第2【事業の状況】

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

当社グループは、新経営理念「光を究め、感動と安心を創造し、心豊かな社会の実現に貢献します。」のもと、あらゆるステークホルダーとの良好な関係を築き、持続的な成長と企業価値の向上を目指してまいります。

(2)目標とする経営指標

2026年12月期を最終年度とする中期経営計画「Value Creation26」を掲げ、経済価値だけでなく、社会価値・非財務価値も高め、企業価値の最大化を図ることで株主・投資家の皆さまのご期待に応えるとともに、当社の持続的な成長とサステナブルな社会の実現を目指しています。その目標とする経営指標は以下のとおりです。

①売上高        830億円

②営業利益      153億円 (営業利益率18.4%)

③EBITDA率   22%以上

④ROE       14%以上

⑤株主還元        総還元性向60%程度

(3)中長期的な会社の経営戦略、経営環境及び優先的に対処すべき課題

当社を取り巻く経営環境は、地政学リスクの高まりやインフレの長期化懸念等により依然として不確実性は高い状況です。加えて、サプライチェーンの安定性、デジタル化、脱炭素等の多様化・複雑化する社会・産業・個人のニーズに対して、先見性をもち、変化に迅速かつ柔軟に対応し、企業として様々な価値を創出・提供していくことが重要と考えています。

これらを実現するため、「Value Creation26」では、「事業戦略」「財務戦略」「ESG/サステナビリティ戦略」の3つを基本戦略とし、実行することにより「持続可能な事業基盤」を構築し、「質の高い飛躍、企業価値最大化」を実現していきます。

<事業戦略>

①事業ポートフォリオ最適化の深化

②新規事業の育成・創出の加速

<財務戦略>

①効率的かつ安定性を確保した経営の構築

②株主還元政策の拡充

<ESG/サステナビリティ戦略>

①コーポレート・ガバナンス体制の変革

②経営インフラ/人的資本拡充

③カーボンニュートラル・環境負荷低減

<対処すべき課題>

①既存事業のグローバル展開を加速させ、マーケティング力・商品企画力・営業力を強化し、米州/欧州市場の挽回を最優先に新興国市場の需要の取り込み、収益性の向上を図り、事業基盤を強化する。

②市場毎の顧客ニーズに応じた新製品をタイムリーに提供できるように、関係部門が連携し、全社一丸(チームタムロン)で開発体制を強化する。

③当社のコア技術である光学技術を中心とし、要素技術開発と新たな技術領域での研究開発を、技術革新で創造していく。

④DX推進会議を全社的に展開、ITを活用した業務改革を推進し、全社的に生産性向上を図る。

⑤地政学リスクへ対応するため、ベトナム新工場を含む世界3極生産体制・サプライチェーンを強化し、工場の自動化・省力化・省人化を推進する。

⑥新規事業創出ガイドライン・新規事業創出フロー、戦略投資枠を活用し、製品化に向けたマーケティングを全社的に実施し、新規事業の育成と創出を実現する。

⑦コーポレート・ガバナンスを強化するため、全社的に教育を実施し、リスクマネジメント委員会、情報マネジメント委員会、コンプライアンス委員会の効率的な運用をしていく。

⑧「環境ビジョン2050」に基づき、心豊かな社会を実現するため、持続可能な社会づくりに貢献していく。

⑨ダイバーシティやワークライフバランスの向上、健康経営の推進に取り組み、社員が創造性を発揮できる「働きがいのある会社」を目指す。

これらにより、写真関連事業では「人々に感動を、心を豊かに」をテーマに、中核事業としての高収益体質を向上させ安定的な収益確保を目指します。監視&FA関連事業では「安心・安全な社会づくりに」をテーマに、成長事業への再転換、営業利益率10%以上の確保を目指します。モビリティ&ヘルスケア、その他事業では「安全な暮らしと健康を」をテーマに、車載事業、医療事業の更なる成長を図り、新規事業の創出を加速します。

(4)その他、会社の経営上重要な事項

該当事項はありません。

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)ガバナンス・戦略

<サステナビリティ全般>

当社は、ESG/サステナビリティ戦略として、環境面では環境ビジョン2050で掲げる脱炭素社会、資源循環社会、自然共存生社会の実現を推進すると同時に進化させていきます。CO2削減はScope1、Scope2での着実な削減に加え、自社の排出量だけではなくScope3も含めた削減へ、資源循環ではサーキュラーエコノミーへと進化させていきます。社会面では企業は「人」との観点から、人的資本経営を推進していきます。DE&Iの推進、人的資本投資の拡充、健康経営の推進、エンゲージメント活動の拡充等を図り「働きがいのある会社」への取り組みを強化します。人権デューデリジェンス体制を充実することにより実効性の高いものにしていきます。ガバナンス面では監督機能強化、意思決定の迅速化を図るため、監査等委員会設置会社へ移行し、取締役会及びコーポレート・ガバナンス体制全般の更なる実効性向上を図っていきます。

これらのESG/サステナビリティ戦略の推進機能として、2023年より、CSR 委員会、コンプライアンス委員会に加え、リスクマネジメント委員会、情報マネジメント委員会を新設し、サステナビリティを巡る諸課題への対応に向けた体制を強化しております。

<気候変動>

当社は、気候変動を重要な経営課題の一つとして認識しており、気候変動に関する方針や重要事項は CSR 委員会で審議・決定しております。また、重要事項は取締役会に報告し、取締役会の監督が適切に働くよう体制を整えています。CSR委員会では「環境ビジョン2050」における目標の進捗確認を行っています。

<人的資本経営>

タムロンのありたい姿の実現、経営戦略の実現に不可欠なものは、経営戦略と連動した人材戦略であり、そのために個人・組織の活性化、個人・組織が最大限に能力を発揮できる制度・職場環境の整備を重点的に加速させていきます。事業構造の変化やデジタル化の進展に伴う様々な経営環境の変化に対応していくため、全社員の知識・スキルの底上げ、新規事業を含む注力分野におけるキージョブ・キースキルの獲得・強化、事業環境等に応じた人材の適正配置を柔軟に行っていきます。タムロンの人材戦略は2つの要素「個人・組織の活性化」「職場環境の整備」から成り立っており、各要素について、経営戦略を踏まえ当社が重要と位置付ける人材戦略テーマに落とし込み、各々の目標設定・施策の企画・実行へとつなげることで着実に戦略実現を目指しています。

①人材の育成に関する方針

 経営戦略と連動した人材ポートフォリオの実現、事業構造の変化やデジタル化の進展に伴う様々な経営環境の変化に柔軟に対応するために、リスキリングを含めた人材育成・適正配置を推進していきます。経営戦略・事業戦略実現に向けて組織として不足しているスキル・専門性を特定し、社員のリスキル・学び直しを進め、OFF-JT等により新たな知識・スキルを社内に取り込み・継承していくことを強化していきます。

② 社内環境整備に関する方針

多様な人材が活躍・定着するためには社員の心身の健康を含め職場環境の整備が重要であり、育児・介護をはじめ、副業・兼業、学び直し、趣味の充実等、社員のワークライフバランスの実現に向けた柔軟な働き方を支援していきます。

 

(2)リスク管理

<サステナビリティ全般>

当社グループは、短期・中期・長期にわたるリスクを防止又は計画的に軽減する等の対策を実施するリスクマネジメントを通じて、企業の安定した成長に資することを目的として「リスクマネジメント規程」を制定し、リスクマネジメント推進のための基本事項・方針の決定、審議を行う「リスクマネジメント委員会」、その下部組織である「リスクマネジメント検討委員会」を設置しております。毎年、タムロングループ全体を対象範囲として気候変動や人権を含むリスクの抽出、影響度と発生可能性の観点からのリスク評価、対応策の策定・モニタリング等を行っております。また、企業経営に重大な影響が想定されるリスクは重点対策テーマとして特定し、対応策を検討・実行しております。進捗状況はリスクマネジメント委員会並びにリスクマネジメント検討委員会にて定期モニタリングを通じて確認がされ、必要に応じて対応策等を見直すこととしております。BCPの維持管理については毎年重点対策テーマの一つとして位置づけ、継続的改善に努めております。

 

(3)指標及び目標

 <気候変動>

当社は、気候変動に対する指標を、当社における温室効果ガス排出量の98%を占める CO2排出量と定め、目標管理を行っています。「環境ビジョン2050」では、2050年までに自社の事業活動におけるCO2 排出量ゼロを目指し、2030年までに30%削減する目標を設定しています(2015年比)。また、間接排出量(以下Scope3)の算出を継続して行っており、今後はScope3に対する目標設定を視野に入れ、削減を検討していきます。

<人的資本経営>

人的資本経営に関する指標及び目標は以下のとおりに設定しております。

指標

目標

実績

管理職に占める女性労働者の割合

2026年 12%以上

7.97%

男性育児休業取得率

2026年 80%以上

80.0%

キャリア採用比率

2026年 60%以上

45.7%

従業員一人あたり教育訓練費用

2026年 30千円以上

14千円

精密検査受診率

2026年 90%以上

50.0%

 

 

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

(1)デジタルカメラ業界の市場環境におけるリスク
 スマートフォンカメラの性能向上と写真撮影の手軽さにより、スマートフォン市場が全世界的に拡大していること等により、デジタルカメラ市場は縮小傾向が続いており、それに伴い当社の主要製品である交換レンズ市場も縮小傾向が続いています。今後もスマートフォンカメラとの比較等において、デジタルカメラが優位性を訴求できない場合、市場縮小が進み、結果として、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、ミラーレスカメラへとシフトする市場環境を考慮し、ミラーレスカメラ用の交換レンズの新製品投入を積極的に進めております。

(2)需要に合わせた生産・販売ができないことによるリスク
 製品供給が実際の需要を超過する場合、過剰在庫となり、それにより値下げや資金効率の低下を引き起こし、収益の減少につながる可能性があります。一方で、実際の製品需要が当社の供給を超過する場合、全ての注文に対応ができないことで、結果として売上の機会損失をもたらし、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、全社横断による在庫状況、見通しに関する会議を定期的に開催し、適正な在庫管理に努めております。

(3)自然災害などによるリスク
 大地震・火災・洪水等の自然災害の発生により、当社グループの開発・製造拠点並びに調達先等に壊滅的な損害が生じた場合、操業が中断し、生産や出荷に遅延が生じるおそれがあります。これにより、売上高が減少し、事業の復旧に多大な費用が生じた場合、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、国内外における事業継続計画(BCP)による対応とその継続的改善を行っております。

 

(4)気候変動に関するリスク
 気候変動は国・地域を超えて世界に影響を与える問題であり、グローバルに活動する当社グループにとって重要な課題であると認識し、対策を実施しておりますが、対応の不足や遅れにより以下の移行リスクと物理的リスクが顕在化する可能性があります。
 (移行リスク)
 炭素税負担と再生可能エネルギー購入による費用増加や、脱炭素社会への想定外の急速な移行に対応できず、企業ブランドが棄損され、当社グループの企業価値の低下を招く可能性があります。
 (物理的リスク)
 異常気象による原材料の高騰や異常気象による罹災への対処が遅れ工場操業停止やサプライチェーンの寸断による製品サービス供給停止が起こることで、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。

 当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、2050年までのCO₂排出量ゼロ等を掲げた「環境ビジョン2050」を策定し、気候変動対策に取り組んでおります。

(5)写真関連事業への依存へのリスク
 当社グループは、写真関連事業の売上高構成比が約74%(2023年12月期)を占めており、ミラーレスカメラやデジタル一眼レフカメラ等のレンズ交換式カメラ市場の変動が、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、監視カメラや車載カメラ等の産業向けでの事業拡大、医療等の新規分野への事業展開を進めております。

(6)特定顧客への依存リスク
 当社グループは、ソニーグループ各社に対する売上高が連結売上高の約20%(2023年12月期)を占めております。従って同社グループの戦略・方針の変更及び取引関係等に変更が生じた場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、その他顧客とのパートナーシップ強化、新規顧客開拓を進めております。

(7)特定の仕入先への依存リスク
 当社グループは、多数の外部の取引先から原材料、部品等を調達しておりますが、特に硝子材料につきましては、限られた取引先に依存しております。これら原材料、部品等が、何らかの理由により当社グループが計画していた数量や価格で入手できず、予定していた数量の生産ができない場合等には、得意先への納品責任を果たせなくなる可能性があり、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、複数購買や代替調達先候補の把握、設計変更等による代替措置の早期実施等を図っております。

(8)カメラとのアンマッチングによる不具合発生リスク
 当社デジタルカメラ用交換レンズは十分な品質保証検査を実施し、出荷を行っていますが、各カメラメーカーの新製品モデルの内蔵する規格の変更等によりカメラの一部機能が動作しない場合があります。その場合、購入を見送る顧客が増えることで、売上の機会損失をもたらし、当社グループの業績の変動要因となる可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、品質保証検査の更なる充実、出荷済み製品に対してはファームアップ等の書き換えを無償サービスで行う等の対応をしております。

(9)新規事業についてのリスク
 当社グループは、新規事業の育成・拡大を図っていく方針ですが、価格競争の激化、急速な技術革新、市場ニーズの急激な変化等により新規事業の縮小や撤退を決断した場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、社内リソースの柔軟なシフト、社外リソースの効率的活用を行っております。

(10)技術革新等による影響リスク
 当社グループの事業分野においては、新しい光学技術が急速に発展していますが、技術革新を継続的に進め、製品に適用することは、当社の成長のために不可欠です。そのため、研究開発に対する多大な努力が必要となりますが、当社グループの先端技術の開発又は製品への適用が予定どおり進展しなかった場合は当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、中長期的な技術ロードマップに基づく技術開発、オープンイノベーションの推進等を図っております。

(11)業務提携及び企業買収に関連するリスク
 当社グループの成長のための施策として、業務提携を始めとした様々な形態で、他社との関係を構築しております。また事業拡大を目的として企業買収も検討しております。しかし、景気動向の悪化や、対象会社もしくはパートナーの業績不振により、期待していた事業拡大を実現できない可能性があります。また、有力な提携先との提携が解消になった場合、事業計画に支障をきたし、投資に対する回収が遅れる可能性が生じることや、回収可能性が低下し、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、業務提携等の実施前における戦略や事業計画の整合性や妥当性に加え、投資内容や潜在リスク等、様々な視点での検証を行い、実施後も定期的な評価による進捗管理と早期課題解決に努めております。

(12)製品の欠陥リスク
 当社グループは、高度な品質保証体制を構築しておりますが、万一、大規模な製造物責任につながるような製品の欠陥が発生した場合には、多額の費用の発生あるいは当社グループの信用低下等を招き、それらが当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、品質保証体制の継続的な強化、品質不良発生時の対策と流出防止の徹底を図っております。

(13)優秀な人材の確保と主要な知識の流出リスク
 当社グループは、レンズ加工での特殊技能などの高度な技術及び能力を有する社員によって支えられていますが、これらの主要な人材が退職し、その知識・ノウハウが社外に流出する可能性があります。また、有能な人材を採用・育成し、実力ある従業員の雇用の維持を図ることが当社の将来の経営成績に影響してくると考えておりますが、有能な人材を採用・育成できず、また有能な人材の流出が生じた場合、開発や生産の遅れなどをもたらし、主要な知識・ノウハウが流出するリスクが発生します。これらの結果、当社グループの経営成績及び財政状態に悪影響を及ぼす恐れがあります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、職種別採用制度、役割等級制度、社内公募制度等の人事制度の充実、ワークライフバランスやダイバーシティの推進による働きやすい職場環境の整備、健康経営の推進等を図っております。

(14)情報の流出リスク
 当社グループは、技術情報等の重要な情報や取引先の企業情報並びに多くの顧客又はその他関係者の個人情報を保有しております。これらの情報へのセキュリティレベルの向上を図るとともに、情報取り扱いに関する社内規程の整備、従業員教育等を実施しております。しかしながら、情報への安全対策に努めているものの、ハッカーやコンピュータウイルスによる攻撃やインフラの障害、天災などによって、個人情報や技術情報の漏洩などが発生する可能性があります。このような事態が起きた場合、当社グループの企業価値を毀損する可能性があり、また企業情報及び個人情報が流出した場合には、当社グループの信頼を毀損するだけでなく、流出の影響を受けた取引先、顧客、従業員又はその他関係者から損害賠償を請求される可能性があります。そのような場合、対象企業や個人への補償、再発防止措置の実施等が必要になり、そのために多大なコストを要し、当社グループの収益と財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、情報セキュリティ体制の構築、情報セキュリティポリシーに基づく情報管理を行っております。

(15)為替レートの変動リスク
 当社グループは、当社と海外子会社間の取引を外貨建てで行っているほか、国内外の取引先との取引も一部外貨建てで行っているため、為替レートの変動が当社グループの製品の海外市場における競争力、輸出採算、業績等に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、為替予約等によるリスクヘッジを実施し対処しております。

(16)知的財産に関連するリスク
 当社グループが、第三者との間に知的財産を巡って紛争が生じた場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、知的財産権に関する権利の確保やトラブル回避のため、調査・交渉・申請等の必要な対応を行っております。

(17)法規制に関連するリスク
 当社グループの事業は、国内外の各種法令、行政による許認可や規制等に関連しており、意図せざる理由により法令違反又は訴訟提起が生じた場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、コンプライアンス委員会における方針の決定と推進等により法令遵守に努めております。

(18)減損損失リスク
 当社グループの資産の時価が著しく下落した場合や、事業の収益性が悪化した場合には、減損会計の適用により減損損失が発生し、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、有形・無形固定資産について、減損の兆候判定と減損損失の認識及び測定を行うための手続きを整備・運用するとともに、投資時の投資回収性等の検証やその後の定期的なモニタリングを通じた早期兆候把握に努めております。

(19)その他のリスク
 上記以外でも、当社グループは企業活動の多くを日本国外で行っており、それら事業展開している国や地域で、予期しない不利な政治又は経済要因の発生、不利な影響を及ぼす税制又は税率の変更、テロ・戦争・自然災害・伝染病・その他の要因による社会的混乱等の事象が発生した場合には、当社グループの業績に大きく影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性を最小化するため、グローバルな政治・社会・経済情勢を定常的にモニタリングし、企業活動への影響の把握・分析に努めております。

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

①経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済を概観しますと、ロシアのウクライナ侵攻の長期化、イスラエルとパレスチナとの武力衝突、中国の不動産開発投資問題、エネルギー問題、世界的な高インフレ、各国の利上げ政策等、不透明感が続く状況となりました。

米国は政策金利の引き上げが企業の経済活動を下押し、住宅投資は低迷、設備投資が減速傾向を見せているなか、良好な雇用情勢やサービス業におけるコロナ禍からのリバウンド消費を背景に個人消費は堅調に推移してプラス成長を維持しました。欧州はインフレ圧力からの継続的な金融引き締めを背景に住宅や設備投資は低迷、物価上昇に伴い個人消費が減少し、景気の低迷が継続しました。中国経済はゼロコロナ政策の解除を機に年初には急回復をみせたものの、コロナ後に反発した商品、外食や観光といったサービス業におけるリバウンド需要は一巡し、厳しい雇用情勢、所得環境を背景に個人消費は伸び悩みました。また、不動産開発投資の大幅減により投資は全体として伸び悩み、景気に減速感が見受けられました。日本はコロナ禍から経済活動の正常化が進み、インバウンド需要はコロナ禍前の水準まで回復し、個人消費は宿泊、飲食等のサービス消費に回復がみられました。また雇用情勢、所得環境は緩やかな改善傾向にあり、設備投資も高水準の企業収益を背景に増加基調となりました。

当社グループ関連市場では、レンズ交換式カメラ市場は前期に比べて数量ベース、金額ベースともに微増となりました。内訳としては、一眼レフカメラは数量ベース、金額ベースとも4割弱減と大幅減となりましたが、ミラーレスカメラは、数量ベースで約2割増、金額ベースでは約1割増となりました。交換レンズは前期に比べて数量ベースでほぼ横ばい、金額ベースでは高付加価値品への需要の継続により微増となりました。

平均為替レートにつきましては、前期比で米ドルは約9円、ユーロは約14円の円安となりました。

このような状況の下、当社グループの当連結会計年度における経営成績は、客先での在庫調整の影響もあり、監視&FA事業は伸び悩んだものの、主力の写真関連事業および車載事業を主とするモビリティ&ヘルスケア、その他事業の販売が好調に推移し、円安進行によるプラス影響もあったことから、売上高は714億26百万円(前期比12.6%増)となりました。

利益面につきましては、売上総利益率の高い写真関連事業および車載事業が牽引するモビリティ&ヘルスケア、その他事業の販売が好調に推移したことや、原価低減に注力した効果等による売上総利益率の向上により、営業利益は136億7百万円(前期比23.3%増)、経常利益は139億72百万円(前期比21.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は108億12百万円(前期比29.5%増)となりました。

営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益の各利益において過去最高を大幅に更新することができました。

セグメントの業績は次のとおりであります。

(写真関連事業)

自社ブランド製品は、ソニーEマウント用が2021年発売の大口径望遠ズームレンズ 35-150mm F/2-2.8 VXD (A058)や、大口径標準ズームレンズ28-75mm F/2.8 VXD G2 (A063)等を中心に好調を維持したことに加え、2022年下期に投入した富士フイルム用2機種目となる標準ズームレンズ17-70mmF/2.8 VC RXD (B070)や超望遠ズームレンズ 50-400mm F/4.5-6.3 VC VXD (A067)が2023年では年間を通して売上に寄与しました。2023年発売機種では、5月には富士フイルム用4機種目となる大口径超広角ズームレンズ11-20mm F/2.8 RXD (B060)、9月にはニコンZマウント用大口径望遠ズームレンズ35-150mm F/2-2.8 VXD (A058)、さらに10月にはニコンZマウント用超望遠ズームレンズ150-500mm F/5-6.7 VC VXD (A057)とマウント展開を加速させ、市場状況を反映したミラーレスカメラ用交換レンズのラインナップ拡充より、2桁の増収となりました。OEMにおいても、市場の堅調な推移に伴い、カメラメーカーへの交換レンズの供給が好調に推移し、増収となりました。

このような結果、写真関連事業の売上高は530億32百万円(前期比16.5%増)、営業利益は140億8百万円(前期比25.5%増)となりました。

(監視&FA関連事業)

監視やFA/マシンビジョン用レンズは、FA分野では好調を維持しましたが、監視分野ではコロナ禍終息や半導体不足緩和等に伴うカメラメーカーの在庫適正化の動きを受け、当社からのレンズ供給が伸び悩みました。中国においては下期以降、徐々に回復をみせたものの、ウィズコロナへの政策転換後の市場回復が弱く、開発の後ろ倒し等もあり低調に推移し減収となりました。また、カメラモジュールも同様に伸び悩み、TV会議用レンズは2022年における急回復の反動減で、今期は大幅減収となりました。

このような結果、監視&FA関連事業の売上高は97億86百万円(前期比12.9%減)、営業利益は7億16百万円(前期比48.8%減)となりました。

 

(モビリティ&ヘルスケア、その他事業)

車載カメラ用レンズは、半導体不足や顧客の在庫適正化等の影響もありましたが、急速に進む安全運転支援システム(ADAS)の普及による旺盛な需要を背景にセンシング用途を中心に好調を維持し、2桁の増収となりました。一方で、コンパクトデジタルカメラ用やビデオカメラ用レンズは市場の縮小や既存製品の伸び悩み等の影響を受けました。注力分野の医療用レンズでは、当社の強みである極小径や薄膜技術で低侵襲を可能にする製品ラインナップの増加により大幅増収となりました。また、今後の事業拡大を見据えて分光・蛍光技術を活かした製品開発を継続し、新規案件の獲得や既存顧客との関係強化を図りました。

このような結果、モビリティ&ヘルスケア、その他事業の売上高は86億7百万円(前期比28.7%増)、営業利益は14億92百万円(前期比40.6%増)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末に比べ26億92百万円増加し、326億40百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローは次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

税金等調整前当期純利益が139億72百万円、減価償却費が29億61百万円、売上債権の増加額が29億92百万円となったこと等により、営業活動によるキャッシュ・フローは100億27百万円の収入(前連結会計年度は92億32百万円の収入)となりました。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

有形固定資産の取得による支出が46億55百万円となったこと等により、投資活動によるキャッシュ・フローは51億45百万円の支出(前連結会計年度は38億65百万円の支出)となりました。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

配当金の支払額が26億40百万円、長期借入金の返済による支出が1億8百万円であったこと等により、財務活動によるキャッシュ・フローは27億78百万円の支出(前連結会計年度は20億44百万円の支出)となりました。

 

③生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

写真関連事業

54,598

118.0

監視&FA関連事業

9,658

84.6

モビリティ&ヘルスケア、その他事業

8,811

116.9

73,068

112.1

 (注)金額は販売価格によっております。

b.受注実績

 当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

写真関連事業

監視&FA関連事業

モビリティ&ヘルスケア、その他事業

829

103.1

55

60.3

829

103.1

55

60.3

c.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

写真関連事業

53,032

116.5

監視&FA関連事業

9,786

87.1

モビリティ&ヘルスケア、その他事業

8,607

128.7

71,426

112.6

 (注)主な相手先への販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

当連結会計年度

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

Sony Electronics Operations (China) Limited

7,905

12.5

8,005

11.2

深圳市今日捷成実業有限公司

5,860

9.2

7,717

10.8

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 ①重要な会計方針及び見積り
 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載されているとおりであります。
 当社グループの連結財務諸表の作成にあたり、連結会計年度末における資産・負債及び収益・費用の計上等に関連しての種々の見積りを行っております。この見積りは、過去の実績やその時点で入手可能な情報に基づいて行っておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があり、連結財務諸表に重要な影響を及ぼすことがあります。

 ②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

1)財政状態の分析

(流動資産)

 当連結会計年度末における流動資産の残高は、637億97百万円となり、前連結会計年度末に比べ84億91百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が26億92百万円増加し、受取手形及び売掛金が37億41百万円増加したことによるものであります。

(固定資産)

 当連結会計年度末における固定資産の残高は、232億64百万円となり、前連結会計年度末に比べ30億14百万円増加いたしました。これは主に、建設仮勘定が17億89百万円増加したことによるものであります。

(流動負債)

 当連結会計年度末における流動負債の残高は、142億26百万円となり、前連結会計年度末に比べ15億40百万円増加いたしました。これは主に、買掛金が15億2百万円増加したことによるものであります。

(固定負債)

当連結会計年度末における固定負債の残高は、21億2百万円となり、前連結会計年度末に比べ1億92百万円減少いたしました。これは主に、退職給付に係る負債が3億38百万円減少したことによるものであります。

(純資産)
 当連結会計年度末における純資産の残高は707億32百万円となり、前連結会計年度末に比べ101億58百万円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を108億12百万円計上したことによるものであります。

2)経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、主に写真関連事業が増収となったことにより、前連結会計年度に比べ79億80百万円増加し、714億26百万円となりました。

(売上総利益)

 当連結会計年度の売上総利益は、過去最高の44%にまで売上総利益率が改善したことにより、前連結会計年度に比べ40億33百万円増加し、316億57百万円となりました。

(営業利益)

 当連結会計年度の営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ25億68百万円増加し、136億7百万円となりました。

(営業外収益及び費用)

 当連結会計年度の営業外収益は、その他を2億70百万円計上したこと等により、前連結会計年度に比べ64百万円減少し、7億28百万円となりました。

 当連結会計年度の営業外費用は、為替差損を40百万円計上したこと等により、前連結会計年度に比べ28百万円増加し、3億63百万円となりました。

(税金等調整前当期純利益)

 当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、経常利益が増加したことにより、前連結会計年度に比べ24億75百万円増加し、139億72百万円となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は、税金等調整前当期純利益が増加したことにより、前連結会計年度に比べ24億61百万円増加し、108億12百万円となりました。

セグメントごとの経営成績等の状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要①経営成績の状況」に記載のとおりであります。

3)経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、2023年12月期を最終年度とする中期経営計画「Vision23」として、売上高は2020年12月期比で約25%増の610億円を目指し、営業利益はここ10年間で最も高い2019年12月期を上回り、再びコロナ影響前の高収益体質へとV字回復を図る70億円,ROE9%以上を目指し、2021年からスタートいたしました。

 1年目の2021年12月期において、利益面は中期経営計画を達成し、コロナ影響前の高収益体質へと早期にV字回復を果たすことができました。そして、2年目の2022年12月期では、高収益体質も維持しつつ、成長/育成分野の監視&FA関連事業や、モビリティ&ヘルスケア、その他事業での売上高拡大を図ったことにより、売上高、営業利益、ROEの全ての面で中期経営計画を1年前倒しで達成し、営業利益は初の100億円超え、過去最高益を15期ぶりに大幅更新するまでに至りました。

 そして、最終年度の2023年12月期においては、中期経営計画比で売上高は約20%増、営業利益は約倍増、ROEは16%以上へと更なる成長を遂げることができました。この中期経営計画期間中は円安が急激に進行し、為替のプラス影響があったものの、為替影響を除いても大幅増益となり、計画を大きく上回る期待以上の高収益化を図ることができました。

4)経営成績に重要な影響を与える要因について
 「2〔事業等のリスク〕」に記載のとおりであります。

5)資本の財源及び資金の流動性についての分析
 当社グループは、営業活動により安定したキャッシュ・フローを得ておりますが、必要な営業活動や設備投資に備えるために、自己資金の他に金融機関からの借入により資金調達を実施しております。借入金のうち、短期借入金は主に営業取引に係る資金調達、長期借入金は主に設備投資に係る資金調達であり短期借入金、長期借入金とも安定的な資金調達ができております。また、今後の設備投資については、量産金型、レンズ生産設備等への設備投資を実施する予定ですがこれら投資資金については、自己資金及び金融機関からの借入により調達する予定であります。

6)キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

5【経営上の重要な契約等】

 該当事項はありません。

 

6【研究開発活動】

当社グループの研究開発活動は、光学開発センター及びR&D技術センターが研究開発、光学開発技術、レンズ加工技術、コーティング/フィルタ技術、アクチュエータ技術、樹脂成形/金型技術といった基幹となる各要素技術の開発を行い、製品開発については各事業本部の技術部門が行っております。

当連結会計年度における研究開発費は6,169百万円となりました。各セグメント別の研究開発活動の成果は以下のとおりであります。

(写真関連事業)

写真関連事業では、自社ブランド製品において、ソニーEマウント用の大口径望遠ズームレンズ70-180mm F/2.8 VC VXD G2 (A065)や広角ズームレンズ17-50mm F/4 VXD (A068)、富士フイルムXマウント用の大口径超広角ズームレンズ11-20mm F/2.8 RXD (B060)、ニコンZマウント用の大口径望遠ズームレンズ35-150mm F/2-2.8 VXD (A058)や超望遠ズームレンズ150-500mm F/5-6.7 VC VXD (A057)を製品化し、ミラーレスカメラ用交換レンズのラインナップを強化するとともにマウント展開を加速いたしました。このような結果、当事業に係る研究開発費は4,348百万円となりました。

(監視&FA関連事業)

監視&FA関連事業では、都市監視も含めた旺盛なセキュリティ需要、製造業の高度化・効率化推進による底堅いFA/マシンビジョン等の需要等を見据え、様々な用途での高画素等のニーズに対応すべく、各種レンズの開発を行い、カメラモジュールの開発も進めました。このような結果、当事業に係る研究開発費は1,231百万円となりました。

(モビリティ&ヘルスケア、その他事業)

モビリティ&ヘルスケア、その他事業では、高い市場成長が今後も見込まれる車載用レンズにおいて、特に需要が見込まれるセンシング用途のレンズ開発に注力すると共に、今後の事業拡大を目指す医療分野での要素技術や製品開発を進めました。このような結果、当事業に係る研究開発費は588百万円となりました。