(1)経営方針
当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 会社の経営の基本方針
当社グループは2017年1月1日付で「社是」「私たちの使命」「私たちのありたい姿」「私たちの持つべき価値観」を新たに理念体系として整備し、全役員・全従業員がこれらの理念を実践、体現することを基本的な経営姿勢としております。
当社グループは、理念に掲げた使命を果たし、ありたい姿を実現していくために、経営基盤の強化、よき企業風土の醸成、また、企業価値を高める事業戦略を打ち立て、その確かな遂行に努めていくことを経営の基本方針としております。
(理 念)
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社 是 |
昨日より今日はより良くより安く、需要者の為に各自の職場で最善を |
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私たちの使命 (ミッション) |
お客さまの期待や満足を超える感動や驚きを生み出し、 豊かな社会づくりに貢献します。 |
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私たちの ありたい姿 (めざす企業像) |
一. 私たちは、たゆまぬ技術革新によって、一歩先の未来を創る企業をめざします。 一. 私たちは、挑戦心と独創的な発想にあふれた闊達な風土を持つ企業をめざします。 一. 私たちは、企業活動に関わるすべての人びとと喜びを分かち合う企業をめざします。 |
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私たちの 持つべき価値観 (TOYO WAY) |
公正さ 社会に正しく役立つことを旨として、私心のない公明正大な行動をとる。 誇 り 会社と仕事、自分自身に高い誇りを持ち、最後まであきらめない。 主体性 何事にも、自らが主体となって受け止め、自らが主体となって取り組む。 感 謝 人と社会に思いやりと感謝の心を持ち、誠意を込めて力を尽くす。 結束力 仲間とともに知恵と力を結集し、常に創意工夫と改良改善を続ける。 |
② 目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略
中期経営計画の推進
当社グループは、事業を取り巻く環境が不透明な中においても持続的な成長を堅持していくことを企図し、2021年を起点とした5ヵ年の中期経営計画「中計’21」を策定しました。
タイヤと自動車部品を事業の中核に据え、これまで強みとして培ってきた独自性、研鑽してきた機能別組織の機能発揮、強化を図ってきたガバナンスやコンプライアンス体制をベースに置きながら、変化の激しい環境においても迅速、かつ柔軟に適応する力を強化することで、当社グループの企業ステージをさらに向上させる所存です。その実現を企図して掲げた経営指標(下表)への到達に取り組んでおります。
以上の取り組みの結果、2023年度においては、重点商品販売構成比率、連結営業利益、ROEについて前倒しで達成しております。
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経営指標 |
目標数値 |
達成時期等 |
実績 |
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連結営業利益率 |
14%超 |
2025年度 |
13.9% |
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重点商品販売構成比率 |
55%超 |
2025年度 |
62.9% |
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連結営業利益 |
600億円 |
2025年度 |
769億円 |
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ROE |
12%以上 |
中計’21期間中 |
20.2% |
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設備投資 |
1,940億円 |
中計’21期間(5ヵ年)累計 |
当期までの累計1,191億円 |
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株主還元 |
配当性向30%以上 |
中計’21期間中 |
3年間の平均30% |
詳細については、当社ウェブサイトIR情報(https://www.toyotires.co.jp/ir/)に掲載の『中期経営計画「中計’21」』をご参照ください。
(1)サステナビリティに関する基本的な考え方
当社グループは、「企業活動上のあらゆる働きがすべて社会と将来につながっている」という自覚を強く持ち、事業を通じた社会課題の解決、社会的価値の創出によって、自らの存在意義を追求していく方針です。
① ガバナンス
当社グループは、サステナビリティに関する議論を集約し、実行の質・スピードをさらに高めることを目的として、「サステナビリティ委員会」を設置しております。サステナビリティ委員会は、委員長を社長、委員を統括部門管掌役員で構成され、サステナビリティの全社戦略策定、マテリアリティの特定、機能分担の最適化、主要KPIの達成度合いの確認等を報告・審議しております。事務局は経営基盤本部ESG推進部が担当し、原則として年に4回開催します。
サステナビリティ委員会で報告・審議された重要な事項は適時に取締役会及び経営会議に報告され、経営会議では当該事項の執行に対する最終の意思決定を行い、取締役会議では、報告された内容に対し適切に監督する態勢を構築しております。
② リスク管理
当社グループでは、事業活動を行なうバリューチェーンにおいて直面し得るリスクのなかでも、万が一、発生・顕在化した場合に、重大な影響を及ぼすリスクを「重要リスク」と位置づけ、これらを最優先で対策していくリスク管理を行っております。
重要リスクのうち、気候変動に伴うリスクやサプライチェーンを含む事業活動全体の人権リスクについては、コーポレート部門がリスクの洗い出しと重要度評価を行い、関連部門と連携して対策を立案し、サステナビリティ委員会および危機管理委員会(リスク管理事務局)に報告しております。その他の事業への影響が想定されるESGリスクについても、それぞれの担当部門において具体的な戦略・対策を立案し、各種専門委員会に報告しております。
③ 戦略
当社グループは、サステナビリティを推進するうえで、事業領域との関連範囲や社内のリソース制約などの観点から、優先して重点的に取り組む事項(マテリアリティ)を特定することが重要であると考えています。社内リソースを戦略的にマテリアリティの取り組みに投下するとともに、従業員一人ひとりが業務と関連づけてサステナビリティ課題に取り組む組織風土の醸成や、マテリアリティを軸とした対外的なESG対話の充実などステークホルダーエンゲージメントの強化にもつなげていきます。
また、マテリアリティは当社グループの優先的重要課題であるため、サステナビリティ委員会のサブ組織としてタスクフォースを設置して、もしくは既存の横断的組織・会議体を活用して、各テーマの目標・KPIを設定し、その達成に向けた取り組みプロセス・施策を計画します。それらをサステナビリティ委員会と経営会議で承認したのち、各統括部門の年度方針書・事業計画に組み込んで実行しております。
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領域 |
マテリアリティ |
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価値創出 |
持続可能なモビリティ社会の実現に寄与する |
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豊かなモビリティライフを支え、創造する |
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価値創出を支える基盤 |
多様な人材の挑戦と働きがいを創出する |
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次世代モビリティの技術革新を続ける |
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リスクマネジメント |
全企業活動における脱炭素を追求する |
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サプライチェーンのサステナビリティを促進する |
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モノづくりの根幹(品質と安全性)を守り抜く |
当社グループは、各マテリアリティに対して具体的な活動テーマを設定し、サステナビリティ方針に基づいて、テーマごとに中長期目標・ゴールと、そこに到達するためのプロセス・施策を計画しました。目標・ゴールは、まず、長期的(2030年時点)に、当社や社会がどのような状態に到達していることをめざすかを考え、「状態ゴール」として設定しました。そして、「状態ゴール」までの達成度合いをイメージして確認できるよう、指標として「状態KPI」を設定しております。
中期(2025年時点)・短期については、2030年から逆算した「状態ゴール」とその状態に到達するために取り組むべきこと(プロセス、施策)を計画し、年度方針などに落とし込んで進捗管理を行う仕組みとしております。
(2)気候変動への対応(TCFD提言への取り組み)
気候変動による影響が深刻化し、モビリティに対する社会的要請がますます高まるなか、モビリティ事業を事業経営の中核に据える当社グループにとって、気候変動対応は当社グループの成長を左右する最重要課題であると認識し、パリ協定が掲げる長期目標の達成に向けた温室効果ガスの排出削減やクリーンエネルギーの利活用拡大を進めております。
また、当社はTCFD提言に賛同し、開示フレームワークに沿った情報開示を通じてステークホルダーとの対話やエンゲージメントを活性化させ、気候変動に関する取り組みを推進します。
① ガバナンス
サステナビリティ委員会傘下に、品質環境安全統括役員を責任者とする「脱炭素タスクフォース」を設置し、事業活動におけるCO2削減に向けた活動計画や目標・KPIなどを議論しております。なお、タスクフォースの取り組みの進捗については、サステナビリティ委員会にて定期的に確認・モニタリングを実施しております。
② リスク管理
TCFD対応を主管する経営管理本部、サステナビリティ委員会を主管する経営基盤本部 ESG推進部、脱炭素タスクフォースを主管する環境安全推進本部 環境衛生推進部を中心に、気候関連リスクの特定・評価を実施し、サステナビリティ委員会での審議を経て、当社グループとしての気候関連リスクを評価しております。
サステナビリティ委員会の脱炭素タスクフォースを通じて、各国のGHG排出量削減目標(再生可能エネルギー導入目標を含む)や自動車の燃費規制、ガソリン車の新車販売禁止などの規制要件を注視するとともに、各リスクへの対応を主管部に促し、進捗管理を行っております。
③ 戦略
気候変動が当社グループの事業活動に及ぼす影響を確認するためにシナリオ分析を実施しております。シナリオ分析にあたっては現行シナリオ(3~4℃シナリオ)及び移行シナリオ(1.5℃シナリオ)の2つのシナリオを前提に分析しました。
分析の結果として、中長期で影響が大きいと見込まれるリスクの財務的影響及び対応策は下記の通りです。
(イ)気候パターンの変化に伴う天然ゴムの調達への影響
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属性 |
気候関連事象/事業への財務的影響 |
影響額/発生年度 |
算定方法 |
対応策 |
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慢性 |
気候パターンの変化 気候パターンの変化により、天然ゴムの木の生育可能地域変動、品質低下等の影響が生じ、天然ゴムの調達コストが増加する。 |
約7~約97億円 (中期:2030年) |
(下限) 天然ゴム調達量×天然ゴムの上昇価格 ・天然ゴム調達量は過去実績から推定した2030年時点の天然ゴム調達量。 ・天然ゴムの上昇価格は、過去の大洪水発生月の価格上昇分を年間に均したもの。 (上限) 天然ゴム調達コスト増加額×天然ゴム調達量増加割合 ・天然ゴム調達コスト増加額は、大規模洪水が発生した年の調達コスト増加分。 ・天然ゴム調達量増加割合は、大規模洪水が発生した年から2030年迄の調達量における推定増加割合。 |
・タイヤ転がり抵抗低減を念頭に置いたタイヤの軽量化を推し進める事により、タイヤ1本あたりに使用する天然ゴム使用量を低減する。 ・サステナブル原材料の使用比率向上に向けた取組みを継続し、使用済みタイヤ由来の再生ゴム等のリサイクル原材料を適用した商品を順次市場投入していく事で、天然ゴムの消費量を低減する。 ・天然ゴムの生産現場における課題(森林減少、地域住民の権利侵害等)に対し、サプライチェーン全体で解決策を講じる事により安定した天然ゴム調達を実現する。具体策として、GPSNR※の掲げる「持続可能な天然ゴムの原則」を踏まえ、当社は「持続可能な天然ゴムの調達方針」を策定、公表し、全サプライヤーへの周知を図ると共に、その実現の為に公平で客観的なCSR評価を第三者専門機関に依頼している。また、各サプライヤーのサプライチェーン管理に関する取り組みの積極的な活用を検討している。 |
(ロ)カーボンプライシングメカニズム
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属性 |
気候関連事象/事業への財務的影響 |
影響額/発生年度 |
算定方法 |
対応策 |
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政策 |
カーボンプライシングの導入 カーボンプライシングの導入により、CO2の排出に対するコストが上昇する。 |
約5億円 (中期:2030年) |
CO2削減目標未達分×炭素税 ・CO2削減目標未達分は、2030年時点の当社CO2目標削減量が仮に10%足りなかった場合の未達量。 ・炭素税はIEAが公表する2050年Netゼロに向けて想定される2030年時点の先進国向け炭素税。 |
・当社グループにて、組織内外での事業活動及び製品を通じた効率的なエネルギー利用により、CO2の削減を継続する。 ・CO2削減への対策としては、ICP(社内炭素価格)を活用した製造拠点の再エネ調達、燃料転換、及び設備更新を進めていく。 |
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約57億円 (中期:2030年) |
CO2排出量×炭素税 ・CO2排出量は、2030年時点の当社目標CO2排出量。 ・炭素税はIEAが公表する2050年Netゼロに向けて想定される2030年時点の先進国向け炭素税。 |
④ 指標と目標
(イ)温室効果ガス(GHG)の排出実績
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(千t-CO2e) |
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2020年 |
2021年 |
2022年 |
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Scope1:直接的GHG排出量 |
263.9 |
268.2 |
265.3 |
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Scope2:間接的GHG排出量 |
271.6 |
284.4 |
253.6 |
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Scope3:その他の間接的GHG排出量 |
12,059.8 |
12,932.2 |
13,019.8 |
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(t-CO2/百万円) |
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2020年 |
2021年 |
2022年 |
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排出原単位 (Scope1+2の総量/売上高) |
1.56 |
1.40 |
1.04 |
(ロ)温室効果ガス(GHG)排出削減目標
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Scope1&2 |
GHG排出量 :2030年に2019年度比46%の削減、2050年にカーボンニュートラルをめざす。 |
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Scope3 |
GHG排出量原単位:タイヤ1本あたりのGHG排出量について、2030年時点において2019年比20%の削減貢献をめざす。 |
(3)人的資本の拡充(人材育成、多様化推進に向けた取り組み)
当社は、「中計'21」において、持続的な成長を支える経営基盤構築の一環として、多様な人財が有機的に協働し、働きがいを持って活躍できる仕組みの整備、個性と質と能力を極める育成システムの構築を掲げています。
これらに即して、国籍や性別、年齢、経歴・キャリア志向などに関わらず、多様な人財が成長・活躍できる基盤整備を推進していきます。同時に、採用・登用において、能力・適性・実績に基づきフラットに評価し、適材適所を加速することで、人財のベストミックスを進めていきます。
人的資本への投資については、人財育成、ダイバーシティ推進、ウェルビーイングな職場づくり(働き方改革)に必要不可欠な「事業経営者及び各機能のプロフェッショナル人財の計画的な育成を促進するシステム」「多様な人財が働きやすいオフィス環境や人事制度」「従業員のパフォーマンスやコミュニケーション向上に資する勤務形態・ツール」などに対して中長期的にリソースを投下する考えです。
① ガバナンス
当社グループは、人材財基盤の強化に向けた方針と重要な施策の方向性を組織人事委員会で協議・決定し、コーポレート統括部門が責任主管として実行を指揮します。サステナビリティ委員会が管轄する人財に関わる活動テーマもこの方針に基づいており、必要に応じて組織人事委員会に諮問します。
② 戦略
(イ)人材育成方針
人財は継続的事業成長を支える最重要資本であると捉え、人的資本開発の重要性を認識しております。
人財の多様化への対応として「個性と質と能力を極める育成システム」を構築し、「国籍や性別、年齢、経歴・キャリア志向などに拘わらず、多様な人財が成長・活躍できる基盤」の整備を推進しております。その取組みの一環として、新研修体系を2022年に導入し、新人事制度で設けた役割期待、理念、及び中核社員が基礎的知見を有すべき事項(DX、ESG)の研修を各階層研修に追加・再編するとともに選抜型研修の刷新を行いました。各部門長・本部長を対象とする研修では、自身の変革を促してマネジメント力を強化し、中長期的な課題解決に向けたリーダーシップの向上を図ると共に、中堅層への選抜型研修を通じて、グローバルに活躍できる将来の事業経営候補者育成を行っております。
また、従業員が将来の目標に向けて意欲的に取り組めるよう、社内におけるキャリア育成方針を明確化し、部署ごとに計画書を作成、同計画書に伴った人事異動を全社で促進するとともに、従業員のキャリア開発に関しては定期的なレビュー、上司・本人との面談を実施しております。
(ロ)ダイバーシティの推進
当社グループでは、採用・登用においては、能力・適性・実績に基づきフラットに評価し、人財のベストミックス(適時適材適所の人材配置)を加速することで持続的な成長を支える人財基盤の構築を進めると共に、国籍や性別、年齢などにかかわらず、多様な人財が活躍できる職場づくりを推進しております。
人財採用においては、国内外で新卒・中途採用や定年退職者の再雇用、障がい者雇用など、多様な人財の確保に取り組んでおります。取り組みの一例として、2018年から新卒採用時における女性や外国人に関する採用比率目標の掲示をやめ、あらゆる人財をフラットに評価・採用する方針としております。
また、すべての従業員の活躍推進をめざし、各種人事制度を整備するとともに、従業員一人ひとりのキャリア面談の実施、人財開発計画の策定を行っております。また、「ダイバーシティ&インクルージョン」といったテーマでのeラーニングや、女性活躍推進の一環として外部講師を招聘した講演会の開催など意識改革研修も実施しております。
(ハ)働きやすい環境の整備
多様な人財が活躍できる職場づくりとして、働き方改革によるワーク・ライフ・バランスを推進しております。長時間労働防止対策として、2020年以降、残業が必要ない組織体制をめざして、業務の棚卸・効率化を全社として推進しているほか、各種休暇制度の適正な活用を促しております。こうした取り組みの結果、2019年に比べ、全社残業時間は減少しています。
また、社員の育児・介護を支援する取り組みとして、2歳以下の子の養育および家族の介護に専念できる休業制度(2親等以内の要介護家族が対象: 最長1年)や、男性が育児休暇を取得しやすい制度や職場環境を整えています。このほか、傷病、育児・介護、ボランティア活動、妊娠・不妊治療などが通院または入院などの事由に該当する場合に、失効した前々年度の年次有給休暇を復活させて使用できる制度なども整備しております。そのほか、多様な価値観・ライフスタイルを考慮した社内のドレスコードの見直しや、アフターコロナを変革のチャンスと捉え、よりアウトプットを高める働き場所の提供(オフィス改革)にも取り組んでおります。
③ 指標と目標
当社は過去5年間において、管理職候補となる係長級層での女性比率を2.0%(2016年)から4.7%(2020年)へ
倍増することを実現しました。
これを踏まえ、「中計’21」期間中の5年間(2021~2025年)においては、係長級から課長級以上の管理職層
への登用比率について、男性の登用比率に対する女性の登用比率(2020年時点70%)を80%~120%へ引き上げる
ことを目標に定めております。
また、個人の能力及び組織力のさらなる向上を企図し、各種研修の体系化・充実化を進め、スキル獲得・リー
ダーシップ育成といった「人財が学ぶ機会・培う機会」の充足に注力しております。併せて、これらの研修有効
性を受講者満足度(目標75%以上)で確認し、都度、研修内容の改善を図っております。なお、2023年に実施し
た研修教育実績は下記記載の通りです。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項は、以下のようなものがあります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)経済環境及び需要動向の影響について
当社グループの売上高は、タイヤ事業及び自動車部品事業により構成されており、世界的な景気減速による自動車販売の落ち込みなどの自動車産業の景況は、連結業績に影響を与える可能性があります。また、当社グループはグローバルな事業展開を進めており、特に北米・欧州・アジアなどの主要市場の経済状況は連結業績に影響を及ぼす可能性があります。国内需要については、景気の動向や暖冬による冬用タイヤ需要の減少に左右され、連結業績にも影響を及ぼす可能性があります。
(2)海外投資等に関わる影響について
当社グループは、グローバルな需要に対応する柔軟な供給体制確立のため、海外生産拠点への投資を行っております。適正な投資運用を行っておりますが、世界的な景気の変動などにより、計画とは異なる成果となることで、連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3)外国為替変動の影響について
当社グループの海外売上高比率は、2020年12月期72.9%、2021年12月期75.8%、2022年12月期80.4%、2023年12月期80.0%となっており、海外売上高が連結売上高の半分以上を占めております。このため為替予約などによるリスクヘッジを行っておりますが、為替変動が、連結業績に影響を与える可能性があります。
(4)主要原材料価格変動の影響について
当社製品の主要原材料は天然ゴム、合成ゴム及びその他石油化学品であります。これらの仕入価格は、原油、ナフサ及び天然ゴムの国際市況によって大きく影響を受けます。また、天然ゴムをはじめとし輸入品も多く為替変動の影響も受けます。これらが連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
(5)株価変動の影響について
当社グループは市場性のある株式を保有しております。このため全般的かつ大幅な株価下落が続いた場合、保有有価証券に減損又は評価損が発生し、連結業績に影響を与える可能性があります。
(6)金利変動の影響について
当社グループは、キャッシュ・プーリング・システムの導入等により子会社の資金調達並びに資金管理の一元化を図るなど金融収支を改善するとともに、資金調達手段の多様化や長期借入金比率を高めることにより金利変動リスクのヘッジを行っております。これらの取り組みを行っておりますが、金融環境が急速に悪化した場合や金利が中長期的に上昇した場合には資金調達コストが上昇し、連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7)災害等の影響等について
当社グループは、災害等(地震・火災・風水害・疾病・戦争・テロ等)による影響を最小限にするため、設備の定期的点検の実施、有事の際の対応策の設定・訓練などの取り組みを行っております。しかしながら、大規模な災害等の発生や生産拠点及び原材料の仕入先並びに製品の納入先で災害等が発生した場合、連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8)製品の品質による影響について
当社グループは、品質管理を経営の最重要課題とし、品質管理体制に万全を期しておりますが、製品の欠陥や不良が発生しない保証はありません。大規模なリコールや欠陥に起因する多額の損害賠償が起きた場合には、連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9)知的財産権について
当社グループは、技術ノウハウの蓄積と知的財産権の保護に努めておりますが、第三者による当社知的財産権の侵害を効果的に防止できないことがあります。また、第三者から、当社グループの製品又は技術が第三者の知的財産権を侵害したとして訴訟を受け、その訴えが認められた場合には、連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10)法律・規制について
当社グループは、経営の基本としてコンプライアンス体制の強化、内部統制機能の充実に努めております。それにもかかわらず、法律・規制を遵守できなかった場合、活動の制限やコストの増加につながり、連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、国内外の事業活動に関連して、訴訟や各国当局による捜査・調査の対象となる可能性があり、重要な訴訟が提起された場合や、各国当局による捜査・調査が開始された場合には、連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11)退職給付債務について
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等数理計算上で設定される前提条件や年金資産の期待運用収益率に基づいて計算を行っております。このため、実際の金利水準の変動や年金資産の運用利回りが悪化した場合には、連結業績に影響を及ぼす可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要は次のとおりであります。
① 経営成績の状況
当連結会計年度(2023年1月1日から2023年12月31日まで)における経済環境は、米国では、個人消費は底堅さを保っているものの、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め効果発現により労働市場の軟化、インフレ鈍化傾向が続いており、全体としては景気拡大ペースが鈍化しています。欧州では、インフレ対策としての金融引き締めが継続されてきたことにより、生産、消費活動の低迷が明確となり、内外需ともに経済活動の復調の勢いは乏しい状態が続いています。わが国では、新型コロナウィルス感染症の感染症法上の分類が引き下げられたこと、また各種政策の効果もあり景気は緩やかに回復しているものの、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクや物価上昇、金融資本市場の変動等に引き続き注視する必要があります。
このような状況のもと、当社グループは2021年を起点とした5ヵ年の中期計画「中計’21」を策定し、その中で掲げた各種経営指標を実現するため、これまで培ってきた得意分野や独自性、研鑽してきた機能別組織機能、変革・強化を図ってきたガバナンスやコンプライアンス体制をベースに置きながら、取り巻く変化に迅速、かつ柔軟に適応する力を当社グループ全体で強化することに取り組みました。
その結果、当期の当社グループの売上高は552,825百万円(前年度比55,611百万円増、11.2%増)となり、営業利益は76,899百万円(前年度比32,853百万円増、74.6%増)、経常利益は86,047百万円(前年度比35,012百万円増、68.6%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は72,273百万円(前年度比24,316百万円増、50.7%増)となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
(イ)タイヤ事業
北米市場における市販用タイヤについては、OPEN COUNTRY A/T Ⅲ(オープンカントリー・エーティースリー)、NITTO RECON GRAPPLER A/T(ニットー リコングラップラー・エーティー)、OPEN COUNTRY R/T TRAIL(オープンカントリー・アールティー・トレイル)など当社が強みとしている大口径ライトトラック用タイヤやSUV用タイヤ、更に全天候型タイヤの新商品CELSIUS Ⅱ(セルシアス・ツー)などの重点商品を中心とした販売に注力したことにより、販売量は前年度を上回りました。また、売上高は値上げや重点商品の拡販による商品ミックスの改善もあり、販売量以上に前年度を大きく上回りました。
欧州市場における市販用タイヤについては、ロシア・ウクライナ情勢に伴うロシアや周辺地域への販売停止の影響を受けて販売量は前年度を下回りましたが、売上高は欧州各国での値上げや商品ミックス改善により前年度を大きく上回りました。また、ロシアを除く欧州市場においては、全天候型タイヤCELSIUS(セルシアス)シリーズの販売が堅調に推移したこともあり、市場全体の需要が減少した中でも前年度並みの販売量を維持しました。
国内市場における市販用タイヤについては、国内需要の減少に加え、暖冬の影響から販売量は前年度を下回りました。一方、今期2度の値上げによる効果並びに、新商品PROXES Sport 2(プロクセス・スポーツ ツー)、 PROXES Comfort Ⅱs(プロクセス・コンフォート ツーエス)や OPEN COUNTRY(オープンカントリー)シリーズなど付加価値商品の販売に注力したことにより、売上高は前年度並みとなっております。新車用タイヤについては、半導体など部品不足がほぼ解消し自動車メーカーの生産が回復基調となり、販売量が前年度を大きく上回りました。販売量増に加えて原材料市況高騰の一部を価格に反映できた事もあり、売上高は前年度を大きく上回りました。
その結果、タイヤ事業の売上高は505,438百万円(前年度比49,642百万円増、10.9%増)、営業利益は76,725百万円(前年度比30,089百万円増、64.5%増)となりました。
(ロ)自動車部品事業
自動車部品事業については、半導体など部品不足がほぼ解消し自動車メーカーの生産が回復基調となったこと、また原材料市況高騰の一部を価格に反映できたこと等により、売上高は47,374百万円(前年度比6,028百万円増、14.6%増)と前年度を大きく上回り、営業利益は178百万円(前年度は2,591百万円の営業損失)となりました。
(ハ)当社免震ゴム問題に係る状況
2015年12月期において、出荷していた製品の一部が国土交通大臣認定の性能評価基準に適合していない等の事実が判明いたしました。
なお、建築用免震積層ゴム製品の交換改修対応を経営の最優先課題と位置づけ、グループを挙げて取り組んでおります。2023年12月時点において対象物件全154物件すべてに着手しました。引き続き、工事の安全確保を最優先にすべての対象建築物で交換改修を遂行して参ります。
② 財政状態の状況
当連結会計年度末の総資産は645,480百万円となり、前年度末に比べ46,590百万円増加しました。これは、主として、現金及び預金や有形固定資産が増加したことによります。
また、負債は250,281百万円となり、前年度末に比べ27,693百万円減少しました。これは、主として、コマーシャル・ペーパーが減少したことによります。なお、有利子負債は102,714百万円となり、前年度末に比べ32,722百万円減少しました。
当連結会計年度末の純資産は395,199百万円となり、前年度末に比べ74,284百万円増加しました。これは、主として、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金、円安の影響により為替換算調整勘定が増加したことによります。
この結果、自己資本比率は61.2%となりました。
③ キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度におけるキャッシュ・フローは、営業活動による収入が86,503百万円となり、投資活動による支出が14,661百万円となったため、純現金収支(フリー・キャッシュ・フロー)は71,842百万円のプラスとなりました。財務活動においては62,894百万円の支出となりました。以上の結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、これら収支に為替換算差額の増加額を合わせ52,798百万円となり、前年度末と比べて11,197百万円増加しました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動によるキャッシュ・フローは、棚卸資産の減少や売上債権の減少等の増加要因により、86,503百万円の収入(前年度比71,330百万円増、470.1%増)となりました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動によるキャッシュ・フローは、投資有価証券の売却による収入等があったものの、設備投資に伴う有形固定資産の取得による支出等により、14,661百万円の支出(前年度比2,051百万円減、12.3%減)となりました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の発行による収入があったものの、コマーシャル・ペーパーの返済等により、62,894百万円の支出(前年度比46,662百万円増、287.5%増)となりました。
④ 生産、受注及び販売の状況
(イ)生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
生産金額(百万円) |
前年度比(%) |
|
タイヤ事業 |
448,350 |
△0.4 |
|
自動車部品事業 |
43,335 |
21.3 |
|
合計 |
491,686 |
1.2 |
(注)金額は、販売価格によっており、セグメント間の取引については相殺消去しております。
(ロ)受注状況
当社グループは製品の性質上、原則として需要見込生産方式を採っております。
(ハ)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
販売金額(百万円) |
前年度比(%) |
|
タイヤ事業 |
505,438 |
10.9 |
|
自動車部品事業 |
47,374 |
14.6 |
|
その他 |
12 |
△83.0 |
|
合計 |
552,825 |
11.2 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績および総販売実績に対する当該販売実績の割合は次のとおりであります。
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相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
|
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
|
American Tire Distributors, Inc. |
50,842 |
10.2 |
55,520 |
10.0 |
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いております。詳細につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4 会計方針に関する事項」に記載のとおりであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
② 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの連結会計年度の経営成績等は、次のとおりであります。
なお、当社グループの経営に影響を与える要因につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(イ)売上高
タイヤ事業においては、北米市場において当社が強みとしている大口径ライトトラック用タイヤやSUV用タイヤを中心に全カテゴリーの販売が好調につき販売量は前年度を上回り、売上高は販売量以上に大きく上回りました。また自動車部品事業においては、車種ミックスの改善が進み売上高は前年度を上回り、売上高は552,825百万円(前年度比55,611百万円増、11.2%増)となりました。
(ロ)営業利益
前期高騰した原材料価格及び海上運賃の影響が剥落したこと並びに為替相場が円安に推移したことにより、営業利益は76,899百万円(前年度比32,853百万円増、74.6%増)となりました。この結果、営業利益率は、13.9%(前年度比5.0ポイント増)となりました。
(ハ)経常利益
主にUSドルを中心とした円安影響の為替差益の発生により、経常利益は86,047百万円(前年度比35,012百万円増、68.6%増)となりました。
(ニ)親会社株主に帰属する当期純利益
特別利益として投資有価証券売却益を計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純利益は72,273百万円(前年度比24,316百万円増、50.7%増)となりました。
当連結会計年度の財政状態の分析、セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 経営成績の状況」及び「(1)経営成績等の状況の概要 ② 財政状態の状況」に記載しております。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループは、持続的な成長を実現するために、事業機能・経営基盤の強化に一層注力し、重点ターゲット領域での着実な成長を目指しております。具体的には、Toyo Tire Serbia d.o.o.の立ち上げ、Toyo Tire North America Manufacturing Inc.をはじめとする工場の生産設備増強や、驚きのある商品を提供する開発力・技術力の進化のため研究開発活動に取り組んでおり、当連結会計年度は、生産設備増強や合理化及び品質向上を中心に26,342百万円、基礎研究技術の強化を中心に7,760百万円の設備投資を実施しました。これらの投資を含む事業活動に必要な資金は第三者割当増資による増資資金を含めた自己資金、借入金及び社債の発行により賄いました。また、キャッシュ・プーリング・システムの導入等により子会社の資金調達並びに資金管理の一元化を図るなど金融収支を改善するとともに、資金調達手段の多様化や長期借入金比率を高めることにより金利変動リスクのヘッジを行っております。
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
なお、翌連結会計年度の設備投資金額は総額45,293百万円を計画しており、これらの所要資金については自己資金及び借入金により充当する予定であります。設備投資計画の主な内容・目的につきましては、「第3 設備の状況3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおりであります。
④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループは、中期経営計画「中計’21」のもと、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 経営方針 ② 目標とする経営指標及び中長期的な会社の経営戦略」に記載の経営指標の実現をめざしております。当連結会計年度は、連結営業利益率13.9%、重点商品販売構成比率62.9%、連結営業利益76,899百万円、実績ROE(期末配当控除後)20.2%、配当性向21.3%となりました。
また、設備投資については、「中計’21」において2021年度から2025年度までの5ヵ年累計で194,000百万円を計画しており、3年目である当連結会計年度末までの3ヵ年累計で119,172百万円を実施しました。
(1)現在、当社が締結している合弁事業契約の主なものは、次のとおりであります。
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契約締結日 |
相手先 |
契約の内容 |
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1986年12月24日
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正新橡膠工業股份有限公司 (中華民国)
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中華民国における自動車用防振ゴム製造会社として、洋新工業股份有限公司を合弁にて設立し運営する旨の契約であります。 なお、洋新工業股份有限公司に対する出資比率は以下のとおりであります。 当社 50% 正新橡膠工業股份有限公司 50% |
(2)現在、当社が締結している業務提携契約の主なものは、次のとおりであります。
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契約締結日 |
相手先 |
契約の内容 |
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2008年5月16日
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株式会社ブリヂストン
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世界のタイヤ・ゴム産業における需要構造、競争構造、収益構造その他の経営環境の変化に対応して更なる企業価値の向上を図るため、それぞれの事業運営の独立性を維持しつつ、業務及び資本について緩やかな提携を図るものであります。 本合意書の締結後、業務提携の分野を選定し、その個々の分野における業務提携について協議及び検討を開始いたします。資本提携は、2008年10月16日を払い込み期日とする第三者割当により、株式会社ブリヂストンは、当社の新株20百万株(2008年5月16日現在)を引き受け、当社は株式会社ブリヂストンの自己株3.9百万株を引き受けるものであります。 |
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2018年11月1日
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三菱商事株式会社
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将来の成長に向けて事業と経営の基盤を更にステージアップさせるために、三菱商事株式会社と業務及び資本について提携を図るものです。業務提携は、当社と三菱商事株式会社が「販売力強化」、「技術力強化」、「リソース強化」の各テーマで協働し、協力体制を強化してシナジー効果の最大化に取り組んでいくものです。また、資本提携は、両者間のより安定的な資本関係を構築し、かかる資本関係を基礎として、両者の得意分野や経営資源の有効活用を促進することでシナジーを実現し、それぞれの企業価値を向上させることを目的としております。2019年2月12日を払い込み期日とする第三者割当により、三菱商事株式会社が当社の新株26,931,956株を引き受けました。 |
当社グループの研究開発活動は、2025年に向けた新中期経営計画「中計'21」に基づき、「変化に迅速・柔軟に適応する力」の強化を進めており、最新の技術を駆使し、モビリティ社会の発展、豊かなクルマ文化の活性に寄与すべく研究開発を推進しております。
基盤技術センターでは、事業部門と連携し、環境配慮など次世代モビリティに対応した素材・サステナブル材料の研究開発や独自技術の高度化によるユーザーオリエンテッドなソリューションのビジネス化に向けた取り組みを行いました。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(1)タイヤ事業
国内市販用タイヤについては、グローバル・フラングシップタイヤブランド「PROXES」シリーズにおいて、プレミアムスポーツタイヤ「PROXES Sport 2(プロクセス・スポーツツー)」を2月より、またプレミアムコンフォートタイヤ「PROXES Comfort Ⅱs(プロクセス・コンフォート ツーエス)」を3月より発売しました。「PROXES Sport 2」は、スポーツタイヤに求められるハンドリング性能とブレーキ性能を高次元で実現させたプレミアムスポーツタイヤで、「PROXES Comfort Ⅱs」は上質なクルージングを追求し、環境性能を進化させたプレミアムコンフォートタイヤです。またSUV向け本格オールテレーンタイヤ「OPEN COUNTRY A/T Ⅲ(オープンカントリー・エーティースリー)」のホワイトレターを9月より発売しました。SUVの市場拡大とともに多様化するユーザーニーズに合わせて、当社はOPEN COUNTRYシリーズのラインアップ拡充を行なってきました。特にタイヤサイド部のブランド名や商品名を白い文字で立体的に表記した「ホワイトレター」を採用した商品が高い支持をいただいています。なお、プレミアムコンフォートタイヤ「PROXES Comfort Ⅱs」は、デザイン性と機能性が評価され2023年度グッドデザイン賞(主催:公益財団法人日本デザイン振興会)を受賞しました。またプレミアムスポーツタイヤ「PROXES Sport 2」は、世界的に権威のあるデザイン賞「Red Dot Award(レッドドット・アワード)」の2023年プロダクトデザイン賞を受賞しました。Red Dot Awardは、ドイツのDesign Zentrum Nordrhein Westfalen(ノルトライン・ヴェストファーレン・デザインセンター)が主催し、1955年に創設された60年以上の歴史があるデザイン賞で、世界三大デザイン賞の一つと言われています。今後もタイヤに求められる性能の進化を追求しながら、付加価値の高い製品開発に取り組んでまいります。
トラック・バス用タイヤについては、スタッドレスタイヤ「M939(エムキュウサンキュウ)」を8月より国内市場で発売しました。国内における昨今の気象の特長や運送業界を取り巻く社会課題から、高いアイス性能と耐摩耗性能を両立し、さらに低メンテナンス性を向上させたスタッドレスタイヤが求められるようになりました。「M939」は、タイヤトレッド面のブロック内に細かい溝を高密度に配置しアイス路面でのグリップ力を確保しながら、路面接地時にブロックが過度に動かないようにすることで偏摩耗の発生を抑制しました。これにより、当社従来品(M929)比で推定摩耗ライフを7%向上、偏摩耗の発生を45%低減しました。また、非降雪路面での走行も考慮し、転がり抵抗の低減も実現した商品となっております。
当事業に係る研究開発費は
(2)自動車部品事業
自動車部品では、既存の主要部品に集中した設計・材料・生産技術の標準化と効率化の推進とともに、適地生産と製造性を考慮した収益改善につなげる設計仕様変更や工程変更を推進させ、技術力と競争力の向上を進めています。また、電気自動車などの次世代車向けの商品開発としては、従来の耐熱性、耐寒性、高耐久性に加え、静粛性ニーズに対応する高トルク負荷時や高周波数領域でも低い動バネ定数を持つモーターマウントと、そのマウントを保持し振動伝達系となる金具も含めた最適化設計技術の構築を進めています。特に、先行技術開発においては、軽量化を重要テーマと位置付けて、既存の鉄やアルミの金具製品の最適化とともに、金属の代替として樹脂の適用技術も含めた更なる技術向上の取り組みも進めています。
その他、タイヤ事業の解析技術や評価技術との独自技術を融合させたモデルベース開発の技術構築も進めており、これにより自社の強みを生かしたサスペンションモジュールに関連する自動車部品の最適化提案ができるように取り組んでまいります。
当事業に係る研究開発費は