当社の経営方針、経営環境及び対処すべき課題等は、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)経営方針
当社は、「新たな食体験を創り上げ、人生をもっとHappyに。」をビジョンに掲げ、「食」という多くの人にとって生活に密着した領域で、テクノロジーを駆使して新しい価値を創造し、食に関わる人々をより豊かにしていくことで社会に貢献していきたいと考えております。具体的には、実名型グルメプラットフォーム「Retty」を通じて、人々が最適な「食」と巡り合える機会を創出することで、日常の中にある「食」をより楽しめるものに、より豊かなものにしていきたいと考えております。また、これらに加え、飲食店を経営する上で必要不可欠なデジタル・トランスフォーメーション(DX)を支援するプロダクトを展開していくことで既存集客領域のみに留まらず、人々の食に関わる様々な体験に対してより幅広く貢献して参りたいと考えております。
(2)経営環境と中長期的な経営戦略
国内における飲食店市場は、一般社団法人 日本フードサービス協会「令和2年外食産業市場規模推計について」によると15兆2,908億円(飲食店、宿泊施設、喫茶・居酒屋等、料亭の合計)の市場規模と推計されております。飲食店における販促費市場は、飲食市場全体の3%程度と言われており、4,500億円程度がFRMの市場規模と当社は見込んでおります。
また、株式会社電通「2022年 日本の広告費(2023年2月24日)」において日本の総広告費は7兆1,021億円(前年比104.4%)に対して、インターネット広告費は3兆912億円(前年比114.3%)となっております。このうち、当社の対象となる業種に絞り込むと、1兆2,148億円程度(インターネット広告市場 × 業種別構成比にて市場規模を試算(4マス媒体の業種別広告費率を引用))が広告コンテンツにおける市場規模と当社は見込んでおります。
一方で当社は、飲食店から収受する定額のサービス利用料が主な収益となっており、2023年、当初においては新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響が残存しておりましたが、5月に新型コロナ感染症の感染症法上の分類が2類相当から5類へ移行したことを契機に飲食業界の景気も緩やかに回復しております。解約率が継続的に高い特定代理店の影響などもあり、FRMお店会員(固定)プランにおける有料保有店舗数の減少によって当社は継続して売上高が減少、赤字が継続していることから、当社は①成功したコスト構造改革の維持、②黒字化の実現に向けた売上の維持・成長を実行することが急務と認識しております。具体的には以下のとおりです。
① 成功したコスト構造改革の維持
当社は固定費を中心とした徹底的なコスト削減を実施し、2023年9月期第4四半期においては、224百万円/四半期の固定費を前年同期比で削減しております。具体的にはオフィスの縮小移転に伴う支払家賃の削減、外注費やアルバイトの工数見直しによる人件費及び採用費の削減等を実施し大きく固定費を圧縮することに成功しています。今後も継続して固定費のコントロールを継続し、黒字化の実現確度を高めて参ります。
② 黒字化の実現に向けた売上の維持・成長
上述コスト削減の実施だけでなく、主要事業であるFRMにおいては、当事業年度を通して前年同月比で100%以上を記録し回復・成長を続けるネット予約人数や2023年10月に実施されたお店会員アップデートによってLTV(※)の改善を目指します。また、他代理店と比較して解約率の高い一部代理店について関係性を再検討し、代理店チャネルの整理を行なったことなどから、店舗数・売上共に積み上がりやすい状態が実現できており、今後はFRMの参画店舗数及び売上の積み上げを目指します。FRM以外の領域においても、広告コンテンツの事業回復・拡大やHR関連事業の立ち上げなどにより売上の成長を目指します。
(※)「顧客生涯価値」を意味するLife Time Valueの略称。飲食店1件当たり、当社と取引を開始してから終了するまでの期間にどれだけの売上をもたらすかを表す指標のこと。
(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社では、利用者の実名に基づく飲食店オススメ口コミ情報及び全国の飲食店情報等を蓄積した実名型グルメプラットフォーム「Retty」を運営しており、その価値を図る指標として、ネット予約人数を重要指標としております。ネット予約人数を維持・拡大することはFRMにおける送客効果の維持・向上につながります。
サービス別では、当社の主力サービスであるFRMにおいては「Retty」を通じたオンラインでの販促を提供することで、飲食店からサービス利用料を得ていることから、参画店舗数を重要指標として運営を行っております。当該参画店舗数は、営業人員数、一人当たり獲得件数、解約率に分解できますが、現時点ではこれらのうち、営業人員数を増加させることが参画店舗数の増加に対し最も効果的であると考えており、当該営業人員数を重視して運営を行っております。
(4)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社の今後の経営課題とその対策は以下の3点になります。
① 「Retty」の利便性向上を通じた月間利用者数・ネット予約利用者数の増加
当社が今後において中長期的な成長を実現していくためには、運営サービスである「Retty」の知名度を向上させることによる新規ユーザーの獲得、及び実名型グルメサービスを基軸としたおすすめによるお店選びや「Retty」を通じたシームレスな予約体験を提供することによるリピートユーザーの増加及びその結果としてのネット予約数の増加が必要不可欠であると考えております。足許徐々に外部環境が回復しつつある状況を踏まえると、今後更に「Retty」の利便性を向上させることで月間利用者数やネット予約利用者数の回復を図ってまいります。
② 営業体制の拡充
当社の新規参画店舗数は、営業稼働人員数に応じて増加するものであり、販売代理店の営業体制の拡充及び当社従業員による営業体制の構築が必要不可欠と考えております。当社は、これまで多くの販売代理店と契約を締結することによって営業稼働人員数を増加させ、それに伴って参画店舗数を拡大してまいりました。今後については参画店舗を拡大させていくための営業体制の拡充と同時に販売商品や獲得コストの見直しによる営業効率の改善を実施することで更なる販売力の向上を図ってまいります。
③ 技術力の強化について
今後、更なるサービスの拡充・強化に向けてビッグデータの分析・活用を加速させていくためには、その基盤となる技術力を継続的に強化していく必要があります。現時点において、開発者比率(「Retty」の開発及び改善を担当するプロダクト部門の人員数の合計を総従業員数で割り返した数値です)は、半数程度となっておりますが、今後は更に優秀な技術者の育成、先端技術への投資、技術志向な風土の維持等を通じて、技術力の向上に取り組んでまいります。
当社のサステナビリティに関する考え方は下記の通りになります。
なお、文中の将来に関する事項は当事業年度末において当社が判断したものになります。
(1)ガバナンス
当社は、サステナビリティに関する重要事項に関して、週に1度開催されている執行役員会において進捗管理及びモニタリングを行い、必要に応じて取締役会に付議した上で対策を検討し、実行する体制をとっております。執行役員会議及び取締役会の詳細は「
(2)戦略
当社は「新たな食体験を創り上げ、人生をもっとHappyに。」をビジョンに掲げている通り、「食」を事業領域としており、食を中心に様々な社会的な課題に積極的に取り組む責任があると考えています。消費者の「食」との出会いをより安全で快適なものにするために、信頼性の高い情報を提供し、コロナ禍でダメージを受けた飲食店に対してPRでの支援を行い、また飲食店のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援するなど、さまざまな取り組みを行っています。当社は、飲食店支援事業を通じた外食業界の発展や、新規事業の創出によって継続的な企業価値の向上を目指しております。
また当社は創業時から、社内外を取り巻く「人」に関してカルチャーを重要視して経営を行なって参りました。当社のビジョンにある「Happy」を実現するためには、多様な人材が個性や能力を発揮できる環境の整備のみに留まらず、生産性向上を通じた労働環境の改善等、様々な社会課題の解決に向けて積極的に取り組んでおります。
(3)リスク管理
当社では、サステナビリティに関するリスク及び機会については、執行役員会議にて事業活動への影響の程度を評価し、リスクに対して必要な場合には取締役会へ報告し、迅速な意思決定を行なっています。また、危機管理規程を作成し、各種のリスクに対応する体制を整えています。
(4)指標及び目標
当社では、上記記載の人材の多様な人材が個性や能力を発揮するための環境の整備や、生産性向上に関する指憬について、目標とすべき指標等を検討中でございます。今後は多様化する社会に対応すべく、多くの人にとって動きやすい会社を目指してまいります。
文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1)事業環境に係るリスクについて
①外食市場及び広告市場について
当社は現状、主として日本国内における外食市場、広告市場において事業展開を行っています。これらの市場は、国内景気動向に影響を受ける市場でもあり、政治情勢の変化、自然災害の発生、感染症の流行、税制の改正等、何らかの要因により景気が後退し、当社顧客の企業収益が悪化した場合には、販売促進費等が削減されることで、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②競合他社の動向について
現在、国内でグルメ情報サービスを提供する競合企業が複数存在しております。また、新規参入を含むこれら競合企業との競争激化に伴い、参画店舗数や広告関連の受注が減少した場合、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
そのようなリスクに対し、当社は、実名型を前提にサービスを提供することにより、ユーザーから実名での口コミの投稿を受け、信頼性の高いデータを蓄積・提供することで、競争力の向上を図っておりますが、競合他社との差別化による優位性が十分に確立できない場合、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③技術革新について
インターネット業界においては、急速な技術変化と水準向上が進んでおります。当社は、これらに対応すべく、優秀な技術者を確保するとともに、技術の研究やシステムの採用等、対応を行っておりますが、今後、一定のスキルを有した技術者の確保が進まない、もしくは十分な機能拡充が提供できない場合は、実名型プラットフォーム「Retty」の広告媒体としての価値が低下し、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④検索エンジンへの対応について
「Retty」のWebサイト利用者の多くは、Google等の検索エンジンを経由して訪問しております。当社では、SEO(検索エンジン最適化)による集客力強化に加え、アプリ利用への誘導をはじめとする多様な施策によりリスク分散を図っております。
しかしながら、検索エンジンのロジックの変化等の要因により、これまでの当社の施策が有効でなくなった場合、当社プラットフォームの集客力が低下し、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業内容に関するリスクについて
①口コミ(書き込み内容)について
当社は、実名で訪問した飲食店の口コミを書き込み、発信することによって、「Retty」サイト内において、飲食店を検索するユーザーにとって個別最適化された情報を提供しております。口コミは、実名で記載されるため、より信頼性の高い情報を提供できているものと当社は考えております。口コミには、好意的な内容だけでなく、改善を要望する内容等についても書き込みが行われます。
当社は、サイト内の利用規約において、公序良俗に反する口コミや誹謗中傷、対価を受け取ることを目的とした投稿など禁止行為を明示するとともに、投稿監視システムによる不適切投稿の抽出及び目視による確認などを行うカスタマーサポート体制を整備し、当社が不適切と判断した口コミを書き込んだユーザーに対して、その口コミを削除・修正するよう要請等を行っております。
しかしながら、サイト内で不適切な口コミがなされ、その発見が出来なかった場合や当社対応が遅れた場合には、影響力のあるユーザーの支持が下がり、サイト運営者としての当社の信用を失い、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②飲食店とユーザーとのトラブルについて
当社は、飲食店が開店や移転、閉店することにより情報内容の変更が生じた場合には、確認を行い、情報を随時修正しております。情報の修正がなされない場合や、遅延が生じた場合に、飲食店情報が正確でないまま、ユーザーが訪問しトラブルが発生し、当社に問い合わせがなされた場合には、当社は情報の確認並びに修正をするとともに、ユーザーへ説明を行っております。しかしながら、トラブルを経験したすべてのユーザーが納得をするとは限らないため、当社の評判の低下や風評により、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③システムやインターネット接続環境の不具合について
当社は、主にインターネットを通じて飲食店情報を提供しており、当社のシステムやインターネット接続環境の安定は事業を行っていく上で不可欠であります。「Retty」におけるシステムトラブルの発生可能性を低減するため、安定的運用のためのシステム強化、セキュリティ強化を徹底しており、トラブルが発生した場合においても短時間で復旧できる体制を整えております。
しかしながら、想定を大幅に上回るアクセスの増加等による負荷の拡大や自然災害や事故、ソフトウェアの不具合、コンピューターウィルスの感染などによる予期せぬトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こった場合には、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④当社想定を上回る解約が生じるリスク
当社のFRMは、毎月定額の料金を参画店舗より頂くサブスクリプションモデルであるため、これまで満期解約率(※)を重要指標としてとらえ、これを低減させていくために、飲食店舗の集客効果増進のためのインターネット予約機能の強化やその他様々な施策を実施しております。
また、上記の満期解約とは別に、新型コロナ感染症の影響の余波や食材価格の高騰などにより、契約の満期を迎える前に閉店を余儀なくされた飲食店もあり、それによるイレギュラー解約件数も発生する可能性があります。今後においても、飲食店における利用状況や経営環境の変化などの理由により、毎年一定程度は解約が発生いたします。予算及び経営計画には、将来の解約を見込んでおりますが、当社の想定を超える解約が発生した場合には、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(※)満期での解約件数(閉店などのイレギュラーな要因によって契約期間の満期を迎える前に解約に至った店舗及び大手飲食法人向けに多数の店舗を安価かつ一括で受注するトライアル契約による解約店舗を除いた件数)を、前月末の保有店舗数で除した解約率としております。
(3)組織体制について
①トップマネジメント
当社の代表者である武田和也は、当社の創業者であり、設立以来、最高経営責任者として、事業戦略の立案や実行等、会社運営において重要な役割を果たしております。
当社は、同氏に過度な依存をしない経営体制の構築を目指し、人材の育成及び強化を行っておりますが、何らかの理由により、同氏に不測の事態が起こった場合には、現状では当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②優秀な人材の確保について
当社は、今後想定される事業拡大や新規事業の展開に伴い、優秀な人員の確保が不可欠と考えております。特にシステム分野のスキルを有する人材の確保や事業の拡大・成長させていくためのマネジメント能力を有する人材の確保に努めております。
しかしながら、当社が求める人材が十分に確保出来なかった場合や人材の流出が進んだ場合には、継続的な事業の拡大に支障が生じ、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③販売代理店を通じた新規参画店舗数について
当社のFRMサービスの参画店舗の増加は、主に販売代理店を通じて行われているため、当社は、販売代理店との良好な業務関係の構築・維持に努めてまいりました。その結果、販売代理店の新規参画と、販売代理店の営業体制強化が進んでおります。
しかしながら、販売代理店が、経営上の理由から当社FRMサービスの取扱いを縮小・撤退すること等により、新規参画店舗数が鈍化した場合や、新規参画店舗数の維持・増加のために当社から販売代理店に支払う手数料に係る料率を上げざるを得なくなった場合には、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4)事業に係る法的規制などについて
①個人情報流出のリスク
当社は、「Retty」の運営に際し、ユーザーや飲食店等の個人情報を保有しております。そのため、当社は、「個人情報の保護に関する法律」に定める個人情報取扱事業者に該当し、規制の対象となっております。
当社は、個人情報の漏洩防止対策はもちろん、個人情報の管理を事業運営上、重要事項と認識しております。個人情報保護規程及びセキュリティポリシーを制定し、個人情報の管理を厳格に行うとともに、個人情報の保護に関する法律及び関連法並びに関連ガイドラインの遵守に努めるとともに内部監査を実施する等、個人情報の保護に積極的に取り組んでおります。
しかしながら、外部からの不正アクセスや従業員の故意又は過失により、個人情報が外部に流出した場合、当社は損害賠償責任を負うとともに、当社の社会的信用や事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②知的財産権について
当社は、本書提出日現在、日本、香港にて「Retty」の商標登録を有しております。今後展開を検討している国やサービスを含め、それらの商標、ロゴ等については、原則、商標権を取得する方針であります。当社が保有する知的財産を侵害されるおそれのある場合には、顧問弁護士や弁理士等と連携し、必要な処置を講じてまいります。また、当社が商標など知的財産権を取得する場合は、十分な検証を行い、他社の知的財産権を侵害しないよう慎重に対応してまいります。
しかしながら、当社のサービスを表す商標を他社が取得した場合、訴訟へと発展することも考えられるため、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③訴訟について
当社において、重大な訴訟の提起はございませんが、当社の提供するサービスの不備、当社が保有する個人情報及び機密情報の漏えい、第三者の不正アクセスによる情報流出等に関する訴訟をユーザーや店舗から提起される可能性があります。これらの訴訟により、ブランドイメージを毀損し、事業活動に支障をきたす可能性があります。また、金銭的な負担が増加し、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
④インターネット関連事業における法的規制について
当社がインターネット上で運営しているプラットフォームにおいては各種法的規制を受けており、具体的には、「電気通信事業法」、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(プロバイダ責任制限法)」、「不当景品類及び不当表示防止法」等といった法的規制の対象となっております。当社では、上記を含む各種法的規制に関して、法令遵守体制の整備・強化、社員教育を行っております。
しかしながら、今後インターネット関連事業者を対象とした法的規制の制定または改正がなされることで、当社の業務の一部が制約を受ける場合、または新たな対応を余儀なくされる場合、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5)継続企業の前提に関する重要事象等
当社は飲食店から収受する定額のサービス利用料が主な収益となっております。新型コロナ感染症による当社事業への影響は徐々に小さくなっているものの、当事業年度においては解約率の高い特定代理店の影響により、最重要KPIであるお店会員(固定)プランにおける有料保有店舗数は依然減少傾向が続いております。結果として当社は継続して売上高が減少、またそれに伴い営業損失及び当期純損失を計上していることから、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような状況が存在しております。
当社は、当該状況の解消または改善のために、以下のような対応策を講じております。
① FRM事業の売上純増
上述特定代理店の整理が進んでおり、既にFRMにおける当該代理店の売上比率は10%弱程度まで減少しております。また、当事業年度第4四半期における特定代理店を除いたFRM売上が前年同四半期比15%ほど増加していることや高単価商品比率の増加等のLTV改善施策を継続していることから、FRM事業売上純増の兆しが見え始めております。当社は今後も特定代理店を除いたFRM売上増加を推進していく為に新規代理店の開拓や高単価商品比率増加によるLTV改善を引き続き実施していくことで2024年9月期中での売上純増を目指して参ります。
② コストコントロールの継続
当事業年度において実施した、オフィス移転による賃料の減少及び退職による自然減や他社への出向による人件費削減により、当事業年度第4四半期における固定費は前年同四半期比224百万円ほど減少しております。当社としては引き続きこの筋肉質なコスト体制を維持することで早期黒字化を達成しやすい状態を目指して参ります。
上記対応策により、継続企業の前提に重要な不確実性は認められないと判断しております。
(6)その他のリスクについて
①自然災害、事故等について
当社では、自然災害、事故等に備え、基幹システム「Retty」のデータベース及びログの定期的バックアップ、「Retty」の稼働状況の常時監視等によりトラブルの事前防止又は回避に努めておりますが、当社所在地近辺において、大地震等の自然災害が発生した場合、当社設備の損壊や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生し、当社の事業及び業績並びに財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
②配当政策について
当社は、財務体質の強化と事業拡大のための内部留保の充実等を図ることが重要であると考えており、設立以来配当を実施しておりません。今後の配当方針については、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針であります。
現時点において当社は、内部留保の充実を優先しておりますが、将来的には、業績及び財政状態等を勘案しながら株主への利益の配当を目指してまいります。しかしながら、配当実施の可能性及びその実施時期等については、本書提出日現在において未定であります。
③税金の影響について
当社は、事業拡大のための先行投資を積極的に行ってきたことなどから、当事業年度末において当社に税務上の繰越欠損金が存在しております。今後において当社の事業が当社の想定通りに推移した場合には、課税所得の発生に伴う繰越欠損金の解消が法人税、住民税及び事業税の金額に影響を及ぼす見込みです。
④ストック・オプション行使による株式価値の希薄化について
当社では、取締役、従業員及び社外協力者に対するインセンティブを目的としたストック・オプション制度を採用しております。また、今後においてもストック・オプション制度を活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、既存の株主が有する保有株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。
(1)経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という)の状況の概要は次のとおりであります。
①経営成績の状況
2023年、当初においては新型コロナウイルス感染症の感染拡大による影響が残存しておりましたが、5月に新型コロナ感染症の感染症法上の分類が2類相当から5類へ移行したことを契機に飲食業界の景気も緩やかに回復しております。
このような状況の中当社のFRM(Fan Relationship Managementの略称)については、当事業年度は以下の方針に基づいて事業を推進しております。
①LTVの高い商品の販売比率向上
前事業年度よりテイクアウトプラン等のLTVが低い商品の販売比率を下げ、よりLTVが高い通常プランの販売比率を高めており、中長期的な売上向上に資する販売体制の確立が進んでおります。
②販売チャネルのリソースアロケーション見直し
当事業年度より解約率が継続的に高い特定代理店との関係性を再検討し、注力代理店チャネル及び直販にリソースを集中させる方針としております。
上述の結果として特定代理店を含めたFRM事業売上については当該特定代理店の解約率が高いことから減少傾向が継続しておりますが、当該特定代理店を除いた注力代理店チャネル及び直販チャネルにおいては当事業年度より売上の明らかな純増傾向が継続しております。
広告コンテンツについては、足許のユーザー数減少による影響を受けて、売上が減少しております。
これらの結果として当事業年度における売上高は1,556百万円(前事業年度比9.3%減)となりました。
費用面では、売上原価は608百万円(前事業年度比24.8%減)、販売費及び一般管理費は1,472百万円(前事業年度比11.2%減)となりました。
また、新型コロナウイルス特別貸付に係る利子補給金等により営業外収益3百万円(前事業年度比38.7%減)、支払利息等により営業外費用14百万円(前事業年度比45.7%増)、減損損失として特別損失74百万円(前事業年度は102百万円の特別損失)を計上しております。
以上より、当事業年度における営業損失は524百万円(前事業年度は751百万円の営業損失)、経常損失は535百万円(前事業年度は755百万円の経常損失)、当期純損失は612百万円(前事業年度は859百万円の当期純損失)となりました。
なお、当社は実名型グルメプラットフォーム「Retty」運営事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。
②財政状態の状況
(資産)
当事業年度末における流動資産は1,224百万円となり、前事業年度末に比べ241百万円減少いたしました。これは主に、前払費用の減少105百万円、売掛金の減少62百万円、現金及び預金の減少22百万円、その他流動資産の減少42百万円によるものです。また、当事業年度末における固定資産は46百万円となり、前事業年度末に比べ160百万円減少いたしました。これは主に、敷金の償却及び減損損失の計上による敷金及び保証金の減少149百万円、長期前払費用の減少11百万円によるものです。
上記の結果として、総資産は1,271百万円となり、前事業年度末に比べ401百万円減少いたしました。
(負債)
当事業年度末における流動負債は326百万円となり、前事業年度末に比べ531百万円減少いたしました。これは主に、借入金の返済によって短期借入金が594百万円減少したことによるものです。また、当事業年度末における固定負債は551百万円となり、前事業年度末に比べ41百万円増加いたしました。 これは、長期借入金が41百万円増加したことによるものです。
上記の結果として、総負債は878百万円となり、前事業年度末に比べ489百万円減少いたしました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は392百万円となり、前事業年度末に比べ88百万円増加いたしました。これは主に、2022年11月11日付けで平尾氏及びじげん社と資本業務提携契約を締結し、普通株式による資金調達によって資本金及び資本準備金がそれぞれ342百万円増加したこと、2022年12月23日開催の第12回定時株主総会の決議に基づき、2023年2月7日付で資本金及び資本準備金の額の減少並びに剰余金の処分の効力が生じ、資本金が357百万円、資本剰余金が501百万円減少し、利益剰余金が859百万円増加したこと、当事業年度において当期純損失612百万円を計上したことにより利益剰余金が612百万円減少したことによるものです。
③キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は872百万円となりました。
各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果使用した資金は、284百万円(前事業年度は558百万円の使用)となりました。これは主に、税引前当期純損失609百万円、減損損失74百万円、前払費用の減少104百万円、未払又は未収消費税等の増減48百万円によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果獲得した資金は、42百万円(前事業年度は8百万円の使用)となりました。これは主に、敷金及び保証金の回収による収入51百万円によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果獲得した資金は、219百万円(前事業年度は832百万円の獲得)となりました。これは主に、上述した第三者割当増資等の株式発行による収入700百万円、短期借入金の純減少594百万円によるものです。
④生産、受注及び販売の実績
a.生産実績
当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
b.受注実績
当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。
c.販売実績
当事業年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。
|
サービスの名称 |
当事業年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
前事業年度比(%) |
|
FRM(千円) |
1,167,284 |
93.7 |
|
広告コンテンツ(千円) |
388,974 |
82.9 |
|
合計(千円) |
1,556,259 |
90.7 |
(注)1.当社は実名型グルメプラットフォーム「Retty」運営事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。
2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前事業年度 (自 2021年10月1日 至 2022年9月30日) |
当事業年度 (自 2022年10月1日 至 2023年9月30日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
株式会社リエゾン |
375,136 |
21.9 |
200,269 |
12.9 |
(注)1.前事業年度末において主な販売実績の相手先であった株式会社EPARKグルメは、2023年5月31日に株式会社リエゾンに社名変更しております。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。
①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成しております。この財務諸表を作成するにあたって資産、負債、収益及び費用の報告額に影響を及ぼす見積り及び仮定を用いておりますが、これらの見積り及び仮定に基づく数値は実際の結果と異なる可能性があります。
②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容につきましては、「⑦経営成績の分析」、「(1)②財政状態の状況」、「(1)③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
③資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社における資金需要は、主として運転資金であります。運転資金の需要のうち主なものは、業容拡大のための営業人員の人件費、サービス品質のさらなる向上のための開発人員の人件費及び有料店舗数増加のための販売代理店に対する販売手数料であります。この財源については、自己資金の効率的な運用に加え、金融機関からの資金調達を基本としております。なお、事業活動を円滑に実行できるよう、適正な水準の資金の流動性の維持及び確保を最優先としております。具体的には、何らかの理由により売上債権の入金が滞った場合でも取引先に対する支払に遅れが発生せず、かつ、必要に応じて金融機関からの資金調達を実行するまでの間、事業運営に支障が出ない水準の預金残高を維持しております。
④継続企業の前提に関する重要事象等について
当社は、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (5)継続企業の前提に関する重要事象等について」に記載のとおり、当該事象を解消するための対応策を実施しているため、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないものと認識しております。
⑤目標とする経営指標
当社の目標とする経営指標は、FRMにおける有料店舗数であります。
(FRMにおけるお店会員(固定)プランの有料店舗数)
お店会員(固定)プランの有料店舗数は、当事業年度末時点において前事業年度末から1,393件減少し、5,528店舗(前事業年度末比79.9%)となりました。一方で今後については従前相対的に解約率の高かった代理店チャネルの整備も進み解約も落ち着くことが予想されるため、優良な代理店の開拓・育成を中心とした営業人員数を拡大させていくことで有料店舗数の回復を目指してまいります。
⑥経営成績に重要な影響を与える要因について
経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「3 事業等のリスク」をご参照ください。
⑦経営者の問題意識と今後の方針について
経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。
⑧経営成績の分析
(売上高)
当事業年度における売上高は1,556百万円(前事業年度比9.3%減)となりました。FRMについては特定代理店の解約率が高いことから減少傾向が継続しておりますが、当該特定代理店を除いた販売チャネルにおいては当事業年度より売上の明らかな純増傾向が継続しております。また、広告コンテンツについては足許のユーザー数減少による影響を受けて、売上が減少しております。
(売上原価・売上総利益)
当事業年度における売上原価は608百万円(前事業年度比24.8%減)となりました。これは主に、コスト削減の推進による人件費抑制によるものです。
上記の結果として、当事業年度における売上総利益は947百万円(前事業年度比4.6%増)となりました。
(販売費及び一般管理費・営業損失)
当事業年度における販売費及び一般管理費は1,472百万円(前事業年度比11.2%減)となりました。これは主に、コスト削減の推進による人件費抑制及びオフィス移転による地代家賃抑制によるものです。
上記の結果として、当事業年度における営業損失は524百万円(前事業年度は751百万円の営業損失)となり、赤字となりました。
(営業外収益・営業外費用・経常損失)
当事業年度における営業外収益は営業外収益3百万円(前事業年度比38.7%減)となりました。これは主に、新型コロナウイルス特別貸付に係る利子補給金によるものです。
当事業年度における営業外費用は14百万円(前事業年度比45.7%増)となりました。これは主に、支払利息等によるものです。
上記の結果として、当事業年度における経常損失は535百万円(前事業年度は755百万円の経常損失)となりました。
(当期純損失)
上記のとおり、経常損失535百万円、及びオフィス移転に伴う旧オフィスの原状回復費用等74百万円の減損損失計上により、当事業年度における当期純損失は612百万円(前事業年度は859百万円の当期純損失)となりました。
当社は、2022年11月11日開催の取締役会において、株式会社じげん及び平尾丈氏との間で資本業務提携を行うことについて決議し、同日付で資本業務提携契約を締結しました。
該当事項はありません。