第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

当社グループは、「経営理念」に従い、責任と熱意を持ってモノ造りに挑戦し、顧客の信頼を勝ち得ることに喜びを感じ、様々な社会的責任を果たすことで、21世紀に貢献できる企業グループを目指しております。

 経営理念

  心が触れ合うモノ造り 信頼と喜びの行動で 21世紀に貢献する。

   ・経営品質を高め、顧客・株主・社会から期待され、信頼されるグローバルな企業として発展する。

   ・お客様に喜んでいただける商品、もしくは価値を提供することで、社会に貢献する。

   ・自由闊達で、常に新しいことに挑戦する企業風土をつくる。

 

(2)経営戦略等

当社グループは、2021年を初年度とする中期経営計画(NICHIRIN New Sustainable Development Plan – with New Values and Diversity –)に取り組んでおります。

①ビジョン

中期経営計画の骨子を「ビジョン」として次のように定めております。

 

<顧客創造とイノベーションにより、新たな価値と多様性を兼ね備えた持続可能な成長を実現する>

 

当社製品を3C(顧客・競合・自社)の視点から分析し、その優位性、差別化、更には新たな提案でお客様の要求に応えるべく、既存製品の更なる付加価値向上と、新たな顧客・地域での販売拡大を目指します。また、新型コロナの影響により世界経済が停滞する中、不測の事態における復元力を強化するとともに、人・環境・社会に優しく、多様性を兼ね備えた企業として、新たな時代へ挑戦し続け、体質改革と成長戦略の実現に邁進します。

 

②成長のロードマップ

中期経営計画では、2021年から2022年をコロナ禍からの着実な回復期、2023年から2025年をポストコロナ成長期と位置付けております。

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③3つの全体戦略

戦略Ⅰ:成長分野の強化・拡大と新たな事業の創造によるグローバルでの利益体質の強化

マーケティング活動の推進や原価企画部門の体制強化、グローバルワンシステムによる管理強化によりグローバルでの競争力アップに取り組んでまいります。

戦略Ⅱ:グローバル人材の確保と育成

グローバル人事制度を構築し、当社グループにおける次期リーダー人材を含む中核社員の育成や当社における外国人従業員採用拡大、海外トレーニー制度の推進を図り、新たなグローバル事業戦略を構築できる人材を育成してまいります。

戦略Ⅲ:Resilience(復元力)の強化と新しい社会への貢献

コーポレート・ガバナンスの強化や事業継続マネジメント(BCM)の取組みにより、不測の事態発生時にも素早く対応できる復元力を強化してまいります。また、CSR、SDGsの取り組み強化により、人・環境・社会に貢献できる企業を目指してまいります。

 

(3)経営環境

2024年の世界経済は、欧米の金融政策緩和に伴い、わずかに回復していくと予想されています。しかしながら、金融引き締め継続の可能性も否定できず、先行きは不透明な状況です。加えて、中国の不動産市場の不調による経済停滞や、ウクライナ情勢や中東情勢に起因する地政学的リスクの高まり、それに関連するエネルギー市場やサプライチェーンへの影響は、景気下振れを招くリスクとして顕在化しており、今後も動向を注視する必要があります。

 

日本経済は、円安を背景とした輸出企業の収益増加により回復基調で推移しているものの、海外経済の減速に伴う景気への影響は今後も注意が必要であり、安定した為替水準の継続と内需中心の経済成長への期待が高まっています。

 

自動車業界においては、半導体不足など供給網の混乱解消や生産・販売の回復により、景気は改善しつつあります。しかしながら、世界景気の下振れによる販売減少、中国をはじめとする主要市場での日系自動車メーカーのシェア低下、EVシフトに伴う補助金や税制優遇など各国の政策による自動車販売への影響は、依然として懸念事項であり楽観視できない状況と言えます。

 

(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

中期経営計画では、「3つの全体戦略」に従った具体的な「重点施策」を確実に遂行してまいります。

CASEといわれる自動車の大きな技術革新が進む中、当社グループは特に地球環境への配慮と次世代電気自動車へのシフトを視野に入れ、自動車分野では製品の軽量化によるCO2削減に取り組むとともに自動車以外の住設分野などの製品群を拡大することで、新たな価値と多様性を兼ね備えた持続可能な企業集団をめざしてまいります。

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(5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

中期経営計画では、Target 25(経営数値目標)として、「連結経営目標」を次のとおり設定しており、2023年から2025年をポストコロナ成長期と位置付けております。

なお、中期経営計画の連結経営目標につきましては、当社グループの業績動向および立案時からの為替変動などを踏まえ、2023年11月10日に修正しております。

 

・連結経営目標

単位:百万円

2025年12月期目標

売上高

75,000以上

営業利益

9,500以上

営業利益率

12.7%以上

※1USD=140円、1EUR=150円を想定しております。

 

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方および取り組みは、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。

 

(1)サステナビリティ全般

①ガバナンスおよびリスク管理

 当社グループでは、「サステナビリティ経営」を推進し、企業価値の向上を図ることを経営上の重要課題として捉えております。

※「サステナビリティ経営」・・・「環境・社会・経済」という3つの観点すべてにおいて、持続可能な状態を実現する経営

 なお、「サステナビリティ経営」を推進するために、「サステナビリティ推進室」を設け、同室を事務局とする「サステナビリティ委員会」を設置しております。

 「サステナビリティ委員会」は、代表取締役社長を委員長とする8名の取締役・執行役員で構成され、常勤監査役もオブザーバーとして参加しており、主な役割として、下記を担っております。

・サステナビリティ戦略の策定と実行

・取締役会から指示された事項の推進およびサステナビリティに関する事項の取締役会への報告

・外部とのコミュニケーション

 

 当社は、経営目標を大きく妨げると予測されるグループ全体のリスクおよび機会の管理については、常勤の取締役・執行役員を委員とする「経営会議」で行っております。

 また、当社および子会社は、品質・環境・安全等のリスク管理については、各委員会により専門的な立場からモニタリングを含めて実行するほか、情報セキュリティに係るリスクは、優先順位の高いリスクと位置付け、「情報セキュリティ委員会」により、情報漏洩や情報システムが正常に機能しないことによるリスクに対し事業継続を確保する体制構築を図っております。さらに、当社各部門および子会社は、所轄業務に関する規定類の整備、教育の実施、リスクの洗い出し、継続的な改善を通じてリスク管理に取り組んでおります。

 なお、「サステナビリティ委員会」と取締役会・経営会議・各専門委員会との関係は次のとおりであります。なおサステナビリティ委員会と各専門委員会との関係(「指示」および「報告」)は、各方針の策定やステークホルダーからの要求への対応などサステナビリティへの取り組みに関する事項に限定しています。

 

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(2)気候変動に関する戦略ならびに指標および目標

 2021年の国連気候変動枠組条約締約国会議 (COP26) において「気温上昇を1・5度に抑える努力を追求する」と合意されたとおり、気候変動対策は私たち人類にとって喫緊の課題となっています。当社グループは、脱炭素社会に貢献する事業の推進を重要課題の一つとして捉え、持続可能な社会の実現に向け、事業活動のあらゆる局面での環境負荷低減を目指した環境経営を推進しています。

 特に、気候変動に関連する課題は、「環境管理委員会」と「サステナビリティ委員会」の重要な課題として議論され、その結果については、取締役会への報告がなされております。

①戦略

 当社グループの事業にとって重要と考えられるリスクと機会、想定リスク(当社グループの事業に影響を与えると思われる要因)、気候変動が中長期で当社事業へもたらす事業活動への影響を以下の通り想定しております。

当社はこれらのリスクが発生する可能性や影響度を加味しながら、リスクの回避や発生時の影響を最小限にするための対策とともに、戦略に反映し対応すべく、取り組む方針であります。

区分

種類

想定される内容

事業活動への影響

移行

リスク

法規制

温室効果ガス(GHG) 排出に関する法規制の強化

EUでは国境炭素税(CBAM)の導入、日本では温対税に代わる新たな税制の導入が検討されており、税負担の増加によって製造コストが増加するリスクがあります。

市場

顧客・消費者ニーズの変化

顧客の調達方針変更 (低炭素製品の要求やライフサイクルアセスメントへの対応要求)などによって、売上・利益が減少するリスクがあります。

評判

情報開示要求の増加

気候変動対策やGHG排出量などの情報開示不足、また外部評価機関の評価が低下することで、ステークホルダーの信頼を失ったり企業価値を毀損したりするリスクがあります。

物理

リスク

急性的

激甚災害の増加

当社やサプライチェーンが激甚災害に見舞われると、生産が停止したり生産設備が損傷したりしてしまい、製品の生産や供給が滞るリスクがあります。

慢性的

異常気象・平均気温の上昇

気温上昇に伴って労働環境が悪化すると、熱中症対策など労働環境改善のコストが増加するリスクがあります。

機会

設備

労働環境を改善する設備への需要

省人化・自動化設備へのニーズが高まり、当社の工程改善だけではなく、当社設備の外販にも繋がります。

製品

GHG排出量が少ない製品への需要

GHG排出量を抑えた工法・材料への切り換えを進めることで、競合他社との差別化が図れます。

 

②指標と目標

 当社は、2022年にSBTi(Science Based Targets initiative)に対し、2年以内に科学的根拠に基づいたGHG排出量の中期削減目標(1.5℃水準)を設定すること、また2050年までに当社グループのGHG排出量を実質ゼロにすることを約束しました。2024年1月に上記約束に基づいた申請書類をSBTiへ提出し、現在は審査を待っている状況です。

単位:tCO2eq

 

提出会社と国内連結子会社

当社グループ全体

 

2021年

2022年

2023年

2021年

2022年

2023年

Scope1

2,070

2,340

2,490

4,300

5,250

算定中

Scope2

7,260

5,810

5,150

26,350

24,270

算定中

Scope1+2

9,330

8,160

7,640

30,650

29,540

算定中

Scope3

164,300

193,660

198,960

331,050

364,460

算定中

Scope1:事業者自らの活動(燃料の燃焼やフロンの漏洩など)によるGHGの直接排出

Scope2:他社から供給された電気や蒸気などの使用に伴うGHGの間接排出

Scope3:Scope1・2以外のGHGの間接排出(事業者の活動に関連する他社からの排出)

※算定結果は1の位を四捨五入した値になっています。またScope2はマーケット基準で算定しています。また、2023年度における当社グループ全体のScope1・2・3GHG排出量は、2024年6月頃に算定が完了する予定です。

※当社は国内連結子会社の製品のほぼ全てを購入し、当社から顧客へ販売しています。当社単独のGHG排出量では実態とはかけ離れたものになってしまいますので、国内連結子会社と合わせたGHG排出量を開示しています。

 

③社外からの評価

 CDP(旧Carbon Disclosure Project)は、企業や都市などが自らの環境への影響や対策について情報を公開し、気候変動や水リスクなどの環境問題に対する透明性と行動を促進する非営利団体です。当社グループは、2023年度のCDP評価において、気候変動分野はB、水資源保護分野はA-の評価を獲得しました。

 

(3)人的資本に関する戦略および指標と目標

①人材育成方針

 ニチリングループは、"心が触れ合うモノ造り 信頼と喜びの行動で 21世紀に貢献する" という経営理念のもと、人的資源を「大きな技術革新が進む中で、新たな価値と多様性を兼ね備えた成長戦略を推進していくうえで最大の経営資源」と捉え、ニチリングループ企業行動憲章に示した行動を実践できる人材を育成します。性別や国籍などの違いにとらわれることなく、従業員の多様性・人格・個性および自主性を尊重しながら、従業員個々にとって有効かつ適切な方法で育成します。

 これらの人材育成施策により、「世界情勢の激しい変化に速く(SPEEDY)  気付き(SENSE)、戦略的に(STRATEGICALLY)  誠実に(SINCERITY)  乗り越える(SURVIVE)ことができる人材、そして皆様を満足(SATISFY)と光り輝く笑顔(SPARKLING SMILE)を与え、サステナブル(SUSTAINABLE)に、且つ、時代を超えて継承(SUCCESSION)する」を行動指針として取り組みます。

(i)教育と研修(提出会社の状況)

 リーダーシップを発揮し、戦略、組織および人材をマネジメントできる人財の育成、グローバル対応力の強化を目的として各種の研修およびセミナーを実施しています。

 当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、当社グループに属する会社においては、各社独自での取組みは行っているが、グループ全社で統一された基準での実施やデータ管理は行われていないため、次の指標に関する実績は、当社グループにおける主要な事業を営む提出会社のものを記載しております。

2023年度の主な教育実績

研修名

受講実績

異文化・多様性理解セミナー

役員、管理職(出向者含む)107名受講

英語基礎力養成講座

6名受講

英語スピーキング力養成講座

3名受講

若手社員の仕事力向上研修

若手社員31名受講

社内英会話研修

15名受講

ハラスメント防止研修(管理職対象)

77名受講

ハラスメント防止研修(非管理職、非正規社員対象)

461名受講

TOEIC IPテスト

67名受検

海外安全セミナー

役員、管理職(出向者含む)100名受講

マネジメント力、専門知識向上のための通信教育

286科目受講

 

2024年度の主な教育計画と目標

研修名

目標値

多様性受容セミナー

受講対象者の受講率100%

アセスメント研修

受講対象者の受講率100%

人権研修

受講対象者の受講率100%

間接部門の業務改善研修

受講対象者の受講率100%

TOEIC IPテスト

昨年実績以上の受検者

社内英会話研修

昨年実績以上の受講者

英語基礎力養成講座

昨年実績以上の受講者

英語スピーキング力養成講座

昨年実績以上の受講者

マネジメント力、専門知識向上のための通信教育

昨年実績以上の科目受講

 

一人当たりの教育費(正社員)

2022年実績

2023年実績

77,595円

91,850円

 

②社内環境整備方針(提出会社の状況)

 大きく変化する環境の中で、会社が継続的に成長、発展していくためには、従業員の人権が尊重され、健康で生き生きと安心して働くことができる職場環境の実現が重要になります。そのために当社は、ニチリングループ人権方針およびニチリン健康経営宣言のもとで、「心と身体の健康」を育み、実現する職場環境作りを目指します。

1)ハラスメントを防止する取組み

人種、民族、性別、宗教、信条、国籍、出生地、年齢、障がいの有無、性的指向、性自認等を理由とする一切の差別を行いません。ハラスメント防止を宣言し、精神的な嫌がらせ、差別的発言などのハラスメントのない従業員が互いに尊重され、活気ある職場環境を作ります。ハラスメント防止に関する取り組みの周知および研修等を通じて、ハラスメント防止意識の浸透を図ります。

2)多様な価値観、人権を尊重する取組み

多様な価値観が互いに理解・尊重され、従業員一人ひとりの特性を生かして、チャレンジできる組織風土を作ります。増加する外国籍社員の価値観理解と尊重のために、異文化理解の研修を行い、多様な価値観への理解と尊重を促進します。

3)心と身体の健康増進への取組み

職場における良好なコミュニケーションを確保し、従業員一人ひとりの心と身体の健康保持・増進に取り組みます。

また、健康経営の推進体制および諸施策の充実を図り、健康経営優良法人の認定を維持します。

4)過重労働を防止する取組み

労働時間を適切に管理し、過重労働の発生を防止する仕組み作りに取り組みます。労働時間については、法定上限時間を下回るよう労使協定するとともに、過重労働が発生しないよう労使のチェック体制を厳格にします。

5)働き方の多様化実現に向けた取組み

従業員の多様な生き方を尊重し、場所や時間にとらわれない多様な働き方が可能な環境作りに取り組みます。育児・介護とキャリアの両立を支援、促進するため、育児や介護が必要な従業員の把握と相談窓口の設置を行うとともに、サポート施策の充実を図ります。

 

(i)多様な価値観、人権の尊重、働き方の多様化を実現する指標(提出会社の状況)

指標

目標値

2022年実績

2023年実績

女性雇用比率

20.0%

18.0%

18.0%

外国人雇用比率(注)

15.0%

19.8%

17.0%

フレックス勤務実施人数

118名

131名

在宅勤務実施人数

27名

26名

(注)当社が指定する主要部門における比率

 

 

(4)健康経営の取組み

 従業員が成長を感じながら、生き生きと能力を発揮できる会社であるためには従業員が「健康」であることが前提として、2019年に「ニチリン健康経営宣言」を制定し、従業員の心と身体の健康作り の取り組みを強化しています。

 同宣言の実現に向けて、労使メンバーからなる「心と身体の健康推進委員会」を組織し、従業員のメンタル(心)およびフィジカル(身体)の総合的な健康増進を推進しています。当社の健康経営への取り組みが認められ、経済産業省・日本健康会議が主催する「健康経営優良法人認定制度」において、2019年から5年連続で「健康経営優良法人(大規模法人部門)」に認定されました。また、2019年と2021年には「健康経営優良法人2019(ホワイト500)」「健康経営優良法人2021(ホワイト500)」に認定されました。今後も従業員が安心して、生き生きと働ける職場づくりに注力していきます。

 

(i) 心と身体の健康増進の指標(提出会社の状況)

指標

目標値

2022年実績

2023年実績

健康経営優良法人

認定

認定

認定

ストレスチェック受検率

100%

100%

100%

定期健康診断受診率

100%

100%

100%

喫煙率

15%以下

28.2%

26.5%

ストレスチェック集団分析における総合健康リスク

100以下

96

98

(注)1.特に当社で重視する指標

2.喫煙率は定期健康診断時における正社員の全年齢での数値

3.目標値との乖離が大きい喫煙率については、2024年度から就業時間中の禁煙、禁煙サポート、非喫煙者へのインセンティブの取り組みを実施しています。

4.総合健康リスクとは現状の職場のストレス状態が労働者の健康にどの程度影響を与えるかを判断するための指標で、全国平均を100として、この数値が高いほど労働者の健康リスクが高い状態であることを示しています。

 

 

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載しました事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしも事業展開上のリスク要因に該当しない事項につきましても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資家に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避および発生した場合の対応に務める方針であります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末(2023年12月31日)現在、入手可能な情報に基づき、当社グループが判断したものであります。

リスク分類

リスク項目

リスク内容

事業環境

自動車産業への依存度

 当社グループの事業は、自動車産業への依存度が90%以上であり、特定の自動車メーカーの系列に属さないものの、自動車業界の動向、顧客企業の業績ならびに顧客の調達方針変更、また、自動車技術の革新等に伴う既存部品の変化などにより、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、新製品の開発、新規事業の発掘、自動車以外の住設分野などの製品群を拡大する等の取り組みを進めております。

 

海外事業展開

 当社グループの生産および販売活動は、日本以外に海外9か国にわたっています。これら海外市場への事業進出には、以下のようなリスクが内在しており、当該事象が当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

・予期しない法律または規制の変更による投資機会の逸失、製造・販売の中止、コスト負担の増加等

・不利な政治的または経済的要因の発生

・戦争、テロ、疫病などによる社会的混乱に伴う材料調達、生産、販売および輸送の遅延や中止

 

各国の法令・各種規制

 当社グループは、事業活動を行っている各国において、投資、貿易、為替管理、独占禁止、環境保護等の各種関係法令の適用を受けております。当社グループは、こうした法令および規制を遵守し、公正な企業活動に努めておりますが、万一法令・規制違反を理由とする訴訟や法的手続きにおいて、当社グループにとって不利な結果が生じた場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

原材料価格の変動

 当社グループは、製品製造にあたり合成ゴム、補強糸、金属およびゴム部品等の材料を購入しており、これらの価格は原油や金属などの国際相場により大きく変動することがあり、購入価格に影響を受けます。当社グループにおいては、生産改善や経費削減などの原価低減に取り組んでおりますが、原材料価格の著しい変動は、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、対応可能な購入価格の上昇に対しては、コスト低減や販売価格への転嫁等により業績への影響を最小限に留め、原材料を安定かつ継続的に購入するよう努めております。

 

 

リスク分類

リスク項目

リスク内容

事業環境

 

 

 

 

 

 

 

部品・原材料の調達

 当社グループが製造において使用する一部の部品・原材料については、品質、価格、納期などから特定の仕入先に依存しているものがあります。効率的かつ低コストで供給を受け続けられるかどうかは、当社グループがコントロールできないものも含めて、多くの要因に影響されますが、仕入先の生産体制、技術・研究開発力や経営状態によっては、当社グループの生産に影響を及ぼす可能性があります。また、国際的な物流問題等により、部品・原材料が入手困難になる可能性もあります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、調達に関する情報収集や対応策の検討、より競争力のある仕入先の開拓を実施してまいります。

 

競争の激化

 当社グループが関連する事業分野において競争が激化し、他社による競争力のある新製品・新サービスの提供、大幅値下げ等の積極的な販売活動の展開、低価格品への需要シフト等が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

為替相場の変動

 当社グループは、日本、北米、中国、アジア、欧州の各事業拠点において生産と販売を行っており、海外取引のウエイトは高まっております。各地域における売上、費用、資産を含む現地通貨建ての項目は、連結財務諸表においては円換算されております。これらの項目は、現地通貨における価値が変わらなくても、換算時の為替レートの変動の影響を受け、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。全てのリスクをヘッジすることはできませんが、当社グループでは、為替予約等により為替相場の変動リスクを最小限に留めるよう努めております。

 

事故・自然災害等

 火災などの重大事故、地震など大規模な自然災害や人的災害、感染症の拡大等が万一発生した場合は、当社グループはもとより発生地域によっては、顧客または仕入先の生産設備等の被害やサプライチェーンの混乱等による生産への影響が予想されます。当社グループは、こうした事態に対処するため、その被害を最小限にくい止めるための体制の整備に努めておりますが、災害の規模により当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、大規模地震等の発生に備え、耐震補強工事を継続的に進めております。また、大規模地震や感染症の拡大等に見舞われた際の事業の継続または早期再開を目的に、「事業継続計画書(地震)」や「事業継続計画書(感染症)」を制定しております。

 

人材の確保

 当社グループの将来的な成長には事業遂行に必要な人材を採用し、確保し続ける必要があります。今後、優秀な人材の確保・育成が中長期的に計画どおり進まなかった場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 なお、全体戦略の1つとして、グローバル人材の確保と育成を掲げ、リスクの低減に取り組んでおります。

 

資産の減損

 当社グループは、事業環境が大幅に悪化するなどの場合は、減損損失が発生し、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

リスク分類

リスク項目

リスク内容

事業運営

 

製品の欠陥

 当社グループでは、製品の品質は事業を維持、発展させるためのもっとも重要なものの1つであると考え、世界基準や取引先の厳しい品質管理基準を遵守するため各種の施策や対策を実施し、製品品質の維持・向上に最大限の注意を払い製造販売しております。しかしながら、自動車の不具合の原因が当社グループの供給した製品の欠陥にある場合、リコール等の処置がなされることがあります。当社グループにおいては、製品の品質確保に万全を期してはおりますが、このような事態が発生した場合、契約上も、法律上もリコール等の処置にかかわる費用を負担しなければならないことがあります。リコール等による多額の費用の発生や顧客満足度の低下は当社グループの評価を下げると共に、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、開発、生産、品質保証部門が一体となり、品質に関する課題を共有、議論し、早期に最善な方法で解決する活動を行っております。

 

知的財産権

 当社グループは、当社グループ製品による第三者の重要な知的財産権の侵害を防止するとともに、第三者により当社の知的財産権を侵害されないよう他社製品の継続的な調査を行っておりますが、当社グループのような企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難であります。このような事態が発生した場合、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

情報システム障害による影響

 当社グループのほぼ全ての業務は情報システムに依存しており、トラブル発生の場合には、販売・生産などの業務への影響が予想されます。当社グループでは、トラブル回避のため、セキュリティを高めるなどシステムやデータ保護に努めておりますが、災害などの外的要因やウイルスなどにより情報システム障害が発生した場合、その規模によっては、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループは当該リスクを軽減するため、クラウドサービスへの移行やSOCサービス(Security Operation Center)ならびにMDRサービス(Managed Detection and Response)を活用し、不正アクセスに対する監視体制の強化を図っております。

環境

気候変動

 気候変動などの環境問題への対応は、当社グループにとって重要な課題であり、気候変動に対する政策及び法規制、市場の要求を踏まえ、環境配慮型製品の開発に取り組んでおりますが、これらの規制が予測を超えて厳しくなった場合、コストの増加、販売機会損失等により、当社グループの経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動により近年増加傾向にある台風・豪雨等の異常気象、地震などの大規模自然災害等が発生した場合、当社グループの事業活動が制限され、経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループでは、事業活動に関わる各国の環境関連法規制の遵守及びサプライチェーン全体で環境保全と環境負荷低減に努めるなど、リスクの低減に取り組んでおります。

 

 

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

①経営成績の状況

 当連結会計年度(2023年1月1日~2023年12月31日)における世界経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)については、各国での入国規制の解除、感染対策の緩和により経済活動の正常化が進みました。一方、ウクライナ情勢の懸念に加え中東情勢の悪化、中国経済の停滞長期化により、地域ごとに景気はまだら模様であり、今後についても不確実性が増しています。

 

 米国においては、個人消費の回復を背景に景気は堅調に推移しました。一方、賃金上昇を中心としたインフレの高止まりとインフレ抑制のための急激な金融引き締めは、金融不安を招き景気減速の懸念となりました。引き続き米国の金利政策の動向と世界経済への影響が注視されています。

 欧州においては、ウクライナ情勢により経済活動は低調に推移しました。政府の支援策によりエネルギー価格の上昇は抑制されましたが、資源価格の高騰と記録的な賃金上昇などインフレが続きました。このような中、利上げによるインフレ抑制と景気回復の両立が求められています。

 中国においては、ゼロコロナ政策解除後の経済活動の正常化により経済回復が期待されましたが、不動産市場の悪化や欧米諸国の経済関係見直しによる先行き不透明感により景気は減速しました。現在、政府による内需喚起や金融緩和などの景気対策に注目が集まっています。

 アジアにおいては、世界経済の減速による輸出の低迷や金融引き締めにより、景気回復は鈍化しましたが、エネルギー価格や為替レートの安定化を受け緩やかなインフレへと向かい個人消費を中心に内需は堅調に推移しました。今後は、中国経済の減速による外需の低迷やインフレ再燃が景気の懸念材料となっています。

 日本経済は、新型コロナ禍からの回復により、供給制約の緩和と円安による企業業績の拡大や、インバウンド需要回復と個人消費の伸びが進み、景気は緩やかに回復しました。資源、エネルギー価格の高騰や賃上げに対しては、販売価格へ転嫁する動きが広がるなど、デフレ脱却と成長に向け物価と賃金がともに上昇する経済の好循環を目指した政策が進められました。今後は日銀による金融政策の行方が大きな焦点となっています。

 

 当社グループの主要事業分野である日本自動車業界に関する状況は、次のとおりであります。

 

 自動車の生産販売は、北米や国内においては半導体等部品の供給改善に伴う生産回復により販売は好調に推移しました。一方、中国・欧州市場では、急速なEV需要の拡大と各国政府の優遇措置によりガソリン車を主力とする日系カーメーカーの販売は低迷しました。市場シェア維持のためEV化への早期対応を進めるとともに、今後の各国の政策動向、消費者ニーズへの柔軟な対応が課題となっています。

 この結果、当連結会計年度における国内乗用車メーカー8社の国内四輪車販売台数は、前年比14.1%増の438万台、四輪車輸出台数は、前年比18.0%増の417万台となり、国内四輪車生産台数は、前年比16.1%増の857万台となりました。また、海外生産台数は、前年比3.9%増の1,722万台となりました。

 このような環境のなか、当連結会計年度の売上高は70,631百万円(前連結会計年度64,172百万円)、営業利益は9,620百万円(前連結会計年度7,678百万円)、経常利益は10,548百万円(前連結会計年度8,452百万円)となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は5,915百万円(前連結会計年度4,578百万円)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。

 

日本

半導体等部品の供給改善による国内およびアジア向けを中心とした販売回復や円安に伴う外貨建て売上高の増加により、売上高は35,159百万円(前連結会計年度32,487百万円)、営業利益は3,452百万円(前連結会計年度2,708百万円)となりました。

 

北米

北米市場は、個人消費の回復や半導体等部品の供給改善により、売上高は13,551百万円(前連結会計年度10,673百万円)となりました。また、人手不足と人件費の上昇への対応として一部生産を日本、アジアへ移管したことや物流費の改善により、営業利益は1,216百万円(前連結会計年度326百万円)となりました。

 

中国

EV需要が加速する中、現地メーカーへの販売は増加したものの、日系自動車メーカーのガソリン車販売が低迷した影響を受け、売上高は12,636百万円(前連結会計年度13,401百万円)、営業利益は1,564百万円(前連結会計年度1,840百万円)となりました。

 

アジア

半導体等部品の供給不足の緩和や北米からの生産移管も拡大傾向にあることから、売上高は22,892百万円(前連結会計年度19,952百万円)、営業利益は3,461百万円(前連結会計年度3,169百万円)となりました。

 

欧州

ウクライナ情勢には懸念があるものの、半導体等部品の供給不足の緩和により、売上高は6,318百万円(前連結会計年度4,720百万円)、営業利益は89百万円(前連結会計年度は営業損失290百万円)となりました。

 

②財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は49,074百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,482百万円増加しました。これは主に、現金及び預金2,241百万円の増加、電子記録債権559百万円増加、売掛金184百万円減少、棚卸資産379百万円増加によるものであります。固定資産は28,861百万円となり、前連結会計年度末に比べ1,914百万円増加いたしました。これは、建物及び構築物が375百万円増加、機械装置及び運搬具が524百万円増加、投資有価証券が417百万円増加したものであります。この結果、総資産は、77,936百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,396百万円増加いたしました。

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は14,130百万円となり、前連結会計年度末に比べ537百万円増加いたしました。これは主に、買掛金が346百万円増加、電子記録債務が140百万円増加、短期借入金が132百万円減少、未払法人税等が196百万円増加したことによるものであります。固定負債は5,458百万円となり、前連結会計年度末に比べ550百万円減少いたしました。これは主に長期借入金が463百万円減少、リース債務が276百万円減少、退職給付に係る負債が63百万円増加したことによるものであります。この結果、負債合計は、19,588百万円となり、前連結会計年度末に比べ12百万円減少いたしました。

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は58,347百万円となり、前連結会計年度末に比べ5,409百万円増加いたしました。これは主に、利益剰余金が4,479百万円増加し、為替換算調整勘定が1,774百万円増加したことによるものであります。

この結果、自己資本比率は66.0%(前連結会計年度末は63.7%)となりました。

 

③キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ2,010百万円増加し、当連結会計年度末は19,847百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシユ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動による資金は9,912百万円の増加(前連結会計年度は6,770百万円の増加)となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益10,744百万円(資金の増加)および、減価償却費2,667百万円(資金の増加)、投資有価証券売却益293百万円(資金の減少)、売上債権の減少30百万円(資金の増加)、仕入債務の増加240百万円(資金の増加)、法人税等の支払額3,405百万円(資金の減少)等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動による資金は3,361百万円の減少(前連結会計年度は942百万円の減少)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出3,239百万円、投資有価証券の取得による支出290百万円、投資有価証券の売却による収入417百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動による資金は5,528百万円の減少(前連結会計年度は4,205百万円の減少)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出626百万円、配当金の支払額1,435百万円、非支配株主への配当金の支払額1,710百万円等によるものであります。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

日本 (百万円)

19,867

104.7

北米 (百万円)

13,694

123.4

中国 (百万円)

11,002

88.7

アジア(百万円)

20,242

115.5

欧州 (百万円)

5,845

123.2

合計 (百万円)

70,652

109.1

 (注)金額は販売価格によっております。

 

b.受注実績

 当社グループの主要製品である自動車用ホースは、基本的には販売先からの受注による受注生産であり、必要なものを必要な時に納入する「ジャスト・イン・タイム」の定時・定量納入方式を特徴としております。

 しかし、販売先より提示を受ける納入内示と実際の納入は、時期、数量が異なるとともに確定受注から納期までは極めて短い期間であります。従って、現実的には販売先からの四半期および翌月の生産計画の内示を基に、過去の実績・当社の生産能力を勘案した見込生産的な生産形態を採っております。

 このような理由により、受注高および受注残高を算出することが困難でありますので、その記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

至 2023年12月31日)

前年同期比(%)

日本 (百万円)

19,701

104.0

北米 (百万円)

13,530

127.3

中国 (百万円)

11,406

92.1

アジア(百万円)

19,939

112.8

欧州 (百万円)

6,053

133.1

合計 (百万円)

70,631

110.1

 (注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績について、2023年は中期経営計画(Nichirin New Sustainable Development Plan)の折り返し地点として、新しい価値と多様性を兼ね備えた持続可能な成長に向け経営課題に取り組みました。

 世界経済は、新型コロナウイルス感染症による入国制限が解除され、感染対策の緩和により経済活動の正常化が進みました。一方で、政治的緊張を起因とした地政学的リスクの高まり、欧米主要中央銀行による金融引き締めの長期化、中国経済の停滞長期化などは、景気減速の懸念となりました。

 当社グループの主要事業分野である自動車業界は、年初で半導体等の供給不足が発生したものの、現在は供給網の混乱も解消し、生産・販売ともに回復傾向にあります。一方、中国・欧州市場では、急速なEV需要の拡大と各国政府の優遇措置によりガソリン車を主力とする日系カーメーカーの販売は低迷しました。

 このように外的環境要因による制約を受けながらの事業環境ではありましたが、円安進行による外貨建て売上高の増加、市場の回復、長期化していた物流費の高騰の収束などを背景として、2023年度の連結業績は過去最高を達成し、グループ全地域・全社にて黒字化しております。

 当連結会計年度の売上高は70,631百万円、営業利益は9,620百万円、経常利益は10,548百万円となりました。また、親会社株主に帰属する当期純利益は5,915百万円となりました。

 なお、営業利益につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載しております2025年12月期目標(9,500百万円以上)を達成した形となりましたが、この成績には円安進行など外部環境の影響が大きく、今後も連結経営目標の必達とあわせ、2025年以降の飛躍と将来の成長につなげるべく、邁進してまいります。

 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標および当連結会計年度の達成・進捗状況は、次のとおりであります。

(単位:百万円)

指標

2022年(実績)

2023年(計画)

2023年(実績)

2023年(計画比)

2023年(前期比)

売上高

64,172

70,000

70,631

+631

0.9%

+6,459

10.1%

営業利益

7,678

8,800

9,620

+820

9.3%

+1,942

25.3%

経常利益

8,452

10,000

10,548

+548

5.5%

+2,096

24.8%

親会社株主に帰属する当期純利益

4,578

5,500

5,915

+415

7.5%

+1,337

29.2%

(注)2023年計画は、2023年11月10日の公表値を記載しております。

 

 セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況は「(1) 経営成績等の状況の概要 ①経営成績の状況」に記載しております。

 

経営成績に重要な影響を与える要因

 当社グループの事業は、自動車産業への依存度が90%以上であり、自動車業界の動向、顧客企業の業績や調達方針の変更などにより、経営成績に重要な影響を受ける可能性があります。

 その他の要因につきましては、「第2 事業の状況」の「3事業等のリスク」に記載しております。

 

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a.キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 当連結会計年度末の現金及び預金は20,595百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,241百万円増加いたしました。これは営業活動の結果獲得した資金が9,912百万円と前連結会計年度に比べ3,141百万円増加し、投資活動の結果使用した資金が3,361百万円と前連結会計年度に比べ2,419百万円増加し、財務活動の結果使用した資金が5,528百万円と前連結会計年度に比べ1,322百万円増加したことによります。

 

 上記の他、各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載しております。

 

b.資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社グループの資本の財源及び資金の流動性については、主に営業活動によるキャッシュ・フロー、自己資金および金融機関からの借入金にて賄われております。

 当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は1,468百万円となっております。また、当連結会計年度末の現金及び現金同等物残高は19,847百万円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。

 連結財務諸表の作成においては、資産・負債および収益・費用の適正な開示を行うため、貸倒引当金、退職給付に係る負債、賞与引当金などに関する引当については、過去の実績や当該事象の状況に照らし合理的と考えられる見積りおよび判断を行い、また価値の下落した投資有価証券の評価や繰延税金資産の計上については、将来の回復可能性や回収可能性などを考慮して計上しております。但し、実際の結果は、見積り特有の不確実性のため、見積りと異なる場合があります。
 当社グループが採用しております会計方針のうち重要なものについては、「第5 経理の状況」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」および「重要な会計方針」に記載のとおりであります。

 

 

5【経営上の重要な契約等】

(1)当社が技術援助等を受けている契約

 該当事項はありません。

(2)当社が技術援助等を与えている契約

相手方の名称

国名

契約内容

契約期間

和承R&A

大韓民国

自動車用エアコンディショニングホース製造に関する技術

2022年3月5日から

2025年3月4日まで

自動車用ブレーキホース製造に関する技術

2023年12月5日から

2024年12月31日まで

2022年3月5日から

2025年3月4日まで

自動車用パワーステアリングホース製造に関する技術

2022年3月5日から

2025年3月4日まで

(注) 上記についてはロイヤルティとして純売上高の一定割合を受け取っております。

 

6【研究開発活動】

当社グループは、国内および世界市場における競争力を強化し、顧客ニーズである自動車の安全性向上や快適さを追求する製品、環境に優しい製品を開発するとともに、商品開発力で世界の顧客から期待される自動車用ホースのLeading Companyを目指しております。自動車や自動二輪車のEV化が加速していく中で、商品群の変化に関する情報を先取りし、顧客満足度向上にも注力しております。

家電、住宅分野などでは、節水タイプ等のモデルに適した新製品の開発にも取り組んでおります。

主要製品であります自動車用ホース分野に関して、エアコン関連では、海外顧客向け内面樹脂付きエアコンホース曲管仕様の受注が拡大しており生産対応中ですが、新たな仕様での開発も進めています。

液圧ブレーキホースでは、二輪用主力商品のSLIMシリーズの生産量が増加してきているため、日本だけではなくベトナムでの生産も拡大しております。ブレーキパイプと口金具を一体化させた新仕様も順調に増産しております。

また、新たな大手二輪メーカー向けにテフロンサスホースを開発し、量産スタートしました。

今後、多品種にわたり樹脂化の傾向が増加すると予測されることから、SDGsにも貢献出来る材料選定にも着手しております。

当連結会計年度の研究開発費の総額は1,248百万円(前連結会計年度1,287百万円)であり、日本で研究開発活動を行っております。