当社グループの経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1.経営方針
(1)中長期的な会社の経営戦略
2023年1月、旧昭和電工㈱と旧日立化成㈱(旧昭和電工マテリアルズ㈱)は統合し、レゾナックグループとして新たなスタートを切りました。
<経営理念>
当社の経営理念は
存在意義(パーパス)「化学の力で社会を変える」と
従業員が大切にすべき4つの価値観(バリュー)
「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」
「機敏さと柔軟性」
「枠を超える、オープンマインド」
「未来への先見性と高い倫理観」
と定めました。
この経営理念のグループ、グローバルでの浸透を図り、レゾナックグループは一丸となって事業に取り組むとともに、人材育成の強化、人事評価の透明性や実力主義の徹底等を進めてまいります。先端材料パートナーとして時代が求める機能を創出し、グローバル社会の持続可能な発展に貢献します。
<レゾナックが志向する目指す姿>
*共創型化学会社
私たちの基盤は、川中から川下まで幅広く自在な最先端の機能材料テクノロジー。 その上で、社会課題とその原因を鋭く可視化し、解決に向けてイニシアチブを発揮していく。そのためには、化学業界に閉じた個社の事業活動にとどまっていては足りないと考えています。
化学企業としてグローバルにおける一流の実力を備え、 機敏かつ柔軟な行動と意思決定をもって、産業のキープレイヤーから生活者に至るまで 志を共にする仲間とよりよい社会を共創していく。これが、私たちが目指す“共創型化学会社”の姿です。
*世界トップクラスの機能性化学メーカー
私たちは「世界トップクラスの機能性化学メーカー」を目指します。その姿として、
質的な面、計数的な面それぞれを兼ね備えた「世界で戦える会社」、
イノベーションと事業開発力で「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」、
さまざまなステークホルダーからも注目されるような「国内の製造業を代表する共創型人材創出企業」
となることを掲げ、実現してまいります。
世界トップクラスの機能性化学メーカーとなるためには、財務・非財務両面でステークホルダーの要求にこたえるとともに、当社らしさを発揮していかなければなりません。レゾナックはサステナビリティを全社戦略の根幹と位置づけ、目指す姿とサステナビリティ重要課題(マテリアリティ)に紐づく施策と目標を定め、取り組みを進めて長期ビジョンの達成を目指しています。(詳細は、2 サステナビリティに関する考え方及び取組をご覧ください。)
(2)長期数値目標
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2023年実績 |
2025年 |
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売上 |
(兆円) |
1.29 |
1.0超 |
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EBITDAマージン |
(%) |
8.2 |
20 |
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ROIC |
(%) |
0.5 |
中長期的に10% |
|
ネットD/Eレシオ |
(倍) |
1.0 |
1.0倍を目指す |
目標数値の達成により、総株主還元(TSR)は中長期的に化学業界で上位25%の水準を目指します。
2.経営環境及び当社グループの対処すべき課題
世界的な金融引締めやインフレ進行による景気の足踏みのリスク、長期化するウクライナや中東地域をめぐる情勢に起因するエネルギーおよび原材料コストの高騰による先行きの不透明さはあるものの、世界経済は緩やかな回復が続くことが期待され、当社グループの注力分野である半導体・電子材料業界も調整局面から回復に向かい始めました。
このような状況下、当社は半導体材料等コア成長事業への積極的な設備投資を続けるとともに、更なる競争力の強化のために、ポートフォリオ経営の高度化を推進し、企業価値の最大化を目指してまいります。
企業価値最大化のためには、石油化学を中心とする伝統的な総合化学から、顧客のニーズに応じた機能を発揮するスペシャリティケミカル企業への変貌を遂げることと、それを支える共創型で自律的な人材の育成が不可欠であり、そのための施策に精力的に取り組んでいます。
また、従業員のエンゲージメントを高め、様々な社会課題や顧客のニーズを把握し、社内外のステークホルダーとの共創を推進することを通して、「世界トップクラスの機能性化学メーカー」となり、イノベーションを生み出していきます。
私たちは、パーパスに込められたサステナビリティの理念を根幹におき、先端材料の提供を通じた省エネルギーや環境負荷の低減、高度循環型社会の実現に貢献してまいります。
「コーポレート・ガバナンス基本方針」については当社ホームページをご参照ください。
https://www.resonac.com/jp/corporate/governance.html
(1)サステナビリティ全般に関わる開示
当社は、パーパスに基づき「化学の力で社会を変える」ためにサステナビリティを経営の根幹に位置づけ、その一環として、「サステナビリティビジョン2030」を設定するとともに、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を特定しています。マテリアリティに紐づく施策と目標を定め、取り組みを進めて長期ビジョンの達成につなげていきます。
① サステナビリティ全般に関するガバナンス
当社のサステナビリティは、CEOが統括、CSuOが推進責任を担い、方針や計画を始めとする重要事項については、経営会議での審議・決定の上、取締役会に付議・報告する体制としています。2022年からCEOを含むグループCXOが集まるサステナビリティ推進会議を月に一度、事業責任者(BU長)も加えた拡大サステナビリティ推進会議を四半期に一度開催し、幅広いアジェンダを議論しています。また、同会議の下に複数のプロジェクトを設置し、具体的な課題に対して機動的かつ組織横断的に対応する体制としています。
2023年からは同会議での審議事項を組織運営に結び付け、従業員に浸透させるため、事業部門・CXO部門にサステナビリティパートナーを設定しています。サステナビリティパートナーを通じたコミュニケーションにより、各部門の現状や課題、関心を把握するとともに、各部門でのサステナビリティの取り組みを促進しています。また、サステナビリティパートナー同士の横のコミュニケーションの場を設けることで、対面する業界の違いを超えた顧客要求の変化などの情報交換を活発にしています。
② サステナビリティ全般に関する戦略
当社のマテリアリティは、社会からの期待と当社にとっての重要度の両面から検討した長期ビジョン達成に向けた経営課題です。マテリアリティ特定に当たっては、各担当CXO領域(機能)との個別の議論による現場の意思の反映を踏まえてサステナビリティ推進会議で全経営陣が議論して決定しました。取締役会に報告し、社内外のステークホルダーとも意見交換しながら不断の見直しをしています。
2022年は、マテリアリティを特定し、全社レベルの非財務KPIを設定するとともに、推進すべき取り組みを議論しました。2023年は、実際の運用や社外のステークホルダーとの議論を通じて、KPIの妥当性の議論をサステナビリティ推進会議で行い、モニタリング・深掘・ブラッシュアップをしています。
③ サステナビリティ全般に関するリスク管理
2023年より、サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)を踏まえた当社のリスクと機会の議論を開始し、当社の経営環境を確認しています。サステナビリティの各テーマに関するリスク管理については、全社のリスク管理に統合されているため、詳細は「
④ サステナビリティ全般に関する指標と目標
サステナビリティ重要課題(マテリアリティ)の15の構成要素に対し、各々の施策と重要項目(KPI)、2025年目標を定めて、取り組みを進めています。各重要項目について毎年の進捗をモニタリングすることで、マテリアリティへの取り組みを着実に推進しています。気候変動や人的資本に関する詳細は、「(2)TCFD提言に沿った情報開示」と「(3)人的資本経営に関する情報開示」をご参照ください。
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マテリアリティ |
構成要素 |
重要項目 (KPI) |
2025年目標 |
2023年実績 |
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イノベーションと事業を通じた共創力&競争力の向上と社会価値の創造 |
事業を通じた社会価値の創出 |
Resonac Pride製品・サービス*1 |
オープンプロセスによる認定 |
認定の制度構築完了 |
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CFP*2への取り組み |
主要製品のCFP算出 |
対象製品のCFP算定完了 |
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責任ある事業運営による信頼の醸成 |
安全 |
・安全文化の醸成 ・労働災害件数 ・休業災害度数率 ・設備事故件数 |
・事故災害ゼロに向けた安全文化の確立 ・重大労働災害発生件数ゼロ(連結) ・休業災害度数率0.1以下(連結、協力企業除く) ・重大設備事故発生ゼロ(連結) |
・相互啓発型安全文化醸成プログラムとしてSCP*3を国内全事業所、中国拠点で展開 ・安全活動を評価体系へ組み込み ・グローバル安全活動発表会で良好事例の共有と表彰実施 ・重大労働災害*4発生1件(連結) ・休業度数率0.36(連結、協力企業除く) ・重大設備事故*5発生1件(連結) |
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品質保証 |
・製品事故ゼロ ・品質コンプライアンス違反ゼロ |
・製品事故ゼロ(連結) ・品質コンプライアンス違反ゼロ(連結) |
・製品事故*60件(連結) ・品質コンプライアンス違反0件(連結) |
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化学品管理 |
プロダクトスチュワードシップ推進 |
優先評価対象物質のリスク評価*実施率100%(国内グループ連結) *当社が選定した物質を対象として安全性要約書を発行することにより評価 |
・23年度優先評価対象21件リスク評価100%実施完了(安全性要約書21件作成-20件公開完、レゾナック単体) ・その他、2023年度日本化学工業協会JIPS*7大賞受賞(3年連続) |
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環境 |
・温室効果ガス排出量の削減 ・産業廃棄物埋立量の削減 |
・温室効果ガス排出量 2013年比30%削減(Scope1+2)(連結) ・発生量の0.5%以下(国内グループ連結) |
・Scope1+2:2022年実績:7.3%削減(2013年比) ・産業廃棄物埋立量:2022年実績:発生量の0.2%(国内グループ連結)*8 |
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マテリアリティ |
構成要素 |
重要項目 (KPI) |
2025年目標 |
2023年実績 |
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責任ある事業運営による信頼の醸成 |
人権 |
人権の尊重 |
人権デューデリジェンス運用体制の確立 |
・社員向けグローバル意識調査及び研修を実施 ・サプライチェーンを含む海外人権リスクの予備調査実施 |
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調達 |
サプライヤーとのコミュニケーションの質の向上 |
・CSRアンケートの回答率の向上 ・基準点以上のサプライヤーの比率の向上 |
・アンケート回収率 91%(新アンケートツールを導入) ・基準点以上のサプライヤー比率 61% ・中小企業庁による価格転嫁促進アンケートで最高評価を獲得(23年3月調査結果) |
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コンプライアンス |
・「私たちの行動規範」の浸透 ・グローバル・コンプライアンス・スタンダードの徹底 |
・浸透度向上(サーベイによる調査) ・重大な法令違反件数減少 ・内部制度通報の周知による通報件数の増加 |
・サーベイによる調査開始 ・2023年の重大な法令違反*90件(連結) ・制度周知による内部通報件数増加(2022年81件→2023年97件) |
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リスクマネジメント |
・統合リスクマネジメント体制運営 ・2ndディフェンスラインの機能強化 |
・新統合リスクマネジメント体制の構築 ・グループ内部統制基盤の拡充 ・海外展開着手とリスクデータの一元化 |
・戦略リスクの評価方法等を含むリスク全体の取扱方針の策定 ・「リスク統制規準」を設定し、実施部門における統制実施状況の確認・評価を実行 |
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自律的で創造的な人材の活躍と文化の醸成 |
DE&I |
女性管理職比率の向上 |
女性管理職比率7%(レゾナック単体) |
6.5% |
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男性育休取得率の向上 |
男性育休取得率100%(レゾナック単体) |
100% |
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パーパス・バリューの浸透と共創文化の醸成 |
パーパスの実践 |
パーパス実践度のサーベイスコア55%(連結) |
48% |
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バリューの実践 |
バリュー実践度のサーベイスコア60%(連結) |
51% |
*1 Resonac Pride製品・サービスの認定
当社は、バリューチェーンの川上から川下まで幅広い領域で、当社の製品・サービスが顧客や社会にどのような価値を、どのくらい提供することができたかを可視化することを重要と考え、Resonac Pride製品・サービスとして認定しています。認定に当たっては、パーパスに基づき社会を変えることで顧客や社会に提供した価値や、当社が大切にする4つのバリューの発揮の妥当性、製品環境アセスメント・レピュテーションなどのリスク評価、売上計画やシェアなどの将来性・インパクト、世界共通のゴール(SDGs)との関連性などの観点で第三者の視点を入れ評価しています。
*2 CFP(Carbon foot print)
*3 SCP(Safety communication Program):管理監督者が行う指摘を目的としない安全巡視活動。管理者自らが、現場の状況観察や現場のかたとの会話を通じてリスクを認識し、問題解決の責任をもつことを求めています。
*4 障害認定の対象(労働基準法障害等級1~7級)となる場合、または死亡を重大労働災害と定義する
*5 火災、漏えい、設備損傷等のうち、以下を伴うものを重大設備事故と定義する
①事業所内で休業災害以上が発生
②事業所外で緊急搬送、避難勧告、環境汚染等が発生し、社会的影響が大きい
*6 定義は当社事故基準による
*7 JIP(Japan Initiative of Product Stewardship)
*8 統合にあたり海外グループ会社の目標を再検討し、実績についても精査中
*9 定義は当社基準による
(2) TCFD提言に沿った情報開示
(TCFD提言が推奨する4つの開示項目に沿った情報開示)
当社は、経営の根幹にサステナビリティの概念を据え、パーパスに基づき「化学の力で社会を変える」ために、「サステナビリティビジョン 2030」を設定しました。そして、長期ビジョンの主要戦略を実行するため、気候変動対策を含むサステナビリティ重要課題を特定し、社内浸透を進めることを明確に定めています。2019年には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言に賛同しました。株主・投資家などのステークホルダーと当社の気候変動取組みについてのエンゲージメントを強化するため、TCFDが推奨する「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの項目に基づいて、当社の気候関連への取り組みを開示します。
① 気候変動に関するガバナンス
(取締役会の役割・監視体制)
当社は、気候変動に関するリスクや事業機会、目標や具体的な取り組み施策については、CEOが統括、CSuOが推進責任を担い、カーボンニュートラルプロジェクトで議論の上、サステナビリティ推進会議や経営会議で協議・決定すると共に、進捗管理・モニタリングを定期的に実施し、必要に応じて対応策・是正策を検討します。
取締役会は、サステナビリティ推進会議や経営会議で協議・決定された内容の報告を定期的に受け、企業価値の最大化の観点から議論・監督を行っています。また、長期視点での経営を強く促し、当社の持続的な成長を促すため、2022年から長期ビジョンにおける取り組み・気候変動を含むサステナビリティ課題への対応などについて、社内取締役と執行役員の業績評価指標に含めています。また、2024年3月に取締役会の気候変動に関する役割を明確にするため、コーポレートガバナンス基本方針を改定しています。
カーボンニュートラルプロジェクトの位置付け(2024年3月26日現在)
② 気候変動に関する戦略
(短期・中期・長期の気候関連リスク・機会および対応)
当社は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、気候変動を「事業機会」と「リスク」の両面で捉え、企業としての社会的責任の実践とさらなる競争優位性の構築を図り、「脱炭素に向けた製品・サービスの提供」「パートナーとの共創」「エネルギー効率の改善」「再生可能エネルギーの使用拡大」などによりバリューチェーン全体の温室効果ガス排出量削減に取り組んでいきます。そのような中で、気候変動が当社の事業に及ぼす影響(事業機会・リスク)について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やIEA(国際エネルギー機関)などが発表する「世界の平均気温が4℃以上上昇する」「世界の平均気温がパリ協定で合意した2℃未満の上昇に抑えられる(一部1.5℃以内)」の二つのシナリオでリスクと機会を分析し、当社の対応の必要性を改めて確認しています。
(気候関連のリスク・機会と主な対応)
・想定期間:2030年度まで
・採用シナリオ:・4℃シナリオ:IPCC/RCP8.5, IEA/STEPS
・1.5/2℃シナリオ:IPCC/RCP2.6, IEA/SDS(一部IEA/NZE)
・時間軸の定義:短期:3年未満、中期:3年~10年未満、長期:10年~30年
・シナリオ分析対象:既存事業
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機会・リスクの種類 |
領域 |
顕在時期 |
当社への影響 |
対応策 |
影響度*1 |
||
|
1.5/2℃ |
4℃ |
||||||
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移行機会・リスク |
リスク |
全ての事業 |
中期 |
カーボンプライシング(ICP)導入による、税負担(コスト)の増加 |
・2030年GHG排出量削減目標の見直しとロードマップ策定 ・事業ごとの目標設定/削減取り組みの実施 ・再生可能エネルギーの導入拡大 ・原燃料転換 ・GXリーグへの参画 |
大 |
大 |
|
リスク |
短期~中期 |
GHG排出規制強化による再生可能エネルギーへの切替・調達コスト増加 |
・太陽光発電の導入や水力発電設備等の活用 |
小 |
無し |
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機会・リスク |
短期~中期 |
政府による企業の脱炭素取り組みに対する政策上の支援 |
・次世代グリーンパワー半導体用8インチSiCウェハー開発計画(NEDOグリーンイノベーション基金事業採択) ・革新的分離剤による低濃度CO2分離システムの開発計画(NEDOグリーンイノベーション基金事業採択) ・半導体材料グローバルサプライチェーンを強化(経済産業省 海外市場調査等事業費補助金(インド太平洋地域サプライチェーン強靱化事業)採択) |
― |
― |
||
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機会・リスク |
短期~中期 |
消費者の行動・意識変化に伴う、売上の増加・減少 |
・低炭素社会のニーズに対する製品拡販、新製品開発、競争力強化 ・共創の舞台(新研究所)での長期研究開発促進 |
― |
― |
||
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リスク |
短期 |
お客さまからの低炭素化に対する取り組みと開示要求の増加 |
・LCA(CFP)算定体制を整備し、炭素排出量の見える化、削減計画策定 |
― |
― |
||
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機会・リスク |
短期~中期 |
社会や顧客からの環境課題解決ニーズの獲得状況に伴う投資家からの評価の変化 |
・社会や顧客の課題解決に貢献するための自社製品/サービス(Resonac Pride製品/サービス)の付加価値向上 ・積極的な気候変動/循環型社会に向けた対応を進めることによる投資の呼び込みなど |
― |
― |
||
|
リスク |
半導体・電子材料 |
短期~中期 |
原材料の高騰化・素材の切り替えによる調達コスト増加 |
・原材料の調達先・リソースの多様化 ・リサイクル原料の活用検討 ・供給不安原料の内製化・地産地消型生産シフト ・上流サプライチェーンとのGHG 削減に向けた協働 ・新規原材料採用時のBCP 対策基準設定 ・主要原材料の価格変動に対するフォーミュラ制(原料価格変動分を製品価格に自動反映)の適用 |
小 |
小 |
|
|
機会・リスクの種類 |
領域 |
顕在時期 |
当社への影響 |
対応策 |
影響度*1 |
||
|
1.5/2℃ |
4℃ |
||||||
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移行機会・リスク |
リスク |
半導体・電子材料 |
短期~中期 |
顧客の行動・意識変化に伴う、売り上げ減少 |
・製造工程におけるGHG 排出量削減および顧客への情報開示 ・製品・技術の活用を通じて、社会でどの程度の量のGHG が削減されたかを定量的かつ科学的に算定(GHG 削減貢献量・CFP算定) ・半導体気候コンソーシアム(SCC) 各ワーキンググループへの参加 ・環境配慮型製造工程の検討 ・顧客満足度調査の実施 ・顧客の環境関連ニーズ把握のため、営業との連携強化 ・対象市場における需要の変化を見据えた、販売マーケティング体制 · 新製品開発体制の強化 ・顧客要請を製品・サービスに即座に反映させるための、顧客対応マネジメントの強化 |
中~大 |
無し |
|
機会 |
短期~中期 |
EV/自動運転の需要増に伴う売上増加 |
・SiCパワー半導体需要増大への対応 ・部品の小型化、軽量化に貢献する材料開発 |
大 |
中 |
||
|
機会 |
短期~中期 |
低消費電力半導体・環境配慮型製品の需要増による売上増加 |
・環境適合製品設計アセスメント ・低GWP値の半導体用エッチングガス開発 ・GHG削減プロセスに貢献できる封止材の開発 ・メモリ用途接着フィルムの薄膜化への対応 ・半導体気候コンソーシアム(SCC) 各ワーキンググループへの参加 ・米国シリコンバレーにパッケージングソリューションセンター設置(予定) ・先端半導体コンソーシアム「TIE(Texas Institute for Electronics)」参画 |
大 |
無し |
||
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機会 |
短期~中期 |
テレワーク化・自動化・データ化普及による、サーバ関連設備・データセンターの脱炭素化に伴う売上増加 |
大 |
無し |
|||
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物理リスク |
リスク |
全ての事業領域 |
短期 |
気候変動起因の自然災害による製造拠点の操業停止、設備の修復費用の増加による収益減少 |
・各拠点の洪水リスク分析の実施 ・定期的なリスクの抽出/低減活動、BCP(事業継続計画)の強化 |
小*2 |
小*2 |
*1:気候変動に関する機会とリスクの財務的影響については算定を順次進めているため、段階的に開示していきます。影響度は特定した気候変動の機会・リスクへ対応した場合を記載しています。
大:気候変動に対する規制・政策等により今後も当社への影響が見込まれ、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が100億円以上と試算される。
中:気候変動に対する動きが既にあり、今後も当社への影響が見込まれ、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が30億円以上100億円未満と試算される。
小:気候変動に対する動きがあり、その結果、当社の営業利益(単年度)への影響が30億円未満と試算される。
*2:物理リスクについては、日本の主要36拠点を対象として、ハザードマップ、AQUEDUCTを活用した分析を実施しました。100年に一度の災害が発生した際には、13拠点がリスクに晒されることが明らかになりましたが、再現期間を加味した年間影響額は1.5/2℃・4℃どちらのシナリオでも小さいことから影響度は「小」としています。今後、海外拠点及びサプライチェーンについての分析を順次進めていきます。
③ 気候変動に関するリスク管理
(リスクを評価・識別・管理するプロセス)
当社は、各事業の気候変動シナリオ分析を順次実施し、気候変動影響による「移行リスク」「物理リスク」を抽出し、当社にとって重要な気候変動に伴うリスクを特定して対応策を立案しています。リスクの特定、対応策の立案にあたっての重要事項は取締役会へ報告しています。今後も気候変動シナリオ分析を継続し、リスク・対応策を更新していくと共に対応策の進捗状況のモニタリングを実施していきます。
(全社リスクマネジメントへの統合状況)
リスクを全社的に管理する体制を構築することが重要であることを踏まえ、グループ共通のフレームワークで統合リスクマネジメントの取り組みを行っています。気候変動関連リスクを含め当社の経営に影響を及ぼす可能性があるリスク情報は、全社的に展開するリスク棚卸活動(リスクアセスメント)を通じて、リスクマネジメントシステムに一元的に登録され、発生頻度と影響力が共に非常に高いリスク(重要リスク)については、専門委員会(リスクマネジメント委員会)で審議します。両会議共に重要事項は経営会議で審議・決定の上、取締役会に報告されます。
リスクマネジメントの流れ(2024年3月26日現在)
④ 指標と目標
(GHG排出量目標および実績)
長期ビジョンで掲げる「持続可能なグローバル社会に貢献する会社」を目指して、「2050年カーボンニュートラル」にチャレンジしています。また、そのマイルストーンとして「2030年GHG排出量30%削減(2013年比)」を目標としています。2022年は、一部の生産量減少や再生可能エネルギーの調達があり、2013年比で7.3%削減しました。また、2023年には官民がGHG排出量削減に向けて連携するGXリーグに参画し、目標達成に向けた取り組みや情報開示をさらに進めていきます。
(GHG排出量削減ロードマップ)
「2050年カーボンニュートラル」に向けて、2030年までは徹底した合理化、高効率化、省エネルギー、ガス燃料への転換(高効率コージェネレーションシステム)、自社の水力発電や再生可能エネルギーを活用した製品製造などを進めます。加えて、持続可能なプラスチックケミカルリサイクル技術の開発および新たなCO2の分離回収・利用技術を推進します。2030年以降は2050年に向けて、アンモニア・水素への燃料転換・混焼なども積極的に推進していきます。そして、持続可能なプラスチックケミカルリサイクル技術の実装および革新的なCO2分離・回収技術と回収CO2の化学品原料としての利用によりカーボンニュートラルを達成していきます。また、目標達成に向けては各事業部での目標設定・削減施策立案・実行を進めています。
カーボンニュートラルへの道筋
(3)人的資本に関する情報開示
① 人的資本に関する戦略
当社がイノベーションを生み出し、化学の力で社会を変える「共創型化学会社」となるには、パーパス・バリューを体現する人材、つまり「社会課題の解決に向け、社内外の人々と自律的につながり、共創を通じて創造的に変革と課題を解決できる人材の存在」が欠かせません。
「キャリアのオーナーは従業員」という考え方のもと、個々の目指す方向性に応じた多様なキャリアパスや教育の機会を用意するほか、社内外のつながりを支援するさまざまな仕組みを始動させています。
その一つが、全レゾナックグループを対象とした事前エントリー制のグローバルアワード「AHA!」です。各職場のみならず、組織の垣根を超えたチームが、パーパス・バリューを踏まえた行動宣言を策定し、それに基づく目標と具体的な取り組み内容を定め、自らエントリーして活動します。これにより従業員の共感の和が生まれ、数多くの枠を超えた共創が実現することを目指しています。
また、共創型リーダーシップトレーニングや共創型コラボレーション力強化研修など、独自の教育研修を取り入れ、世界各地のレゾナック拠点で活動する多様な従業員がさらにチームとしてパーパスを実現できるよう、共創型人材の育成に取り組んでいます。
当社の人材戦略は「共創型人材」の創出であり、企業・事業戦略と人材戦略を合致させることが、当社の人的資本経営です。
パーパス・バリューの実践による持続的な企業価値の向上を目指す当社の人事戦略は、4つの人材マテリアリティから構成されています。サステナビリティ重要課題である「自律的・創造的な人材の活躍と文化醸成」と事業戦略に連動しているこの4つの人材マテリアリティを核に、長期では共創型人材を生む組織作り、短中期では共創型人材が機能性化学メーカーとして事業成長を実現するための施策を進めていきます。
当社の人的資本に関する戦略および取組の詳細については、当社Webサイトに掲載している最新の統合報告書をご参照ください。
https://www.resonac.com/jp/sustainability/report/report.html
② 人的資本に関する指標及び目標
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指標 |
2025年目標 |
2023年実績 |
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女性管理職比率(レゾナック単体) |
7% |
6.5% |
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男性育休取得率(レゾナック単体) |
100% |
100% |
|
パーパス実践度のサーベイスコア |
55% |
48% |
|
バリュー実践度のサーベイスコア |
60% |
51% |
当社グループの経営成績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があると考えられる主要なリスクには、以下のものがあります。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、リスクを最小化するためにリスク管理体制の整備・充実に努めており、詳細は以下「(1)リスクマネジメントの取組み」に記載しております。
なお、これらの事項は当連結会計年度末現在において判断したものであり、当社グループに関する全てのリスクを網羅しているものではありません。
また、ウクライナ情勢及び中東における不安定な政治情勢等による事業への影響について、今後も注視してまいります。
(1) リスクマネジメントの取組み
①リスクマネジメント体制
当社グループでは、事業経営に与えるリスクとその影響を明確化し、経営資源の適正配分を実現するため、ISO31000に準拠したリスクマネジメント体制を整備しております。
CEOが議長を務めるリスクマネジメント委員会を設置し、リスクマネジメント体制やグループの重要リスクやその対応策など、トップマネジメントによる組織横断的な審議を行っております。リスクマネジメント委員会での審議事項は経営会議で審議・承認された後、取締役会でも報告され、取締役によるリスクマネジメント体制の妥当性や有効性の評価や推進状況の監督等が行われます。
また、国内の事業部・事業所及び主要なグループ会社に、各部門のリスクの識別やリスクの対応策の推進などの実行責任を負うリスクオーナー、リスクオフィサー、リスクマネージャーを配置するとともに、各CXO組織は、各部門によるリスク評価や対応策について、全社を横断し俯瞰する視点からレビューや支援などを行い、相互に連携を図りながら、経営と現場が一体となって統合的なリスクマネジメントを推進する体制を構築しております。
〔リスクマネジメント体制図〕
②当社のリスクの定義
リスクは戦略リスクとオペレーショナルリスク、ハザードリスクに分けることができ、さらに戦略リスクは計画上の前提が変動するリスクと、策定した戦略が実行されないリスクの二つに分けることができます。企業価値の持続的成長のためには、従来の安全・コンプライアンス重視の“守りのリスクマネジメント”だけでなく、適切なリスクテイクを促す“攻めのリスクマネジメント”が必要であり、リスクを総合的に判断し、経営戦略に反映してまいります。
③リスク棚卸の実践
年に1回、課・グループといった組織単位で事業活動の潜在リスクを含めた網羅的なリスクの洗い出しと評価(リスク棚卸)を実施しております。リスク棚卸の結果は、事業部・事業所・グループ会社の拠点単位でトップによるレビューを行い、システムに登録されます。登録されたリスクの中から、発生頻度と影響度の観点から分類を行い、重要度や優先度の非常に高いリスクを重要リスクとして位置づけ、リスクマネジメント委員会へ報告し、グループの重要リスクとその対応策など審議します。
(2) 個別事業の経営成績における大幅な変動
当社グループは、エレクトロニクス、デバイスソリューション、モビリティ、セラミックス、機能性化学品、アルミ機能部材、コーティング材料、石油化学、グラファイト、基礎化学品、ライフサイエンスの事業領域において様々な製品の製造・販売を行っております。主要事業において想定されるリスクとして以下のようなものがありますが、リスクはこれらの事業に限定されるものではありません。
①半導体・電子材料セグメント
当社グループの半導体・電子材料セグメントの各種製品は、モバイル機器、データセンタ、パワーモジュール、ITインフラストラクチャ、電気自動車や先進運転支援システム搭載車などに使用され、世界のマクロ経済や業界動向等に基づく最終製品需要の変化により、その需要は大きく影響を受けます。また、これらの市場は、急激な技術変化や製品の陳腐化による価格低下などの影響を受ける国際的競争が厳しい事業です。更に、市場ニーズに合致した製品を適時・適切に開発・提供するため、グローバルなサプライチェーン網を整備しておりますが、地政学リスク等による原材料・エネルギー・物流コストの高騰、サプライチェーンの寸断などの可能性があります。
こうしたことから、需要や競争環境の大幅な変動、サプライチェーン上の重大なリスクの発生、あるいは、為替の大幅な変動などの場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
そのため、顧客のニーズや市況動向の把握に努め、新製品や技術の開発や製造プロセスの改善などに取り組むとともに、リスクの早期検知及び顧客への安定供給を実現すべく、サプライチェーン・マネジメント体制の強靭化に継続的に取り組んでおります。
②モビリティセグメント
当社グループは、地球環境保護を目的とした燃費・CO2排出量の規制強化及びCASE(※)など、グローバルなモビリティ市場の動向に影響を受けます。モビリティ市場は、カーボンニュートラルの実現やCASEの進展などに伴い、自動車の電動化、軽量化、電装化、安全性・快適性向上のための商品開発が求められており、将来の中長期的な拡大が見込める有望な市場であります。一方、競合他社、新規参入者との競争環境も激化しており、新たな技術・製品の開発や開発リードタイム短縮など顧客の要求水準やニーズの変化への対応が遅れるリスクに加え、新しい技術・製品により、既存事業が陳腐化し、市場競争力を失い、販売価格が下落することがあります。また、EVシフトによる内燃機関車市場の縮小により、既存事業の収益性が低下するリスクもあります。
こうしたことから、需要や競争環境の大幅な変動などにより、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
そこで、当社グループでは、CASE進展に伴う新たな技術ニーズを取り込むため、軽量化や小型化、電動化に伴うバッテリー関連、熱・音・電磁波の制御などの材料や部品のモジュール化などのソリューションを提供することで、既存顧客における採用モデル拡大や新規顧客開拓を一層推進します。
※CASE(Connected:コネクテッド、Autonomous:自動運転、Shared & Service:シェアリング/サービス、Electric:電動化)
③ケミカルセグメント
〔石油化学事業〕
当社グループは、大量の原料用ナフサ等を購入(輸入を含む)しており、原油価格の変動や需給バランス、為替等の要因によりナフサ価格等が変動し、販売価格との間に十分なスプレッドが確保できない場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。また、石油化学事業の収益は、需給バランスによるところが大きく、他社による大型プラントの建設等により需給が緩和した場合や、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。さらに、気候変動影響への懸念による世界的なカーボンニュートラル化推進への対応のスケジュールによって、要求される投資や費用支出が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、コストダウンの推進や販売方法の見直し等収益の安定化に努めています。
〔グラファイト事業〕
当社グループは、アジア、北米、欧州にて黒鉛電極を生産し、その製品をグローバルで販売しており、日本及び世界経済の大きな変調により需要が急激に減少した場合には、需給バランスの悪化により販売価格と原材料調達価格の間に十分なスプレッドが確保できず、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、在庫を市況に応じて適正な水準を維持する、コストダウンを強化するなど、収益基盤強化に積極的な取り組みを行います。
④グローバルな事業活動
当社グループは、アジア、北米、欧州にて生産及び販売活動を行っているが、海外での事業活動には、予期しえない法律または規制の変更、政治・経済情勢の悪化、テロ・戦争等による社会的混乱等、国内における事業運営とは異なるリスクが存在します。ウクライナ及び中東における不安定な政治情勢が長期化し、その影響が他の地域へ波及することにより、原燃料価格や物流コストの更なる上昇に繋がるリスクがある他、経済安全保障をめぐる国際情勢の変化によるサプライチェーンの途絶などの可能性もあります。
こうしたリスクにより、当社グループの事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑤企業買収、資本提携及び事業再編
当社グループは、事業領域の拡大や収益性向上を目的として国内外における企業買収、資本提携及び事業再編を実施しております。当社グループでは、買収検討の対象企業のデューデリジェンスを慎重に行い、買収後の事業統合の計画を入念に検証することでリスクの低減に努めていますが、当社グループ及び出資先企業を取り巻く事業環境の変化により、当初期待していた成果が得られない場合には、のれん及び無形資産の減損等により、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、不採算事業からの撤退や関係会社の整理等の事業再編を行った場合、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(3) 財務状況及びキャッシュ・フローの予想以上の変動
①為替相場の大幅な変動
当社グループは、輸出入等を中心とした外貨建取引については、為替予約等を通じてリスクの最小化に努めていますが、為替相場に大幅な変動が生じた場合、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。特に、米ドルをはじめとする他の通貨に対する急激な円高は、国内から海外市場に輸出される製品の価格競争力を弱め、一方、円安は、海外から輸入する原材料価格を上昇させ、それぞれ当社グループの経営成績に悪影響を与える可能性があります。
また、為替相場の変動は、海外グループ会社の財務諸表の円貨への換算を通しても、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
②金融市場の動向や調達環境の変化
金融市場の動向や当社グループの財務指標の悪化が、一部借入金等の財務制限条項への抵触による期限前弁済を含め、当社グループの資金調達や支払金利に対して影響を与え、これらを通して、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。また、当初想定された業績及び財務状況並びに財務指標等が実現されない場合には、信用格付けが引き下げられる可能性があり、その結果、既存の債務の借り換えや新規借入れの条件にも影響を及ぼす可能性があります。
このようなリスクに対して、財務体質の改善・強化に加えて、取引金融機関とのコミットメントライン契約等による流動性の確保、返済・償還額の平準化や固定金利・変動金利のバランス等を考慮した適切な資金調達に努めています。
③退職給付債務
当社グループの退職給付債務及び退職給付費用は、年金数理計算上使用される各種の基礎率と年金資産の運用利回り等に基づき算出されており、年金資産の時価の変動、金利動向、退職金・年金制度の変更等が、当社グループの経営成績及び財務状況に影響を与える可能性があります。
④固定資産の減損
当社グループの連結貸借対照表に表示されるのれん、無形資産、土地等の固定資産について、事業環境の悪化による収益性の低下や、保有資産時価の著しい下落等が生じた場合、固定資産に減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
また、日立化成㈱に対するTOBの結果、のれん及び無形資産の金額が増加しており、当社グループの業績が悪化した場合、減損損失が発生し、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑤繰延税金資産
当社グループは、将来減算一時差異等に対して、繰延税金資産を計上しております。繰延税金資産は、将来の課税所得に関する予測等に基づき回収可能性を検討して計上しておりますが、将来の課税所得が予測と異なり回収可能性の見直しが必要となった場合、また、税率変更を含む税制の改正等があった場合には、繰延税金資産の修正が必要となり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(4) 特有の法的規制
当社グループが行っている事業は国内外の各種の法規制を受けます。その規制内容は、「石油コンビナート等災害防止法」「消防法」「高圧ガス保安法」等の保安・安全に係るもの、「環境基本法」「大気汚染防止法」「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」等の環境や化学物質に係るもの等があり、当社グループはこれら法規制の遵守を徹底しております。特に製造設備等に関連する法規制については、グループで法規制情報を共有するとともに、設備の新設・変更等に際し遵守状況を確認しております。しかしながら、万一遵守できなかった場合は、当社グループの活動が制限される可能性があります。また、これら法規制が一段と強化された場合には、コストの増加につながり、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
(5) 重要な訴訟事件
当社グループは、法令及び契約等の遵守に努めておりますが、広範な事業活動の中で、訴訟の提起を受ける可能性があります。
(6) その他
①研究開発
当社グループは、川中の素材技術と川下のアプリケーション技術を併せもつハイブリッド型の先端材料企業グループとして、技術融合によるイノベーションの実現に重点を置いております。川中素材の「作る化学」と、川下アプリケーションの「混ぜる化学」、そして評価・シミュレーション、構造解析、計算科学の「考える化学」、この3つの技術の融合によって市場に幅広い機能を提供し続けて事業を強化・創出する研究開発に注力しております。
これらの研究開発活動の結果が目標と大きく乖離するような場合には、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
②知的財産
当社グループは、産業財産権やノウハウ等の知的財産権が事業の競争力に重要な役割を果たしていることを認識し、自社権利の取得、活用及び保護と他社権利の尊重に努めております。しかしながら、自社権利を適切に取得、活用することができなかったり不当に侵害された場合、または第三者の知的財産権を侵害する事象が発生した場合や保有するノウハウ等が不当に第三者へ流出した場合、事業活動に支障が生じ、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
③品質保証・製造物責任
当社グループは、「品質保証・品質管理規程」の制定や、品質保証を所管・統括・推進する組織の整備、ISO9001等の積極的な取得により、品質管理に万全を期すべく努めております。しかしながら、重大な製品欠陥や製造物責任訴訟の提起といった事象が発生した場合、社会的信用の失墜を招き、顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループは、確実な工程管理を行うための設備維持、適切な測定機器設置、作業マニュアル整備、従業員教育等に努め、必要十分な検査実施による不良品流出防止の体制を構築するとともに、国内外を対象とした生産物賠償責任保険に加入しております。
④事故・災害
当社グループは、安全・安定操業の徹底を図り、製造設備の停止や設備に起因する事故などによる潜在的なマイナス要因を最小化するため、全ての製造設備について定期的な点検を実施しております。しかしながら、事故、大規模な自然災害等の発生により、製造設備で人的・物的被害が生じた場合、当社グループの社会的信用が低下し、事故災害への対策費用や生産活動停止による機会損失により、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、リスクアセスメントを含む適切なリスクマネジメントを実施し、事故防止及び事故発生時の被害の極小化を図っております。
⑤環境に対する影響
当社グループは、化学物質の開発から製造、流通、使用を経て廃棄に至る全ライフサイクルにおける「環境・安全・健康」を確保することを目的とした「レスポンシブル・ケア」活動を推進しております。しかしながら、周囲の環境に影響を及ぼすような事象が発生した場合には、社会的信用の失墜を招き、補償などを含む対策費用、生産活動の停止による機会損失及び顧客に対する補償などによって、当社グループの経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、全事業場において網羅的なリスク棚卸による環境リスク評価を行い、環境施設の安全対策を進めるとともに、経年劣化が原因による環境汚染防止のための点検・補修等を計画的に実施しております。
また近年益々高まっている環境問題に対する社会的要求や将来的な環境法規制の強化へ適応するために、経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
⑥感染症の蔓延
世界的な感染症の流行が発生した場合、製造拠点における生産停止や営業拠点を始めとするサプライチェーンでの当社製品供給の停滞により、当社グループの経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
世界的な感染症の流行に対しては、グループ従業員、協力企業従業員の健康を最優先事項とし、健康経営や産業保健の施策企画・実行統率を管掌するCHRO部門が統括産業医の意見を踏まえ、リスクマネジメント部と連携し、当社グループ従業員への注意喚起、感染防止対策の指示を行っております。同時に、社会生活に不可欠な製品を供給する社会的責任を果たすべく、BCP(事業継続計画)マニュアルを整備し、重要製品を選定するなど事業活動への影響を最小限とします。
平時より基本的な感染症対策を中心に、従業員の健康と事業活動の両立に向けた取り組みを進めてまいります。
⑦気候変動の影響
当社グループは、2050年までのカーボンニュートラルに向けて真摯な取り組みを進めております。当社グループが提供する各種製品は製造過程で化石原燃料を使用し、温室効果ガス(GHG)を排出しており、2030年GHG排出量2013年度比30%削減(Scope1・2)に向けた施策を進めております。顧客との共創によるカーボンニュートラルへの取り組みも取引上重要性を増しているため、省エネルギー・炭素循環に貢献する製品の更なる効率性向上や開発等を事業・技術戦略に組み込むとともに、主要製品ごと及び技術開発段階でのカーボンフットプリント算定も順次進めております。しかしながら、顧客要求に加え加速度的に厳しくなる各国の法規制への対応、それに伴う設備投資、再生可能エネルギーの外部調達といったカーボンニュートラルに向けた移行リスクや、自然災害への備えを含む物理リスク対応のアセスメントや対応コスト増も見込まれます。
このようなリスクと機会の両面を重要な経営課題と捉え、2019年には「気候変動情報開示タスクフォース」(TCFD)に賛同し、シナリオ分析を通し、気候変動が当社に及ぼすリスクと機会を評価して対応策を検討・実行し、レジリエンスを強化すべく、事業毎に順次取組みを進め、情報開示を行っております。また2023年にはGHG排出量削減に向けて経済産業省が設立したGXリーグに参画しました。
※「気候変動情報開示タスクフォース」(TCFD)の要請に沿った情報開示については、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)TCFD提言に沿った情報開示」をご参照ください。
⑧人権への取り組み
当社グループは、2021年に国際規範に基づいた人権方針を策定し、事業を展開するあらゆる国や地域において、事業活動の根幹として人権を尊重することを宣言し、当該方針を全従業員が自らの規準とするべく「行動規範」(2022年改訂)に盛り込んでいます。しかしながら、製品の開発から調達、製造、流通、使用そして最終消費を経て廃棄に至るバリューチェーンの各プロセスにおいて、レゾナックグループ及びサプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーのビジネスが、直接または間接的に、人権に影響を及ぼす可能性があります。また、統合に伴う新たな組織運営に伴う人権リスクの再点検が必要と認識しております。
このようなリスクに対して、自社グループ内の従業員にむけた人権サーベイを実施するなど人権デューデリジェンスを開始し、人権研修を行いました。また、サプライヤーを含むすべてのビジネスパートナーに当該方針を遵守頂くため「サステナブル調達ガイドライン」(2022年改訂)を通じた働きかけを開始し、海外リスク予備調査を実施しました。更に、従業員のみならずサプライヤーを含むビジネスパートナー、地域コミュニティなどあらゆるステークホルダーが利用可能な通報窓口を設けることでリスクの把握や救済措置の提供に努めております。
⑨人材・労務
当社グループは世界トップレベルの機能性化学メーカーになることを目指しており、2030年を見据えたサステナビリティ重要課題の一つに「自律的で創造的な人材の活躍と文化醸成」を掲げております。その解決のための重要項目「人と組織の持続的な成長」には、経営又は技術に関する能力に優れた共創型人材を採用、確保し、育成することが重要であると考えますが、優秀な人材の採用及び確保に関する競争は激化しております。
長時間労働に起因する効率低下やエンゲージメント低下が社内外に及ぼす影響を考慮し、労働時間の適正把握と長時間労働の予防により、従業員の心身の健康管理・維持を推進するとともに、パーパス/バリューのもと、従業員エンゲージメントを高めつつ、共創文化を育んでまいります。具体的には、人材戦略に関する4つのマテリアリティとして、「事業が求める人材の供給」「選び選ばれる魅力構築と発信」「自律的なプロフェッショナルの創出」「共創をうむ企業文化作り」を定め、2030年を見据えて、その実現に向けたKGI・KPIを設定し、定期的なモニタリングを行ってまいります。
※KGI(Key Goal Indicator)、KPI(Key Performance Indicator)
⑩サプライチェーン
当社グループの事業継続における安定調達を実現するためには、サプライヤーとの良好な取引関係が不可欠ですが、サプライヤーにおける不法・反社会的行為、人権尊重・環境保全の欠如等、当社のみならず社会全体にとって好ましくない事態が発生することが想定されます。こうした事態の発生を抑え、当社と共に社会的責任を果たすことを目的に、「サステナブル調達ガイドライン」を作成・公開しており、サプライヤーがこれを遵守するよう要請するとともに、その遵守状況を把握するために定期的なアンケートや訪問調査を実施しております。
また、自然災害・事故・感染症等によるサプライヤー操業停止、物流網寸断などで当社事業活動が影響を受ける可能性があります。これらの影響を最小限に留めるため、調達部門では有事におけるサプライヤー被災状況の情報収集と当社事業活動への影響を把握する手順を定めたマニュアル整備とこれに基づいたBCP(事業継続計画)訓練を実施しております。
⑪情報セキュリティ(サイバーリスク)
当社グループは、社内システムや製造設備に対するサイバー攻撃等による被害や情報漏えいが生じた場合、社会的信用の低下や、対策費用や生産活動停止の発生により、経営成績及び財務状況が影響を受ける可能性があります。
このようなリスクに対して、世界標準のセキュリティソリューションを導入することで、日々高度化・巧妙化するサイバーリスクに対する防御網を実現するとともに、当社グループの情報セキュリティグローバルスタンダード運用を確立し、教育・モニタリングによる改善活動を行うことで、情報管理の徹底及びインシデント発生時の影響を最小限に抑える対応策を講じております。
(経営成績等の概要)
(1)経営成績全般
当連結会計年度において、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおり、遡及処理等を行っており、遡及適用後の数値で前連結会計年度との比較を行っております。
当連結会計年度の世界経済は、新型コロナウィルス感染症に関して行動制限が緩和されたことによる正常化が進み、持ち直してきた一方で、世界的なインフレ進行や長期化するウクライナ情勢によるエネルギーコストおよび原材料コストの高騰、供給面の制約等は続き、地域により弱さが見られ、半導体業界の調整局面は継続しました。国内経済においても、個人消費および企業の設備投資は持ち直し、総じて緩やかに持ち直しました。
当連結会計年度の連結営業成績における売上高は、半導体、電子材料関連業界の調整の影響により減収となった半導体・電子材料セグメントを含む全てのセグメントで主に販売数量が減少し、総じて減収となる1兆2,888億69百万円となりました。営業損益について、モビリティセグメントは自動車部品の数量増、イノベーション材料セグメントは一部値上げ効果により増益となりました。半導体・電子材料セグメントは大幅な減益となりました。ケミカルセグメントは黒鉛電極の受払差のマイナス影響等により減益となり、総じて減益となる37億64百万円の損失となりました。営業外損益は、前連結会計年度に比べ為替差益の減少などにより全体では損失の増加となり、経常損益は147億73百万円の損失となりました。
当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純損益は、前連結会計年度に比べ繰延税金資産の計上による税金費用の減少等により損失が減少し、189億55百万円の損失となりました。
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(単位:百万円) |
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2022年 通期 |
2023年 通期 |
増減 |
増減率 |
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売上高 |
1,392,621 |
1,288,869 |
△103,752 |
△7.5% |
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営業利益 |
61,726 |
△3,764 |
△65,490 |
- |
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経常利益 |
61,711 |
△14,773 |
△76,484 |
- |
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親会社株主に帰属する当期純利益 |
32,422 |
△18,955 |
△51,377 |
- |
(2) セグメントの経営成績
[半導体・電子材料セグメント]
当セグメントでは、半導体前工程材料および半導体後工程材料は、前連結会計年度後半からの半導体市場の低迷により減収となりました。デバイスソリューションは、SiCエピタキシャルウェハーが増収となったものの、HDメディアが前年第4四半期連結会計期間からのデータセンター向け需要低迷が継続したことにより、大幅減収となりました。
この結果、当セグメントの売上高は前連結会計年度比で減収となりました。営業損益は、HDメディアの棚卸資産において、低価法による簿価切り下げや廃棄損を計上したこともあり、営業損失となりました。
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(単位:百万円) |
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2022年 通期 |
2023年 通期 |
増減 |
増減率 |
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売上高 |
427,171 |
338,126 |
△89,044 |
△20.8% |
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営業利益 |
45,533 |
△9,422 |
△54,955 |
- |
[モビリティセグメント]
当セグメントでは、自動車部品は、前連結会計年度のISOLITE GmbH事業譲渡による減収を、自動車生産の回復や新規車種向け製品の立上による数量増で補い増収となりました。リチウムイオン電池材料は、民生需要減速の影響で減収となりました。
この結果、当セグメントは、前連結会計年度比で売上高は横ばい、営業利益は増益となりました。
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(単位:百万円) |
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2022年 通期 |
2023年 通期 |
増減 |
増減率 |
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売上高 |
180,626 |
178,950 |
△1,676 |
△0.9% |
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営業利益 |
△735 |
1,934 |
2,669 |
- |
[イノベーション材料セグメント]
当セグメントでは、数量は減少したものの、原材料価格高騰に伴い製品販売価格が上昇し、前連結会計年度比で減収増益となりました。
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(単位:百万円) |
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2022年 通期 |
2023年 通期 |
増減 |
増減率 |
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売上高 |
141,081 |
130,093 |
△10,988 |
△7.8% |
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営業利益 |
10,126 |
11,307 |
1,182 |
11.7% |
[ケミカルセグメント]
当セグメントでは、石油化学は4年に一度の定修停止があった前連結会計年度比で数量増となったものの、ナフサ価格の下落により製品販売価格が下落し減収となりました。一方、営業利益はスプレッドの改善等で増益となりました。化学品は、原燃料価格上昇に対応した価格転嫁が進んで製品販売価格は上昇しましたが、一部製品で数量減となり売上高は前連結会計年度並み、営業利益は利幅回復により増益となりました。黒鉛電極は販売数量、製品販売価格ともに前連結会計年度比で下落し減収、営業利益も受払差のマイナス影響に加えて棚卸資産の評価損により減益となりました。
この結果、当セグメントは前連結会計年度比で減収減益となりました。
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(単位:百万円) |
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2022年 通期 |
2023年 通期 |
増減 |
増減率 |
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売上高 |
527,825 |
516,333 |
△11,492 |
△2.2% |
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営業利益 |
24,910 |
7,718 |
△17,192 |
△69.0% |
(生産、受注及び販売の実績)
(1)生産実績
当社グループの生産品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、セグメントごとに生産規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。このため生産の状況については、「経営成績等の概要 (2) セグメントの経営成績」におけるセグメントの経営成績に関連付けて示しております。
(2)受注実績
当連結会計年度において受注実績は、金額に重要性がないため記載を省略しております。
(3)販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
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セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
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半導体・電子材料 |
338,126 |
79.1 |
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モビリティ |
178,950 |
99.0 |
|
イノベーション材料 |
130,093 |
92.2 |
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ケミカル |
516,333 |
97.8 |
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報告セグメント計 |
1,163,502 |
91.1 |
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その他 |
125,367 |
108.1 |
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合計 |
1,288,869 |
92.5 |
(注)1 「その他」の区分は、報告セグメントに含まれない事業セグメントであり、ライフサイエンス関連製品等の事業を含んでおります。
2 セグメント間の取引については、相殺消去しております。
3 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合については、当該割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しております。
(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)
(1)財政状態の分析
当連結会計年度末の総資産は、棚卸資産、のれん等無形固定資産等が減少し、前連結会計年度末に比べ617億91百万円減少の2兆319億53百万円となりました。負債合計は有利子負債(借入金、コマーシャル・ペーパー、社債及びリース債務)が減少し、前連結会計年度末比657億41百万円減少の1兆4,532億85百万円となりました。純資産は、為替換算調整勘定等の増加等もあり、前連結会計年度末比39億49百万円増加の5,786億68百万円となりました。
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(単位:百万円) |
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前連結会計年度末 |
当連結会計年度末 |
増減 |
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総資産 |
2,093,744 |
2,031,953 |
△61,791 |
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負債合計 |
1,519,026 |
1,453,285 |
△65,741 |
|
純資産 |
574,718 |
578,668 |
3,949 |
(2)キャッシュ・フローの状況の分析
営業活動によるキャッシュ・フローは、税金等調整前当期純損失を計上したものの棚卸資産の減少等により、前連結会計年度に比べ193億10百万円の収入増加となる1,186億86百万円の収入となりました。
投資活動によるキャッシュ・フローは、連結の範囲の変更を伴う子会社株式の売却による収入を計上したものの、有形固定資産の売却による収入及び投資有価証券の売却による収入の減少等により、前連結会計年度に比べ72億2百万円の支出増加となる618億69百万円の支出となった。
この結果、フリー・キャッシュ・フローは、前連結会計年度に比べ121億8百万円の収入増加となる568億17百万円の収入となりました。
財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出の減少等により、403億87百万円の支出減少となる628億80百万円の支出となりました。
この結果、当連結会計年度末の現金及び現金同等物は、為替変動の影響等も含め、前連結会計年度末に比べ38億59百万円増加となる1,899億15百万円となりました。
(3)資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、必要な資金について、自己資金の利用に加え、長期資金を主に設備投資計画等に基づき銀行借入及び社債の発行等によって調達するとともに、短期的な運転資金を銀行借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等により調達しています。
当連結会計年度においては、事業及び資産売却等により得たキャッシュによる有利子負債の返済等により、ネットD/Eレシオが1.00倍まで改善しました。企業価値向上のため、コア成長事業向けを中心とした設備投資を積極的に行うとともに、引き続き財務体質強化を進めていきます。
当社グループは、事業活動における収益力の向上に加え、運転資金の効率化等により、フリー・キャッシュ・フローの拡大を進めています。また、グループ各社の資金集約化等により、資金の効率的な活用も行っています。資金の流動性については、当連結会計年度末に保有している1,899億15百万円の現金及び現金同等物に加え、600億円のコミットメント・ラインを確保しており、資金需要にタイムリーに対応ができる状態を維持しています。
(4)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
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2023年実績 |
2025年 |
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売上 |
(兆円) |
1.29 |
1.0超 |
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EBITDAマージン |
(%) |
8.2 |
20 |
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ROIC |
(%) |
0.5 |
中長期的に10% |
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ネットD/Eレシオ |
(倍) |
1.0 |
1.0倍を目指す |
目標数値の達成により、総株主還元(TSR)は中長期的に化学業界で上位25%の水準を目指します。
(5)重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成しております。この連結財務諸表の作成にあたり、当連結会計年度における資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える将来に関する見積りを実施する必要があります。経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。
当社グループの連結財務諸表作成において採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しておりますが、特に次の重要な会計方針が、連結財務諸表作成における重要な見積りの判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載しております。
①有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の減損
当社グループは、営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローが継続してマイナスとなるなど減損の兆候が見られる場合に資産又は資産グループについて減損の判定を行い、使用価値と正味売却価額のいずれか高い方が帳簿価額を下回っていると判断される場合には、その差額を減損損失として認識します。使用価値は予算等社内における管理会計の計画数値を基に見積り、正味売却価額については不動産鑑定評価額等から関連する経費等を差し引いた額で見積っております。
将来の不確実な経済条件の変動等により有形固定資産及び無形固定資産(のれんを含む)の評価に関する見積りの前提が変化した場合には、認識される減損損失の金額に重要な影響を与える可能性があります。
②棚卸資産の評価
当社グループで保有する棚卸資産は取得原価をもって貸借対照表価額とし、収益性の低下により期末における回収可能価額が取得原価よりも下落している場合には、回収可能価額まで棚卸資産の評価を切り下げております。回収可能価額は、商品及び製品については正味売却価額に基づき、原材料等については再調達原価に基づいております。
当社グループの保有する棚卸資産の一部は、価格変動の著しい経済環境の影響を受ける傾向にあるため、市場価格が下落した場合には、棚卸資産の帳簿価額を切下げることになります。特に原油価格が下落した場合や黒鉛電極の需要が急激に減少した場合には、棚卸資産の評価損の金額に重要な影響を与える可能性があります。
③繰延税金資産の評価
当社グループが計上している繰延税金資産は、将来減算一時差異等に関するものであり、定期的かつ合理的に回収可能性の評価のための見積りを実施しております。繰延税金資産の回収可能性は、主に将来の課税所得の見積りによるところが大きく、課税所得の予測は将来の市場動向や当社グループの事業活動の状況及びその他の要因により変化します。繰延税金資産の回収可能性に不確実性がある場合、将来回収される可能性が高いと考えられる金額までを繰延税金資産に計上しております。
当該見積りについて、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合には、繰延税金資産及び法人税等調整額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
④退職給付債務及び費用
当社グループには、確定給付制度を採用している会社が存在します。確定給付制度の退職給付債務は、数理計算上の仮定を用いて算定しており、当該数理計算上の仮定には、割引率、退職率、昇給率等の様々な計算基礎があります。
当該見積り及び当該仮定について、将来の不確実な経済条件の変動等により見直しが必要となった場合には、退職給付に係る資産、退職給付に係る負債及び退職給付に係る調整累計額の金額に重要な影響を与える可能性があります。
(連結子会社株式の譲渡)
当社は、当社の連結子会社である株式会社レゾナック(以下「REC」)が直接的又は間接的に保有するミナリスメディカル株式会社(以下「MMC」)及びMinaris Medical America Inc.(以下「MMA」、MMC、Minaris Medical (Shanghai) Co., Ltd.とあわせて「ミナリスメディカル社」)の全発行済株式を、キヤノンメディカルシステムズ株式会社(以下「キヤノンメディカルシステムズ社」)に譲渡することを決議し、2023年3月31日付で株式譲渡契約書を締結しました。
(1)株式譲渡の理由
REC(旧日立化成株式会社)は、2018年、診断薬事業の基盤強化を目的として、脂質検査市場において確固たる地位を有するミナリスメディカル社(旧協和メデックス株式会社)を買収しました。RECの既存製品は血液や涙からアレルギーの原因物質などを調べる診断薬を主力とする一方で、ミナリスメディカル社は、RECのポートフォリオと補完的な生化学や免疫領域の体外診断薬を手がけており、製品ラインアップの拡充に貢献し、また、RECのグローバル販売網を活用することで、ミナリスメディカル社製品のグローバル展開を進めるといったシナジーを実現してきました。一方、国内生化学検査/免疫検査市場の成長は成熟域にあり、加えて、診断薬と検査装置の一体販売化の流れの中で国内外の競争環境が変化、マクロ環境も相俟ってミナリスメディカル社の業績は一定の成長に留まり、当社グループ(当社並びに当社の子会社及び関連会社の総称を意味し、以下同じとする。)傘下において今後の更なる成長を目指し、戦略の検討を行ってきました。
併せて、当社グループは、当社が2020年12月に公表し、2022年2月に新体制始動に伴い更新した「統合新会社の長期ビジョン(2021~2030)」でお知らせしました通り、川中に位置する当社の素材技術、川下に位置するRECのアプリケーション技術、及び両社の評価・解析技術を融合することで、当社グループ一体となってブレークスルーを実現させ、世界トップクラスの機能性化学メーカーとして、お客様にワンストップソリューション及び新たな機能を提供し、ひいては持続可能な社会全体へ貢献することを目指しております。その実現に向けて、当社グループは、コア成長事業、次世代事業、安定収益事業及び基盤事業で構成する補完性の高い事業ポートフォリオを構築しており、当該4事業群それぞれが役割に応じた高い競争力を発揮することで、市場に新たな機能を提供し続け、持続的な成長を実現することを目標としております。特に、当社グループの今後の成長を牽引していく、エレクトロニクス事業等のコア成長事業及び次世代事業には、積極的に投資を行っていく方針であります。
当社グループは、こうした長期ビジョンに基づき、持続的成長の実現に向けた最適な経営資源の配分及び事業ポートフォリオマネジメントを検討する中で、ミナリスメディカル社の在り方について、あらゆる選択肢を慎重に検討しました。その結果、ミナリスメディカル社の成長を支える戦略適合性/ベストオーナーの観点から、同社が蓄積してきた技術力、商品力、顧客基盤を高く評価し、国内屈指の検査装置メーカーとして、診断薬と装置の一体開発による免疫検査市場でのシェア拡大や同社顧客導入済装置を活用した検査診断薬の販売機会最大化等のシナジーが期待できるキヤノンメディカルシステムズ社のもとで事業拡大を図ることが、ミナリスメディカル社の取引先様、同社の関連製品を日々ご利用いただいている最終消費者の皆様及び同社に従事する従業員を含む各ステークホルダーの皆様にとって最適であると判断し、同社との間で本取引を推進することを決定しました。
(2)譲渡対象会社の概要
ミナリスメディカル株式会社の概要
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① |
名称 |
ミナリスメディカル株式会社 |
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② |
所在地 |
東京都中央区晴海1-8-10 晴海トリトンスクエアX-4F |
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③ |
代表者 |
取締役社長 金成 直希 |
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④ |
事業内容 |
体外診断用医薬品(診断薬)の開発・製造・販売、 自動分析装置の開発・製造・販売 |
Minaris Medical America Inc.の概要
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① |
名称 |
Minaris Medical America Inc. |
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② |
所在地 |
630 Clyde Ct., Mountain View, CA, US |
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③ |
代表者 |
取締役社長 島邊 暢飛 |
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④ |
事業内容 |
アレルギー診断薬を中心とした診断薬の開発・製造・販売、 自動分析装置の製造・販売 |
Minaris Medical (Shanghai) Co., Ltd.の概要
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① |
名称 |
Minaris Medical (Shanghai) Co., Ltd. |
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② |
所在地 |
SUITE 30 E1, JUNYAO INTERNATIONAL PLAZA789,SHANGHAI |
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③ |
代表者 |
董事長 松澤 勘文 |
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④ |
事業内容 |
体外診断用医薬品(診断薬)の輸入販売 |
(固定資産の譲渡)
当社は、2023年11月21日開催の取締役会において、当社が保有する固定資産を譲渡することを決議し、同日付で譲渡契約を締結しました。詳細は「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 注記事項(重要な後発事象)」に記載のとおりであります。
当社グループは、2023年1月に昭和電工㈱と昭和電工マテリアルズ㈱が統合してレゾナックとなり、「統合新会社の長期ビジョン」に基づき、当社グループの成長の中心となる事業に研究開発資源を集中し、シナジーの顕現に繋がる新規事業パイプライン創出に重点を置いた施策を進めています。
「世界No.1技術・製品を生み出し続ける」と言うビジョンのもと、技術の染み出しによるイノベーションの実現、事業本部を横断する技術開発の牽引、社会を変える長期R&Dの推進、という3つのミッションを掲げ、私たちの強み(コアコンピタンス)である、「作る化学」「混ぜる化学」「考える化学」の技術共鳴(レゾナンス)によるシナジー創出を図りながら、最短かつ確実に社会課題にお応えできるよう、研究開発活動に取り組んでいます。またオープンイノベーションやM&Aを活用し、必要な技術を社外からも積極的に導入していくことで、将来の成長を牽引する事業の早期の成果顕現、多様な技術・事業を通じたSDGsへの貢献に注力しています。
なお、当連結会計年度における研究開発費の総額は、
セグメントごとの研究開発活動は次のとおりであります。
(半導体・電子材料)
半導体・電子材料分野では、次世代事業のコアとなる基礎・基盤技術の研究開発、事業部門協働による新製品・新事業創出、社会を変える長期R&Dを目的として、研究開発部門との密接な連携の下に研究開発を推進しています。
一例としては、半導体デバイスの微細な回路形成を実現する半導体前工程材料(情報電子化学品(電子材料用高純度ガス・機能薬品)、半導体回路平坦化用研磨材料)、半導体後工程材料(エポキシ封止材、ダイボンディング材料、銅張積層板、感光性フィルム、感光性ソルダーレジスト)、デバイスソリューション(ハードディスク、SiCエピタキシャルウェハー(以下、SiCエピウェハー)、化合物半導体(LED))等の付加価値を高める開発をしました。
半導体前工程分野では、半導体製造プロセス材料として各種エッチングガス、クリーニングガス、成膜材料及び洗浄剤、溶剤の開発を進め、市場展開しています。今後も引き続き、低環境負荷、高性能化に寄与する研究開発を進めます。
半導体後工程分野では、プリント配線板用高機能積層材料に関し、低そり性や高耐熱特性を実現する高い技術力が評価された結果、一般社団法人日本化学工業協会より表彰されました。今後の半導体デバイスの微細化、大面積化に対応する優れた半導体パッケージ材料の開発を推進します。また、オープンイノベーションの活動として、当社が中心となり設立した国内の材料・装置メーカー13社で共同研究を進める次世代半導体パッケージ実装技術開発のコンソーシアムにおける研究開発の成果を発表しました。さらには、米国カリフォルニア州のシリコンバレーに半導体のパッケージング及び材料の研究開発センターの開設を予定し、導入設備などの調査、準備を開始しました。
ハードディスクについては、唯一のハードディスク外販メーカーとして、市場をリードする新技術の開発を継続しており、世界に先駆けて実用化した垂直磁気記録方式での高性能化を進めるとともに、次世代ハードディスクへの高密度記録となるシングルド記録(瓦書記録)、マイクロ波アシスト記録、熱アシスト記録の開発により更なる高性能化に向けた取り組みを行っており、Seagate Singapore International Headquarters Pte. Ltd.と熱アシスト磁気記録に対応した次世代ハードディスクの共同開発を継続実施しています。世界最大の記録容量である第10世代として、シングルド記録方式に対応し、アルミ基板を用いて当社の最新磁性層設計及び結晶微細化技術を導入することで、業界最大となる1枚あたり2.6テラバイトハードディスクの出荷をしています。
SiCエピウェハーについては、世界最大の外販メーカーとして、最高水準の品質の製品を提供し、国内外のデバイスメーカーから高い評価を得ています。当社製品は、㈱デンソー製のインバーターの駆動素子に採用されました。同インバーターはトヨタ自動車㈱が発表したLEXUS初のバッテリーEV(BEV)専用モデル、新型「RZ」に搭載されています。インバーターの駆動素子へのSiCエピウェハーの採用はLEXUSとして初となります。また、Infineon Technologies AG と新たな複数年の供給・協力契約を締結し、共同開発を含む提携関係を強化するなどの取り組みを継続的に行っています。また、現在量産中の第2世代製品の品質をさらに高めた第3世代ハイグレードSiCエピウェハーを開発し、量産を開始しました。本製品は、第29回半導体・オブ・ザ・イヤー2023において半導体用電子材料部門の優秀賞を受賞しました。さらに、SiCエピウェハーを構成する6インチのSiC基板の量産について、2022年日経優秀製品・サービス賞の最優秀賞を受賞しました。2022年に開始した、当社製基板を用いた8インチSiCエピウェハーのサンプル出荷を進めるとともに、さらなる品質向上に向けて、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業」において研究開発を進めています。今後も高性能で高い信頼性の製品を供給することで、SiCパワー半導体の普及に貢献します。
化合物半導体を用いた発光素子・材料では、高効率化、高出力化をターゲットとしたLED製品の開発に注力しており、従来の反射型LEDの2倍近い出力の「ダブルジャンクション反射型LED」を開発しました。成長する車載センサーや高性能フォトカプラなどの赤外領域の発光デバイスを主ターゲットに業界トップの品質とカスタマイズ力によりお客様の要望に応える製品を提供しています。
当連結会計年度における半導体・電子材料セグメントの研究開発費は、
(モビリティ)
モビリティ分野では、CASEの進展などに伴う自動運転化、電動化、軽量化、電装化、冷却性、安全性に関係する市場ニーズに幅広い材料ソリューション力で応えるとともに、企業の社会的責任としてカーボンニュートラルへの取り組みをより一層進めるため、リサイクル性、バイオプラスチックの適用検討を開発に取り込み推進しています。
現在上市中の樹脂ギヤ、樹脂バックドア、負極材、ブレーキパッド、粉末冶金等の製品は変化する市場動向にいち早く適応するべく開発を継続推進中ですが、それらに加えて新たに自動運転化のためのセンサー対応技術として「ミリ波透過コーティング」、車載デバイスの軽量化と冷却性を両立、向上させた新コンセプト冷却ユニットの「樹脂ウォータージャケット」、その他の製品技術の開発及び資源循環型材料の開発を進めています。
また、顧客である主要カーメーカーやTier1において既に主流である、自動車システム全体から末端部品の機能や必要性能をモデル上でシミュレートするモデルベース開発手法(MBD)の導入を継続推進しています。開発初期段階において3Dモデルと計算科学を用いて仮想試作・仮想評価をすることで、自社や顧客での開発時間を大幅に短縮できます。また、これまでにない新システムに必要となる解析手法や評価方法は、社内の計算情報科学研究センターや大学と開発中です。また、2050年のカーボンニュートラルに向けた長期R&Dテーマとして、資源循環型材料の開発も大学との共同研究中です。
先端電池材料については、各種電気自動車用に加えスマートフォン等の携帯用など多様なリチウムイオン電池に必要な、導電助剤である気相法炭素繊維「VGCF-H」、外装材であるアルミラミネートフィルム「SPALF」などの素材・部材の開発・販売を引き続き進めています。
当連結会計年度におけるモビリティセグメントの研究開発費は、
(イノベーション材料)
イノベーション材料分野では、広範多岐にわたる需要、個々のお客様の要望に迅速に応え、お客様の新製品開発の鍵となる材料をタイムリーに提案することを目的として、光機能材料、高機能ゲル、化粧品原料、インフラケミカルズ、エネルギー関連、アルミニウム及びセラミックスの研究開発を推進しています。
テレビなどの大型液晶ディスプレイに使用される各種製品は、市場で高い評価を受けています。市場が中国シフトする中で2020年6月に増設を完了した上海においても生産・供給を開始し、現地需要の取り込みに向けお客様の要望に即した新規開発品を複数市場に投入しています。また、電子材料、光学材料や歯科材料などに使用されるイソシアネートモノマー「カレンズMOI」や機能性アクリレート・メタクリレート「ファンクリルFAシリーズ」の開発、生産能力の強化を行い、販売を継続しています。特に「ファンクリルFA500シリーズ(脂環式モノマー)」の耐熱性及び高信頼性の特徴を生かし、車載用途への横展開を行い、事業拡大を図っています。
高速液体クロマトグラフィー用「ショウデックスカラム」では、先進国向けを主体に、最先端技術へ適用できるカラムを開発し、並行して新興国の市場開発を積極的に進めています。次世代医薬品に位置付けられている核酸医薬品の高感度分析を従来よりも簡易な条件で行うことが可能な内径1mmのHILIC(親水性相互作用クロマトグラフィー)用充填カラムを製品化し、アプリケーションで有用性を示しながら市場浸透を図っています。環境関連では国際的に規制強化が進むPFASやハロゲン酸化物の高感度分析を可能とする各種カラムの市場展開を推進しています。今後も特にバイオ・医薬分野、迅速・省溶媒、高感度・高分離に重点を置いたゲル(充填剤)やカラムの研究開発を促進します。
化粧品原料では、オンリーワン製品であるビタミンC誘導体「アプレシエ」及びビタミンE誘導体「TPNa」を中心に、未知の機能の探索・検証に注力し、市場ニーズの高いアンチエイジング、保湿、アイケア、ヘアケアの分野で新機能を見出しています。それらのエビデンスデータをお客様にご提供し、お客様の製品企画のきっかけを作ることで市場の拡大を図っています。
インフラケミカルズでは、耐用年数が寿命を迎えた下水道管の補修用不飽和ポリエステル樹脂「リゴラック」の光硬化タイプに注力し、技術開発を継続しています。
エネルギー関連では、電力モーターの高性能化による高電圧・耐サージ性に応じられる、xEV向け高耐熱絶縁ワニスの技術開発を継続しています。
リチウムイオン電池負極材用水系バインダー樹脂「ポリゾールLBシリーズ」の持つ、低抵抗性、優れた温度特性などが認められ、急速充電対応を求められる車載用途に国内で納入が開始されました。またリチウムイオン電池の最大需要地である中国での生産体制を構築し、一部供給を開始しました。今後もさらに市場ニーズを見据えつつ研究開発を加速し、車載用途への拡大を推進していきます。リチウムイオン電池用セパレーターのセラミック耐熱層用バインダーとして最適化したポリ-N-ビニルアセトアミド「PNVA」は、電池の安定性向上に寄与し、市場展開を継続しています。
アルミニウムでは、市場から要望されている軽量、高強度、高機能の材料、部品及び製品の開発を進めるとともに、これらの製造プロセスに係る基盤技術の研究にも注力しています。素形材関連では、昨今の自動車における軽量化ニーズの高まりを受け、サスペンションや駆動部品を始めとした自動車用部品でアルミ製品の採用が拡大しており、今後も需要は堅調に増加することが見込まれています。また、カーボンニュートラル対応プロセス技術の量産適用、シミュレーションを活用した機械的特性の予測などにも取り組んでいます。冷却器関連では、パワーデバイス向けモジュール提案に向けた熱マネジメントシステムの開発・評価を強化し、次世代冷却器の開発に取り組んでいます。
確実な成長が見込まれる半導体市場において、セラミックス関連では、半導体の研磨プロセスに使用されるセラミックス砥粒や、半導体用封止材の誘電率を制御するためのフィラーの研究開発に注力しています。当社グループの基盤技術である分子設計から原料を「作る技術」と、原料を配合し機能を設計する「混ぜる技術」の融合により、次世代の顧客ニーズに合致した性能を有する複合材料の提供を目指します。
電子デバイス、パワーデバイス市場向けには、デバイスの高密度化、高性能化に対応した高い放熱性と電気絶縁性を併せ持つフィラー材料(アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム)の開発を行っています。高熱伝導材料の開発と評価技術の深化により、放熱部材向けのフィラーとしての性能向上を実現し、パワーモジュール等の用途への展開を進めています。
また、スマートフォンなど多くの電子機器に用いられる積層セラミックコンデンサー(MLCC)の用途では、MLCCの更なる小型化・高容量化に貢献すべく、原料である超微粒子酸化チタンの材料開発に取り組んでいます。
当連結会計年度におけるイノベーション材料セグメントの研究開発費は、
(ケミカル)
ケミカル分野では、石油化学・基礎化学で、さまざまな産業の起点・インフラとなる製品を提供するとともに、製造工場のCO2排出量削減などカーボンニュートラルに向けた技術開発に取り組んでいます。
石油化学においては、コア技術である触媒、有機合成、高分子合成の技術を集積し、電子・電気機器、輸送機器、食品包装などの分野において、多様な市場ニーズに応えるための研究開発を推進しています。主要な誘導品事業であるアセチル及びアリルアルコール製品群では、自社開発した製造プロセスの優位性を伸長させるため、触媒の性能向上と新触媒の開発を進めています。大分コンビナートの酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸アリルのプラントは、更なるコスト競争力の強化と生産性の向上を達成すべく、触媒性能の向上を追求しています。
長期R&Dの取組みとして、NEDOの「グリーンイノベーション基金事業/CO2の分離回収等技術開発プロジェクト」において、日本製鉄㈱とともに、低圧・低濃度のCO2を低コストで分離回収するための技術開発及び、回収したCO2を原料に化学品を製造する技術検証に取り組み、カーボンニュートラルの実現に貢献していきます。また、内閣府総合科学技術・イノベーション会議(CSTI)による戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「アンモニア・水素利用分散型エネルギーシステム」において、岐阜大学、三菱化工機㈱とともに、アンモニア燃焼器用改質器ユニット及び燃料電池用改質器ユニットの研究開発で協働し、アンモニア分解技術を活用した化学品事業のビジネスモデルの創出を目指します。
当連結会計年度におけるケミカルセグメントの研究開発費は、
(その他)
計算科学・情報科学の技術力強化と材料開発への適用に積極的に取り組んできました。半導体前工程材料のCMPスラリーの研磨機構を、ニューラルネットワークポテンシャルを用いた分子動力学計算を実施して計算結果を仮想現実技術で解析することで解明しました。
Enthought Inc.とのマテリアルズ・インフォマティクス(MI)推進プログラムを開始して、MI解析ツール開発、プラットフォーム開発、MLOps(機械学習オペレーション)に長けた人材育成をより強化しました。
ディープラーニング技術を用いたAIの進化と膨大な蓄積データを用いるケモインフォマティクスアプリを自社開発し、運用を開始しました。情報科学による予測技術を活用することで、新しい化合物の開発における物性計算などの時間が大幅に短縮することが可能となりました。
世の中のニーズや社会の声を聴き、社会課題を解決するため、当社グループのR&Dの中核となるオープンイノベーションの拠点「共創の舞台」(神奈川県横浜市)を設立しました。当社グループの強みである「計算情報科学」「材料解析」「量産化技術・設備管理」「化学品安全管理・評価」の機能を持つ組織が集積し活動しています。「共創の舞台」で活動を行っている、「次世代高速通信材料」テーマでは、2023年より6G向け半導体の新材料開発を開始しました。
当連結会計年度における報告セグメントに含まれない「その他」の研究開発費は全社共通を含め13,213百万円であります。