第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社は、社是として、経営の考え方の根幹であり社名の由来でもある『夢現 -夢を現実に-』を掲げ、お客さまの夢を実現することで会社としても成長し、ステークホルダーを含めたすべての人の夢の実現を目指しております。

そのために、ミッションを、『不動産に新たな価値を創造し、すべての人の豊かな暮らしと夢に挑戦する』とし、事業活動を通して地球温暖化、少子高齢化、空き家問題や住宅ストックの老朽化等、不動産業界が抱える数々の社会課題の解決に取り組み、持続的な企業価値の向上を目指しております。

また、ミッションの実現に向けた、行動の基軸として『速さを追求』『あくなき挑戦』『多様な連携』『先を見通す』『貫く責任』の5つのバリューを定めております。

 

(2)経営環境と中期的な会社の経営戦略

[経営環境]

当社グループが属する不動産業界では、緩やかな景気回復が続く中で、需要は底堅く推移しました。また、インバウンドの回復と日米金利差による円安の効果もあり、海外投資家の日本の不動産に対する需要においても堅調に推移しております。しかしながら、日本銀行の金融政策見直しによる金利動向など注視が必要な状況です。

居住用不動産に関しましては、テレワークやリモートワークなど働き方の変化が定着し、より広い物件への住み替えニーズが高まっております。また、昨今の環境問題の高まりを受けて、住まいを選ぶ際に約半数がカーボンニュートラルを意識するとの調査結果も出ており、住宅に求める設備もグレードアップしております。さらには資材価格や労務費の高騰も受けて、マンション価格は依然高価格で推移しております。その結果、比較的低価格な中古マンションへの需要につながったこと、中古マンション事業者のリノベーション力が向上したことによりデザイン性・機能性に優れた新築マンションと遜色ない物件が供給されるなど、中古マンションの需要は年々高まっております。2016年以降、首都圏においては中古マンションの契約件数が新築マンションの供給戸数を上回る状況が続いております。

投資用不動産に関しましては、低金利が続く中、国内の不動産投資家の投資意欲は高い需要を維持しております。また、直近では新型コロナウイルス感染症の水際対策の緩和や円安を背景に、海外投資家の日本の不動産に対する需要が高まりつつあります。
 一方で、海外景気の下振れがわが国の景気を下押しするリスクや物価上昇、供給面での制約並びに金融資本市場の変動の影響等、先行きの不透明感が増しております。

 

[中期的な会社の経営戦略]

当社グループでは、2022年12月期を初年度とする3カ年の第2次中期経営計画を進め、この3カ年では、「事業拡大に向けた収益基盤の強化」「収益機会を捉えるネットワークの構築」「事業成長を支える組織力の向上」「事業拡大・成長を支えるDXの推進」を経営の基本方針として掲げ、大きく飛躍することを目指しています。

主力の買取再販事業は、商圏エリアを1都3県から地方都市へと拡大させることで居住用・投資用不動産の取引量を増やし、事業の成長につなげてまいります。2023年5月の大阪進出を皮切りに、2024年1月には札幌・名古屋・福岡へ出店し、商圏エリアを拡大しております。各地方都市は、企業の誘致や国際的イベントの招致、交通網の整備等で、今後も経済活動の活況が見込めると想定しております。また、首都圏の更なる営業力強化を目的として、2024年春頃に渋谷へ新たな営業所の出店を予定しております。

成長事業の一つである不動産開発事業は、これまで当社グループが長年培ってきたノウハウを活かしつつ、ESGやSDGsを意識した賃貸マンションやオフィスビルの開発を当社グループ間のシナジーを活かし拡大を図ります。もう一つの成長事業である不動産特定共同事業は、販売ネットワークの拡充をしつつ、組成商品の多様化、規模の拡大を図り大きく成長させてまいります。

これらの事業戦略を支える、経営基盤の強化として、人材の採用・拡充と育成、ガバナンスの強化、DXの推進、財務健全性の確保、株主還元の強化に加えて、非財務情報の開示を充実させるとともに、上場企業に求められるサステナビリティ水準も充足してまいります。

 

(3)目標とする経営指標

第2次中期経営計画では、事業の「成長性」「効率性」「健全性」「株主還元」を重要な経営指標としております。また、第2次中期経営計画の3年目である2024年12月期の連結業績見通しにつきましては、足元の事業環境を鑑み、当初の数値目標を修正し、売上高は608億96百万円(前期比17.9%増)、営業利益は68億61百万円(同15.6%増)、経常利益は60億36百万円(同15.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は39億85百万円(同9.1%増)を予想しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

(2)に記載の経営環境を背景に、(1)及び(2)に記載の経営方針及び中期的な会社の経営戦略を実行し、また、上場企業に求められるサステナビリティ水準の充足する上で、当社グループが優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題は以下のとおりであります。

 

 不動産売買事業における新規物件の取得

当社グループは、2022年から開始した3カ年の第2次中期経営計画において「事業拡大に向けた収益基盤の強化」を掲げ、不動産買取再販事業を主力とした事業拡大を計画しており、更なる事業成長のためには商圏エリアの拡大が必要と認識しております。また、昨今の不動産価格の高騰が止まらぬ厳しい市況の中、新規物件の獲得には幅広く情報収集し、スピード感を持った判断が必要となってまいります。

2023年に西日本エリア初進出として大阪営業所の開設、2024年には札幌・名古屋・福岡の3営業所の開設と、商圏エリアの拡大を積極的に進めております。当社グループでは、幅広いアセットタイプを取り扱うこと、また、各営業所にてエリア深耕を図ることで、多くの物件情報を獲得できるよう取り組んでおります。また、ITを活用した仕入判断力の強化や迅速な判断を行うことで、新規物件の仕入を進めてまいります。

 

② 販売用不動産の在庫回転率の向上

2024年12月期は、金融政策の変更や資材高騰による建築コストの増加、人手不足による建築業界の人件費の上昇など不透明な要素も多い状況の中、インバウンド需要も回復傾向にあり、国内の不動産市況は好調が続くと見込まれております。このような環境において、不動産の保有期間を短期化し在庫回転率を高めることで、市場変化に迅速な対応が必要であると認識しております。

当社グループでは、これまで以上に入居率改善のスピードを早め、内外装工事の短期化を図ることで早期の商品化に取り組んでおります。また、仲介会社向けの物件紹介サイトの機能充実や、不動産テックを活用した販売活動の効率化や顧客の購入意欲向上を図る等、投資家・エンドユーザーに対して情報を提供する環境を整備していくことで、早期の販売を行ってまいります。

 

③ 工事原価削減による収益性の向上

国際情勢不安の長期化や円安による資材高騰、建設業界の人員不足に起因する労務費の高騰により、工事原価が増加する傾向にあります。また、建設業の2024年問題により労務費の更なる高騰は避けられない状況です。

当社グループでは、常に資材調達先や工事協力会社の拡充を行うことで調達コストや委託費用の適正化を図り、加えて、業務オペレーションの見直しによる労務費単価の低減や工期短縮にも努め、利益率の維持・改善に取り組んでおります。

 

④ 消費税法の改正
2020年4月に消費税法等の一部が改正され、2020年10月1日以後に行われる居住用賃貸建物の課税仕入れ等の税額については、仕入税額控除の対象としないことと改正されました。これにより、施行日以後に仕入れを行った居住用賃貸建物に関しましては、原則、その仕入税額を全額租税公課に計上するため、販売が長期化した場合、租税公課が大きく増加することになります。

当社グループでは、仕入控除税額の対象となる仕入年度を含む第3年度の期間中に販売できるよう在庫期間の短縮を図り、在庫回転率の向上に努めてまいります。

 

⑤ 成長を支える安定収益の拡大

当社グループは、主力の不動産売買事業が連結売上高及びセグメント利益全体の90%以上を占めており、将来的な不動産市況の変化に備えるための安定収益の確保が課題となっております。

そのため、長期・安定的な収益確保の機会として、優良資産の獲得と管理戸数の増加に取り組んでおります。優良資産の獲得に関しましては、不動産動向を見極めた上で、各年度のキャッシュ・フローや手元資金の水準を考慮し取得を決定しております。管理戸数の増加に関しましては、当社保有不動産の売却時にアセットオーナーからの受託を得られるよう営業部門と連携し、契約獲得に取り組んでおります。

 

⑥ 既存事業及び新規事業への積極的な投資

当社グループは、主力事業である不動産買取再販事業へこれまで以上に積極的な投資を行うとともに、外部環境の変化を踏まえた成長分野への新規参入を慎重且つ積極的に行うことにより、バランスの取れた事業ポートフォリオを構築することを目指しております。

足許では、成長事業である不動産開発事業・不動産特定共同事業の収益を拡大させて、新たな事業の柱として構築することを目指してまいります。不動産開発事業は、資材高騰や工賃の上昇などにより収益性を確保するのが難しい状況が続いておりますが、立地の選定や品質の向上だけではなく、ESG・SDGsを意識したプランニングを行い、付加価値の高い商品開発に取り組んでまいります。不動産特定共同事業は、組成商品・組成スキームの多様化や出口戦略の拡充、販売ネットワークの拡大を図り、年間組成数の増加、組成枠の拡大に取り組んでまいります。

新規事業に関しましては、全てを内製化し単独で事業推進するよりも事業化や収益化までの期間を考慮し、他社との業務提携やM&Aなどの戦略的投資も活用し推進してまいります。

 

⑦ 環境課題への取り組み強化
当社グループが持続的な成長を達成するためには、環境課題への取り組みが重要であると認識しております。特に気候変動は世界的にも大きな問題となっており、脱炭素社会への動きが広がっております。当社グループにおいても脱炭素社会への移行に対応すべく、環境に配慮した事業活動への取り組みを推進してまいります。

また、当社グループは金融安定理事会(FSB)により設立されたTCFD提言に賛同するとともに、TCFD提言に基づく情報を開示しており、今後も気候変動に起因する事業等のリスク・機会の把握と適切な情報開示を行ってまいります。

 

⑧ 人材採用・育成・組織力の強化
当社グループが持続的な成長を達成するためには、付加価値の源泉である人材の継続的な確保や、育成により組織力を強化することが重要であると認識しております。
採用面では新卒・キャリア両面の採用強化に取り組むとともに、社員が活躍・チャレンジできる風土の醸成とダイバーシティの推進を行うことで競争優位性を確保いたします。育成面では、社内外の教育研修プログラムの充実による人材の育成、OJT等を活用しマネジメントに長けた中核人材の拡充、能力に応じた人事制度の確立、専門スキルの取得を推奨しております。

また、全社的に組織文化調査に取り組んでおり、継続的なエンゲージメントの向上に努めております。

当社のミッションを共通の価値観とし、人的資本及び組織としての能力の底上げをしてまいります。

 

⑨ コーポレート・ガバナンスの強化
当社グループは、企業価値の最大化を図るために、経営の透明性と健全性の確保及び環境の変化に迅速・適切に対応することが重要であると認識しております。コーポレート・ガバナンスはその重要な経営課題の一つと位置付けており、業務執行責任者に対する監督・牽制の強化、情報開示による透明性の確保、業務執行の管理体制の整備を推進して、ガバナンス機能の強化を図ってまいります。
2021年11月に設置した指名・報酬委員会をはじめ、2022年1月には執行役員制度の導入、同年7月にはサステナビリティ委員会を設置するなど、社外取締役による監督や牽制の強化、経営の意思決定の迅速及び機動的な業務執行の実現、並びに持続可能な社会の実現に向けたサステナビリティ課題への対応を図ることで、コーポレート・ガバナンス体制をより一層充実させ、中長期的な企業価値向上に努めております。

取締役会の構成に関しては、ジェンダーや国際性、職歴、年齢の面を含む多様性が求められており、また独立社外取締役を少なくとも3分の1以上(プライム市場上場会社においては過半数)選任することが求められております。また、政府が発表した「女性活躍・男女共同参画の重点方針(女性版骨太の方針)」によれば、プライム市場の上場会社について、女性役員比率に係る数値目標等が示される等、多様な価値観や考え方を企業に取り入れ、成長につなげることが求められております。

当社は、役員の選任にあたり、優れた人格、見識、能力、豊富な経験を有していることを選任の基準としております。これまでの取締役会は、全員男性かつ日本人で構成されておりましたが、今般、新たに女性の社外監査役が選任される等、引き続き、ジェンダーや国際性面及び、知識・経験・能力のバランスに留意し、多様性の確保に努めてまいります。

当社は2022年4月の市場区分見直しにより、プライム市場を選択いたしました。その後、上場維持基準の適合状況を踏まえ、今後の適合に向けた計画について協議した結果、2023年10月にスタンダード市場を選択しております。今後は、プライム市場再上場を目標に流通株式時価総額及び売買代金の基準達成を目指し、業績の向上、IR活動の推進、株主への利益還元及びコーポレート・ガバナンスの強化を図ることで上場維持基準の安定的な充足を目指してまいります。

 

⑩ 資本効率の改善
当社グループは、事業規模の拡大と高い財務健全性を維持しつつ、主力事業及び成長事業への投資を実行するとともに、株主還元の充実を図ることを経営戦略の基本方針としております。また、「資本コストや株価を意識した経営の実現」に向けた対応として、資本コストや資本収益性の改善、株主との対話の推進が求められております。

資本収益性の改善策として、環境変化に対応するための財務余力を確保しつつ、資本と負債のバランスを意識しながら、株主資本コストを上回るROEの持続的な向上に取り組んでまいります。また、市場評価の改善策として、PBR1倍超を目標に株主・投資家への適切な情報開示と、積極的な対話を進めてまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取り組みは、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ共通

① ガバナンス

当社グループは、事業を通して持続可能な社会の実現を推進するために、代表取締役社長を委員長とした「サステナビリティ委員会」を設置しております。

同委員会は原則年に2回以上開催するものとし、当社グループのサステナビリティ課題について審議・検討を行い、サステナビリティ活動に関する全体計画の立案、進捗状況のモニタリング、達成状況の評価を行っております。

また、サステナビリティ委員会にて審議された重点課題及び対応方針については、取締役会にその推進状況を報告し、必要に応じて取締役会にて審議及び対応の決定を行ってまいります。

役割

担当

委員長

代表取締役社長

委員メンバー※

取締役会が選任した委員及び事業部門責任者や社外取締役

事務局

経営企画部門

設置時期

2022年7月

 

※必要に応じて社外専門家の招集を行う。

 

 

当事業年度では、サステナビリティ委員会で以下の議題に関して審議・検討を行い、取締役会に付議・報告しております

開催月

議題

2023年2月

TCFD提言に基づく情報開示について

人的資本の開示について

女性活躍推進プロジェクトについて

2023年5月

マテリアリティ(重要な経営課題)の特定、及びプロジェクトの発足について

CDPの回答について

サステナビリティ研修ツールの導入について

2023年9月

マテリアリティの特定 中間報告

人材戦略における課題・施策の検討

人権方針の策定

女性活躍推進プロジェクトの活動報告

2023年12月

マテリアリティの特定 最終報告

人権方針の策定・開示について

日経スマートワーク経営調査・SDGs調査結果について

 

 

サステナビリティ推進体制


 

② 戦略

当社グループは、サステナビリティ方針に基づきESG経営の推進を通じて環境・社会の課題解決を図り、ステークホルダーの皆様とともに持続可能な社会の実現に取り組んでまいります。今般、当社グループは持続的成長を遂げる為に、マテリアリティの見直しを行い、「持続可能な未来の実現」「企業価値向上」「不動産の再生」「ダイバーシティ&インクルージョン」「ガバナンス」の5項目を新たに特定いたしました。

「持続可能な未来の実現」をマテリアリティの主軸として掲げ、「企業価値向上」「不動産の再生」「ダイバーシティ&インクルージョン」「ガバナンス」の4項目を内包されるマテリアリティとしております。

 

 

当社のマテリアリティ

 


マテリアリティ

主な課題

 

持続可能な未来の実現

企業価値向上

・企業価値の向上とステークホルダーへの還元

・顧客満足度の追求

・DXの推進

不動産の再生

・環境に配慮した事業活動

・良質な不動産の提供

・不動産再生事業を通じた社会貢献

・地域社会との共生

ダイバーシティ&インクルージョン

・誰もが活躍できる組織風土の構築

・優秀な人材の確保と育成

・良好な労働環境の構築と従業員の健康促進

ガバナンス

・人権の尊重

・コーポレートガバナンスの強化

・不正・違反行為の防止とコンプライアンスの強化

 

 

 

③ リスク管理

当社グループにおけるリスク管理は「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載の通りです。サステナビリティに起因するリスクについては「サステナビリティ委員会」にて、各部門よりリスクを抽出し、定性・定量の両面から評価を行った上、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会に報告を行うことで、当社グループ全体のリスクマネジメントに統合をしております。

 

サステナビリティに起因するリスク管理体制図

 


 

(2)気候変動関連

近年、気候変動は大きな社会経済リスク及び機会をもたらす要因となっており、世界各国で脱炭素化の動きが広がっています。

当社グループの主力事業である買取再販事業は、中古不動産の再生・流通を促し、今ある資源を有効活用する環境に優しいビジネスモデルであります。一方で、水害など気候変動によるさまざまな影響を受ける可能性もあり、気候変動への対応が事業の持続可能性に不可欠であると認識しております。持続可能な社会の実現のため、環境に配慮した事業活動への取り組みの一環として、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同するとともに、気候変動に起因する事業等のリスク・機会の把握と適切な情報開示を行ってまいります。

 

① ガバナンス

気候変動に関するガバナンスは「(1)サステナビリティ共通 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

TCFD提言では、気候変動に起因する事業への影響を考察する為、複数の気候関連シナリオに基づき検討を行う「シナリオ分析」を行うことが推奨されており、当社グループでも不確実な将来に対応した戦略立案・検討を行うため、下記のようにシナリオ分析を実施いたしました。

当社グループでは、2050年時点を想定し、現状を上回る気候変動対策が行われず、異常気象の激甚化が想定される「4℃シナリオ」と、脱炭素に向けて野心的な気候変動対策の実施が想定される「1.5℃シナリオ」を参考に、定性・定量の両面から考察を行いました。

 

 

■4℃シナリオ(脱炭素社会への移行に伴うリスク:小  異常気象などの物理的なリスク:大)

2100年時において、産業革命時期比で3.2℃~5.4℃(約4℃)の平均気温上昇が想定されるシナリオ。

気候変動問題を軽減するための積極的な政策・法規制等は敷かれず、異常気象の激甚化が顕著に表れる。「参考シナリオ」IEA Stated Policies Scenario、RCP8.5

 

■1.5℃シナリオ(脱炭素社会への移行に伴うリスク:大  異常気象などの物理的なリスク:小)

2100年時において、産業革命時期比で1.5℃未満の平均気温上昇が想定されるシナリオ。

カーボンニュートラル実現を目指し、気候変動問題を抑制するために現状以上の厳しい政策・法規制等が敷かれる。「参考シナリオ」IEA Net Zero Emissions by 2050、Sustainable Development Scenario、RCP2.6

 

考察の結果、いずれのシナリオにおいても、気候変動起因による主なリスクとして、洪水や高潮による保有資産への物理的な被害が想定されております。今後の対応として、ハザードマップを意識した不動産立地選定基準の強化等、事業のレジリエンス性を高めるためにより一層の災害対策を講じてまいります。

一方、機会として1.5℃シナリオにおいては、脱炭素社会への移行に伴うZEB・ZEH化による再エネ・省エネ関連のリフォーム工事の需要増加や、中古不動産の環境価値向上による事業収益機会の増加が想定されております。今後も環境に配慮した事業活動を通じて、脱炭素社会への貢献を行うとともに、気候変動の抑制に寄与してまいります。

当社グループに想定される気候関連リスク及び機会の詳細につきましては、当社webサイトの「気候変動への対応」ページ(https://www.mugen-estate.co.jp/sustainability/climate_change.html)に添付されている「自社グループに想定される気候関連リスク及び機会一覧」ファイルをご参照ください。

 

③ リスク管理

リスク管理体制は、「(1)サステナビリティ共通 ③ リスク管理」をご参照ください。

気候変動に起因するリスクについては「サステナビリティ委員会」にて、各部門よりリスクを抽出し、定性・定量の両面から評価を行った上、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会に報告を行うことで、当社グループ全体のリスクマネジメントに統合をしております。

 

④ 指標及び目標

当社グループでは、自社事業活動におけるGHG排出量(Scope1・2)、及び自社事業活動に関連する他社のGHG排出量(Scope3)を指標とし、環境に配慮した事業活動を推進してまいります。

Scope1・2に関しては中期的な削減目標として、2030年度に売上高あたり46%削減(2021年度比)を掲げるとともに、長期的な目標として、パリ協定の目標を参考に2050年度カーボンニュートラルを目指してまいります。

今後、事業の成長や新規事業への参入に伴うGHG排出量の増加が想定されますが、再エネの導入や非化石証書利用の検討も視野にいれ、長期的な目標達成のために事業の脱炭素化を推進してまいります。

 

2023年度のScope1は24.7t-CO2の排出量となり、昨年度の排出量を下回ると共に、排出原単位では2021年度比で37.3%減となりました。営業活動の効率化を目的に公共交通機関やシェアサイクルの利用を推進した結果、排出量の低減へと結びついております。

 

Scope1

 

排出量(t-CO2)

排出原単位

(t-CO2/億円)

2021年度比

2021年度

25.9

0.076

2022年度

27.1

0.087

+13.8%

2023年度

24.7

0.048

△37.3%

 

 

 

Scope2は145.9t-CO2の排出量となり、こちらも昨年度の排出量を下回ると共に、排出原単位では2021年度比で42.5%減となりました。固定資産の一部を販売用不動産に切り替えた結果が主要因とはなりますが、事業所や固定資産を再生可能エネルギーへ切り替える等、引き続き排出量の低減に努めてまいります。

 

Scope2

 

排出量(t-CO2)

排出原単位

(t-CO2/億円)

2021年度比

2021年度

166.8

0.491

2022年度

215.5

0.690

+40.5%

2023年度

145.9

0.282

△42.5%

 

 

2023年度のScope3は69,659.6t-CO2の排出量となり、昨年度対比で51.7%増となりました。主な要因として、販売増に起因する排出量の増加(カテゴリ1・11・12)が挙げられます。特にカテゴリ11が全体の約6割強を占める結果となっております。今後は環境性能評価の高い不動産の取引や不動産開発を行うなど、排出量増加を抑制する取り組みを進めると同時に、売上高を拡大していくことが不可欠であると認識しております。

 

Scope3

 

2022年度

排出量(t-CO2)

2023年度

排出量(t-CO2)

前年比

Scope3合計

45,915.7

69,659.6

+51.7%

カテゴリ1

購入した製品・サービス

13,134.1

17,784.2

+35.4%

カテゴリ2

資本財

117.7

1,194.5

+914.8%

カテゴリ3

燃料及びエネルギー関連活動

43.6

37.7

△13.5%

カテゴリ4

輸送、配送(上流)

26.9

25.9

△3.6%

カテゴリ5

事業から出る廃棄物

1,066.5

940.1

△11.8%

カテゴリ6

出張

32.9

38.5

+17.1%

カテゴリ7

雇用者の通勤

98.9

115.9

+17.2%

カテゴリ8

リース資産(上流)

カテゴリ9

輸送、配送(下流)

カテゴリ10

販売した製品の加工

カテゴリ11

販売した製品の使用

26,805.6

44,450.6

+65.8%

カテゴリ12

販売した製品の廃棄

1,234.8

1,842.6

+49.2%

カテゴリ13

リース資産(下流)

3,354.8

3,229.6

△3.7%

カテゴリ14

フランチャイズ

カテゴリ15

投資

 

※カテゴリ3にはScope1・2に該当するものは含まれておりません。

※カテゴリ8・9・10・14・15は、当社グループの事業活動において算定対象外となります。

 

(3)人的資本・多様性

① ガバナンス

人的資本・多様性に関するガバナンスは「(1)サステナビリティ共通 ① ガバナンス」をご参照ください。

 

② 戦略

当社グループがミッションとして掲げる「不動産に新たな価値を創造し、すべての人の豊かな暮らしと夢に挑戦する」を実践することで、持続可能な社会の実現と当社グループの持続的な成長に挑戦してまいります。

ミッションを実現するためには付加価値の源泉である人材の確保と育成が不可欠であると認識しております。第2次中期経営計画で「人材の採用・拡大と育成」を重点施策とし、施策を着実に実行していくために「人材ビジョン」と「求める人物像」を制定し、一人ひとりが目標や夢に向かって挑戦し続け、能力を最大限に発揮し多様な人材の活躍でイノベーションが創出される組織風土の醸成に取り組んでまいります。

 

求める人物像

 


 

「人材育成方針」

ムゲンエステートグループの原動力は、自ら構想し、挑戦し、変化に対応できる人の力です。

多様な価値観を認め合い、誠実に、粘り強く、強い覚悟を持つ人材を輩出することで、社会に新たな価値を創造し、提供してまいります。

 

「人材ポリシー」

「人材ビジョン」の達成と「求める人物像」の採用・育成を実行するために、人的資本に係るカテゴリーを6項目に分け、それぞれの「あるべき姿」を人材ポリシーとして策定し企業方針として定めております。この方針に基づき、多様な従業員が働きがいを持ち、一人ひとりの能力を最大限に発揮できる環境づくりに取り組んでまいります。

 

人材ポリシー

 


 

 

 

また、人的資本の強化・人材戦略を支える3つの柱として「人材獲得の強化」「人材育成の強化」「リテンションの強化」を据えています。当社グループに必要なスキルを特定し、計画的に人材の「獲得」「育成」「リテンション」のための施策を展開してまいります。

 

「人材獲得の強化」

当社グループは経営戦略実現のために、成長事業・重点領域・第2次中期経営計画達成遂行に資する人材を積極的に採用し、必要な人材の質と量を充足することで、組織の最適化を進めてまいります。

即戦力強化のため、キャリア採用を強化し専門性の高い職種を積極的に採用することで、人材の活力と多様性を確保いたします。一方で、ポテンシャルの高い人材確保・育成に向けては、新卒採用に加えて若年層でのキャリア採用も活用してまいります。

また、多様な人材が活躍できる機会を提供するために、当社グループは「知・経験のダイバーシティ&インクルージョン」「女性活躍推進」「多様な働き方の推進」等を推進していくことが重要であると認識しております。

2023年12月期の新卒採用人数は33名、キャリア採用人数は63名となり、採用比率は3:7となっております。今後もリファラル制度(社員紹介制度)の活用などにより、優秀な人材の確保を行い事業拡大に向け営業職を中心に採用の強化を行ってまいります。

 

ⅰ 知・経験のダイバーシティ&インクルージョン

当社グループの多様な人材による発想は、持続的成長の基盤となるイノベーションの源泉であり、ダイバーシティの推進は重要な経営戦略の一つだと考えております。

グループが成長していくためには、変化し続ける社会や多様な価値観に柔軟に対応し、潜在的な市場を発掘できる新たな価値の創出が必要となってきます。それには従業員の多様な価値観、ジェンダー、世代、民族、言語、文化、障がいの有無、ライフスタイルなどを活かした視点や発想を活用することができる職場風土を醸成し、今までの常識や既成概念にとらわれない発想を継続的に生み出すことができる組織を形成していかなければなりません。

当社グループでは多様な人材が個性や能力を発揮できる機会と環境の整備に取り組んでおり、役割と成果、能力に応じた公正な評価に基づいて役職や処遇が決定されております。

 

ⅱ 女性活躍推進

女性活躍推進の社内醸成に向けて、女性社員を中心とした社内横断プロジェクトを、社長直下のもと始動しており、社員への啓蒙と意識醸成に向け様々な働きかけを継続的に取り組んでおります。

また、女性が能力を十分に発揮できるようなキャリア支援を実施しております。具体的には、女性従業員を対象としたキャリア研修や、リーダーシップ研修の継続実施、従業員のコミュニティづくりの支援等を実施しており、女性が能力を十分に発揮できるようなキャリア支援を継続的に実施してまいります。

 

「人材育成の強化」

当社グループの企業理念である『夢現 -夢を現実に-』に込められた思いを実現するため、様々な育成プログラムを提供し、能力を最大限に発揮し多様な人材の活躍でイノベーションが創出される組織風土の醸成に取り組んでおります。今後も国籍・年齢・性別など様々な違いを問わず、優秀な人材を適材適所で積極的に育成・登用し、強靭な組織力の構築や企業価値の向上に繋げてまいります。

 

当社グループの研修体系は、「階層別研修」「人材育成研修」「目的別研修」「職能別研修」で構成されております。

あらゆる階層の従業員に幅広く育成の機会を提供し、多様な人材がやりがいと誇りを持って仕事に取り組み、能力を最大限に発揮しながら継続的に成長・活躍できるよう、キャリア自律を後押しする取り組みを拡充しております。

 

研修分類

内容

階層別研修

各階層の従業員で必要となる知識・スキルを習得するため、キャリアに合わせた研修プログラムを受講します

人材育成研修

主に配属部署でのOJT(On the job training)を中心に行われます。携わる業務について目標設定・振返りを実施することによって職務遂行の過程で取り組み姿勢等を指導してまいります。また各階層で選択・選抜型研修を構築し、経営幹部や従業員のリスキリング研修機会を提供しております

目的別研修

全従業員が受講する研修プログラムです。業務遂行の基盤となるコンプライアンス、ハラスメントについて遵守すべき規程やサステナビリティ課題について学んでまいります

職能別研修

配属部門で必要となる専門知識を習得し、会社経営へ貢献できるプロフェッショナルを目指す研修となります

 

この他、従業員のキャリア開発の一環といたしまして、資格取得の助成や表彰制度など従業員が自ら学ぶ風土の醸成に努めております。2023年12月期の従業員1人当たりの研修時間(eラーニング含む)は40時間11分となっております。

 

「リテンションの強化」

当社グループが、変化の激しい事業環境・社会情勢の中で企業価値を向上させていくには、多様な価値観を持った様々な従業員一人ひとりが、当社グループのミッションを共通の価値観とし、仲間やパートナーと連携して挑戦を続けることが重要であると認識しております。企業理念の浸透と実践の場を提供し、従業員が成長を実感することで、エンゲージメントの向上、ひいては人材のリテンションにつなげてまいります。

 

ⅰ 多様な働き方の推進

多様な人材の活躍には、従業員の働き方改革や様々な両立支援の取り組みが重要であると認識しております。当社グループでは、妊娠(配偶者の妊娠を含む)・出産・育児・介護・疾病治療など、ライフステージのさまざまな変化に左右されることなく、多様で柔軟な働き方で能力を発揮できる環境整備に努めております。

育児と仕事の両立については両立支援面談などの導入により、出産・育児休業後の従業員への復職サポートや、男性育児休業取得促進に向けた社内醸成の強化を図っております。その結果、2023年度の男性育児休業取得率は66.7%、女性育児休業取得率は100%となっております。また、育児休業を取得した従業員の全員が復職しております。

このような取り組みの結果、2023年4月に次世代育成支援対策推進法に基づく基準を満たした「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けました。今後もさらなるワークライフバランスの向上を目指し、育児・介護休業法で定められた短時間勤務の対象年齢の拡充等の制度整備に加え、子どもを安心して出産し育てられる職場環境づくりの醸成を図ってまいります。

 

ⅱ エンゲージメント向上への取り組み

企業価値向上のためには、一人ひとりがやりがいを持って活き活きと働き、個々の能力を最大限発揮していくことが重要だと認識しております。そのためには組織と個人が共に成長・貢献し合う信頼関係が必要不可欠であります。

当社グループでは、2022年より従業員エンゲージメントサーベイを定期的に行っており、従業員が仕事に対してどの程度の関心を持っているか、どの程度満足しているかなどを定量的に把握し、組織のパフォーマンスの向上、生産性の向上、従業員のモチベーションの向上、離職率の低減などにつなげております。

更には、強い組織づくりと組織モチベーション向上のため1on1ミーティングなどの対話を通じ理念の浸透や組織風土の醸成、上長と部下のコミュニケーション促進、自己成長や健康に配慮し従業員エンゲージメントの向上につなげております。

これらの結果を踏まえて人材の確保や定着に関するリスクを適切に把握することで、従業員の活力と会社の業績向上、事業の持続的な成長を支える優秀な人材の定着へと結び付けております。

また、タウンホールミーティングを定期的に開催し、経営陣と従業員が直接対話できる場を設けております。社長を含む経営陣が現場の声をダイレクトに聴き、素早く経営に反映させることを目的とするとともに、経営陣と現場の円滑なコミュニケーションの場として活用されております。

 

③ リスク管理

リスク管理については、「(1)サステナビリティ共通 ③ リスク管理」をご参照ください。

 

④ 指標及び目標

当社グループでは、上記「② 戦略」において記載した人材の採用・育成に関する方針、及び社内環境整備に関する方針について次の指標を用いております。当該指標に関する主要な目標及び実績は次のとおりでございます。目標については、当社グループの事業運営状況や社会環境の変化に応じて、検討及び目標の設定を進めてまいります。

 

指標

実績

2021年度

2022年度

2023年度

新卒採用比率(%)

7.0

17.0

34.4

キャリア採用比率(%)

93.0

83.0

65.6

女性社員採用比率(%)

31.4

30.1

44.7

離職率(%) (注)1

14.4

12.8

9.5

男性管理職比率(%)

96.1

94.3

95.9

女性管理職比率(%) (注)2

3.9

5.7

4.1

女性育児休業取得率(%)

100.0

100.0

100.0

男性育児休業取得率(%) (注)3

33.3

33.3

66.7

有給取得率(%)

73.4

81.7

91.7

平均残業時間(時間)

15

17

17

 

(注)1.目標は10.0%未満

2.目標は8.0%以上(2025年度末までに)

3.目標は50.0%以上(2024年度末までに)

 

 

3 【事業等のリスク】

[基本方針]

当社グループでは、物理的・経済的若しくは信用上の損失又は不利益を生じさせる要因となりうる事象をリスクと特定し、経営への影響度と発生可能性で評価し、アセスメント結果を基に当社グループとしての重要リスクを決定しております。その中でも、リスクが顕在化した場合に事業に重大な影響を及ぼすものをモニタリング対象リスクとして特定し、リスク対策の進捗などを重点的にモニタリングすることで、全社的なリスク対策の強化を図っております。

経営戦略を実行する上で、潜在するリスクが顕在化しないよう、適切な対応を定めるリスクマネジメント体制を構築するとともに、重大なリスクが発現した場合の損失を最小限に抑えるクライシスマネジメント体制も整えております。

新型コロナウイルス感染症が拡大し、緊急事態宣言が発出された際には、当社グループの緊急事態対応規程に基づき、緊急対策本部を設置し、事業に及ぼす影響等をアセスメントし、感染拡大防止及び事業継続の2つの観点から必要な対策を実施しました。

 

[リスク管理体制]

当社グループのリスクマネジメントの推進にあたっては、管理本部長を委員長とし、各部門及びグループ会社の責任者が出席する「リスクマネジメント・コンプライアンス委員会」を当連結会計年度中に5回開催し、同委員会において、外部環境、内部環境、業務プロセスの各項目にリスクを分類し、各分類から抽出されたリスクを影響度と発生可能性の観点からリスクアセスメントを実施し、企業活動に重大な影響が想定されると評価したリスク項目をモニタリング対象リスクとして特定しております。さらに特定したモニタリング対象リスクごとに関連部門から担当責任者が任命され、委員会下部にある分科会においてリスク対応策を検討・実行しております。進捗状況は、四半期ごとにモニタリングを通じて確認され、必要に応じた是正・改善が行われ、取締役会に報告しております。

また、気候変動に起因するリスクについては「サステナビリティ委員会」にて、各部門よりリスクを抽出し、定性・定量の両面から評価を行った上、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会に報告を行うことで、当社グループ全体のリスクマネジメントに統合をしております。

 

 

[リスク管理体制図]

 


 

[主要なリスクとして認識している事項]

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のある全てのリスクを網羅するものではありません。

 

(1)経済動向・社会・制度等の変化に関するリスク

社グループの事業は、不動産という社会インフラ、税や各種規制といった法制度、株式市場などの経済動向、最近では海外投資家への販売が増加していることから、各国の法規制など、様々な要因の影響下にあります。これらに変化が生じた場合、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、中期経営計画において4つの経営方針「事業拡大に向けた収益基盤の強化」「収益機会を捉えるネットワークの構築」「事業成長を支える組織力の向上」「事業拡大・成長を支えるDXの推進」を定めております。これまで買取再販事業を中心に成長を続けてきたため、本事業に対する様々なリスクへの影響が大きくなっていることから、多様な不動産関連商品・サービスを提供し、特定の事業に依存しないポートフォリオとすることで、そのリスク発生時の影響を最小化する取り組みを行っております

 

(2)仕入・販売に関するリスク

当社グループの主力事業である不動産売買事業は、首都圏1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)を中心に展開しており、居住用不動産の買取再販については参入障壁も低いため、各社との競争環境が厳しくなっております。投資用不動産に関しましても大手不動産会社が新たに事業参入するなど、競争環境は年々厳しさを増しており、当社グループが目標とする利益率の確保が行えない環境となり、計画どおりの仕入・販売が行えない場合には、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、幅広いアセットタイプや価格帯を取り扱うこと、スピード感のある契約・決済手続きを行うことに加えて、2021年からは首都圏各所へ営業所を展開しエリア毎の深耕を進めるとともに、2023年からは地方への営業所の展開も開始することで、不動産仲介会社及びアセットオーナーのニーズに応え、競合他社との差別化を図っております。他社では仕入が困難な物件でも、当社グループが長年培った経験及びデータに基づき、その立地・エリアの特性に合わせた物件に再生することで、厳しい条件下においても幅広く仕入・販売が行えるよう努めております。

 

(3)有利子負債への依存と金利変動に関するリスク

当社グループは、不動産売買事業における中古不動産の買取資金を主に金融機関からの借入金によって調達しており、当連結会計年度末における有利子負債依存度は59.3%となっております。このため、今後、金融情勢の変動によって金利上昇や金融機関の融資姿勢が変化した場合には、支払利息の増加や仕入計画の変更等により当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

有利子負債依存度に関しましては、その数値を65%以下とすることを財務健全性の一つの指標としており、自己資本比率やネットD/Eレシオを含めた指標を常に管理することで、財務状態を強化しております。加えて、当社グループは特定の金融機関に依存することなく、個別案件毎に販売計画の妥当性を分析したうえで借入金の調達を行うことで、取引金融機関との円滑な取引関係を構築しております。

 

(4)販売用不動産の評価損に関するリスク

当社グループが保有する販売用不動産については、「棚卸資産の評価に関する会計基準」(企業会計基準第9号 2019年7月4日改正分)を適用しております。期末に保有している販売用不動産のうち、投資用不動産については、減価償却を考慮した簿価と正味売却価額を比較し、正味売却価額が簿価を下回っている場合には商品評価損を計上することとしております。また、販売用不動産のうち、区分所有マンション、戸建等の居住用不動産については、取得価額と正味売却価額を比較し、正味売却価額が取得価額を下回っている場合には商品評価損を計上することとしております。今後、経済情勢や不動産市況の悪化等により、当初計画どおりに販売が進まない場合、販売用不動産が在庫として滞留する可能性があり、滞留期間が長期化した場合等は、期末における正味売却価額が簿価または取得価額を下回り、商品評価損を計上することも予測され、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、不動産売買市場の動向を注視し、業績への影響の把握と事業の進捗管理や精度の向上に努めております。買取再販事業は、仕入から販売まで短期間のサイクルではありますが、長期間滞留する在庫も一部あるため、保有中に市況変動があった場合でも一定程度の利益が確保できるよう、仕入れ時には仕入価格を厳正に精査し決定しております。また、長期在庫となった場合でも、正味売却価額の低下を極力抑制できるよう適切なリフォーム計画と賃料設定による投資利回りの改善・向上に努めています。

 

(5)開発行為における取引先倒産等に関するリスク

当社グループにおいて、販売用の一棟建物を建設する場合は、外部の建設業者へ委託しております。社員や取引先等の関係者を通じて建設業者を紹介していただくなど積極的な新規開拓に取り組むとともに、既存建設業者との良好な関係の維持・強化を図っております。しかしながら、当社グループの選定基準に合致する建設業者を十分に確保できなかった場合や、委託先建設業者の経営困難又は労働者不足により工期遅延並びに外注価格の上昇が生じた場合には、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(6)法的規制に関するリスク

当社グループの属する不動産業界は、「宅地建物取引業法」「建設業法」「建築基準法」「都市計画法」「国土利用計画法」「借地借家法」「不当景品類及び不当表示防止法」「不動産の表示に関する公正競争規約」等により法的規制を受けております。今後、これらの法的規制の改廃や新たな法的規制が設けられる場合には、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループでは、法的規制の遵守を徹底しておりますが、将来何らかの理由により法令違反の事象が発生し、監督官庁より業務の停止や免許の取消し等の処分を受けた場合には、当社グループの事業活動に支障をきたすとともに当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、総務部が中心となって各種法的規制に対応し、従業員へのコンプライアンス研修やセミナーなどを実施して法令順守・コンプライアンス意識を高めるとともに、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会では特にリスクマネジメント及びクライシスマネジメントの観点から、当社グループ全体の主要リスクに対する対応策の検討やコンプライアンス違反の未然防止策の制定等を行っております。各種法的規制に改正がある場合などには、社内弁護士、外部機関、及び顧問弁護士とも連携して最新の情報を把握するよう努め、当社グループ内での周知徹底を図っております。

 

なお、法的規制に関して、許認可等の有効期間が関係法令により定められているものは下表のとおりであります。

 

(当社)

許認可等の名称

許認可

(登録)番号

有効期間

関係法令

許認可等の取消又は
更新拒否の事由

宅地建物取引業者免許

国土交通大臣

(3)第7987号

2020年5月14日から

2025年5月13日まで

宅地建物取引業法

同法第5条及び第66条

一級建築士事務所登録

東京都知事登録

第51257号

2020年7月20日から

2025年7月19日まで

建築士法

同法第26条

不動産特定共同事業者許可

東京都知事

第105号

不動産特定共同事業法

同法第36条

 

 

(㈱フジホーム)

許認可等の名称

許認可

(登録)番号

有効期間

関係法令

許認可等の取消又は
更新拒否の事由

宅地建物取引業者免許

東京都知事

(6)第75654号

2022年10月4日から

2027年10月3日まで

宅地建物取引業法

同法第5条及び第66条

一級建築士事務所登録

東京都知事登録

第56843号

2021年2月5日から

2026年2月4日まで

建築士法

同法第26条

特定建設業許可

国土交通大臣
許可(特-4)
第28616号

2022年8月25日から
2027年8月24日まで

建設業法

同法第29条、第29条の2

 

 

(7)契約不適合責任,訴訟等に関するリスク

当社グループでは、販売する中古再生不動産について、民法及び宅地建物取引業法の規定に基づき、引渡し後最低2年間以上の契約不適合責任を負っております。また、販売する新築住宅については、民法及び住宅の品質確保の促進等に関する法律の規定に基づき、住宅の構造耐力上主要な部分等の瑕疵について、引渡後10年間の担保責任を負っております。当社グループにおいては、品質管理を徹底するために、リフォーム工事の施工前及び完了時に独自のチェックリストを用いて品質のチェックを行っておりますが、販売した物件に契約不適合があった場合には、当該不適合部分の補修や損害賠償、契約の解除等により予定外の費用を負担せざるを得ないことがあります。また、販売した物件について、現時点で業績に直接影響を及ぼす重要な訴訟を提起されている事実はありませんが、業務手続に適法性や適切性を欠いた場合にはクレーム等を受け、それらの係争に起因する訴訟が発生する可能性があります。

当社グループとしては、このような訴訟・係争ないしは請求が生じることのないよう、クレーム対応の専門部署として「CS推進室」を設置し、クレーム低減に向けた施策を講じる等、社内体制の整備に努めております。しかしながら、今後そのような事態が発生した場合、その内容及び結果によっては、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報セキュリティ等に関するリスク

当社グループでは、各事業において個人情報をはじめとする多くの機密情報を取り扱っております。これらの機密情報に関しては、「個人情報の保護に関する法律」をはじめ、関連する諸法令の遵守と適正な取り扱いの確保に努めておりますが、情報セキュリティインシデント発生等の不測の事態により、万一、機密情報が外部へ漏えいした場合、社会的信用の低下等により、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。また、サイバー攻撃等により情報システム障害その他の損害が発生した場合、当社グループの事業継続に重大な影響が生じる可能性があります。

 

(9)自然・人為的災害に関するリスク

当社グループが取り扱う中古不動産は、首都圏1都3県(東京、神奈川、千葉、埼玉)を中心に所在しております。首都圏において、地震・火災・水害等の自然災害、大規模な事故やテロ等の人為的災害が発生した場合、当社グループの所有する中古不動産が滅失、毀損または劣化し販売価値や賃貸収入が著しく減少する可能性があります。

また、首都圏以外の地域で自然・人為的災害が発生した場合にも、消費マインドの冷え込みから当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

特に地震対策については、旧建築基準法適用時に建設された物件は保有を控え、保有した場合でも耐震性に関する診断を厳密に行うことで、リスク発生時の影響の最小化を図っております。

 

(10)人材の確保に関するリスク

当社グループは、様々な経営課題克服のため、優秀な人材を継続的に確保・育成していくことが最重要課題であると認識しております。従って、今後も優秀な人材の中途採用、優秀な学生の新卒採用及び教育・研修制度の充実を図り、当社グループの経営理念を理解した責任ある社員の育成を行っていく方針であります。しかしながら、当社グループの求める人材の確保・育成が想定どおりに進まない場合には、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

また、当社グループの人事制度におきましては、当社グループの更なる成長に向けた取り組みとして、人事評価制度を刷新することにより、求める人材を明確にし、一人ひとりの成長をサポートできる仕組み(仕事に基づく人事体系、成長を促す評価体系及びやりがいのある賃金体系)を構築しております。しかし、評価者の能力不足や部下とのコミュニケーション不足等で当社グループの人事制度が上手く機能しない場合、社員のモチベーションダウンや人材の流出につながる可能性があります。

 

(11)新型コロナウイルス感染症拡大の影響に関するリスク

新型コロナウイルス感染症については、現時点でもなお収束の見通しが不透明な状況が続いており、今後、さらなる感染拡大により社会経済活動が停滞し、当社グループの取引先である不動産仲介会社、金融機関、エンドユーザー、海外投資家の行動が制限されることとなった場合、不動産投資や賃貸市場の需要の低下、物件の内覧等の制限による住宅取得ニーズの低下、内外装事業における資材の供給遅延や停止、厳しい入国制限による海外投資家の需要低下など、不動産売買市場の流通量が大きく減少し、当社グループの経営成績や財務状態等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、2020年4月の緊急事態宣言発出に合わせ、緊急事態対応規程に基づき緊急対策本部を立ち上げ、事業への影響や従業員の感染防止対策実施に向けた検討を開始しました。具体的には、非対面による営業活動の実施、不動産仲介会社向け物件サイトへVR等のITを活用した物件情報の拡充、資材供給元の確保、従業員向けには在宅勤務を取り入れた勤務体制への移行、研修・イベント等の中止など感染防止対策を講じるとともに、事業継続に向けた取り組みを段階的に拡充しました。当社グループでは、今後も感染症対策を継続するとともに、新しい生活様式やワークスタイルの変化により不動産の価値も変化しており、それに対応した物件やサービスの提供をタイムリーに行うことができるよう対策を講じてまいります。

 

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の概要並びに経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する分析・検討内容は次のとおりであります。

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営成績等の状況の概要

① 経営成績の状況

当連結会計年度におけるわが国経済は、直近において景気の一部に足踏みが見られるものの、賃金引上げや個人消費の持ち直しにより、緩やかに回復しております。一方で、世界的な金融引締め等が続く中、海外景気の下振れが我が国の景気を下押しするリスクや、物価上昇、中東地域をめぐる情勢、金融資本市場の変動の影響等、今後の動向に注視が必要です。

当社グループの属する不動産業界におきましては、緩やかな景気回復が続く中で、需要は底堅く推移しました。また、インバウンドの回復と日米金利差による円安の効果もあって、海外投資家の日本の不動産に対する需要も堅調に推移しております。しかしながら、日本銀行の金融政策見直しによる金利動向など注視が必要な状況です。

東日本不動産流通機構(東日本レインズ)によれば、2023年における首都圏の中古マンション成約件数は35,987件(前年比1.6%増)で、2年ぶりに前年を上回りました。成約平米単価は71.90万円(同6.9%増)と11年連続で上昇し、この11年で88.3%上昇しております。また、成約価格においても4,575万円(同7.0%増)と成約平米単価と同様に11年連続で上昇しました。12月の在庫件数は、前年比プラス11.7%の2ケタ増となり23ヶ月連続で前年同月を上回りました。

このような事業環境の下、当社グループの主力事業である不動産売買事業は、住居系不動産(一棟賃貸マンション・区分オーナーチェンジ・区分所有マンション・戸建等)を中心に堅調な需要を維持しました。

居住用不動産は、第2次中期経営計画の方針に基づき、エリアの深耕を図ることで仕入・販売を強化・拡大してきたことや、営業人員の増強効果もあり、売上高及び販売件数が前期を大幅に上回る結果となりました。また、高価格帯の物件販売が進んだことにより、平均販売単価も前期に比べて大幅に増加しております。

投資用不動産は、金融緩和政策の継続に伴う低金利環境と円安を背景に国内外投資家からの需要の増加、及び営業人員の増強効果等により、売上高及び販売件数が前期を大きく上回る結果となりました。仕入につきましては、前年同期並みの水準で進捗しております。

不動産開発事業は、環境に優しい製品を設置した新築物件として「サイドプレイス」シリーズの竣工を進め、今期は3棟が竣工しました。販売においては、リーシング・販売活動の強化を進めた結果、3棟売却しております。

不動産特定共同事業は、第4弾商品「ナーシングケア江戸川プロジェクト」の第1期募集金額が完売し、12月に組成しました。現在、第2期募集について営業活動を開始しております。

以上の結果、当連結会計年度における売上高は516億40百万円(前期比65.3%増)、営業利益は59億36百万円(同99.4%増)、経常利益は52億43百万円(同127.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は36億53百万円(同133.5%増)となりました。

 

セグメントの業績は、次のとおりであります。

(不動産売買事業)

不動産売買事業におきましては、投資用不動産の販売が130件(前期比41件増)、平均販売単価は1億58百万円(同16.7%減)となり、売上高は206億9百万円(同21.7%増)となりました。また、居住用不動産の販売は、432件(前期比143件増)、平均販売単価は59百万円(同57.5%増)となり、売上高は255億54百万円(同135.4%増)となりました。

不動産開発事業では、販売が3件(前期比2件増)、平均販売単価は3億25百万円(同76.2%増)となり、売上高は9億76百万円(同428.7%増)となりました。

不動産特定共同事業は、世田谷プロジェクトの第2期販売及びナーシングケア江戸川プロジェクトの第1期販売が終了し、売上高は19億19百万円(前期比108.0%増)となりました。

以上の結果、売上高は493億53百万円(前期比70.1%増)、セグメント利益(営業利益)は71億94百万円(同77.6%増)となりました。

 

(賃貸その他事業)

賃貸その他事業におきましては、不動産賃貸収入が21億19百万円(前期比2.0%増)となりました。

以上の結果、売上高は22億86百万円(前期比2.7%増)、セグメント利益(営業利益)は7億71百万円(同1.1%減)となりました。

 

(注)「投資用不動産」は、一棟賃貸マンション及び一棟オフィスビル等の賃貸収益が発生する物件を購入者が主に投資用として利用する不動産として区分し、「居住用不動産」は、区分所有マンションを中心に購入者が居住用として利用する不動産、及び土地等も含まれております。

 

② 財政状態の状況

当連結会計年度末における財政状態は、総資産は803億62百万円(前期比3.8%増)、総負債は525億18百万円(同0.6%減)、純資産は278億44百万円(同13.2%増)となりました。

(資産)

総資産の主な増加要因は、現金及び預金が26億66百万円、販売用不動産(仕掛販売用不動産も含む)が14億87百万円増加した一方、有形固定資産が12億74百万円減少したことによるものであります。

(負債)

総負債の主な減少要因は、長期借入金(1年内返済予定を含む)が42億68百万円、社債(1年内償還予定を含む)が5億22百万円減少した一方、短期借入金が31億29百万円増加したことによるものであります。

(純資産)

純資産の主な増加要因は、親会社株主に帰属する当期純利益の計上により利益剰余金が36億53百万円増加した一方、利益剰余金の配当により4億69百万円減少したことによるものであります。

 

③ キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という)は、前連結会計年度末に比べ27億22百万円増加し、190億37百万円となりました。各キャッシュ・フローの状況と要因は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の営業活動の結果、獲得した資金は、53億74百万円(前連結会計年度は、114億91百万円の使用)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益52億22百万円の計上があった一方、法人税等の支払額10億2百万円、棚卸資産の増加額4億10百万円があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の投資活動の結果、使用した資金は、4億98百万円(前連結会計年度は、1億57百万円の使用)となりました。これは主に、定期預金の払戻による収入20億64百万円があった一方、定期預金の預入による支出20億12百万円、有形固定資産の取得による支出5億10百万円があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度の財務活動の結果、使用した資金は、21億53百万円(前連結会計年度は、118億47百万円の獲得)となりました。これは主に、長期借入れによる収入181億22百万円、社債の発行による収入25億81百万円、短期借入金の純増額31億29百万円があった一方、長期借入金の返済による支出223億90百万円、社債の償還による支出31億22百万円があったことによるものであります。

 

④ 仕入及び販売の状況

(生産実績)

当社グループは、中古不動産の売買事業及び賃貸その他事業を主体としており、生産実績を定義することが困難であるため、該当事項はありません。

(受注実績)

当社グループは、受注生産を行っていないため、該当事項はありません。

 

(販売実績)

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

 

区分

当連結会計年度

(自 2023年1月1日

至 2023年12月31日)

 

 

 

セグメントの名称

 販売件数

前年同期比

(%)

 販売高(百万円)

前年同期比

(%)

不動産売買事業

567

149.2

49,353

170.1

賃貸その他事業

2,286

102.7

合計

567

149.2

51,640

165.3

 

(注) セグメント間取引については相殺消去しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

① 経営成績の分析

(売上高)

当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較して203億97百万円増加516億40百万円(前連結会計年度比65.3%増)となりました。これは、不動産売買事業の売上高が203億36百万円増加493億53百万円(同70.1%増)となったことによります。この不動産売買事業の内、投資用不動産は、低金利環境と円安を背景に、底堅い需要を維持し、売上高は36億68百万円増加の206億9百万円(同21.7%増)と前期を上回る結果となりました。居住用不動産は、仕入・販売の強化・拡大と営業人員の増強効果もあり、売上高は146億98百万円増加の255億54百万円(同135.4%増)と前期を上回る結果となりました。

賃貸その他事業の売上高は、60百万円増加22億86百万円(同2.7%増)となりました。賃貸その他事業の売上高の殆どを占める賃貸収入は、投資用不動産の仕入から販売までの保有期間中、及び当社が固定資産として保有する物件から計上されますが、投資用不動産の在庫が昨年並みの水準で進捗したことから、賃貸その他事業の売上高も前期並みの水準で着地しております。

詳しくは「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」をご参照ください。

(売上原価、売上総利益)

当連結会計年度の売上原価は、積極的な販売活動により前連結会計年度と比較して161億41百万円増加402億33百万円(前連結会計年度比67.0%増)となりました。また、売上総利益は前連結会計年度と比較して42億56百万円増加114億6百万円(同59.5%増)となりました。なお、売上総利益率は、0.7ポイント低下して22.1%(前連結会計年度は22.9%)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

販売費及び一般管理費は、前連結会計年度と比較して12億96百万円増加54億69百万円(前連結会計年度比31.1%増)となりました。これは主に、販売増加に伴う販売手数料が5億8百万円、人員採用に伴う人件費及び採用教育費が7億27百万円増加したことによります。営業利益は積極的な販売活動により、29億59百万円増加59億36百万円(同99.4%増)となりました。なお、売上高営業利益率は1.9ポイント上昇して11.5%(前連結会計年度は9.5%)となりました。

(営業外損益、経常利益)

営業外収益は、前連結会計年度と比較して68百万円増加の1億31百万円(前連結会計年度比106.8%増)となりました。これは主に受取手数料が56百万円増加したことによります。

営業外費用は、前連結会計年度と比較して93百万円増加の8億25百万円(同12.8%増)となりました。これは主に、仕入に係る借入金の増加により、支払利息が68百万円増加したことによります。

以上の結果、経常利益は、前連結会計年度と比較して29億33百万円増加52億43百万円(前連結会計年度比127.1%増)となりました。なお、売上高経常利益率は2.7ポイント上昇して10.2%(前連結会計年度は7.4%)となりました。

 

(特別利益、親会社株主に帰属する当期純利益)

親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度と比較して20億88百万円増加の36億53百万円(前連結会計年度比133.5%増)となりました。なお、売上高当期純利益率は2.0ポイント上昇して7.1%(前連結会計年度は5.0%)となりました。

 

② 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成に当たり重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

また、当社グループにおける重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載されているとおりであります。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの事業活動における資金需要の主なものは、不動産買取再販事業に係る販売用不動産の仕入れであります。販売用不動産の仕入れは、個別の販売用不動産を担保とした金融機関からの借入金及び販売活動によるキャッシュ・フローで獲得した資金によって行っております。当該販売用不動産は一年以内を目途に販売することとし、借入金は、月例約定返済を織り込みつつ、販売用不動産の販売時に一括返済することを基本方針としており、資金の流動性は十分に確保されております。

また、上記のほか資金調達の手段として、社債の発行、不動産特定共同事業の運営及びクラウドファンディングを活用したファンドの組成等を行い、資金調達の補助的な役割を担っております。これらで得た資金については、事業拡大のための投資資金及び安定した賃貸家賃収入を獲得するための長期保有目的不動産の購入等に充てられております。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 

第2次中期経営計画の経営指標(2022年12月期~2024年12月期)

2023年12月期は、棚卸資産回転率及びネットD/Eレシオは目標を下回る結果となりました。一方で、成長性を示す売上高平均成長率(CAGR)及びEPS成長率、効率性を示すROE、健全性を示す自己資本比率は目標を超える結果となり、株主還元は、計画通りの配当性向を達成しました。

EPS成長率は、主力事業である不動産買取再販事業の収益拡大と成長事業の強化により、業績が好調に推移し、大きく増加しました。

株主資本コスト(CAPM)は、当社認識で9%~11%と高い水準でありますが、ROEはこれを上回る14.0%と、資本効率を重視した経営を推進しております。

長期借入金の返済に伴う有利子負債の減少により、ネットD/Eレシオは1倍を下回りましたが、今後の事業規模の拡大に向け、財務の健全性にも留意しながら、最適な資金調達を行ってまいります。

2024年12月期は、第2次中期経営計画で掲げた主力事業の拡大と成長事業の強化、それらを支える経営基盤の強化を計画通りに遂行・達成を進めてまいります。

 

 

経営指標

目標数値

当連結会計年度

成長性

売上高成長率(CAGR)(注)1

15.0%以上

23.3%

EPS成長率(注)2

30.0%以上

133.3%

効率性

ROE

11.0%以上

14.0%

棚卸資産回転率

1.5回/年以上

0.9回/年

健全性

自己資本比率

30.0~35.0%

34.5%

ネットD/Eレシオ

1.2倍~1.5倍

0.9倍

株主還元

配当性向

30%以上

40.6%

自己株式取得

機動的に対応

 

 (注)1.当連結会計年度の売上高成長率は、2021年度の売上高を基準年度として計算しております。

    2.当連結会計年度のEPS成長率は、2022年度との比較で計算しております。

 

5 【経営上の重要な契約等】

該当事項はありません。

 

6 【研究開発活動】

該当事項はありません。