第一部 【企業情報】

 

第1 【企業の概況】

 

1 【主要な経営指標等の推移】

(1) 連結経営指標等

 

回次

第11期

第12期

第13期

第14期

第15期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(百万円)

4,765

6,830

10,863

14,185

20,532

経常利益

(百万円)

178

422

743

1,526

3,755

親会社株主に帰属する
当期純利益又は親会社株主に帰属する当期純損失(△)

(百万円)

381

455

563

1,017

2,566

包括利益

(百万円)

381

455

557

1,313

2,287

純資産額

(百万円)

3,359

9,717

14,049

15,170

17,637

総資産額

(百万円)

5,400

15,519

20,208

21,810

25,430

1株当たり純資産額

(円)

118.88

314.53

438.43

469.79

542.49

1株当たり当期純利益又は
1株当たり当期純損失(△)

(円)

14.87

15.69

17.79

31.77

79.53

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

14.48

17.15

31.16

78.55

自己資本比率

(%)

62.0

62.6

69.1

69.1

69.0

自己資本利益率

(%)

7.0

4.7

7.0

15.8

株価収益率

(倍)

289.36

133.31

123.69

55.32

営業活動による
キャッシュ・フロー

(百万円)

513

805

1,038

2,013

3,871

投資活動による
キャッシュ・フロー

(百万円)

767

283

3,294

751

1,662

財務活動による
キャッシュ・フロー

(百万円)

3,075

9,052

2,220

927

1,218

現金及び現金同等物
の期末残高

(百万円)

4,477

14,052

14,017

14,351

15,351

従業員数

(名)

379

494

719

895

1,105

(外、平均臨時雇用者数)

(29)

(45)

(75)

(108)

(114)

 

(注) 1.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第14期の期首から適用しており、第14期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

2. 第14期より、金額の表示単位を千円単位から百万円単位に変更しております。なお、比較を容易にするため、第13期以前についても、百万円単位で表示しております。

3.2019年12月期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

4.2019年12月期の自己資本利益率については、親会社株主に帰属する当期純損失であるため記載しておりません。

5.2019年12月期の株価収益率については、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

6.従業員数は就業人数であり、平均臨時雇用者数は臨時従業員の年間平均雇用人数を( )内に外数で記載しております。

 

(2) 提出会社の経営指標等

 

回次

第11期

第12期

第13期

第14期

第15期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(百万円)

4,685

6,717

9,032

11,562

16,358

経常利益

(百万円)

186

433

770

1,675

3,939

当期純利益又は当期純損失(△)

(百万円)

381

467

653

1,200

2,741

資本金

(百万円)

1,011

3,968

6,695

40

47

発行済株式総数

(株)

28,145,100

30,889,100

32,462,500

32,706,800

32,738,600

 普通株式

28,145,100

30,889,100

32,462,500

32,706,800

32,738,600

純資産額

(百万円)

3,359

9,729

14,070

15,391

18,050

総資産額

(百万円)

5,382

15,430

18,826

20,485

23,901

1株当たり純資産額

(円)

118.88

314.91

441.63

479.42

557.89

1株当たり配当額

(1株当たり中間配当額)

(円)

(―)

(―)

(―)

(―)

(―)

1株当たり当期純利益又は1株当たり当期純損失(△)

(円)

14.87

16.09

20.64

37.48

84.95

潜在株式調整後
1株当たり当期純利益

(円)

14.85

19.90

36.75

83.90

自己資本比率

(%)

62.2

63.0

74.7

75.1

75.5

自己資本利益率

(%)

7.2

5.5

8.1

16.4

株価収益率

(倍)

282.17

114.90

104.86

51.80

配当性向

(%)

従業員数
(外、平均臨時雇用者数)

(名)

365

474

589

699

822

28

32

29

36

35

株主総利回り

(比較指標:TOPIX)

(%)

350.31

183.03

115.74

303.24

109.90

339.51

137.47

最高株価

(円)

1,350

7,370

6,030

4,690

6,040

最低株価

(円)

1,181

1,210

2,232

1,726

3,420

 

(注) 1.1株当たり配当額及び配当性向については、当社は配当を実施していないため記載しておりません。

2.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第14期の期首から適用しており、第14期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

3.第14期より、金額の表示単位を千円単位から百万円単位に変更しております。なお、比較を容易にするため、第13期以前についても、百万円単位で表示しております。

4.第11期の潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため、記載しておりません。

5.第11期の自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため、記載しておりません。

6.第11期の株価収益率については、1株当たり当期純損失のため記載しておりません。

7.従業員数は就業人数であり、平均臨時雇用者数は臨時従業員の年間平均雇用人数を( )内に外数で記載しております。

8.第11期の株主総利回り及び比較指標は、2019年12月12日に東京証券取引所マザーズに上場したため、記載しておりません。第12期以降の株主総利回り及び比較指標は、2019年12月期末を基準として算定しております。

9.最高株価及び最低株価は、2022年4月3日以前は東京証券取引所マザーズにおけるものであり、2022年4月4日から2022年11月27日の間は東京証券取引所グロース市場、2022年11月28日以降は東京証券取引所プライム市場におけるものです。

 

2 【沿革】

 

年月

概要

2009年6月

東京都港区に株式会社メドレー(資本金17百万円)を設立

2009年11月

人材採用システム「ジョブメドレー」提供開始(人材プラットフォーム事業)

2012年11月

本社を東京都渋谷区に移転

2015年2月

医療情報提供サービス「MEDLEY」提供開始(医療プラットフォーム事業)

2015年3月

本社を東京都港区に移転

2015年4月

介護施設検索サイト「介護のほんね」を運営するプラチナファクトリー株式会社を完全子会社化

介護施設検索サイト「介護のほんね」運営開始(新規開発サービス)

2015年7月

完全子会社のプラチナファクトリー株式会社を吸収合併

2016年2月

オンライン診療システム「CLINICSオンライン診療」提供開始(医療プラットフォーム事業)

2016年6月

「日経メディカル ワークス」開始(日経BP社と共同運営、人材プラットフォーム事業)

2018年4月

クラウド型電子カルテ「CLINICSカルテ」提供開始(医療プラットフォーム事業)

2019年4月

医療情報標準規格であるFHIRを活用し、厚生労働省からの受託事業である「電子処方箋の本格運用に向けた実証事業」を完了

2019年6月

創業10周年の節目に合わせ当社グループのミッションを「医療ヘルスケア分野の課題を解決する」から「医療ヘルスケアの未来をつくる」に変更

2019年12月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

2020年9月

調剤薬局窓口支援システム「Pharms」提供開始(医療プラットフォーム事業)

2021年1月

中小病院向けに電子カルテ(MALLシリーズ)を開発・提供する株式会社パシフィックメディカル(旧社名: 株式会社パシフィックシステム)(高知県)を子会社化

中小病院向け電子カルテ(MALLシリーズ)提供開始(医療プラットフォーム事業)

2021年2月

介護事業所向けオンライン研修サービス「メディパスアカデミー介護」等を運営する株式会社メディパス(東京都)を完全子会社化

介護事業所向けオンライン研修事業「メディパスアカデミー介護」提供開始(人材プラットフォーム事業)

2021年4月

オンライン診療の適切な普及の加速、ユーザー向け新サービスの展開を目的として、株式会社NTTドコモと資本業務提携契約を締結し、協業を開始(医療プラットフォーム事業)

2021年4月

調剤薬局窓口支援システム「Pharms」に、電子お薬手帳、服薬フォローアップ機能を追加。かかりつけ薬局に求められる各種業務がワンストップで実施できる「かかりつけ薬局支援システム」へリニューアル(医療プラットフォーム事業)

2021年10月

株式会社NTTドコモと共同で株式会社ミナカラの発行済み株式100%を取得(株式会社NTTドコモ85.1%、当社14.9%)(医療プラットフォーム事業)

2022年1月

新しい患者体験の提供と業務効率の向上をめざした歯科向けのクラウド業務支援システム「Dentis」の提供を開始

2022年4月

東京証券取引所の市場区分の見直しによりマザーズからグロース市場へ移行

2022年5月

介護事業所向けのオンライン動画研修サービス「メディパスアカデミー介護」を「ジョブメドレーアカデミー」に名称変更

2022年9月

オンライン診療・服薬指導アプリ「CLINICS」に、株式会社NTTドコモが提供する電子お薬手帳サービス「おくすり手帳Link」を統合

2022年9月

医療ヘルスケア領域の特定の職種に特化した匿名コミュニティ「シゴトーク」を運営する株式会社Tenxia(東京都)を完全子会社化

2022年11月

東京証券取引所プライム市場に上場市場を変更

2023年2月

完全子会社の株式会社Tenxiaを吸収合併

2023年9月

医療機関・介護施設向けのファクタリング事業等を展開する株式会社GCMを完全子会社化

2024年2月

株式会社NTTドコモとの業務提携内容を見直し

 

 

 

3 【事業の内容】

当社グループは、当社及び重要な子会社である株式会社パシフィックメディカル及び株式会社メディパスを含む連結子会社6社で構成されております。

 

当社グループは「医療ヘルスケアの未来をつくる」というミッションのもと、医療ヘルスケア領域において各種インターネットサービスを開発・提供しております。医療ヘルスケア領域においては、医療技術は日々進歩しているものの、法規制の存在やテクノロジー活用の遅れ等の要因により、万人が技術の恩恵を受けられる状況に至るまでには多くの課題が存在しております。そのような中で、医療ヘルスケア領域における様々なステークホルダーと連携しながらインターネットテクノロジーによって課題をひとつひとつ解決していくことが、結果的に患者と医療従事者の双方にとって「納得できる医療」の実現につながると考え、当社グループは社会の実需に対応した課題解決型のサービスを提供しております。

 

現在は、医療ヘルスケア領域における人材の不足や地域偏在という課題を解決する人材プラットフォーム事業として「ジョブメドレー」及び「ジョブメドレーアカデミー」を、医療機関の業務効率の改善や患者の医療アクセスの向上等を実現するための医療プラットフォーム事業として「CLINICS」、「Pharms」、「MEDLEY」、「Dentis」及び「MALL」を展開しております。また介護施設を探す方のための介護施設検索サイト「介護のほんね」等の新規開発サービスにも、中長期的な成長の準備として取り組んでおります。当社グループの詳細な事業の内容は以下のとおりです。

 

(1) 人材プラットフォーム事業

高齢化の進む日本において、医療ヘルスケア領域でのサービス提供の担い手不足は深刻な課題です。実際に、医療ヘルスケア領域における有効求人倍率は全産業平均と比べて数倍高い水準で推移しています。しかしながら、病院・診療所等の医療機関や介護・保育等の事業所には中小規模の事業所も多く、採用にリソースを割くことが難しい場合や高単価の人材紹介サービスを利用することが難しい場合もあり、多くの事業所が採用に課題を抱えています。このような課題を解決するべく、当社グループは人材プラットフォーム事業として、医療ヘルスケア領域の事業所向けに成果報酬型の人材採用システム「ジョブメドレー」及びオンライン研修システム「ジョブメドレーアカデミー」を運営・提供しております。

ジョブメドレー及びジョブメドレーアカデミーは、以下のような特長を備えております。

 

① ジョブメドレー

 (ア)採用成功時の成果報酬を低単価に設定

ジョブメドレーは、求人事業所に求職者が実際に入職した時点で費用が発生する成果報酬型のビジネスモデルを採用しています。医療ヘルスケア領域での人材採用に一般的に利用されている人材紹介サービスを手がける競合他社も、採用時の成果報酬型という点では同一ですが、人材紹介サービスではまず紹介事業者が求職者と電話又は対面によりヒアリングをした上で様々な求人事業所を紹介し、事業所との面接設定や、内定時の採用条件調整といった業務を行うことが一般的です。これに対してジョブメドレーでは、求職者側が自ら絞り込んだ条件のもと求人情報を閲覧し、関心のある求人事業所に直接応募した後に面接に向けたコミュニケーションを取ることができるよう設計しており、人材紹介サービス企業が行う上述のような業務を、求人事業所と求職者がジョブメドレーのサイト上で完結できるようになっております。

このように人的コストを省き、インターネット上で採用を完結させられるという低コスト構造を実現することで、ジョブメドレーでは採用成功時の成果報酬を低単価に抑えることができています。医療ヘルスケア領域の人材採用における一般的なビジネスモデルである人材紹介サービスでは、入職者の年収の20~35%(注1)を採用時の成果報酬として設定していることが多い中、ジョブメドレーにおける採用時の成果報酬は、入職者の年収対比で2~13%(注2)という水準となっております。

 

 (注)1. 一般的な人材紹介サービスの成果報酬額については、ジョブメドレーが取り扱う50以上の職種の中で、看護師、保育士、理学療法士、歯科医師、介護職等の職種についての人材紹介業の報酬として多くみられる一般的な額を記載したものです(上記とは異なる報酬額設定方法を採用する人材紹介サービスも存在します。)。

    2. 当社の成果報酬の年収比は厚生労働省の「平成30年賃金構造基本統計調査」より算出しています。

 

 (イ)医療ヘルスケア領域における幅広い職種の従事者会員を有する

日本における約1,020万人の医療ヘルスケア領域の労働従事者のうち、約22%が医師・看護師・薬剤師となっており、従来からこれらの職種については多くの人材紹介サービスを手がける企業が市場に参入し、競合企業が多く存在しています。一方で、医師・看護師・薬剤師以外の残り約78%の人数を占める職種(注3)については大規模な企業による参入が多くなかったため、ジョブメドレーではこれら職種も含めての幅広く求人を取扱うことにより、多数の顧客事業所を獲得することに成功しております。また、その結果としてジョブメドレーでは、医療ヘルスケア領域において幅広い職種の従事者が登録する会員基盤を構築できており、サービス提供開始以降の累計登録会員数は2023年12月末時点で195万人に達しております。

 (注)3. 医療事務、保育士、歯科助手・歯科衛生士、介護職・ヘルパー、看護助手、管理栄養士等。これらの職種においては人材紹介サービスを提供する競合企業があまり存在せず、ハローワークや掲載課金型のタウン誌等で求人が行われることが多くなっております。

 

 (ウ)ダイレクトリクルーティングの機能

医療ヘルスケア領域における人材の地域偏在が課題となっている昨今、当社グループでは、全国的な採用活動を行うことが難しい中小規模の事業所が人材を確保するためには、事業者自らが積極的に「求める人材を探し出し、魅力を伝え、採用する」という採用手法(ダイレクトリクルーティング)が有効であると考えています。ジョブメドレーでは、顧客である事業所がその知名度や地域にかかわらず、必要な人材を採用できる手法を提供するために、求職者向けスカウトメッセージの送信機能を充実させています。この結果として、2023年12月期においてジョブメドレー上で送信されたスカウト通数は872.8万件に上っております。

上記の特長を活かし、ジョブメドレーの顧客事業所数は堅調に増加しており、現在では、医療ヘルスケア領域の事業所全体の113.9万事業所(注4)のうち約30%に相当する33.7万事業所(注5)がジョブメドレーの顧客となっております。また、これらの顧客事業所のうち約半数が掲載事業所(顧客事業所のうち、ジョブメドレーに求人案件を掲載している事業所をいう。以下同じ。)となっており、36.1万件以上(注5)の求人案件がジョブメドレー上に掲載されております。また、求職者にとってはより多くの求人情報が掲載されていることが利便性につながるため、ジョブメドレーでは顧客事業所のうち求人案件を掲載している掲載事業所を増やし、また掲載されている求人案件の数も増やすための利用促進の取り組みにも注力しております。これに加えて、サイト上での事業所インタビュー記事やバナー広告掲載等のオプションプラン提供にも取り組んでおります。

(注)4. 厚生労働省、総務省、内閣府及び一般社団法人全国訪問看護事業協会提供の各事業所数の統計数値の合算値。

5. 顧客事業所数及び求人案件数はいずれも2023年12月末日現在。顧客事業所数の内訳は医科3.6万、薬局5.6万、歯科2.3万、介護13.2万、その他9.3万。

 

② ジョブメドレーアカデミー

当社グループは、2021年2月に株式会社メディパスを株式取得により完全子会社化いたしました。同社は、医療機関及び介護事業所向けのサービスを複数展開しており、特に、オンライン研修サービス「ジョブメドレーアカデミー」(注6)では、2018年のリリース以降、介護事業所向けに多数のコンテンツを提供しており、豊富な導入実績を誇っております。2023年には、当社グループが従前から有しているジョブメドレーの顧客基盤を活用し、訪問歯科や在宅調剤領域でのサービス提供を開始しております。このように介護事業所以外の事業所にも横展開することで、医療ヘルスケア領域における人材育成を通じて人材の不足や地域偏在の課題解決にアプローチできると考えております。

ジョブメドレー及びジョブメドレーアカデミーの顧客事業所数(注7)は下表のとおりです。

 

該当四半期

顧客事業所数(万件)

2020年12月期第1四半期末

19.2

2020年12月期第2四半期末

19.8

2020年12月期第3四半期末

20.7

2020年12月期期末

21.6

2021年12月期第1四半期末

22.6

2021年12月期第2四半期末

23.6

2021年12月期第3四半期末

24.6

2021年12月期期末

25.5

2022年12月期第1四半期末

26.5

2022年12月期第2四半期末

27.3

2022年12月期第3四半期末

28.3

2022年12月期期末

29.4

2023年12月期第1四半期末

30.5

2023年12月期第2四半期末

31.7

2023年12月期第3四半期末

32.6

2023年12月期期末

33.9

 

 (注)6. 2022年5月に「メディパスアカデミー介護」を「ジョブメドレーアカデミー」に名称変更しております。

        7. 2021年12月期第2四半期末より、ジョブメドレーアカデミーも対象となっております。

 

(2) 医療プラットフォーム事業

日本の医療においては、診察・会計・処方箋交付までの待ち時間が長いこと、疾患情報へのアクセスが十分でないこと、及び疾患の治療に関わる情報を患者自身で管理することが難しいこと等、患者の通院体験における様々な課題が存在しています。このような課題に対処するため、当社グループの医療プラットフォーム事業では、患者の通院体験の向上を目指した事業を展開しています。当社グループでは、オンライン診療にまつわる規制緩和に歩みを合わせる形で、2016年2月よりオンライン診療システム「CLINICSオンライン診療」を医療機関向けに開発・提供してきました。その後、クラウド型電子カルテ「CLINICSカルテ」及びその機能拡張プロダクトである「CLINICS予約」や「CLINICS問診」等を通じて、医療機関が予約、診療、会計までを一貫して1つのシステムで管理できるようにすることで、医療機関の診療効率の改善に寄与するとともに、患者の通院体験も向上させるSaaS(注1)として、医療機関からシステム利用料を徴収するビジネスモデルでクラウド診療支援システム「CLINICS」を開発・提供しています。

また、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」という。)の改正に伴い、2020年9月より、全国的にオンライン服薬指導が可能になったことを受け、同月にかかりつけ薬局支援システム「Pharms」の提供を開始しています。「Pharms」により、調剤薬局はオンライン服薬指導の予約受付、オンライン服薬指導、処方薬の代金決済までを一括管理することができ、患者は「CLINICSオンライン診療」と組み合わせることで、診療から服薬指導まで、一気通貫でのオンライン医療体験が可能となります。

2022年1月には、新しい患者体験の提供と業務効率の向上をめざした歯科向けのクラウド業務支援システム「Dentis」の提供を開始しています。「Dentis」は、レセコンや電子カルテといった基幹システムに加えて、患者の医療体験を向上させるWEB予約、オンライン診療、キャッシュレス決済、リコールといったかかりつけ支援機能までをトータルで提供することで、患者自身の主体的な関与(患者エンゲージメント)を促し、キュア中心からケア中心の診療への変化を支援します。

さらに、患者やその家族が適切な医療情報にアクセスすることが難しく、医師との間に医療情報の非対称性が存在している、という課題に取り組むために医療情報提供サービス「MEDLEY」をメディアとして提供しており、医療プラットフォーム事業全体として、医療機関の診療業務を効率化するだけでなく、患者が医療と向き合っていくための助力となるための事業を展開しております。

 

医療プラットフォーム事業においては、上述のような事業展開方針を踏まえ、以下のような個別事業を運営しております。

 (注)1. SaaS(Software as a Service)とは、サービス提供者側で稼働しているソフトウェアをインターネット等のネットワーク経由で利用者向けに提供する方式を指します。

 

① クラウド診療支援システム「CLINICS」

CLINICSは、オンライン診療システム「CLINICSオンライン診療」、及びクラウド型電子カルテ「CLINICSカルテ」とその機能拡張プロダクトを通じて、医療機関が予約、診療、会計までを一貫して1つのシステムで管理できるようにすることで、医療機関の診療効率の改善に寄与するとともに、患者の通院体験も向上させるクラウド診療支援システムです。

CLINICSオンライン診療は、医療機関がオンライン診療を実施する際に必要な診察予約管理、ビデオチャット、会計及び薬の処方等の機能を提供するオンライン診療システムです。2015年8月に発行された厚生労働省からの通達(2015年8月10日 厚生労働省医政局長 事務連絡)で、オンライン診療の実施はへき地・離島に限られず、また特定の慢性疾患以外の一般の疾患にも利用可能であることが明らかにされたことを受け、当社グループでは2016年2月よりオンライン診療システムの提供を開始しました。2020年4月10日には、初診患者にもオンライン診療を時限的に認める事務連絡が発出され、2022年度診療報酬改定において、政府方針としてオンライン診療の更なる利用促進が推進されております。当社グループではこのような規制環境下において、学会や行政等と連携しながら、CLINICSを用いたオンライン診療の拡大に取り組んでおります。

CLINICSオンライン診療を導入している医療機関を受診する場合、患者はスマートフォンやパソコンを用いて、自宅や会社にいながらオンライン診療を受けることができます。オンライン診療の終了後、医療機関は、診察費を患者がCLINICS上に登録したクレジットカードに請求し、必要に応じて患者に医薬品や処方箋を送付します。CLINICSオンライン診療は、医療過疎地域から都市部まで、また診療所から大学病院まで幅広く様々な診療科において活用されております。CLINICSオンライン診療では、医療機関の業務フローの中にオンライン診療を取り入れるための導入支援や、豊富な活用事例に根ざした導入後の活用促進サポートに注力しております。

また、CLINICS予約は、オンライン診療だけでなく、対面診療の予約管理にも対応していることから、医療機関がオンライン診療と対面診療を負担なく組み合わせて予約管理を効率化できるシステムとなっております。

 

CLINICSカルテは、医療機関が患者と「つながる」ことをコンセプトとしたクラウド型電子カルテであり、当社グループは2018年4月より医療機関向けにシステム提供を開始しております。CLINICSカルテはCLINICSオンライン診療と連携しており、診療データや疾患情報等を医療機関がアプリ経由で患者に共有したり、患者が事前に記入した問診票をカルテ上に反映したりすることが可能になっています。従来のオンプレミス型電子カルテ(注2)では実現できなかった患者への通院サポートや、診察待ちの時間を短縮することによる診療業務の効率化等のメリットを備えた新しいコンセプトのクラウド型電子カルテとして、利用医療機関数を拡大してきております。

 

(注)2. オンプレミス型とは、システム利用拠点に用意されたサーバーにソフトウェアをインストールしてシステムを利用する形態を指し、サーバーがクラウド上に存在するクラウド型と対比される形態です。

 

② かかりつけ薬局支援システム「Pharms」

Pharmsは、オンライン服薬指導、処方箋ネット受付、キャッシュレス決済等の機能を提供し、調剤薬局における業務の効率化や「かかりつけ薬局」への転換を支援するシステムです。薬機法の改正に伴い、2020年9月より全国的にオンライン服薬指導が可能になったことを受け、同月に調剤薬局向けのサービスとして運営・提供を開始しました。

Pharmsを導入している調剤薬局を利用する場合、患者はCLINICSオンライン診療を利用する際と同様に、スマートフォンやパソコンを用いて、自宅にいながらオンライン服薬指導を受けることができます。オンライン服薬指導の終了後、調剤薬局は、患者がCLINICS上に登録したクレジットカードに調剤報酬を請求し、患者の自宅に薬剤を送付します。また、2021年4月より、従前のオンライン服薬指導の機能に加え、電子お薬手帳、服薬フォローアップ等の新機能の提供を開始し、かかりつけ薬局に求められる各種業務がワンストップで実施可能になりました。Pharmsは、デジタル活用の関心の高い調剤薬局業界において、大手・準大手チェーンを中心に導入が進んでいます。

 

③ クラウド歯科業務支援システム「Dentis」

当社グループは、2022年1月より、新しい患者体験の提供と業務効率の向上をめざした歯科向けのクラウド業務支援システム「Dentis」の提供を開始しております。レセコン、電子カルテといった基幹システムに加えて、患者の医療体験を向上させるかかりつけ支援機能までをトータルで提供することで、患者自身の主体的な関与(患者エンゲージメント)を促し、治療中心の診療から予防中心の診療への変化を支援するプロダクトとなっています。

 

医療プラットフォーム事業において、当社グループではクラウド診療支援システム「CLINICS」、かかりつけ薬局支援システム「Pharms」、及びクラウド歯科業務支援システム「Dentis」等の当社システムの利用医療機関数を重要指標に設定しています。サービス開始以降の利用医療機関数(注3)の推移は下表のとおりであり、2023年12月期期末における利用医療機関数の1.6万件は、日本の医療機関全体の約6%(注4)を占めています。

該当四半期

利用医療機関数(万件)

2020年12月期第1四半期末

0.1

2020年12月期第2四半期末

0.2

2020年12月期第3四半期末

0.4

2020年12月期期末

0.6

2021年12月期第1四半期末

0.7

2021年12月期第2四半期末

0.7

2021年12月期第3四半期末

0.8

2021年12月期期末

1.1

2022年12月期第1四半期末

1.1

2022年12月期第2四半期末

1.3

2022年12月期第3四半期末

1.4

2022年12月期期末

1.4

2023年12月期第1四半期末

1.5

2023年12月期第2四半期末

1.5

2023年12月期第3四半期末

1.6

2023年12月期期末

1.6

 

 (注)3. 利用医療機関数とは、当社システム(CLINICS、Pharms、Dentis等)の利用を開始し、解約又は中断せず利用を続けている医療機関の数であり、複数システムを利用している場合は1としてカウントしています。

   4. 全国の病院数、一般診療所数及び調剤薬局数の合計を約26万件として計算。

出典:厚生労働省「令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況」、「令和2年度衛生行政報告例の概要」

 

④ 医療情報提供サービス「MEDLEY」

当社グループは、患者やその家族に向けて疾患、処方薬及び医療機関等の医療情報を提供するメディアサービスとして、「MEDLEY」を2015年より運営・提供しています。MEDLEYは、患者やその家族が適切な医療情報を取得し、医師との間の情報の非対称性を解消することで自ら医療と向き合う力を持つことをサポートすることを目指しております。MEDLEYは、当社グループ所属の医師や約800名の外部の協力医師により、日進月歩の医療情報を最新の情報に更新し、約1,500件の病気、約3万件の医薬品、約16万件の医療機関の情報をインターネット上で無償公開しています。MEDLEYのコンテンツは、他社が提供する電子カルテサービスや携帯キャリアが運営するヘルスケア関連サービスにも、当社グループからのデータ提供を通じて導入されている他、医師が患者に病気を説明する際の補足資料としても利用されており、医療ヘルスケア領域の様々な場面で活用されています。またMEDLEYでは、既存事業で培った知見や新たに開発したアルゴリズムを活かし、一般ユーザーが入力した症状候補の組み合わせから罹患可能性の高い疾患を絞り込む「症状チェッカー」機能も提供しております。

 

 

⑤ 病院向け電子カルテ「MALL」

当社グループは、2021年1月に株式会社パシフィックメディカルを株式取得により連結子会社化いたしました。同社は、約20年間に渡り、中小病院向けに電子カルテを開発・提供しております。同社の電子カルテは、低コスト及び高機能性の双方を実現しているため、利用継続率は99%を誇り、高い顧客満足度を得ております。当社グループでは、当社グループが従前から有している顧客基盤を活用した病院向け電子カルテのシェアの拡大、及び、オンライン診療システムとの連携及び医療・介護・在宅連携を促進するグループ法人向けシステム「MINET」の提携等を進め、病院向け電子カルテの普及及び医療介護連携の強化に取り組んでおります。

 

⑥ 医療サポート

当社グループが2021年2月に連結子会社化(完全子会社化)した株式会社メディパスが展開する医療サポート事業では、高齢者施設への歯科・医科訪問診療を行う医療機関に対して、経営・運営支援、診療支援、医療事務支援、及び営業支援サービスを提供しております。また、要介護高齢者を対象に、同社のあん摩マッサージ師による医療保険適用の施術を提供しております。

 

(3) 新規開発サービス

当社グループでは、中長期的な成長に向けた新規事業の開発を継続的に行っております。

かかる新規開発サービスの1つである「介護のほんね」は、介護施設情報を掲載するWEBサービスです。介護のほんねでは、介護施設の基本情報、設備、写真、費用、施設評価等の幅広い情報をサイト上に掲載しており、介護施設への入居を検討する方やそのご家族が入居先の介護施設を検討し、入居可否の問い合わせ等を行うことをサポートしています。また、介護のほんねでは、医療機関を退院した患者が介護施設に入居するに当たって重要視することの多い、各種疾患を持った患者の医療ケア受け入れ体制についての情報を充実させていることが特長です。

また、米国において2022年11月に現地法人を設立し、市場調査及びテストマーケティングを実施しております。

他、当社グループが2023年9月に連結子会社化した株式会社GCMにおいて、診療報酬債権等のファクタリング事業を展開しております。顧客医療機関・介護施設等が社会保険診療報酬支払基金や国民健康保険団体連合会等に対して有する診療報酬債権や介護給付費債権等を買い取ることで、通常これらの債権の回収まで約2ヶ月かかる期間を短縮し、顧客の早期資金化ニーズに応えるサービスです。

 

 

[事業系統図]


 

4 【関係会社の状況】

 

名称

住所

資本金
(百万円)

主要な事業
の内容

議決権の所有(又は被所有)
割合(%)

関係内容

(連結子会社)

 

 

 

 

 

 

株式会社パシフィック

メディカル

(注) 4

高知県宿毛市

32

医療プラットフォーム事業

80.0

管理業務の業務受託

株式会社メディパス

(注) 4

東京都品川区

100

医療プラットフォーム事業

100.0

役員の兼任

 

(注) 1.「主要な事業の内容」欄には、セグメント情報に記載された名称を記載しております。

2.有価証券届出書又は有価証券報告書を提出している会社はありません。

3.上記に含まれない当社の連結子会社は、4社であります。

4.特定子会社であります。

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2023年12月31日現在

セグメントの名称

従業員数(名)

人材プラットフォーム事業

475

11

医療プラットフォーム事業

430

75

新規開発サービス

48

13

全社(共通)

152

15

合計

1,105

114

 

(注) 1.従業員数は就業人数であり、平均臨時雇用者数は臨時従業員の年間平均雇用人数(1日8時間換算)を ( )内に外数で記載しております。

2.全社(共通)として記載されている従業員数は、特定のセグメントに区分できない管理部門等に所属している者の人数であります。

3.従業員数が当連結会計年度において210人増加しておりますが、これは主に業容の拡大に伴う採用の増加及びM&A等による連結子会社の増加によるものであります。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

 

2023年12月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

822

35

31.7

2.8

5,432

 

 

 

セグメントの名称

従業員数(名)

人材プラットフォーム事業

475

11

医療プラットフォーム事業

161

8

新規開発サービス

34

1

全社(共通)

152

15

合計

822

35

 

(注) 1.従業員数は就業人数であり、平均臨時雇用者数は臨時従業員の年間平均雇用人数(1日8時間換算)を ( )内に外数で記載しております。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.全社(共通)として記載されている従業員数は、特定のセグメントに区分できない管理部門等に所属している者の人数であります。

4.従業員数が当事業年度において123人増加しておりますが、これは主に業容の拡大に伴う採用の増加によるものであります。

 

(3) 労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1、3)

補足説明

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

42.5

42.1

45.8

53.3

80.3

 

 

(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.より高い等級の女性割合が低いために発生している差異であり、同一の等級や職種での評価/報酬設定運用において男女間の差異はございません。

 

② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)(注1)

男性労働者の育児休業取得率(%)(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%)(注1)

補足説明

株式会社パシフィックメディカル

20.0

 

 

(注) 1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定による公表項目に該当しない、若しくは公表義務の対象ではないため、公表状況に応じ、公表されていない指標を「―」と表記しております。

3.上記以外の連結子会社については「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)及び「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定による公表項目に該当しない、若しくは公表義務の対象ではないため、記載を省略しております。