文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。
(1) 会社の経営の基本方針
当社グループの基本方針は次のとおりです。
① 使命
○ 情報・サービスを通じて自動車産業の発展と豊かな社会づくりに貢献する。
快適、安全で環境性能の高いクルマがより低コストで消費者に供給できれば、世界でより多くの人がクルマの楽しさや便利さを感じてもらえます。マークラインズは『自動車産業ポータル』の運営を通じて自動車産業に関わる企業のお客様に、情報や各種サービスをグローバルに提供していくことにより、その実現に貢献します。
② 共有する価値観
○ オープン
当社の出発点はグローバル化の進展とともに自動車業界の系列構造が、よりオープンな関係に変化していくなかで、地域・グループを超えて情報サービスを提供することでした。マークラインズは開かれたB2B取引支援の運営体として数多くの多彩なお客様が集まっていただける場を提供します。社内においても、年令、性別、学歴、国籍を問わず人材を登用するオープンポリシーを貫いています。
○ 相互繁栄
当社はお客様、株主、従業員、パートナーなど多くのステークホルダーとの関係があります。当社が将来に亘って質の高いサービスを生み出し成長するには、それぞれとのバランスの取れた関係が大切と考えます。長期的な視点からWin Winの関係を構築して参ります。
○ 諸行無常(=すべて変化する)
この世のすべての行いは常無きもの、自動車業界を取り巻く環境も刻々と変化し、事業機会を生み出します。当社が存在するのも世界が変化するからに他なりません。私たちは世界の動きを、分かり易く迅速にお伝えするとともに、お客様のご要望に沿った個別のプロジェクト調査も行い、変化を綿密に調べます。また、今日できなかったことも明日できる、との信念のもと、わたしたち自身も変化し続けます。当社グループが、持続的かつ収益力のある成長企業であり続けるために、世界で存在感のある企業を目指し、ビジネスモデルの変革を実行して参ります。
(2) 目標とする経営指標
当社グループが重視している経営指標は、次のとおりです。
① 利益成長率
連結営業利益及び連結経常利益の利益成長率を重視する理由は、真に強い企業となるためには、継続して安定した利益成長を遂げていくことが重要と考えているためであり、前期比20%以上の利益成長率の達成を目標としております。2023年12月期の連結営業利益及び連結経常利益の利益成長率は、それぞれ22.6%となりました。
② 株主資本利益率(ROE)
株主資本利益率(ROE)を重視する理由は、株主資本を使用してどのくらい利益を上げたのか、株主・投資家へのリターンの尺度とされているためであります。
2023年12月期連結会計年度の株主資本利益率(ROE)は27.8%となりました。当社は、収益力の向上と業績に応じた株主還元策等を踏まえて、中期的にROE30%の維持と資本効率の向上に努めてまいります。
③ 配当性向
株主の利益配分を重要な経営方針と位置付け、中長期に株式を保有していただくため、安定的な配当を実施することを目標としております。経営基盤の強化と今後の事業領域の充実のための内部留保を確保しつつ、業績に応じた配当を実施することが重要と考え、配当性向は連結業績をベースに35%を目安と考えております。
第23期連結会計年度の配当性向は、34.4%となります。
(3) 中長期的な会社の経営戦略と対処すべき課題
当社グループが、持続的に収益力のある成長企業であり続けるために、世界で存在感のある企業を目指し、ビジネスモデルの変革を実行して参ります。
① グローバル展開の再加速に向けた投資
潜在顧客のおよそ9割が所在する海外への投資を強化しビジネス展開を再び加速・推進してまいります。
・グローバルの地域を軸とした営業部門の組織変更により、アジア、北米、欧州などの各地域おいて、より効果的な営業活動を展開します。
・在外子会社への出向者や海外出張を増やし、本社で蓄積されたノウハウの移植を推進します。
・在外子会社の人員体制強化を進め、営業力・コンテンツ力の強化を図ります。
・海外7拠点目となる子会社の設立を検討してまいります。
② リバースエンジニアリング分野への新たな投資
現在、建設中のベンチマークセンター(収容能力約100名)稼働後は、車両・部品調達代行サービス及びコスト比較分析サービスに加えて、車両の分解、計測、CADデータの取得など新たな機能が実装されます。これを契機として、リバースエンジニアリング分野における本格的な取り組みを推進してまいります。
また、当社が実車両を調達し、独自に分解することで3現主義(現地、現物、現実)を実現することができます。これまでより深く、さらに幅広い分析活動を通じて既存事業が提供するサービスの付加価値向上を推進してまいります。
③ 情報プラットフォームサイトへの先進システム投資
ChatGPTなどの生成AI技術を導入し、サイト内検索の機能強化を図るとともに、BI(Business Intelligence)ツールを活用してサイト内に蓄積してきた様々な計数を直感的にグラフ化できる機能を実装するなどデータの見える化を推進してまいります。
④ SDV(Software Defined Vehicle)コンテンツへの投資
自動車のライフサイクルコストに占めるソフトウェアの比重の高まりを受け、SDV関連のコンテンツ強化を開始しました。当該領域におけるコンテンツのさらなる強化を図るため、グローバルのソフトウェアベンダーに関するレポートメニューを新たに追加し、コンテンツの増強を図ります。
⑤ バックオフィス部門の強化
事業規模拡大を背景として、当社グループ全体のバックオフィス部門強化の必要性が高まったことを受け、管理部を人事総務部、財務経理部に分離し、各々の機能を明確化しました。今後は、それぞれの部門の機能を強化し事業活動の推進を図ってまいります。
⑥ 情報プラットフォーム事業以外の事業の営業力強化
情報プラットフォーム会員は、情報プラットフォーム事業以外の事業の有望な潜在顧客であるため、会員数の増加とともに各事業の受注も拡大を続けております。今後は、各事業における独自の営業活動を強化すると同時に、事業間の連携を推進することで、より一層の受注拡大を図ってまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。
当社が持続可能な社会の実現に貢献して、その結果として社会から信頼される企業であり続けるために、社員個人個人が当社の社会的責任の重大性を認識し、実行することが重要であると考えています。
当社は、基本理念として「情報・サービスを通じて自動車産業の発展と豊かな社会作りに貢献する。」を掲げております。創業以来、世界のお客さまに提供して参りました情報・サービスを通して、自動車産業の発展に貢献し、ひいては持続可能な社会の実現に役立つことを目指します。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針、戦略
当社は「オープン」を基本理念に掲げております。この目指すところは、「情報・サービスを通じて自動車産業の発展と豊かな社会作りに貢献する。」ための原動力となる人材を、年令、性別、学歴、国籍の別なく人材を登用するオープンポリシーを貫いています。
社員一人ひとりが最大限の力を発揮していくためには、多様な発想、様々な能力をもった社員が活発な議論を交わす職場環境や企業風土が必要不可欠です。互いの違いを尊重し、助け合うことで生き生きと働ける組織を育むことを目指します。
当社は、当社グループの業務遂行を阻害するグループ全体・総括的なリスク管理の報告及び対応の検討を行うことを目的として、代表取締役社長を委員長とし、常勤監査役、内部監査室長、人事総務部長により構成されるコンプライアンス・リスク統制委員会を設置しております。委員会は原則四半期に一度開催され、リスクを積極的に予見することにより、会社に及ぼす影響を最小限に抑えるための体制整備を推進しております。
当社グループでは、「戦略」において記載した人材の多様性の確保を含む人材の育成及び社内環境整備に取り組み、新たな価値創造、成長戦略の実現に繋げて参ります。また、バランスを取り、各々の指標を改善していくことを目標としております。
人材の育成及び社内環境整備に関する方針に関する指標の内容並びに当該指標を用いた指標及び実績
指標 2023年12月期実績
女性正社員比率 33.6%
女性管理職比率 25.0%
外国人採用比率 9.7%
当社グループの業績は、今後起こりうる様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。以下において、当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しています。また、必ずしも事業等のリスクに該当しない事項についても、投資判断上、重要と考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しています。当社グループはこれらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の防止及び発生した場合の対応に努める方針であります。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、別段の記載のない限り、当連結会計年度末現在における当社の判断に基づいています。
当社株式に関する投資判断は、以下の事業等のリスク及び本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行なわれる必要があると考えています。また、以下の記載は当社株式への投資に関連するリスクをすべて網羅するものではありませんので、この点にご留意ください。
(1) 事業内容について
① 特定事業への依存について
当社グループの売上高のうち、情報プラットフォーム事業売上高が占める割合は2022年12月期連結会計年度で63.5%、2023年12月期連結会計年度で64.2%となっております。現在、コンサルティング事業、人材紹介事業、市場予測情報販売事業、プロモーション広告事業、車両・部品調達代行事業、分解調査データ販売事業及び自動車ファンド事業を展開する等、事業領域の拡大並びに係る各事業の売上高の増加を図りながら、収益構成を変化させてきており、情報プラットフォーム事業売上高への依存度は近年低下傾向にあります。ストックビジネスである情報プラットフォーム事業は、当社の中核事業であり、安定した収益成長を続けております。一方で連結売上高に占める割合が高い当該事業売上高が計画どおり進捗しない場合には、当初の収益計画から下方に乖離する可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
② 自動車業界に特化した情報提供サービス事業について
当社グループの主要な事業である情報プラットフォーム事業は、自動車業界に特化した情報提供サービス事業です。自動車は、一般に2万~3万点の部品で組み立てられていると言われております。そのため、自動車業界には完成車メーカー、部品メーカー以外に原材料・素材産業から電気・電子機器産業、機械産業等の多種多様な産業が幅広く携わっており、当社の契約企業も直接的・間接的に自動車業界に携わる多様な産業・業界に及んでおります。そのため、収益自体は特定の顧客・業界に依存はしておりませんが、自動車需要が大幅に落ち込む等、総合産業である自動車産業の業況に著しく大きな影響を与える景気後退があった場合には、新規契約の停滞、契約企業の解約が増加する可能性があります。その場合、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
③ 情報プラットフォーム以外の事業について
・コンサルティング事業、人材紹介事業、市場予測情報販売事業、プロモーション広告事業、車両・部品調達代行事業並びに分解調査データ販売事業
各事業ごとの成長戦略に基づき売上高増加を図っております。しかしながら、事業展開が計画どおりに進捗しない場合には、当社グループの業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
・自動車ファンド事業
新たな技術を生み出し将来の自動車産業に大きく寄与する可能性のあるベンチャー企業、及び社歴のある中堅企業でも、自らが再イノベーションを起こして再成長を期す企業を対象に投資を行っております。投資にあたっては、対象企業の財務内容等の詳細な事前審査を行い、十分にリスク検討しておりますが、投資先企業の事業が計画通りに進捗せず、業績が悪化した場合には投資が回収できず、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 海外事業について
当社グループは、当連結会計年度末現在、アメリカ合衆国、中華人民共和国、タイ国、ドイツ、メキシコ合衆国及びインドに海外子会社を有し、情報プラットフォーム事業及びプロモーション広告事業を海外展開しております。これら子会社を通じた事業の海外展開が、計画どおりに進まず、当社グループの業容が拡大しない場合には、財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(2) 為替の変動について
当社グループの主要事業である情報プラットフォーム事業は、利用するパソコンの契約台数に応じて、基本年間60万円から240万円の定額料金制を採用しております。一方、海外向け価格は、現在、円貨建て料金をベースに米ドル、ユーロ、英ポンド及び中国元の4通貨で換算した料金体系にしており、為替変動により円貨建て料金価格と外貨建て料金価格との間に大きな乖離が生じた場合に対応して適時に外貨建て料金を改定しております。
しかしながら、急激で極端な円高が料金価格改定直後に発生した場合には対応出来ない可能性がある他、料金価格改定を行った場合においても、海外企業にとっては実質利用料金の値上げとなるため、海外新規契約の停滞や海外企業の退会等につながる可能性もあります。そのため、急激で極端な円高が起こった場合、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。なお、外貨で受領する海外契約企業からの利用料金については、為替変動が当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに与える影響を極力回避する目的で入金都度、円に換金することで多額の外貨を長期間保有しない方針を採っております。
(3) 特定の人物への依存について
当社代表取締役酒井誠は、当社グループの経営方針、経営戦略の策定をはじめ、事業推進に重要な役割を担っております。当社グループは、同氏に依存しない体制作りに努めておりますが、グループ全体を取り纏めていくという点で、現時点ではなお同氏の影響がかなり大きい状況にあります。現在のところ、同氏が退任する予定はありませんが、何らかの理由により業務を継続することが困難になった場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(4) 情報コンテンツについて
① 情報の入手先について
当社グループは、台数統計情報のコンテンツにおいて外部から購入もしくは提携により取得した情報を提供しております。
当社グループでは情報の入手先の開拓・多様化に努めておりますが、取得価格の上昇、提携解消等その他、自然災害等の予期せぬ理由で係る情報の継続的な取得が困難になり、かつ、当該情報の代替購入先の開拓が間に合わなかった場合には継続的な情報提供サービスが行えなくなる可能性があります。その場合、当社グループのサービスに対する評価を損なうことで、新規契約、既存契約に影響を及ぼし、財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
② 著作権権利侵害・提供情報の誤謬について
当社グループが情報プラットフォーム上で提供する情報コンテンツは、著作権等権利侵害が発生しないよう、チェックリストに基づく確認と査読者による確認の複数チェック体制により運用しております。また、著作権等権利侵害が発生しないよう入社時研修の実施等対策を講じております。2001年のサービス開始以来、著作権利侵害に該当する事実はないと判断しております。
一方、提供する情報については、コンテンツ作成者以外の査読・確認等による複数体制で誤謬防止に努めております。
しかしながら、コンテンツ内容の誤謬により、当社グループの評価に影響を与える可能性や、第三者の著作物を過失により無断転用する等の権利侵害などにつき、損害賠償を求められる可能性を否定できず、そのような場合、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
③ 他社からの知的財産侵害を防御するための社内体制について
当社グループは、特許・実用新案権・意匠権は有しておりませんが、同名の類似サービスを排除できるよう、社名について、商標権(日本・中国・アメリカ合衆国)を取得しております。当社グループのコンテンツが他社により無断転用或いは無断転載されることによる当社著作権への侵害を防止するため、情報プラットフォーム会員規約を制定し、著作権等、当社への権利が侵害された場合には、会員資格の停止などの対抗措置を取ることを可能としております。また常に利用者による異常なアクセスを監視し、万が一、会員規約に違反する行為が発覚した場合には、コンプライアンス・リスク統制委員会で措置の検討を行うか、早急な対応が要求される場合は代表取締役社長と人事総務部長との間で対応措置を検討することとしております。
(5) システムに関するリスク
① システム障害について
当社グループが情報プラットフォームにて提供する自動車情報は、インターネットのネットワークを利用して情報提供サービスを行っており、24時間365日年中無休で安定したサービスを提供する必要があります。そのため、信頼の置けるデータセンターの活用や日進月歩する情報セキュリティー関連技術の導入、サーバーの冗長化等継続的な設備投資や保守管理を行い、最適な環境下でサービス提供ができるよう努めております。
しかしながら、予期しない自然災害・停電やコンピュータ・ウイルス並びに不正アクセス等による予想しないシステム障害の発生により、サービス提供が停止する可能性があります。当社グループでは、サービスの保証については利用規約に免責条項の規定を設けておりますが、損害賠償請求が提起され、係る規定の適用が認められない場合は、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
② システム開発・保守の外部委託について
当社が運営する「自動車産業ポータル」に係るシステムの開発及び保守の一部を、現在、グループ外のシステム会社に委託しております。当該システム会社とは安定的に取引を行っておりますが、契約更新ができなかったり、委託条件が悪化する可能性があります。その場合、開発スケジュールに支障をきたしたり、他の外部委託先との契約がシームレスに締結できなかったことにより、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
(6) 技術革新について
① 技術革新に対応する投資について
当社グループが提供するサービスは、インターネット技術に密接に関連しています。インターネット関連技術は技術革新が早く、新技術、新サービスが次々と生み出されております。当社グループでは、適宜新しいシステム技術やセキュリティー関連技術等を取り入れながらシステムの構築、運営、また、適時にシステム・リノベーションを行い、サービス水準を維持、向上させております。
しかしながら、システム・リノベーションが計画どおりにシームレスで移行出来ない場合は、一時的に新規契約が停滞する可能性を否定できず、収益に影響を与える可能性があります。また、インターネット分野での技術革新のスピードは著しいものがあり、当社グループが想定しない新技術、新サービスが生み出された場合には、それらに対応するために、設備投資及び費用の支出が必要になり、当社グループの財政状態、業績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
② 情報検索の機能向上について
当社グループが情報プラットフォーム上で提供している情報コンテンツは、当社グループが調査・収集を行った独自情報や調査・編集した高付加価値の情報で構成されております。また、当社グループでは、契約企業のご要望を反映しながら、より詳細な調査情報の提供、情報のカバー範囲を新興国に広げる等、日々継続してコンテンツの強化に努めております。一方で、AI等による情報検索技術が発達してきております。今後、コンテンツの内容によっては、検索技術の向上が新規契約見込会員等の当該コンテンツに関連した情報入手を容易にさせる可能性があり、無料登録会員の登録数減少等契約数に影響を及ぼす可能性があります。
その場合、新規契約数に影響を及ぼす可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(7) 競合について
当社グループが行なう情報プラットフォーム(自動車業界のポータルサイト)事業と全く類似の事業は国内外を通じて存在していないものと認識していますが、当社グループの顧客層を対象とした情報サービスを部分的に提供している競合企業は存在しております。
当社グループの最大の強みは、6万人以上の完成車メーカーの社員を含む、自動車関連事業従事者40万人以上(2024年2月現在、無料登録会員含む)とインターネットを通じて双方向コミュニケーションで繋がっていることにあります。これに、日本の完成車メーカー全社、海外の有力メーカーが組織的に活用しているという自動車業界における情報プラットフォームの利用実績も併せ、新規参入障壁は高いと認識しております。また、インターネットの特性を生かしたサービスを展開し、提供する情報の質、量及び領域の拡充、また、利便性の維持向上により差別化を図り、法人契約社数の増加に結び付けております。
以上のことから、現在、部分的に情報サービスを提供する他社と激しく競合する環境にはないと判断しておりますが、今後、部分的に競合する他社における事業領域の拡大や、当社グループの事業モデルを模倣したサービスを行なう同業他社が出現した場合、一時的に収益性が低下すること等により、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(8) 法的規制について
① 個人情報保護について
当社グループは、個人情報を含む顧客情報を保有及び管理しています。これらの情報資産を適切に保護することは業務運営上最重要事項として認識しており、個人情報保護法に則した社内規程の整備、入社時の社員教育の他、個人情報を取扱う役職員を限定し、個人情報へのアクセスにあたってはシステムの採用やパスワードにより制限を行う等、個人情報の漏えい防止策を講じております。
しかしながら、外部からの不正な手段によるサーバー内への侵入などの犯罪や従業員の過誤等により個人情報等重要なデータが消去または不正に入手される可能性は否定できません。このような事態が発生した場合には社会的な信用を失うこととなる他、損害賠償負担等、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
② 有料職業紹介事業について
当社グループでは、日本国内で有料人材紹介事業を展開・運営しております。当社は当該事業を展開するにあたり、厚生労働大臣の許可を受けております。当社が有している有料職業紹介事業許可証の取消しについては、職業安定法第32条に欠格事由が定められております。現時点では、当社に許可取消しとなる事由に該当する事実はありません。
当該事業の全体売上高に占める割合は、2023年12月期連結会計年度において3.5%でありますが、当該許可の取消しにより、当社グループ全体の評価を損なう可能性があります。その場合、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
(9) 人材の確保及び育成について
当社グループでは、業容の拡大及びサービス内容の多様化に対応して、優秀な人材を適時に確保し、当社グループの企業ビジョンを共有化できる人材を育成していくことが重要であると考えています。しかしながら、雇用環境の変化等により当社グループの事業に必要な知識、技術、経験等を有する人材に対する需要が労働市場で高まり、必要な人員拡充が計画どおり進まない場合や、何らかの事由により人材の社外流出があった場合には、業容拡大の制約要因となり、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
情報プラットフォーム事業については、営業活動の一環として日本では「オートモーティブ ワールド」、「人とくるまのテクノロジー展」及び「名古屋オートモーティブ ワールド」、中国では「上海モーターショー」、ドイツでは「ミュンヘンモーターショー」にそれぞれ出展しました。また、情報プラットフォームのコンテンツについては、世界各国で開催された展示会の取材を通じて入手した電動化やSDV(Software Defined Vehicle)の進展など自動車業界の最新動向を適宜アップロードしました。さらに、ヒートマップツールを活用した顧客のアクセス動向の解析結果に基づき自動車メーカーの拠点情報、70,000社検索などのメニュー画面のレイアウト変更によりユーザーの利便性向上を図りました。これらの結果、契約社数は前連結会計年度末から514社増加(前期452社増加)の5,174社となり5,000社を超えました。
コンサルティング事業については、コスト比較分析や前期第4四半期から提供を開始したECUベンチマークサービスなどの受注が好調に推移し売上高、セグメント利益ともに大きく伸張しました。分解調査データ販売事業については、新たに販売を開始したレポートの受注が業績に寄与し前期を上回る結果となりました。プロモーション広告事業(LINES)については、引き続きセミナーの集客ツールとしての利用が進むとともに、リピーターからの受注単価の上昇も売上の増加に寄与しました。市場予測情報販売事業については、第3四半期において既存顧客の契約更新率が低下した影響などを受け売上高は前期比で3.4%の増加に留まりました。車両・部品調達代行事業については、中国自動車メーカーの車両本体及び部品や日系自動車メーカーのEV関連部品などの引き合いが好調に推移し、受注件数も前期を上回りました。人材紹介事業については、成約件数が増加し売上高も増加しました。自動車ファンド事業については、関連会社である「自動車産業支援ファンド2021投資事業有限責任組合」から毎期定額で受領する管理報酬を売上として計上しております。
この結果、当社グループの当連結会計年度における業績は売上高4,845百万円(前期比17.5%増加)、営業利益は1,991百万円(前期比22.6%増加)、経常利益は1,988百万円(前期比22.6%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等を605百万円計上したこと等から、1,383百万円(前期比21.4%増加)となりました。
各セグメントの経営成績は以下の通りであります。なお、当連結会計年度より、一部の報告セグメントについて区分及び名称を変更しており、当連結会計年度の比較・分析は、変更後の区分に基づいております。
〇 事業セグメント別損益(連結ベース)
〇 「情報プラットフォーム」事業:売上高3,109百万円(前期比18.7%増加)、セグメント利益(営業利益)1,933百万円(前期比21.2%増加)
当連結会計年度における情報プラットフォーム契約純増社数は前連結会計年度末から514社増加の5,174社となりました。北米第2拠点のメキシコ子会社も本格的に稼働し、グローバル7カ国の拠点から営業及び情報収集活動できる体制が整いました。地域別の売上高は、日本以外の地域おいて前期比20%以上の増加となりました。
○ 「情報プラットフォーム」事業地域別売上高
〇 コンサルティング事業:売上高489百万円(前期比27.5%増加)、セグメント利益(営業利益)113百万円(前期比52.6%増加)
当連結会計年度のコンサルティング事業は、コスト比較分析サービスが引き続き好調に推移したことに加え、ECUベンチマーク及び実験の受託業務の受注が増加しました。また、案件当たりの単価及び利益率が前期を上回ったことも業績押し上げ要因となりました。これらにより売上高及びセグメント利益は前期比で大きく伸張しました。
〇 分解調査データ販売事業:売上高253百万円(前期比20.2%増加)、セグメント利益(営業利益)110百万円(前期比5.3%増加)
当連結会計年度の分解調査データ販売事業は、提携先が手掛けた新型車種の分解調査レポートを順次投入したことにより製品ラインアップ拡充が進み、受注高が増加しました。一方で、利益率の高い当社内製の分解調査レポートの販売が減少したため、売上高は前期比20.2%増加となったものの、セグメント利益は前期比5.3%増加にとどまりました。
〇 プロモーション広告事業:売上高95百万円(前期比9.2%増加)、セグメント利益(営業利益)83百万円(前期比8.5%増加)
当連結会計年度のプロモーション広告事業は、電動化が進む自動車業界内で特に自動車及び大手部品メーカー向けに自社製品・サービスを訴求する手段としての需要が高水準で継続しました。また、当社内他事業部からの案件紹介により、商談件数が増加したことも業績向上に寄与しました。
〇 市場予測情報販売事業:売上高233百万円(前期比3.4%増加)、セグメント利益(営業利益)78百万円(前期比12.4%増加)
当連結会計年度の市場予測情報販売事業は、第3四半期における既存顧客の契約更新率低下の影響を受けたこと、及びGlobalData.への社名変更によりサービス認知度の進行が一時的に滞ったことにより売上高は前期比3.4%増加にとどまりました。セグメント利益に関しては、固定費の減少も寄与し前期比12.4%増加となりました。
〇 車両・部品調達代行事業:売上高456百万円(前期比12.4%増加)、セグメント利益(営業利益)77百万円(前期比45.2%増加)
当連結会計年度の車両・部品調達代行事業は、注目度の高い中国EVメーカーであるBYD社の車両本体及び部品調達に関する案件が好調に推移したことなどにより売上高は前期比12.4%増加となりました。また、利益率の高い案件が増加したことを受け、セグメント利益については前期比45.2%増加となりました。
〇 人材紹介事業:売上高169百万円(前期比10.6%増加)、セグメント利益(営業利益)71百万円(前期比24.2%増加)
当連結会計年度の人材紹介事業は、ハイクラス人材の成約は減少したものの自動車メーカーの採用ニーズは旺盛で成約件数が増加し、売上高は前期比10.6%増加となりました。
〇 自動車ファンド事業:売上高39百万円(前期比-)、セグメント利益(営業利益)2百万円(前期比11.9%減少)
当連結会計年度の自動車ファンド事業は、体制に大きな変化がなく売上、セグメント利益ともに、ほぼ前期並みとなりました。なお、当連結会計年度において新たに3案件への投資を実行し出資先は合計で4社となりました。
(2) 財政状態
(資 産)
当連結会計年度における資産合計は、前連結会計年度末と比較し、1,387百万円増加の7,484百万円となりました。この増加の主な内訳は、現金及び預金の768百万円増加、投資有価証券の288百万円増加、長期預金の59百万円増加、及びベンチマークセンター建設目的で計上した建設仮勘定の235百万円増加及び土地の18百万円増加等あり、一方、減少の内訳は、売掛金の79百万円減少、繰延税金資産の14百万円減少、及び前渡金の8百万円減少等であります。
(負 債)
当連結会計年度における負債合計は、前連結会計年度末と比較し、320百万円増加の1,980百万円となりました。
この増加の主な内訳は、買掛金の12百万円増加、未払法人税等の61百万円増加、前受金の212百万円増加、及び未払消費税等の9百万円増加等であります。
(純資産)
当連結会計年度における純資産合計は、前連結会計年度末と比較し、1,066百万円増加の5,504百万円となりました。この増加の主な内訳は、親会社株主に帰属する当期純利益1,383百万円の計上及び配当金383百万円の支払いによる利益剰余金の1,000百万円増加等であります。
(3) キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物は、前連結会計年度と比較して825百万円増加の5,521百万円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況と主たる増減要因は、次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動により獲得した資金は、1,785百万円(前連結会計年度に営業活動により獲得した資金は1,387百万円)となりました。主な増加要因は、税金等調整前当期純利益の1,988百万円、減価償却費の27百万円、前受金の増加額203百万円、持分法による投資損失21百万円であり、一方、主な減少要因は、法人税等の支払額548百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動により使用した資金は、601百万円(前連結会計年度に投資活動により使用した資金は368百万円)となりました。この主な要因は、有形固定資産の取得による支出283百万円、無形固定資産の取得による支出36百万円及び投資有価証券の取得による支出250百万円等があったことによります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動により使用した資金は、383百万円(前連結会計年度に財務活動により使用した資金は302百万円)となりました。この主な要因は、配当金の支払額383百万円等があったことによります。
当社グループは生産活動を行っていないため該当事項はありません。
当連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) セグメント間取引については相殺消去しております。
当連結会計年度(自 2023年1月1日 至 2023年12月31日)の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績の10%以上の相手先がないため記載を省略しております。
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載のとおりであります。
この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者が過去の実績や取引状況を勘案し、会計基準の範囲内かつ合理的と考えられる見積り及び判断を行っている部分があり、この結果は資産・負債、収益・費用の数値に反映されております。これらの見積りについては、一部過去の実績に基づく概算数値を用いるために、不確実性が伴っており実際の結果と異なる場合があります。
② 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
(売上高)
当連結会計年度における連結売上高は、セグメント別では全体の64.2%を占める情報プラットフォーム事業が前期比18.7%増加となりました。情報プラットフォーム以外の事業については、コンサルティング事業を中心に好調に推移し前期比15.8%増加となりました。この結果、全体では前期比で17.5%増加の4,845百万円となりました。
(売上総利益)
当連結会計年度において、売上総利益は前期比19.2%増加の3,185百万円となり、売上総利益率は64.8%から65.8%となりました。これは、主に情報プラットフォーム事業及びプロモーション広告事業など限界利益率の高い事業が好調に推移したことに加え、コンサルティング事業及び車両・部品調達代行事業について利益率の高い案件が増加したことにより、人員体制強化に伴う人件費など売上原価増の影響を吸収し、売上原価比率が前期の35.2%から34.2%へと減少したことによります。
(営業利益)
当連結会計年度において、営業利益は前期比22.6%増加の1,991百万円となり、売上高営業利益率は前期39.4%から41.1%へと増加しました。これは、売上高の増加が人員増強による人件費等の販売費及び一般管理費の増加を吸収したことによります。
(経常利益)
当連結会計年度において、経常利益は前期比22.6%増加の1,988百万円となりました。これは、営業外収益として受取利息6百万円及び受取配当金6百万円を計上した一方で、持分法による投資損失21百万円を計上したこと等によります。
(親会社株主に帰属する当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は、法人税等を合計で605百万円計上したことに伴い前期比21.4%増加の1,383百万円となりました。
この結果、当連結会計年度における株主資本利益率(ROE)は、前連結会計年度の28.4%から0.6ポイント減少し、27.8%となりました。
③ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社グループの資金需要は、経営活動に必要な運転資金(人件費、ソフトウエア・データベースの保守維持、業務委託費、データ購入費用、取材費用等)の他、新拠点建設関連の支出、PC、サーバー等の有形固定資産等の取得に係る投資資金であり、その資金の主な財源は、営業活動によるキャッシュ・フローにより獲得した資金を源泉として、全て自己資金で充当しております。預入期間が3か月を超える定期預金を除いた現金及び現金同等物の期末残高は、5,521百万円であります。
④ 経営戦略の現状と見通し
2023年度の自動車産業は、半導体不足が解消したことで自動車販売台数の回復傾向がより鮮明となり、業績についても増収増益を発表する企業が目立つなど好調を維持しております。2024年度においても、ポストコロナ禍で、EV化などへの変化に対応する必要から、完成車メーカー、部品メーカーなどを中心に研究開発や設備投資などは引き続き高水準で推移することが想定されます。このような状況の下、当社では一段の成長を目指して多方面へ積極的な投資を実行することで顧客のニーズに応えるサービスを展開してまいります。事業別では、中核事業である情報プラットフォーム事業は引き続き安定的に成長するものと見込んでおります。また、各メーカーでは電動化戦略に基づく研究開発投資が実行される予定であることから、コンサルティング、車両・部品調達代行、分解調査データ販売、LINES及び市場予測情報販売事業など情報プラットフォーム事業以外の事業が提供するサービスへの需要はさらに高まるものと見込んでおります。以上を勘案し、2024年12月期の連結業績予想については、売上高5,700百万円、連結営業利益2,300百万円、連結経常利益2,300百万円、親会社株主に帰属する当期純利益1,600百万円を見込んでおります。なお、業績見通しの前提となる為替レートの条件は、1米ドル=146円、1ユーロ=159円、1人民元=20.5円、1タイバーツ=4.0円、1メキシコペソ=8.5円となっております。
該当事項はありません。
該当事項はありません。