第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

 当社グループは、経営理念として「からだにやさしい未来の医療を築く ~私たちは「かけがえのない生命を守る」製品の開発・製造・販売に情熱を燃やし、人々の健康で豊かな生活に貢献します~」と定め、次の事項を経営の基本方針に掲げております。

① 医療に携わる企業として、社会に貢献することを第一義とし、人々の役に立ち喜ばれる製品を提供する。

② 創造性・意外性・感動性ある企業として発展するために、総力を結集する。

③ 従業員の生活を豊かにし、秩序ある明るい職場環境をつくる。

④ 企業の成長に不可欠な人材の発掘・登用、教育・育成に努める。

⑤ 事業活動で得た成果・利益は、持続的な企業価値の向上に向け、適切に配分する。

 

また、当社は、本年8月に50周年を迎えます。この50年を通過点として“10年後のありたい姿”を創造した将来構想を検討し、経営理念の実現に向け、今後の持続的成長、医療市場への貢献に資する事業活動を行ってまいります。

 

(2)目標とする経営指標等

 当社グループの重要な経営管理指標としては、売上高、営業利益、営業利益率としており、営業利益率については10%を目標にすることを中期経営計画の指標としており、将来的には15%を目指してまいります。また、財務指標としては株主資本利益率(ROE)と定めており、企業価値の向上と財務体質の強化を図るため、株主資本の効率的運用を目指し8%超にすることを目標としております。

 

(3)経営環境

 当社グループを取り巻く環境は、高齢化の進展や在宅医療の推進により新たな製品の需要が見込まれる一方、国民医療費の増加を背景に保険償還価格の引き下げが続いており、販売価格面では厳しい状況が続くものと予想しております。一方、海外では、中国の高度な医療へのニーズや新興国の経済成長もあって、今後もさらに市場拡大が進むものと見込んでおります。

 なお、新型コロナウイルス感染症の影響は、2023年5月に感染症法上の分類が5類感染症となったことから緩和され、社会経済活動は正常化に進んでおりますが、地政学的リスクの高まりや、原材料・エネルギー価格の高騰、急激な為替変動など、依然として厳しい状況が続いております。

 

(4)中期的な会社の経営戦略並びに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

 当社グループは、2024年の創立50周年を機に、経営理念「からだにやさしい未来の医療を築く」の深化、医療課題への貢献と将来の持続的成長に向けて策定した「中期経営計画・2025」を推進しております。

 具体的な重要施策は下記のとおりです。

 

① 国内販売の拡大

  自社販売の新製品投入、原価高騰に伴う販売価格改定による国内販売の拡大

② 海外販売の展開

  海外販売体制の強化、東南アジアなど新興国向け製品投入による海外市場の更なる販売拡大

③ 新製品の自社開発

  当社グループ開発部門の連携強化による自社開発品の新製品上市

④ 新規事業の探索

  将来的な成長戦略の柱となる新規事業の探索、M&A・アライアンスを含めた事業化の推進

⑤ 10年後の事業発展に資する将来構想

  今後の将来構想として10年後の“ありたい姿”の創造、バックキャストによる活動の推進

⑥ 人材の育成、多様性の確保

  当社および関係会社の人材育成、専門的な知識・経験・能力を有する多様性の確保

⑦ DX戦略の推進

  業務の効率化を目的としたDX戦略の推進

 

⑧ サステナビリティへの取組み

  ステークホルダーの期待および社会課題の解決を目的としたサステナビリティの推進

 

 「中期経営計画・2025」の最終年度となる2025年12月期の業績目標につきましては、連結売上高14,000百万円、連結経常利益は1,400百万円を目指してまいります。

 そのため、当社グループでは、開発面では重点戦略分野である泌尿器系・消化器系の製品ラインナップ充実に向けた新製品開発に注力するとともに、各生産拠点では製品の安定供給のためにリスク対策とコスト削減策の強化や原材料及び仕入品の新たな調達ルート開拓にも努めてまいります。また、営業面ではWEBを活用した営業活動、オンラインセミナーなどのマーケティング活動を展開する等の営業デジタルトランスフォーメーションを推進し、医療現場のニーズにお応えができるよう積極的な販売活動に取り組んでまいります。

 

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは次のとおりです。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社のサステナビリティとは、経営理念の実現を通して持続可能な社会の実現を目指すことであり、2022年4月にサステナビリティ基本方針を策定し、方針を明確化しました。

 

サステナビリティ基本方針

・人々に役立ち喜ばれる製品を創造し提供する。

・従業員の生活を豊かにし、働きがいのある職場をつくる。

・企業の持続的成長に不可欠な多様な人材の発掘・登用・教育・育成に努める。

・環境へ配慮した事業運営を目指す。

・創造性、意外性、感動性ある製品を創出する。

・安全に安心して使っていただける製品の提供、責任ある調達につとめる。

 

 当社はこの基本方針に則り、持続可能な社会の実現に向けた課題解決と当社の発展に向けて活動して参ります。

 サステナビリティ方針や取組みに関しては当社ホームページの「サステナビリティ」

(https://www.createmedic.co.jp/company/sustainability/)でもご覧いただけます。

 

 

(2)サステナビリティ全般に関するガバナンス及びリスク管理

 持続可能な社会実現のための課題解決の一翼を担うために、当社は2022年4月にサステナビリティ委員会を発足いたしました。当該委員会では基本方針の策定や重要課題の選定及び取組事項に関する検討を行い、その進捗は取締役会へ報告され、適宜、協議・決議されています。

 今後、上記委員会を中心にガバナンス体制を強化し、取組事項及び目標策定・進捗状況の管理など行い運営基盤の構築を推進して参ります。

 当社は、サステナビリティに関するリスクを含む経営に重大な影響を及ぼすリスクを、リスクマネジメント委員会で把握・確認し、その対応を検討、評価しております。また、その内容は取締役会にて報告され、具体的な対応策を協議いたします。

 

 

(3)戦略

 当社の取組事項は、当社ホームページの「サステナビリティ」にて公開しておりますが、環境負荷の低減、ガバナンスの強化、製品の安全性と患者様のQOLに配慮した製品開発に注力し、社会に求められる企業を目指すことで、持続可能な社会の実現に貢献して参ります。

 また当社は、持続的成長に不可欠である多様な人材の発掘・登用・教育・育成に努めることで、社員全員が能力を充分に発揮できる環境を整備するとともに、健康経営を推進することで従業員の生活を豊かにし、秩序ある明るい職場環境づくりを目指します。

 

①環境負荷の低減

 営業車のハイブリッド車切り替えや事業所におけるLED化の推進による省エネルギーに取り組んでおり、継続的な電力消費を抑える更なる取組みも行って参ります。

 また、生産拠点における無水エタノール再利用等の循環型社会を目指す取組みや輸送手段効率化によるCO2排出量削減等にも取組み、環境負荷の低減に寄与して参ります。

 

 

②人材の育成及び社内環境整備に関する方針

 当社は女性活躍推進のため、女性従業員の一般職から総合職への転換及び新規女性総合職採用を増加させ、教育訓練も強化しております。さらに、グローバル人材の採用促進により多様性の確保に努めるほか、関連会社を含めたグローバル人材の活躍について情報発信を行っていき、情報開示の充実と多様な視点からのアドバイスを取り入れることで、組織の活性化につなげて参ります。

 また、通信教育を活用した社内研修を実施し、希望する職員にはオンラインでMBA基礎科目を学べるシステムを導入しております。また、今後は全社員を対象としたサステナビリティ教育も加えて研修内容を充実させる方針であり、社員一人ひとりが日々の業務に活かせる知識を身につけられるよう取組んでおります。

 当社は従業員の健康促進を経営上の重要事項と位置付けており、2023年9月に「健康経営宣言」を公開いたしました。既に従業員の働き方に配慮した勤務制度を設計しており、リモートワークの制度化や法定以上の育児時短勤務制度の導入を行っておりますが、今後は更に産業医や健康保険組合との連携を強化し、各種健康対策として健康診断結果を基にした対象者への面談や健康指導を行う方針です。

 

 

(4)指標及び目標

 当社は上記「(3)戦略」において記載した、人材の多様性の確保を含む人材育成及び社内環境整備に関わる方針について、女性管理職比率30%到達を長期目標に掲げ、まずは2030年12月末までに15%以上の達成を目指しております。これらの実績は、「第1 企業の概況 5 従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。

 

 

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)医療行政の変更に関するリスク

当社グループの属する業界は、医薬品医療機器等法や医療保険制度などの行政機関の規制の下で事業活動をしております。日本国内の医療を取り巻く環境は少子高齢化に起因する地域医療構想の推進等、引き続き大きな変化が見込まれております。今後、医療行政において予測できない大改革が行われ、その変化に対応できない場合には、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、薬事法制の関連部門が行政機関及び医療制度の動向を定常的にモニタリングし、機動的に対応することでリスクの低減を図ってまいります。

 

(2)製品の安全性に関するリスク

当社グループは、高度な技術を要する医療機器を取り扱うことから、国内外の主要な事業拠点において品質国際基準ISO13485の認証を取得し、徹底した品質管理体制を確保しております。しかしながら、使用時の偶発的な不具合などにより医療事故等が発生した場合には、製造物責任により係争事件等に発展する可能性があるほか、製品の自主回収を行うリスクがあります。賠償責任や製造物責任の保険契約を締結しておりますが、万一保険範囲を大きく超える請求が認められた場合には、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、品質マネジメントシステムのISO規格などに基づき、厳しい品質管理及び品質保証体制を整備しております。製造段階から販売後まで品質のモニタリングを実施し、不具合が発生した場合は迅速に対応する体制の構築を目指してまいります。

 

(3)研究開発の結果に伴う市場変化等に関するリスク

当社グループは、独創的かつ効果的な製品を創出することを目指し、研究開発を行っております。そのため、研究開発投資や設備投資を行うほか、パートナー企業と連携するなど、新製品上市に向けた活動に努めております。

しかしながら、治療法の変化により当初期待していた新製品の有効性が得られない場合や、開発期間の長期化により機会損失が発生した場合には、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、開発マーケティング体制を強化するとともに、開発テーマごとの進捗状況のモニタリングや採算性評価などに努めております。

 

(4)販売価格の変動に関するリスク

当社グループの属する業界は、国内では医療費抑制策の一環として、特定保険医療材料価格の改定が概ね2年毎に実施され、さらに複数の医療機関が参加する共同購買も拡大しており、販売価格の引き下げの影響を受けております。また、中国市場でも医療保険財政の負担を背景に各地方で入札制度が実施されており、国内外において医療機器メーカーに対する価格低下圧力が強まっております。今後、想定を超えた製品価格の下落が生じた場合には、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、生産の自動化・省力化への投資等を実施し原価低減を図るとともに、販売管理費の抑制や高付加価値製品の上市に向けた研究開発等に取組み、販売価格の低下に対応するよう努めてまいります。

 

(5)原材料及び仕入商品の供給停止、価格高騰に関するリスク

当社グループは、カテーテルなど医療機器に関わる原材料や仕入商品について国内外のサプライヤーから供給を受けておりますが、天災や疫病、地政学的な要因などでサプライチェーンに混乱が生じているほか、原油価格の高騰により原材料及び物流コストが上昇しております。今後、さらなるサプライチェーンの影響が生じた場合には、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、原材料や仕入商品の調達ルートを新たに開拓し、安定供給と原価低減に努めてまいります。

 

 

 

(6)生産活動に関するリスク

当社グループは、国内工場及び海外拠点のうち、中国、ベトナムにおいて当社製品の生産を行っておりますが、これらの国で予期せぬ天災、疫病、法改正や政情不安などにより、原材料の調達や製造要員の確保等が困難になった場合は、生産の減少や生産停止となる可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、一つの生産品目を複数の生産拠点が製造できる体制を構築し、複数の供給業者からの調達等により、リスクが顕在化した場合の影響を最小化するとともに、製品の安定供給を目指してまいります。

 

(7)受託生産に関するリスク

当社グループの生産品には、自社ブランド品の他に特定顧客からの受託生産品があります。これらの受託生産品は、委託先の販売動向に左右されることから、販売低迷又は販売中止となった場合には、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、市況の変化や主要取引先の動向などの情報収集を行うとともに、新規受注の獲得に向けた営業活動を強化するなど、売上の急激な変化に対応してまいります。

 

(8)訴訟等に関するリスク

当社グループの事業活動には、訴訟、紛争、その他の法的手続きに関するリスクがあります。これらのリスクが顕在化し損害賠償請求や使用差し止め請求等の訴訟が提起された場合には、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、顧問弁護士や知的財産に関する社内専任担当者によるチェック体制を構築しており、リスクの回避を図っております。

 

(9)為替変動に関するリスク

当社グループでは、海外子会社を含む輸出入の一部で外貨建ての取引があり、さらに海外子会社の財務諸表を連結財務諸表作成のために円換算しております。そのため、金融市場が混乱し大幅な為替変動が生じた場合は、輸出入の取引、連結財務諸表における財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、海外子会社との取引の一部を円建てとするほか、急激な為替変動に備え適切なリスクヘッジ等の検討を行っており、リスクが顕在化した場合は速やかに意思決定出来るように体制構築を目指してまいります。

 

(10)海外展開に関するリスク

当社グループは、中国及びベトナムに事業拠点を置き、製品の生産並びに販売をしております。これらの進出国や地域において、国際紛争、経済情勢の悪化、法規制の変更、疫病、天災等が生じた場合は、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。また、海外子会社における移転価格について税務上のリスクが顕在化した場合には追徴課税が発生し、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、進出国や地域における政治・経済情勢等の定常的な確認を行い、リスクの発見及び対応に努めております。また、移転価格につきましては事業展開国の税務情報を収集し、外部の専門家からの助言を受けながらリスクの低減に努めてまいります。

 

(11)M&A及び業務提携等に関するリスク

当社グループは、企業価値の向上または事業基盤の強化を目的として資本提携や業務提携に取り組んでおります。これらの投資に対し、不測の事態により当初期待していた成果が出せない場合には、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、企業価値の向上等を目的とする資本提携等を行う際は、対象企業の入念な調査と分析を行い、リスクの低減に努めてまいります。

 

 

 

(12)情報セキュリティに関するリスク

当社グループは、事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報などの機密情報を保有しております。そのため、コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の外部からの不正アクセスが発生した場合は、システム停止による事業の中断や機密情報の流出が生じ、財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、事業全般においてITシステムを活用しており、業務の安定稼働には情報システムのリスクが重要であると認識し、情報セキュリティの強化や不測の事態を想定した対策を行い、必要に応じ外部の専門家からの助言を受けながら、リスクの低減を図っております。

 

(13)疫病や感染症の蔓延及び大規模災害に関するリスク

当社グループはグローバルに事業拠点を展開しておりますが、疫病や感染症の拡大及び大規模災害により、営業面における通常医療への影響、サプライチェーンにおける生産工場の操業停止や原材料の供給停止など、事業活動に多大な影響を受けた場合には財政状態や経営成績に重大な影響をおよぼす可能性があります。

このようなリスクに対応して、当社グループは、新型コロナウイルス感染症の経験により、従業員の感染防止策及び発生時の対応策を構築いたしました。疫病や感染症が蔓延した場合には、それらの知識と経験を活かし、被害の軽減を図ってまいります。また、大規模災害の発生については、「事業継続計画(BCP)基本方針」の制定や適切な訓練を行うことで、リスクが顕在化した場合の影響の最小化に努めてまいります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、社会経済活動の正常化に伴い景気は緩やかな回復が見られておりますが、一方で地政学的リスクの顕在化に加え、原材料・エネルギー価格の高騰や欧米各国によるインフレリスクに対応した政策金利の引き上げにより急激な為替変動が生じるなど、先行き不透明な状況が続いております。

このような状況のもと、当社グループは、営業面ではWEBを活用した営業活動、オンラインセミナーなどのマーケティング活動を展開し、さらに、医療機関等の訪問規制が緩和されたことを受けて営業活動を再開し、医療現場のニーズにお応えできるよう積極的な販売活動に取り組んでまいりました。

開発面では、中期経営計画の重点戦略分野である泌尿器系・消化器系の製品ラインナップ充実に向けた新製品開発に注力するとともに、国内外の薬事規制や欧州の医療機器規則の強化に対応したライセンスの維持、新規認証取得にも対応してまいりました。

生産面につきましては、製品の安定供給のため、生産拠点間の生産品目の分散化を図るとともに、原材料や仕入品の安定的な確保を目指して、新たな調達ルートを開拓いたしました。

以上により、売上高につきましては、自社販売における一部製品の欠品により減少となりましたが、海外販売の好調により、全体では増加となりました。利益面では、円安による輸入仕入コストの増加や物流コストの高騰により売上原価や販売費及び一般管理費が増加したものの、自社販売において販売価格の値上げを実施した効果もあり、営業利益が増加となりました。

また、現状における単体業績の収益性を基に、税効果会計における企業分類を変更し、繰延税金資産を取崩したことにより親会社株主に帰属する当期純利益が大幅な減少となりました。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

  a.財政状態

   当連結会計年度末の資産合計は、前連結会計年度末に比べ393百万円増加し、19,258百万円となりました。

   当連結会計年度末の負債合計は、前連結会計年度末に比べ172百万円増加し、4,314百万円となりました。

   当連結会計年度末の純資産合計は、前連結会計年度末に比べ220百万円増加し、14,944百万円となりました。

 

  b.経営成績

当連結会計年度の経営成績は、売上高12,585百万円(前期比2.1%増)、営業利益803百万円(前期比8.4%増)、経常利益872百万円(前期比4.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益154百万円(前期比68.1%減)となりました。

 

販売形態別の販売状況は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

 

2022年12月期

 

2023年12月期

 

前期比

金額

増減率

 自社販売

6,986

6,920

△65

△0.9

 海外販売

4,000

4,257

256

6.4

 OEM販売

1,340

1,407

67

5.0

 合 計

12,326

12,585

258

2.1

 

 

<自社販売>

自社販売のうち、泌尿器系製品のテューマーステントが堅調に推移した一方、フォーリートレイキットが欠品影響で低調となったことに加え、消化器系製品の一部を発売中止としたことにより、売上高6,920百万円(前期比0.9%減)となりました。

 

<海外販売>

海外販売のうち、中国販売における泌尿器系製品の一部が代替手技の普及等により減少する一方、消化器系製品が好調となり売上が増加いたしました。また、輸出販売は欧州向けの泌尿器系・消化器系製品が好調であったため、売上高4,257百万円(前期比6.4%増)となりました。

 

<OEM販売>

OEM販売は、検査・手術件数の回復を背景に血管系製品が好調であり、売上高1,407百万円(前期比5.0%増)となりました。

 

 

②キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ68百万円増加し、3,770百万円となりました。

 

 当連結会計年度における各連結キャッシュ・フローの状況と増減要因は次のとおりであります。

 

<1>キャッシュ・フローの状況

(単位:百万円)

 

 

2022年12月期

2023年12月期

増 減

 営業活動によるキャッシュ・フロー

478

698

220

 投資活動によるキャッシュ・フロー

43

△363

△407

 財務活動によるキャッシュ・フロー

△356

△362

△6

 現金及び現金同等物に係る換算差額

122

95

△26

 現金及び現金同等物の増減額

288

68

△220

 現金及び現金同等物の期首残高

3,413

3,702

288

 現金及び現金同等物の期末残高

3,702

3,770

68

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)
 営業活動の結果得られた資金は698百万円となりました。これは棚卸資産の増加額346百万円、法人税等の支払額360百万円などの資金の減少に対し、税金等調整前当期純利益904百万円、減価償却費588百万円などの資金の増加が主な要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
 投資活動の結果支出した資金は363百万円となりました。これは有形固定資産の売却による手付金収入86百万円の増加に対し、有形固定資産の取得による支出434百万円などの資金の減少が主な要因です。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
 財務活動の結果支出した資金は362百万円となりました。これは配当金の支払額335百万円、ファイナンス・リース債務の返済による支出26百万円などの資金の減少が主な要因です。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

製品系統別

金額(千円)

前年同期比(%)

泌尿器系

3,751,854

△5.1

消化器系

3,355,016

△4.8

外科系

965,882

△8.8

血管系

481,139

6.8

看護・検査系他

531,786

△7.5

合計

9,085,677

△5.0

(注) 金額は標準販売価格によって算出しております。

b.製品仕入実績

製品系統別

金額(千円)

前年同期比(%)

泌尿器系

2,171,273

40.8

消化器系

12,536

外科系

87,007

9.7

血管系

259,736

△0.1

看護・検査系他

381,398

△5.1

合計

2,911,951

31.2

(注) 金額は仕入価格によって算出しております。

c.受注実績

当社グループは主として販売計画に基づき生産計画をたてておりますが、OEM向け及び海外向けの一部については受注生産を行っております。

当連結会計年度における受注実績を製品系統別ごとに示すと次のとおりであります。

製品系統別

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

泌尿器系

713,346

19.9

24,515

21.3

(708,547)

(19.6)

(22,873)

(15.0)

消化器系

426,947

△1.4

212,659

6.1

(341,916)

(△8.3)

(186,671)

(3.6)

外科系

80,050

8.1

36,235

80.9

(24,112)

(54.1)

(19,695)

(197.0)

血管系

743,690

△1.2

207,471

△21.2

(33,768)

(19.9)

(13,279)

(66.6)

看護・検査系他

404,977

△18.5

70,511

△21.2

(△10,303)

(△126.4)

(492)

(△96.2)

合計

2,369,012

0.7

551,392

△7.1

(1,098,040)

(4.8)

(243,011)

(6.7)

(注)( )内の数字は内書の数字であり海外受注高を示しております。総受注高に対する海外受注高の割合は46.4%であります。

d.販売実績

当連結会計年度の製品系統別内訳は、次のとおりであります。

製品系統別

販売高(千円)

前年同期比(%)

泌尿器系

5,695,875

1.5

消化器系

3,567,466

4.7

外科系

1,100,309

1.1

血管系

820,859

5.4

看護・検査系他

1,400,937

△2.5

合計

12,585,449

2.1

 

(注)主な相手先別の記載については、相手先別の販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しています。

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態の分析

(資産)
 当連結会計年度末の資産は、前連結会計年度末と比較して393百万円増加し19,258百万円となりました。これは、受取手形の減少71百万円、売掛金の減少74百万円、投資有価証券の減少93百万円、繰延税金資産の減少242百万円に対し、現金及び預金の増加86百万円、商品及び製品の増加477百万円、その他の流動資産の増加135百万円、建設仮勘定の増加181百万円が主な要因であります。

(負債)
 当連結会計年度末の負債は、前連結会計年度末と比較して172百万円増加し4,314百万円となりました。これは、電子記録債務の減少30百万円、未払法人税等の減少44百万円、賞与引当金の減少45百万円、退職給付に係る負債の減少132百万円、長期未払金の減少31百万円に対し、前受金の増加86百万円、その他の流動負債の増加174百万円、繰延税金負債の増加216百万円が主な要因であります。

(純資産)
 当連結会計年度末の純資産は、前連結会計年度末と比較して220百万円増加し、14,944百万円となりました。これは、利益剰余金の減少182百万円に対し、為替換算調整勘定の増加326百万円、退職給付に係る調整累計額の増加51百万円が主な要因であります。

 

 

②経営成績の分析

(売上高)

 売上高は、前連結会計年度に比べて258百万円増の12,585百万円(前期比2.1%増)となりました。これは、泌尿器系製品の欠品影響により自社販売の売上が減少したものの、社会経済活動の正常化に伴い検査・手術数が回復したことを背景としたOEM取引先の受注増加に加え、欧州向けが好調に推移したこと、ゼロコロナ政策を転換した中国国内での販売増加や新興国の医療需要拡大による受注増加で輸出販売の売上が伸びたことも要因であります。なお、販売形態別の販売状況につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況 b.経営成績」に記載のとおりとなっております。

 

(営業利益)

 営業利益は、前連結会計年度に比べて62百万円増の803百万円(前期比8.4%増)となりました。これは、急激な円安による輸入仕入コストの上昇や物流費用の高騰などにより、売上原価・販売費及び一般管理費が増加したものの、自社販売において販売価格の値上げを実施したことなどが、増益の主な要因であります。

 

(経常利益)

 経常利益は、前連結会計年度に比べて37百万円増の872百万円(前期比4.5%増)となりました。これは、営業利益の増加に加え、為替差益を計上したことが、増益の主な要因であります。

 

(特別損益及び税金等調整前当期純利益)

 特別利益は補助金収入56百万円を計上いたしました。また、特別損失は、投資有価証券評価損24百万円を計上いたしました。なお、税金等調整前当期純利益は40百万円増の904百万円(前期比4.7%増)となっております。

 

(法人税等及び親会社株主に帰属する当期純利益)

 親会社の税効果における企業分類を変更し、繰延税金資産を取崩したことにより法人税等調整額を427百万円計上した結果、法人税等は前連結会計年度に比べて369百万円増の750百万円(前期比96.9%増)となりました。その結果、親会社株主に帰属する当期純利益は328百万円減の154百万円(前期比68.1%減)となっております。

 

③キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「第2 事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金需要のうち主なものは、部材・原材料の仕入れのほか、製造費、販売費及び一般管理費の営業費用であります。また、短期運転資金は自己資金及び金融機関からの短期借入を基本としており、設備投資や長期運転資金の調達につきましては、金融機関からの長期借入を基本としております。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づいて作成しております。この連結財務諸表の作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。

 連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは以下の通りであります。

 

(棚卸資産の評価)

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(繰延税金資産の回収可能性)

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

(固定資産の減損)

 「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。

 

⑤経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループでは、企業価値の向上と財務体質の強化を図るため株主資本の効率的運用を目指し、株主資本利益率(ROE)を8%超にすることを目標としております。当連結会計年度における株主資本利益率(ROE)は1.0%であり、引き続き株主資本利益率(ROE)の水準の向上に努めてまいります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

 2023年9月26日開催の取締役会において、資産の有効活用と、事業所の維持・管理コストの削減を目的として、現在の本社(横浜市都筑区)の土地・建物を、第三者に譲渡することを決議し、2023年9月26日に売買契約を締結しております。

 新たな本社については、同市内でオフィスを賃貸することを予定しており、一部の部署は現研究開発センター(川崎市川崎区)へ移動します。

 譲渡する土地・建物に関しては、2024年6月に引き渡しが完了する予定であり、譲渡益は2024年12月期での計上を予定しております。

 

 

 

6【研究開発活動】

当社グループは、国産メーカーとして創業当初から「かけがえのない生命を守る」という崇高な医療行為を支え、独創的かつ効果的なディスポーザブル医療機器を開発・製造することに邁進してまいりました。

また、環境が大きく変化する中、多様化、高度化する医療現場のニーズ(特に患者様のQOL向上)に対応した製品を具現化すべく、自社での研究開発・製造のみならず、国内外の各種メーカーのご協力もいただきながら、多くの製品を開発・製造してまいりました。

その結果として、2022年には、膀胱留置用カテーテルとなる“オールシリコーンフォーリーカテーテル(先端開口タイプ)”を発売し、現在もなお市場にて高い評価をいただいております。

なお、当連結会計年度の研究開発費は、850百万円(売上高比率6.8%)となっております。

また、中期経営計画・2025(2023年~2025年)においては、サステナビリティへの取り組みとして、「製品の安全性確保」、「QOLに配慮した製品開発」、「環境に配慮した製品開発」への取り組みも開発部門のマテリアリティ(重要課題)として取り組んでおります。

 

(1)日本

当社研究開発部門の2023年12月期末の在籍者数は47名であり、現在、本中期3ヵ年にて取り組んでいる研究開発活動は、下記の通りです。

 

① 消化器分野

本中期3ヵ年においては、カテーテル留置に併用して用いるシーキング性能とデリバリー性能を有するガイドワイヤの開発及び、ガイドワイヤと併用するデバイスの発売を計画していると共に、同分野の既存デバイスの改良を進めております。

 

② 泌尿器分野

尿道狭窄症などにより、排尿障害を発症した場合において、ガイドワイヤで狭窄部を越えたあとにガイドワイヤに被せて挿入できる膀胱留置用カテーテルとなる“オールシリコーンフォーリーカテーテル(先端開口タイプ)”を2022年に発売しました。

本中期3ヵ年においても導尿や採尿、膀胱洗浄等を行う時に必要なフォーリーカテーテルのラインナップ追加品の発売を計画していると共に、同分野のデバイス開発を進めております。

 

③ PEG分野

食道がんや咽頭がんなどにより、経口的な栄養投与ができない症例に対して用いるボタン型造設キットとなる“フェイシルPEGキット”及びボタン型交換カテーテルとなる“フェイシルボタン”を2020年に発売しました。

本中期3ヵ年においても前述の製品におけるサイズラインナップ追加となる製品の発売を計画していると共に、同分野のデバイス開発を進めております。

 

中期経営計画・2025の初年度(2023年)に掲げた「国内販売の拡大」、「新製品の自社開発」への取り組みとして、引き続き自社開発品(新製品・改良品)の積極的な上市に取り組んでおります。

また、動物医療の市場へも着目し、現有ノウハウを生かして、2023年は4品目の新製品を発売しました。

 

 

 

(2)日本以外

当社グループが開発・製造してきた百数十品目のノウハウを生かして、各国の市場ニーズに合致した製品を提供するため、OEM・ODM供給を含めた新規開発や改良に取り組んでおります。

また国外、特に中国やASEAN諸国といったアジア圏各国への進出強化に向け、薬事・開発体制を含めた製品化までの新しい開発プロセスを構築し、2021年度から本格的にASEAN諸国へPEG分野・泌尿器分野の製品を主軸として発売しました。また、新たにインド及びインドネシアのライセンスを取得したことから、中期経営計画・2025ではPEG分野・泌尿器分野・血管分野の製品を主軸として販売を計画しております。