第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

 

回次

第7期

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

決算年月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(千円)

620,705

501,013

1,635,192

896,362

経常損失(△)

(千円)

1,081,647

1,213,748

2,174,230

2,102,936

親会社株主に帰属する

当期純損失(△)

(千円)

1,511,710

1,225,869

2,591,834

2,543,190

包括利益

(千円)

1,508,567

1,213,246

2,544,096

2,604,739

純資産額

(千円)

3,572,642

5,419,419

2,938,782

2,264,514

総資産額

(千円)

4,008,930

5,715,185

4,976,675

5,094,851

1株当たり純資産額

(円)

325.92

436.03

229.66

147.99

1株当たり

当期純損失(△)

(円)

139.54

103.94

209.77

197.05

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

88.6

94.0

57.1

42.2

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

1,163,945

1,345,852

2,148,199

2,572,295

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

749,238

751,875

271,208

94,444

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

29,407

2,965,517

1,013,910

2,809,724

現金及び現金同等物の

期末残高

(千円)

1,891,731

2,759,957

1,356,252

1,499,555

従業員数

(人)

65

70

71

90

(外、平均臨時雇用者数)

(―)

(―)

(7)

(12)

(17)

(10)

 

(注) 1.第9期連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、それ以前については記載しておりません。

2.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

3.自己資本利益率及び株価収益率については、親会社株主に帰属する当期純損失であるため記載しておりません。

4.第10期は、決算期変更により2021年4月1日から2021年12月31日までの9か月間となっております。

 

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

第7期

第8期

第9期

第10期

第11期

第12期

決算年月

2019年3月

2020年3月

2021年3月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(千円)

807,348

1,278,723

620,705

501,013

1,635,192

884,860

経常利益又は経常損失(△)

(千円)

176,977

231,427

1,081,559

1,211,231

2,272,519

2,116,391

当期純利益又は当期純損失(△)

(千円)

183,335

239,801

1,511,710

1,223,557

2,584,529

2,459,967

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

2,963,559

3,008,168

3,021,823

4,537,758

17,497

971,479

発行済株式総数

(株)

10,264,605

10,742,790

10,899,675

12,318,600

12,380,835

14,514,261

純資産額

(千円)

4,701,831

5,034,217

3,569,699

5,414,351

2,929,248

2,347,115

総資産額

(千円)

4,926,958

5,268,135

4,005,327

5,708,810

4,961,171

5,176,671

1株当たり純資産額

(円)

457.93

468.56

325.92

435.92

229.17

153.75

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり当期純利益

又は当期純損失(△)

(円)

19.42

23.00

139.54

103.75

209.18

190.60

潜在株式調整後

1株当たり当期純利益

(円)

21.06

自己資本比率

(%)

95.4

95.5

88.7

94.1

57.2

43.1

自己資本利益率

(%)

4.9

株価収益率

(倍)

85.19

配当性向

(%)

営業活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

176,941

407,985

投資活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

58,063

369,860

財務活動による

キャッシュ・フロー

(千円)

2,631,687

87,872

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

4,465,591

3,775,617

従業員数

(人)

39

45

65

70

71

87

(外、平均臨時雇用者数)

(6)

(6)

(7)

(12)

(17)

(10)

株主総利回り

(%)

51.0

68.8

54.8

46.6

23.6

(比較指標:日経平均株価)

(%)

(―)

(89.0)

(137.6)

(135.8)

(123.1)

(157.8)

最高株価

(円)

4,180

5,230

3,430

2,895

2,329

1,742

最低株価

(円)

2,133

1,642

1,828

1,678

1,327

802

 

(注) 1.持分法を適用した場合の投資利益については、第7期から第9期は関連会社を有していないため記載しておりません。また第10期から第12期は関連会社を有しておりますが、連結財務諸表を作成しているため記載しておりません。

2.第7期及び第9期から第12期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

3.第7期及び第9期から第12期の自己資本利益率及び株価収益率については、当期純損失を計上しているため、記載しておりません。

4.1株当たり配当額及び配当性向については、無配のため、記載しておりません。

5.第9期より連結財務諸表を作成しているため、第9期から第12期の営業活動によるキャッシュ・フロー、投資活動によるキャッシュ・フロー、財務活動によるキャッシュ・フロー及び現金及び現金同等物の期末残高については記載しておりません。

6.定款に基づき、2018年8月20日付でA種優先株主及びB種優先株主の株式取得請求権の行使を受けたことにより、全てのA種優先株式及びB種優先株式を自己株式として取得し、対価として当該A種優先株主及びB種優先株主にA種優先株式及びB種優先株式1株につき普通株式1株を交付しております。また、その後、2018年8月21日付で当該A種優先株式及びB種優先株式をすべて消却しております。なお、当社は2018年9月1日付で種類株式を発行する旨の定款の定めを廃止しております。

7.当社は、2018年9月1日付で普通株式1株につき15株の株式分割を行っておりますが、第7期の期首に当該株式分割が行われたと仮定し、1株当たり純資産額及び1株当たり当期純損失金額を算定しております。

8.当社は2018年12月21日付で東京証券取引所マザーズ(現グロース市場)に株式を上場いたしましたので、第7期の株主総利回り及び比較指標については記載しておりません。

9.最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所(グロース市場)におけるものであり、それ以前は東京証券取引所マザーズにおけるものであります。なお、2018年12月21日付で同取引所に株式を上場いたしましたので、それ以前の株価については記載しておりません。

10.第10期は、決算期変更により2021年4月1日から2021年12月31日までの9か月間となっております。

 

2 【沿革】

当社の設立以降の沿革、主要な事業に関する公開情報は以下のとおりであります。

 

年月

概要

2013年11月

千葉県千葉市中央区に株式会社自律制御システム研究所を設立

2016年7月

事業規模の拡大に伴い、千葉県千葉市美浜区に本社移転

2016年11月

高速通信回線LTE網を利用したドローン遠隔制御に史上初の成功

2017年5月

ドローンの製造拠点を栃木県鹿沼市に設置

2017年7月

画像認識により飛行する「大脳型」自律制御を開発し、ドローン実装により商用化

国家戦略特区 千葉市ドローン宅配等分科会技術検討会にて、東京湾上空の飛行に成功

九州北部の豪雨災害、福岡県東峰村にてドローンによる現状調査を実施

2018年2月

開発、製造拠点を統合し、東京都江東区へ移転

2018年11月

日本郵便株式会社が開始したドローンを用いた郵便局間輸送において当社機体を提供

2018年12月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

ISO9001認証を取得

2019年1月

一般社団法人 日本産業用無人航空機工業会(JUAV)が定める安全基準認定において小型回転翼無人機として初の型式認定の取得

2019年4月

開発、製造拠点を東京都江戸川区へ移転

2020年4月

政府調達向けのドローン開発を想定した、NEDO(注1)「安全安心なドローン基盤技術開発」に採択

2020年6月

東京都江戸川区へ本社を移転し、開発、製造拠点と統合

2020年12月

技術シナジーが期待できる国内外の企業へ投資を行うコーポレートベンチャーキャピタルとしてACSL1号有限責任事業組合を設立

2021年5月

閉鎖環境点検ドローンの量産を見据え、株式会社NJSと共同出資で株式会社FINDiを設立

2021年6月

日本及びグローバルレベルでの認知度を高めるため、株式会社ACSLに商号を変更

レベル4に対応したドローンの開発及びドローン配送の実用化に向けて、日本郵便株式会社及び日本郵政キャピタル株式会社と資本業務提携契約を締結

2021年9月

インド市場で事業展開すべく、Aeroarcと共同出資のACSL India Private Limitedを設立

2021年12月

セキュアな小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」の受注を開始

情報セキュリティマネジメントシステム認証ISO/IEC27001を取得

2022年5月

地上走行ロボットを開発するアイ・イート株式会社(現REACT株式会社)と資本業務提携契約を締結

2022年12月

日本郵便株式会社、日本郵政キャピタル株式会社と新たな物流専用の国産ドローンを発表

2023年1月

日本発の量産型物流専用ドローン「AirTruck」が2022年日経優秀製品・サービス賞 最優秀賞を受賞

ドローン関連企業として世界で初めて国連専門機関である万国郵便連合の諮問委員会に加盟

米国市場への本格進出に向け、子会社であるACSL, Inc.をカリフォルニア州に設立

2023年3月

日本初のレベル4(注2)対応の無人航空機の第一種型式認証書を国土交通省より取得

2023年11月

小型空撮ドローン「SOTEN(蒼天)」の米国への輸出許可を取得

 

(注) 1.NEDO:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構

2.有人地帯上空における目視外飛行

 

 

3 【事業の内容】

当社グループは、「技術を通じて、人々をもっと大切なことへ/Liberate Humanity through Technology」というミッションのもと、「最先端のロボティクス技術を追求し、社会インフラに革命を/Revolutionizing Social Infrastructure by Pursuing Cutting-Edge Robotics Technology」というヴィジョンを掲げております。当社グループは、自律制御(※1)技術を始めとしたロボティクス技術を追求し、常に最先端の技術開発を行っております。労働人口の減少や高齢化による人手不足の深刻化が進む一方で、インフラ設備の老朽化による設備点検・維持業務の増加や、生活様式の変化に伴うEC化による宅配業務の増加など、労働力の供給不足及び需要と供給の不一致は社会的な課題となっています。これらの社会課題に対し、当社グループはコアである独自開発の制御技術とそれを利用した「産業向け」の飛行ロボット(以下、「ドローン(※2)」という。)の社会実装により、当社グループのミッション・ヴィジョンの実現を通じて解決を目指しております。

近年、ドローン市場を取り巻く環境は大きく変化しており、オペレーションの効率化・無人化に向けたドローンを含むロボティクスの導入が、世界的に広がっております。また、世界的な脱炭素化の流れのなかで、電気を動力源とするドローンは、脱炭素化・EV化の手段としても注目を集めております。加えて、地政学的リスクの高まりや不安定な世界情勢などから、経済安全保障やセキュリティへの関心が強くなっております。特に海外ドローン市場においては、日本以上に経済安全保障への関心が高く、昨今の世界情勢の状況により転換期を迎えております。当社グループは、セキュリティが担保された国産ドローンを有しているのみならず、企業向け対応および用途特化型をキーワードとしたポジショニング形成が可能であり、海外におけるセキュアなドローンへの需要にも適応することができる可能性が高く、当社製品は海外市場においても十分に競争力を持つ製品であると認識しております。当社グループは、米国市場での官庁・社会インフラ関連企業にて利用されている中国製ドローンからのスイッチングを目指し、販売子会社として2023年1月にACSL, Inc.を設立しております。

当社グループの主たる事業は、産業用ドローンの自社開発、ドローンを活用した無人化システムの受注開発、生産及び販売・サービス提供であります。ドローンは、「空(そら)」や「空(カラ:屋内の開かれた場)」といった、屋内外問わず、空間の制約を克服して自動化・省人化を達成可能であり、この技術の潜在的な利用可能分野は極めて大きいと考えております。当社グループは最先端の自律制御技術をコアとして、顧客の業務を代替・進化させるドローンを提供するべく、顧客の現場視察、対話、そして実証を通して用途特化型ドローンの開発を進めております。

当社グループの事業は、ドローン関連事業の単一セグメントであるため、以下に当社グループの主要な製品及びサービスの内容を記載いたします。

 

(1) 当社グループの事業内容

当社グループのビジネスモデルは、顧客からのドローン導入の打診に基づき、顧客におけるドローン活用による課題解決の概念検証(PoC:Proof of Concept(※3))、及び概念検証(PoC)を経て顧客の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行う「実証実験」と、顧客における試用(パイロット)ベースの導入として当社のプラットフォーム(※4)機体をベースにした機体の生産・販売を行う「プラットフォーム機体販売」であります。更に、これらの実証実験、プラットフォーム機体販売を通じて、当社が提供できるソリューションの作り込みを行い、ドローンの利活用が多く見込まれる用途において、「用途特化型機体」として量産機体の開発・生産・販売を推進しております。

「実証実験」では、顧客のドローン導入のニーズを踏まえて、課題解決のために当社のテスト機体を用いた概念検証(PoC)に係るサービスを有償で提供しております。この概念検証(PoC)では、最小限のシステム構成にすることで、顧客のドローン活用の導入検討のハードルを下げつつ、業務効率化・無人化の検証を並行して行っております。なお、当社における概念検証(PoC)は単にアイデア提供等を行うサービスではなく、目的の業務においてドローン導入の有効性を判断するための飛行試験・実演を伴う概念検証サービスを指します。更に当社では、顧客の既存システムへの組み込みも含めた特注システム全体の設計・開発を行っております。業務効率化などの効果実現に向け、特注システムの提供のみに留まらず、安全導入に不可欠なドローンの操作シミュレータやドローンの保守点検サービスを提供し、システム導入・運用サポートを一貫して提供しております。なお、顧客の既存システムへ組み込むソリューションの取り組み事例としては、工場設備、橋梁、煙突内部、下水道管路内等の閉鎖環境、風力発電設備、船舶内のホールド等の点検自動化、建設現場や発電所等の屋内巡視自動化、ドローンによる物流システムの運用構築、災害現場の把握等がございます。これらの特注システム開発に際しては、概念検証(PoC)のサービス提供料や特注システムの仕様提案・設計・開発・試験運用に係るカスタム開発料を主な収益源としております。概念検証(PoC)を含めて有償のサービスモデルを構築し、顧客の側で継続的なプロジェクトをスムーズに立案・実施することを可能にしております。

「プラットフォーム機体販売」においては、顧客における試用(パイロット)もしくは商用ベースでのドローン導入として、当社が保有するプラットフォーム機体の生産・販売を行っております。この段階では、当社のプラットフォーム機体をベースに顧客の実業務への展開に向けたカスタマイズなどを行っております。

「用途特化型機体」の開発、生産、販売として、ドローンの幅広い利活用が見込まれる特定の用途においては、用途に特化したドローンの量産を進めております。

当社グループでは、各段階で収益を獲得する案件が一般的ですが、案件によっては、特注機体を開発、複数台製造をしつつ、運用システムを構築するなど実証実験とプラットフォーム機体販売を組み合わせて包括的に契約を締結する場合もあります。

なお、機体販売後の運用サポートにおいては、販売後、定常的に発生する機体の保守手数料や消耗品の販売料などを主な収益源としております。

当社グループ製品・サービスが産業向けドローン業界におけるデファクト・スタンダードとなるためには、今後も継続的かつ積極的に研究開発活動を実施していくことが不可欠となります。そこで、当社グループでは産学官連携で様々なプロジェクトに参画し、最先端の技術開発に取り組んでおります。国家プロジェクトにおいては、各プロジェクトで発生した研究開発費用について、管轄機関の監査を受けて認められた金額を、助成金又は補助金として収受しております。なお、助成金又は補助金に関して、新規技術の研究開発に係る助成金又は補助金については、営業外収益として計上しております。また、新規の研究開発を行わず、既存の当社の技術を用いて委託された実験を行うことが主目的であるプロジェクトについては、収受した金額を売上高として計上しております。

当社グループは、国内のドローン専業メーカーとして、ドローンの社会実装と国産ドローン採用への回帰が進む中で、日本のドローン市場の成長と合わせて、黎明期に求められる評価用機体の試作や実証実験といったソリューションの作り込みから、成熟期に求められる量産機の開発、量産体制の構築、その後の販売・導入支援までを一気通貫で提供し、デファクト・スタンダードの技術としてドローンの社会実装を推進するべく、国産のセキュアな産業用ドローンを提供してまいります。

 

 

■ ドローン市場のバリューチェーンと当社の立ち位置


 

[事業系統図]


 

(2) 当社グループの特徴

当社グループは自律制御の研究開発をゼロから国内で行うことで、「自ら考えて飛ぶ」最先端の制御技術を核とした技術力を有しており、通信・ソフトウエアなどを統合した制御パッケージや、高性能な機体プラットフォームを提供することに加えて、用途別にカスタマイズした産業向け特注機体、特注システムの開発、更に最終的には顧客システムに統合されたレベルのシステム開発まで、事業として幅広く対応することが可能となっております。

① 独自開発の自律制御システム

当社は千葉大学発のスタートアップ企業として創業して以来、自律制御技術を中核技術と位置づけ、継続的に開発投資を行ってまいりました。当社の中核技術でもある自律制御技術は、人間でいう「頭脳」に相当します。人間でいう運動機能をつかさどる「小脳」に該当する部分であるドローンの姿勢制御、飛行動作制御等の技術については、モデルベース(※5)の先端制御理論に加え、一部で非線形制御(※6)に係るアルゴリズム(※7)を使用しており、競合他社やオープンソースコードを推進する団体が採用する一般的なPID制御(※8)と比較しても、耐風性や高速飛行時の安定性、突発的な動作に対する安定性などの点で優位性があります。人間でいう、目で見ることや自ら考えること等に係る機能をつかさどる「大脳」に相当する部分の技術は、画像処理による自己位置推定(Visual SLAM(※9))やLidar(光センサー技術)等のセンサー・フュージョン、AI(※10)による環境認識を開発し、ドローンの「小脳」部分に統合しており、従来のドローンに搭載されている衛星(GPS(※11)・GNSS(※12))を用いる制御では自律飛行(※13)することができなかった非GPS環境下での完全自律飛行を実現しております。

また、人間がロボットに対し状態の監視や指令を行い、対話を可能とするための技術として「UI/UX(※14)」の技術が必要となります。ドローンはエッジ処理(ドローン端末側で計算処理を実行すること)による自律的な飛行を行いますが、一般的には地上局と通信を行いながら飛行しており、自律飛行を行うためのルート設計及びドローンの飛行中の情報を遠隔にて可視化・モニタリングするため、地上局のソフトウエア技術が必要不可欠となっております。当社では地上局のソフトウエアについても独自開発を行っており、パソコンやタブレット、スマートフォンなどに搭載されたソフトウエアにリアルタイム情報を表示し、飛行速度や高度などの機体状態や飛行状況の管理を行うことや、飛行ルート変更の操作指示、緊急時には非常用介入操作指示を出したりすることが可能となっております。

当社が有している独自開発の自律制御システムは、三次元空間において自律制御が求められる難易度の高いドローン分野で培った技術であり、今後、これらの技術はドローン以外の様々な用途のロボティクスに展開可能となっております。

 

■ コア技術の自律制御システムとその展開性


 

② 顧客との取り組みを通じたノウハウ

産業用ドローンの社会実装においては、単に機体性能や制御技術の高いドローンを提供するだけでなく、特定用途で利用するための機体や制御の改良、機能アプリケーション(※15)や搭載オプションの開発・追加等が必要となります。これらの改良や開発を行うためには、実際にドローンが導入される実環境下での飛行実績を積み重ねることが重要となっており、多様な環境下での実証実験とデータの蓄積、クライアントからのフィードバック及びそれらに基づく機体開発や技術開発が不可欠となっております。

当社グループは主に大企業を中心に多くの幅広い顧客ベースを有し、これまでの多くの顧客とのプロジェクトを通じて、様々な現場視察、クライアントとの対話、そして豊富な実証実験の実績があります。実証から得られた情報やフィードバックを基に、プラットフォーム機体の改良や搭載オプションの開発・追加、UI/UXの改善を行っております。

 

 

用語解説

本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記します。

 

No.

用語

用語の定義

※1

自律制御

機体の自律行動を実現する制御方式または技術

※2

ドローン

遠隔操縦または自律式の無人航空機一般

※3

概念検証(PoC:Proof of Concept)

新たな概念やアイデアの実現可能性を示すために、可能な範囲で限られた手段を組み合わせて試験的な実験を行うこと。デモンストレーションによって特定の概念や理論の実用化が可能であることを示すこと

※4

プラットフォーム

必要最低限の技術要素をパッケージ化した技術の塊のことを意味し、カスタム製品や搭載物を変えて用途別製品を開発する際に使用できる基盤となる一連の技術要素の組み合わせのこと

※5

モデルベース

制御対象の運動を数学モデルによって表現することに基づいた制御設計技術

※6

非線形制御

制御理論、制御技術の一つであり、一般的にPID制御よりも高度な数学が用いられ、制御対象をより正確に制御することが可能な制御技術

※7

アルゴリズム

コンピューター上における問題を解くための手順・解き方

※8

PID制御

比例(P)制御、積分(I)制御、微分(D)制御の組み合わせによって、設定された目標値にフィードバック(検出値)を一致させる制御機能を指す。速度、圧力、流量、温度などの制御に使用される技術

※9

SLAM

Simultaneous Localization and Mappingの略称で、各種センサーから取得した情報から、自己位置推定と地図作成を同時に行うこと

※10

AI

Artificial Intelligenceの略称。学習・推論・認識・判断などの人間の知能的な振る舞いを行うコンピュータシステム

※11

GPS

Global Positioning Systemの略称で、全地球無線測位システムを指す。カーナビゲーションシステムなどに利用されているシステム

※12

GNSS

Global Navigation Satellite Systemの略称で、全地球測位システムを指す。人工衛星を使用して地上の現在位置を計測する「衛星測位システム」のうち、全地球を測位対象とすることができるシステム

※13

自律飛行

事前のプログラミングなどにより人の操縦がなくても飛行可能な飛行方法

※14

UI/UX

User Interface及びUser Experienceの略称で、機械が利用者のために有する特性・機能とそれらを利用することで得られる印象・体験のこと

※15

アプリケーション

特定の適用または応用する用途のこと全般、もしくは特定の用途のためのソフトウエアのこと(アプリケーションソフトウエア)

 

 

 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金又

は出資金

主要な事業

の内容

議決権の所有

(又は被所有)

割合(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

ACSL1号有限責任事業組合
 (注)2

東京都

江戸川区

503,030千円

ドローン関連事業

99.0

ACSL, Inc.

米国

カリフォルニア州

 600千
 USドル

ドローン関連事業

100.0

役員の兼任、

当社製品の仕入販売

(持分法適用関連会社)

 

 

 

 

 

ACSL India Private

Limited

インド共和国

ニューデリー

75,000千

インドルピー

ドローン関連事業

49.0

役員の兼任、

資金援助あり

 

(注) 1.「主要な事業の内容」欄には、セグメント情報に記載された名称を記載しております。

2.特定子会社であります。

3.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

2023年12月31日現在

従業員数(人)

90

(10)

 

(注) 1.従業員数は就業人員(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含む。)であり、臨時雇用者数は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.当社グループの事業は、ドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

(2) 提出会社の状況

2023年12月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

87

(10)

40.2

3.5

7,120

 

(注) 1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む。)であり、臨時雇用者数は、年間の平均人員を( )外数で記載しております。

2.前事業年度末に比べ従業員数が16名増加しております。主な理由は、業容の拡大に伴い期中採用が増加したことによるものであります。

3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

4.当社の事業は、ドローン関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 

(3) 労働組合の状況

当社の労働組合は、結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。