文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経営方針
・ミッション「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」
ICT(情報通信技術)は今この時もあらゆる場所へ活用範囲を広げ、その用途や役割を変化させ続けています。影響力や重要性も高まるなか、ICTになにを求めるかを今一度考えることが重要であると考えております。ICTに仕事を奪われるのではなく、生みだされた時間でいかに「協創」を生みだすか。これこそがドリーム・アーツが考える、ICT本来の役割です。ICTだけではできない、人間だけではできない。ドリーム・アーツはそうした難題の解決を、ICTと「協創」でお手伝いしてまいります。
・スローガン「協創力を究めよ Peak the Arts of Co-creation」
創業以来「Arts of Communication」をスローガンに掲げてきましたが、「協創」こそが我々ドリーム・アーツ自身の存在意義であると再定義しました。人間がもつ知性の根源的・根本的な活動であるコミュニケーションから生み出される「協創」を、自らが究め続けてまいります。
・ビジョン「BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーを目指す」
BD(ビッグ・ドーナツ)は当社グループの造語です。「ビッグ」は当社グループがターゲットとする国内の従業員1,000名以上の大企業約4,000社を指します。「ドーナツ」は、企業内システムに対する比喩であり、ERPなどのミッションクリティカルな基幹系システムを取り囲むように配置されている現場部門向けのシステム領域を指します。
現在、BD領域のシステムは、ERPのカスタマイズで対応することが主流となっていると認識しております。その開発と運用は、システムインテグレーターによって請負われており、企業は多額の投資を余儀なくされ、激しく変化するビジネス環境への対応を難しいものにしていると考えております。
近年、多様なSaaS(経費精算、請求書管理、契約・法務、顧客管理、マーケティングオートメーション、ビジネスインテリジェンス等)が普及し、BD領域の投資効率は徐々に向上しておりますが、各社固有の業務プロセスには対応することができず、大企業のデジタル化を遅らせる大きな要因となっているものと想定しております。今後BD領域はDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進における核心的な領域となるため、予算配分の見直しが進み、投資が急拡大すると予想しております。
当社グループは、BD(ビッグ・ドーナツ)市場のリーディングカンパニーとして、大企業の投資効率の向上と業務デジタル化を推進し、現場で働く人々や組織の生産性を高め、より多くの付加価値を生み出す「協創」環境の創造に貢献してまいりたいと考えております。
・バリュー「DA Values」
当社グループは「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」というミッションの実現に向け、行動指針としてDA Valuesを定義しております。DA Valuesは創業以来、その時々の環境や状況に合わせて再考し、アップデートを重ねてきた当社の根幹を支える理念でもあります。役職員がDA Valuesを意識し日々の業務に取り組むよう、継続して周知徹底してまいります。
・顧客との信頼
・自律とリーダーシップ
・挑戦と変革
・機会の本質
・やりぬく忍耐と勇気
・建設的対立
(2)経営環境
我が国では、少子高齢化に伴う労働人口の減少が深刻化しており、デジタル技術の活用による生産性向上が喫緊の課題となっております。企業を取り巻く環境は、デジタル化の進展に伴う破壊的イノベーションの波が押し寄せ、DX(デジタルトランスフォーメーション)による新たな収益の柱を確立する必要性に迫られているものと認識しております。また、コロナ禍に端を発する働き方の変化に対応するため、組織全体の意識共有を図り、従業員のエンゲージメントを高めることも大きな課題となっていると考えております。
しかしながら、DX推進の役割を果たすべき国内のIT産業は、多くの産業構造上の問題を抱えております。デジタルトランスフォーメーションの加速に向けた研究会による「DXレポート2」(令和2年12月)が指摘しているとおり、ITベンダーの多くは受託開発中心のビジネスモデルを採用しており、開発費用が労働量に比例するため、生産性向上によって収益が減少するというジレンマに陥っております。また、独立行政法人情報処理推進機構の「DX白書2023」によると、国内IT人材125万3,930人のうち、73.6%にあたる92万2,470人までがITベンダーに所属しており、ユーザー企業に所属するのは33万1,460人に止まっております。そのため、企業においてはシステムの内製化が進まず、技術力・ノウハウも蓄積されないまま、ITベンダーに依存せざるを得ない状況が続いております。さらには、IT人材そのものが圧倒的に不足しており、みずほ情報総研株式会社の「IT人材需給に関する調査」(2019年3月)によると、2030年までにIT人材の需要は158万人となる一方で、供給は113万人までしか伸びず、約45万人の需給ギャップが生じると試算されており、業務デジタル化の進展に大きな影響を与えるものと懸念されております。
大企業の社内システムに目を向けると、ERPなどの基幹システムのブラックボックス化が進み、データ活用による環境変化への対応が難しい状況にあります。また、IT予算の9割が既存システムの保守に充てられ、新たなビジネスモデルに変革するためのシステム開発が進まないだけでなく、IT人材不足によるシステムトラブルやデータ滅失の危険性を抱える状況となっております。
こうした状況を受け、前述の「DXレポート2」(令和2年12月)では、DXを実現するためのフレームワークが示され、DXの目的である「ビジネスモデルのデジタル化」を成功させるには、基盤システムの刷新、業務のデジタル化、製品・サービスのデジタル化を段階的に進めていく必要性が指摘されました。
大企業がDXを推進するためには、まず非競争領域である基幹システムを刷新し、コストダウンを図るとともに、業務データのデジタル化や、社内外にまたがる業務プロセスのデジタル化を実現するといった情報基盤の整備を急ぐ必要があることも指摘されております。
(3)経営戦略
このような経営環境の下、当社グループは「デジタルの民主化」をコンセプトに掲げ、ITスペシャリストだけでなく、ITの専門知識を持たない現場部門のビジネス系人材を巻き込んだクラウド時代の業務デジタル化を推進しております。
当社グループが提供するSaaSプロダクト「SmartDB®」は、プログラミング不要の「ノーコード開発ツール」であり、直感的な操作と簡易な設定で、非IT人材による業務アプリケーションの開発を可能とすることを目指しております。IT人材の不足をビジネス系人材の活用によって補うことで、大企業の業務のデジタル化推進を支援していきたいと考えております。
また、「ノーコード開発ツール」は、業務に精通した現場担当者がシステム開発を推進することによって、要件定義や仕様設計などのプロセスを短縮し、開発生産性の向上を図ることができるものと考えております。さらには、現場部門が自ら「業務デジタル化」を推進することで、これまで放置されていたアナログ業務のデジタル化が進み、DX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた企業文化や組織風土の変革に取り組みやすい環境をつくることにつながるものと考えております。
「SmartDB®」は、ノーコード開発ツールでありながら、受託開発にも引けを取らない高度な機能を備えているものと認識しております。そのため、単純なデータベースやワークフローなどの標準的なものから、ERPフロントシステムや基幹業務を支えるサブシステムに至るまで、ミッションクリティカル領域の周辺システムとして幅広く活用することができるものと考えております。従来システムインテグレーターが担ってきたBD(ビッグ・ドーナツ)領域のシステムを、ノーコード開発ツールを利用した現場主導での開発・運用にシフトすることで、顧客の投資効率を向上させ、変化の激しいビジネス環境への対応力強化を支援してまいりたいと考えております。
(「SmartDB®」が導入企業にもたらす効果)
当社は複数の製品・サービスを展開しておりますが、現在は「SmartDB®」を主力製品・成長ドライバーとして位置付けており、BD領域の業務デジタル化を支援することで顧客基盤の拡大を目指します。
「SmartDB®」のライセンス体系は、利用ユーザー数に応じた「ユーザーライセンス」、データベース数に応じた「バインダーライセンス」、追加機能を利用するための「オプションライセンス」で構成されています。これらのライセンスを組み合わせることで、全社一括導入だけでなく、部門単位などの小規模グループから利用開始する選択肢を提供します。段階的にユーザーや適用業務を増やすことで、初期投資リスクを抑えながら業務デジタル化推進が可能になると考えております。また、導入後も継続してサポートや活用事例などの情報提供を行い、他部門への横展開だけでなく、海外拠点や関連会社に至るまで、企業グループ全体での利用拡大を図ります。
(「SmartDB®」のライセンス体系)
また、「SmartDB®」の利用形態は、現場の一般的な業務をデジタル化する領域(非MCSA(※))と、ミッションクリティカルシステム周辺領域(MCSA)での利用に分けることができると考えております。いずれの形態で利用を開始しても、同一環境において他の利用形態に展開することで、高い投資対効果の実現を目指してまいります。
(※)MCSA (Mission Critical System Aid)
当社の掲げる「ミッションクリティカル領域のシステムを支える」というコンセプトのこと。Support(サポート)ではなくAid(エイド)という表現を使用している理由は、Aidという言葉が「困難な状況にある人や組織を実践的に助ける」という意味を含むためであり、当社の「BD領域の業務デジタル化」に取り組む姿勢を示しております。
(「SmartDB®」の利用形態の種類と利用例)
(「SmartDB®」の導入支援パターン)
「SmartDB®」の導入に際しては、顧客企業における体制面の整備状況や、SmartDB®を利用して実現したいシステムの要件に応じて、上記の支援パターンを選択することができます。完全自走型でスタートした場合でも、活用度合の進展状況に応じて追加的な支援が必要になった場合は、伴走協働型もしくは請負型が追加的に選択されるケースがあるものと考えております。
当社グループは、当面の間「SmartDB®」の導入によって顧客との関係性を深め、経営改革・業務改革における「協創パートナー」としての地位確立を目指してまいります。また、さらに深く広い範囲での価値提供を行うため、2022年より製品間の機能的な連携を高める社内プロジェクト「スクラム作戦」を開始いたしました。本プロジェクトでは、SaaSプロダクト(SmartDB®、InsuiteX®、Shopらん®)間のユーザー管理・権限設定の共有化や、APIを介したデータ連携の高度化に取り組んでおります。
今後は「SmartDB®」を軸として、社内ポータル構築ツール「InsuiteX®」、チェーンストア特化型情報共有ツール「Shopらん®」、特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービス「DCR(DX Custom Resolution)」の追加導入を図り、顧客の生産性向上や「協創」環境の創造に貢献しながら、収益の拡大を追求してまいります。
(4)市場規模
主力製品である「SmartDB®」は「ノーコード開発ツール」に属しておりますが、当該製品の2024年度の市場規模は808億円と予測されており、年率18.1%の成長が見込まれております。(株式会社アイ・ティ・アール:ローコード・ノーコード開発市場2023)
また「SmartDB®」はERPフロントシステムとしての活用も可能であり、当該市場の規模は2023年度で1,164億円、2027年度には2,837億円に成長すると予測されております。(デロイトトーマツミック研究所:ERPフロントソリューション市場の実態と展望2023年度版)
「SmartDB®」はSaaSとして分類されるサービスであり、国内SaaS市場の2023年の規模は1兆4,128億円と見込まれております。(株式会社富士キメラ総研:ソフトウェアビジネス新市場2023年版)
「SmartDB®」はこれらの市場に止まらず、受託開発にも引けを取らない高度な機能を備えていると認識しており、受託開発市場8兆7,673億円(総務省情報流通行政局 経済産業省大臣官房調査統計グループ「情報通信業 基本調査結果2022年3月29日」)という市場へのアクセスも可能であると考えております。
なお、「SmartDB®」の提供価格から算出した市場規模は3,564億円と推計しております。これは、当社のターゲットである1,000名以上の大企業4,161社に就業する従業員数1,485万人(総務省統計局;経済センサス平成26年調査)に、SmartDB®と他製品をセットで利用した場合の想定金額(一人当たり月額2千円)を乗じて算出したものです。
(5)競合環境
「SmartDB®」が属するノーコード・ローコード開発市場には、複数の競合製品が存在しております。しかし、当社以外の国内ベンダーの製品は、主に中小企業をターゲットとしており、大企業の高度な要求を満たすだけの機能的網羅性が十分ではないと認識しております。一方、海外ベンダーの製品は、日本特有の組織構造、意思決定プロセスへの対応などが標準機能として提供されておらず、システムインテグレーターによる追加開発や高額な導入サービスが必要となるケースが多いものと考えております。
当社のサービスは、機能的網羅性および投資効率の面で優位性があり、また、豊富な導入実績に基づく業務ノウハウを通じ、付加価値の高い導入・活用コンサルティングを提供できる点も強みであると認識しております。
(6)ビジネスモデルの変革
当社グループは、設立当初の1999年から、独立系ソフトウェアベンダーとして、自社開発パッケージソフトウェアの販売を行ってまいりました。近年になり、ようやく大企業におけるクラウド利用が進展してきたため、2018年12月にパッケージソフトウェアの新規販売を停止し、SaaSプロダクト(SmartDB®、InsuiteX®)を提供するクラウドサービスベンダーへの転換を図りました。
ビジネスモデルをパッケージソフトウェア型からクラウドサービス型へ転換するにあたっては、収益モデルの変更と、新たな組織能力を確保するための投資を必要とします。売上面では、ソフトウェアを販売した時点で全額計上する方式から、毎月一定額を回収する月額利用料方式に変更となり、成長が一時的に鈍化します。一方、プロダクトをSaaS型に適合するための開発や、顧客への導入支援や利活用促進をおこなうカスタマーサクセスチームの新設などが必要となり、コストの増加を招くこととなります。そのため、2020年12月期から2期間にわたり赤字を計上いたしましたが、粘り強くビジネスモデルの転換に取り組んだ結果、2022年12月期には再び利益を計上できる状況となっております。
各事業の売上高および総売上高に占めるクラウド事業売上比率およびストック売上比率の推移は以下の通りです。
(セグメント別売上構成の推移) (単位:千円)
(注)2019年12月期から2020年12月期の売上高は、当社単体の数値を記載しており、有限責任監査法人トーマツによる監査を受けておりません。ストック売上に含むオンプレミス事業売上はソフトウェアメンテナンス売上であり、スポット売上に含むオンプレミス事業売上はパッケージライセンスとなっております。
(全社売上に占める割合)
(注)2019年12月期から2020年12月期の売上比率は、当社単体の数値を元に算出しており、有限責任監査法人トーマツによる監査を受けておりません。ストック売上はクラウド事業売上とオンプレミス事業のソフトウェアメンテナンス売上の合計値を総売上高で除して算出しております。クラウド事業売上比率は、SaaSプロダクト「SmartDB®」、「InsuiteX®」、「Shopらん®」及び「DCR」の売上合計値を総売上高で除して算出しております。
(7)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループでは、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標として、成長性、収益性、キャッシュフローの観点から、売上高成長率、売上総利益率および営業キャッシュフローに影響を与える前受収益(※)残高を重視しております。特に成長指標の核となる売上高においては、総売上高に占めるストック売上高比率に加え、クラウド事業の売上高成長率、導入企業数、平均月額利用料、売上継続率を重視しております。
(※)前受収益は連結財務諸表上において契約負債に含めて表示しております。
(8)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
①優秀な人材の確保と育成
当社グループの成長には、優秀な人材の確保と育成が欠かせません。新卒採用を軸としながらも、プロダクト開発、サービス運用、カスタマーサクセス、フィールドセールス、マーケティングなどの職種において、積極的な採用活動を進めてまいります。また、教育研修・評価制度の充実などを通じ、既存社員の能力向上にも努めてまいります。
②製品競争力の向上
当社グループの成長には、提供価値の中核をなすクラウドサービスの競争力が欠かせません。定期的な開発プロセスの見直しや、子会社・業務委託先の有効活用を通じ、開発スピードおよび品質の向上を図ってまいります。また、当社グループのクラウドサービスは大企業をターゲットとしているため、大規模利用に耐えうるパフォーマンスの向上や機能拡張が必要となります。さらには、顧客社内で自律的に利用が拡大するような機能の開発も求められます。今後も積極的な開発投資を継続し、製品競争力を向上させることで収益機会の拡大に努めてまいります。
③当社グループ及び導入事例、活用実績の認知度の向上
当社グループの成長には、対象市場における認知度向上が不可欠です。とりわけ、当社グループが有する豊富な業務デジタル化事例や、経営改革・業務改革の成功事例を積極的に訴求することが重要であり、顧客の「協創パートナー」として第一に選択いただける存在となるようコーポレートブランドの確立を目指してまいります。また、当社グループが提供する各種クラウドサービスについても、デジタルマーケティングやイベント出展など、積極的なプロモーション活動を通じ、認知度の向上を図ってまいります。
④仕組み・仕掛けの整備
当社グループの製品・サービスをより多くの顧客に提供するためには、「仕組み・仕掛け」の整備が重要となります。例えば、より多くの業務デジタル化人材を創出するためのSmartDB®資格認定制度や、高度なシステム要件に対応するためのAPIおよびSDK(Software Development Kit)の整備、顧客同士の情報交換を活性化するためのコミュニティ形成、また、購入しやすく投資対効果を検討しやすい価格・ライセンス体系の整備などが挙げられます。
また、開発、営業、マーケティングなどの組織運営における各種業務においても、「仕組み・仕掛け」化を推進することにより、業務品質を保ちつつ生産性を高め、人的資源の投入量に依存しない形での収益向上を目指してまいります。
⑤戦略パートナーの拡大
当社グループのSaaSプロダクトは、導入企業数および適用業務数から見て、いわゆる「キャズム」(※)を超えた状況となっております。
これまでは、直接販売によって顧客基盤を拡充してまいりましたが、今後の本格的な普及にあたっては、戦略パートナーの拡大が必要となります。現在パートナーの種別は以下の3種類に区分しております。
・クラウドソーシング(人材派遣業およびクラウドワーカー)
SmartDB®上でアプリケーション開発を行うことができる人材の創出
・クラウドインテグレーター(システムインテグレーター)
SmartDB®を開発基盤として利用
・ソリューションプロバイダー(事業会社およびコンサルティング企業)
SmartDB®上で業種固有プロセスをテンプレート化し、自社ソリューションとして提供
上記に示したとおり、人材派遣業やクラウドワーカー、システムインテグレーター、事業会社、コンサルティング企業など、様々な企業で構成されたパートナー制度を確立し、多様なニーズに合致した付加価値の提供を可能とすることを重視しております。なかでも、システムインテグレーターはDXの基盤となる基幹系システムの刷新プロジェクトを請負うことが多いため、SmartDB®の活用による投資効率の向上を図り、顧客のIT予算最適化に貢献するよう積極的な働きかけを行ってまいります。
当社が基本戦略として推進する「デジタルの民主化」は、非IT人材による市民開発に止まらず、国内IT産業の課題である多重下請構造やウォーターフォール開発による受託開発型ビジネスの変革を狙うものでもあります。上記の多様なパートナーが、顧客や元請けベンダーと主従関係を結ぶのではなく、水平的な「協創パートナー」となることで、大企業システムの在り方を大きく変え、クラウド時代にふさわしい開発・運用体制の構築とDXの推進に貢献してまいります。
(※)キャズム
マーケティング・コンサルタントのジェフリー・ムーア氏が提唱したマーケティング理論「キャズム理論」の基本コンセプト。技術進化の激しい「ハイテク業界」の製品を普及させるためには、イノベーター、アーリーアダプターと称される技術選好者が属する初期市場と、マジョリティと称される大多数の消費者が属するメインストリーム市場の間に存在する深い溝(キャズム)を超える必要があるとするもの。
⑥顧客コミュニティの形成
顧客基盤をより強固なものとするため、自社企画のイベントなどを通じ、顧客コミュニティを活性化していくことが必要となります。顧客が持つ業務デジタル化ノウハウを顧客同士で共有できるコミュニケーション基盤を構築し、優良な顧客コミュニティを形成してまいります。
⑦新サービスの開発
SmartDB®で拡充した顧客基盤に対して、より多面的な付加価値提供を行うためには、新サービスの開発が必要となります。特定顧客向け開発運用一体型クラウドサービスDCR(DX Custom Resolution)の提供を通じて探索した市場・顧客ニーズに基づき、SaaSラインナップの拡充を推進してまいります。
⑧情報管理体制の強化
当社グループが提供するサービスは、個人情報を含む顧客情報を取り扱っており、これらの情報管理は重要課題と位置付けております。個人情報保護方針等の社内規程の整備および運用の徹底、ISMS認証に基づく業務オペレーションの確立および運用、社内研修の実施などを通じ、一層のセキュリティ強化を進めてまいります。
⑨財務基盤の強化
当社グループは、クラウドサービスの開発および顧客基盤拡充を重視しており、今後も積極的に投資を行っていく方針であるため、財務基盤の強化が必要となります。直接金融、間接金融を活用し、資本市場とのコミュニケーションを深め、事業展開に見合った財務基盤の強化を図ってまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次の通りであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」というミッションを掲げ、ターゲット顧客である大企業を通じて日本のデジタルトランスフォーメーションをアップデートすべく事業を推進しております。
当社グループにとってのサステナビリティは、1996年の起業時に掲げた「設立の趣意」に根差しております。私たちは「設立の趣意」として掲げた起業時の志を決して失わず、その実現に向けてたゆまぬ歩みを進めてまいります。
(設立の趣意)
①「情報共有」と「対話」を重視した、独創的かつ高品質なソリューションとサービスの提供により、社会の発展に貢献する
②多様な人・才能・アイデアを結集し、新たな価値を創造し続ける社会組織となる
③時間・距離/国境・性別・国籍や身体的障害等、あらゆる既成障害に束縛されない、職場及び雇用環境を実現する
当社グループでは、健全性を維持しながら企業価値を継続的に向上させるため、コーポレート・ガバナンス体制の構築とさらなる高度化に取り組んでおります。サステナビリティに関する考え方や取組について本部長会議にて協議を行うほか、重要なものについては取締役会へ報告し、必要に応じて協議を行っております。
また、当社グループを取り巻く環境や業務、各種取引における潜在的なリスクを正しく認識し、適切に管理・対処することを重要な経営課題と捉え、そのリスク評価および管理機能の強化に努めております。また、コンプライアンス、個人情報保護、情報セキュリティの面でも継続的な改善に努め、研修等を通じて従業員への周知徹底を図っております。
・労働人口の減少、IT人材不足への対応
我が国では労働人口の減少およびIT人材不足という社会的な問題を抱えており、デジタル化への遅れが顕著となっております。当社グループは、非IT人材による市民開発(デジタルの民主化)を実現するノーコード開発ツールの提供を行っており、市民開発による業務デジタル化を推進することで、顧客の業務効率および生産性向上を図り、人材減少に耐え得る持続的な社会の発展に貢献してまいります。
・業務デジタル化推進による多様な働き方の実現
当社グループは、業務デジタル化を推進するためのツールを提供しております。業務デジタル化は、リモートワークの推進を通じて、組織内で働く人々の多様な働き方の実現に欠かせない基盤となります。様々なライフステージに応じた柔軟な働き方を実現することで、顧客企業の持続的な成長に貢献してまいります。
・ペーパーレス推進による環境負荷の軽減
当社グループは、紙ベースのアナログな業務オペレーションをデジタル化(電子データで閲覧・伝達・保存)するツールを提供しております。業務デジタル化ツールの提供を通じ、紙の利用を削減することで、原料である木材の消費を抑制し、環境負荷の軽減に貢献してまいります。
(3)人材の育成及び社内環境整備に関する戦略
・DA Valuesの浸透
当社グループでは、良い企業文化が新しい価値の創造と継続的な成長に欠かせないものと考えており、全社員が日々の業務や行動の指針として共有する「DA Values」を定めております。社内の人事評価制度も「DA Values」を基軸としており、社員ひとり一人が「DA Values」を意識しながら日々の業務に取り組むことで、顧客の真のパートナーとして成長し、事業の持続的な発展を実現してまいります。
・人材育成
当社グループは、「プロフェッショナルが集い切磋琢磨し、環境変化に素早く対応できる協創集団」を目指し、多様な背景を持つ優秀な人材の採用と育成に注力しております。プロフェッショナルとして身につけるべき重要な能力を「DAルーツ(企業文化の理解と共感)」「抽象化力」「人間関係力(リーダーシップ、チームビルディング)」「実務能力(知識や技能)」の4つと定義し、多彩な教育研修を通じた能力開発を行っております。
・社内環境整備及び多様な働き方の実現
当社グループは、従業員のパフォーマンス発揮に向け、生産性の高いオフィス環境の整備に努めております。またフルフレックス制およびリモートワークの導入や、出産・育児・介護休業制度、各種資格取得支援などを用意し、多様なライフスタイルやライフイベントに合わせて活躍できるような環境を整備しております。また、全社員が参加する全社ミーティングの開催や、オンライン社内報の発行、懇親会費用の補助制度といった施策を通じ、社内コミュニケーションの活性化を図っております。
当社グループは、リスク・コンプライアンス委員会を設置し、当社グループのサステナビリティに関する事項を含むリスクの特定及び評価やモニタリングを行っております。四半期毎に定期開催しており、代表取締役社長、各本部長および常勤監査役が参加し、リスクの重大性の検討を行い、取締役会へ報告する体制を構築しております。
プロダクト及びサービスの戦略に関する指標につきましては、当社が提供するツールの普及が該当すると考えております。社会にインパクトを与えうる普及レベルとして年間利用料100億円をマイルストーンとして定め、早期に達成できるようグループの総力を挙げて取り組んでおります。足許の状況につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュフローの状況の分析」をご参照ください。
(6)人材の育成及び社内環境整備の戦略に関する指標及び目標
人的資本等に関する戦略につきましては、性別に関係なく多様な才能が活かされているか、ライフイベントに応じた柔軟な働く環境が提供できているかといった点を重視し、管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率、労働者の男女の賃金の差異を重視しております。足許の状況につきましては「第1 企業の概況 5 従業員の状況」をご参照ください。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが独自に判断したものであり、将来において発生する可能性がある全てのリスクを網羅するものではありません。また当社グループにとっては必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資家の投資判断において重要であると考えられる事項については記載しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社グループの経営状況、将来の事業についての判断及び当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。
当社グループは、クラウド型業務デジタルツールである「SmartDB®」「InsuiteX®」「Shopらん®」をSaaS形態によりサービス提供しております。当社グループが事業を展開するクラウド市場は急速な成長を続けており、この市場成長傾向は今後も継続するものと見込んでおります。しかしながら、経済情勢や景気動向の変化による企業の情報化投資の抑制や、新たな法規制の導入、技術革新の停滞等の要因によりクラウド市場の成長が鈍化するような場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが事業を展開する国内SaaS市場は、競合企業が複数存在しており、クラウド市場の普及を背景に、規模の大小を問わず競合企業の新規参入が予測されます。これら競合他社の中には、当社グループに比べ大きな資本力や技術力、販売力等の経営資源及び顧客基盤等を保有している企業が含まれます。当社グループでは、製品開発力の強化や継続的な製品改修・サービス品質の向上等により顧客企業との良好な取引関係の維持等に積極的に取り組み、価格だけでなく付加価値で対抗できるブランディングを図っておりますが、競合企業のサービス力の向上や新規参入による価格競争の激化により当社の競争力が相対的に低下した場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが属するIT業界は、技術革新の進歩が速く、それに呼応する形で新たな製品・サービスが逐次登場しております。当社グループは多様化する顧客ニーズに応えるべく、最新の技術動向や環境変化を注視し、新たな技術に対応したソフトウェアやサービスの提供ができるよう製品開発活動を継続して実施しております。しかしながら、当社グループが予期しない技術革新等によりインターネット環境に急激な変化があり、技術の進歩に起因するビジネス環境の変化に当社が適切に対応できない場合や新たな技術要素への投資が必要となった場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
近年、気候変動に伴う自然災害の激甚化・頻発化が予測されていることを踏まえて、当社グループでは、地震・台風等の自然災害や火災・停電等の事故に備え「大規模災害時事業継続計画」を策定し役職員に周知するとともに避難訓練への参加やテレワークの環境整備等のリスク管理体制を整備しております。しかしながら、想定を超える自然災害・事故等が発生し通信設備の損壊や電力供給の制限等が発生した場合には当社グループの事業活動が大きく制限される可能性があります。また、当社グループが直接被災せずとも顧客企業の事業活動抑制につながる場合には、当社グループの業績及び事業展開に影響を与える可能性があります。
当社グループは、中国大連市に連結子会社を設立し、当社製品の開発・テスト・サポート業務を担っております。当社グループでは、中国国内の政治情勢・経済情勢等を適時調査し、当該子会社との情報交換を緊密に行うとともに、現地の会計事務所・法律事務所と連携し適切に対応しておりますが、当社が委託している業務に係る法規制等が成立・改正された場合やテロ、クーデター、紛争、暴動、戦争その他の社会的・政治的混乱等の発生により現地の治安状態が悪化した場合、事業運営に支障が生じる可能性があります。さらに、自然災害や伝染病などの発生、急激な為替変動や為替制限なども、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、より多くの新規顧客の獲得を目指し、知名度や信頼度の向上のための広報・プロモーション活動の一環として、オンラインセミナーの開催やイベント展示会への出展等を積極的に行っております。今後も費用対効果を見極めつつ、顧客獲得のためのマーケティングコストを効率的に投下して、売上高の拡大及び収益性の向上に向けた取り組みを行っていきますが、各種マーケティング・PR活動等の効果が期待通り得られない場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループのクラウドサービスは、サービス料金を使用期間やユーザー数等に応じて定期定額契約として課金することで継続的な収益を得るビジネスモデルであるサブスクリプション型のリカーリングレベニューモデルであることから、当社グループの継続的な成長には、新規顧客の獲得に加え、既存顧客の解約防止及び単価向上が重要であると認識しております。当社グループでは、最適なマーケティング活動及び販売戦略の立案・遂行に注力するとともに、製品開発力の強化や継続的な製品改修・サービス品質の向上等に取り組んでおります。しかしながら、経済情勢や市場環境の悪化等による顧客企業のIT投資抑制等が生じた場合や、新規・追加契約が想定通り進まない場合、想定を超える解約が発生した場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、継続的な業績拡大と中長期的な企業価値の向上を実現するためには、優秀な人材の採用、育成及び定着を継続的に実施することが必要不可欠であると認識しております。当社グループでは、積極的な採用活動に加え、研修カリキュラムの充実や公正で透明性の高い人事評価制度の運営、リモートワーク・フルフレックス制度など多様な働き方に対応した施策の推進等により引き続き優秀な人材の採用、育成及び定着を継続していく方針でありますが、必要な人材の確保が計画通りに進まなかった場合、人材の流出が生じた場合及び当社グループが求める人材の育成ができなかった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、システム開発やクラウド移行支援サービスを業務委託の契約形態により提供しています。当社グループでは、想定される難易度及び工数に基づき見積書を作成し、適正な利益率を確保したうえで受注するとともに、顧客責任者や関係者と定期的な会議を実施し、要員管理、進捗管理、予実管理、品質管理等の徹底に努め、十分なテストを行った上で成果物を納品しております。しかしながら、請負契約の案件で予期せぬ不具合の発生等により工数が大幅に増加した場合や、当社グループが契約不適合責任及び損害賠償責任の追及を受け、業務過誤賠償責任保険の上限額を超えた賠償責任を負うことになった場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが顧客に提供している各サービスは、クラウドという特性上、インターネットを経由して行われており、インターネットに接続するための通信ネットワークやインフラストラクチャーに依存しております。当社グループでは、企業向けクラウドプラットフォームとして信頼されているAmazon Web Services社やMicrosoft社が提供するクラウドプラットフォーム上に各サービスを構築するとともにバックアップ管理の冗長化やセキュリティ対策の強化を行い、各サービスの安定的かつセキュアな運用体制を取っております。加えて、24時間365日稼働のクラウド監視センターを設置し、各サービスが適切に利用できる状況か常時監視、障害発生時には定められた手順に基づき復旧作業を実行する等の管理運用を行っております。しかしながら、自然災害や事故、プログラム不良、不正アクセス、その他何らかの要因により大規模なシステム障害が発生した場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑪ 仕入先の動向について(顕在化の可能性:中、時期:常時、影響度:大)
当社グループが顧客に提供している各サービスは、企業向けクラウドプラットフォームとして信頼されているMicrosoft Azure、Amazon Web Service、ニフティクラウドを用いて構築しており、複数のクラウドプラットフォームを分散・併用することで特定の環境に依存しない状態の維持に努めております。しかしながら、各クラウドプラットフォーム製品における市場規模の縮小や大幅な仕様変更、経営戦略の変更がある場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループが顧客に提供している各サービスは、導入企業において事業年度等に合わせて新規導入・追加発注される傾向があること等から、当社の売上高は各導入企業における年度末に増加する傾向があります。過年度における当社四半期業績について過度の偏重等は生じておりませんが、上記売上増加の傾向は今後も継続すると認識しております。また、当社グループでは受注管理の徹底を推進しておりますが、導入企業の業務その他の要因により期ずれが生じる可能性があることから、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、提供する各種サービスに係る特許権や商標権を取得しており、今後も積極的に知的財産権の保護に努めるとともに、当社グループの役職員による第三者の知的財産権の侵害が発生しないよう、啓蒙活動及び社内管理体制の強化に取り組んでおります。また当社グループでは、提供する各種サービスが第三者の知的財産権を侵害していないか外部の専門家と連携し可能な範囲で調査を実施しております。しかしながら、第三者の知的財産権の状況を正確に調査・把握することは困難であり、知的財産権侵害とされた場合、その訴訟の内容及び結果や損害賠償の金額によっては、当社グループの財政状態及び経営成績や企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
⑭ 個人情報・秘密情報の管理について(顕在化の可能性:中、時期:常時、影響度:大)
当社グループは事業を推進していく中で、取引先企業における個人情報や秘密情報等の情報資産を扱う機会があります。当社では、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)及び個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の第三者認証を受けるとともに、情報セキュリティに関する規程の策定や役職員に対する定期的な教育の実施、コンピュータ等の情報機器やネットワーク等の情報通信設備に対するセキュリティ管理の徹底、外部委託先との秘密保持契約の締結等を行い、当社グループからの情報漏洩を未然に防ぐ措置を講じております。しかしながら、コンピュータウイルスによる感染やサイバー攻撃等の不正な手段による外部アクセス、役職員及び外部委託先の過誤、自然災害の発生等によりこれらの情報資産が外部に流出した場合、これらに起因して損害賠償を請求される、あるいは訴訟を提起される可能性があり、その訴訟の内容及び結果や損害賠償の金額によっては、当社グループの財政状態及び経営成績や企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
本書提出日現在において、当社グループが事業を展開する際に障害となるような法的規制はないと認識しており、当社グループでは「個人情報の保護に関する法律」や「下請代金支払遅延等防止法」など一般的に適用される法的規制を遵守して事業を運営しております。しかしながら、当社グループの事業に関連する法的規制等が新設、改正、又は解釈の変更等がなされた場合、当社グループの現在又は将来における事業活動が制約を受ける可能性やコストの増加をもたらす可能性があり、その規模によっては当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、本書提出日現在において、重大な訴訟を提起されている事実はございません。当社グループでは、コンプライアンスの徹底と社会的信用の向上を図ることを目的にコンプライアンスに関する規程を整備し、法令違反となるような行為を防止するための内部管理体制を構築するとともに、役職員に対して定期的にコンプライアンス研修を実施する等により、取引先、従業員、その他第三者との関係において訴訟リスクを低減するよう努めております。しかしながら、事業活動を行う中で、当社グループが提供するサービス・システムに不具合・障害が生じた場合や受託開発した成果物に契約不適合が生じた場合、第三者からの不正アクセス等により情報流出した場合等の不測の事態が発生した場合には、これらに起因して損害賠償を請求される、あるいは訴訟を提起される可能性があり、その訴訟の内容及び結果や損害賠償の金額によっては、当社グループの財政状態及び経営成績や企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。
当社では、長期的な企業価値向上に対するインセンティブを目的として、当社役職員に対し新株予約権を付与しております。本書提出日現在、新株予約権の目的となる株式数は183,000株であり、当社発行済株式総数の4,054,600株に対する潜在株式比率は4.5%に相当します。これらの新株予約権が行使された場合、既存株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。
当社グループの従業員は268名(2023年12月31日時点)であり、内部管理体制は企業規模に応じた人員となっておりますが、当社グループが事業を拡大し継続的に成長し続けるためには、企業規模の拡大に合わせた内部管理体制の強化が不可欠であります。当社グループは、今後の事業拡大に応じて人員増強を図るとともに人材育成に注力し、内部管理体制の一層の強化、充実を図っていく方針ではありますが、当初計画を超えて事業が成長し体制構築が追い付かない場合や、新たな人材の確保及び育成が順調に進まない場合並びに人材の流出が生じた場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
⑲ 特定人物への依存について(顕在化の可能性:小、時期:常時、影響度:中)
当社の創業者であり代表取締役社長を務めている山本孝昭は、当社グループの経営方針や事業戦略等の決定及び遂行において重要な役割を果たしております。当社グループは、人材の採用・育成、取締役会・本部長会議等における役員及び執行役員の情報共有や経営組織の強化、業務分掌等に取り組んでおり、同氏に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの事情により同氏に不測の事態が生じた場合や退任せざるを得ない事情が生じた場合、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、本書提出日現在、同氏及び同氏の資産管理会社は当社株式の33.8%を保有しております。
⑳ 配当政策について(顕在化の可能性:中、時期:常時、影響度:中)
当社グループは、株主への利益還元を重要な経営課題と位置付け、将来の成長投資及び経営体制の強化に必要な内部留保を確保しつつ、年1回の期末配当を継続的に実施していくことを基本方針としており、当事業年度については、当事業年度の業績及び今後の経営環境、将来の成長投資等を総合的に勘案し、1株あたり20円00銭といたしました。株主利益の最大化と事業成長投資及び財務基盤強化に向けた内部留保とのバランスを図るため、当面は配当性向20~30%を目安とする方針ですが、事業環境の急激な変化により業績低迷等が生じた場合には安定的な配当を行うことができなくなる可能性があります。
㉑ 当社株式の流動性について(顕在化の可能性:中、発生時期:短期、影響度:中)
2023年12月末日現在、当社株式についての、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は30.18%となっております。現時点では上場維持基準に抵触する水準ではなく、今後は新株予約権の行使による流通株式数の増加等により流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。
㉒ 固定資産の減損(顕在化の可能性:小、発生時期:常時、影響度:中)
当社は、固定資産の減損に係る会計基準を適用しております。同会計基準では、減損の兆候が認められる資産又は資産グループについては、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回った場合に、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、その減額した当該金額を減損損失として計上することとなります。このため、当該資産又は資産グループの経営環境の著しい変化や収益状況の悪化等により、固定資産の減損損失を計上する必要が生じた場合には、当社の事業および業績に悪影響を及ぼす可能性があります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
(1)経営成績の状況の概要
当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績等の状況
当社グループは「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」という企業理念のもと、先進的なテクノロジーに基づくSaaS(注1)などの提供を通じ、大企業の生産性向上を支援しております。
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に伴う行動制限が緩和されたことにより、社会経済の正常化が進み、国内景気は堅調に回復に向かう一方、ウクライナ情勢の長期化、中東情勢の緊迫化、燃料・資源の価格高騰、円安の進行、欧米を中心とした世界的な金融引き締め等、依然として先行きが不透明な状況が続いております。当社グループが属するソフトウェア業界では、企業におけるワークスタイルの見直しや、業務デジタル化の遅れに対応するため、生産性向上を目的とするクラウドサービスへの需要が拡大しております。
このような環境のもと、当社グループは、「デジタルの民主化」というコンセプトに基づき、「市民開発」(注2)を実現するためのノーコード開発(注3)ツール「SmartDB®」を成長のドライバーと位置付け、事業を推進してまいりました。「SmartDB®」は単なる業務デジタル化に止まらず、ERPフロントシステム(注4)などの複雑な領域でも利用され始めており、他社SaaS連携や、高度なセキュリティ機能など、顧客要望に対応する多様なオプションを用意し、アップセル(注5)を強化しております。
また、社内ポータル(注6)構築ツール「Insuite®」及びチェーンストア特化型情報共有ツール「Shopらん®」については、「SmartDB®」との連携性を高めることでクロスセル(注7)を積極化し、提供価値の向上を図っております。
当連結会計年度におきましては、「SmartDB®」の認知を上げるべく、オンラインイベントやセミナーを多数開催し、新規顧客への提案を強化してまいりました。また、多様なオプション機能と業務適用事例の発信を通じて既存顧客への提案を強化し、ERPフロントシステムの大型プロジェクトを受注するなど、継続的な成長を実現させるべく事業を展開してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高4,440,056千円(前年同期比21.0%増)、営業利益577,649千円(前年同期比207.9%増)、経常利益563,551千円(前年同期比210.6%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、大企業向け賃上げ促進税制に基づく税額控除27,164千円を受け、424,290千円(前年同期比233.8%増)となりました。
<クラウド事業>
1.ホリゾンタルSaaS(注8)
当社グループは、業界業種を問わないホリゾンタルSaaSとして「SmartDB®」及び「Insuite®」を提供しております。
コロナ禍を契機とする大企業を取り巻く経営環境の変化は、業務デジタル化ニーズを高める一方で、IT人材不足の深刻さを浮き彫りにしております。そのため、当社グループは、ノーコード開発ツール「SmartDB®」を軸としたマーケティング活動を積極的に展開し、「デジタルの民主化」及び「市民開発」というコンセプトの浸透に努めてまいりました。開発面では、「SmartDB®」への継続投資による機能拡張及びセキュリティ強化を進め、ERPフロントシステムとしての活用や、複雑な業務プロセスを持つコア業務への適用など、活用範囲の拡大に努めてまいりました。また、社内ポータル構築ツール「Insuite®」については、ビジョンの浸透、組織エンゲージメント(注9)の強化、企業カルチャーの刷新といった経営課題を重視する顧客にフォーカスし、提案活動を展開してまいりました。
以上の結果、当連結会計年度のホリゾンタルSaaSの売上高は、2,207,345千円(前年同期比46.5%増)となりました。また、当連結会計年度末時点の MRR(月額利用料)は207,705千円(前年同期比57,389千円増)、契約企業数は140社(前年同期比41社増)となりました。
2.バーティカルSaaS(注10)
当社グループは、チェーンストア業界に特化したバーティカルSaaSとして「Shopらん®」を提供しております。
実店舗によるチェーンオペレーションを展開する物販・飲食業界は、コロナ禍の影響を最も大きく受けており、これまで以上に業務オペレーション品質を高める必要性に迫られています。当社グループの提供する「Shopらん®」は、チェーンストアに特有の課題を解決するために設計されており、本部からの情報伝達、店舗における業務指示の徹底、タイムリーな現場情報の収集、店舗間における成功事例の共有などをサポートします。
当連結会計年度におきましては、大型展示会への出展を行い、認知度の向上に努めてまいりました。開発面では、ユーザーインターフェイスの改善、安定したサービス提供に向けた基盤強化などを進めてまいりました。
なお販売パートナー企業である(株)ネクスウェイにおいては、「店舗matic®」(テンポ・マティック)の名称で販売しております。
以上の結果、当連結会計年度のバーティカルSaaSの売上高は、744,020千円(前年同期比15.8%増)となりました。また、当連結会計年度末時点のMRR(月額利用料)は65,170千円(前年同期比7,864千円増)、契約企業数は174社(前年同期比4社増)となりました。
3.DCR(DX Custom Resolution)
当社グループは、特定顧客の個別要件に基づくシステムを開発し、クラウド基盤上での運用を行いながら継続的な機能拡張を行う開発運用型のサービス「DCR」を提供しております。
当連結会計年度におきましては、既に提供を開始しているサービスの利活用を促進するとともに、運用の安定化に注力してまいりました。
この結果、当連結会計年度のDCRの売上高は、175,651千円(前年同期比3.3%増)となりました。また、当連結会計年度末時点のMRR(月額利用料)は14,670千円(前年同期比154千円減)、契約企業数は3社(前年同期比変動なし)となっております。
以上の結果、当連結会計年度におけるクラウド事業のセグメント売上高は3,127,016千円(前年同期比34.8%増)、セグメント利益は991,789千円(前年同期比100.7%増)となりました。
<オンプレミス事業>
当社グループは、ノーコード開発ツール「SmartDB®」及び社内ポータル構築ツール「Insuite®」のパッケージ・ソフトウェア(注12)ライセンス及びソフトウェアメンテナンスを提供しております。
オンプレミス環境で利用するパッケージライセンス及びソフトウェアメンテナンスの提供は、各プロダクトをSaaSとして提供する以前からの顧客に限定しており、一部の顧客から社員の増加に伴う追加ライセンスを受注したものの、SaaSへの移行などに伴いソフトウェアメンテナンスの解約が進行しました。
以上の結果、当連結会計年度におけるオンプレミス事業のセグメント売上高は597,436千円(前年同期比0.2%減)、セグメント利益は270,455千円(13.9%増)となりました。
<プロフェッショナルサービス事業>
当社グループは、SaaSプロダクト及びDCRサービス、並びにパッケージライセンスの活用促進を図るため、導入・利活用コンサルティングや、プラグインソフトウェア(注13)の開発などを支援するプロフェッショナルサービスを提供しております。
当連結会計年度においては、「SmartDB®」の業務適用範囲拡大に伴いERPフロントシステムの大型プロジェクトを受注したことに加え、既存顧客向けプラグインソフトウェアの改修及び追加開発プロジェクトが堅調に推移しました。
以上の結果、当連結会計年度におけるプロフェッショナルサービス事業のセグメント売上高は715,603千円(前年同期比4.9%減)、セグメント利益は111,679千円(前年同期比26.6%減)となりました。
(注1)SaaS(Software as a Service)
「Software as a Service」の略称。クラウド上に構築されたソフトウェア・アプリケーションをインターネット経由で利用するサービス。従来のようパッケージ・ソフトウェアを購入し、ハードウェアにインストールするなどの必要はなく、インターネットでアクセスするだけで利用できる仕組み。
(注2)市民開発
プログラミングなしにアプリケーションを開発することができるツールの導入を前提とし、ITの専門知識がない現場部門の従業員が主導して業務デジタル化を推進する開発スタイルのこと。当該スタイルで開発する従業員を市民開発者(シチズンディベロッパー)という。
(注3)ノーコード開発
アプリケーション開発に必須であったプログラミング言語によるソースコードをパーツとしてビジュアル化し、欲しいパーツを直感的に配置していくことで開発することができるツールを利用した開発のこと。
(注4)ERPフロントシステム
ERPなどの基幹系システムのフロントに位置し、基幹系システムと密接なデータ連携を必要とする経理・財務・人事・給与・法務などの周辺システムのこと。主に現場社員が利用し、ERPパッケージの標準機能だけではカバーしきれない周辺業務。例えば見積作成、経費精算、各種申請業務などを担う。
(注5)アップセル
現在利用中のプロダクト(又はサービス)において、より多くの人数・業務で利用してもらう、もしくはより高いグレードのプロダクト(又はサービスへ)への移行を促す営業手法のこと。
(注6)社内ポータル
自社内に散在する情報を集約し、アクセスを容易にするための入口として構築されたWebサイトのこと。情報共有によるコミュニケーションの活性化を図るほか、社内で使われている各種アプリケーションを統合する機能を持ち、業務効率化を促進するためにも使われる。
(注7)クロスセル
現在利用中のプロダクト(又はサービス)に関連させて他のプロダクトの導入を促す営業手法のこと。
(注8)ホリゾンタルSaaS(Horizontal SaaS)
業界を問わず特定の部門や機能に特化したSaaSのこと。企業組織に共通する業務課題を解決するために利用される。
(注9)組織エンゲージメント
会社組織と従業員の間で互いに信頼関係があり、きずなを感じている状態又はその指標。企業理念が従業員に浸透しており、事業計画などの目標や方向性に共感していることが重要となる。
(注10)バーティカルSaaS(Vertical SaaS)
特定の業界に特化したSaaSのこと。業界特有の業務課題を解決するために利用される。
(注11)オンプレミス(on-premises)
プレミス(premise)は「構内」「店内」などの意味。サーバーやソフトウェアなどの情報システムを、使用者が管理している施設内に設置して運用すること。
(注12)パッケージ・ソフトウェア
既製品として販売されているソフトウェア製品。又は物理的な記憶媒体に記録され、箱などに梱包されて販売されるソフトウェア製品。
(注13)プラグインソフトウェア(plug-in software)
あるアプリケーションソフトウェアの機能を拡張するソフトウェアを指す。 個別に追加してバージョンアップが可能で、不要になればアプリケーションに影響を与えることなく削除できる。
②財政状態の状況
(資産)
当連結会計年度末における資産合計は3,948,996千円となり、前連結会計年度末に比べ、1,521,163千円増加しました。これは主に現金及び預金の増加1,567,779千円によるものであり、公募増資による調達、クラウド事業にかかる契約負債の増加が主な要因となっております。クラウド事業では、契約開始時に一定期間の利用料を前払いで受領し、契約期間に応じて均等に収益を認識しており、未履行の部分については契約負債として計上しております。
(負債)
当連結会計年度末における負債合計は2,126,314千円となり、前連結会計年度末に比べ、552,401千円増加しました。これは主に、契約負債の増加446,532千円、課税所得の増加に伴う未払法人税等の増加60,228千円によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産は1,822,681千円となり、前連結会計年度末に比べ、968,761千円増加しました。これは主に親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加424,290千円、当社株式上場にあたり実施した公募増資により資本金及び資本準備金がそれぞれ269,192千円増加したことによるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、2,815,196千円となり、前連結会計年度末に比べ1,567,779千円増加となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は1,184,003千円(前年同期比64.2%増)となりました。これは主に税金等調整前当期純利益563,551千円の計上、減価償却費178,063千円の計上、契約負債の増加額446,532千円及び売上債権の減少額41,174千円等があったことによるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は162,389千円(前年同期比31.1%増)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出23,896千円、自社利用ソフトウェア等の無形固定資産の取得による支出138,966千円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果得られた資金は538,269千円(前年同期は149,977千円の支出)となりました。これは主に公募増資に伴う株式の発行による収入538,384千円によるものであります。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループで行う事業は、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。
b.受注実績
当社グループで行う事業は、受注から役務提供までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
①経営成績等の状況に関する認識及び分析・結果内容
(売上高)
当連結会計年度の売上高は、4,440,056千円(前連結会計年度比21.0%増)となりました。セグメント別の売上高については以下のとおりです。
クラウド事業:当事業セグメントは、ホリゾンタルSaaS、バーティカルSaaSおよびDCR(DX Custom Resolution)の利用料で構成されております。当連結会計年度においては、Web上のプロモーションやイベント出展などのマーケティング活動を通じて新規顧客開拓を積極化したこと、既存顧客に対する利用促進活動を通じてアップセルに努めたことなどから、当セグメントの売上高は3,127,016千円(前連結会計年度比34.8%増)となりました。
オンプレミス事業:当事業セグメントでは、自社開発アプリケーションソフトウェアのパッケージライセンスおよびソフトウェアメンテナンスの提供を行っております。SaaSへの移行促進に伴う解約等が進む一方、既存顧客からのパッケージライセンスの追加受注を受けたため、当セグメントの売上高は597,436千円(前連結会計年度比0.2%減)となりました。
プロフェッショナルサービス事業:当事業セグメントでは、自社開発アプリケーションソフトウェアおよびSaaSにかかる導入支援などの役務提供を行っております。当連結会計年度においては、ERPフロントシステムにかかる大型プロジェクトを受注したものの、前連結会計年度の水準を僅かに割り込み、当セグメントの売上高は715,603千円(前連結会計年度比4.9%減)となりました。
(営業費用および営業利益)
当連結会計年度の売上原価及び販売費及び一般管理費を合算した営業費用は3,862,406千円(前連結会計年度比10.9%増)となりました。これは主にクラウド事業売上高の増加に伴う通信費(インフラコスト)の増加や昇給及び人員増に伴う人件費等の増加によるものであります。この結果、営業利益は577,649千円(前連結会計年度比207.9%増)となりました。
(営業外損益及び経常利益)
当連結会計年度において、助成金収入400千円等により営業外収益が772千円、また為替差損4,111千円、上場関連費用等により8,689千円を計上し、営業外費用が14,871千円となりました。この結果、経常利益は563,551千円(前連結会計年度比210.6%増)となりました。
(特別損益、法人税等及び親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における、特別利益及び特別損失の発生はありませんでした。法人税、住民税及び事業税は、大企業賃上げ促進税制に基づく税額控除27,164千円を受け、156,263千円となりました。また、法人税等調整額は△17,003千円となりました。この結果、親会社株主に帰属する当期純利益は424,290千円(前連結会計年度比233.8%増)となりました。
② 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの事業運営にあたり必要な運転資金の多くは、人件費、通信費(インフラコスト)、広告宣伝費等の営業費用であります。当該運転資金は、自己資金を中心に、必要に応じて借入調達することを基本方針としておりますが、今後の積極的な広告宣伝活動や、人的資本への投資により資金需要が増加する場合は、エクイティファイナンスの活用を検討する予定です。
なお、第28期連結会計年度末において、現金及び現金同等物は2,815,196千円であり、十分な資金の流動性を確保しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。連結会計年度末における資産・負債の報告数値、報告期間における収入・費用の報告数値に影響を与える見積りは、主に固定資産の減損及び繰延税金資産の回収可能性であり、これらの見積り及びその基礎となる仮定は、継続して評価し、必要に応じて見直しを行っております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。
新型コロナウイルス感染症については、当社業績全体に与える影響は軽微であると仮定して見積りを行っております。
(固定資産の減損)
当社グループは、固定資産のうち減損の兆候がある資産グループについて、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合には、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当該減少額を減損損失として計上しております。割引前将来キャッシュ・フローは、将来の事業計画を基礎として、資産グループの現在の使用状況や合理的な使用計画等を考慮し、見積もっております。当該見積りに用いた主要な仮定は、事業計画の売上において見込まれる売上高成長率、平均月額利用料、新規契約社数等であり、過去の実績と市場傾向を勘案し、継続的な売上高の増加を織り込んでおります。
これらの見積りにおいて用いた仮定が、将来の市場環境等の変化により事業計画を修正するなど、見直しが必要になった場合、翌連結会計年度において減損損失を認識する可能性があります。
固定資産の評価方法に関する詳細は、翌連結会計年度の連結財務諸表に重要な影響を及ぼすリスクがあるため、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(繰延税金資産の回収可能性)
当社グループは、繰延税金資産の算定にあたり、将来の事業計画やタックス・プランニング等をもとに将来の課税所得を見積り、繰延税金資産の回収可能性を判断しております。当該見積りに用いた主要な仮定は、事業計画の売上において見込まれる売上高成長率、平均月額利用料、新規契約社数等であり、過去の実績と市場傾向を勘案し、継続的な売上高の増加を織り込んでおります。
これらの見積りにおいて用いた仮定が、将来の市場環境等の変化により事業計画を修正するなど、見直しが必要になった場合、翌連結会計年度において繰延税金資産が減額され税金費用が計上される可能性があります。
④経営方針・経営戦略等又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析・検討内容
当社グループでは、主な経営指標として売上高成長率、売上高総利益率および営業キャッシュフローに影響を与える前受収益残高を重視しております。特に成長指標の核となる売上高については、総売上高に占めるストック売上高の比率に加え、クラウド事業の売上高成長率、導入企業数、平均月額利用料、売上継続率を重視しております。なお、連結財務諸表上において前受収益は契約負債に含めて表示しております。
第28期連結会計年度における各指標の前年同期比の増減率および四半期実績推移は以下のとおりであり、引続き対処すべき経営課題の改善をすすめ、経営成績の向上を図って参ります。
(主な経営指標)
第28期連結会計年度における売上高は前年比21.0%増となりました。オンプレミス事業の解約やクラウドサービスへの移行などによる減少を、クラウド事業の伸長が補う形となっております。売上総利益は前年比28.8%増となりました。クラウド事業の売上が大幅に伸びたことが要因となっております。前受収益残高は前年比70.5%の増加となりました。クラウド事業の伸長に伴い、月額利用料の前受収益が増加したことが要因となっております。
(ストック売上高比率)
(注)ストック売上高は、クラウド事業売上高と、オンプレミス事業に含まれるパッケージライセンスにかかるメンテナンス売上高等を合算したものであります。ストック売上高比率は、総売上高に占めるストック売上高の割合です。
第28期連結会計年度におけるストック売上高比率は82.8%となり、前連結会計年度に引き続き安定した売上構成を維持しております。今後は、新規顧客の増加にともない、導入支援サービス等プロフェッショナルサービス事業への需要が増すことで、ストック売上高比率の低下を招く可能性があります。引き続きバランスの良い売上構成を目指してまいります。
(クラウド事業:ホリゾンタルSaaS)
(注)1 ホリゾンタルSaaSは、「SmartDB®」と「INSUITE®」のクラウドサービスで構成されています。売上継続率(Net Retension Rate)は、1年前の課金ユーザーにかかる月額利用料の変化率として算出しております。(例:2020年12月時点の課金ユーザーの月額利用料合計と、当該ユーザーの2021年12月の月額利用料合計の変化率)
2 売上継続率は、特定のオンプレミスユーザーにおけるクラウド移行プロジェクトにおいて、複数月にわたる移行作業・導入支援期間の利用料を、2021年12月に一括計上した影響が含まれており、修正売上継続率はその影響額を控除しております。
第28期連結会計年度におけるホリゾンタルSaaSの売上高成長率は46.5%となり、売上高は順調に伸びております。導入企業数は前年比41.4%増の140社となりました。オンラインイベント等のマーケティング施策を実施し新規顧客開拓に注力したため、導入企業数は好調に推移しております。平均月額利用料は前年比2.3%減少し1,483千円となりました。これは、新規顧客数の増加に伴い、部門導入等の小規模導入が増加したことによるものです。修正売上継続率は123.3%と好調に推移いたしました。これは、既存顧客において目立った解約がなかったこと、また、部門導入顧客において適用業務および利用ユーザー数の拡大が進展し、アップセルが順調に推移したことによります。今後も継続して積極的な利活用促進を図り、解約を抑制しつつ、アップセルを強化してまいります。なお、ホリゾンタルSaaSの売上高および売上成長率の大部分はSmartDB®が占めており、本セグメントの成長を牽引しております。
(ホリゾンタルSaaS四半期実績推移)
(注)1 SmartDB®とINSUITE®のクラウドサービス利用料の四半期合計額です。
2 前年同四半期比です。2019年12月期は前連結会計年度の売上に導入支援費等を含んでおり基準が異なるため省略しております。
3 各四半期の最終月において課金が発生している社数をカウントしています。
4 各四半期の最終月における月額利用料を導入社数で除して算出しています。
2020年Q4の利用料増加は、大規模顧客への導入プロジェクトにおいて一時的に利用確定数よりも多いユーザーへのアクセス権を付与したことによるものです。
2021年Q4の利用料増加は、オンプレミスユーザークラウド移行プロジェクトにおいて、複数月にわたる移行作業・導入支援期間の利用料を一括計上したことによるものです。
5 前年同四半期最終月の課金ユーザーにかかる月額利用料の当四半期における変化率。NRR(Net Revenue Retention)
2022年Q4の売上継続率が大きく減少している要因は、算出の起点となる2021年12月に、特定のオンプレミスユーザーにおけるクラウド移行プロジェクトにおいて、複数月にわたる移行作業・導入支援期間の利用料を一括計上した影響が含まれており、影響額を控除した修正売上継続率は114.2%となります。
(クラウド事業:バーティカルSaaS)
(注)バーティカルSaaSは、「Shopらん®」と「店舗matic®」(株式会社ネクスウェイ経由で提供する「Shopらん®」の別ブランド)で構成されています。売上継続率(Net Retension Rate)は、1年前の課金ユーザーにかかる月額利用料の変化率として算出しております。(例:2020年12月時点の課金ユーザーの月額利用料合計と、当該ユーザーの2021年12月の月額利用料合計の変化率)
第28期連結会計年度におけるバーティカルSaaSの売上高成長率は15.8%となりました。「Shopらん®」はチェーンストア業界向けのサービスであり、コロナ禍の影響は少なくありませんでしたが、2022年12月期以降復調の兆しを見せております。流通小売業界向けのイベントに出展するなどのマーケティング活動を通じて、新規開拓活動を展開した結果、導入企業数は前年同期比2.4%の174社となり、堅調に推移いたしました。また、既存顧客においては、利用店舗数の拡大により、平均月額利用料は前年同期比11.1%増の374千円、売上継続率は107.7%となりました。コロナ禍を脱し、積極的なIT投資を行う顧客が増加する傾向にあると認識しており、今後は店舗運営の生産性向上に資する機能拡張、オプションの提供などを通じ、各指標の向上を図ってまいります。
(バーティカルSaaS四半期実績推移)
(注)1 Shopらん®利用料の四半期合計額です。
2 前年同四半期比です。2019年12月期は前連結会計年度の売上に導入支援費等を含んでおり基準が異なるため省略しております。
3 各四半期の最終月において課金が発生している社数をカウントしています。
4 各四半期の最終月における月額利用料を導入社数で除して算出しています。
5 前年同四半期最終月の課金ユーザーにかかる月額利用料の当四半期における変化率。NRR(Net Revenue Retention)
(注)SaaSベースモジュールとは、当社SaaSプロダクト「Shopらん®」を指しております。本契約において株式会社ネクスウェイは、同社が保有する商標「店舗matic®」を用いて「Shopらん®」を販売することができること、及び販売した金額の一定割合をサービス供給の対価として当社に支払うことを約しております。
当社グループは、既存製品・サービスの機能拡張や改善改良を重視しており、製品競争力の向上につながる研究開発活動を継続的に行っております。セグメント別の研究開発活動の概要は以下のとおりです。なお、当連結会計年度においては研究開発費として特に計上すべき金額はありません。
(1)クラウド事業
最新のインターネット技術、クラウド基盤およびソフトウェア開発関連技術に関する研究開発活動に取り組んでおります。
(2)オンプレミス事業
当セグメントは研究開発活動を行っておりません。
(3)プロフェッショナルサービス事業
最新のインターネット技術、クラウド基盤およびソフトウェア開発関連技術に関する研究開発活動に取り組んでおります。