文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社は、顧客を満足させる品質と価値の創造開発に全力を尽くすとともに、環境保全と省資源へも積極的な取組みを続け、消費者・取引先・株主等を始めとするステークホルダーに信頼される企業を目指すことを経営の基本理念としております。
この理念の実現を通して、株主の利益向上・会社の発展・社会への奉仕・社員生活の充実の推進が一致する経営の確立を目指してまいります。
また当社は、常に新しい市場の創造と開拓に努め、顧客ニーズを的確に把握し、魅力ある製品を開発しながら、生産性及び顧客サービスの向上を図り、当社並びに当社製品への信頼を得るための体制を確立してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社は、中長期的な業績見込みにおける売上収益、EBITDA、自己資本利益率を重要な経営指標として位置付けております。
(3)中長期的な会社の経営戦略
製品開発の拡充による用途拡大、グローバル市場への展開、グローバルブランドの確立
ポリウレタンレザーに求められる機能やデザインは、その用途によって異なります。特にハイエンドのレザーに対しては、様々な機能と最先端のデザインが求められます。当社とUf社は、製品開発において従前より協力関係を築いておりましたが、事業統合によって顧客ニーズの直接的な製品開発への反映と量産への展開がより迅速に行える体制となり、品質に対する要求水準が高い自動車、航空機等の分野における製品用途を拡大させております。地域面では、東京、ニューヨーク、ロンドンの3拠点から、当社製品をUf社のブランド名でグローバルに展開しております。特に自動車や航空機は事業そのものがグローバル化しており、製品のグローバル展開は当該分野における採用に貢献するものと考えます。ハイエンドレザーとして製品用途の拡大とグローバル市場への展開により、事業統合の最大の目的であるグローバルブランドとしての地位の確立が可能になります。グローバルブランドとして認知されることは、製品の持つ高い機能性、優れたデザイン性、そして品質の安定性がブランドにより担保され、新規の顧客や新しい用途における採用に大きく貢献するものと考えております。
(4)会社の対処すべき課題
① 生産能力の拡充
環境問題に対する意識の高まりやライフスタイルの変化から、軽量でアニマルフリー、触り心地もよく、清潔さも簡単に維持できるプレミアム素材として、当社製品に対する需要は高まっています。2018年に完全2ライン化が完成しましたが、このような旺盛な需要に対応するために、設備の老朽化対策や生産効率の改善を進め、国内外の協力企業を含めた生産能力の拡充を進めております。また、協力企業においても当社製品と同程度の品質を維持するため、技術指導や検査体制の増強が急務となっています。
②売上収益源の分散
近年、特定の顧客に対する売上が急激に増加し、売上依存度が高まっていることが懸念されています。当該顧客からの受注動向によっては当社売上に大きな影響を及ぼす可能性があるため、自動車向けだけではなく、軽量素材が顧客のサステナビリティ推進に貢献できる航空機向けも成長の柱とする、オフィス家具向けだけではなくレジデンシャル家具向けにも注力する、北米に加えて欧州における営業体制も強化するなど、様々な側面から売上収益源の分散を図ってまいります。
③サステナビリティ(持続可能性)の重視
現在、世界には地球温暖化をはじめとする気候変動や資源問題から多様性豊かな社会づくりに至るまで、サステナビリティに関する様々な社会的課題が存在します。当社は「サステナビリティを重視し、社会に貢献する」をグループ経営理念の一つとして掲げ、サステナビリティの観点から顧客・従業員・取引先・株主など全てのステークホルダーに選ばれる企業となることを目指しています。そのためには、バイオ・リサイクル原料によるサステナブル製品の開発、生産工程における二酸化炭素排出量の削減などに向けたサステナブルプラント化の推進、協力企業とのサステナブル目標の共有を進め、企業価値を向上させるよう努力してまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)サステナビリティ
当社グループは、企業が将来にわたって成長し繁栄していくためには、自社だけではなく自社を取り巻く社会全体が豊かで持続的であることが必要であり、そのためには重要な社会の構成員として社会課題を解決するための取組みを進めることが重要であると考えています。
その意思表明として、「サステナビリティを重視し、社会へ貢献する」をグループ経営理念の一つとして掲げています。
①ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する各重点分野における課題解決を進めるため、「サステナビリティ委員会」を設置いたしました。当委員会は、取締役であるチーフ・サステナビリティ・オフィサーを委員長とし、各関連部門の執行責任者がメンバーとなって、サステナビリティ推進に関する基本方針の策定・各領域における重要課題への対応方針・目標・推進計画の立案、活動の進捗統括と評価を行います。各メンバーは当委員会で決定した方針・目標に基づき、それぞれの所属部門において計画を実行に移していきます。
当委員会の活動状況及び直面している課題については、当社及び各子会社の幹部が参加するミーティング等で報告され、特に重要な課題については取締役会で議論され、その決定事項は当委員会の活動方針及び中期経営計画の方針・施策・財務目標等にも反映されます。また、ISO14001の環境マネジメントシステムの仕組みを通じても、経営陣が当委員会の活動を管理・監督を行っております。
なお、当社取締役の報酬は基本報酬(固定報酬)及びインセンティブ報酬で構成されており、インセンティブ報酬の一部にサステナビリティ推進における成果が反映されています。
②戦略
当社グループでは、サステナビリティを推進するにあたり、顧客、取引先、株主、従業員や地域住民といった全てのステークホルダーからの要請に応えるべく、5つの“P”で表現される重点分野を設定し、それぞれにおけるマテリアリティを特定しています。そして、各マテリアリティに対応する個別テーマを設定し、KPIや目標を定めて様々な取組みを進めています。
ウルトラファブリックスグループにおけるサステナビリティ推進の重点分野
また、TCFD提言に基づいて気候変動が事業に及ぼすリスクと機会に対するシナリオ分析を実施し、関連する情報を開示しました。今後は分析範囲を拡大するとともに、経営戦略への反映を進め、財務的な影響についてさらに情報開示を充足してまいります。
https://www.ultrafabricshd.co.jp/assets/docs/sustainability/esg/environment/tcfd.pdf
③リスク管理
当社グループはサステナビリティに関するリスクを重要なリスクの1つとして位置付け、サステナビリティ委員会においてリスク・機会の特定、評価、対応策や予防措置を議論・検討してまいります。その中で、特に重要な議題は取締役会に報告いたします。
特定したリスクについてはインパクト、発生頻度から重要性を判断し、重要リスクについてはその対応策を検討、実施を行なってまいります。
④指標及び目標
マテリアリティに対する取組みの進捗状況を測るために、様々なKPIを設定し、計測した数値を開示しています。https://www.ultrafabricshd.co.jp/sustainability/esg-data/
下記のKPIについては達成すべき目標値を設定し、目標達成に向けて重点的に取組みを進めています。
|
KPI |
目標 |
|
GHG排出量の削減 |
GHG排出量(SCOPE1・SCOPE2)を2030年度までに2021年度比42%削減する。 |
|
再生可能/リサイクル製品の開発 |
2030年度までに50%以上の製品を再生可能/リサイクル原料を使用した製品とする。 |
|
水使用量の削減 |
2025年度までに2020年度比で原単位当たりでの水使用量を20%削減する。 |
|
廃棄率 |
製造から販売の過程で発生した販売不適合品や返品された製品の生産量に対する比率を3%以下に維持する。 |
(2)人的資本
①戦略
当社の事業戦略である、「プレミア市場を主戦場とし、販売においては市場・地域を多角化する一方で、生産能力を拡大すること」及び「社会的責任でもあり、顧客要求でもあるサステナビリティを一層重視した経営を行うこと」を支えるための重要な資産として、当社グループでは優秀な人材の獲得と継続的な能力発揮を実現し、社員にとって安全で働き甲斐のある職場を提供してまいります。
また、日本を中心とした製造、米国及びその英国・メキシコの子会社による販売、というグローバルな事業構造を支えるための、多様な人材による事業運営を目指します。
②指標及び目標
上記を実現するため、当社グループでは以下のような指標に対して目標を定め、定期的なモニタリングを行って状態を確認するとともに適時適切なアクションを行ってまいります。
(当目標値は当面のものとし、2027年には見直しを行います。)
|
指標 |
対象 |
目標 |
2023年末 時点実績 |
|
①役員中の女性比率 |
連結ベース 提出会社 国内連結子会社 |
20%以上 |
15% 22% 0% |
|
②管理職中の女性比率 |
連結ベース 提出会社 国内連結子会社 |
25%以上 |
23% 0% 10% |
|
③従業員中の女性比率 |
連結ベース 提出会社 国内連結子会社 |
30% |
28% 0% 13% |
|
④退職率 |
提出会社 国内連結子会社 |
10%以下/年 |
10% (*) 7% (**) |
|
⑤労働災害発生件数 |
提出会社 国内連結子会社 |
0件/年 |
0件 4件 |
* 役員就任に伴う退職1名のみ
** 役員就任に伴う退職2名を含む
当社グループの経営成績、株価ならびに財務状況等に影響を及ぼす可能性のあるリスクには以下のようなものがあります。なお、下記記載のリスク項目は当社事業に関するすべてのリスクを網羅したものではありません。また、本項における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 海外売上高と為替相場の変動及び税金について 影響度:大、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループの最近2連結会計年度における海外売上比率は、前連結会計年度96.1%、当連結会計年度96.3%となっており、当社グループの業績は為替変動の影響を受けると共に、連結財務諸表作成において在外子会社の貸借対照表及び損益計算書は円換算されるため、為替相場の変動の影響を受けます。当社グループは、デリバティブを活用したヘッジ取引により為替相場の変動を軽減する対策を講じてはおりますが、為替レートが急激に変動した場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、販売単価の見直しや受注の増減に伴って移転価格税制等の国際税務リスクがあり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定の仕入先からの仕入割合が高いことについて 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループは、原材料である基布や樹脂等を特定の仕入先に依存している場合があります。当社グループではこうした特定仕入先との関係を密接に保ちながら、安定的な調達に努めております。需要の急増による原材料不足や天災地変、品質問題、特定仕入先の政策変更や倒産・経営破綻・合併等により調達に重大な支障をきたした場合や仕入価格が高騰した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 製品開発について 影響度:中、発生可能性:低、発生時期:短期
当社グループは、研究開発による新製品の開発や顧客要求への対応等が常に求められております。そのため、当社グループの収益の変動にかかわらず、製品開発のための投資を常に継続する必要があります。その一方で、開発された高品質・高付加価値製品より、アジア圏の各メーカーが当社グループの製品と同様な品質で、より安い価格の製品を安定供給するようになった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 製品における欠陥の発生 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループの製品については、確立された品質管理体制により高機能・高品質を備えたポリウレタンレザーを市場に供給しております。しかしながら、製品に欠陥が発生したことにより顧客から賠償費用等の多額のコストが発生した場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、協力企業に生産を委託した場合も当社グループの製品と同程度の品質が要求されるため、技術指導や検査体制を増強し、上記リスクを回避する必要があります。
(5) 災害の発生について 影響度:大、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループにおける事業を取り巻く環境として、地震、台風、火災、戦争、感染症等の災害が発生し、当社グループや取引先企業が被害を受けた場合、グループ拠点の事業活動に支障が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 生産設備について
① 法的規制 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループの製品についての法的規制はありませんが、設備及び生産活動において地盤沈下監視、VOC(揮発性有機化合物)排出規制、有機物排出規制、省エネルギー法による燃料消費量管理、危険物取扱関連等のさまざまな法的規制・行政指導を受けており、今後、これらの法規制が強化された場合、設備投資や関連費用の増加が見込まれ、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 製造拠点の稼働 影響度:中、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、営業部門からの需要動向や原材料の調達状況を踏まえ、生産計画を策定のうえ、製造設備
の稼働を実施しております。さらに計画的な保全計画を策定実施し安定稼働に取り組んでおりますが、製造設備
のトラブル等により生産が停止した場合には、製品供給がされず、当社グループの財政状態及び経営成績に影響
を及ぼす可能性があります。
③ 災害による停電等について 影響度:小、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループの製品は、埼玉県行田市及び群馬県邑楽町の国内2拠点で生産を行っております。このため、各拠点生産設備における災害の発生時に、停電又はその他の事象により製造機器の損傷又は材料調達先に壊滅的な被害が生じた場合、操業が停止し、生産・出荷活動が停止する可能性があります。また、今後発生する災害を要因として電気ガス等のエネルギー供給において総量規制など使用制限がなされた場合には、当社の生産活動において著しい影響を受ける可能性があります。
④ 人材の確保と技術伝承 影響度:中、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループの製品は、高度な技術等専門知識及び経験を有する社員により製造・開発されております。しかしながら何らかの要因により雇用が流動化し人材が流出・流入した場合、技術・知識及び経験を伝承するためのある期間にわたり教育と訓練を行うことができず、結果として当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 固定資産の投資 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループでは、各製造拠点から提出され、予算編成の過程での検討手続きを経た上で作成された設備投資
計画に基づき、工場の建物や製造設備、工具器具備品に至るまで生産活動の維持・向上に必要な固定資産の投資
を計画的かつ継続的に行っておりますが、何らかの要因により当該固定資産の投資がスケジュールどおりに完了
しなかった場合、生産計画に影響を及ぼすため、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性が
あります。
(7) のれん等の減損について 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループは、企業買収に伴い発生した相当額ののれん及び商標権を連結財政状態計算書に計上しております。当該のれん及び商標権については将来の収益力を適切に反映しているものと判断しておりますが、事業環境の変化等によりのれん及び商標権の評価額が帳簿価額より下落した場合に、当該のれん及び商標権について減損損失を計上し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 在庫リスクについて 影響度:中、発生可能性:低、発生時期:特定時期なし
当社グループは、販売計画に基づく原材料の発注及び計画生産を行っております。また、顧客のニーズに合わせて出荷できるよう寄託倉庫に商品を保管しており、欠品が生じないよう努力しております。しかしながら、販売計画と実績との乖離が生じ、余剰在庫や滞留在庫が残った場合には、結果として評価損等が発生し、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 特定の顧客への依存度について 影響度:中、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社グループは、特定の顧客から一定規模の売上が計上され、一定の顧客への依存度が高まることが想定できます。この場合、当該顧客からの受注動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 原材料・燃料・輸送等の価格変動の影響について 影響度:中、発生可能性:大、発生時期:短期
当社グループの生産活動にあたっては、種々の原材料、部品、燃料、包装資材等を国内外から調達し、商品を生産しております。これら原材料・燃料・輸送等の価格変動に対しましては、生産効率化等で吸収を図っております。しかしながら、昨今の地域紛争の緊迫化や予期できない自然災害や事故等を始めとする地政学リスクの高まりによるサプライチェーンへの大きな影響、仕入先の経営状態悪化による部品の供給制限や製造中止、市場での需要増加による供給制限等が生じて、原材料・燃料・輸送等のコストがさらに上昇した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。その対応策として、当社グループでは、市場動向については日常から調達先の情報収集に努め、前倒しで確保する等、安定調達に努めるとともに、一部販売商品の値上げや、輸送費の一部を顧客に負担していただくなどの対策を講じております。
(11) 金利変動について 影響度:小、発生可能性:中、発生時期:特定時期なし
当社は、運転資金及び設備資金について主に金融機関からの借入れにより資金調達をおこなっております。金利が上昇局面となった場合、支払利息等の金利負担が増加することで金融収支が悪化し、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、長期の資金調達においては、金利変動リスクをヘッジするために金利スワップ取引を行って、金利変動リスクを最小限にとどめております。また、当社グループが借入契約の財務制限条項に抵触した場合は、金利の上昇を請求されたり期限の利益を喪失したりする可能性があり、当社グループの借入コストや資金調達能力に影響を与える可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績
当連結会計年度の世界経済は、景気後退懸念がありながらも概ね底堅く推移しました。主要各国のインフレ率は鈍化に転じて利下げ期待は高まっていますが、日本が緩和的な金融政策を維持していることもあり、円安基調が継続しました。米国経済も、高金利で住宅などローンの利払いは重くなっているにもかかわらず、実質賃金が上昇していることもあって個人消費が牽引する形で、大半の予測を上回って堅調に推移しました。しかしながら、オフィス需要の低迷は継続しており、足許の高金利水準が米国景気に与える悪影響に加え、地域紛争の拡大により再び海上輸送が混乱する可能性も懸念されています。また、日本の金融政策の修正から為替の動向も注視していく必要があります。
このような状況下、自動車用シート向けの成長継続に加えて、新しいプログラムの成長と共に航空機向けが好調だったことで、在庫調整や米国の高金利政策の影響で不振が続いた家具やRV向けの減少分を埋め合わせし、前年比で増収となりました。原材料価格の上昇に加えて、人件費、マーケティング費用、支払利息等の増加影響はあったものの、円安で推移したことに加えて、物流費やクレーム対応費用が減少し、移転価格税制による日米間の税金調整によって実効税率が低下し、利益においても前年を上回りました。
この結果、2023年12月期の売上収益は210億45百万円(前年同期比7.4%増)、営業利益は35億46百万円(同10.9%増)、税引前当期利益は28億92百万円(同0.9%増)、当期利益は23億75百万円(同15.8%増)となりました。
用途別の売上収益の概況は、次のとおりです。
①家具用
ヘルスケア向けとコントラクト家具向けを中心に、在庫調整や高金利、オフィス市況の弱さ等のマクロ経済面の課題が影響して、家具向け全体の売上は減収となりました。
この結果、家具用の売上収益は49億96百万円(同7.1%減)となりました。
②自動車用
シート用素材が引き続き増加して牽引しました。加えて、シフトブーツ向け等の内装材も小幅ながら増収を確保したことで、自動車向け全体の売上は前年を上回りました。
この結果、自動車用の売上収益は96億57百万円(同19.5%増)となりました。
③航空機用
需要が強く、ビジネスジェット向け、民間航空機向けともに堅調でした。特に、既存プログラムの出荷の伸びに新規プログラムの出荷が加わった民間航空機向けが牽引したことにより、航空機向け全体の売上は前年を大きく上回りました。
この結果、航空機用の売上収益は24億8百万円(同48.8%増)となりました。
④その他
その他事業分野には、RV・アパレル・船舶・トラック用などが含まれます。既存商品の改良による船舶向け販路拡大や規制変更前のトラック向け伸長は、高金利の影響があったRVや消費需要が低迷したアパレル向けの低調を埋め合わせるには十分ではありませんでした。その他売上全体は前年を下回りました。
この結果、その他の売上収益は39億84百万円(同11.9%減)となりました。
② 財政状態
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ13億24百万円増加し、361億85百万円となりました。これは主に、営業債権及び棚卸資産が減少したものの、新工場建設のための建設仮勘定の増加及び為替相場が円安に推移した影響により外貨建ののれん、無形資産が増加したことによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ7億16百万円減少し、209億21百万円となりました。これは主に、有利子負債及び未払法人税等が減少したことによるものです。
資本につきましては、前連結会計年度末に比べ20億40百万円増加し、152億64百万円となりました。これは主に配当金の支払いがあったものの、当期利益の計上による利益剰余金の増加があったことによるものです。
③ キャッシュ・フロー
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ4億42百万円減少し、36億32百万円(前年同期比10.8%減)となりました。これは主に、税引前当期利益の計上及び減価償却費及び償却費の計上があったものの利息及び法人税の支払額による減少及び新工場建設のための設備投資による支出があったことによるものです。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は29億29百万円(同35.3%増)となりました。これは主に法人所得税の支払額があったものの、税引前当期利益の計上及び減価償却費及び償却費の計上があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は20億34百万円(前年同期は4億25百万円の獲得)となりました。これは主に新工場建設のための有形固定資産の取得によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は13億94百万円(前年同期比34.0%減)となりました。これは主に設備投資資金として長期借入金の収入があったものの、借入金の返済及び配当金の支払いがあったことによるものです。
④ 生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社グループはポリウレタンレザーの専門メーカーであり、当該事業以外の異なる事業を営んでおりません。
当連結会計年度の生産実績は次のとおりであります。
|
用途別の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
ポリウレタンレザー(百万円) |
9,253 |
87.9 |
(注)金額は販売価格によっております。
b.受注実績
当連結会計年度における受注実績は次のとおりであります。
|
用途別の名称 |
受注高 |
前年同期比(%) |
受注残高 |
前年同期比(%) |
|
ポリウレタンレザー(百万円) |
19,262 |
91.1 |
3,286 |
64.8 |
(注)金額は販売価格によっております。
c.販売実績
当連結会計年度における販売実績は次のとおりであります。
|
用途別の名称 |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
前年同期比(%) |
|
ポリウレタンレザー(百万円) |
21,045 |
107.4 |
(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2022年1月1日 至 2022年12月31日) |
当連結会計年度 (自 2023年1月1日 至 2023年12月31日) |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
Saltillo Lamination S.A de C.V |
3,968 |
20.2 |
5,004 |
23.8 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」(以下「連結財務諸表規則」という。)第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成に当たりまして、当社グループの経営陣は連結決算日における資産・負債の報告数値及び偶発債務の開示並びに報告期間における収益・費用の報告数値に影響を与える見積り及び仮定設定を行っております。これらの見積り及び判断・評価は、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因等に基づき行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるためにこれらと異なる場合があります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループは単一事業のため、経営成績数値は上記「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の業績は以下の要因により実現いたしました。
売上収益
自動車向けシート素材の成長継続に加えて、新プログラムの成長と共に航空機向けが好調だったことで、在庫調整や高金利政策の影響で不振が続いた家具向けやRV向けの減少分を埋め合わせし、前期比で大幅な増収となりました。
・第2四半期を中心として在庫調整がありヘルスケア向けは販売減
・オフィス市況の悪化により実需が弱くオフィス家具向けは販売減
・自動車向けシート素材のプログラムが引き続き牽引して大幅な販売増
・自動車向けスモールパーツは顧客のサプライチェーンの混乱が解消して伸長
・在庫調整が終了してビジネスジェット向けは堅調
・前期で先送りした新たなプログラムも増えて民間航空各社は大幅な販売増
・金利上昇による嗜好品消費抑制と在庫調整でRV向けと船舶向けは販売減
・グローバル経済減速の影響でアパレル・ゴルフグローブ等の消費者向けは低迷
営業利益及び税引前当期利益
原材料価格の上昇に加えて、人件費・マーケティング費用・支払利息等の増加影響はあったものの、物流費やクレーム対応費用が減少し、円安で推移したこともあり、前期比で増益となりました。
・サプライチェーンの混乱が収束して物流費が減少
・原材料の改良でクレーム対応を含めた品質改善費用の減少
・生産量が減少したことにより工場稼働率が低下して製造原価が上昇
・ウクライナ情勢や円安などに起因する原材料の高騰・燃料費の上昇
・新商品開発に向けたサンプリングが増加しマーケティング費用や人件費等の増加
・世界的なインフレへの懸念や米国の金融引き締めによる金利上昇
・想定より円安で推移して為替差益増
当期利益
移転価格税制による日米間の税金調整もあったため、前期比で増益となりました。
③ 当連結会計年度の財政状態の分析
当連結会計年度末の資産につきましては、前連結会計年度末に比べ13億24百万円増加し、361億85百万円となりました。これは主に、営業債権及び棚卸資産が減少したものの、新工場建設のための建設仮勘定の増加及び為替相場が円安に推移した影響により外貨建ののれん、無形資産が増加したことによるものです。
負債につきましては、前連結会計年度末に比べ7億16百万円減少し、209億21百万円となりました。これは主に、有利子負債及び未払法人税等が減少したことによるものです。
資本につきましては、前連結会計年度末に比べ20億40百万円増加し、152億64百万円となりました。これは主に配当金の支払いがあったものの、当期利益の計上による利益剰余金の増加があったことによるものです。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、事業活動における収益力の向上に加え、運転資金の効率化等により多様化する顧客ニーズに対応した設備投資を行うためのキャッシュ・フローの獲得を進めております。
当社グループは設備投資に必要な資金については自己資金の利用とともに、必要に応じて銀行借入金により調達しております。
資金の流動性については、金融機関との間に結んでいる当座貸越契約を活用することにより当連結会計年度に保有している36億32百万円の現金及び現金同等物を確保し、資金需要にタイムリーに対応ができる状況を維持しております。
⑤ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等についての分析
当社グループは2023年2月に公表した中期経営計画における2023年目標を売上収益211億円、営業利益35億円、当期利益21億円、EBITDA 51億円としておりました。
これに対し2023年の通期業績は売上収益210億45百万円、営業利益35億46百万円、当期利益は23億75百万円、EBITDA 51億86百万円となり、売上収益・営業利益・EBITDAはほぼ目標通りの着地となり、当期利益については目標を上回りました。主な要因は② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容に記載のとおりです。
2023年度の業績及び経営環境の変化を踏まえ、2024年2月に2024年~2026年中期経営計画を公表しました。2026年の目標を売上収益307億円、営業利益51億円、当期利益32億円、EBITDA 72億円と掲げ、目標達成に向けて① エリア・用途・顧客など売上収益源の多様化 ② パートナー戦略による生産能力増強 ③ サステナビリティの重視 ④ 収益性の維持改善 を進めてまいります。
該当事項はありません。
研究開発の目的は日々変化する顧客の要求に応え得る新製品を継続的に市場に提供することで、当社グループの維持・発展を確実にすることにあります。本目的を達成するために当社では「ISO9001」に基づく開発プロセスを構築し運用しておりましたが、車載製品開発を進めるにあたり、「IATF16949」に基づく開発プロセスの整備を行いました。これらの開発プロセスには経営陣をはじめ、営業・技術・製造・品質保証各部門の責任者が参加することで開発業務の効率化をはかっております。
開発業務は当社グループ内各社技術部門、商品開発部門が当該事業に従事しており、当連結会計年度のグループ全体の研究開発費の総額は
それぞれの用途に求められる性能の実現をはかるため、新素材の採用、使用原材料の改質を積極的に行うとともに、加工方法及び性能評価法についてさらなる高度な技術を身につけることが今後の研究開発業務を推進するうえで重要な課題となっております。
なお、2020年度に「ISO14001」の認証を取得し、企業活動が環境に及ぼす負荷を適切に管理し成長と環境保全を両立する経営をグループ全体で推進していることから今後も環境配慮型商品の研究開発や製造プロセスの継続的な改善を通じた事業の環境負荷低減を推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。