2022-2026)「Stage for the Future」を策定し、2022年2月10日に公表いたしました。

 中期目標として「本質的な社会・生活者視点での“プロフェッショナル価値”を生み出し、グローバルメーカーとしての企業体を創造し、アジアNo.1、世界ベスト5をめざす」と掲げました。

 また、中期目標の実現に向けて、グローバル戦略においては、グローバル市場を7つのリージョン(日本、韓国、中華圏、ASEAN、北米、EU,中東)として捉え、長期のグローバル戦略として、リージョン毎の開発・生産体制の構築に取り組み、髪質や文化・価値観の違いに対応し、地域の美容産業の発展に貢献します。

 一方、日本市場においては、事業基盤の強化から、時代に呼応した美容室のあり方改革「サロンソーシャルイノベーション」を掲げ、美容室の新たな形「ビューティプラットフォーム構想」と、美を通じた心の豊かさの実現を中核とした「サステナビリティコミットメント5つの最重要課題」の推進を連動させ、実現していきます。

 「ビューティプラットフォーム構想」においては、デジタルとリアルが融合した顧客体験の場をつくる「スマートサロン戦略」、そして、ヘアケア・スキンケア・ビューティヘルスケアという3つのケア構想による「ビューティライフケア戦略」の推進によりこれを実現していきます。

 「サステナビリティ5つの最重要課題」においては、①美しさを通じた心の豊かさの実現、②再生・循環型の生産・消費活動、③人にやさしい調達活動、④公正かつ柔軟な経営体制、⑤働きがいのある職場環境、の5つを最重要課題として設定し、取り組みを進めてまいります。

 そして、これらの実現の先に、美容室と共に地域の人々の美しい生き方を応援し、未来に繋がる豊かな社会と、住み続けられる街づくりの創造を目指しております。

 

<中期目標>

本質的な社会・生活者視点での“プロフェッショナル価値”を生み出す

グローバルメーカーとしての企業体を創造し、アジアNo.1、世界ベスト5をめざす。

 

<中期方針>

Stage for the Future

「サロンソーシャルイノベーション」×「サステナビリティコミットメント」

ミルボンは美容室と共に、地域の人々の美しい生き方を応援し、未来につながる豊かな社会と、

住み続けられる街づくりをめざします。

 

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①美しさを通じた心の豊かさの実現

②再生・循環型の生産・消費活動

③人にやさしい調達活動

④公正かつ柔軟な経営体制

⑤働きがいのある職場環境

 

(3)対処すべき課題

経済環境の先行きは、物価上昇率は落ち着きをみせていますが、世界的なインフレ圧力は依然として残っており、長期化するウクライナや中東問題などの地政学リスク、海外経済の下振れリスクなど不透明な状況が続くと想定しております。

このような状況のもと、当社は中期事業構想(2022-2026)の3年目を迎えます。グローバル市場においては、市場を7つのリージョン(日本、韓国、中華圏、ASEAN、北米、EU、中東)として捉え、地産地消体制の推進を通じて、地政学リスクなどを最小限に留め、リージョンごとの価値観や髪質に対応した製品提供を目指します。

国内市場においては、美容室の新しいあり方を目指す「ビューティプラットフォーム構想」実現に向けて「スマートサロン戦略」を加速させます。2023年に23店舗まで拡大したスマートサロンの提案を本格的に推進し、2024年度末には100店舗を目指します。さらに、高止まりが続いていた国内染毛剤市場では、カラーとアイブロウを組み合わせた、美容室ならではの髪と眉のトータルカラーの提案とオーガニックブランド(ヴィラロドラ)による大人の高価値カラーメニュー提案を推進することにより、国内染毛剤売上を新たな成長軌道に乗せます。

これらと並行して、引き続きサステナビリティコミットメント5つの最重要課題の実現に向けた取り組みを推進し、社会課題の解決にも取り組んでまいります。

翌連結会計年度においては、売上高506億20百万円(当期比6.0%増)、営業利益66億円(同19.5%増)、経常利益65億60百万円(同17.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益46億50百万円(同16.2%増)を見通しております。

 

※中期事業構想(2022-2026)の進捗につきましては、売上高は想定どおり進んでいるものの、営業利益については、原材料価格の高騰、ベースアップによる人件費の増加、万博協賛費の発生などの当初見込んでいなかった費用の増加により、計画を下回る状況が続いております。

 そのため、2022年2月10日に公表した中期事業構想(2022-2026)の計画値の見直しを進めており、従来掲載していた当連結会計年度の実績値と中期事業構想の最終年度(2026年度)の計画値との対比表は掲載しておりません。

 なお、見直し後の計画値につきましては、精査の上改めて公表いたします。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。

 

(1)サステナビリティに関する考え方及び基本方針

 当社は、創業以来受け継がれる経営理念のもと美容市場に絞った事業を展開しております。持続可能な美容産業を創造していくことこそが、ひいては持続可能な社会の実現につながるものと信じております。経営陣を含めた一人ひとりが、持続可能な社会の実現に向けて考え、行動することでこれに取り組んでおります。

 

~サステナビリティ基本方針~

ミルボンは、ヘアデザイナーを通じて

美と心の豊かさに繋がる美容産業を創造することで、

持続可能な社会の実現をめざします。

 

(2)サステナビリティ共通

①ガバナンス及びリスク管理

 当社は、サステナビリティに関する課題を重要な経営課題の1つとして捉え、その解決に向けた推進体制を整えております。具体的には、常務取締役が委員長を務める「サステナビリティ推進委員会」を毎月1回開催しております。サステナビリティ推進委員会では、サステナビリティに関するリスク及び機会を特定し、当社に与える影響を評価しております。その評価をもとに対応方針や取組みに向けた課題等を検討・協議し、その内容は必要に応じて、経営会議および取締役会へ付議または報告され、取締役会はこのプロセスを定期的に監督し、対応の指示および戦略への反映を行っております。

 

(サステナビリティに関するガバナンス体制図)

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②戦略

1)「5つの最重要課題(マテリアリティ)」の設定

 当社は、2022年2月10日に公表した中期事業構想(2022-2026)において、「サステナビリティコミットメント5つの最重要課題」として以下の5つを設定し、持続可能な社会の実現に向けて優先的に取組みを進めております。

 

1.美しさを通じた心の豊かさの実現

2.再生・循環型の生産・消費活動

3.人にやさしい調達活動

4.公正かつ柔軟な経営体制

5.働きがいのある職場環境

 

2)「5つの最重要課題」の選定プロセス

 「5つの最重要課題」の選定に向けては、ISO26000、SDGs17原則、ESGの3つの視点から当社で推進すべき課題の検討を行い、SDGs/ESGマトリックス(https://www.milbon.com/ja/uploads/docs/esg-sdgsmatrix.pdf)として整理しました。その際には、サステナビリティ推進委員会が中心となり、社内各部門、社外有識者、経営層の意見を集約しております。その後、マトリックスの中から当社事業活動と関連性が高く、ステークホルダーからの期待が高い課題を再評価し、「社会課題の解決」「持続的な事業の成長」「社内基盤の構築」の3つのポイントから、「5つの最重要課題」を選定しました。また、「5つの最重要課題」においても「美しさを通じた心の豊かさの実現」を最重要課題「1」とし、中核課題に設定しています。美しさを提供することは当社の事業活動そのものであると同時に、人々が美しくあることは心の豊かさにつながるものであり、人々が心豊かに生きる社会は持続可能な社会の実現につながるものであると信じております。そのために、当社自身が持続可能であり続けるための最重要課題「4」「5」、事業活動におけるサプライチェーン全体で持続可能であり続けるための最重要課題「2」「3」を設定しております。

 

 

③5つの最重要課題におけるテーマ毎の指標(KPI)及び目標

 当社は、5つの最重要課題それぞれに重点取組みテーマを掲げ、テーマ毎にKPIと具体的な数値目標を設定しております。設定したKPIは、サステナビリティ推進委員会で定期的にモニタリングを実施し、進捗状況を確認するとともに、必要に応じてKPIの追加、見直しを検討しております。

 

重点取り組みテーマ

KPI(中長期テーマ)

2023年

実績

2026年

目標

2030年

目標

1.美しさを通じた心の豊かさの実現

リアルとデジタルを活用した知販ビジネスの確立

milbon:iD会員登録者数

67万人

100万人

ミルボン知販メソッド(スマートサロン)の

展開都市数(日本)

19都市23軒

国内

主要100都市

ライフタイムビューティーパートナー育成

スタジオ・イベント教育動画年間延べ利用人数

27.1万人

33.5万人

エデュケーションiD会員登録者数

4万人

10万人

2.再生・循環型の生産・消費活動

カーボンニュートラル生産体制の構築

ゆめが丘工場のCO2排出量削減率

(2019年比)

81%削減

75%削減

カーボンニュートラル実現

サステナブルな容器包装の設計

石油由来バージンプラスチック使用量削減率

(2020年比、売上高原単位)

9.6%削減

15%削減

30%削減

3.人にやさしい調達活動

サステナブルなパーム油の調達

RSPO認証パーム油採用率(MB+B&C)

9.5%

50%

100%

サプライチェーンにおける人権の尊重

デューデリジェンスによる人権侵害発生数

0件

0件

0件

4.公正かつ柔軟な経営体制

取締役会の多様性の推進

社外取締役の登用

5名(5/11)

継続的に3分の1以上登用

女性役員の積極登用

2名(2/14)

継続的に登用

国際性を含む、多様なスキルの確保

0名(0/14)

確保の実現

取締役会の実行性向上

第三者機関評価を通じた、重要課題の選定と改善活動の進捗

継続実施中

毎年の課題設定に対して、継続的に改善活動を行う

5.働きがいのある職場環境

働き続けられると感じる体制・制度の実現

若手社員の離職率(直近5年の若手社員(新卒~3年目)の離職率平均)

10.8%

9%

6%

有給休暇取得率

67.8%

70%

80%

エンゲージメントサーベイ

サーベイ及び目標設定等の実施

 

(3)気候変動への対応

①ガバナンス及びリスク管理

 当社は、気候変動を中長期にわたり経営戦略や財務計画に影響を与える現実的なリスクと捉え、サステナビリティコミットメントにおいて最重要課題の1つとして位置づけております。

 サステナビリティに関する取組みの内、気候変動に関するリスク及び機会については、サステナビリティ推進委員会の下にTCFDワーキンググループを設置し、気候変動に関するリスク等をTCFDワーキンググループが特定しております。同ワーキンググループは活動状況を半期に1回サステナビリティ推進委員会を通じて経営会議及び取締役会へ報告し、取締役会の監督を受けております。

 

②戦略

 2023年度は、気候変動に関する対応の初年度であるため、ミルボングループの中核である株式会社ミルボン単体を対象範囲として、平均気温が1.5℃及び4℃上昇することを想定し、シナリオ分析を実施しました。シナリオ分析では1.5℃および4℃の気温上昇を想定し、2025年時点(短期)・2030年時点(中期)・2050年時点(長期)の3つの時期に関して気候変動によるリスクと機会を検討しました。分析にはIEA・IPCCが示したシナリオを使用しており、1.5℃シナリオでは脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による影響を、4℃シナリオでは急性の変化(大雨や洪水の発生等)、慢性的な変化(平均気温の上昇や年間降水量の変化等)の双方による物理的影響を分析しています。

 今回のシナリオ分析では、約40のリスクと機会が存在することが明らかになったため、これらのリスクと機会に対する当社への影響の大きさを評価し、対応策を決定しました。シナリオ分析結果から、当社は1.5℃と4℃の双方のシナリオにおいて原料調達コスト増による影響を大きく受ける可能性があり、さらに1.5℃シナリオでは自社操業コスト増による影響も大きくなる可能性があることが分かりました。また、これらのリスクと機会については、5つの最重要課題にて設定した「再生・循環型の生産・消費活動」、「人に優しい調達活動」の推進が、リスクの低減と機会の獲得に資するということも分かりました。今後は、定期的に状況をモニタリングし、必要に応じて新たな対応策を講じることでリスクの低減に努めていきます。

 

(シナリオ分析結果)

 

リスク機会の内容

リスク/機会

時間軸

影響度

1.5℃シナリオ

調

サプライヤーへのカーボンプライシングの導入・拡大による調達コスト増

リスク

2030年

森林保護への法規制による土地利用への制限に伴う調達コスト増

リスク

2025年

原料のトレーサビリティに関する法規制強化による調達コスト増

リスク

2030年

自社へのカーボンプライシングの導入・拡大による操業コスト増

リスク

2030年

電力小売価格の上昇によるエネルギーコスト増

リスク

2030年

各国拠点での法規制強化によるコンプライアンスコスト増

リスク

2030年

サーキュラーエコノミーへの対応コスト増

リスク

2030年

他社がカーボンプライシングの影響を受け、自社の競争が向上することによる売上増

機会

2030年

自家発電導入による排出量とエネルギーコスト減

機会

2030年

商品需要

環境配慮商品の売上増

機会

2030年

4℃シナリオ

原料調達

気候変動によるパーム油等植物由来原材料の調達コスト増

リスク

2050年

安定した原料調達のための取組みによる調達コスト減

機会

2030年

自社操業

損傷した生産設備の修復にかかるコスト増

リスク

2050年

洪水や台風被害による配送への影響による、売上減や在庫毀損によるコスト増

リスク

2050年

(想定する対策等)

1.5℃シナリオ

調

植物由来

原料

・国際情勢リスク、気候変動リスクにおいて、調達ルートやトレーサビリティを調査

・原料確保のため、効率的な調達購買手法の検討

・カーボンプライシングによるサプライヤーへのコスト増を概算、商品価格への上乗せ検

討、代替原料の検討

・RSPO認証パーム油の積極採用。2030年までに認証パーム油、マスバランス品を100%採用目標

容器包装

原料

・石油由来バージンプラスチックを2030年までに30%削減する目標に向け、新製品容器への植物由来プラスチックや樹脂量削減の成型方法を積極採用

・プラスチック容器のリサイクル処理方法の研究

・カーボンプライシングによる容器包装原料のコスト増を概算、商品価格への上乗せ検討、代替原料の検討

自社の

エネルギー使用

・WEO2021,2022のNZEシナリオにおける炭素価格を用いて、Scope1・2にかかるカーボンプライシングコストを試算

・電力コスト上昇の見通しから自家消費発電の割合を拡大

法規制対応

・各種規制の把握、コスト増の影響度によっては、他原料への切り替えや製品への転嫁も想定

・EUを中心とした法規制への対応コストと社内体制の確立

商品需要

商品開発

・生活者ニーズに対応した、商品機能向上と環境負荷低減する商品開発

4℃シナリオ

原料調達

調達

・代替パーム油の研究や処方対応を検討

・気候変動によるパーム油調達価格変動を概算

・原料や調達ルート確保の研究

・原料毎の気候変動による影響度を確認

・主要天然原料の原産国における気候変動調査や保護活動

自社操業

災害対応

・被災によって生産設備が損傷した場合でも、保険の適用内で修復が可能であることを確認

・災害時は一部物流倉庫への影響が懸念される為、代替輸送を予め想定

 

③気候変動に関する取組みの指標(KPI)及び目標

 気候変動に関する取組みのKPIについては、1.5℃・4℃シナリオの分析結果から、最も影響が大きいと考えられる原材料調達コストの増加に対しては、5つの最重要課題に掲げている、石油由来バージンプラスチック容器包装の削減率や、RSPO認証パーム油採用率の達成を通じて引き続きリスク低減を図ります。

 また、カーボンプライシング導入や電力価格高騰等による操業コストの増加リスクに対しては、5つの最重要課題に掲げているゆめが丘工場における2026年、2030年のCO2排出量削減目標に加えて、2050年のミルボングループのカーボンニュートラル目標を新たに設定しました。ミルボングループにおけるScope1・2排出について、まずは、国内事業所の中で最もCO2排出量が多い当社生産拠点である、ゆめが丘工場の30年カーボンニュートラルを目指します。さらに、50年までにミルボングループのカーボンニュートラルを達成します。

 今後も、定期的にカーボンニュートラルの達成へ向けた取り組み状況をモニタリングし、対応策を講じることでリスクの低減に努めます。

 

(Co2排出量の実績及び目標(単位:t-Co2)

 

2019年

(基準年度)

実績

2022年

実績

2023年

実績

2026年

目標

2030年

目標

2050年

目標

ミルボン単体 Scope1

1,248

1,357

1,419

Scope2

(マーケット基準)

3,151

1,531

971

ゆめが丘工場

Scope1

502

530

461

75%削減

(2019年比)

カーボン

ニュートラル

Scope2

(マーケット基準)

1,931

450

0

ミルボングループ

Scope1,2

カーボン

ニュートラル

 

(4)人的資本、多様性に関する取組み

①人的資本に関する基本的な考え方

 当社は、「人的資本」を経営及び企業の持続的な成長に必要不可欠な最重要「資本」と考えております。「人材」は、企業の持続的な成長の源泉となる付加価値を創造し、美容室の増収増益に貢献する礎となるものと考え、創業時から「人材」の採用と成長を重要な経営課題であると位置づけ、人と向き合い事業を継続してきました。

 

②中期事業構想(2022-2026)における人的資本に関する戦略、指標(KPI)及び目標

 中期事業構想(2022-2026)の実現に向け、人材戦略基本方針~社員一人ひとりがミルボンのエンジンになる~「社員一人ひとりが、自主自立の精神で、“やりがい”をもって、ミルボンの持続的成長を支え、働き続けられる企業風土を醸成する」を掲げ、「5つの人材戦略重要テーマ」を設定し、社員の“働きがい”の醸成と“働き続けられる環境”の整備を進めております。「5つの人材戦略重要テーマ」と中期事業構想(2022-2026)を密接に連携させることで、持続的な成長の源泉となる新たな付加価値を創造し続け、美容室の増収増益に貢献します。

 

 

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5つの人材戦略重要テーマにおける具体的な取組み内容、指標(KPI)及び目標は以下のとおりです。

 

1)次期後継リーダー育成

当社は、2014年に10年後の後継体制を想定し、2015年より4年間で42名に対し次期経営責任者育成プログラムを実施し、取締役3名、執行役員8名の任命につながりました。本年度の定性的な目標として、次の10年、20年先を見据えたサクセッションプランを再構築し、2025年から新たな次期経営責任者育成プログラムをスタートすること、を掲げ取組みを進めております。

また、並行して2024年より人材開発委員会を設置し、全社視点でのリーダー育成、一人ひとりの働きがいと活躍につながる研修・配置の実施・モニタリングを通じて、流れるようにリーダーが生まれる組織体となることを目指し続けます。

  (次期後継リーダー育成の指標(KPI)及び目標)

指標(KPI)

2024年

目標

2025年

目標

次期後継リーダー育成

次期経営責任者育成プログラムの開発

次期経営責任者育成プログラムの実施

 

2)働きがいの醸成

2022年にエンゲージメントサーベイを導入し、コンプライアンス意識調査を含め、経営報告及び各部門への報告・対話、アクションプランの作成・実践していく環境を整備しました。

また、多様な働き方を推進するために、部門・職種ごとに専門職設置ができる体制の整備と登用、65歳までの定年引き上げ、スーパーフレックスタイム制度の導入、評価制度への生産性項目の導入など、働きがいの醸成と働き続けられる環境づくりを行っております。

  (働きがいの醸成の指標(KPI)及び目標)

指標(KPI)

2022年

実績

2023年

実績

2026年

目標

若手社員の離職率(直近5年の若手社員(新卒~3年目)の離職率平均)

10.0

10.8%

9%

有給休暇取得率

64.0

67.8%

70%

エンゲージメントサーベイ

サーベイの実施

サーベイ及び

目標設定等の実施

 

3)提供価値向上への人・組織の強化

40年続く9か月間の新入社員研修(ミルボンパーソン・フィールドパーソン研修+部門別研修)をベースに、価値を提供する「人材」の育成に力を入れ続けております。2025年の小田原人材開発センターの開設を契機にさらなる人材への投資を進めていきます。

また、ヘアカラーを起点とした感動の連鎖の創造(高価値提案)に向けた営業体制の再構築、顧客体験価値の創造・継続、グローバルでの社員研修開発に繋がるプロジェクトを始動し、美容師からの支持率No.1の体現に挑戦しております。

 

4)タテヨコナナメの対話増進

直近10年で従業員数が連結(単体)で649(539)名から1,140(870)名へと約1.7倍に増加し、部門・階層の拡がりや多様な属性を持つメンバーの増加に伴い、関係性が希薄になるリスクが顕在化し始めました。そのため、当社指針である「ミルボンウェイ」の共有会を全社や組織毎に定期的に実施しております。

また、2024年度の定性的な目標として、社員と経営層の認識ズレの解消に繋がる社内コミュニケーションコンテンツの新設や、新代表取締役社長の坂下秀憲による全部門との対話の場づくり(フィールドパーソン、ミルボンパーソンディスカッションの実施)を行うことで、相互理解の深耕を進めていきます。

  (タテヨコナナメの対話増進の指標(KPI)及び目標)

指標(KPI)

2024年

目標

2025年

目標

社内コミュニケーションの円滑化

社内コミュニケーションコンテンツの新設及びフィールドパーソンディスカッションの実施

ミルボンパーソンディスカッションの実施

 

5)DE&Iの推進

全社プロジェクトとして「DE&I推進プロジェクト」を2023年より発足しました。当社で働く女性社員の「美しい生き方」を応援すること=経営理念・コーポレートステートメント&スローガンの体現となる、との考えのもと、まずは人数・割合ともに多い女性フィールドパーソンの活躍とキャリア継続が最重要テーマであるとフォーカスし、経営幹部向けの勉強会を2023年12月に実施しました。2024年は、改めて在り方を模索し、具体的な施策の検討を進めていきます。この積み重ねを通じて2030年女性管理職比率20%という目標を実現していきます。

  (DE&Iの推進の指標(KPI)及び目標)

指標(KPI)

2022年

実績

2023年

実績

2030年

目標

女性管理職比率

10.3%

10.9%

20.0%

 

(5)水資源に関する取組み

①水資源に関する基本的な考え方

 当社では、主力であるヘアケア用剤をはじめとして、多くの製品において水を使用しており、お客様が製品を使用される際にはすすぎを必要とするなど、事業活動のあらゆる場面で水は切り離せない存在であると認識しております。水資源の保全においては、各事業地域の水ストレスの詳細把握や、節水、循環利用などの有効活用に努め、積極的な保全活動を推進していきます。

 2023年現在においては、ミルボングループのなかで水資源の利用が最も多い当社基幹生産拠点であるゆめが丘工場において、取水・排水量の把握、所在地域における水ストレスの調査、保全活動の推進を行っております。今後は、連結子会社の生産拠点をはじめ、国内外の事業拠点を含めたグループ全体の取水・排出量の把握や所在地域ごとの水ストレス調査および対応策の検討に努めていきます。

 

②水資源に関する具体的な取組み

・ゆめが丘工場における水ストレス調査

 2023年にゆめが丘工場における水ストレスの調査を実施しました。調査の結果、ストレス度は「低(Low)」と判定されています(Aqueduct Country RankingにおけるBaseline Water Stressを用いて評価)。

 今後は、国内だけでなく、タイや中国などの海外工場においても、水ストレス調査を実施する予定です。

・水消費量削減の取組み

 ゆめが丘工場において、環境負荷軽減の観点から2021年に新たな純水装置を導入しました。以前の装置と比較して純水の回収率が20%向上したことで、製造に使用する純水の使用量が2022年の1年間で昨年対比約2,000m³の削減を実現しました。

・排水への配慮

 ゆめが丘工場では、公害を未然に防止し、地域住民の健康と生活環境の保全を目的とした環境保全協定を伊賀市と結んでおります。毎月、放流水が協定で定められた規制値内の値であるかの分析を第三者機関へ依頼しております。日常点検においては自社で検査を行い、規制値を下回る状態を維持するための取り組みを行っております。こうした対応のもと、河川放流と同等の処理基準をクリアした状態で下水への放流を行っております。

・排水経路の水質調査

 ゆめが丘工場がある三重県伊賀市において、市民団体「魚と子どものネットワーク」とともに、工場で使用した水が海へ至るまでの直接的な排水経路となっている、久米川および木津川の水質調査活動を行っております。2023年5月に行ったパックテストによる調査の結果では、久米川および木津川の水質は化学的酸素要求量(水中に含まれる有機物による汚濁を測る指標)測定において数値に異常がないことを確認しました。今後も、環境保全協定に基づき、地域とともに本調査をはじめとした環境負荷軽減に向けた活動に取り組んでいきます。

 

③水資源に関する取組みの指標(KPI)及び目標

 有価証券報告書提出日現在において、水資源を含む自然資本及び生物多様性に関する指標及び目標を設定しておりませんが、TNFD提言にて公表された「LEAPアプローチ」による分析を進めております。分析の結果及び目標の詳細につきましては、決まり次第公表する予定であります。

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識しているリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものですが、ここに掲げられている項目に限定されるものではありません。

 

当社グループでは、経営理念の実現及び事業継続に多大なる負の影響を及ぼす事項を「リスク」と定義し、この発生可能性を低減し、リスクが顕在化し危機発生した場合の損害の拡大を防止することをリスクマネジメント基本方針と定め、リスクマネジメントの推進体制や仕組みの整備・改善に取り組んでおります。

この方針に基づいて、各部門及び子会社は、当社グループで発生しうるリスクをまとめた「リスク事項一覧表」の見直しを行い、また業務の遂行によって発生した事象を把握・対応し、社内取締役、常勤監査役及び執行役員から構成される経営会議にて四半期毎に報告しております。当連結会計年度においては主に、個人情報保護や秘密情報保護、SNSや広告物による消費者への適切な情報発信、法令、規程及び社内ルールの遵守などに関し、管理部及び各部門が連携し、これらのリスク低減のための体制の整備、ルールの明確化及び改善、社員に対するコンプライアンス研修(秘密情報管理や情報セキュリティ、情報発信時における法令遵守、メンタルヘルスやハラスメント、各種法令の遵守)などの活動を実施しました。

また、当社グループは、代表取締役社長を委員長とし、社内取締役、常勤監査役及び執行役員を委員とする「リスクマネジメント委員会」を設置し、原則として年3回開催することとしております。この委員会では、当社グループを取り巻くリスクのうち、重要度と優先度、リスクの顕在化の可能性や時期、中期事業構想の達成を阻害する可能性と影響度等を踏まえ、全社で対応を進めるべきリスクである「全社リスク」を特定し、リスクマネジメント委員会の委員の中から各全社リスクの責任者を選任し、全社で対策を進めております。全社リスクの対応の進捗等は、リスクマネジメント委員会より、半期に一度取締役会に報告し、同委員会が取締役会の監督・モニタリングを受ける体制を整えております。

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当連結会計年度においては、2022年にリスクマネジメント委員会が設置された際に定めた、全社リスクを重要度と優先度でマッピングしたリスクマップについて、社内取締役、常勤監査役及び執行役員が議論を行い改定を実施しました。2023年12月時点における全社リスク一覧とリスク評価は下記のとおりです。なお、リスク評価は一般的指標に基づくものではなく、当社グループにおける状況から独自に評価したものです。

 

(全社リスク一覧)

全社リスク

発生可能性

影響度

 

全社リスク

発生可能性

影響度

 

情報セキュリティ・

機密情報管理

 

労務管理

 

美容師向けシステム管理

 

ブランド保護

 

原材料・資材・物流コスト

販売戦略の不徹底

 

原材料の法規制・環境対応

 

事業継続計画(BCP)

SDGsへの対応不足

 

化粧品事業

 

グローバルな物流網

 

デジタル対応の遅れ

 

貿易業務不備

 

気候変動

 

危険物管理不備

 

品質・安全性保証

 

海外での製品品質保証

 

地政学

 

消費者への情報発信

海外事業の失敗

 

制作物・広告物の不備

 

事業投資の不透明性

 

社用車での交通事故・違反

 

為替・金利

 

グループガバナンス

研究開発遅延

 

海外税制対応

 

市場環境の変化

 

人材育成

 

内部統制不全

 

コンプライアンス

 

 

 

 

 

※2023年度(第64期)全社リスク

 

(発生可能性の目安)

レベル

発生時期

1年以内に発生する可能性がある

3年以内に発生する可能性がある

5年以内に発生する可能性がある

(影響度の目安)

レベル

レベルの意味

(定量的)売上への影響

(定性的)影響範囲

重大な影響

1%以上の影響がある

社会全体

中程度の影響

1%未満の影響がある

業界・関係者

軽微な影響

ほとんど影響がない

社内のみ

 

改定したリスクマップ及び部門長に実施したリスクアンケートに基づき、当連結会計年度末に2024年度(第65期)全社リスクを決定し、引き続き全社でリスク低減活動を推進していくこととしております。

 

当連結会計年度において、当社グループの経営成績、株価及び財政状態等に影響を及ぼす可能性があり、特に全社で検討すべきとしてリスクマネジメント委員会にて決定され、対策を検討した全社リスクは以下のとおりです。

 

リスク

リスクの内容

主な取り組み

新規

原材料・資材・物流コストに関するリスク

 当社グループは、製品を製造及び出荷するにあたり原材料や資材の安定調達を行い、お客様に対し製品の安定的な供給を持続することを目指しております。しかし、地政学的リスク、需給バランスの変化、為替の変動、物流にかかる人件費の上昇等の影響により、原材料及び資材、物流費のコスト高やリードタイムの長期化が発生し、製品の市場への安定的な供給ができず、当社グループの信用の低下につながる可能性があります。

 当社グループでは、関連部門が連携し、主に原料、資材、物流のコストを測定し今後の予測から対応を協議すること、また原料、資材の不足に備えることにより、製品の安定供給のための対策を進めています。

 当連結会計年度においては、原料、資材のコスト分析、物流における出荷分析等を実施し、関連部門が連携して適切なコストでの調達及び配送の実現に向けた活動を行いました。

 

 

 

 

リスク

リスクの内容

主な取り組み

継続

消費者への適切な情報発信に関するリスク

 当社グループは、各種法令を遵守し、顧客・消費者のニーズにかなう安全かつ高品質な商品・サービスを開発・提供し、安全に安心して使用して頂ける正しい情報を提供することによる顧客・消費者からの信頼の獲得に努めています。しかし、当社グループの広告などにおいて不適切な表現や誤った情報を発信した場合、当社グループに対する信用を低下させ、当社グループの経営成績などに重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、不適切な情報発信などのリスクが顕在化した場合には、迅速に対応するとともに、必要に応じて当該事象の公表を行うなど、当社グループの信用の維持に努めています。

 当連結会計年度においては、日本国内において、広告及びSNS活用時の不適切表現を防止するための取り組みとして、社内教育の強化(勉強会や動画研修の実施)、事前のチェック体制の見直し、自動チェックツールの導入検討及びテスト運用を行いました。

継続

海外子会社のガバナンスに関するリスク

 当社グループにおいて、グループ戦略立案及びグループ会社の監視・監督等といったグループガバナンス体制の構築が不十分となり、グループ会社管理による効果が十分発揮されなかった場合、当社グループの経営成績などに重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、海外子会社が進出している各国法規制の情報の収集を行うとともに、事業を進める上での課題を抽出し、必要に応じて子会社と連携・共有し対応しています。

 当連結会計年度においては、親会社及び各子会社での定期会議の実施や、子会社からのリスク報告の分析に基づきグループで取り組むべき課題の明確化を行いました。

継続

大規模震災・事業継続計画(BCP)に関するリスク

 大規模な地震などの自然災害が発生した場合や不測の事態により事業継続に危機が生じた場合、当社グループの工場・研究所・事業所などの機能停止、当社グループの人的資産の損失、当社製品の生産・出荷の遅れ、新製品開発の遅れ、美容室へ当社製品を提供できないことによる製品売上の減少などにより、当社グループの経営成績などに重大な影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループでは、大規模な地震などの自然災害が発生した場合や不測の事態により事業継続に危機が生じた場合に備えて、迅速な生産・物流の復旧をめざす事業継続計画(BCP)を策定し、定期的な見直しを実施しています。

 当連結会計年度においては、生産本部において生産・物流に関するBCPの見直しと訓練の実施、ゆめが丘工場の稼働停止を想定した製品在庫と供給状況の確認、物流網の被災における連絡網の状況確認、外注先のBCP対応の確認、海外生産拠点におけるリスクの確認を行いました。

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」といいます。)の状況の概要及び経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)経営成績の分析

①売上高及び売上総利益

 当連結会計年度の売上高は477億62百万円(前期比5.6%増)となりました。この主な要因は、国内染毛剤売上がコロナ禍で伸長したカラー需要の高止まりの反動を受け減収となったものの、ヘアケア用剤売上はプレミアムブランド「オージュア」「ミルボン」が国内外で堅調に推移したことによるものであります。

 売上総利益は295億25百万円(同0.1%増)となりました。国内で投入したドライヤーの在庫評価損、原材料価格高止まりの影響により売上総利益率は61.8%(同3.4ポイント減)となりました。

 

②販売費及び一般管理費、営業利益

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、240億円(同9.3%増)となりました。この主な要因は、国内外で大型イベント・セミナー開催を積極的に行い販売促進費及び市場開発費が増加したこと、国内外の出張が増加したことにより旅費交通費が増加するなど、主に活動再開に伴う費用が増加したことによるものであります。この結果、営業利益は55億25百万円(同26.8%減)となりました。

 

③営業外損益、経常利益

 当連結会計年度の営業外収益は1億86百万円、営業外費用は1億25百万円となりました。この結果、経常利益は55億86百万円(同28.6%減)となりました。

 

④特別損益、親会社株主に帰属する当期純利益

 当連結会計年度の特別利益は0百万円、特別損失は1億54百万円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は40億1百万円(同28.3%減)となり、1株当たり当期純利益金額は122円99銭となりました。

 

 連結品目別売上高、国内海外別売上高及び生産、受注及び販売の実績は次のとおりであります。

 

(連結品目別売上高)

(単位:百万円)

 

品目

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

金額

構成比(%)

金額

構成比(%)

ヘアケア用剤

26,312

58.2

28,355

59.4

2,042

7.8

染毛剤

16,631

36.7

16,953

35.5

322

1.9

パーマネントウェーブ用剤

1,450

3.2

1,463

3.0

13

1.0

化粧品

572

1.3

571

1.2

△0

△0.1

その他

272

0.6

418

0.9

145

53.6

合計

45,238

100.0

47,762

100.0

2,524

5.6

 

 

(国内海外別売上高)

(単位:百万円)

 

 

前連結会計年度

当連結会計年度

増減額

増減率(%)

金額

構成比(%)

金額

構成比(%)

国内売上高

35,334

78.1

36,502

76.4

1,168

3.3

海外売上高

9,904

21.9

11,260

23.6

1,355

13.7

合計

45,238

100.0

47,762

100.0

2,524

5.6

 

(生産、受注及び販売の実績)

①生産実績

 当連結会計年度の品目別内訳を示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

 

品目

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

至 2023年12月31日)

増減率(%)

ヘアケア用剤

31,519,770

△0.7

染毛剤

15,969,133

△9.2

パーマネントウェーブ用剤

1,582,013

△5.8

その他

459,141

80.3

合計

49,530,059

△3.4

(注)金額は販売価格で表示しております。

 

②受注実績

 当社グループは見込み生産を行っておりますので、該当する事項はありません。

 

③販売実績

 当連結会計年度の品目別内訳を示すと、次のとおりであります。

(単位:千円)

 

品目

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

至 2023年12月31日)

増減率(%)

ヘアケア用剤

28,355,020

7.8

染毛剤

16,953,723

1.9

パーマネントウェーブ用剤

1,463,884

1.0

化粧品

571,762

△0.1

その他

418,040

53.6

合計

47,762,432

5.6

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年 1月 1日

 至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

 至 2023年12月31日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

株式会社トピー商事

4,804

10.6

5,199

10.9

株式会社ガモウ

3,810

8.4

3,947

8.3

株式会社BICホールディングス

3,396

7.5

3,493

7.3

 

(2)財政状態の分析

 当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して6億31百万円増加の533億91百万円となりました。

 流動資産は前連結会計年度末と比較して5億20百万円減少の261億78百万円となりました。主な変動要因は、現金及び預金が9億62百万円減少し、商品及び製品が6億20百万円増加したことによるものであります。

 固定資産は前連結会計年度末と比較して11億51百万円増加の272億13百万円となりました。主な変動要因は、人材開発センターの工事代金などに伴う建設仮勘定の増加5億41百万円によるものであります。

 流動負債は前連結会計年度末と比較して14億28百万円減少の65億67百万円となりました。主な変動要因は、未払法人税等が9億23百万円減少したことによるものであります。

 固定負債は前連結会計年度末と比較して1億19百万円増加の8億91百万円となりました。

 純資産は前連結会計年度末と比較して19億40百万円増加の459億32百万円となりました。主な変動要因は、利益剰余金が12億3百万円、円安により為替換算調整勘定が6億7百万円、それぞれ増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は前連結会計年度末の83.4%から86.0%となりました。期末発行済株式総数に基づく1株当たり純資産額は、前連結会計年度末の1,352円52銭から1,411円56銭となりました。

 

(3)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」といいます。)は、前連結会計年度末に比べて9億66百万円減少し、112億92百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果得られた資金は47億65百万円となりました。これは主に税金等調整前当期純利益54億32百万円の計上、減価償却費22億75百万円、持分法による投資損失1億10百万円、棚卸資産の増加額4億69百万円、法人税等の支払額24億28百万円によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は31億9百万円となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出25億98百万円、無形固定資産の取得による支出6億12百万円、差入保証金の差入による支出1億79百万円、保険積立金の解約による収入2億86百万円によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果使用した資金は27億97百万円となりました。これは主に株主さまへの配当金支払額27億96百万円によるものであります。

 

(4)重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に準拠して作成しております。

 連結財務諸表の作成に際し、決算日現在における資産・負債の報告事項及び偶発債務の開示並びに連結会計期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び判断に対して、継続して評価を行っております。ただし、事前に予測不能な事象の発生等により実際の結果が現時点の見積りと異なる場合も考えられます。

 当社グループの連結財務諸表で採用した重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表」の注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)に記載しております。

 

(5)経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの経営に影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載しております。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資金需要は、主に運転資金需要と設備投資需要であります。

 運転資金需要のうち主なものは、当社グループの原材料の仕入れ等の製造費用、販売費及び一般管理費の営業費用によるものであります。また、設備投資需要につきましては、主に新拠点設立、既存拠点の移転・増強、生産設備の取得等に伴う固定資産の購入によるものであります。なお、一般的な余剰資金の運用につきましては、安全性を第一に考慮し運用商品の選定を行っております。

 

(7)経営方針、経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループの経営方針等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課

題等(1)経営方針」に記載しております。

 なお、文中の目標比及び表中の2023年度修正計画の数値は、2023年11月10日に公表しました「連結業績予想の修正に関するお知らせ」の数値に基づいて計算したものであります。

 2023年度の実績につきましては、売上高477億62百万円(目標比0.1%減)、営業利益55億25百万円(同7.9%減)、経常利益55億86百万円(同9.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益40億1百万円(同6.1%減)となりました。

 

 2024年度の計画につきましては、売上高506億20百万円(前期比6.0%増)、営業利益66億円(同19.5%増)、経常利益65億60百万円(同17.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益46億50百万円(同16.2%増)を計画しております。

 2023年度の修正計画、実績及び2024年度の計画につきましては以下のとおりであります。

(単位:百万円)

 

2023年度

修正計画

構成比

(%)

2023年度

実績

構成比

(%)

増減額

増減率

(%)

2024年度

計画

構成比

(%)

売上高

国内

海外

47,820

36,470

11,350

100.0

76.3

23.7

47,762

36,502

11,260

100.0

76.4

23.6

△57

32

△90

△0.1

0.1

△0.8

50,620

38,620

12,000

100.0

76.3

23.7

売上総利益

29,900

62.5

29,525

61.8

△374

△1.3

32,400

64.0

販管費

23,900

50.0

24,000

50.2

100

0.4

25,800

51.0

営業利益

6,000

12.5

5,525

11.6

△474

△7.9

6,600

13.0

経常利益

6,160

12.9

5,586

11.7

△573

△9.3

6,560

13.0

親会社株主に

帰属する

当期純利益

4,260

8.9

4,001

8.4

△258

△6.1

4,650

9.2

 

5【経営上の重要な契約等】

 当連結会計年度において、経営上の重要な契約等の決定または締結等はありません。

 

6【研究開発活動】

 当社グループは、顧客から支持されるヘアデザイナーなど、高い美容のノウハウを持つ方に、顧客の代表として参画していただく「TAC製品開発システム」という仕組みで製品開発を行っております。ヘアデザイナーのデザインづくりなど、感性的な美容のノウハウを科学的な手法で解明し、製剤化技術によって製品に反映させることで製品を創り出しております。

 当連結会計年度におきましては、基礎・基盤研究に注力することでヘアケア分野を強化し、サステナビリティの観点から環境に配慮した研究開発活動に取り組みました。日本・米国・中国・タイの4拠点において、連携体制を強化したグローバルな研究開発にも取り組んでおります。また、2023年12月により長期的な視点での製品・サービス開発に向けた新たな研究拠点として、東京・羽田に「イノベーションセンター」を開設しました。他社協業、産官学連携などの推進や、最先端の研究技術を活用する場として、将来の事業の芽となる機密性の高い研究を推進していきます。

 今後は、変化の早い市場ニーズにいち早く対応するため、海外市場に向けては、従来の日本発のグローバル製品に加えて、各地の特性に合わせたローカル製品の開発に取り組み、世界の美容師、その先の顧客に喜ばれる製品を創り出したいと考えております。

 当連結会計年度の研究開発費の総額は2,334百万円(売上高に占める割合は4.9%)であり、主な研究開発活動とその成果は次のとおりであります。

 

(1)ヘアケア分野

 最新の毛髪研究成果と革新的な製剤開発技術の融合によってサロン品質を実現し、美容師の施術によって悩みを本質的に解決するサロンケア製品と、お客様の価値観やライフスタイルに合わせた美しい髪の実現を提案するホームケア製品の開発に取り組んでおります。

 プレミアムブランドのオージュアからは、日々のダメージ蓄積による髪のゆがみを整え、まとまりのある輝く髪に導く「オージュア インメトリィライン」を発売。「ミルボン」からはブリーチデザインの広がりを踏まえ、ハイトーン顧客に向けた「ブロンドプラスシリーズ」と「クリエイティブスタイルシリーズ シマー」を発売しました。そして、「ミルボン」のサブブランドとして新たに誕生した「ミルボンアンド」からは幅広い髪への実感効果と共に、楽しみながら香りを選べる「アロマティックシリーズ」を発売しました。

 テクニカルブランドからは繰り返しブリーチによる切れ毛を抑制する「マイフォース コントローラー」を発売しました。

 プロフェッショナルブランドからは、使用シーン毎に好みの剤型を選べ、日光から髪のうるおい感を守る「エルジューダ サンプロテクト」、ヘアアイロン前に使用し、面の割れない大きなカールが持続する「ミインカール」を発売しました。

 ヴィラロドラからは、エイジングやカラーダメージが進行しているお客さまへ自然の恵みによる補修効果で美しい色艶を叶える「ヴィラロドラ プロフェッショナル レノーボ テンプス&フルジェンス」を発売しました。

 新たな試みとして、ビューティライフケア戦略を推進すべく、美容器具を共同開発し、美容液噴霧機能付きヘアードライヤー「エルミスタ」を発売しました。

 

(2)ヘアカラー分野

 顧客に新たなヘアカラーデザインを提供する追加アイテムの開発と、最新の毛髪研究成果に基づいた付加価値の高い製剤開発に取り組んでおります。

 ヘアカラーブランド「オルディーブ」から、ハイライトデザインにまで上品な抜け感をまとわせる「リラクシーライン」を発売しました。「オルディーブ アディクシー」には、新たなスタンダードラインとして、オレンジアンダーをかき消し、透き通るグレイッシュを表現する3色相を追加しました。

 また、「オルディーブ クリスタル」からは、大人の髪に彩度ある輝きを与え自由で明るい色表現を叶える「ハイブライト」を発売し、「エノグ」に、締まり感でデザインを引き立て、その先のカラーチェンジまで可能にする脱染できる黒「オフブラック」を追加しました。

 

(3)ビューティヘルスケア分野

 当連結会計年度より、ビューティライフケア戦略における重点分野の一つとして、顧客の健康的で美しい生活を支えるトータルビューティを叶える商品を発売しています。

 「生命エネルギーの根源物質」とも呼ばれる5-ALAの約20年にわたる応用研究により、潤いあるみずみずしい毎日をサポートするビューティサプリメント「アラナス」を発売しました。

 

(4)基礎研究分野

 最先端の研究を製品開発に応用するため、毛髪や細胞をナノレベルで観察できる大型放射光実験施設「SPring-8」の利用や、大学との共同研究を積極的に進めております。これらの成果は、「オージュア」や「ミルボン」などの新製品開発に活かされております。

 また、大阪公立大学大学院医学研究科との共同研究部門において、ヒトiPS細胞を活用した新たな育毛研究を行い、ヒト毛包組織にて毛髪の伸長を促進させる成分を発見しました。この研究内容を、第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会2023にて発表し、口頭発表応用部門におけるトップ10に選出されました。この成分は2024年度に発売する新製品から順次応用する予定であります。

 

(5)その他の研究開発

 環境に配慮した研究開発活動として、2030年目標石油由来バージンプラスチック使用量30%削減目標に対し、4R(Reduce、Replace、Reuse、Recycle)の取り組みを実施しております。

 新製品では、ポンプ付きボトルと詰め替えパウチ仕様の採用により、ボトルの継続使用を推進しております。

 さらに、詰め替えパウチのキャップ小型化、キャップレスパウチへの切り替え及びボトル成型方法の変更で品質を維持したままプラスチック使用量の削減に取り組みました。これらの取組みは2023年度の新製品と既存製品に順次展開しております。