文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
藤田観光グループでは、「私たちは、健全な憩いの場と温かいサービスを提供することによって、潤いのある豊かな社会の実現に貢献したいと願っております」を社是とし、これに基づいて具体的な指針となる経営指針および行動指針を定めております。
経営環境を踏まえた基本認識
2023年は、5月の大型連休明けに新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置づけが2類から5類に引き下げられ、3年ぶりに行動規制が解除されました。また、円安の追い風もあり、インバウンド需要が急速に回復しております。2023年1~9月期の日本人国内旅行消費額は2019年比95.7%まで回復し、10月には訪日外国人数がコロナ禍後初めて2019年同月を超えるなど、観光関連消費は一層活発になりました。当社グループにおきましても、2023年通期の宿泊者数におけるインバウンド比率は、2019年を上回りました。またADRも、「新宿ワシントンホテル」や「ホテルグレイスリー新宿」をはじめとするWHGホテルズ、「ホテル椿山荘東京」「箱根小涌園 天悠」にて、2019年を約15%~40%上回りました。
今後の経営環境については、まず国内労働人口の減少と急激な宿泊需要回復に伴う業界全体での慢性的な人手不足への対応が喫緊の課題と考えています。また、2024年は、「リベンジ消費」一巡により、2023年と比較すると宿泊稼働も一定程度落ち着くことが見込まれますが、三連休の回数増など観光を後押しする要因もあります。需要を確実に捉え、付加価値の高い商品を提供し続けることが求められます。さらに、自然災害や異常気象、想定外の事象などが発生した場合に備え、そのような外部要因に影響を受けづらい経営基盤を構築すべきと強く認識しております。
このような状況をふまえ、2020年に設定した長期ビジョン「みんなが笑顔になるために、ライフスタイルに寄り添うユニークな事業展開で、成長し続けます。」の実現に向け、2024年から2028年までの5ヵ年の中期経営計画を策定いたしました。
●長期ビジョン
「みんなが笑顔になるために、ライフスタイルに寄り添うユニークな事業展開で、成長し続けます。」
事業に関わる10年後の未来を見据え、当社グループの「私たちは、健全な憩いの場と温かいサービスを提供することによって、潤いのある豊かな社会の実現に貢献したいと願っております。」という社是の精神を具現化するための当社の提供価値として、以下3つの思いを込め、2020年に設定いたしました。
1.お客さまの人生のあらゆるシーンに寄り添うことで時代のニーズを汲み取る
2.これまで培った歴史・文化・伝統を守りつつ新たな価値を加えることによって、事業をさらに進化・発展させていく
3.仕事への価値観や働き方の多様化がさらに進む中、すべての従業員が自らの仕事に誇りと自信をもって、会社とともに成長し続けることで、お客さまの満足とすべてのステークホルダーの方々の幸せに繋がる社会を目指していく
●「中期経営計画2028」
「中期経営計画2028」では、「Shine for Tomorrow ,to THE FUTURE」をスローガンに据え、「Ⅰ.環境に左右されない持続的成長基盤確立」「Ⅱ.人材の確保・育成」「Ⅲ.健全な財務基盤構築」を重点課題としております。
Ⅰ.環境に左右されない持続的成長基盤確立
まず、「ポートフォリオの是正」として、現在は売上高・営業利益ともにWHG事業に偏っていますが、ラグジュアリー&バンケット事業及びリゾート事業の既存施設の収益力強化により、バランスを是正してまいります。これは、本中期経営計画期間後も取り組まねばならない中長期の課題と考えています。
また、WHG事業の今後の新規出店については、賃借に限定せず、資産取得、フランチャイズ、マネジメントコントラクトなど、出店形態の多様化を図ってまいります。
さらに、「新規事業の創出」として、既存事業と異なる領域での事業化実現に取り組みます。若手社員中心のプロジェクトを作り、自由な発想で事業を構想する仕組みを設けております。そして、新規事業を立ち上げることで、リスクの軽減を図りながら、収益確保と成長を継続できる基盤の確立を目指してまいります。
Ⅱ.人材の確保・育成
前述の通り、現在、国内の労働市場の需給の不均衡や急激な宿泊需要回復に伴い、サービス業全体で要員不足が起こっています。特に、調理や施設管理などの専門人材確保の難度が高い環境です。そのような状況に対応するため、「採用の強化」と「教育の強化」の両軸に取り組みます。
「採用の強化」では、長期インターンシップの実施や専門学校との関係強化、中途市場の積極的な活用など、専門人材を安定的に採用するための手法と環境を整備いたします。また、2023年にエリアや事業所を限定して働く「エリア職」コースを導入したことにより、多様な働き方が実現し、採用にも寄与していると考えています。
「教育の強化」では、まず2022年に改定した新人事制度の浸透を図ります。新人事制度では、「総合職コース」と「専門職コース」という、キャリアアップの2本のコースを用意しました。マネジメントのほか、調理をはじめ、コンシェルジュや経理、施設管理など、幅広い職種を対象に専門技術や能力を磨くキャリアパスを確立し、社員自らが将来のキャリアを考え、選択できます。
また、本年より「タレントマネジメントシステム」を導入いたします。「タレントマネジメントシステム」とは、研修や評価、社員からのキャリア申請などの人材に関する情報を一元管理できるシステムのことです。このシステムの活用により、適材適所の人材配置と育成を行い、人材を定着させ、組織力の強化に努めてまいります。
「企業の根幹は人であり、人材の育成が企業発展の基礎であることを確信し、意欲に燃え、平衡感覚に優れた人材を育成する。」という当社グループ経営指針を念頭に取り組んでまいります。
Ⅲ.健全な財務基盤構築
コロナ禍で顕在化した課題の解決のため、2020年から構造改革に取り組み、生産性向上やコスト削減により、収益力が大幅に向上いたしました。この収益力を維持することにより、財務の安定性を確保しながら、優先株式の早期償還を目指してまいります。
経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標など
本中期計画期間中、単年50億円以上の経常利益を持続的に計上し、人材への投資や付加価値・生産性向上を図り、利益を上げられる構造を維持します。前半3年を「基盤構築フェーズ」と位置づけ、早期に優先株式の償還を目指します。また、後半2年は「収益拡大フェーズ」とし、最終年度となる2028年には、WHG事業とリゾート事業の新規出店、新規事業からの利益創出、およびホテル椿山荘東京の業績向上により、営業利益80億円(2023年比14億円増)を見込みます。
<セグメント別戦略>
WHG事業
WHG事業については、まず既存事業所の客室・レストランの利便性向上と接遇面の強化を図ります。客室やレストランの改装・美装を行うとともに、ラウンジ機能の追加により、ビジネスや観光の拠点としてのご利用のみならず、寛ぎの滞在をご提供できるホテルを目指します。また、フロントの手続き業務の機械化を促進し、その分のマンパワーをお客様に寄り添った接遇サービスに振り当てることにより差別化を図り、顧客満足度の向上に努めてまいります。
そして、昨年開業50周年を迎えた「ワシントンホテル」、15周年を迎えた「ホテルグレイスリー」、本年5周年を迎える「ホテルタビノス」という各ブランドのプロモーションを拡充し、ブランドごとの特長や商品・サービスの提供価値を広く訴求することにより、認知度の拡大を図ります。そして、新規の顧客獲得と、同時に「THE FUJITA MEMBERS」の会員利用を促進してまいります。
また、コロナ禍において2021年の「ホテルグレイスリー台北」開業以降、新規出店を行っていませんでしたが、昨年より本格的に用地探索を開始しております。ビジネス立地に限定せず、都市型観光地も視野に入れ、賃借以外のスキームも含め検討し、新規開業を進めてまいります。
ラグジュアリー&バンケット事業
ラグジュアリー&バンケット事業については、保有する有形・無形資産の活用により、利益水準の向上を目指します。
「ホテル椿山荘東京」では、一部の比較的稼働が低い施設を、スイートルームご利用のお客様専用の付帯施設や産後ケア施設などに転用いたします。産後ケア施設のご利用をきっかけに、ニューボーンフォトや七五三、成人式など、人生の様々な記念日や節目に写真撮影やお食事の場としてご利用いただけるよう、取り組んでまいります。
また、婚礼事業や庭園の整備・管理運営などの緑地事業では、既存のスキルやノウハウを活かし、運営受託など、事業領域の拡大を目指し、「ホテル椿山荘東京」の婚礼事業とともに、ラグジュアリー&バンケット事業の収益を拡大させてまいります。
リゾート事業
リゾート事業では、昨年7月、「箱根ホテル小涌園」を開業いたしました。コンセプトは、「ユネッサンと一体的に『温泉』『自然』『食事』を体験できるホテル」です。同時に、「箱根小涌園ユネッサン」も開業以来最大のリニューアルを行い、箱根エリア初の流れるプールの新設や貸切風呂増設など、箱根小涌園全体で様々なお客さまのニーズにお応えし、お楽しみいただける施設へと進化をいたしました。
開業の相乗効果により、箱根小涌園エリア一体が活性化し、2023年は2001年の「箱根小涌園ユネッサン」開業以来、最大の売上高となり、リゾート事業部の黒字化に大きく寄与いたしました。
今後は、既存施設の商品力向上や「箱根ホテル小涌園」の増室検討により、利益拡大を図ってまいります。「箱根ホテル小涌園」では、プールサイドや庭園を活用したアクティビティの開催により、収益拡大を目指します。「箱根小涌園ユネッサン」では、「森の湯」の機能拡充によるファミリー層以外の新たな顧客層を開拓します。また、海外向け旅行サイトへの掲載やSNSで発信をすることで、インバウンド需要を獲得し、平日やオフシーズンの集客強化による収益拡大に取り組みます。
さらに、箱根エリアの保有遊休地の活用と同時に、箱根以外のエリアでの新規出店も検討いたします。
本計画の推進により、持続的に成長する会社へと転換できるよう、取り組んでまいります。本中期経営計画の進捗管理については、毎年の予算設定において、各事業課題解決のための施策と達成までのロードマップを見直し、事業環境の変化などに応じてローリングしてまいります。
また、コーポレートガバナンス・コードの各原則の実施や、非財務情報の適切な開示に努め、すべてのステークホルダーの皆さまと良好な関係を保ち、企業としての社会的責任を果たしてまいります。
当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において合理的であると判断する一定の前提に基づき当社グループが判断したものです。
当社グループでは、「健全な憩いの場と温かいサービスを提供することによって、潤いのある豊かな社会の実現に貢献したいと願っております。」という社是のもと、創業以来、「環境に関する取り組み」、「多様な価値観に対する取り組み」などを企業としての持続的成長に不可欠で重要なものと捉え、推進してまいりました。また、2019年にはSDGs推進委員会を発足させ、持続的に成長するための重点課題を以下のとおり設定いたしました。今後も、事業を通じて社会課題の解決と持続可能な社会の実現に努めてまいります。
当社グループでは、取締役会の諮問機関としてSDGs推進委員会を設置しております。SDGs推進委員会は、サステナビリティ関連事項への対応が当社の重要な経営課題の1つであるという認識のもと、本社部門・事業部門を横断した全社的な組織として構成されており、気候変動を含むサステナビリティ関連の重要課題について審議・検討を行っております。また、その審議・決議内容を取締役会において随時報告することで、取締役会が気候変動リスクをはじめ、サステナビリティに対する取り組み全般の監督を行う仕組みとしております。
当社グループでは、全社的なリスクを総合的・網羅的に洗い出して掌握し、取り組み方針の立案、各リスクの主管部署選定、主管部署によるリスク低減のための諸施策の進捗状況管理、指導・助言を行う機関としてリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会において、当社グループの経営上重要なリスクについて把握・対策を行うことに伴い、SDGs推進委員会で審議・検討されたサステナビリティ関連のリスク・対策についても把握・管理を行っております。
気候変動はグローバルで重要な社会課題であり、脱炭素社会の実現に向けた動きは世界的にも拡大してきております。当社グループでは、気候変動に関するリスクと機会を重要な経営課題の一つと認識し、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に基づいた情報開示を行いました。今後も、気候変動対策を当社の事業展開及び持続可能な社会のために必要不可欠なものと位置付け、気候変動リスクの低減に積極的に取り組んでまいります。
当社グループでは、気候変動が当社グループに与えるリスク・機会とそのインパクトの把握、及び中長期的な世界を想定した当社グループのレジリエンス(リスク・機会に対する戦略の強靱性)と、さらなる施策の必要性の検討を目的に、2022年度にシナリオ分析を実施いたしました(※)。当社グループの事業活動に影響を及ぼすリスク・機会の重要度を評価した結果、①炭素税導入・気温上昇による原材料費高騰、②顧客行動・消費者選好の変化、③台風・大雨等による災害頻度増加・被害の甚大化の3項目を事業に特に大きく影響を及ぼす可能性がある重要なリスク・機会として判断いたしました。当社グループでは、これらの重要なリスク・機会に対し、それぞれの対策を講じ、リスクの低減と機会の確実な獲得につなげてまいります。
※シナリオ分析では、気候変動に関する政府間パネル(ICPP)が公表する複数の既存シナリオを参照の上、2℃未満シナリオ及び4℃シナリオの2つの世界を想定しております。シナリオ分析の内容など、TCFD提言に基づく情報開示の詳細については、
(https://www.fujita-kanko.co.jp/sustainability/tcfd/index.html)
当社グループでは、将来目標であるカーボンニュートラル達成に向け、TCFD等の枠組みを参照しながら必要なデータ収集及びCO2排出量の削減に取り組んでまいります。
当社グループのScope1、2のCO2排出量は以下の通りです。
●指標
●目標
当社は、延べ床面積当たりのCO2排出量を2030年度までに2013年度比で46%削減することを目標としております。
※上記は、「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」の報告対象事業所の実績です。4月から翌3月までを一年度としており、決算年度とは異なります。
なお、グループ全体の実績およびScope3の排出量につきましては現在準備中です。
<CO2削減に向けた取組>
・自社所有の山林や庭園の保全(ホテル椿山荘東京、箱根小涌園)
当社グループは、日本全国に約763haの山林や庭園を所有しており、その自然を保全することによりCO2の吸収に寄与しています。また、ホテル椿山荘東京では、その庭園を大切に受け継いでいくため、庭園に湧き出る地下水や樹木の保全に努めており、庭園内の清流では毎年蛍が飛翔し、季節の風物詩となっています。
・客室のエコ清掃(WHGホテルズ、ホテル椿山荘東京、箱根小涌園)
お客さまのご理解とご協力のもと、2泊以上の滞在の場合、客室のエコ清掃(ゴミ捨て・タオル類交換・アメニティ補充のみの簡易清掃)を行っています。清掃時のエネルギー使用量を抑制することで、お客さまとともにCO2排出量削減に取り組んでいます。
・コージェネレーションシステムの導入(ホテル椿山荘東京、箱根小涌園 ほか)
発電の際に発生する廃熱を冷暖房や給湯に無駄なく利用するコージェネレーションシステムを導入し、CO2排出量削減を図っております。また、コージェネレーションシステムの活用により、震災・火災などの緊急時や非常時においても確実な電力供給が可能になるため、BCP(事業継続計画)の観点としても、有用であると考えております。
上記以外のサステナビリティに関する取り組みについては、
(https://www.fujita-kanko.co.jp/sustainability/)
当社グループでは、「企業の根幹は人であり、人材の育成が企業発展の基礎であることを確信し、意欲に燃え、平衡感覚に優れた人材を育成する。」という経営指針に基づき、教育の根幹に上項を掲げ、従業員一人ひとりの主体的な向上心を最大限に尊重する教育体系を整備しております。
また、人事の基本方針として「必要な要員ならびに戦略人材(変革・挑戦しつづけるマネジメント人材・専門人材)を安定的に確保し、会社の成長を推進する基盤を確立」を掲げております。これらを実現するための人材育成方針、環境整備方針を以下のとおりとしております。
当社グループの根幹を支える研修として、お客さま満足度、企業価値向上に貢献するための人材育成の要となる独自のHRDL(ヒューマン・リソース・デベロップメント・リーダー)を育成し、当社の成り立ちから価値観、理念を新たに入社する従業員へと伝えることで、全従業員に浸透させております。
当社グループが求める人材像は「会社・商品・自己を変革し続けていくことで、大きな市場環境の変化に対応し、厳しい環境下においても、独創的な発想のもと挑戦を続け、事業の価値向上に寄与する人材」です。そのために求められる知識、技能を得るための教育・研修をはじめ、事業部・職種を超えたローテーションを実施することでより広い視野とより高い視座を得る育成プログラムを実施し、個人の能力向上支援を推し進めております。
また、2022年に人事制度の改定を行い、複線型(マネジメントと専門性)のキャリアパス体系の中で自身がどのような成長をしていくかを選択するためのキャリアビジョンを考える機会として、人材開発部へのキャリアプランシートの提出(毎年)や、キャリア面談の実施(二年に一度)等、社員一人ひとりが活躍できる環境を提供しています。さらに、従来の育成プログラムに加え、専門性を高めるための社外セミナーや研修への参加など、積極的に社外との交流を深めることによるスキルアップを促すことで、従業員の成長を促進しております。
従業員が自発的にキャリアの選択を行い申告する仕組みや、従業員の能力(専門能力含む)を向上させていくための環境を整備するとともに、従業員一人ひとりが優れたサービスや商品を提供し続けるために、安心して働き続けられる環境の整備にも取り組んでいます。私たちは、多様な価値観に対する取り組みを企業としての持続的成長に不可欠で重要なものと捉え、多様性の理解・促進のため、多様な従業員の活躍を支援しております。また、様々なハラスメントの撲滅を目指すとともに、ワーク・ライフ・バランスの浸透を推進し、有給休暇の取得増加、男女問わない育児・介護の休暇取得を促進していきます。健康経営への取り組み、ノーマライゼーション推進・LGBTへの理解促進等、従業員が安心して働き、キャリアアップを目指すことができる環境の整備に継続的に取り組んでまいります。
当社グループでは、上記「人的資本に関する戦略」において記載した、人材の育成に関する方針及び社内環境整備に関する方針について、次の指標を用いております。当該指標に関する目標は、次のとおりであります。
(注)1 2023年のモチベーションサーベイ実績
(外部調査機関に委託し、一部法人を除く全社従業員へモチベーション調査を実施)
(注)2 2023年1~12月の月平均実績
(注)3 2022年10月 ~ 2023年9月 実績 (取得日数÷付与日数)
(注)4 過去4年平均 (2017年4月~2020年4月入社)
(注)5 2023年12月末時点
(注)6 2019年実績 57千円(93百万円/1,629人)
当社グループの事業その他に関するリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を下記のとおり記載いたします。なお、当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合はその対応に最大限の努力をする所存であります。
下記事項には、将来に関するものが含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末(2023年12月31日)現在において判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。
①株価の変動
当社グループは、取引先を中心に市場性のある株式を114億円保有しており、株価変動のリスクを負っております。当連結会計年度末で市場価格により評価すると含み益となっておりますが、今後の株価の動向次第で業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②減損損失の計上
当社グループは、ホテル建物等の有形固定資産を当連結会計年度末で503億円保有しておりますが、今後一定規模を上回る不動産価額の下落や事業収支の悪化が発生した場合、有形固定資産の一部について減損損失が発生する可能性があります。
③賃借した不動産の継続利用もしくは中途解約
ワシントンホテル等ホテル事業においては、ホテル不動産を長期に賃借しているものがあり、不動産の所有者が破綻等の状態に陥り、継続利用が困難となった場合には業績に悪影響が生じる可能性があります。また、長期賃貸借契約の途中で、何らかの事情に基づき当社グループの意図により契約を中途解約することがあった場合、残存期間分の未経過賃料613億円のうちの一部について、賃料の支払もしくは補填の義務が生じる可能性があります。
④自然災害および流行性疾患の発生
大地震、噴火、台風、異常気象等の自然災害や、新型コロナウイルス感染症、新型インフルエンザ等の流行疾患が発生した場合は、営業の一時停止や旅行の取りやめ、海外からの入国規制や渡航自粛によるインバウンド需要の減退等により、当社グループの財政状態や業績に悪影響を与える可能性があります。
⑤不動産周辺事業からの撤退損失
当社グループでは従前、不動産分譲事業を活発に行なっていた時期があり、現在でも道路、水道等インフラや不動産管理等の周辺事業を引き続き行なっていますが、これらの多くのものは低採算または不採算であり、これらの事業からの撤退を決めた場合、相応の額の損失が一時的に発生する可能性があります。
⑥食中毒等の事故
安全衛生には十分注意を払っておりますが、万が一食中毒等が発生した場合は、お客さまの信認を損ね、また営業の一時停止などが生じる可能性があります。
⑦円金利の変動
当連結会計年度末における借入金400億円のうち、117億円は変動金利による借入となっており、今後国内景気の回復等により円金利が上昇すると、金利負担の増大を招く可能性があります。
⑧為替の変動
当社グループは、海外事業の営業活動により生じる収益・費用および債権・債務が外貨建てであり、海外連結対象会社の財務諸表を日本円に換算する際、為替変動により影響を受ける可能性があります。
⑨継続企業の前提に関する重要事象等
新型コロナウイルス感染症による影響
当社グループは、新型コロナウイルス感染症の影響により前連結会計年度まで3期連続して営業損失を計上するなど、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しておりました。このような状況の中、事業資金の確保やコスト管理への不断の努力により、財務基盤の強化に取り組んでまいりました。これらの成果に加え、インバウンド需要の回復や行動制限緩和等に伴う観光需要の回復により、当連結会計年度においては6,636百万円の営業利益を計上いたしました。環境要因の不透明さがあるものの、来期においても同様の理由により引き続き好調が続く見込みです。以上を踏まえ、当連結会計年度末において、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況には該当しないと判断しております。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社及び連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
当連結会計年度における観光業界は、2020年以降続いてきた新型コロナウイルス感染症の影響から抜け出し、大きな回復が見られました。国内市場では、5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行し行動制限が無くなったことなどを受け、旅行需要が回復しました。インバウンド市場では、日本政府観光局(JNTO)公表の統計数値によると2023年の訪日外客数が2019年比で79%となりました。月別では10月および12月が単月で2019年を上回るなど、コロナ禍前と比べて遜色のない水準となっております。
このような状況の中、当社グループでは需要を確実に捉え、各事業とも宿泊部門においてADR(客室単価)、稼働率が前期比で大きく伸長しました。また、営業固定費は前期比で労務費を中心に増加したものの、コロナ禍前の2019年を下回る水準となりました。
これらの結果、当社グループ全体の売上高は前期比20,797百万円増収の64,547百万円、営業利益は前期比10,685百万円増益の6,636百万円、経常利益は前期比11,542百万円増益の7,081百万円となりました。親会社株主に帰属する当期純利益は、ホテル鳥羽小涌園跡地の売却による特別利益を計上したことなどにより、8,114百万円となりました。なお、コロナ禍に推進した構造改革の成果もあり、親会社株主に帰属する当期純利益は、333億円の固定資産売却益(特別利益)を計上した2021年に次ぎ過去最高水準となりました。
また、2021年9月28日に発行したA種優先株式150株のうち、50株を2023年12月22日に償還(取得及び消却)いたしました。
業績の概要は以下のとおりです。
(単位:百万円)
セグメント別の概況については以下のとおりです。
セグメント別売上高・営業利益 (単位:百万円)
(注)調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
(WHG事業)
WHG事業では、東京・大阪を中心にインバウンド宿泊者数が増加しました。特に旗艦施設の「新宿ワシントンホテル」および「ホテルグレイスリー新宿」をはじめとして東京都内施設のADRが大きく上昇し、当セグメントの売上高は前期比で15,776百万円増収の36,363百万円、営業利益は8,646百万円増益の5,428百万円となりました。
(ラグジュアリー&バンケット事業)
ラグジュアリー&バンケット事業では、「ホテル椿山荘東京」が全部門で前期比増収となりました。宿泊部門では高単価販売に加え、スイートルームの稼働が増えたことなどによりADRが上昇しました。また、宴会部門では法人利用が前年同期と比べて増加しました。これらにより当セグメントの売上高は前期比で2,686百万円増収の17,878百万円、営業利益は1,277百万円増益の1,253百万円となりました。
(リゾート事業)
リゾート事業では、7月に開業した「箱根ホテル小涌園」にて、開業直後から主要ターゲットであるファミリー層の需要を取り込み、順調な滑り出しとなりました。「箱根小涌園ユネッサン」では、流れるプールを新設するなどのリニューアル効果のほか、「箱根ホテル小涌園」開業により入場人員が前年および2019年から増加しました。「箱根小涌園 天悠」においてもインバウンド集客などにより平日利用が増加し、稼働率が前期比で上昇しました。これらにより当セグメントの売上高は前期比で2,819百万円増収の8,458百万円、営業利益は609百万円増益の169百万円となりました。
②財政状態の状況
当連結会計年度末における総資産は、前連結会計年度末と比較して6,466百万円減少の93,496百万円となりました。流動資産は主に現金及び預金が減少したことにより9,654百万円減少、固定資産は主に箱根小涌園再開発にかかる資産の取得により3,187百万円増加いたしました。
負債は借入金の返済等により、前連結会計年度末と比較して9,701百万円減少の67,521百万円となりました。なお、当連結会計年度末の借入金残高は40,021百万円となりました。
純資産は、前連結会計年度末と比較して3,234百万円増加の25,974百万円となりました。A種優先株式の配当金支払及び償還等により資本剰余金が5,798百万円減少し、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が8,114百万円増加いたしました。
③キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金および現金同等物(以下「資金」という)は13,675百万円となり、前連結会計年度末から10,434百万円減少いたしました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動により得られた資金は、11,109百万円(前期は645百万円の収入)となりました。前期比では営業利益が10,685百万円増加したことが主な収入増の要因です。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動により支出した資金は、5,919百万円(前期は6,122百万円の支出)となりました。これは主に固定資産の取得による支出5,243百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動により支出した資金は、15,667百万円(前期は8,935百万円の支出)となりました。これは主に借入金の返済9,721百万円及びA種優先株式の償還等に伴う自己株式の取得5,001百万円によるものです。
④生産、受注及び販売実績
該当事項はありません。
該当事項はありません。
当社グループは、WHG事業、ラグジュアリー&バンケット事業およびリゾート事業の各事業を主な内容とし、更に各事業に関連するサービス等の事業活動を展開しています。
セグメントごとの販売実績は次のとおりであります。 (単位:百万円)
(注) 調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的であると考えられる様々な要因に基づき、見積りおよび判断を行っておりますが、この見積りは不確実性が伴うため実際の結果と異なる場合があり、結果として連結財務諸表に重要な影響を与える可能性があります。
当社グループの連結財務諸表において採用する重要な会計方針は「第5 経理の状況」に記載しております。
②経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度の売上高は64,547百万円(前連結会計年度43,749百万円)となり、20,797百万円(47.5%)の増加となりました。2020年以降続いてきた新型コロナウイルス感染症の影響から抜け出し、大きな回復が見られました。国内市場では、5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行し行動制限が無くなったことなどを受け、旅行需要が回復しました。インバウンド市場では、日本政府観光局(JNTO)公表の統計数値によると2023年の訪日外客数が2019年比で79%となりました。月別では10月および12月が単月で2019年を上回るなど、コロナ禍前と比べて遜色のない水準となっております。
(売上原価および売上総利益)
当連結会計年度の売上原価は54,800百万円(前連結会計年度44,976百万円)となり、9,824百万円(21.8%)の増加となりました。増収による労務費の増加や送客手数料が増加した結果、当連結会計年度の売上総利益は9,746百万円(前連結会計年度1,227百万円の損失)となり、10,973百万円の増益となりました。
(販売費及び一般管理費ならびに営業利益)
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は3,109百万円(前連結会計年度2,821百万円)となり、288百万円(10.2%)の増加となりました。当連結会計年度の営業利益は6,636百万円(前連結会計年度4,048百万円の損失)と前期比10,685百万円の増益となりました。
(営業外損益および経常利益)
当連結会計年度の営業外損益は444百万円の利益(前連結会計年度412百万円の損失)となりました。この結果、当連結会計年度の経常利益は7,081百万円(前連結会計年度4,461百万円の損失)と、11,542百万円の増益となりました。
(特別損益)
当連結会計年度の特別利益は固定資産売却益等の計上により675百万円(前連結会計年度1,092百万円)となり、417百万円減少しました。
また、特別損失は減損損失や固定資産撤去費用引当金等の計上により1,071百万円(前連結会計年度2,994百万円)となり、1,922百万円減少しました。
(法人税等、非支配株主に帰属する当期純損失および親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度の法人税等は△1,426百万円(前連結会計年度△578百万円)となりました。これに非支配株主に帰属する当期純損失2百万円が増した結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は8,114百万円(前連結会計年度は5,789百万円の損失)となり、13,904百万円の増益となりました。
③財政状態の分析
(流動資産)
当連結会計年度末における流動資産の残高は21,293百万円(前連結会計年度末30,947百万円)となり、9,654百万円(31.2%)減少しました。現金及び預金が減少したことが主な原因です。
(固定資産)
当連結会計年度末における固定資産の残高は72,202百万円(前連結会計年度末69,015百万円)となり、3,187百万円(4.6%)増加しました。箱根小涌園再開発にかかる資産の取得により増加したことが主な原因です。
(流動負債)
当連結会計年度末における流動負債の残高は30,365百万円(前連結会計年度末27,321百万円)となり、3,043百万円(11.1%)増加しました。未払費用等の債務の増加が主な要因です。
(固定負債)
当連結会計年度末における固定負債の残高は37,156百万円(前連結会計年度末49,901百万円)となり、12,745百万円(25.5%)減少しました。長期借入金が返済により減少したことが主な要因です。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産の残高は25,974百万円(前連結会計年度末22,740百万円)となり、3,234百万円(14.2%)増加しました。A種優先株式の配当金支払及び償還等により資本剰余金が5,798百万円減少し、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が8,114百万円増加したことが主な要因です。
④資本の財源及び資金の流動性についての分析
(ア)キャッシュ・フローの分析
キャッシュ・フローの分析につきましては、「第一部 企業情報 第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
(イ)資金調達と流動性
当社グループは、事業活動のための資金確保、流動性の維持ならびに健全な財政状態を常に目指し、安定的なキャッシュ・フローの確保に努めております。その施策の一つとして、キャッシュマネジメントシステムの導入によるグループ各社の余剰資金の一元管理を行い、資金効率の向上を図っております。また、複数の金融機関と総額で208億円の当座貸越契約およびコミットメントライン契約を締結することにより、資金調達リスクに対する補完措置がなされております。
また安定的な資金調達の一環として長期借入金の比率を高めており、当連結会計年度末の借入金残高は40,021百万円、その内訳として、短期借入金の残高は9,387百万円、長期借入金(一年以内に返済期限の到来する長期借入金を含む)の残高は30,633百万円となっております。
⑤戦略的現状と見通し
当社は、「Shine for Tomorrow, to THE FUTURE」をスローガンとする2024年から2028年までの5ヵ年の中期経営計画を策定いたしました。詳細につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中期経営戦略をご参照ください。
2024年通期の業績予想は、売上高は前期比4,152百万円増収の68,700百万円、営業利益は前期比636百万円減益の6,000百万円、経常利益は前期比1,281百万円減益の5,800百万円となる見込みです。親会社株主に帰属する当期純利益は5,300百万円を見込んでおります。
なお、この業績予想は現時点で入手可能な情報に基づき判断したものであり、実際の業績等は様々な要因により当該予想数値と異なる場合があります。
連結およびセグメント別の業績予想は下表のとおりです。
2024年12月期の連結業績予想(2024年1月1日~2024年12月31日) (単位:百万円)
(注)調整額は、セグメント間取引消去によるものです。
該当事項はありません。
該当事項はありません。