第一部【企業情報】

第1【企業の概況】

1【主要な経営指標等の推移】

提出会社の経営指標等

回次

第16期

第17期

第18期

第19期

第20期

決算年月

2019年12月

2020年12月

2021年12月

2022年12月

2023年12月

売上高

(千円)

447,576

480,853

712,932

630,815

682,464

経常損失(△)

(千円)

1,410,314

1,291,606

1,329,312

1,243,838

1,217,240

当期純損失(△)

(千円)

1,403,821

1,293,798

1,479,895

1,242,871

1,220,018

持分法を適用した場合の投資利益

(千円)

資本金

(千円)

6,132,216

1,387,677

1,515,929

2,097,017

2,388,422

発行済株式総数

(株)

33,283,500

39,505,200

40,781,500

48,423,500

52,640,200

純資産額

(千円)

2,621,508

3,109,968

1,893,049

1,790,746

1,157,723

総資産額

(千円)

2,808,090

3,494,554

2,339,439

2,215,470

1,751,454

1株当たり純資産額

(円)

78.10

77.99

45.55

36.70

21.66

1株当たり配当額

(円)

(うち1株当たり中間配当額)

-)

-)

-)

-)

-)

1株当たり当期純損失(△)

(円)

44.61

36.06

36.74

28.26

24.62

潜在株式調整後1株当たり当期純利益

(円)

自己資本比率

(%)

92.6

88.2

79.4

80.2

65.1

自己資本利益率

(%)

株価収益率

(倍)

配当性向

(%)

営業活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

1,537,360

1,360,143

1,131,291

1,191,009

1,069,192

投資活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

26,423

3,519

35,384

173

財務活動によるキャッシュ・フロー

(千円)

1,341,245

1,944,005

271,345

1,127,291

667,303

現金及び現金同等物の期末残高

(千円)

2,105,976

2,686,318

1,790,988

1,727,270

1,325,554

従業員数

(人)

38

42

49

49

51

(外、平均臨時雇用人員)

14

14

13

14

17

株主総利回り

(%)

107.4

98.9

103.7

94.7

71.8

(比較指標:東証グロース市場250指数)

(%)

110.5

147.3

121.6

114.2

109.7

最高株価

(円)

289

484

386

211

261

最低株価

(円)

171

144

180

135

117

(注)1.持分法を適用した場合の投資利益については、非連結子会社及び関連会社が存在しないため記載しておりません。

2.潜在株式調整後1株当たり当期純利益については、潜在株式は存在するものの、1株当たり当期純損失であるため記載しておりません。

 

3.自己資本利益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

4.株価収益率については、当期純損失を計上しているため記載しておりません。

5.最高株価及び最低株価は、2022年4月4日より東京証券取引所(グロース市場)におけるものであり、それ以前は東京証券取引所(マザーズ市場)におけるものであります。

6.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を第19期の期首から適用しており、第19期以降に係る主要な経営指標等については、当該会計基準等を適用した後の指標等となっております。

 

2【沿革】

 

年 月

事 項

2005年2月

国立研究開発法人理化学研究所(以下、「理研」)および財団法人埼玉県産業振興公社との共同研究により開発された抗体作製技術であるADLib®システム(*)の実用化を目的として、東京都文京区にて株式会社カイオム・バイオサイエンス(資本金10,000千円)を設立

2005年4月

理研とADLib®システムの実用化を目的として共同研究契約を締結し、研究活動を開始

2005年7月

理研よりADLib®システムに関する発明の第三者へのサブライセンス権付き通常実施許諾権を取得

2009年10月

東京都新宿区に本社移転

2010年8月

国立研究開発法人科学技術振興機構、理研とADLib®システムの産業財産権に係わる特許権等譲渡契約締結

2011年12月

東京証券取引所マザーズに株式を上場

2013年5月

東京都渋谷区に本社移転

2013年12月

株式会社リブテック(以下「リブテック」)の発行済株式を過半数取得することにより子会社化

2015年7月

リブテックを吸収合併

2015年10月

株式会社イーベックへの資本参画

2017年2月

株式会社Trans Chromosomicsへの出資

2017年9月

ADC Therapeutics社(本社、イパリンジェス、スイス、以下、ADCT社)とがん治療用抗体LIV-1205のADC(*)開発用途における開発、製造および販売に関するライセンス契約締結

2018年12月

がん治療用候補抗体Tb535H(現、CBA-1535)及び抗体改変技術Tribody™ (*)の譲受契約締結

2020年7月

当社初の臨床開発品がん治療用候補抗体CBA-1205の第1相臨床試験の開始

2021年1月

Shanghai Henlius Biotech社(本社、中国・上海市、以下、Henlius社)とがん治療用ヒト化抗TROP-2モノクローナル抗体LIV-2008およびLIV-2008bの開発、製造および販売に関するライセンス契約締結(2023年1月、本ライセンス契約終了)

2022年4月

東京証券取引所の市場区分の見直しにより、東京証券取引所のマザーズ市場からグロース市場へ移行

2022年6月

Tribody™の世界初の臨床試験として、当社臨床開発品がん治療用候補抗体CBA-1535の第1相臨床試験の開始

(注)用語解説については、「第2 事業の状況  4  経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」の末尾に記載しております。

 

3【事業の内容】

1.事業環境

(1)当社が研究開発を手掛ける抗体医薬品

 ヒトには、体内に侵入した細菌やウイルス等のタンパク質を異物(抗原)として認識し、その異物を攻撃、排除するために、体内で抗体というタンパク質を作る能力(抗原抗体反応)が備わっています。これは免疫と言われる身体を守る防御システムの一つです。こうして体内で作られた抗体は、特定の抗原にのみ結合する性質を持っており、正常な細胞とがん細胞を見分けたり、病気の原因となるタンパク質の機能を抑えたりすることができます。この抗体というタンパク質を医薬品として体の外から投与するものが抗体医薬品です。従来の低分子医薬品では、正常な細胞にも作用することで副作用を引き起こすこともありますが、抗体医薬品は、疾患に関連する細胞だけが持っている抗原をピンポイントで狙い撃ちするため、高い治療効果と安全性が期待されております。

 現在、世界で承認されている抗体医薬は100品目を超えており、がんや自己免疫疾患の領域では目覚ましい治療効果をもたらしたものもあります。しかしながら、膵臓がん、肺がん、アルツハイマー病、糖尿病合併症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)等、未だに治療満足度、薬剤貢献度が低い疾患が残されており、また、既存の抗体治療薬よりも優れた抗体に対するニーズも存在します。当社は、自社の技術プラットフォームを初めとする抗体・タンパク質周辺技術を最大限に活用して、そのようなアンメットニーズ(*)の高い分野に対する抗体創薬に取り組んでおります。

 

<抗原抗体反応>

0101010_001.png

 

(2)抗体医薬品市場

 抗体医薬品は、がんや自己免疫疾患等を中心に医療の現場で処方されており、近年の全世界医療用医薬品の市場においては抗体薬品を中心とするバイオ医薬品処方箋薬のシェアは3割を超え、売上高の上位100品目の半数以上を占めるまでになっております。また、抗体薬物複合体(ADC)やバイスペシフィック抗体(*)に代表される多価抗体などの次世代型抗体については、従来よりも有用性を高めた医薬品としての開発を目指して現在多くの臨床試験(*)が行われており、今後も抗体医薬品市場の一層の拡大が期待されております。(出典:Evaluate World Preview 2022)

 

2.当社のビジネスモデル

(1)経営理念

 当社は、「医療のアンメットニーズに創薬の光を」というミッションのもと、「アンメットニーズに対する抗体医薬の開発候補品を生み出すNo.1ベンチャー企業を目指す」という経営ビジョンを掲げ、アンメットニーズの高い疾患領域に対する抗体創薬と創薬支援を事業の基本として、成長性と安定性を兼備した経営を目指しております。

 

(2)ビジネスモデル

 当社は、独自の抗体作製技術(ADLib®システム)をはじめとする複数の抗体作製技術を用いて治療薬や診断薬等の抗体医薬品候補を研究開発する「創薬事業」および「創薬支援事業」を展開しております。「創薬事業」では、抗体医薬品の基礎・探索研究(*)、前臨床段階を主な事業領域として、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究を行い、医薬候補品を製薬企業等に導出(*)します。また、CBA-1205やCBA-1535のように、自社開発を進めることにより事業規模拡大の可能性が高いパイプライン(*)については初期臨床試験を実施したのちに導出を行います。また、「創薬支援事業」では、製薬企業や診断薬企業、アカデミア等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有する抗体作製技術を用いた抗体作製サービスの提供、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務の提供を行います。このように、当社は拡大する抗体医薬品市場において製薬企業等に製品やサービスの提供を行うことを主たる事業としており、これにより当社は、契約一時金、マイルストーン(*)、ロイヤルティ(*)、受託サービス料等の対価を企業等から受け取り収益を獲得します。

 なお、上記の事業は「第5 経理の状況 1財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項」に掲げるセグメントの区分と同一であります。

 

<当社の収益モデル・事業系統図>

0101010_002.png

 

<事業系統図(創薬事業)>

0101010_003.png

 

<事業系統図(創薬支援事業)>

0101010_004.png

 

(3)当社の基本戦略

 当社はADLib®システムをはじめとする複数の抗体作製技術を用いて標的抗原に対する多様な抗体を作製し、リード抗体(*)を取得することで、有効な治療法がない重篤な疾患や、薬剤による治療満足度が低い疾患を中心とした、アンメットニーズの高い疾患に対する抗体医薬の開発候補品を生み出す、No.1ベンチャー企業を目指します。

 

 

(4)当社の基本戦略を遂行するための3つの強み

医薬品候補抗体を継続的に創出するための独自の「ADLib®システム」をはじめとする複数の抗体作製技術、タンパク質調製や抗体エンジニアリングに関する技術やノウハウ等からなる技術プラットフォームを保有していること

臨床開発機能を有し、自社による創薬テーマの設定から前臨床パッケージの構築、開発戦略および薬事戦略の立案、ならびにCMC(*)開発によるCMO(*)マネジメントなど、医薬品候補の創製から初期臨床開発までを最速で実施できる体制を確立していること

専門性の高い人材が持つネットワークを通じて、当社の研究開発の推進に最適なリソースや資源を獲得できること

 

0101010_005.jpg

 

 

3.事業内容

(1)創薬事業

 創薬事業は、アンメットニーズの高い疾患領域における抗体創薬研究と開発(共同開発を含む)を行い、その研究成果物であるリード抗体等の知的財産を製薬企業等に実施許諾し、契約一時金、マイルストーンおよびロイヤルティ、並びに共同開発等に係る収入等を獲得する事業です。

 医薬品の開発には、一般的に基礎・探索研究、前臨床開発、臨床開発、申請・承認、製造・販売のプロセスがありますが、当社の創薬事業においては、基礎・探索研究段階から前臨床開発および初期臨床開発段階までの抗体医薬品開発の上流工程を主な事業領域としております。本事業においては、自社で開発候補抗体(ヒト化抗体(*)、ヒト抗体)の前臨床データパッケージまでを作成し、早期導出を図ることを基本戦略としますが、CBA-1205やCBA-1535のように特定のプログラムにおいては抗体の価値を高め、収益性の向上が期待できる自社での初期臨床開発も行ってまいります。

 また、当該事業領域におけるパイプラインは、自社の抗体作製技術等を用いた創薬研究活動や外部からの新規パイプラインの導入(*)によって、拡充を図ってまいります。

 当社が保有しているパイプラインは下記のとおりです。

 

0101010_006.jpg

 

 

 CBA-1205は、肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現している抗原DLK-1というたんぱく質に選択的に結合する遺伝子組換えヒトIgG1型モノクローナル抗体です。糖鎖改変技術によって抗体依存性細胞傷害活性(ADCC活性(*))を増強させたファースト・イン・クラス(*)抗体で、DLK-1を発現するがん細胞を移植したマウスに対して強力な抗腫瘍活性を示します。DLK-1は、幹細胞(*)や前駆細胞(*)のような未熟な細胞の増殖・分化を制御することが明らかにされていましたが、肝臓がんをはじめとする複数のがん細胞表面においてもDLK-1が発現しており、その増殖に関与していることが明らかにされています。そのためDLK-1はがん治療における新たな標的分子としての可能性が期待されています。

 CBA-1535は3つの抗原結合部位を有する多重特異性抗体で、抗原結合部位の内の2つは多くの固形がんに発現がみられるタンパク質5T4に結合し、残りの1つが免疫細胞であるT細胞(*)上のタンパク質CD3に結合する、Tribody™技術を用いて創製されたT cell engager(*)というカテゴリに入る、がん治療用候補抗体です。患者さんが元来保有している免疫を司るT細胞の働きを活性化することで、がん細胞を攻撃します。想定される適応疾患としては、悪性中皮腫、小細胞肺がんや非小細胞肺がんなどのアンメットニーズが高い領域での開発が期待されます。

 ADCT-701は、CBA-1205の前身であるLIV-1205という抗DLK-1ヒト化モノクローナル抗体(*)に細胞毒性のある化合物を結合した薬物複合体であり、がん細胞の増殖を抑制することが動物モデルを用いた試験により確認されています。

 PCDC(*)は、幅広い固形がん(肺がん、膵臓がん等)で発現が確認されているCDCP-1というタンパク質をターゲットとし、結合特性等に基づく広い有効域・安全域が期待される抗体です。がん細胞上のCDCP-1に結合した後、細胞内に取り込まれやすい性質を利用して、抗体に薬物を結合したADC用途を中心とした開発が期待されます。

 PTRY(*)は3つの分子を認識するTribody™技術を用いて創製したがん治療用候補抗体で、固形がんに発現が認められる「5T4」、免疫細胞であるT細胞上の「CD3」、免疫チェックポイント阻害に関与する「PD-L1」に結合するがん治療用の多重特異性抗体です。T cell engagerに加えて免疫チェックポイント阻害機能を加えることで従来のがん免疫療法では十分に効果が期待できなかった患者さんへの新たな治療薬となることを期待しています。また、複数の機能を一つの薬剤に持たせることで患者さんや医療現場の負担軽減、薬価抑制による医療経済への貢献にも有用な薬剤として期待されます。

 BMAA(*)はADLib®システムにより作製したヒト化抗セマフォリン3A抗体で、セマフォリン3Aを介した細胞内応答を抑制します。セマフォリン3Aは中枢神経や血管の正常な発達、がんの転移、骨の代謝等に関連していることが報告されており、これらに関連する幅広い疾患領域での適応が期待されます。

 LIV-2008およびLIV-2008bは、乳がん、大腸がん、肺がんをはじめとする多くの固形がんの細胞表面に発現している抗原(標的分子)TROP-2の、それぞれ異なる領域に結合する2種類のヒト化モノクローナル抗体で、どちらもin vivoでがんの増殖阻害活性を示します。TROP-2はがん治療の標的分子として認知されており、多種の固形がんにおいて発現が亢進していることから、治療用抗体としてのニーズが期待されます。

 PFKR(*)はFractalkine (CX3CR1) receptorの機能阻害抗体であり、自己免疫性神経疾患等の病態進行を抑制することが期待されます。

 PXLR(*)は、がん細胞により呼び寄せられる薬剤耐性環境の原因細胞である免疫抑制細胞を減少させ、薬剤耐性のがん微小環境を改善、再発抑制が期待される、がん治療用候補抗体です。

 また、当社では、自社単独または共同研究により新規のターゲットに対する複数の抗体創薬プロジェクトを推進しております。新規創薬プロジェクトの発足においては、大学・研究機関等から、従来の技術では抗体作製が困難な抗原情報を入手するなど、ターゲット(抗原)の獲得も積極的に行っております。それらの抗原に対する抗体が、疾患モデル動物などを用いた評価により、治療効果を有する事を確認した場合、当社はその発明について共同出願を行い事業化の権利を確保した上で研究活動を推進いたします。また当社の創薬力を向上するため、基礎的かつ高度な専門性を要求される分野において大学・研究機関等と共同研究を行い、当社が保有する抗体作製技術の改良や、創薬基盤技術における課題解決を図るなど技術革新にも取り組んでおります。

 

(2)創薬支援事業

 製薬企業や診断薬企業、大学等の研究機関で実施される創薬研究を支援するため、抗体などのタンパク質の発現・精製等のサービスや、当社の保有するADLib®システム等の抗体作製技術を用いた抗体作製サービス、ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務を提供することによってサービス料等の収入を獲得する事業です。

<主なサービスの内容>

サービス項目

内  容

タンパク質・抗原調製、抗体の発現精製

抗体作製に必要な組換えタンパク質(抗原)や、研究開発用途の抗体などを細胞に発現させ、精製を行います。種類に応じた発現・精製方法を選び、純度や物性の分析を行います。

安定発現細胞株作製

安定的に組換えタンパク質(抗原や抗体)を供給できるように、遺伝子組換え技術を用いて、組換えタンパク質を効率よく発現する細胞株を作製します。

ADLib®システム等による抗体作製

ADLib®システムやハイブリドーマ法(*)といった抗体作製技術を用い、創薬研究に用いるモノクローナル抗体作製を行います。当社の抗体創薬の知識・ノウハウを活かし、顧客のニーズに合わせた抗体作製プランを提案いたします。

ADLib®システムを用いた抗体の親和性向上業務

当社で培ったADLib®システムの技術・ノウハウを活かし抗体の結合力(抗体親和性)を向上させることで、より薬効の高い抗体医薬の精製が期待できます。

 

 

4.当社の抗体作製技術

(1) 抗体作製技術

 当社は抗体作製技術のADLib®システムやTribody™作製技術など独自の抗体作製技術を保有し、また、汎用的な技術であるハイブリドーマ法、B cell cloning(*)などの複数の技術を用いて抗体作製を行っております。また、それぞれの技術の特性を活かして統合的に運用することにより抗体作製力を最大化してまいります。

 

<抗体作製技術とその特徴>

抗体作製技術

技術の特性

ADLib®システム

・抗原があれば10日前後という短期間で直接ヒトIgG抗体が獲れる

・自律的多様化という独創的な抗体ライブラリ(*)の特徴を生かし、抗原特異的抗体(*)の取得から抗体の高親和性化までを連続的に行うことが可能

・動物免疫(*)と異なり、自己抗原への免疫寛容(*)の影響を受けないため、理論的にはあらゆる配列のタンパク質を認識する抗体を取得できる可能性がある

 

Tribody™

・3つ以上の異なる抗原結合部位を持つ抗体であるTribody™およびその発展型多重特異性抗体のデザイン・エンジニアリング・創薬開発を可能にする技術プラットフォームをいう

・CBA-1535のように腫瘍細胞の近傍でT細胞を活性化することにより、がん細胞を叩くT cell engagerというカテゴリや、複数の疾患関連細胞を架橋することでがん以外の疾患の治療薬も設計可能

ハイブリドーマ法

・動物免疫による抗体作製法で、最もよく用いられる

・手法が確立されており、医薬品化された実績も多い

・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる

 

B cell cloning

・動物免疫を行った後、ハイブリドーマを作製せずに抗体の配列を決定するため、ハイブリドーマ法より短期間で目的の抗体を得ることができる

・抗原特異的なB細胞(*)の検出率がハイブリドーマ法よりも高く、取りこぼしが少ない

・ヒト抗体産生動物を用いた場合、ヒト化の工程を経ずにヒト抗体を取得することができる

 

 

 

 

(2) 当社独自の抗体作製技術ADLib®システム

① ADLib®システムの仕組み

 ニワトリのB細胞由来のDT40細胞(*)は、様々な種類の抗体を生み出すメカニズムを持っています。当社では薬剤処理により人為的に活性化させて、試験管内において短期間で多種多様なモノクローナル抗体を産生する細胞集団(ライブラリ)を作り出しています。そのライブラリの中からターゲットである抗原に特異的に結合する抗体を取得します。この方法を当社では、ADLib®システム(トリ免疫細胞を用いたモノクローナル抗体作製システム:Autonomously Diversifying Library、総称してADLib®)と呼んでおります。

 

<ADLib®システムによる抗体作製のイメージ図>

0101010_007.png

 

② ヒトADLib®システムについて

 ヒトADLib®システムは、遺伝子組換え技術によりDT40細胞のトリ抗体遺伝子がヒト抗体遺伝子に置き換えられており、ヒト化の工程を経ることなく、ヒト抗体を直接取得することができます。

 

<ヒトADLib®システムの概略>

0101010_008.png

 

③ 従来の抗体作製技術との主な違い

 ADLib®システムは、従来の抗体作製技術とは異なるテクノロジーとして、次のような技術的特徴を有しております。

a.迅速な抗体取得

 ADLib®システムでは、抗体セレクションの全工程を試験管内で実現したことにより、10日程度でターゲット特異的な抗体を判定することが可能で、他の技術と比較して抗体取得の判定期間が短い点が大きな特徴です。競争の激しい医薬開発の分野では、いち早い特許取得が重要であり、この点で他の方法に比べて短期間で抗体を作製できるADLib技術には大きなメリットがあります。

b.従来の免疫法では困難な抗原に対する抗体取得

 ヒトを含む動物は、体内に入ってきた異物に対しては免疫反応(*)が起きて抗体を作りますが、がんの様に、自分を構成している成分が何かのきっかけにより過剰に体内で増えて病気を引き起こすような場合には、そもそも自身の体の成分なので異物とはみなされず、免疫寛容とよばれる仕組みにより抗体を作ることができません。進化の過程においてマウスとヒトの間でもほとんど変化することなく種を超えて受け継がれてきたタンパク質は非常に類似していることがあり、ヒトを構成する成分であってもマウスで抗体を取得することは容易ではありません。しかし、試験管内で抗体が得られるADLib®システムは、生体外で抗体を作製するシステムなので、免疫寛容による制限を受けることはありません。

 

5.特許ポートフォリオ

(1)基盤技術に係る主要特許

関連

発明の名称

出願人

登録状況

ヒトADLib®システム

ヒト抗体を産生する細胞

当社

日本・欧州・中国で成立。

米国で出願中。

抗体の取得方法

当社

日本・米国・欧州・中国で成立。

抗体可変領域の多様化を促進する方法

当社

日本・米国・欧州・中国で成立。

 

(2)リード抗体に係る主要特許

関連

発明の名称

出願人

登録状況

CBA-1205

in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトDlk-1抗体

当社

(リブテックから承継)

日本、米国、欧州、中国を含む計7ヵ国で成立。

がん治療用医薬

当社

PCT出願済

抗体組成物の精製方法

当社

PCT出願済

CBA-1535

5T4及びCD3に対する3つの結合ドメインを含む融合タンパク質

当社

 

日本・米国・英国・中国・欧州等計10ヵ国で成立。

LIV-2008

in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(ヒト化)

当社

(リブテックから承継)

日本、米国、欧州、中国を含む計10ヵ国で成立。

他の海外諸国で出願中。

in vivoで抗腫瘍活性を有する抗ヒトTROP-2抗体(マウス)

当社

(リブテックから承継)

日本、米国、欧州を含む計13ヵ国で成立。

 

BMAA

抗セマフォリン3A抗体、並びにこれを用いたアルツハイマー病及び免疫・炎症性疾患の治療

(公)横浜市立大学、

当社

 

日本、米国、欧州で成立。

PCDC

抗CDCP1抗体

当社

中国で成立。日本、米国、欧州他で出願中。

PXLR

抗ヒトCXCL1抗体

公立大学法人大阪
当社

PCT出願済

PTRY

融合タンパク質

イタリア CEINGE社
当社

PCT出願済

PFKR

抗ヒトCX3CR1抗体

国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター

当社

PCT出願済

 

 

 

4【関係会社の状況】

 該当事項はありません。

 

5【従業員の状況】

(1)提出会社の状況

 

 

 

 

2023年12月31日現在

従業員数(名)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

51

17

44.6

5.9

6,884

 

セグメントの名称

従業員数(名)

創薬事業

40

13

創薬支援事業

全社(共通)

11

4

51

17

(注)1.従業員数は就業人員であります。

2.従業員数欄の〔外書〕は、臨時従業員(人材会社からの派遣社員を含んでおります)の年間平均雇用人員であります。

3.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

4.当社は、各事業に関する業務がそれぞれ密接に関連しているため、同一の従業員が複数の事業に従事しております。

5.全社(共通)は、総務人事、財務経理、経営企画及び内部監査等の管理部門の従業員であります。

 

(2)労働組合の状況

労働組合は結成されておりませんが、労使関係は円満に推移しております。