文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは、「人々の清潔で、快適な生活空間づくりのために、たゆまぬ技術革新と感動を与えるサービスを提供し、社会に貢献する」ことを経営理念としており、個人向けの衣料クリーニングのみならず、家庭向けのハウスクリーニングや、法人向けのリネンサプライ・ユニフォームレンタル等、人々の清潔で快適な生活空間づくりに関連するサービス・事業を総合的に展開しております。1906年の創業から百十余年間、業界のリーディングカンパニーとして、たえず新しいサービスや技術に挑戦し、最先端を走り続けてまいりました。
2023年、当社グループは10 年後(2033 年)のあるべき姿として新たなビジョン「世界の人々の清潔で快適な空間づくりに貢献し、感動を与え続ける企業集団」を掲げ、このビジョンの実現に向けた行動計画として新たな中期経営計画(2024年~2026年)を策定いたしました。計画に基づいて構造改革の完遂と収益性の改善を着実に進めるとともに、コンプライアンスの徹底とコーポレートガバナンスの強化を通じて中長期的な企業価値の向上を図り、ステークホルダーの皆さまの期待と信頼に応えてまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは、中期経営計画(2024年~2026年)において、各経営指標に関する目標を以下の通り設定しております。
①連結ROE(自己資本利益率)
中期経営計画期間中(2024年~2026年)の各期における連結ROEの目標を、12%に設定しております。連結ROEの数値のみならず、ROEの構成要因である収益性(売上高当期利益率)を改善させるとともに、借入金依存度(財務レバレッジ)の低下を目指してまいります。
②ROIC(投下資本利益率)
2026/12月期の単体事業部門におけるROICの目標を、8%以上に設定しております。経営資源配分の見直しにより、クリーニング事業、リネンサプライ事業における資本収益性改善を目指します。
③PBR(株価純資産倍率)
PBRの目標を、1.25倍以上に設定しております。コロナ禍で毀損した自己資本比率の回復を図りつつ、上記①②の目標達成等により、PBRの水準を維持してまいります。
(3)会社の経営環境、中長期的な会社の経営戦略及び対処すべき課題
当社グループは、新型コロナウイルスの感染拡大以降、自己資本を大きく毀損いたしましたが、前中期経営計画(2021~2023年)において進めてきた構造改革の効果等により、事業収益力の改善が着実に進み、成長軌道への回帰を果たすことができました。
新型コロナウイルスの5類移行後における我が国経済は、社会経済活動の正常化が進むと共に、物価上昇等に伴った賃上げの動きも強まることが見込まれる等、大きく変化する状況にあります。
こうした状況下、当社グループは、2024年~2026年の3ヶ年となる新たな中期経営計画を策定いたしました。中期経営計画の骨子と各事業戦略は以下の①②の通りであります。
①中期経営計画における経営戦略の骨子
・構造改革の完遂とオペレーションの磨き上げ
-不採算店舗閉鎖、CLP(集配)生産性向上等、クリーニング事業の構造改革を完遂
-工場の自動化・経費率の適正管理等により、収益力の高い生産体制を確立
-高品質なサービス・付加価値を反映した価格戦略の遂行
・マーケティングによる収益力向上
-地域毎の市場環境に即した経営資源の選択と集中
-サステナブル商材による差別化戦略、付加価値の高い提案による営業力強化
・事業ポートフォリオの最適化
-マーケット環境を考慮した地域別事業展開など、経営資源配分の見直しにより、クリーニング事業・リネン
サプライ事業の資本収益性を改善
②各事業セグメントにおける市場環境と戦略
イ.クリーニング事業
個人向けのクリーニング事業は、服装のカジュアル化や在宅勤務の普及等を背景に、引き続き中長期的な需要低下が想定されます。競争力の源である品質をさらに磨くと共に、選択と集中により更なる収益向上を進めてまいります。具体的な取り組みは以下の通りです。
・商圏ポテンシャルや地域特性に即した機動的な出退店、他事業との融合戦略の推進
・当社の差別化要因で強みであるCLP(集配スタッフ)の活動スタイル変革とデジタルマーケティングによる
サービス力の向上
・工場技術者の更なるプロフェッショナル化と工場の自動化・省人化、拠点間の機動的な生産調整等による、
生産体制の効率化
ロ.レンタル事業(リネンサプライ事業)
主にホテル・レストラン等のリネン品を取り扱うリネンサプライ事業は、インバウンド需要の回復や国の観光立国化政策等を背景として、需要の拡大が見込まれる状況です。高収益体質への変革を進めると共に、拡大する市場に対応してまいります。具体的な取り組みは以下の通りです。
・品質・サービス・付加価値を反映した価格戦略による収益性の向上
・工場経費率の管理、資材調達額の削減等による収益性の高い生産体制の確立
・独自付加価値サービスの提案等、市場ポテンシャルを考慮した営業力の強化
ハ.レンタル事業(ユニフォームレンタル事業)
コンビニエンスストアや外食産業、食品工場等のユニフォームを取り扱うユニフォームレンタル事業は、HACCP(食品衛生管理の世界標準)の義務化等を背景に市況の活性化が進んでおります。新たな差別化戦略により営業力を強化し、業容を拡大してまいります。具体的な取り組みは以下の通りです。
・脱炭素社会に適合する独自サステナビリティ商品の提案による営業の差別化
・異業種との協業・提携拡大による新規営業ターゲット先の拡大
・自工場生産体制再構築による生産性の向上
(1)サステナビリティ共通
①ガバナンス
イ.サステナビリティに関する基本方針
白洋舍グループは、基本精神である「奉仕の徹底」「一人代表」「開拓者精神」のもと、経営理念(社会的存在意義)である「人々の清潔で、快適な生活空間づくりのために、たゆまぬ技術革新と感動を与えるサービスを提供し、社会に貢献します」を実践しています。
経営にあたってはESGを重視し、サステナビリティを巡る課題への対応は重要な経営課題であるという認識のもと、事業と環境(Environment)や社会(Social)とのかかわりに注視し、それらへの影響、それらからの影響を経営戦略に組み込み、規律づけられた企業統治(Governance)のもとで持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を目指します。
また、事業活動にあたってはSDGsの17のゴールを白洋舍グループの3つの経営ビジョン「お客さま第一」「魅力ある職場」「自然との調和」に紐づけ、事業を通じて社会課題の解決に貢献すると共に、社会課題の解決に貢献することで企業価値の向上を目指します。
ロ.サステナビリティ推進体制
当社グループでは、代表取締役社長執行役員を委員長とする部門横断の会議体として「サステナビリティ委員会」を設置し、グループ全体のサステナビリティ課題に関する検討・審議を行うなど、サステナビリティ推進の役割を担っています。また、サステナビリティ委員会の下部には、各拠点単位にSDGs委員会を設置し、委員会と連携しながら個別テーマの取組み・推進を担っています。
サステナビリティ委員会で検討・審議された具体的な取組み事項は、経営会議を経て取締役会に報告・審議され、意思決定を行っています。取締役会では、サステナビリティに関するリスクや機会、マテリアリティに関して設定したKPIに対する進捗等について継続的にモニタリング・監督を行っています。
ハ. 戦略
当社グループは、自社およびステークホルダーにとって重要度の高い課題の中から、特に優先して取り組むべきマテリアリティを8つ設定しております。
それぞれの課題ごとの「解決に向けた手段」は以下の通りです。また、マテリアリティを達成することにより、社会課題(SDGs)への貢献を目指します。
特に重要度の高い項目に関する取り組みについては、「(2)気候変動」「(3)人的資本と多様性」をご参照ください。
②リスク管理
当社グループでは、代表取締役社長執行役員を委員長とする「リスクマネジメント委員会」において、事業継続に影響するリスク項目の特定及び発生頻度や影響度に基づくリスク評価を定期的に行い、重点管理すべきリスク項目を洗い出したうえで、対応策について検討しています。
サステナビリティに関連するリスクについても、上記リスクに包含されており、リスクマネジメント委員会で検討された内容は、案件に応じて経営会議及び取締役会に報告・審議され、意思決定を行っています。
(2)気候変動
①戦略
気候変動は異常気象や大規模な災害をもたらし、経済・社会の持続性を脅かす最も深刻な環境問題であり、企業として取り組まなければならない重要課題と位置付けています。具体的な取組として、継続して実施している省エネ設備の導入、生産効率の改善、再生可能エネルギーの導入・調達などに加え、GHG排出量(Scope1,2合計)の削減目標およびロードマップを策定し、進捗を管理してまいります。
フッ素溶剤であるHFC365mfc(商品名:ソルカン)は衣類に対する影響が小さく、ソフトに洗浄できる一方、地球温暖化の原因となると言われています。代替溶剤の開発を進め、将来的は全て移行することにより100%削減します。また、クリーニング品質を維持しながら省エネ、生産効率の改善や水の使用量削減などを実現する洗浄方式の研究開発及び技術革新を推進しています。
循環型社会に向けた取組を通じて、資源の有効活用と経済価値の最大化に貢献します。継続して実施しているハンガー回収の推進に加え、衣類の中古品買取事業を開始いたしました。また、リサイクルへの取組として、廃棄リネン・ユニフォーム資源のリサイクルシステムを構築し、脱炭素に貢献するとともに、クライアントの価値向上を目指します。
②指標と目標
2030年度までにGHG排出量(Scope1,2合計)の50%以上削減(2015年度比)を目指します。ロードマップは以下の通りです。

気候変動に関する指標と目標
(3)人的資本と多様性
①戦略
イ.人財育成方針

「白洋舍の基本精神を体現できる人財」「多様性を尊重した自律的な人財」「プロフェッショナル人財」の育成に向け、人財育成プログラムを再構築しています。あわせてDX推進と労働生産性を向上していくことで、人的資本投資額の拡大を目指します。
具体的には、階層別育成、キャリア支援(含むリスキリング)、資格支援の3つで構成される「人財育成プログラム※1」への資源配分の強化や、従業員の自主性を尊重した公募型研修・キャリアチャレンジ制度の活性化、当社が培ってきた技術の伝承及び品質の向上等を企図した工場技術者資格制度の拡充、洗濯科学研究所における研究開発の強化など、戦略的な投資を行います。
また、当社事業に知見のあるメンバーを中心に、デジタル人財教育として研修の受講、データ分析ツールの導入・活用、ITコンサルタント会社出身者によるアドバイス・教育等を行い、データを有効に活用して現状の可視化を図り、改善につなげ、収益に貢献できる人財の育成を目指します。
※1 人財育成プログラムの概要

ロ.社内環境整備方針
「能力開発機会の提供」「従業員エンゲージメント向上への風土醸成」「ダイバーシティ推進」「人事情報の基盤整理」により環境を整え、従業員一人ひとりがイキイキ働きサステナブルで魅力ある職場作りを推進していきます。
②指標と目標
当社グループは、中期経営計画との連動をより強め、従業員一人ひとりの「物心両面の幸せの追求」と「成長に向けた環境づくり」の2項目を実現し、中長期的な企業価値向上の源泉である“人的資本の価値”を最大限に引き出すことを目指しています。
経営資源の成長分野への重点的な投入、従業員の能力開発やスキル向上等を通じて、持続的な成長と生産性向上に取り組み、付加価値の最大化に注力します。
人財育成方針・社内環境整備方針を維持・向上するための指標とその現状及び目標は以下のとおりになります。
人財育成方針に関する指標と実績・目標
社内環境整備方針に関する指標と実績・目標
(1)「リスク管理」の枠組み
・基本的な考え方
当社グループでは、「内部統制システムに関する基本方針」「リスク管理規程」を定め、同方針等に基づき、「リスクを知る」「リスクを避ける工夫をする」「非常事態が発生した場合は被害を最小化する」の3点を実践することにより、リスクマネジメントに取り組んでおります。
・リスク管理体制
当社グループでは、リスク管理における全社的な意思決定を適切に行うため、「リスクマネジメント委員会」を設置しております。また、「白洋舍グループリスク管理表」を作成し、リスク項目ごとの「発生頻度」と「影響度」に基づくリスク評価を行うことにより、重点管理すべきリスク項目とその対応策を洗い出し、リスク回避、被害最小化に向けた取り組みを推進しています。
<リスク管理体制図>

「リスクマネジメント委員会」
リスク管理の方針の決定、リスク管理規程の整備・運用状況の検証、その他リスク管理全般に関する事項についての審議
「グループ内部統制委員会」
当社と子会社とのグループ内でのリスク情報の共有とコンプライアンス遵守を目的に開催
(2)主要なリスク(リスク評価に基づき、重点管理すべきリスク項目)
当社グループの経営成績および財務状況等に重要な影響を与える可能性のある主要なリスクには以下のようなものがあります。
①事業環境の変動に関するリスク
当社グループの事業のうち、クリーニング事業においては、服装のカジュアル化や、家庭用洗濯機の高性能化、在宅勤務の普及等を背景に、中長期的に市場規模が縮小する傾向にあります。需要の減少が想定以上に進行した場合等には、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
また、レンタル事業においては、大手のホテル・レストラン・コンビニエンスストア等を中心とする大口法人得意の売上占有率が高い状況にあります。政府の観光立国化政策やHACCP(食品衛生管理の世界標準)の義務化等を背景に、市場規模の拡大が見込まれる状況が続いておりますが、パンデミックの発生等によって市場環境が急激に悪化し、ホテル稼働率の低下や得意先の業績不振、取引内容の変更、契約終了等の事態が発生した場合、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
[対応策]
クリーニング事業においては、新型コロナウイルス感染拡大以降、需要が十分に回復しないことを前提とした事業戦略を進めており、不採算店舗の閉鎖やCLP(集配)部門の生産性向上等の構造改革の推進を通じて、事業収益力の強化を図っております。
レンタル事業においては、営業体制の強化や異業種との協業・提携を通じて、新規顧客の獲得や取引業種の多様化への取り組みを進めており、特定取引先への集中リスクの抑制に努めております。
②自然災害等に関するリスク
地震・風水害等の自然災害が発生した場合、当社グループ拠点や設備等の損壊、電力・ガス等の供給困難による生産活動やサービス提供への障害、損壊した設備等の復旧費用の発生、あるいは、取引先ホテル等の営業状態への甚大な影響などにより、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。
[対応策]
自然災害を想定した設備対応と安否確認訓練のほか、地震対策本部設置を含む初動対応訓練の実施等により、事業継続計画(BCP)の対応強化を図っております。一方、需要減少への対応力を高めるため、工場での機動的な生産調整等による損益分岐点引き下げや、外部委託先の活用による費用の変動費化に努めております。
③中期経営計画の進捗に関するリスク
当社グループは、2024年度を初年度とし、「構造改革の完遂とオペレーションの磨き上げ」「マーケティングによる収益力向上」「事業ポートフォリオの最適化」を戦略の骨子とする3年間の中期経営計画を策定しております。しかしながら、構造改革に向けた取り組みの遅れ等により、中期経営計画の進捗に遅延が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
[対応策]
中期経営計画の進捗モニタリングについては、役員・事業部長らが参加する月1回のミーティングにおいて、計数やアクションプランの進捗を共有し、目標値とのギャップがあれば対策の協議を行う体制を整えているほか、年2回、取締役会に報告し、フォローアップを行っております。
④工場機械・設備に関するリスク
ドライクリーニング工場には石油系の洗浄・乾燥設備があり、万一火災が発生すれば、人身事故、近隣への延焼、クリーニング品の焼失、工場設備の焼損など多大な損害につながる可能性があります。
[対応策]
工場に防火防爆の安全対策を施すとともに、関係法令に基づく各種マニュアルを定め、チェックリストに基づく日常点検・定期点検、工場部による業務点検や防災訓練を実施しております。また、支店長・事業所長・工場長等を対象とした、石油系設備・溶剤の安全管理に関する知識習得のための学科試験を実施しております。
⑤資金調達に関するリスク
当社グループの事業資金の一部は金融機関からの借入により調達しています。景気の後退、金融収縮等の全般的な市況の悪化や業績悪化による信用力の低下等の要因により、当社グループが望む条件で適時に資金調達できない可能性があります。また、今後、長期金利や短期金利が上昇した場合、借入コストの増加により当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響が及ぶ可能性があります。また、当社グループの借入金にはシンジケート・ローンが含まれており、財務制限条項が付されています。業績の悪化等により同ローンの期限前弁済義務が生じた場合には、当社グループの財政状態に悪影響を与える可能性があります。
[対応策]
金融機関等と十分なコミュニケーションを通じて資金繰りを確保しながら、中期経営計画に基づく収益構造改革による収益力の向上により、中長期的に借入金の圧縮を図りながら、当社グループにおける財務基盤を強化してまいります。
⑥環境汚染に関するリスク
クリーニング施設の廃止等にあたり、土壌汚染対策法に基づく土壌改良等の対応が必要となった場合には、対策費等で経営成績への悪影響が生じる可能性があります。また、環境関連その他で新たな法令、規制等が強化・導入された場合、業務への支障や対応コストが経営成績や財務状況に悪影響を与える可能性もあります。
[対応策]
当社グループでは、「白洋舍グループ環境方針」「白洋舍グループ環境保全規程」および各種マニュアルを定め、溶剤使用に係る保守管理点検や従業員への教育訓練を実施しております。また、ドライ洗浄機のオイルパン設置、床面の樹脂被膜による溶剤の不浸透化や、洗濯科学研究所による排水自主測定等により、事業活動に伴う環境汚染の未然防止に努めています。新たな法令・規制等が強化される可能性がある資材についても情報収集を行い、代替品の研究・開発を進めます。
⑦クリーニング品質に関するリスク
当社グループは、お客さまの期待と信頼に応え続けていくために常に品質・サービスの向上に努めております。しかしながら、万一、当社が定めた品質基準や作業工程等が守られていない等の不正が発生し、当社グループに対する信用低下や多額の損害賠償責任が発生した場合は、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
[対応策]
当社グループでは、品質検査要項や各種マニュアルを定め、当社基準に従った適正な作業が行われていることを定期的に点検(抜き打ち品質検査等)するとともに、洗浄品質維持のため、全国の工場の洗浄品質を一斉にチェックする試験(洗浄管理試験)を定期的(年2回)に実施しております。また、特に品質不正によるブランド毀損の回避を目的として、本社内に品質管理に関する統括・監査組織(品質管理室・品質監査室)を設置し、内部管理体制の強化を図っております。
⑧情報漏えいに関するリスク
当社グループは、事業を展開するうえで、お客さま及び取引先の個人情報や機密情報、当社グループ内の個人情報や経営情報を保有しております。しかしながら、外部からのサイバー攻撃や、内部的過失や盗難等により、これらの情報が漏洩し問題が発生した場合には、社会的信用の低下、損害賠償等の費用の発生など、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。
[対応策]
当社グループは、すべての役員および従業員に対する行動規範、法令・ガイドライン等に基づくプライバシーポリシー、各種規程(個人情報管理規程、情報システム管理規程等)やマニュアルを定めるとともに、定期的な研修の実施を通じて、個人情報の適正な管理および取り扱いを行っております。また、セキュリティソフトの導入、データの暗号化、サーバへのアクセス管理等による情報管理システムにおける安全対策を実施しております。
⑨外部委託先管理に関するリスク
当社グループは、業務の一部をグループ外の協力会社へ業務委託しています。委託先において法令違反や品質管理等に問題が発生した場合など、委託先における業務に支障が生じた場合には、当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
[対応策]
当社グループでは、業務委託に関する問題発生を未然に防止するため、委託先への定期的(年4回)な巡視・指導・点検を行うなど、委託先と綿密な連携をとりながら、関連法規制の遵守、品質管理等の徹底を図っております。
⑩人財の確保に関するリスク
当社グループの事業は、同業他社との差別化において、従業員の接客技術や作業技術の重要性が高く、優秀な人財の確保が不可欠であります。しかしながら、労働人口の減少や高齢化等を背景として人財の確保や技術の継承が難航し、店舗や工場の運営に支障をきたした場合には、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を与える可能性があります。
[対応策]
当社グループでは、各種研修制度や社内資格制度の整備により、業務に関する従業員の技術・知識向上を支援するとともに、スキルアップが従業員に還元される体制を構築しております。また、業務効率化を進めるためのシステム・機械設備への投資や、人員計画に基づいた採用活動、事業間の人財シフト等を計画的に実施し、各職場における人員の過不足や育成状況等を鑑み適切なコントロールを行っております。
⑪その他のリスク
・減損会計適用の影響
当社グループは、事業用の不動産をはじめとする固定資産を所有しております。こうした資産は、時価の下落や収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなると減損処理が必要となる場合があり、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。
・繰延税金資産等
当社グループは、将来減算一時差異および税務上の欠損金に対して、将来の利益計画等に基づく課税所得の見積りにより、回収可能性を慎重に検討した上で繰延税金資産を計上しております。しかし、今後の業績動向等により、一部ないし全部について回収可能性がないと判断された場合、繰延税金資産が取崩され、当社グループの経営成績および財務状況に悪影響を与える可能性があります。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(経営成績等の状況の概要)
(1)財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染症に関する行動制限の緩和に伴い、社会経済活動の正常化が進んだ一方、世界情勢の緊張の高まりに加え、物価上昇や、世界的な金融引き締め等を背景とする景気の下振れリスクも見られる等、先行き不透明な状況が続きました。
こうした状況下、当社グループにおいては、需要の回復が十分見込めないクリーニング事業を中心に、不採算店舗の閉鎖による固定費の削減や、集配部門等の収益性の高い営業チャネルへの売上構成比率のシフト等、構造改革へ着実に取組んでまいりました。
当社グループの業績は、2023年5月に実施したクリーニング料金の改定による受注単価の上昇や、行動制限の緩和等に伴う法人得意先の稼働率回復等により、売上高は432億7千2百万円(前年比10.4%増)、営業利益は18億1千5百万円(前年比173.0%増)、経常利益は21億4千9百万円(前年比58.4%増)となりました。親会社株主に帰属する当期純利益については、前期における不動産売却益等に相当する特別利益の計上が無かった一方、連結子会社である共同リネンサプライ株式会社の合併に伴い引き継いだ繰越欠損金に対する繰延税金資産を計上し、税金費用が減少したこと等から、19億4千5百万円(前年比15.2%増)となりました。
セグメント別の経営成績は、次のとおりであります。
<クリーニング>
個人向けのクリーニング事業は、服装のカジュアル化等を背景に、中長期的に需要が低下する傾向にあり、加えて新型コロナウイルスの感染拡大以降、在宅勤務の普及等の影響により、ビジネスウェアのクリーニング需要の減少に拍車が掛かっております。こうした状況を受け、当社グループでは、不採算店舗の閉鎖を通じて店舗部門を縮小すると共に、集配部門等の収益性の高い営業チャネルに売上構成比率をシフトさせるチャネルシフトを進める等、事業の収益性を改善するための構造改革を推進いたしました。また、2023年5月には、資材費等の上昇等を背景に、2022年4月に続いてクリーニング料金の改定を行いました。
クリーニング事業の売上高は、料金改定に伴う増収効果が見られたものの、店舗閉鎖に伴う営業窓口数の減少等から、179億1百万円(前年比0.4%減)となりました。一方セグメント利益(営業利益)は、不採算店舗の閉鎖計画の進捗により、人件費や賃借料等、直営店舗の運営に関わる経費が減少したこと等から、16億7千3百万円(前年比43.4%増)となりました。
<レンタル>
レンタル事業は、主にホテル・レストラン等のリネン品を取り扱うリネンサプライ部門と、コンビニエンスストアや外食産業、食品工場等のユニフォームを取り扱うユニフォームレンタル部門との、2つの部門からなる法人向け事業です。
当事業は、新型コロナウイルス感染拡大に伴って一時的に事業環境が悪化したものの、政府の観光立国化政策やHACCP(食品衛生管理の世界標準)の義務化等を背景に、市況の再活性化が進んでいることから、需要の取り込みに向けた営業体制・生産体制の整備を推進しております。
リネンサプライ・ユニフォームレンタル両部門において、行動制限緩和に伴う得意先の稼働回復が見られたほか、光熱費の高騰等を背景とする経費の上昇を受けて取引価格への転嫁(料金改定)を進めたこと等から、レンタル事業の売上高は243億1千4百万円(前年比19.9%増)となり、セグメント利益(営業利益)は、外注費や集配車両費の上昇はあったものの、18億3千3百万円(前年比79.0%増)となりました。
<不動産>
不動産事業では、不動産の賃貸および管理を行っております。
不動産事業の売上高は4億8千1百万円(前年比0.5%減)、セグメント利益(営業利益)は3億5千6百万円(前年比10.9%減)となりました。
<物品販売>
物品販売事業では、クリーニング業務用の機械・資材や、ユニフォーム等の販売を行っております。
物品販売事業の売上高は5億7千4百万円(前年比32.0%増)、セグメント利益(営業利益)は7千9百万円(前年比46.9%増)となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、営業活動によるキャッシュ・フロー収入15億6千6百万円、投資活動によるキャッシュ・フロー支出5億9千7百万円、財務活動によるキャッシュ・フロー支出6億5千7百万円などにより3億2千3百万円増加いたしました。その結果、現金及び現金同等物の期末残高は、前年比29.2%増の14億2千9百万円となりました。
<営業活動によるキャッシュ・フロー>
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純利益20億1千7百万円、減価償却費12億8千4百万円などにより15億6千6百万円の収入(前年比19.3%増)となりました。
<投資活動によるキャッシュ・フロー>
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出5億8千6百万円などにより、5億9千7百万円の支出(前年は8億1千5百万円の収入)となりました。
<財務活動によるキャッシュ・フロー>
財務活動によるキャッシュ・フローは、長短借入れによる収入218億8千3百万円、長短借入金の返済による支出219億2千8百万円、リース債務の返済による支出4億8千1百万円などにより、6億5千7百万円の支出(前年比69.0%減)となりました。
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります
(注)セグメント間の取引については相殺消去しております。
当グループは見込み生産を行っていないため、該当事項はありません。
販売実績は、生産実績と同一であるため記載しておりません。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この連結財務諸表を作成するにあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)に記載しております。
(流動資産)
当連結会計年度末の流動資産合計は、116億4千6百万円となり、前連結会計年度末の100億1千2百万円と比較して16億3千3百万円の増加となりました。主に、棚卸資産の増加10億5千1百万円、現金及び預金の増加3億2千3百万円によるものです。
(固定資産)
当連結会計年度末の固定資産合計は、215億8百万円となり、前連結会計年度末の213億5千7百万円と比較して1億5千1百万円の増加となりました。主に、投資有価証券の増加3億6千6百万円によるものです。
(流動負債)
当連結会計年度末の流動負債合計は、121億8千5百万円となり、前連結会計年度末の116億3千6百万円と比較して5億4千8百万円の増加となりました。主に、短期借入金の増加7億6千3百万円によるものです。
(固定負債)
当連結会計年度末の固定負債合計は、125億9千8百万円となり、前連結会計年度末の135億8千6百万円と比較して9億8千8百万円の減少となりました。主に、長期借入金の減少5億1百万円、環境対策引当金の減少4億9千3百万円によるものです。
(純資産)
当連結会計年度末の純資産合計は、83億7千万円となり、前連結会計年度末の61億4千6百万円と比較して、22億2千4百万円の増加となりました。主に、利益剰余金の増加18億4千7百万円によるものです。
(3)当連結会計年度の経営成績の状況に関する分析・検討内容
当連結会計年度の概況につきましては、「第一部企業情報 第2事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。具体的な経営成績の状況の分析につきましては以下のとおりであります。
当連結会計年度の売上高は432億7千2百万円となり、前連結会計年度の売上高391億8千万円と比較して40億9千2百万円の増加となりました。セグメント別の業績及び主な理由につきましては、「第一部企業情報 第2事業の状況 3経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の売上原価は366億3千8百万円となり、前連結会計年度の売上原価341億1千万円と比較して25億2千7百万円の増加となりました。販売費及び一般管理費は48億1千8百万円となり、前連結会計年度の販売費及び一般管理費44億4百万円と比較して4億1千3百万円の増加となりました。
上記の①売上高及び②売上原価、販売費及び一般管理費に記載しました理由により、当連結会計年度の営業利益は18億1千5百万円となり、前連結会計年度の営業利益6億6千5百万円と比較し11億5千万円の増加となりました。
当連結会計年度の営業外収益は持分法による投資利益1億円等により5億5千2百万円となり、前連結会計年度の営業外収益9億8百万円と比較して3億5千6百万円の減少となりました。当連結会計年度の営業外費用は支払利息1億8千3百万円等により2億1千8百万円となり、前連結会計年度の営業外費用2億1千6百万円と比較して2百万円の増加となりました。
上記の④営業外損益に記載しました理由により、当連結会計年度の経常利益は21億4千9百万円となり前連結会計年度の経常利益13億5千7百万円と比較して7億9千2百万円の増加となりました。
当連結会計年度の特別利益は固定資産売却益5百万円等により8百万円となり、前連結会計年度の特別利益11億2千3百万円と比較し11億1千4百万円の減少となりました。
当連結会計年度の特別損失は減損損失8千8百万円等により1億4千万円となり、前連結会計年度の特別損失1億7千万円と比較して2千9百万円の減少となりました。
上記の⑥特別損益に記載しました理由により、当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は20億1千7百万円となり、前連結会計年度の税金等調整前当期純利益23億1千万円と比較して2億9千3百万円の減少となりました。
法人税、住民税及び事業税並びに法人税等調整額の合計金額は6千6百万円となり、前連結会計年度の合計金額6億9千8百万円と比較して6億3千2百万円の減少となりました。その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は19億4千5百万円となり、前連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益16億8千8百万円と比較して、2億5千6百万円の増加となりました。
当社グループは、新中期経営計画(2021年度より3ヵ年)において、自己資本比率の20%以上確保を目標としております。
当連結会計年度においては、自己資本比率は25.1%となり新中期経営計画 (2021年度より3ヵ年)の目標値は達成しております。
当社グループは、資金計画に基づき、必要な運転資金や設備資金は、長期の銀行借入及び社債により調達しております。資金の流動性については、充分な当座借越枠を設定することにより、手元流動性を確保しております。
該当事項はありません。
当社グループでは、研究部門(全社(共通))において、東京都大田区下丸子に洗濯科学研究所をもっており、研究内容は主として洗濯溶剤の管理・事故品の経過追及等の業務であります。
当連結会計年度の研究開発費