文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
当社グループは、1988年より、キヤノングループの理念である「共生」のもと、サステナビリティ経営を推進し、人・社会・自然との調和を図りながら事業を通じた社会課題の解決に取り組んでおります。
社会課題は複雑化、深刻化しており、持続可能な社会の実現に向けて、多様なステークホルダーとともにマーケティングの力でより広範な未来の社会課題を解決し続けていくため、2024年1月に、当社グループを象徴する表現として「未来マーケティング企業」を宣言いたしました。そして、変化の速度と不確実性が高まる時代においても、「未来マーケティング企業」として常に未来を見据え、社会的な存在意義を明示することで、グループ社員の志を一つにするとともに、ステークホルダーとの共創・協業をより一層進め、社会課題解決を加速していくために、当社グループのパーパス「想いと技術をつなぎ、想像を超える未来を切り拓く」を2024年1月に制定いたしました。新たに制定したパーパスのもと、未来の課題にまで目を向け、既存の枠にとらわれない新たな価値の創造に果敢に挑戦し、長期的な視点でサステナビリティ経営を推進してまいります。
持続的な成長と中長期的な企業価値向上を目指し、「2021-2025 長期経営構想」を策定しており、その基本戦略に基づき、2025年ビジョンの実現及び経営指標の達成に向けた実行計画として「2022-2025 中期経営計画」を策定し、推進しております。
(2025年ビジョン)
社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ
(基本戦略)
1.事業を通じた社会課題解決による、持続的な企業価値の向上
2.高収益企業グループの実現
・ITソリューション事業を成長の中核とした事業変革
・顧客基盤を活かした顧客層別営業体制の強化
・キヤノン製品事業の付加価値向上と更なる高収益化
3.経営資本強化による、好循環の創出
・人材の高度化・エンゲージメント向上による事業成長の加速
・戦略的事業投資による事業成長の加速
わが国の経済は海外景気の下振れ、国内の物価上昇等により一部に足踏みが見られるものの、各種政策の効果や雇用・所得環境が改善することで、緩やかな回復が続くことが見込まれます。
このような経済環境のもと、当社グループは、キヤノン製品事業については、更なる収益性の強化を図っていくことが課題と捉えております。一方で、市場の拡大が見込まれるIT ソリューション事業については、収益性の向上を伴った売上の拡大を図っていくことが課題と捉えております。
また、当社グループは、2021年4月に発表しました2021-2025 長期経営構想で掲げたビジョン「社会・お客さまの課題をICTと人の力で解決するプロフェッショナルな企業グループ」の実現に向けて、2022-2025 中期経営計画を策定いたしました。2022-2025 中期経営計画で定めた、以下4つの基本方針の実行を通じて、業容の拡大と業績の向上に努めてまいります。
【2022-2025 中期経営計画 基本方針】
① 利益を伴ったITソリューション事業拡大
顧客層別のITソリューション戦略の実行を加速させるとともに、お客さまに継続してサービス提供を行う、サービス型事業モデルによるストックビジネスの拡大を図ります。
② 既存事業の更なる収益性強化
キヤノン製品事業の更なる高収益化を図るとともに、顧客層に応じた販売戦略を展開します。
③ 専門領域の強化・新たな事業の創出
産業機器事業の更なる成長を実現させるとともに、新たな事業の創出を図ります。
④ 持続的成長に向けたグループ経営
人材の高度化に向けた投資を積極的に行い、それをお客さまへの提供価値向上に繋げる「エンゲージメント向上ループ」の確立を図るとともに、当社グループの持続的な成長に向けた事業投資を加速させます。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。
「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1)経営方針」に記載のとおり、当社グループでは、サステナビリティ経営を経営計画の中核に据え、企業価値向上施策の検討を行う場として、2021年2月に「サステナビリティ推進委員会」を設置しております。サステナビリティに関わる重要な事項については、サステナビリティ推進委員会にて審議を行ったうえで、取締役会に報告し、意見や助言を求め、その後の取り組みに反映しております。
事業に関わるリスクと機会を分析し、サステナビリティ推進委員会での議論を通じて、以下の6つのマテリアリティを策定しています。マテリアリティの進捗は、本委員会がモニタリングしております。
1)くらし・しごと・社会を進化させるソリューションの提供
2)地球環境との調和
3)多様な人材がいきいきと輝くための組織力の向上
4)責任あるサプライチェーンの推進
5)リスク・クライシスマネジメントの推進
6)健全なガバナンスの実行
① ガバナンス
社会と当社グループの持続的発展のための検討を行う場として2021年2月にサステナビリティ推進委員会を発足いたしました。代表取締役社長が委員長を務め、サステナビリティに関わる事項全般については、委員長である代表取締役社長が統括責任を担っております。
サステナビリティ推進委員会を2022年は5回、2023年は4回開催し、「キヤノンMJグループ2030年中期環境目標」への取り組みの進捗報告や施策検討、気候関連財務情報開示タスクフォース(以下「TCFD」という。)の提言に基づく取り組みの高度化の検討、開示情報の更新、各種イニシアチブへの参加の検討、人権対応の幅広いテーマについて討議し、さまざまな施策の実行につなげております。
また、当委員会における討議・決議事項については、経営の根幹に関わる重要事項であり、他の委員会や複数の部門が関わる全社横断的なテーマであるため、取締役会が直接監督する体制が必要であると判断し、2023年4月1日より、それまでの経営会議傘下から取締役会傘下へと体制を変更いたしました。委員会における決裁事項を明文化し、取締役会に付議すべき報告・承認事項を定義いたしました。
② リスク管理
当社グループは、サステナビリティ経営を推進するため、事業に関わるリスクと機会を分析したうえで、6つのマテリアリティを策定しております。マテリアリティの進捗は、サステナビリティ推進委員会がモニタリングしております。
当社グループのリスク管理については、リスクマネジメントを統括・推進する役員及びリスク・クライシスマネジメント委員会をはじめ、リスクの内容に応じて、内部統制評価委員会や品質向上委員会等にて討議し、さまざまな施策の実行につなげております。
当社グループは、「キヤノンMJグループ環境ビジョン2050」及びその中間目標である「キヤノンMJグループ2030年中期環境目標」を策定し、気候変動への対応を含む、環境対応への取り組みを進めております。
2050年カーボンニュートラルの実現のため、自社ビルにおける再生可能エネルギーの導入や、照明・空調の節電対策等のオフィス設備による取り組み、業務プロセス・働き方の改善による取り組み等を進めております。自社CO2削減の取り組みに加え、お客さま先を含むバリューチェーンのCO2削減を目指すとともに、商品やサービス提供を通じたCO2削減貢献にも取り組んでまいります。
また、当社はTCFDの提言に賛同しており、取り組みの高度化に継続して注力しております。その内容は統合報告書やウェブサイトを通じて開示しております。
① ガバナンス
気候変動に関する事項は、サステナビリティ推進委員会で討議しております。気候変動を含むサステナビリティに関わる事項全般について、委員長である代表取締役社長が統括責任を担っております。気候変動が事業に与える影響について少なくとも年1回以上評価を行い、特定したリスクの最小化と機会の獲得に向けた討議を行っております。
また、サステナビリティ推進委員会における討議・決議事項は、経営の根幹に関わる重要事項であり、全社横断的なテーマであるため、取締役会が監督する体制を構築しております。取締役会は、気候変動に関するリスクと機会について少なくとも年1回以上サステナビリティ推進委員会より報告を受け、気候変動のリスクと機会の取り組みに関する進捗をモニタリングし監督しております。
<気候変動対応の推進体制>
② 戦略
当社グループは、気候変動が事業にもたらすさまざまなリスクと機会を具体的に把握するためにシナリオ分析を実施しております。シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の1.5℃(RCP1.9)シナリオ及び4℃(RCP8.5)シナリオに加え、IEAのSDSシナリオを用いております。全社共通に関わるリスクと機会及び、当社グループの主要な事業のうち気候変動に与える影響が大きい事業に関わるリスクと機会を分析し、リスクと機会の顕在時期を、短期・中期・長期の時間軸で特定しております。
※ 短期:~2025年、中期:2026年~2030年、長期:2031年~2050年
③ リスク管理
気候変動に関する事項を所管するサステナビリティ推進部は、グループ会社内の関係部署と連携のうえ、気候変動の影響によるリスクと機会の特定を主導し、状況の把握を行います。さらに、それぞれのリスクと機会に対する対応・対策を検討し、サステナビリティ推進委員会に報告付議いたします。特定した気候変動の影響と内容に応じて全社リスク管理部門に対しても報告・提言を行うことで気候変動の影響を全社リスクマネジメントに統合する役割を担っております。
<リスク管理プロセス>

④ 指標及び目標
当社グループは、グループ全体で取り組みを進めている「キヤノンMJグループ2030年中期環境目標」における「カーボンニュートラルの実現」の指標を、SBTiの基準に沿って2024年1月1日に更新しました。具体的には、「2030年までにスコープ1、2排出量を42%削減(2022年比)」へと変更し、スコープ3においても「2030年までにスコープ3(カテゴリー1、11)排出量を25%削減(2022年比)」とし、サプライチェーン全体でのCO2削減に取り組んでおります。なお、従来の目標である「2030年までに自社CO2 38%削減(2021年比)」に対する2023年のCO2排出実績は、2021年比8.4%の削減となりました。
また、GHG排出量の実績については2023年の集計データより従来のスコープ1、2に加え、スコープ3のデータも第三者検証を取得しております。
当社グループは、キヤノン製品の国内販売の事業からスタートした企業グループですが、近年はビジネス環境の変化に合わせ、お客さまにはキヤノン製品に捉われないさまざまな製品と、ITを組み合わせた「ソリューション」を提供する課題解決型のサービス事業に業態を変化させてまいりました。当社グループでは、上記の事業環境の変化を踏まえ、人的資本の強化に向けた取り組みにおいて、お客さまの課題を把握し、それを解決するためのソリューションを仕立て、お客さまが求める一歩先を見据えた提案力を身に付けた人材を育成していくことを目指しております。
人的資本の価値を最大化するために重要な要素として、当社グループでは「エンゲージメント向上ループ」を確立することを掲げております。エンゲージメント向上ループとは、「社員の働きがい」、「人材の高度化」、「顧客満足」の3つの要素から成り立っており、互いに作用し合うことで企業としての持続的な成長につながるという考え方です。
人材の成長は一朝一夕には実現し得ないため、経営戦略と事業環境の変化を見据えながら、人的資本の価値最大化に向けて中長期的な視点でさまざまな施策を実施しております。
① 戦略
1)人材育成方針
当社グループにおける人材のありたい姿として、“進取の気性を発揮し、新たな価値創造で選ばれ続けるプロフェッショナルな人材”を掲げ、人材の高度化を目指した育成施策に取り組んでおります。
<当社グループ 人材育成方針>
1.キヤノンの行動指針である「三自の精神」に基づき、当事者意識を持って学べる環境を作ります。
2.「ありたい姿」と現状とのギャップを明らかにし、その差を埋めるためのステップをデザインします。
3.学びの基礎として、とことん「考える」こと、最後まで諦めずに「考え抜くこと」を求めます。
4.人は経験で育つという基本的考えに立ち、研修の場だけでなく、実践でチャレンジする機会を創出します。
5.お互いの意見を尊重し時にぶつけ合うことで、教え・教えられる、育て・育てられる環境を作ります。※
※ 人材の多様化は人材育成にもつながります。
<人材ポートフォリオの確立>
サービス型事業モデルへの転換に向けて、新しい人材ポートフォリオの策定に取り組んでおります。
「事業戦略上で求める人材定義」と「ITスキルに関する基準の統一」です。
「事業戦略上で求める人材定義」では、「2022-2025 中期経営計画」で各事業におけるスキル要件をレベル1~5で定義した上で人数を算出し、2025年の目標を設定しました。2023年は、その実現に向けた教育に取り組んでおります。
「ITスキルに関する基準の統一」では、2022年12月に独立行政法人情報処理推進機構(IPA)と経済産業省が発表したデジタルスキル標準(DSS)等を参考に人材の把握を進めております。
業態の変化に向けては、一人ひとりの意識改革やリスキリングも必要です。2023年は、デザイン思考テストや、DX検定・DXビジネス検定のグループ一斉受検などを行いスキルの底上げやマインドセットを進めました。
さらに、新しいサービス事業を牽引する高度人材の獲得として外部人材を積極的に採用し、早期立ち上げを目指すとともに、デジタルマーケティングやデータサイエンス等の社内でも専門性の高い人材育成に力を入れております。
2)社内環境整備方針
<学びの環境整備>
「三自の精神」に基づき、自発的に学べる環境を整備しております。人材育成体系に基づいた階層別研修や、通信教育支援制度、資格取得支援制度など学ぶ意欲のある社員を後押しします。働き方改革に合わせて、学びの場も多様性を持たせるため、グループ全体で活用可能なeラーニングツールを導入し、あらゆる部門がスキルを提供できる環境を構築しました。また、管理職に対して組織の人材活用度を向上するために、多様な個性を活かすためのプログラムも実施しております。
<健康経営の実現>
当社グループは、キヤノンの5つの行動指針(三自の精神、実力主義、国際人主義、新家族主義、健康第一主義)に則って日々の業務を遂行することで、従業員一人ひとりが仕事にやりがいを感じ、健康で豊かな生活を送ることを目指しています。行動指針の一つである「健康第一主義」に基づき従業員の健康の保持増進に取り組むことが、従業員とその家族の幸せ、ひいては持続的な企業価値向上をもたらすと捉え、健康経営の実現に積極的に取り組んでおります。
② 指標及び目標
当社グループは、2025年に向けた中期経営計画における人的資本に関わる非財務指標として、以下を設定しております。
※1 当社グループ独自に作成した設問により調査を実施。肯定回答を示す数値を目標値に設定している。
2 法定雇用率に準ずる。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断しております。
オフィスMFPでは本体については、オフィスの統廃合や入替サイクルの長期化による出荷台数の減少の可能性があります。保守サービスについては、ペーパーレス化によるプリントボリュームの減少が当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。レーザープリンターのトナーカートリッジについては、第三者により代替品が販売されており、その販売量が拡大した場合、キヤノン純正品の収益の圧迫要因となります。
レンズ交換式デジタルカメラについては、一眼レフカメラからミラーレスカメラへ市場が移行する一方で、レンズ交換式デジタルカメラ全体の市場縮小が続く可能性があります。また、インクジェットプリンターについては、カラープリントの減少等によるプリントボリュームの低下に伴い、インクジェットプリンター本体及びインクカートリッジの売上減少が加速する可能性があります。
産業機器については、半導体製造装置や検査計測装置が半導体やデバイスメーカーの設備投資の状況に受注面で大きな影響を受けます。これらのメーカーの設備投資が低下した場合、業績が低迷する可能性があります。
ヘルスケアについては、医薬品医療機器等法(薬機法)や医療情報保護に関する各種ガイドラインにより、法令順守体制の整備と品質管理の徹底、及び情報セキュリティ対策等が要求されております。当社グループは法規制等に対し万全の体制を整えておりますが、想定外のリスクが発生し、要求事項を正常に運用できなかった場合、医療機関や医療機関向け販売業者との取引が減少する可能性があります。
また、親会社のキヤノン株式会社をはじめ、多数の取引先からの商品及びサービスの提供を受けているため、自然災害や重大事故の影響等、取引先の何らかの事情により十分な供給を受けられない等のリスクが発生する可能性があります。その場合には、販売活動の円滑な推進ができず、業績に影響を与える懸念もあります。
(2) システム開発
当社グループでは、さまざまなソリューションをお客さまに提供するため、幅広い分野でのシステム受託開発を行っております。案件を進めるにあたっては、社内での審議体制の構築、プロジェクト管理、綿密な作業工数管理を行い、不採算案件が発生しないように、リスクの低減に努めております。
しかしながら、顧客との仕様・進捗に関する認識の不一致等により、多大な追加工数が発生した場合にコストが増大する可能性があり、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) データセンター事業
当社グループでは、西東京データセンターを設立し、データセンターサービスやクラウドサービス、システム運用サービス等のストック型ITサービス事業を行っております。データセンターについては、建物や設備、セキュリティ、運営品質等の各要素において、高度な水準が求められるため、安定した地盤に建設し、高性能なファシリティと厳重なセキュリティを備えております。また、長年のデータセンター運営で蓄積した知見・ノウハウをもとに、2017年に「M&O認証※」を取得しており、第三者機関が証明するグローバル基準の運営品質を備えております。
しかしながら、地震、大規模な水害、火災等の災害や感染症、運用ミス、サイバー攻撃等が発生した場合、施設・システムの運用の停止や重要な顧客情報の漏洩により、取引先等の関係者に損害等を発生させる場合があり、また、その信用の低下等から当社グループの事業運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
※米国の民間団体「Uptime Institute」が定めているデータセンターの運営品質に関するグローバル基準
(4) 情報管理
当社グループでは、さまざまなグループ経営に関する重要情報を有しているほか、お客さまに対するソリューションの提供等を通して、法人・個人に関する機密情報を多数保有しております。これらの情報管理については、「情報セキュリティ基本方針」・「情報セキュリティ基本規程」を策定しており、社員に対する教育・研修等により情報管理の重要性の周知徹底、システム上のセキュリティ対策の実施と対策状況の確認を行う等、情報セキュリティに関するマネジメント体制を整え、運用しております。業務委託先についても選定基準や安全管理措置の確認方法等を定めたルールや管理体制を整備し、適切な管理・監督を行っております。
また、サイバーセキュリティ専門組織Canon MJ-CSIRT※によるサイバー攻撃の予防・検知・発生時対策の実施体制を整備しております。
しかしながら、これらの対策にもかかわらず、サイバー攻撃等により重要な情報が外部に漏洩した場合には、取引先等の関係者に損害等を発生させる場合があり、また、その信用の低下等から当社グループの事業運営や、業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
※CSIRT:Computer Security Incident Response Team
当社グループが事業活動を展開する地域において、地震や台風等の自然災害及び重大な感染症の流行等が発生した場合には、人的・物的被害が生じ、当社グループの事業活動に影響を与える可能性があります。当社グループでは、設備や情報システムに対するバックアップ体制の整備、グループ全体での災害対応訓練や事業所単位での防災訓練等を通じて災害が生じた場合の被害の未然防止・最小化に向けた取り組みを進めておりますが、これによって災害等による被害を十分に回避できる保証はなく、発生時には当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、これらの自然災害等によって経済活動の停滞やサプライチェーンの混乱、取引先の事業活動・投資意欲の減退等が発生する場合、当社グループのビジネス、経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、商品及びサービスの提供後に代金を回収する取引が多いことから、予測できない貸倒損失が発生する可能性があります。このため、外部信用調査機関の信用情報等を活用して徹底した与信管理を行うとともに、ファクタリング等の活用によりリスクヘッジを行っております。また、債権の回収状況等により個別に貸倒引当金を設定し将来の貸倒れリスクに備えております。しかしながら、予期せぬ事態により多額の回収不能額が発生した場合には、当社グループの業績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。
当社は、キヤノン株式会社の子会社(2023年12月31日現在の同社の議決権保有比率58.5%)であり、キヤノン株式会社がキヤノンブランドを付して製造するすべての製品(半導体露光装置・液晶基板露光装置・医療機器を除く)を日本国内において独占的に販売する権利を有しております。当連結会計年度における同社からの仕入高は当社全体の仕入高において依然として高い水準となっております。
これらの事情から、キヤノン株式会社の経営方針、事業展開等に大幅な転換があった場合には、当社グループの事業活動や業績、財務状況に大きな影響が及ぶ可能性があります。また、関連業界におけるキヤノン製品の優位性が、何らかの理由により維持できなくなった場合には、当社グループの業績等に悪影響が及ぶ可能性があります。
当期におけるわが国の経済は、緩やかに持ち直しの動きが続きました。個人消費は、新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針変更に伴う旅行や外食の拡大、インバウンド消費の回復等により、持ち直しの動きが見られました。企業の設備投資は、経済活動の正常化に伴い、好調に推移しました。特にIT投資については、製造業や金融業を中心に幅広い業種で投資意欲が高い状態にあり、好調に推移しました。
このような経済環境のもと、当社グループは企業の積極的なIT投資を背景としたSIサービスやITインフラサービスの売上拡大、オフィスMFPの供給回復やレンズ交換式デジタルカメラの新製品の好調な推移等に伴う売上拡大により、売上高は6,094億73百万円(前期比3.6%増)となりました。
利益については、売上増加に伴う売上総利益の増加により、営業利益は524億95百万円(前期比5.1%増)、経常利益は535億85百万円(前期比5.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は364億93百万円(前期比2.6%増)となりました。
各報告セグメントの業績は以下のとおりです。増減に関する記載は、前期との比較に基づいています。
コンスーマ
レンズ交換式デジタルカメラについては、新型コロナウイルス感染症による制約が徐々に緩和されたことによる撮影機会の増加や、2022年12月に発売した「EOS R6 MarkⅡ」、2023年3月に発売した「EOS R50」、4月に発売した「EOS R8」、6月に発売した「EOS R100」等のEOS Rシリーズの販売台数の増加により、売上は堅調に推移しました。
インクジェットプリンターについては、市場の縮小により、売上は減少しました。インクカートリッジについては、プリントボリュームの減少等により、売上は減少しました。
ITプロダクトについては、高性能PCやPC周辺機器の販売が堅調に推移したことにより、売上は微増となりました。
これらの結果、当セグメントの売上高は1,347億13百万円(前期比1.4%減)となりました。セグメント利益については、売上減少に伴う売上総利益の減少により、133億55百万円(前期比4.2%減)となりました。
エンタープライズ
主要ビジネス機器については、製品の供給が回復したことにより、オフィスMFPの台数は増加しました。レーザープリンターについては、第4四半期に複数の大型案件があったことにより、台数は増加しました。オフィスMFPの保守サービスについては、オフィスにおけるプリントボリュームが減少したことにより、売上は微減となりました。レーザープリンターカートリッジについては、2023年2月に実施した仕入価格上昇に伴う価格改定の効果や、金融業向けが堅調に推移したことにより、売上は増加しました。
ITソリューションについては、金融業及び流通業向けのSI案件の売上が増加したことに加え、IT基盤に係る案件を複数獲得したことや、データセンター2号棟の売上が順調に推移したこと等により、売上は大幅に増加しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は2,203億26百万円(前期比8.7%増)となりました。セグメント利益については、売上増加に伴う売上総利益の増加により、196億50百万円(前期比15.1%増)となりました。
エリア
主要ビジネス機器については、製品の供給が回復したことにより、オフィスMFPの台数は増加しました。レーザープリンターについては、前年の供給回復に伴う出荷増の反動により、台数は減少しました。オフィスMFPの保守サービスについては、大都市圏を中心にテレワークが継続され、オフィスにおけるプリントボリュームが減少したことにより、売上は微減となりました。一方、レーザープリンターカートリッジについては、2023年2月に実施した仕入価格上昇に伴う価格改定の効果等により、売上は増加しました。
ITソリューションについては、ビジネスPCの供給が回復したことや、複数のIT基盤構築案件を獲得したことに加え、中小企業のIT環境をトータルで支援する「まかせてIT DXシリーズ」のラインアップを拡充し受注件数が増加したことにより、売上は増加しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は2,339億13百万円(前期比3.2%増)となりました。セグメント利益については、売上増加に伴う売上総利益の増加により、182億49百万円(前期比17.3%増)となりました。
プロフェッショナル
(プロダクションプリンティング)
プロダクションプリンティング事業では、主に印刷業向けに、高速連帳プリンター及び高速カット紙プリンター等を提供しております。また、小売業向けにPOP制作関連のビジネスも提供しております。
当事業の売上は、前期にあった高速連帳プリンターの複数案件の剥落により、減少しました。
(産業機器)
産業機器事業では、主に半導体メーカー向けに、製造関連装置及び検査計測装置等を提供しております。
当事業の売上は、前期にあった半導体製造関連装置等の複数案件の剥落により、減少しました。
(ヘルスケア)
ヘルスケア事業では、主に病院・診療所・調剤薬局・健診施設向けに、電子カルテを中心とした医療情報システム等を提供しております。
当事業の売上は、キヤノンメディカルシステムズ株式会社からの事業移管及び診療所向けオンライン資格確認システム案件や調剤薬局向け電子処方箋案件が増加したことにより、大幅に増加しました。
これらの結果、当セグメントの売上高は402億2百万円(前期比3.5%減)となりました。セグメント利益については、売上減少に伴う売上総利益の減少により、36億12百万円(前期比31.1%減)となりました。
(注)各セグメント別の売上高は、外部顧客への売上高にセグメント間の内部売上高又は振替高を加算したものであります。詳細は「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」をご参照ください。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローの資金の増加は、281億82百万円(前連結会計年度は377億25百万円の増加)、投資活動によるキャッシュ・フローの資金の減少は、100億11百万円(前連結会計年度は101億7百万円の減少)となりました。財務活動によるキャッシュ・フローの資金の減少は、132億60百万円(前連結会計年度は112億59百万円の減少)となりました。以上の結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は、前連結会計年度末に比べ50億58百万円増加して、896億90百万円となりました。
当社グループの事業形態は主に国内外から仕入を行い、国内での販売を主要業務としているため、生産実績及び受注実績に代えて仕入実績を記載しております。
当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) セグメント間の取引については相殺消去しております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、以下のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.総販売実績に対して10%以上に該当する販売先はありません。
3.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断しております。
当社グループの連結財務諸表は、一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。連結財務諸表の作成に当たり、経営者の判断に基づく会計方針の選択と適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りが必要となりますが、その判断及び見積りに関しては連結財務諸表作成時に入手可能な情報に基づき合理的に判断しております。しかしながら、実際の結果は、見積り特有の不確実性が伴うことから、これら見積りと異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しております。
なお、当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積りのうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
(流動資産)
当社グループにおける実質的資金である現金及び預金、有価証券、短期貸付金の合計額の減少49億49百万円、商品及び製品の増加12億52百万円、受取手形、売掛金及び契約資産の増加12億17百万円等により、前連結会計年度末より10億96百万円減少し、4,186億11百万円となりました。
なお、売掛債権の保有日数は、前連結会計年度末と比べて2日短くなり、66日となっております。
また、在庫回転日数は、前連結会計年度末と比べて横ばいの、24日となっております。
(固定資産)
子会社株式取得等によるのれんの増加45億40百万円及び顧客関連資産の増加34億8百万円、保有上場株式の時価評価等による投資有価証券の増加30億2百万円、退職給付に係る資産の増加105億94百万円、繰延税金資産の減少69億87百万円等により、前連結会計年度末より147億22百万円増加し、1,387億55百万円となりました。
なお、有形固定資産は、新規取得による増加74億60百万円、減価償却による減少80億30百万円等により、前連結会計年度末より2億51百万円減少し、850億24百万円となりました。
また、無形固定資産は、新規取得による増加19億62百万円、子会社株式取得等による増加86億2百万円、減価償却による減少22億10百万円等により、前連結会計年度末より81億86百万円増加し、141億81百万円となりました。
(流動負債)
未払消費税等の増加12億86百万円、その他に含まれる契約負債の増加16億38百万円等により、前連結会計年度末より25億28百万円増加し、1,105億90百万円となりました。
(固定負債)
退職給付に係る負債の減少243億81百万円等により、前連結会計年度末より240億39百万円減少し、112億66百万円となりました。
(純資産)
親会社株主に帰属する当期純利益による増加364億93百万円、配当金の支払129億67百万円、退職給付に係る調整累計額の増加99億42百万円、その他有価証券評価差額金の増加16億57百万円等により、前連結会計年度末より351億37百万円増加し、4,355億9百万円となりました。
これらの結果、総資産は前連結会計年度末より136億25百万円増加し、5,573億66百万円となりました。
(売上高)
売上高は、企業の積極的なIT投資を背景としたSIサービスやITインフラサービスの売上拡大、オフィスMFPの供給回復やレンズ交換式デジタルカメラの新製品の好調な推移等に伴う売上拡大により、前連結会計年度と比べて3.6%増加し、6,094億73百万円となりました。
詳細は「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
(売上原価)
売上原価は、開発部門及びサービス部門の人件費が含まれます。前連結会計年度と比べて4.2%増加し、4,049億80百万円となりました。
(売上総利益)
売上総利益は、前連結会計年度と比べて2.6%増加し、2,044億92百万円となりました。
また、売上総利益率は、前連結会計年度と比べて0.3ポイント減少し、33.6%となりました。
(販売費及び一般管理費)
販売費及び一般管理費は、広告宣伝費の増加等により、前連結会計年度と比べて1.8%増加し、1,519億97百万円となりました。
(営業利益)
営業利益は、新型コロナウイルス感染症の5類への移行に伴い効果的な販促活動を積極的に行ったことで販管費は増加しましたが、キヤノン製品の供給回復に加え、好調なITソリューション事業の売上拡大に伴う売上総利益の増加等により、前連結会計年度と比べて5.1%増加し、524億95百万円となりました。
また、営業利益率は、前連結会計年度と比べて0.1ポイント上昇し、8.6%となりました。
詳細は「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
(営業外損益)
営業外損益は、前連結会計年度の10億44百万円の利益から、10億90百万円の利益となりました。
(経常利益)
経常利益は、前連結会計年度と比べて5.1%増加し、535億85百万円となりました。
(特別損益)
特別損益は、前連結会計年度の5億31百万円の利益から、5億27百万円の損失となりました。主に、投資有価証券売却益を1億13百万円、固定資産除売却損を4億79百万円、関係会社株式売却損を1億59百万円計上したことによるものであります。
(税金等調整前当期純利益)
税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度と比べて3.0%増加し、530億57百万円となりました。また、売上高に対する比率は、前連結会計年度と比べて0.1ポイント減少し、8.7%となりました。
(法人税等)
法人税等は、前連結会計年度の158億96百万円から、当連結会計年度は164億73百万円となりました。なお、実効税率は、31.0%でした。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比べて2.6%増加し、364億93百万円となりました。
また、1株当たり当期純利益は、前連結会計年度より7円25銭増加し、281円41銭となりました。株主資本利益率(ROE)は、前連結会計年度と比べて0.5ポイント減少し、8.7%となりました。
なお、セグメント別業績の分析については「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 1.経営成績等の状況の概要」に記載のとおりです。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ50億58百万円増加して、896億90百万円となりました。
当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローの資金の増加は281億82百万円(前連結会計年度は377億25百万円の増加)となりました。税金等調整前当期純利益530億57百万円等による資金の増加と、退職給付信託の拠出180億円、法人税等の支払148億9百万円、仕入債務の減少25億3百万円、棚卸資産の増加6億91百万円、売上債権の増加61百万円等による資金の減少によるものであります。
当連結会計年度の投資活動によるキャッシュ・フローの資金の減少は100億11百万円(前連結会計年度は101億7百万円の減少)となりました。有形固定資産の取得による支出83億43百万円、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の取得による支出76億18百万円、無形固定資産の取得による支出19億60百万円等による資金の減少と、短期貸付金の純増減額100億12百万円等による資金の増加によるものであります。
これらの結果、営業活動によるキャッシュ・フローと投資活動によるキャッシュ・フローを合計した、当連結会計年度のフリー・キャッシュ・フローの資金の増加は、181億71百万円(前連結会計年度は276億18百万円の増加)となりました。
当連結会計年度の財務活動によるキャッシュ・フローの資金の減少は132億60百万円(前連結会計年度は112億59百万円の減少)となりました。配当金の支払129億61百万円等によるものであります。
当社グループの資金の源泉は主として、営業活動によるキャッシュ・フローによっております。また、当社と連結子会社間におけるグループファイナンスの実施により、グループ内資金の有効活用を図っております。
運転資金、設備資金等、通常の資金需要につきましては、原則として営業活動によるキャッシュ・フローによる自己資金で充当することとしております。
当社グループは、「中期経営計画(2022年~2025年)」を策定し、経営上の目標達成状況を判断するための客観的な指標として下記の項目を掲げております。
当連結会計年度の計画に対しては、市場の縮小に伴うインクジェットプリンターの売上減少や、プリントボリュームの減少に伴うインクカートリッジの売上減少等の影響により、売上は目標未達となりましたが、仕入価格上昇に伴う価格改定の効果等により、営業利益、親会社株主に帰属する当期純利益において当初の目標を達成いたしました。
(提出会社)
販売権基本契約
当社はキヤノン株式会社(その関係会社を含む)が製造し、キヤノン株式会社がキヤノンブランドを付して販売するすべての製品(半導体露光装置・液晶基板露光装置・医療機器を除く)を日本国内において独占的に販売する契約をキヤノン株式会社との間で締結しております。
当連結会計年度におけるセグメントごとの研究開発活動状況は以下のとおりであります。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は
(コンスーマ)
新規事業関連の研究開発活動を行っております。
当セグメントに係る研究開発費は
(エンタープライズ)
市場販売目的ソフトウエアの制作を行っており、製品マスター完成を目的とした研究開発活動を行っております。
当セグメントに係る研究開発費は
(プロフェッショナル)
プロダクション印刷機器の研究開発活動を行っております。
当セグメントに係る研究開発費は