第2 【事業の状況】

 

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営の基本方針

 ”さらなる利益ある成長”を実現し、企業価値向上を継続的に創造し続ける、輝く企業を目指します。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループは、”さらなる利益ある成長”を実現するため、成長性、収益性及び現金収支の重要性を鑑み、売上収益、EBITDA(Earnings Before Interest Taxes Depreciation and Amortization)、フリーキャッシュフロー(FCF)を重視する経営管理を行っております。

 

(3) 中長期的な経営戦略、経営環境及び対処すべき課題等
 当社グループは、経営上の施策として、①不採算事業・製品の見直し等による売上内容の強靭化や米国事業の立て直しを通じた、稼ぐ力の回復を企図するとともに、②Best in Classのものづくり企業へ向けて、開発スピードの向上や開発リソースの効率化・強化、人財への投資、DXへの取組強化等を行っており、これらの実現が当社グループの企業価値の向上につながると考えております。
 このような状況の下、当社は、昨年11月に第17回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債を発行し、アドバンテッジアドバイザーズ株式会社(AA社)がサービスを提供するファンドに対して割当を行いました。
 同時に、AA社と事業提携契約を締結し、資金調達に加えて人財採用や経営管理体制強化、M&A推進等の当社の取組みに関して高度な経営支援を受け、当社の企業価値の向上のためAA社との協働を開始いたしました。
 当社は、対処すべき課題に対する効果ある施策を積み上げるとともに、AA社から受けるノウハウ等を活用することにより、業績向上のための諸施策を実行し、安定的な利益を生み出してまいります。

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

当社グループは、3つの大陸(アジア、欧州及び米州)で事業を展開する製造企業であり、お客さまに役立つこと、そして従業員が仕事への意欲を感じ、利用可能な資源を大切にできる作業環境と、当社グループが本当の意味で持続可能な未来に寄与するために毎日自らの役割を果たす環境を創造することに強くコミットしております。

世界的に社会、産業、技術及びライフスタイルの変化が進む中で、当社グループはサステナビリティについて以下を企業価値実現の基礎と考えております。

・経済的繁栄と、全ての人が平等で公平な権利、義務、均等な機会を有する健康的、安全で、自然環境への負荷低減を同時に達成する。

・当社グループのビジョンの中で、全体的な意味でのゼロインパクトが全ての基本。

・私たちにとってのビジョンゼロとは、事故ゼロ、人や環境への被害ゼロだけでなく、不平等ゼロ、知識不足ゼロでもある。(すなわち、全ての従業員に平等な機会があることを意味する)

 

 

(1)ガバナンス

当社グループは、環境に責任を持ち、倫理に配慮した企業として成長し続けることを目指し、独自の統合コーポレート・ガバナンスシステム、組織、プロセス、製品、サービスを継続的に改善してまいります。また、当社グループは持続可能で収益性の高い成長、ステークホルダーへの配慮、及び当社グループのビジョンゼロのアプローチ(事故ゼロ、職業病ゼロ、廃棄物ゼロ、不平等ゼロ、知識不足ゼロ)をはじめ、透明性のある優れたガバナンスへのコミットメントを改めて誓います。

当社グループのビジョンは、お客さまと全てのステークホルダーのニーズに重点を置き、持続可能で管理された参加型プロセスを通じ高品質で高精度のコンポーネントのリーディングメーカーとしての地位を維持すること、及び全ての悪影響をグローバルに防止することです。ステークホルダーの期待の特定、要件とニーズの分析、達成可能な挑戦的で測定可能な目標の設定、明確な時間設定とリソースの設定を、継続的かつ持続可能な改善(人、地球、繁栄)に向けて当社グループを導く指針として、当社グループが社会に期待される役割を確実に果たす助けになるよう、従来のシステムを統合し、統合したコーポレート・ガバナンスシステムを国際的に認知されている基準と整合させていかなければなりません。特に当社グループは、法令、規制、組織及び顧客の要件に完全に準拠した安全で衛生的な労働条件の提供、環境の尊重、利用可能な天然資源の責任ある使用とともに、製品、サービス、環境、従業員に関連するリスクアセスメントの実施、目標設定とパフォーマンス測定、並びに従業員とその代表者の積極的な参加奨励にコミットしております。

サステナビリティコミッティは、当社グループの事業及び全てのステークホルダーとのエンゲージメント、当社グループのコーポレート・ガバナンス、並びに、中期経営戦略や事業計画を作成する際に想定されるシナリオのレビューに関連する環境、社会、ガバナンス上の課題のアセスメント及び意思決定のプロセスにおいて、長期的な価値の創出に関連する重要事項の分析もふまえ、準備、協議及び諮問の役割を果たすことにより、マネジメントコミッティを補佐する責任を負っています。(マネジメントコミッティ等含めたコーポレートガバナンスの状況は、第4 提出会社の状況、4 コーポレート・ガバナンスの状況等を参照願います)

 

サステナビリティコミッティのメンバーの体制は下表のとおりです。

 


 

サステナビリティコミッティは、原則として次の3つの方向について並行して取り組んでおります。

 


 

①Governance

・サステナビリティの方針、戦略、グローバル・サステナビリティ・システム、及び持続可能なビジネスの原則に基づいたプログラムを設計、更新、レビューします。これは、参照シナリオの進化や、倫理、気候変動問題を考慮した環境保護、事業を展開する地域の社会経済的進歩、人権の保護、全ての人の格差の拡大と待遇の平等等を考慮し、機会を特定し、長期的にも価値を創造します。

・非財務諸表(ESG レポート)の全体的なレイアウトとその内容の明確化、及び同文書で提供され、この評価の結果を伝える情報の完全性と透明性を確認します。サステナビリティコミッティは、マネジメントコミッティに対し、定期的な非財務情報がビジネスモデル、会社の戦略、活動の影響および業績を正確に表していることを確認するよう求めております。

・マネジメントコミッティによって承認された、より広い意味での持続可能性のビジョン、使命、及び管理原則の実施を監視し、ステークホルダーとの関わり活動の一環として、会社が生み出すステークホルダーの価値を決定するために必要な行動を提案いたします。測定モデルの定義と採用に貢献します。

・ESG格付け機関との関係及びサステナビリティ指標への参加及び組み入れを考慮した当社グループの位置付けを監視します。

・当社及びグループのコーポレート・ガバナンスシステムが法律、企業倫理規定に含まれる推奨事項、及び国内外のベストプラクティスに準拠していることを確認します。

・当社グループが必要または適切と判断した場合、当社グループのコーポレート・ガバナンス体制及び当社グループの株式保有構造の改善案を策定します。

・長期価値の創造のための重要な課題の分析に基づいて、当社グループの中期計画を作成するためのシナリオとガイドラインを検討し、マネジメントコミッティに意見を表明します。

②ものづくり

・サステナビリティの哲学 (地球、人々、利益) と当社グループのグローバル・サステナビリティ・システムを完全に受け入れ、責任を持って資源を使用し、コストを最適化し、環境への影響を削減する機会を特定します。

・工場の二酸化炭素排出量、水排出量、及びその他の関連する環境への影響を特定することにより、当社グループの工場の環境最新技術を定義します。

・当社グループの工場の環境への影響を削減するために、グローバル・サステナビリティ・システムに従って、グローバル目標及びT3/T4手順、指示、及びフォームの設定を通じて持続可能な開発計画を定義します。この計画は、2030 年と 2050 年のカーボンニュートラル目標の達成に重点を置き、脱炭素化して工場の環境への影響を最小限に抑えるためのさまざまな機会を提供します。

・環境への影響を収益的に削減するための措置を開発及び監視します。

③コミュニケーション

・ガイドラインを定義し、サステナビリティに関するコミュニケーション戦略、ツール、キャンペーンを準備します。

 

(2)リスク管理

リスク管理とは、当社グループに影響を与える可能性のあるあらゆる種類のリスク(財務、投資家関連、法律、戦略、安全、環境、サプライチェーン、市場、品質、製造、セキュリティなど)を特定、評価、制御するプロセスです。これらのリスクはさまざまな原因から発生する可能性があります。リスクを軽減するには、あらゆる組織と同様に、会社もリソースを適用して、ポジティブなイベントを最大化しながら、ネガティブなイベントの影響を最小限に抑え、監視し、制御する必要があります。

当社グループのリスク管理に対するアプローチは、一貫性があり、体系的で、統合されています。これは、重大なリスクを特定、管理、軽減する最適な方法を決定するのに有用なためです。国際規格 ISO 31000 で報告されている原則とガイドラインに従っている統合管理システムの重要な部分です。

当社グループのリスク管理における主な目標は次のとおりです。

 

・重要な問題について、マネジメントコミッティ、そして(最終的には)取締役会にタイムリーかつ透明性のある通知を提供する。

・潜在的な影響を最小限に抑え、顧客の請求及び/またはその他の関連する内部問題を公正かつ十分に考慮して処理することを保証する。

・組織全体でリスク認識を高める。

 

イベントが警告なしにすでに発生しており「リスク確率」が 100% である場合、このプロセスが関連する将来の影響を管理及び最小限に抑えることによって、関連する影響を分析するために使用されます。関連する結果がない場合でも、それは事実であり、当社グループの経営陣は通常のビジネス・フロー・プロセスに従って、特定の結果を管理及び交渉する必要があります。

リスク管理プロセスでは、IAFT 及び J-SOX の要件に従って、リスク管理委員会(RMC) を招集し、また、リスク管理委員会に通知する必要がある詳細な基準 (財務上の影響、潜在的な責任、企業の評判など) を定義します。

 

(3)戦略

①気候変動関連

当社グループは、自社製品のサステナブルな変化を常に留意して運営しております。また、サステナビリティの重要性を受け入れ、科学的根拠のある挑戦的な目標を設定することで、気候変動と向き合い、よりサステナブルな未来と成長に貢献することに積極的に取り組んでおります。GRIとTCFD が提供するガイドラインに従い、当社グループは毎年、ESG レポートで気候関連情報を開示し、CDPにも参加しております。

当社グループは、グループ方針において、脱炭素社会に貢献し、2050年までにカーボン・フットプリント・ニュートラルの達成を明確に決意しております。また、高品質な製品を提供するだけでなく、環境への配慮も重要であり、製造及び商流における天然資源の使用は、バリューチェーン全体の環境への影響を軽減することに役立つと考えております。

そのため、当社グループではライフサイクルを考え、環境性能を備えた製品を提供することで、お客様の環境負荷を最小限に抑えるよう努めております。

当社グループでは、1.5℃シナリオを採用し、中長期の目標達成に向けた詳細な道筋を設計しました。当社グループのサステナビリティ戦略は、具体的で一貫した以下の5 つの柱に基づいており、それらを工場操業に適合させております。

 

・工場のエネルギー効率を向上させる

・再生可能エネルギーシステムの導入

・グリーンエネルギー購入戦略

・工場操業度の維持による効率の向上

・工場の電化

 

 

当社グループは、当社グループとその事業に対する気候変動のリスク、機会や影響を理解し、特にサステナビリティ戦略の継続と対策を検討するためシナリオ分析を実施しました。期間としては、SBTiの短期目標を達成する2030 年と、カーボンニュートラルの達成目標時期の2050 年を前提としました。また、シナリオを考慮して、2つの異なる気候変動シナリオ、1.5 ℃ シナリオ (パリ協定によって確立され当社グループ目標と一致するシナリオ)、4 ℃ シナリオ (低炭素及び脱炭素化が促進されず、物理的リスクが増加する)を選択しました。

 

シナリオ

要素

変化

Risk

/opportunities

対応

1.5 °C

電気自動車の普及

ベアリング用鋼球の需要減少

Risk

セラミック事業のサステナブルな成長と売上拡大の実現と、環境を配慮した鋼球製造戦略の進化

ベアリング用セラミック球の需要増加

Opportunity

当社グループ中期経営戦略の一つであるセラミック事業の成長と発展、そして電気自動車市場への貢献

原材料価格変動

固定費(電気料金等)上昇に伴う原材料価格の上昇

Risk

原材料サプライヤーとの頑強なサステナビリティ戦略の検討

顧客のサステナビリティに関する要請

脱炭素対応の遅れによるビジネス機会の喪失

Risk

具体的なサステナビリティ戦略の構築とSBTiへの参加によるパリ協定でのサステナビリティ目標やターゲットの当社グループ戦略としての採用

炭素税や炭素コストを含んだ価格設定

炭素税導入によるコスト増

Risk

工場の脱炭素化がサステナビリティ戦略の一つであり、石化燃料設備の完全除去と電動設備への切替の積極的推進

電力削減と低排出ガスベアリングの需要増加

Opportunity

環境に配慮した高度効率的なベアリング球の開発

再生エネルギー

再生エネルギー使用による光熱費負担増

Risk

光熱費使用料を管理し毎年改善を計画、更に電力使用効率の改善や太陽光発電の設置をサステナビリティ戦略として対応

再生エネルギ―システムの設置

Opportunity

再生エネルギ―システムや太陽光発電システム設置はサステナビリティ戦略として推進中、炭素排出ゼロのみならず経済ベネフィットや日常価格の変動に左右されない工場への変革を目指す

4 °C

気候変動災害

気候変動災害によるサプライヤーや当社グループ工場閉鎖のリスク

Risk

サステナビリティ戦略の実現とサプライヤーの同戦略への包含・連携

 

 

 

②人的資本多様性

当社グループは、世界で働く全ての従業員が未来に向かって1つのワンチームとして進み続けることを確保するために、統一したビジョン・ミッションを作成し、グローバルルールに基づいて従業員を活用し、育成しております。

・ビジョン:

他民族が作り上げる1つのTN文化による組織を創造する

・ミッション:

相違を育むことで付加価値を創出し、新たな展望や成長に関わる展望を提供するとともに、それぞれの相互利益を最大化することで当事者の利益のバランスを確保し、人のインテグレーションを図ってそれぞれの成長を助け、誰もが寄与を評価される安全で公正な職場環境を創出する

 

上記ビジョン・ミッションの実現のため、4つのコア・バリューを定めました。これらは全ての従業員の態度と行動の拠り所になります。

・誠実さと説明責任

・尊重と思いやり

・情熱と献身的取組み

・近さ


また、次の戦略を実施中であります。

・工場内作業のオートメンション化→従来は男性職員が行っていた活動に多くの女性が参入できるようになる

・従業員の評価システムの定着=目標の達成度及び行動と能力について評価をグローバルに取り組み中

・研修の進化、充実→オンラインによる学習管理システムの利用など

 

(4)指標及び目標

①気候変動関連

当社グループは、下記KPIを設定し、日々監視することにより、自らによるサステナビリティパフォーマンスを測定評価しております。

・CO2排出量(CO2 tons)                         

GHG プロトコルと ISO 14064 によって提供されるガイドラインを考慮に入れ、スコープ 1 とスコープ 2 の総 CO 2 排出量は月次ベースで監視し、算出します。 2023 年に地域ベースの手法を適用し、ISO 14064 の両方を使用してCO2排出量の監視を開始しました。市場ベースの方法論も導入し、2030 年の持続可能性目標を検証するために、Science Based Target Initiative にも参加しました。また、2023年 より、購入した原材料、輸送(下流及び上流)、廃棄物処理からのスコープ3の間接排出のモニタリングを開始いたしました。目標の1つが、2024年上半期にスコープ3排出量のスクリーニングを完了することです。当社グループがScience Based Target Initiativeに参加したことを考慮すると、全てのスコープ3排出量を詳細に評価し、分析して目標を設定することが必須となります。排出量も同様です。なお、スコープ 3 排出量の完全な評価は 2024 年に公表する予定です

・カーボンフットプリント(CO2 tons/tons)

当社グループの二酸化炭素排出量は、スコープ1及びスコープ2の排出量とトン単位で表される生産量を考慮して計算されます。 このKPIは当社グループの工場のサステナビリティを反映するものであります。            

・エネルギー消費原単位(MWh/tons)

このKPIはエネルギー消費量と生産量の比率をトン単位で表したもので、当社グループ工場のエネルギー効率を示す指標です。

・グリーンエネルギー比率        

この指標は、工場が消費するグリーンエネルギーの量を監視し、グリーンエネルギーの購入と自家発電による電力使用量を適切に設定し、得られる結果を監視するのにも有効です。当社グループは、2040年までに消費電力を100%再生可能源にすることを計画しております。

 

 


 

*  CO2排出量は、スコープ1及びスコープ2に基づき算定しております。上記グラフのCO2排出量は、市場ベースの方法論に基づいた排出量を表示しております。

** カーボンフットプリントは、スコープ1及びスコープ2に基づき算定しております。上記グラフのスコープ2のカーボンフットプリントは、市場ベースの方法論に基づいた排出量を表示しております。

***グリーンエネルギー比率は、電力供給会社から外部購入したグリーンエネルギー比率(日本/中国)、及び自家発電による電力使用量に基づき算定しております。

 

 

②人的資本多様性

当社グループでは、上記戦略において記載した当社グループのビジョン及びミッションの達成のため、下記具体的な取り組みやKPIを設定し、進捗を管理しております。

 

・マネジメント  

性別や世代などによる差別を排した運営をコミット。報酬や福利厚生では明確な規程等を定めて社内に周知。

・ダイバーシティ推進のKPI(※日本のみ)

男女別の職種又は雇用形態の転換の実績   目標 1~2人/年

男性の育児休業取得            目標 1人/年

・研修          

「ツバキ・ナカシマアカデミー」を社内に設立し、管理職や有望な若手従業員にスペシャリスト以外向けの製造、品質、人事管理、財務等の幅広い研修を人材開発目的で受検させております。また、研修プラットフォームとしてTalent LMSを立上げ、コンテンツを増やしております。

・評価          

常勤従業員とパートタイム従業員の評価基準を同一にし、目標の達成度と行動及び能力に基づいて評価しております。

・従業員満足度調査

当社グループの全ての組織で実施されており、意見、様々な視点、提案を収集する方法の一つです。

目標 全調査項目、それぞれ90%以上の従業員の満足度を維持(Full agree + agree、Partial agreeの合計)

 


 

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 法的規制の新設・改廃、違反等によるリスク

事業展開をしている国内外において、大気汚染防止法、水質汚濁防止法、製造物責任法、独占禁止法、知的財産権法、外国為替及び外国貿易法等、様々な法規制下にあります。当社グループは、法令遵守を基本としておりますが、万が一当社グループがかかる法的規制に違反した場合には、罰金、業務停止その他の制裁が課され、当社グループの社会的評価及び業績に悪影響を及ぼす可能性があります。また、今後さらにその規制が強化された場合、事業活動における影響が懸念され、費用負担増も予想されます。このような規制が行われた場合には、業績などに影響を与える可能性があります。

 

(2) 有利子負債に関するリスク

当社グループは、有利子負債の元利金支払のために、また、特にプレシジョン・コンポーネントビジネスにおいて十分な在庫を維持するための資金を確保するために追加借入又は資産の売却等による資金調達を必要とする可能性がありますが、こうした資金調達を行うことができるか否かは、金融市場の状況、当社の資産の売却先の有無等様々な要因に依存しております。さらに、金利が上昇した場合には、金利負担が増加することにより、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 財務制限条項に抵触するリスク

当社グループでは、複数のローン契約を締結しており、当該契約には一定の財務制限条項が付されております。これらの条項に抵触した場合には、借入金の期限前返済義務を負うことがあり、当社グループの財務状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 原材料の価格の上昇、調達等に伴うリスク

当社グループの事業活動には、原材料及び部品等が適時、適切に納入されることが必要であります。その一部については、原材料及び部品等の特殊性から購入先が限定され、代替品を入手することが困難なものがあります。かかる原材料及び部品等について供給遅延等が生じた場合、又はそれらの購入先との間で取引関係の終了や生産能力の問題が生じた場合、必要な原材料及び部品等が不足すること、又は購入するための費用負担が増加することにより、当社グループの業績などに影響を与える可能性があります。また、世界的な景気や経済情勢の変動等により原材料価格が上昇した場合、製品価格への反映やコストダウンによる吸収を図っておりますが、想定以上の上昇により、当社グループの業績などに影響を与える可能性があります。

 

(5) 知的財産権リスク

当社グループは、事業活動、事業展開に有用なノウハウや製造技術及び特許権、商標権などの知的財産権の取得及び保護に努めております。また、他社の知的財産権に対しても問題が発生しないよう細心の注意を払っております。しかしながら、当社グループのノウハウや製造技術が漏洩したり、他社が当社グループの知的財産権を侵害したりする場合、又は当社グループが意図せず他社の知的財産権を侵害した場合、当社グループの業績などに影響を与える可能性があります。

 

 

(6) 海外事業の展開に伴うリスク

当社グループは、グローバルに事業を展開しており、米国、イタリア、ポーランド、スロバキア、オランダ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、イギリス、中国、タイ、インド及び台湾に海外製造拠点を有しております。また、将来において上記以外の海外市場に進出する可能性もあります。しかしながら、これらの海外市場における事業展開には、投下資本の回収が当初の事業計画どおり進まないリスク、生産拠点の統廃合や撤退に伴うリスクのほかに、次のような海外事業展開に共通のリスクがあります。

① 各国の予期しない法律や規制の変更

② 社会・政治及び経済状況の変化又は治安の悪化

③ 輸送の遅延及び電力等のインフラの障害

④ 各種税制の不利な変更又は課税

⑤ 保護貿易諸規制の発動

⑥ 異なる商習慣による取引先の信用リスク等

⑦ 雇用制度及び社会保険制度の違い

⑧ 労働環境の変化や人材確保・教育の困難性

⑨ 知的財産保護の困難性

⑩ 疫病の発生

⑪ 為替リスク

 

(7) 製品の欠陥に伴うリスク

当社グループは、国内外で行う事業活動において、製品の欠陥により第三者が損害を被った場合、当該製品のリコール対応に多大な費用負担を余儀なくされ、又は製造物責任法に基づく民事賠償責任を負う可能性があります。当社グループは、高品質で安全な製品を供給しておりますが、予期しない問題が発生した場合、当社グループの社会的評価が低下するなど、業績などに影響を与える可能性があります。

 

(8) 経済環境に関するリスク

当社グループの製品の需要は、自動車、電子機器、消費財及び工作機械等の最終製品の需要に左右され、工業生産量の全体的な落ち込み及びこれに伴う最終製品市場の悪化の影響を受ける傾向があり、特に当社の製品は自動車産業の市場悪化の影響を強く受ける傾向があります。また、世界的な経済環境の悪化に起因する各産業セクターにおける生産の減少も、当社グループの製品の需要を減少させ、当社グループの業績などに影響を与える可能性があります。

 

(9) 顧客集中に関するリスク

当社グループの製品の大半は、比較的少数の大規模製造業者(特に、精密ボール及び精密ローラーについてはベアリングの製造業者、ボールねじについては工作機械及び射出成形機の製造業者)を主要な顧客としており、当社グループとこれらの主要な顧客との関係が悪化した等の理由により主要な顧客を失った場合には、当社グループの業績などに影響が生じる可能性があります。

 

(10) セラミック球の製造及び販売に関するリスク

セラミック球の製造及び販売は、当社グループの重要な事業戦略の一つでありますが、品質の確保、原材料の入手、素球の生産能力の十分な確保及びセラミック球の採用に関する顧客の承諾・認証プロセス等が当社の想定どおりに進まない場合や、競合製品が登場した場合又は当社がセラミック球に関する知的財産権を十分に保護できない場合には、当社グループの将来的な業績などに影響が生じる可能性があります。

 

(11) 他社競合リスク

当社グループは、顧客や市場ニーズに対応した高品質で安全な商品、サービスを提供することに全力を挙げて取り組んでおります。しかしながら、当社グループは他社との競合に晒されており、今後において、技術、品質、価格、在庫量及びマーケティング等に関連して競合他社に対して十分な競争力を確保できない場合には、当社グループの売上が減少する可能性があり、その場合業績などに影響を与える可能性があります。

 

 

(12) 環境問題リスク

当社グループは、環境保全活動を重要な経営方針の一つとして、その充実を図っておりますが、環境問題を引き起こし、損害の賠償、生産の停止、社会的評価の低下等の可能性、又は新しい規制への対応による費用負担の増加等により、業績などに影響を与える可能性があります。

 

(13) 財務報告に係る内部統制

当社グループでは、財務報告の信頼性に係る内部統制の構築及び運用を重要な経営課題の一つとして位置づけ、グループを挙げて管理体制等の点検・改善等に継続的に取り組んでおりますが、当社グループの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性があります。また、将来にわたって常に有効な内部統制を構築及び運用できる絶対的な保証はなく、さらに、内部統制に本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制が有効に機能しなかった場合や、財務報告に係る内部統制に重要な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 

(14) 固定資産の価格下落

当社グループが保有している固定資産について、時価の下落・収益性の低下等に伴い資産価値が低下した場合、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(15) のれんの減損

のれんの減損テストについては各資金生成単位で行っており、プレシジョン・コンポーネントビジネスについては主に世界の自動車需要や産業機械需要の動向により影響を受け、リニアビジネスについては主に設備投資関連需要の影響を受ける事となります。プレシジョン・コンポーネントビジネスは比較的広いエンドユーザーを持っており、個々の需要動向の影響が薄まる傾向にありますが、リニアビジネスについては設備投資関連需要への依存度が高い傾向にあります。当社グループが保有しているのれんについて、収益性の低下等に伴い資産価値が減少した場合、当社グループの業績に影響が生じる可能性があります。

 

(16) 災害の発生

当社グループの生産拠点において、地震、風水害、火災等の災害又は事故が発生した場合は、当該事業所を中心に対応組織を稼働させ、被害を最小限にとどめるべく努力をいたしますが、被害状況によっては、又は社会インフラの損壊など予想を超える事態が生じた場合には、当該事業所における生産活動が停止し、製品の出荷が停止若しくは遅延し、又は設備の修理、代替等のため多大な損失・費用を被る可能性があります。また、グローバル規模の感染症及び国内外の電力供給問題等の発生により当社グループの生産能力が悪影響を受ける可能性があります。これらの事象が発生した場合、当社グループの業績などに影響を与える可能性があります。

 

(17) 人事労務及び経営陣に関するリスク

当社グループの事業においては、国内外において専門性の高い熟練した従業員を確保する必要があり、かかる従業員を確保できない場合、当社グループの事業に影響が生じる可能性があります。また、当社グループの経営陣及び幹部従業員が大量に流出した場合にも、当社グループの事業及び業績などに影響が生じる可能性があります。

 

(18) 中期経営戦略に関するリスク

当社グループは、"さらなる利益ある成長"を実現し、企業価値向上を継続的に創造し続ける、輝く企業をめざすべく2024年を開始年度とする中期経営戦略(3ヶ年)を公表予定としております。当該中期経営戦略は当社グループのコントロールが及ばない事項を含む、多くの前提に基づいたものとなっております。したがって、当社グループが中期経営戦略を成功裡に実施し又は成長目標を達成できない場合、当社グループの業績に悪影響を及ぼす可能性も否定できません。

 

 

(19) M&A等に関するリスク

当社グループは、事業における買収、他社への投資、ジョイントベンチャー又はこれらに類似する取引を継続的に検討しており、適切な条件が満たされた場合にはかかる取引を実行します。買収又は類似の投資が当社グループの見込んだ業績及び財務成績を生み出さない場合、当社グループは、追加で財務資源又は経営資源を投入することが必要となる可能性があります。当社グループが買収又は類似の投資について期待された効果を実現することができるか否かは、多数の要素及び仮定に依拠しており、当社グループの拡大戦略が期待された結果を出す保証はなく、また、当社グループの財政状態及び業績に悪影響を及ぼさないという保証はありません。

 

4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(業績等の概要)

(1) 業績

国内では、年初から全般的に需要の回復が続いておりましたが、下期後半から景気の一服感が強まっております。自動車産業では半導体不足の解消や円安により改善が継続したものの、一部メーカーの工場停止やリコール等の影響もあり販売の伸長が縮小しており、また工作機械は需要の落ち込みから低調な状況が続いております。更には、全般的な物価上昇による総需要の減少やコストの増加、人手不足の深刻化による悪影響等一段と懸念されております。海外では、欧州や中国の景気低迷をアメリカの安定により世界経済を支えている状況にありますが、各所で利下げに転じる方向ではあるものの、いまだ既往の高インフレや金融引締影響が散見され、再度の需要減速等リスクを留意の上世界市場の動向も注視しております。

 

このような状況下、当期の売上収益は、主力事業のプレシジョン・コンポーネントビジネスの主要製品が、世界的な工作機械受注の落ち込み、また、当社製品納入先の在庫調整などにより伸び悩んだものの、エネルギー価格・原材料価格上昇分の販売価格への転嫁や円安影響等により、前期比1.6%増80,337百万円となりました。

利益面につきましては、為替影響を除いた売上の減少に伴う利益減や、オランダのスタンピング工場閉鎖に伴う費用1,966百万円(その他の費用に計上した1,834百万円及び生産停止等による生産性低下影響132百万円)、更にボールねじ及びボールウェイの製造及び販売事業の売却に伴う減損損失等4,042百万円を計上しましたが、前年同期に計上した欧州ローラービジネスの構造改革に対する費用2,952百万円やプレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産等及びリニアビジネスののれんの減損損失13,562百万円がなくなったことから、営業利益は前期から9,918百万円増加し、853百万円となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期損失は前期から7,802百万円改善しましたが、1,287百万円の損失となりました。

 

セグメント業績を示すと、次のとおりであります。

プレシジョン・コンポーネントビジネス

プレシジョン・コンポーネントビジネスの売上収益は、世界的な工作機械受注の落ち込み、そして当社製品納入先の在庫調整などにより伸び悩んだものの、エネルギー価格・原材料価格上昇分の販売価格への転嫁や円安影響等あり、プレシジョン・コンポーネントビジネスの売上収益は、前期比3.1%増75,929百万円となりました。セグメント損益(営業損益)につきましては、為替影響を除いた売上の減少に伴う利益減や、オランダのスタンピング工場閉鎖に伴う費用1,966百万円を計上し、一方、前年同期に計上した欧州ローラービジネスの構造改革に対する費用2,952百万円やプレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産等の減損損失9,546百万円がなくなったことから、前期から10,261百万円改善し、営業利益は4,804百万円となりました。

 

リニアビジネス

リニアビジネスの売上収益は、工作機械の受注の落ち込みや顧客の在庫調整などにより、前期比17.8%減4,407百万円となりました。一方で、セグメント損益(営業損益)につきましては、前年同期に計上したリニアビジネスののれんの減損損失4,016百万円がなくなりましたが、売上減少及びボールねじ及びボールウェイの製造及び販売事業の売却に伴う減損損失等4,042百万円を計上したことにより、前期から344百万円悪化し、3,972百万円の損失となりました。

 

(2)財政状態

当連結会計年度末の総資産は、前期末に比べ6,187百万円増加し166,078百万円となりました。これは主に、営業債権及びその他の債権が1,659百万円、棚卸資産が1,888百万円増加した一方、現金及び現金同等物が1,116百万円減少したため流動資産が2,341百万円増加となり、また、設備投資により有形固定資産が3,463百万円増加し、無形資産及びのれんが1,327百万円減少しましたが、その他の非流動資産が1,227百万円増加し非流動資産が3,846百万円増加したことによります。

負債につきましては、前期末に比べ2,176百万円増加し、111,936百万円となりました。これは主に、社債及び借入金が2,370百万円増加したことによります。なお、前期末に財務制限条項に抵触し流動負債に区分した一部の借入金43,933百万円について、当連結会計期間末では非流動負債内の社債及び借入金に計上しております。

資本につきましては、前期末に比べ4,011百万円増加し、54,142百万円となりました。これは主に、為替換算調整勘定などのその他の資本の構成要素が6,355百万円増加したこと、及び利益剰余金が2,442百万円減少したことによります。

 

(3) キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度の各活動におけるキャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

営業活動によるキャッシュ・フローは、1,405百万円の資金の増加となりました。主な要因は、税引前当期利益113百万円、減価償却費及び償却費3,189百万円、減損損失3,423百万円などの資金の増加要因があった一方で、営業債務及びその他の債務の減少1,651百万円、利息の支払額1,173百万円、法人所得税等の支払額1,568百万円などの資金減少要因がありました。

投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出を主な要因とし、4,895百万円の減少となりました。

財務活動によるキャッシュ・フローは、長期借入金の返済による支出7,000百万円の減少がありましたが、転換社債の発行による収入10,020百万円により、1,394百万円の増加となりました。これらに当連結会計年度のUSドル高及びユーロ高を主な要因とする、980百万円の換算差額等を加算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は23,003百万円と前連結会計年度末と比べ1,116百万円の減少となりました。

 

(参考) キャッシュ・フロー関連指標の推移

 

2022年12月

2023年12月

親会社所有者帰属持分比率(%)

31.3

32.6

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率(%)

25.3

17.5

キャッシュ・フロー対有利子負債比率(%)

△2,155.0

6,502.1

インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍)

△3.8

1.2

 

親会社所有者帰属持分比率:親会社所有者帰属持分/総資産

時価ベースの親会社所有者帰属持分比率:株式時価総額/資産合計

キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー

インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/支払利息

(注) 1 IFRSに基づく連結ベースの財務数値により計算しております。

2 株式時価総額は自己株式を除く発行済株式数をベースに計算しております。

3 キャッシュ・フローは営業活動によるキャッシュ・フローを使用しております。

4 有利子負債は連結財政状態計算書に計上されている負債のうち、利子を支払っている全ての負債を対象としております。

 

 

(生産、受注及び販売の状況)

(1) 生産実績

当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

生産高(百万円)

前年同期比(%)

プレシジョン・コンポーネントビジネス

51,471

99.1

リニアビジネス

2,607

81.0

合計

54,079

98.0

 

(注) 1 上記の金額は、平均販売価格で表示しております。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(2) 商品仕入実績

当連結会計年度における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

商品仕入高(百万円)

前年同期比(%)

プレシジョン・コンポーネントビジネス

5,285

66.3

リニアビジネス

91

76.7

合計

5,376

66.5

 

(注) 1 上記の金額は、平均仕入価格で表示しております。

 

(3) 受注実績

当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

受注高(百万円)

前年同期比(%)

受注残高(百万円)

前年同期比(%)

プレシジョン・コンポーネントビジネス

リニアビジネス

3,198

71.8

1,572

65.9

合計

3,198

71.8

1,572

65.9

 

(注) 1 プレシジョン・コンポーネントビジネスの生産方式は、見込生産のため該当事項はありません。

2 セグメント間取引については、相殺消去しております。

 

(4) 販売実績

当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

プレシジョン・コンポーネントビジネス

75,929

103.1

リニアビジネス

4,407

82.2

その他

1

100.0

合計

80,337

101.6

 

(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。

2 主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合

 

相手先

前連結会計年度

(自 2022年 1月 1日

 至 2022年12月31日)

当連結会計年度

(自 2023年 1月 1日

 至 2023年12月31日)

販売高(百万円)

割合(%)

販売高(百万円)

割合(%)

AB SKF

18,276

23.1

16,898

21.0

NTN㈱

7,735

9.8

8,983

11.2

 

(注) 上記の金額には当該顧客と同一の企業集団に属する顧客に対する販売高を含めております。

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

当社グループの財政状態及び経営成績の分析は以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 重要性のある会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、国際会計基準審議会によって公表されたIFRSに基づき作成しております。重要性のある会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 3重要性のある会計方針」に記載しております。

連結財務諸表の作成においては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告数値に影響を与える見積りが必要であります。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

なお、将来に関する仮定及び報告期間末における見積りの不確実性の要因となる事項は、「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記」の「2.作成の基礎 (4)見積り及び判断の利用」及び「3.重要性のある会計方針」に記載しております。

 

(2) 経営成績の分析

① 売上収益

国内では、年初から全般的に需要の回復が続いておりましたが、下期後半から景気の一服感が強まっております。自動車産業では半導体不足の解消や円安により改善が継続したものの、一部メーカーの工場停止やリコール等の影響もあり販売の伸長が縮小しており、また工作機械は需要の落ち込みから低調な状況が続いております。更には、全般的な物価上昇による総需要の減少やコストの増加、人手不足の深刻化による悪影響等一段と懸念されております。海外では、欧州や中国の景気低迷をアメリカの安定により世界経済を支えている状況にありますが、各所で利下げに転じる方向ではあるものの、いまだ既往の高インフレや金融引締影響が散見され、再度の需要減速等リスクを留意の上世界市場の動向も注視しております。

このような状況下、当期の売上収益は、主力事業のプレシジョン・コンポーネントビジネスの主要製品が、世界的な工作機械受注の落ち込み、また、当社製品納入先の在庫調整などにより伸び悩んだものの、エネルギー価格・原材料価格上昇分の販売価格への転嫁や円安影響等により、前連結会計年度に比べ1.6%増加80,337百万円となりました。事業別に見ますと、プレシジョン・コンポーネントビジネスでは、世界的な工作機械受注の落ち込み、そして当社製品納入先の在庫調整などにより伸び悩んだものの、エネルギー価格・原材料価格上昇分の販売価格への転嫁や円安影響等あり、前連結会計年度に比べ3.1%増加75,929百万円、リニアビジネスでは、工作機械の受注の落ち込みや顧客の在庫調整などにより、前連結会計年度に比べ17.8%減少4,407百万円となりました。

② 売上原価、売上総利益

売上原価は、前連結会計年度に比べ5.8%減少67,177百万円、売上総利益は前連結会計年度に比べ69.6%増加13,160百万円となりました。売上原価率は、前連結会計年度に比べ6.6%減少し、83.6%となりました。売上原価減少の主な要因は、コスト改善効果が見られ、また、プレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産の減損損失の計上がなくなったことによるものです。

③ 販売費及び一般管理費

販売費及び一般管理費は、主に前連結会計年度に計上したプレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産の減損損失の計上がなくなったことにより、前連結会計年度に比べ5.7%減少7,916百万円となりました。

④ 営業損益

営業損益は、為替影響を除いた売上の減少に伴う利益減や、オランダのスタンピング工場閉鎖に伴う費用1,966百万円(その他の費用に計上した1,834百万円及び生産停止等による生産性低下影響132百万円)、更にボールねじ及びボールウェイの製造及び販売事業の売却に伴う減損損失等4,042百万円を計上しましたが、前連結会計年度に計上した欧州ローラービジネスの構造改革に対する費用2,952百万円やプレシジョン・コンポーネントビジネスの米州地域の有形固定資産等及びリニアビジネスののれんの減損損失13,562百万円がなくなったことから853百万円の営業利益となりました。事業部別に見ますと、プレシジョン・コンポーネントビジネスでは、4,804百万円の営業利益、リニアビジネスでは、3,972百万円の営業損失となりました。

⑤ 法人所得税費用

法人所得税費用は、主にオランダのスタンピング工場閉鎖に伴う費用の税効果を計上できないことから、税引前利益より大きい1,402百万円の計上となりました。

⑥ 親会社の所有者に帰属する当期損益

これらの結果、親会社の所有者に帰属する当期損益は、1,287百万円の損失となりました。

⑦ EBITDA

EBITDA(営業利益+減価償却費及び償却費+減損損失)は、為替影響を除いた売上の減少に伴う利益減などにより、前連結会計年度に比べ8.6%減少の7,465百万円となりました。

⑧ フリーキャッシュフロー(FCF)

FCF(営業活動によるキャッシュ・フロー+投資活動によるキャッシュ・フロー)は、営業債務及びその他の債務の減少や有形固定資産の支出があった一方、税引前当期利益が回復したことにより、前連結会計年度から改善し3,528百万円の支出となりました。

 

(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては「第2事業の状況 3事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

(4) 経営戦略の現状と見直しおよび経営者の問題認識と今後の方針

経営戦略の現状と見直しおよび経営者の問題認識と今後の方針につきましては、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

(5) キャッシュ・フローの状況に関する分析

当連結会計年度におけるキャッシュ・フローの状況は、「第2事業の状況 4経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (2) キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

(6) 資本の財源及び資金の流動性についての分析

当社グループは、継続的に企業価値を向上させることを経営の指針とし、①設備投資、②株主還元、③借入金の返済のバランスをとりながら、資金の使途を決定しています。当社グループの資金の源泉は、内部資金及びツバキ・ナカシマ本体の社債及び銀行借入金により調達したものであり、グローバル・キャッシュ・マネジメントシステムを活用し、グループ内の資金をタイムリーに把握すると共に、グループ会社間親子ローンやグループ会社間配当を実施する等し、資金効率の向上に努めております。キャッシュ創出力が当社の強みであり、利益の向上と共に運転資本の最適化を図っています。

なお、現金及び現金同等物の残高は23,003百万円となっております。

 

(7) 資金需要及び財務政策

当社グループの資金需要は主に設備投資及び運転資金であります。

現在、設備投資資金につきましては、内部資金または社債及び銀行借入金により資金調達をすることとしております。また、今後につきましては、健全な財政状態の維持を図っていくとともに資本効率を高めてまいります。

 

 

5 【経営上の重要な契約等】

契約締結日

会社名

契約の名称

契約内容

契約期間

2023年10月18日(注)

アドバンテッジアドバイザーズ株式会社

事業提携契約書

当社の企業価値向上の実現を目的とした諸施策の検討とノウハウの提供等による事業提携の実施

自 2023年11月9日

至 2026年11月8日

又は資本提携終了日のいずれか早く到来する日まで(注)

2024年2月9日

ミネベアミツミ株式会社

株式譲渡契約書

TNリニアモーション株式会社の設立及びボールねじ及びボールウェイの製造及び販売事業の新会社への承継、並びに新会社株式の譲渡

2024年12月9日

又は両社が合意した日

 

(注) 同日の当社取締役会において、第17回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債の募集について決議いたしました。詳細は、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2)新株予約権等の状況 ③その他の新株予約権等の状況」に記載の通りであります。

    「資本提携終了日」とは、第17回新株予約権及び第1回無担保転換社債型新株予約権付社債又はこれらを転換若しくは行使して取得する当社株式のいずれも保有しないこととなる日を言います。

 

 

6 【研究開発活動】

当社グループは、精密ボール、精密ローラー、直動軸受システム、送風機の専門メーカーとして、ユーザーの多様化するニーズに適応した製品を供給するため、各事業部において研究開発に取り組んでおり、それぞれの事業の中心となる製品についての研究開発を進めております。

現在の研究開発は当社グループの各技術部門において、プレシジョン・コンポーネントビジネス及びリニアビジネスを中心に推進しております。当連結会計年度の研究開発費は499百万円となっております。

セグメントごとの研究の目的、主要な課題、研究成果及び研究開発費は次のとおりであります。

 

(1) プレシジョン・コンポーネントビジネス

サステナブルな社会に貢献するため、高効率軸受けのベースとなる精密ボール、精密ローラー及びEV対応のセラミックボールを超高精度で安価に生産する加工技術の確立に向けて、自動化を含む研究開発を行っております。当連結会計年度の研究開発費は483百万円となっており、一部のサイズについては加工技術、自動機を確立し需要に応えることができました。

 

(2) リニアビジネス

リニアビジネスにおいては、ボールねじについては市場ニーズの変化に応えるため、より安価で経済性に優れた加工方法で製品化する研究を進めており、送風機については更なる高効率送風機開発に向け、有限要素法を用いた解析を行って構造改善に取り組んでおります。当連結会計年度の研究開発費は16百万円となりました。